説明

機内イナートガス発生システムおよび空気分離モジュールに流入する供給空気の温度管理方法

【課題】空気分離モジュールの温度を制御する効率的な方法およびシステムを提供する。
【解決手段】機内イナートガス発生システム10は、電動モータ18により駆動される第1の圧縮機16を有する圧縮機システム14と、非濃縮空気から窒素濃縮空気を生成する空気分離モジュール30と、を備える。圧縮機16は、キャビン空気12を受け、かつ熱交換器アッセンブリ20の中間冷却器22へと圧縮空気を供給する。熱交換器20は、ラム空気ダクト40に配設され、ラム空気流50を受ける。ラム空気流50によって圧縮空気が冷却される。システム14は、所望の運転温度範囲を有する非濃縮空気をモジュール30に供給する。コントローラ42は、所望の運転温度範囲を超える非濃縮空気温度をもたらす望ましくない値に達するパラメータに応じて速度を減少させる。この減少速度は、非濃縮空気温度を所望の運転温度範囲に維持するように選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の機内イナートガス発生システムに関し、特に、該システム内の空気分離モジュールの温度を制御する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
機内イナートガス発生システムは、カーゴ領域や燃料タンクなど航空機内の種々の領域にイナートガス(希ガス)を供給するように用いられている。従来の装置の一例として、システムは、空気分離モジュールに非濃縮空気(non−enriched air)を供給するように、直列に配設された2つの圧縮機を有する。空気分離モジュールは、イナートガスとして窒素濃縮空気を生成する。
【0003】
窒素濃縮空気を生成するため、所望の運転温度範囲内で非濃縮空気を空気分離モジュールに供給することが望ましい。熱交換器は、通常、ラム空気ダクトに配設され、圧縮機と空気分離モジュールとの間で流体連通し、非濃縮空気を冷却する。ラム空気が熱交換器を通過する際に非濃縮空気は冷却され、これにより、非濃縮空気が所望の運転温度範囲内に維持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気分離モジュールに流入する非濃縮空気が冷却されていない場合、航空機の運転状態によって、非濃縮空気の温度が所望の運転温度範囲よりも高くなることがある。非濃縮空気の温度が望ましくないほど高温になる、例えば、航空機が地上にある場合やラム空気ダクトを空気が通流しない場合など、非濃縮空気を他の手段によって冷却しなければならない。このような状態に対処するために、空気流を熱交換器に亘って誘導するエジェクタに抽気を供給することによって、空気分離モジュールに到達する前に非濃縮空気を冷却する手段を用いる。抽気は、エンジン、あるいは一方の圧縮機から供給されるため、航空機の効率が低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、空気分離モジュールの温度を制御する効率的な方法およびシステムが求められている。
【0006】
機内イナートガス発生システムは、非濃縮空気から窒素濃縮空気を生成するように構成された空気分離モジュールを備える。空気分離モジュールへの非濃縮空気は、所望の運転温度範囲を有する。圧縮機システムは、空気分離モジュールと流体連通する。圧縮機システムは、所定の速度で回転し、空気分離モジュールに非濃縮空気を供給するように構成される。コントローラは、圧縮機システムと連通する。さらに、コントローラは、所望の運転温度範囲を超える非濃縮空気温度をもたらす望ましくない値に達するパラメータに応じて速度を減少させるように構成される。減少された速度は、非濃縮空気温度を所望の運転温度範囲に維持するように選択される。
【0007】
当業者であれば、以下に記載の発明を実施するための形態から本発明の種々の特徴および利点を理解されるであろう。以下に発明を実施するための形態に伴う図面について簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】機内イナートガス発生システムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照すると、機内イナートガス発生システム10が概略的に図示されている。機内イナートガス発生システム10は、例えば、キャビンの空気12を受ける圧縮機システム14を備える。圧縮機システム14は、例えば、電動モータ18によって駆動される第1の圧縮機16を有する。第1の圧縮機16は、タービンや他の変速駆動要素によっても駆動されてもよい。第1の圧縮機16は、入口ダクト16aを通してキャビン空気12を受け、出口ダクト16bを通して熱交換器アッセンブリ20の中間冷却器22へと圧縮空気を供給する。熱交換器アッセンブリ20は、ラム空気ダクト40に配設され、ラム空気流50を受ける。圧縮空気は、入口ダクト24aを通して第2の圧縮機24に供給される前に、熱交換器アッセンブリ20を通流するラム空気流50によって冷却される。本実施例では、第2の圧縮機24は、電動モータ18によって駆動される。機内イナートガス発生システム10において1つの圧縮機だけを用いてもよいことを理解されたい。
【0010】
第2の圧縮機24は、さらに圧縮された空気を出口ダクト24bを通して熱交換器アッセンブリ20に供給する。さらに圧縮された空気は、熱交換器アッセンブリ20によって冷却され、ダクト26を通してフィルタ28に送られる。非濃縮空気は、フィルタ28を通って空気分離モジュール30に流れる。空気分離モジュール30は、例えば、窒素濃縮空気を、窒素濃縮空気ダクト31を通して燃料タンク36に供給する。空気分離モジュール30からの浸透液は、例えば、浸透液ダクト38を通してラム空気ダクト40に排出される。
【0011】
一実施例では、積層弁32は、窒素濃縮空気ダクト31およびエジェクタ34に配設されており、エジェクタ34は、ラム空気ダクト40内に配設され、出口ダクト24bと連通している。積層弁32は、アクチュエータ(図示せず)からの入力に応答して可動する。積層弁32は、例えば、機内イナートガス発生システム10を通流する流れを調節するとともに、第1および第2の圧縮機16,24のサージ状態を防ぐように用いられる。
【0012】
空気が第1および第2の圧縮機16,24を通流することによって非濃縮空気の温度が上昇する。航空機の飛行中、ラム空気ダクト40を通るラム空気流50は、熱交換器アッセンブリ20を通流し、これにより、非濃縮空気が所望の運転温度範囲内に維持される。この温度範囲は、空気分離モジュール30が所望の質を有する窒素濃縮空気を生成する温度に対応している。一実施例では、所望の運転温度範囲は、約175°F〜205°F(約79°C〜96°C)である。ある状態下、例えば、ラム空気流50がほとんど、あるいは全く存在しない状態などでは、非濃縮空気の温度つまり空気分離モジュール30に流入する供給空気の温度は、所望の運転温度範囲よりも高温になることがある。そのため、所望の質を有する窒素濃縮空気を生成するために、空気分離モジュール30に流入する非濃縮空気の温度を低温にしなければならない。
【0013】
コントローラ42は、電動モータ18の速度を減少させるように構成されている。パラメータが、所望の運転温度範囲を超える非濃縮空気の温度をもたらす望ましくない値に達したときに、コントローラ42は、モータに速度コマンド信号を送ることによって電動モータ18の速度を減少させる。減少した速度は、より低い温度を有する圧縮空気を生成するように選択される。この空気は、所望の運転温度範囲内の温度を有する非濃縮空気に対応している。
【0014】
一実施例では、パラメータは、空気分離モジュール30付近の非濃縮空気の温度である。コントローラ42は、空気分離モジュール30に流入する非濃縮空気の温度に対応する温度センサ44と連通する。温度が所望の運転温度範囲を超えた場合、コントローラ42は、速度コマンド信号を電動モータ18に送り、第1および第2の圧縮機16,24の速度を減少させる。これにより、非濃縮空気の温度が所望の運転温度範囲に維持される。
【0015】
他の実施例では、パラメータは、空気速度センサ46によって検知される空気速度であり、これは、ラム空気ダクト40を通流するラム空気流50を示す。コントローラ42は、空気速度センサ46と連通する。熱交換器アッセンブリ20を通るラム空気流50が十分にない場合、望ましくない空気速度に達し非濃縮空気の温度を所望の運転温度範囲まで冷却する。空気速度によって所望の運転温度範囲を超えた場合、コントローラ42は、速度コマンド信号を電動モータ18に送り、第1および第2の圧縮機16,24の速度を減少させ、非濃縮空気の温度を所望の運転温度範囲に維持する。例えば、ラム空気流50が十分にないことを示すように空気/グランド信号(air/ground signal)を用いる。この場合、コントローラ42は、速度コマンド信号を電動モータ18に送る。
【0016】
上記の記載は、例示的なものであり、限定的なものではない。したがって、当業者であれば、本発明の趣旨から逸脱することなく、開示された実施例に対して種々の修正および変更がなされることを理解されるであろう。本発明の真の範囲および内容を判断するために、以下の特許請求の範囲を検討されたい。
【符号の説明】
【0017】
10 機内イナートガス発生システム
12 キャビン空気
14 圧縮機システム
16 第1の圧縮機
16a 入口ダクト
16b 出口ダクト
18 電動モータ
20 熱交換器アッセンブリ
22 中間冷却器
24 第2の圧縮機
24a 入口ダクト2
24b 出口ダクト
26 ダクト
28 フィルタ
30 空気分離モジュール
31 窒素濃縮空気ダクト
32 積層弁
34 エジェクタ
36 燃料タンク
38 浸透液ダクト
40 ラム空気ダクト
42 コントローラ
44 温度センサ
46 空気速度センサ
50 ラム空気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非濃縮空気から窒素濃縮空気を生成するように構成され、かつ所望の運転温度範囲を有する空気分離モジュールと、
空気分離モジュールと流体連通するとともに、所定の速度で回転し、かつ空気分離モジュールに非濃縮空気を供給する圧縮機システムと、
圧縮機システムと流体連通するコントローラと、
を備え、
コントローラは、所望の運転温度範囲を超える非濃縮空気温度をもたらす望ましくない値に達するパラメータに応じて速度を減少させるように構成され、減少された速度は、非濃縮空気温度が所望の運転温度範囲に維持されるように選択されることを特徴とする機内イナートガス発生システム。
【請求項2】
モータは、コントローラと連通する電動モータであり、コントローラは、減少された速度に対応する電動モータに速度コマンド信号を送るように構成されることを特徴とする請求項1に記載の機内イナートガス発生システム。
【請求項3】
圧縮機システムは、モータに接続された第1の圧縮機および第2の圧縮機を備え、第1および第2の圧縮機の少なくとも一方の圧縮機により、非濃縮空気が供給されることを特徴とする請求項2に記載の機内イナートガス発生システム。
【請求項4】
空気分離モジュールと圧縮機システムとの間で流体連通するように配設された熱交換器を備えることを特徴とする請求項1に記載の機内イナートガス発生システム。
【請求項5】
熱交換器を収容するとともに、ラム空気流を受けるように構成されたラム空気ダクトを備えることを特徴とする請求項4に記載の機内イナートガス発生システム。
【請求項6】
コントローラと連通するとともに、パラメータに相当する空気速度を検知する空気速度センサを備え、
コントローラは、速度コマンド信号を圧縮機システムに送り、望ましくない値に相当する望ましくない空気流に応じて速度を減少させることを特徴とする請求項5に記載の機内イナートガス発生システム。
【請求項7】
コントローラと連通するとともに、パラメータに相当する非濃縮空気温度を検知する温度速度センサを備え、
コントローラは、速度コマンド信号を圧縮機システムに送り、望ましくない値に相当する非濃縮空気温度に応じて速度を減少させることを特徴とする請求項1に記載の機内イナートガス発生システム。
【請求項8】
所望の運転温度範囲は、約175°F〜約205°F(約79°C〜約96°C)であることを特徴とする請求項1に記載の機内イナートガス発生システム。
【請求項9】
空気分離モジュールに流入する供給空気の温度を管理する方法であって、
空気分離モジュールへの非濃縮空気の温度に対応するパラメータを検知するステップと、
前記温度と、非濃縮空気に対する所望の運転温度範囲とを比較するステップと、
前記温度が所望の運転温度範囲を超えている場合に圧縮機の速度を減少させるステップと、
を含むことを特徴とする供給空気温度管理方法。
【請求項10】
前記パラメータは、熱交換器に亘る空気流に対応することを特徴とする請求項9に記載の供給空気温度管理方法。
【請求項11】
前記パラメータは、ラム空気ダクトを通る空気流に対応する空気速度であることを特徴とする請求項10に記載の供給空気温度管理方法。
【請求項12】
前記パラメータは、空気分離モジュール付近の非濃縮空気の温度であることを特徴とする請求項9に記載の供給空気温度管理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−64733(P2010−64733A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186250(P2009−186250)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.