機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法
【課題】短時間に且つ新しい伝熱管の外周を傷つけることなく目的の正しい位置に熱交換器の新しい伝熱管を挿入する為の挿入方法を提供する。
【解決手段】伝熱管内を海水が流れることで胴内部の淡水を冷却する機器冷却水熱交換器1であって、海水に含まれる異物や化学反応等により内面が損傷、磨耗する損傷伝熱管41を新しい伝熱管に取替えるための伝熱管補修方法において、前記損傷伝熱管41を抜取る際、事前にワイヤー8を前記損傷伝熱管41内に通し、前記損傷伝熱管41のみを抜取り、残った前記ワイヤー8を新しい伝熱管を挿入する際のガイドとして用い、新しい伝熱管を押圧、引張挿入することを特徴とする機器冷却水熱交換器1の伝熱管補修方法。
【解決手段】伝熱管内を海水が流れることで胴内部の淡水を冷却する機器冷却水熱交換器1であって、海水に含まれる異物や化学反応等により内面が損傷、磨耗する損傷伝熱管41を新しい伝熱管に取替えるための伝熱管補修方法において、前記損傷伝熱管41を抜取る際、事前にワイヤー8を前記損傷伝熱管41内に通し、前記損傷伝熱管41のみを抜取り、残った前記ワイヤー8を新しい伝熱管を挿入する際のガイドとして用い、新しい伝熱管を押圧、引張挿入することを特徴とする機器冷却水熱交換器1の伝熱管補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器冷却水熱交換器の伝熱管を補修する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電プラントにおける復水器や、産業分野で一般に使用される種々の熱交換器は、円筒状の胴内に複数の伝熱管が平行に配列され、それら伝熱管の両端を胴端部の鋼板(管板)などの固定部に固定して構成される。このような熱交換器は胴内の淡水を冷却するために海水を伝熱管に流しており、長期間使用すると海水に含まれる異物や化学反応等により伝熱管の内面が損傷、磨耗するので、適当な時期にその損傷した伝熱管を補修する必要がある。
【0003】
従来、熱交換器の伝熱管を補修するには、損傷した各伝熱管をその固定部分である管板の少し内側において切断し、管板に残った各伝熱管を外側に引き抜き、その後で熱交換器の管板に新しい伝熱管を取り付ける方法が一般的に採用されている。
損傷した各伝熱管を効率よく引き抜くために、ガイドピンとベースプレートを用いてまとめて引き抜く方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−259940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、熱交換器には、胴内部に伝熱管の振れを防止するための板(バッフル)が取付けられているため、損傷した伝熱管を引き抜いた後に、新しい伝熱管を熱交換器に取り付けるにあたり、一方の管板より新しい伝熱管を挿入し、バッフル穴を通過させ、反対側の管板まで通す際に、バッフル板が上下左右にずれていると、新しい伝熱管が円滑に入っていかないことがある。バッフル穴に通過させるため、何度も試みるうちに、新しい伝熱管の外周を傷つけるという問題が発生した。
【0006】
そこで本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであり、短時間に且つ新しい伝熱管の外周を傷つけることなく目的の正しい位置に熱交換器の新しい伝熱管を挿入する為の挿入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法は、伝熱管内を海水が流れることで胴内部の淡水を冷却する機器冷却水熱交換器であって、海水に含まれる異物や化学反応等により内面が損傷、磨耗する既設の損傷伝熱管を新しい伝熱管に取替えるための伝熱管補修方法において、既設の損傷伝熱管を抜取る際、事前にワイヤーを既設の損傷伝熱管内に通し、既設の損傷伝熱管のみを抜取り、残ったワイヤーを新しい伝熱管を挿入する際のガイドとして用いることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法は、請求項1記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法において、新しい伝熱管の先端に中空の挿入用治具を簡易固定し、ワイヤーの一端から中空の挿入用治具を先頭にして新しい伝熱管を挿入し、押圧することによりワイヤーをガイドとして新しい伝熱管を押圧挿入することを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項3記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法は、請求項1記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法において、新しい伝熱管の先端に切込みを入れ、ワイヤーの一端から中空の挿入用治具を通し、通した後に抜け防止のためのカシメをワイヤーに取付け、切込み加工した新しい伝熱管を挿入用治具に通し、切込み部分をポンチで打ち込み挿入用治具にポンチ固定し、ワイヤーの他端から前記ワイヤーを引っ張ることによりワイヤーをガイドとして新しい伝熱管を引張挿入することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法によれば、既設の損傷伝熱管を抜取る際、事前にワイヤーを既設の損傷伝熱管内に通し、既設の損傷伝熱管のみを抜取り、残ったワイヤーを新しい伝熱管を挿入する際のガイドとして用いる方法としたので、短時間に且つ新しい伝熱管の外周を傷つけることなく新しい伝熱管を挿入することができる。
【0011】
請求項2記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法によれば、新しい伝熱管の先端に中空の挿入用治具を簡易固定し、ワイヤーの一端から中空の挿入用治具を先頭にして新しい伝熱管を挿入し、ワイヤーをガイドとして新しい伝熱管を押圧挿入する方法としたので、バッフル板が上下左右にずれていても新しい伝熱管の外周を傷つけることなく挿入することができる。
【0012】
請求項3記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法によれば、新しい伝熱管の先端に切込みを入れ、ワイヤーの一端から中空の挿入用治具を通し、通した後に抜け防止のためのカシメをワイヤーに取付け、切込み加工した新しい伝熱管を挿入用治具に通し、切込み部分をポンチで打ち込み挿入用治具にポンチ固定し、ワイヤーの他端からワイヤーを引っ張ることによりワイヤーをガイドとして新しい伝熱管を引張挿入する方法としたので、バッフル板が上下左右に大きくずれていても新しい伝熱管の外周を傷つけることなく挿入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【実施例】
【0014】
図1〜図6は本発明の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法の事前準備段階を示す説明図。図7〜図11は本発明の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法の第一実施例を示す説明図。図12〜図16は本発明の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法の第二実施例を示す説明図である。
【0015】
これらの図において、熱交換器1は、一方及び他方の管板2、3間に固定された複数の伝熱管4内を海水が流れることで胴5内部の淡水を冷却する装置である。胴内部にはバッフル板6が縦列に複数個取り付けられ、バッフル板6のバッフル穴7に伝熱管を通して伝熱管の振れを防止する。海水が流れる伝熱管4は、海水に含まれる異物や化学反応等により内面が損傷、磨耗するため、定期的に補修する、即ち、既設の損傷伝熱管41を抜き取り、新しい伝熱管42を挿入する必要がある。
【0016】
新しい伝熱管42を挿入するためにワイヤー8と挿入用治具9を用いる。ワイヤー8は新しい伝熱管42を真っ直ぐ入れるための案内ロープ(ガイド)の役目を持ち、太さは略3ミリメートルのステンレス製である。
挿入用治具9は中心部分にワイヤー8が通るように内径が略4ミリメートルの中空になっている。挿入用治具9の前方はバッフル板6のバッフル穴7に通りやすくするため尖端部91を有し、後方は新しい伝熱管42が挿入できるように嵌め込み部92を有する。
【0017】
以上のように構成された熱交換器の伝熱管補修方法を説明する。先ず事前準備段階として、新しい伝熱管42を挿入する際のガイドとして用いるワイヤー8の設置方法を図1〜図6を用いて説明する。
【0018】
熱交換器の一方及び他方の管板2、3間に固定された既設の損傷伝熱管41を管板端より内側50mmの位置で切断し(図1、図2)、切断した伝熱管43を管板から引き抜く(図3)。切断しない管板側から残された既設の損傷伝熱管41の中にワイヤー8を通し切断した管板側から引き出す(図4)。通したワイヤー8の両端を丸くしてテープで止める(図4)。通したワイヤー8はそのまま残して既設の損傷伝熱管41のみ切断しない管板側から矢印Yaの方向に引き抜き(図5)、既設の損傷伝熱管41に代わりにワイヤー8を設置する(図6)。
【0019】
次に上記のように設置したワイヤー8をガイドとして用いて、新しい伝熱管42を熱交換器に挿入する方法を図7〜図11及び図12〜図16を用いて説明する。
【0020】
(第一実施例)
先ず、胴内部に縦列に複数個取り付けられたバッフル板6のバッフル穴7のずれが小さい場合は、中空の挿入用治具9を尖端部91から一方の管板2側のワイヤー8に通し(図7、図8)、続いて新しい伝熱管42をワイヤー8に通して(図7、図8)、挿入用治具9の嵌め込み部92に簡易固定する(図8)。挿入用治具9を先頭にして新しい伝熱管42を一方の管板2から挿入して(図9)、新しい伝熱管42を矢印Ybの方向に押圧することにより挿入用治具9の尖端部91がバッフル穴7を順次通過していき(図9)、他方の管板3へ押し出す(図10)。新しい伝熱管42の挿入完了を確認したら、他方の管板3から挿入用治具9を取り出し、続いてワイヤー8を新しい伝熱管42から引き抜く(図11)。
【0021】
(第二実施例)
次に、胴内部に縦列に複数個取り付けられたバッフル板6のバッフル穴7のずれが大きく押圧しても新しい伝熱管42の挿入ができない場合は、中空の挿入用治具9を尖端部91から一方の管板2側のワイヤー8に通して(図12、図13)、ワイヤー8の抜け防止のため挿入用治具9の後方にカシメ10を取り付ける(図13)。続いて新しい伝熱管42を挿入用治具9に通して新しい伝熱管42の先端を挿入用治具9の嵌め込み部92にポンチで打ち込みポンチ固定する(図13)。次に他方の管板3から矢印Ycの方向にワイヤー8を勢いよく引っ張ると(図14)、挿入用治具9の後方に取り付けられたカシメ10が挿入用治具9の嵌め込み部92の後端部に当たり、ワイヤー8に引っ張られた挿入用治具9の尖端部91がバッフル穴7を順次通過していき(図14)、ポンチ固定された新しい伝熱管42が他方の管板3へ引っ張り出される(図15)。新しい伝熱管42の挿入完了を確認したら、挿入用治具9のポンチ固定を外し、他方の管板3からワイヤー8および挿入用治具9を引き抜く(図16)。この場合、新しい伝熱管42の先端を切り込み加工しておくとポンチで打ち込む際に確実にポンチ固定がし易くなり好適である。
【0022】
なお、本発明を実施するにあたり、挿入用治具、ワイヤーの材質はステンレスが好適である。また、カシメの材質はアルミが好適である。
【0023】
以上説明したように、本発明の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法によれば、ワイヤーを新しい伝熱管を挿入する際のガイドとして用いる方法としたので、バッフル板の上下左右のずれが小さい場合は、挿入用治具に簡易固定した新しい伝熱管を押圧することにより、バッフル板の上下左右のずれが大きい場合は、ワイヤー抜け防止のカシメを取付けた挿入用治具に新しい伝熱管をポンチ固定しワイヤーの他端からワイヤーを引っ張ることにより、短時間に且つ新しい伝熱管の外周を傷つけることなく新しい伝熱管を挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法の事前準備段階として既設の損傷伝熱管を切断する説明図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】事前準備段階として切断した損傷伝熱管を引き抜く説明図である。
【図4】事前準備段階として残った既設の損傷伝熱管にワイヤーを通す説明図である。
【図5】事前準備段階として既設の損傷伝熱管のみを引き抜く説明図である。
【図6】事前準備段階として既設の損傷伝熱管に代わりワイヤーを設置した説明図である。
【図7】本発明の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法の第一実施例として新しい伝熱管を挿入用治具に簡易固定する説明図である。
【図8】図7の要部拡大図である。
【図9】第一実施例としてワイヤーに沿って新しい伝熱管を押圧挿入する説明図である。
【図10】第一実施例として新しい伝熱管の押圧挿入完了の説明図である。
【図11】第一実施例としてワイヤーを引き抜き新しい伝熱管の押圧挿入完了した説明図である。
【図12】本発明の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法の第二実施例としてワイヤーに挿入用治具をカシメ固定し、新しい伝熱管を挿入用治具にポンチ固定する説明図である。
【図13】図12の要部拡大図である。
【図14】第二実施例としてワイヤーを引張り新しい伝熱管を引張り挿入する説明図である。
【図15】第二実施例として新しい伝熱管の引張り挿入完了の説明図である。
【図16】第二実施例としてワイヤーを引き抜き新しい伝熱管を引張り挿入完了した説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1:熱交換器
2:一方の管板
3:他方の管板
4:伝熱管
41:既設の損傷伝熱管
42:新しい伝熱管
5:胴
6:バッフル板
7:バッフル板のバッフル穴
8:ワイヤー
9:挿入用治具
91:挿入用治具の尖端部
92:挿入用治具の嵌め込み部
10:カシメ
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器冷却水熱交換器の伝熱管を補修する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電プラントにおける復水器や、産業分野で一般に使用される種々の熱交換器は、円筒状の胴内に複数の伝熱管が平行に配列され、それら伝熱管の両端を胴端部の鋼板(管板)などの固定部に固定して構成される。このような熱交換器は胴内の淡水を冷却するために海水を伝熱管に流しており、長期間使用すると海水に含まれる異物や化学反応等により伝熱管の内面が損傷、磨耗するので、適当な時期にその損傷した伝熱管を補修する必要がある。
【0003】
従来、熱交換器の伝熱管を補修するには、損傷した各伝熱管をその固定部分である管板の少し内側において切断し、管板に残った各伝熱管を外側に引き抜き、その後で熱交換器の管板に新しい伝熱管を取り付ける方法が一般的に採用されている。
損傷した各伝熱管を効率よく引き抜くために、ガイドピンとベースプレートを用いてまとめて引き抜く方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−259940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、熱交換器には、胴内部に伝熱管の振れを防止するための板(バッフル)が取付けられているため、損傷した伝熱管を引き抜いた後に、新しい伝熱管を熱交換器に取り付けるにあたり、一方の管板より新しい伝熱管を挿入し、バッフル穴を通過させ、反対側の管板まで通す際に、バッフル板が上下左右にずれていると、新しい伝熱管が円滑に入っていかないことがある。バッフル穴に通過させるため、何度も試みるうちに、新しい伝熱管の外周を傷つけるという問題が発生した。
【0006】
そこで本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであり、短時間に且つ新しい伝熱管の外周を傷つけることなく目的の正しい位置に熱交換器の新しい伝熱管を挿入する為の挿入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法は、伝熱管内を海水が流れることで胴内部の淡水を冷却する機器冷却水熱交換器であって、海水に含まれる異物や化学反応等により内面が損傷、磨耗する既設の損傷伝熱管を新しい伝熱管に取替えるための伝熱管補修方法において、既設の損傷伝熱管を抜取る際、事前にワイヤーを既設の損傷伝熱管内に通し、既設の損傷伝熱管のみを抜取り、残ったワイヤーを新しい伝熱管を挿入する際のガイドとして用いることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法は、請求項1記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法において、新しい伝熱管の先端に中空の挿入用治具を簡易固定し、ワイヤーの一端から中空の挿入用治具を先頭にして新しい伝熱管を挿入し、押圧することによりワイヤーをガイドとして新しい伝熱管を押圧挿入することを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項3記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法は、請求項1記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法において、新しい伝熱管の先端に切込みを入れ、ワイヤーの一端から中空の挿入用治具を通し、通した後に抜け防止のためのカシメをワイヤーに取付け、切込み加工した新しい伝熱管を挿入用治具に通し、切込み部分をポンチで打ち込み挿入用治具にポンチ固定し、ワイヤーの他端から前記ワイヤーを引っ張ることによりワイヤーをガイドとして新しい伝熱管を引張挿入することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法によれば、既設の損傷伝熱管を抜取る際、事前にワイヤーを既設の損傷伝熱管内に通し、既設の損傷伝熱管のみを抜取り、残ったワイヤーを新しい伝熱管を挿入する際のガイドとして用いる方法としたので、短時間に且つ新しい伝熱管の外周を傷つけることなく新しい伝熱管を挿入することができる。
【0011】
請求項2記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法によれば、新しい伝熱管の先端に中空の挿入用治具を簡易固定し、ワイヤーの一端から中空の挿入用治具を先頭にして新しい伝熱管を挿入し、ワイヤーをガイドとして新しい伝熱管を押圧挿入する方法としたので、バッフル板が上下左右にずれていても新しい伝熱管の外周を傷つけることなく挿入することができる。
【0012】
請求項3記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法によれば、新しい伝熱管の先端に切込みを入れ、ワイヤーの一端から中空の挿入用治具を通し、通した後に抜け防止のためのカシメをワイヤーに取付け、切込み加工した新しい伝熱管を挿入用治具に通し、切込み部分をポンチで打ち込み挿入用治具にポンチ固定し、ワイヤーの他端からワイヤーを引っ張ることによりワイヤーをガイドとして新しい伝熱管を引張挿入する方法としたので、バッフル板が上下左右に大きくずれていても新しい伝熱管の外周を傷つけることなく挿入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【実施例】
【0014】
図1〜図6は本発明の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法の事前準備段階を示す説明図。図7〜図11は本発明の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法の第一実施例を示す説明図。図12〜図16は本発明の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法の第二実施例を示す説明図である。
【0015】
これらの図において、熱交換器1は、一方及び他方の管板2、3間に固定された複数の伝熱管4内を海水が流れることで胴5内部の淡水を冷却する装置である。胴内部にはバッフル板6が縦列に複数個取り付けられ、バッフル板6のバッフル穴7に伝熱管を通して伝熱管の振れを防止する。海水が流れる伝熱管4は、海水に含まれる異物や化学反応等により内面が損傷、磨耗するため、定期的に補修する、即ち、既設の損傷伝熱管41を抜き取り、新しい伝熱管42を挿入する必要がある。
【0016】
新しい伝熱管42を挿入するためにワイヤー8と挿入用治具9を用いる。ワイヤー8は新しい伝熱管42を真っ直ぐ入れるための案内ロープ(ガイド)の役目を持ち、太さは略3ミリメートルのステンレス製である。
挿入用治具9は中心部分にワイヤー8が通るように内径が略4ミリメートルの中空になっている。挿入用治具9の前方はバッフル板6のバッフル穴7に通りやすくするため尖端部91を有し、後方は新しい伝熱管42が挿入できるように嵌め込み部92を有する。
【0017】
以上のように構成された熱交換器の伝熱管補修方法を説明する。先ず事前準備段階として、新しい伝熱管42を挿入する際のガイドとして用いるワイヤー8の設置方法を図1〜図6を用いて説明する。
【0018】
熱交換器の一方及び他方の管板2、3間に固定された既設の損傷伝熱管41を管板端より内側50mmの位置で切断し(図1、図2)、切断した伝熱管43を管板から引き抜く(図3)。切断しない管板側から残された既設の損傷伝熱管41の中にワイヤー8を通し切断した管板側から引き出す(図4)。通したワイヤー8の両端を丸くしてテープで止める(図4)。通したワイヤー8はそのまま残して既設の損傷伝熱管41のみ切断しない管板側から矢印Yaの方向に引き抜き(図5)、既設の損傷伝熱管41に代わりにワイヤー8を設置する(図6)。
【0019】
次に上記のように設置したワイヤー8をガイドとして用いて、新しい伝熱管42を熱交換器に挿入する方法を図7〜図11及び図12〜図16を用いて説明する。
【0020】
(第一実施例)
先ず、胴内部に縦列に複数個取り付けられたバッフル板6のバッフル穴7のずれが小さい場合は、中空の挿入用治具9を尖端部91から一方の管板2側のワイヤー8に通し(図7、図8)、続いて新しい伝熱管42をワイヤー8に通して(図7、図8)、挿入用治具9の嵌め込み部92に簡易固定する(図8)。挿入用治具9を先頭にして新しい伝熱管42を一方の管板2から挿入して(図9)、新しい伝熱管42を矢印Ybの方向に押圧することにより挿入用治具9の尖端部91がバッフル穴7を順次通過していき(図9)、他方の管板3へ押し出す(図10)。新しい伝熱管42の挿入完了を確認したら、他方の管板3から挿入用治具9を取り出し、続いてワイヤー8を新しい伝熱管42から引き抜く(図11)。
【0021】
(第二実施例)
次に、胴内部に縦列に複数個取り付けられたバッフル板6のバッフル穴7のずれが大きく押圧しても新しい伝熱管42の挿入ができない場合は、中空の挿入用治具9を尖端部91から一方の管板2側のワイヤー8に通して(図12、図13)、ワイヤー8の抜け防止のため挿入用治具9の後方にカシメ10を取り付ける(図13)。続いて新しい伝熱管42を挿入用治具9に通して新しい伝熱管42の先端を挿入用治具9の嵌め込み部92にポンチで打ち込みポンチ固定する(図13)。次に他方の管板3から矢印Ycの方向にワイヤー8を勢いよく引っ張ると(図14)、挿入用治具9の後方に取り付けられたカシメ10が挿入用治具9の嵌め込み部92の後端部に当たり、ワイヤー8に引っ張られた挿入用治具9の尖端部91がバッフル穴7を順次通過していき(図14)、ポンチ固定された新しい伝熱管42が他方の管板3へ引っ張り出される(図15)。新しい伝熱管42の挿入完了を確認したら、挿入用治具9のポンチ固定を外し、他方の管板3からワイヤー8および挿入用治具9を引き抜く(図16)。この場合、新しい伝熱管42の先端を切り込み加工しておくとポンチで打ち込む際に確実にポンチ固定がし易くなり好適である。
【0022】
なお、本発明を実施するにあたり、挿入用治具、ワイヤーの材質はステンレスが好適である。また、カシメの材質はアルミが好適である。
【0023】
以上説明したように、本発明の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法によれば、ワイヤーを新しい伝熱管を挿入する際のガイドとして用いる方法としたので、バッフル板の上下左右のずれが小さい場合は、挿入用治具に簡易固定した新しい伝熱管を押圧することにより、バッフル板の上下左右のずれが大きい場合は、ワイヤー抜け防止のカシメを取付けた挿入用治具に新しい伝熱管をポンチ固定しワイヤーの他端からワイヤーを引っ張ることにより、短時間に且つ新しい伝熱管の外周を傷つけることなく新しい伝熱管を挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法の事前準備段階として既設の損傷伝熱管を切断する説明図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】事前準備段階として切断した損傷伝熱管を引き抜く説明図である。
【図4】事前準備段階として残った既設の損傷伝熱管にワイヤーを通す説明図である。
【図5】事前準備段階として既設の損傷伝熱管のみを引き抜く説明図である。
【図6】事前準備段階として既設の損傷伝熱管に代わりワイヤーを設置した説明図である。
【図7】本発明の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法の第一実施例として新しい伝熱管を挿入用治具に簡易固定する説明図である。
【図8】図7の要部拡大図である。
【図9】第一実施例としてワイヤーに沿って新しい伝熱管を押圧挿入する説明図である。
【図10】第一実施例として新しい伝熱管の押圧挿入完了の説明図である。
【図11】第一実施例としてワイヤーを引き抜き新しい伝熱管の押圧挿入完了した説明図である。
【図12】本発明の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法の第二実施例としてワイヤーに挿入用治具をカシメ固定し、新しい伝熱管を挿入用治具にポンチ固定する説明図である。
【図13】図12の要部拡大図である。
【図14】第二実施例としてワイヤーを引張り新しい伝熱管を引張り挿入する説明図である。
【図15】第二実施例として新しい伝熱管の引張り挿入完了の説明図である。
【図16】第二実施例としてワイヤーを引き抜き新しい伝熱管を引張り挿入完了した説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1:熱交換器
2:一方の管板
3:他方の管板
4:伝熱管
41:既設の損傷伝熱管
42:新しい伝熱管
5:胴
6:バッフル板
7:バッフル板のバッフル穴
8:ワイヤー
9:挿入用治具
91:挿入用治具の尖端部
92:挿入用治具の嵌め込み部
10:カシメ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管内を海水が流れることで胴内部の淡水を冷却する機器冷却水熱交換器であって、海水に含まれる異物や化学反応等により内面が損傷、磨耗する既設の損傷伝熱管を新しい伝熱管に取替えるための伝熱管補修方法において、前記既設の損傷伝熱管を抜取る際、事前にワイヤーを前記既設の損傷伝熱管内に通し、前記既設の損傷伝熱管のみを抜取り、残った前記ワイヤーを新しい伝熱管を挿入する際のガイドとして用いることを特徴とする機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法。
【請求項2】
請求項1記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法において、新しい伝熱管の先端に中空の挿入用治具を簡易固定し、前記ワイヤーの一端から前記中空の挿入用治具を先頭にして新しい伝熱管を挿入し、押圧することにより前記ワイヤーをガイドとして新しい伝熱管を押圧挿入することを特徴とする機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法。
【請求項3】
請求項1記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法において、新しい伝熱管の先端に切込みを入れ、前記ワイヤーの一端から中空の挿入用治具を通し、通した後に抜け防止のためのカシメをワイヤーに取付け、前記切込み加工した新しい伝熱管を前記挿入用治具に通し、切込み部分をポンチで打ち込み前記挿入用治具にポンチ固定し、ワイヤーの他端から前記ワイヤーを引っ張ることにより前記ワイヤーをガイドとして新しい伝熱管を引張挿入することを特徴とする機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法。
【請求項1】
伝熱管内を海水が流れることで胴内部の淡水を冷却する機器冷却水熱交換器であって、海水に含まれる異物や化学反応等により内面が損傷、磨耗する既設の損傷伝熱管を新しい伝熱管に取替えるための伝熱管補修方法において、前記既設の損傷伝熱管を抜取る際、事前にワイヤーを前記既設の損傷伝熱管内に通し、前記既設の損傷伝熱管のみを抜取り、残った前記ワイヤーを新しい伝熱管を挿入する際のガイドとして用いることを特徴とする機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法。
【請求項2】
請求項1記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法において、新しい伝熱管の先端に中空の挿入用治具を簡易固定し、前記ワイヤーの一端から前記中空の挿入用治具を先頭にして新しい伝熱管を挿入し、押圧することにより前記ワイヤーをガイドとして新しい伝熱管を押圧挿入することを特徴とする機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法。
【請求項3】
請求項1記載の機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法において、新しい伝熱管の先端に切込みを入れ、前記ワイヤーの一端から中空の挿入用治具を通し、通した後に抜け防止のためのカシメをワイヤーに取付け、前記切込み加工した新しい伝熱管を前記挿入用治具に通し、切込み部分をポンチで打ち込み前記挿入用治具にポンチ固定し、ワイヤーの他端から前記ワイヤーを引っ張ることにより前記ワイヤーをガイドとして新しい伝熱管を引張挿入することを特徴とする機器冷却水熱交換器の伝熱管補修方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【図11】
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【図14】
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【図16】
【公開番号】特開2008−298359(P2008−298359A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144632(P2007−144632)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(391019658)株式会社中部プラントサービス (28)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(391019658)株式会社中部プラントサービス (28)
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