機械式除細動器
機械式除細動器は、除細動ショックを必要とする被術者の胸部に対して、予め設定された力の機械的衝撃を与えるように構成された衝撃部材を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用除細動器に関する。より詳細には、機械的除細動衝撃を患者の胸部に与えるために、蓄積された機械的エネルギーを使用する携帯用装填型機械式除細動器に関する。
【背景技術】
【0002】
突然心停止(SCA)の主原因の1つは、心臓の電気系が短絡したときに心臓が正常なリズムで血液を送り出さずに痙攣する心室細動(VF)である。血液が効果的に送り出されないため、正常な心調律が数分以内に回復されない場合には深刻な脳障害が発生したり、死に至ることがある。VFには、先天性欠陥、疾患、心臓発作、および環境的条件を含め、多くの原因がある。VFは、高齢者に多発しているが、胸部への激しい打撃により若いスポーツ参加者にも発生する場合がある。心臓振盪として知られるこの現象は、心疾患の既往歴がない若者に起こる。結論としては、VFは、年齢および場所を問わず発生するおそれがある。
【0003】
心臓にショックを与えて正常なリズムにする除細動は、VFを処置する唯一の効果的な方法である。ショックは、電気的な混乱状態を終わらせて、心臓の生来の整調区域が正常な機能を回復して心臓の正常な血液送り出し活動を再開することを可能にする。突然心停止から生還する可能性は、時間の経過と共に低くなる。助かる最良のチャンスを得るためには、除細動ショックを数分以内に与えるべきである。したがって、できるだけ早く除細動ショックを与える素早い対応が非常に重要である。米国心臓協会では、VFを処置する機器がもっと普及していれば米国だけでも年間5万人の命が救われると推定している。除細動器の普及の重要性と必要性は、2000年10月26日に米国議会で可決された「心停止発生時の緊急医療に関する法律」に示されている。同法律は、全ての連邦の公共建築物における自動体外式除細動器(AED)の設置について規定している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
心停止の従来の処置は、患者への強い電気ショックの適用である。電気ショックを生成して与える除細動器がこれまでに知られており、病院および緊急医療施設において長年にわたってその使用に成功している。近年、科学技術の進展により、医療専門家が不在である緊急時に一般の救助者によって使用されるように設計された、電気ショックを与える自動体外式除細動器(AED)が開発されている。しかしながら、これらの装置の価格は依然として高く、公共の場所および民間の施設で広く普及してはいない。さらには、電気ショックを与える除細動器は、電気ショックを生成するに当たっては電力に依存している。電力は、電気出力から供給することができるが、この場合、装置の使用は、このような電源ラインがある場所に限定される。あるいは、携帯型AEDにおいてより一般的であるのは、バッテリを電源とすることである。しかしながら、バッテリの電力は、限られた回数の電気ショックに十分な有限のものであるため、装置を再利用する前に最充電するか、または交換する必要がある。さらに、バッテリは、経時的に劣化し、電力が失われる。したがって、適切に保守されない除細動器は、必要なときに作動しないおそれがある。体外式電気的除細動器に関連したもう1つの主要な欠点は、装置の操作者または患者の近くにいる他の者へ電気ショックを与える危険があることである。したがって、患者への一切の接触を防止するために特別な注意を払うべきである。
【0005】
細動中または停止した心臓にショックを与えて正常なリズムを再開させる別の方法は、機械的ショックによるものである。握りこぶしで胸部中央を1回または2回叩打して心臓を自発的に再開させることができ、心マッサージの必要性が未然に防がれることが知られている。「胸部叩打法」または「心叩打法」として知られているこの方法は、心臓の救急処置の一環として一部の団体によって推奨されている。この方法は救命方法であることが分かっているが、欠点があり、主たる欠点としては、再現可能に叩打の強度を制御することができないことが挙げられる。叩打が強すぎると、身体的危害が発生する恐れがあり、一方、叩打が弱いと効果を生じないおそれがある。したがって、この有用な救命処置の実践を容易にするために、特に、電気式AEDが入手できない場合に、標準化された処置を確立し、かつ、衝撃の力および持続時間が患者に付き添う特定の個人から切り離されたものとなるように、制御された方法で心停止患者の胸骨に予め設定された値の機械的衝撃を与えることを可能にする手段を提供する必要がある。したがって、本発明の目的は、患者の胸部に予め設定された値の機械的衝撃を与える機械式除細動器を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、機械的叩打を与える前に操作者が手動で装填可能な機械式除細動器を提供することである。
本発明の更なる目的は、電源に依存しない、操作が容易で、軽量かつ低コストであり、耐久性及び信頼性に優れた機械式除細動器を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、単純な手動操作によって手動操作で所定のレベルまで装填することができる機械的エネルギー蓄積要素からエネルギーを受け取る機械式除細動器を提供することである。
【0008】
本発明の更なる目的は、緊急時に、最小限の医療訓練を受けた者が操作できる機械式除細動器を提供することである。
本発明の更なる目的は、心室細動(VF)を認識する感知手段と、VFが検出されなかった場合に装置の作動を防止する手段とを有する機械式除細動器を提供することである。
【0009】
本発明の上記および他の目的は、以下の説明から当業者に明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、予め設定された力による制御可能な機械的衝撃を心停止患者の胸部に与えるように構成された機械式除細動器を提供する。衝撃力は、予め設定された固定値または予め設定された調整可能な値とすることができる。除細動器は、患者の胸部上に配置されるように構成されたフレーム上に取り付けられた衝撃部材を備える。本除細動器はさらに、再装填可能なエネルギー蓄積要素をさらに備え、該エネルギー蓄積要素は、衝撃部材に結合されるとともに、衝撃部材がフレームより上方に上昇させられたときに装填され、かつ衝撃部材が解放されたときに解放され、これにより再装填可能な要素から解放されたエネルギーが機械的衝撃に転用されるように構成される。装填可能な要素に充填されたエネルギー量は、衝撃部材が上昇させられる高さに対応する。本機械式除細動器は、再装填可能なエネルギー蓄積要素内に蓄積されたエネルギーを解放して衝撃部材の衝撃エネルギーにするための制御可能な解放機構と、衝撃部材を被術者の胸部よりも上方の制御可能な高さまで制御可能に上昇させるための制御可能な装填機構とをさらに備える。装填機構は、除細動器の操作者によって手動操作されることが好ましい。本装置は、最大180Kgまでの衝撃を与えることができるように制御可能に装填できることが好ましい。本除細動器はさらに、装填レベルを表示する表示器をさらに備えることができる。衝撃部材は、約100〜400gの重量を有し、かつ約20〜50mmの直径を有する円筒形錘であるであることが好ましい。
【0011】
本除細動器には、被術者の心臓の活動を感知する少なくとも1つのセンサーと、心臓の活動を分析して心室細動を検出する分析手段とをさらに備えることができる。本除細動器は、心室細動が検出されない場合には解放を防止する停止手段をさらに備えることができる。
【0012】
本除細動器は、解放機構を手動で駆動する駆動要素をさらに備えることができる。起動要素は、衝撃部材を解放するように構成された解放要素と、解放部材が衝撃要素を解放することを防止するように構成されたストッパ要素と、解放を可能にするためにストッパ要素を解放するように構成されたストッパ解放要素とを備えることができる。本除細動器はさらに、本除細動器が被術者の胸部に適切に押し付けられない場合には解放を防止するように構成された主ストッパを備えることができる。
【0013】
本発明はさらに、除細動ショックを心停止患者に与える方法を提供し、該方法は、衝撃部材を備える機械装置によって、予め設定された力による制御可能な機械的衝撃を患者の胸部に与える工程を含む。
本発明は、図面とともに行われる以下の詳細な説明からより完全に理解かつ認識されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、所定のかつ再現可能な力の機械的衝撃を心停止患者の胸部に与えるように構成された機械式除細動器を提供する。本装置は、患者の胸部上に配置されるように構成されるフレーム上に取り付けられた衝撃部材を備える。衝撃部材は、再装填可能なエネルギー蓄積要素に結合される。エネルギー蓄積要素内に蓄積されたエネルギーを解放する制御可能な手段は、衝撃部材を駆動して所定の力の叩打を患者の胸部に与えることができる。エネルギー蓄積要素は、衝撃を与える前に手動で装填されることが好ましい。本発明の除細動器は、予め設定された固定値の力の衝撃を与えるように設計してもよく、あるいは所定の範囲内で衝撃力の調整を行うことができるように設計してもよい。衝撃力は、好ましくは最大180Kgまでであり、より好ましくは60〜160Kgの範囲、かつ、持続時間が約10〜50msecである。
【0015】
以下の実施形態で示されるように、本発明の除細動器の動力源は、叩打を与える直前に装置の操作者が手動で装填することができる最充填可能な機械的エネルギー蓄積要素であることが好ましい。これによって、本装置に無尽蔵の動力という利点が与えられる。さらに、本装置は、毎回の叩打の前に意図的に装填しなければならないことから、偶発的な叩打の可能性を低減するという利点を有する。さらに、偶発的に与えられる叩打を防止するために、本装置は、幾つかの独立した予備的ストッパと、これに対応する駆動トリガとを備えることができる。駆動トリガは、本装置が適切に患者の胸部上に設置されなかった場合、および/または、患者が除細動ショックを必要とする状態ではない場合に、叩打を与えないことを確実にする。
【0016】
外部エネルギー源から独立しており、かつ、手動で再装填可能であることによって、本装置の可搬性、ならびに、保守および使用の低コストが助長される。本装置は、いかなる場所(家庭および公共の場所)で使用することができ、かつ、応急処置用品の一つとして備え付けることができる。
【0017】
本装置の装填は手動で行われることが好ましいが、本発明は、手動装填機構に限定されるものではなく、装置の装填には他の方法を用い得ることが理解されるであろう。例えば、相対的に低電力小型モータを使用して、本除細動器の機械的エネルギー蓄積要素を所望のレベルまで充填することができる。
【0018】
本発明の機械式除細動器は、また、患者の心臓の活動を感知する感知手段と、除細動ショックが妥当であるか否か判断する上で心室細動の有無を認識するために心臓の活動を分析する計算手段とを備えることができる。心臓の活動の分析は、当技術分野で公知である分析方法に従って行うことができる。本装置にはさらに、患者の心臓の状態が細動状態であるか否かを除細動器の操作者に表示する、LED等の表示器を備えることができる。一回の衝撃を与えた後、感知手段は、再び心臓の活動を測定して、正常な心拍が改めて確立されたか否かを確認することができる。初回のショックで正常なリズムが再開されなかった場合には2回目の叩打を与える場合がある。必要に応じて、本装置にはさらに、心臓の活動分析によって発見されるような、患者の状態がこのようなショックに適応するものではないときに、本装置が機械的ショックを与えることを自動的にできなくする停止手段を備える。感知手段および電子回路に電力を供給するために必要とされる電源を、低電力バッテリとすることができることは理解されるであろう。これに代えて、または、これに加えて、本装置は、電子部品に必要とされる低電力を供給するために手動で装填することができる電力用コンデンサを備えることができる。
【0019】
ここで図面を参照すると、図1乃至図8は、本発明の第1の好適な実施形態による、全体が符号100にて示される機械式除細動器を示す。図1および図2を参照すると、除細動器100は、略平坦な矩形の箱様形状を有しており、本装置の操作者が両手でしっかりと装置を把持できるように2つのハンドル14がその両端から延在する。本装置の寸法は、約220mm×約130mm×約40mmであることが好ましい。除細動器100の上面はフレーム様の頂部カバー12を備え、延在するハンドル14はこれと一体的に形成される。フレーム12内には、相補的形状を有する翼形部22および24を有する2枚折れ内ドア20が取り付けられる。翼形部22は、以下で詳細に説明するように、装置100内に取り付けられた衝撃用錘50の上面に設けられた対応する凹部に挿入されたプラグ51によって、衝撃用錘50と結合される。装填されると、ドア20は、錘50によって押されて、図2に示すように上方に折れ曲がる。翼形部22および24は、錘50が最高位置まで上昇することができるように構成される。実施形態100によれば、翼形部22および24は、装置の動力システムの一部を構成するものではなく、使用しないときに装置の内部構成要素を保護するためにカバーとしての役目をするにすぎないことに注意されたい。
【0020】
装置を手動で装填する回転つまみ16は、頂部カバー12上に設けられる。垂直方向に配向されるように上方に引くことができる引き出しハンドル16aは、つまみ16を回しやすくする。また、除細動器100の頂部には、装填レベルを表示する透明窓17と、患者の心臓の状態を表示する電子ディスプレイ92と、叩打を与えるために装置を駆動する2つの押ボタン42および44とが設けられる。図3を参照すると、除細動器100の底部カバー15は中央開口部19を有し、該開口部19を介して衝撃用錘50が突き出ることができる。また、底面には、2つの電極95(図8に示す)の延在先端部95aを備える。作動時においては、つまみ16を手で回すことによって、窓17越しに見える所望のレベルまで装填を行った後、装置100は、電極95が接触するように患者の胸部上に配置される。電極95によって感知された患者の心臓の状態が除細動ショックに適したものである場合、操作者がハンドル14を握って両手で装置100をしっかりと保持し、装置を患者の胸部に押し付けながら、押ボタン42および44を親指で押すと、衝撃用錘50が解放されて、開口部19を介して機械的叩打が与えられる。
【0021】
図4を参照すると、装置100の内部構造の全体図が示されている。内部構成要素および外カバー部品はすべて、略矩形の筐体10上に取り付けられる。これは、装置を丈夫な構造にし、衝撃用錘50によって与えられる衝撃のショックに耐えることを可能にする。
【0022】
上述した折れドア20の2つの翼形部22および24は、それぞれ、筐体10の対向する壁の間を延びる軸32および34の周りであって、かつ錘50内に挿入固定された共通の2分割軸36の周りに取り付けられる。軸32は、筐体10の対向する壁に対して連結固定され、軸34は、対向する長形スリット13間に摺動可能に取り付けられる。このため、カバー20は、図2に示すように、錘50が装填されるときに軸36の周りにおいて上方に折れ曲がることができる。上述したように、ドア20の翼形部22は、プラグ51によって錘50に結合される。
【0023】
装置100の内部構成要素は、以下のサブシステム、すなわち、トルクばね40によってネズミ捕り式に軸32上に取り付けられた衝撃用錘50を含む動力システム;つまみ16を介して手動でばね40に荷重を印加する、全体が符号55にて示される装填システム;押ボタン42に結合された解放部材60を含む解放システム(図6および図7に最もよく示される);ストッパ部材80と押ボタン44に結合されたストッパ解放部材70;ならびに電子箱90内に収納された電子回路にそれぞれ接続された電極95およびソレノイド96を含む電子システムにグループ化することができる。
【0024】
トルクばね40は、2つのアーム41および43にて終端する、軸32の周りに巻き付けられた数個のループから成るコイル部分を備える。長い方のアーム43は、錘50に連結固定される。第2のアーム41(図7および図8に最も明瞭に示される)は、筐体10に連結固定される。好ましくは、錘50は、耐久性のある硬質プラスチック材料または被覆金属で形成された、径約40mm、高さ約40mm、重量約300gの円筒体である。錘50の底面は若干丸味を帯びており、好ましくは、衝撃を和らげ、患者に傷害を与えないように、軟質薄層で被覆される。ばね40は、好ましくは3mmステンレス鋼ばねであり、アーム43の長さは、好ましくは約50mmである。ばね40の均衡状態は、筐体10の平面に対して約−20°の角度をなし(即ち、20°下方に指向し)、最大に装填されたときの最大角度は、筐体平面より上方で約60〜80°をなすことが好ましい。窓17に位置合わせして可動軸34の一端に取り付けられた指針13は、窓越しに、軸34の移動範囲、つまりはばね40に荷重が印加された程度を表示するものである。
【0025】
図5を参照すると、ばね40に荷重を印加する装填機構55が詳細に示されている。平歯車41および43を介して、つまみ16のウォーム歯車11に軸48が結合される。トルクばね40が巻き付けられた(図4参照)軸32は、別のウォーム・平歯車の組47−45を介して軸48に結合される。したがって、軸の周りにおいてつまみ16を回すことによって、回転運動が軸32に伝達されて、ばね40に荷重を印加する。ウォーム歯車と平歯車からなる2つの組、すなわち、11−41および47−45は、2つに折る力を減少させること、および比較的容易にばね40を手動で高いトルクレベルまで装填しやすくすることを可能にする。また、歯車47−45の構造は、荷重を受けたばね40によって軸32上に及ぼされたトルクを受けて軸32が回転することを防止する。図4に最も明瞭に示されるように、軸48は、枢動軸57を中心として枢着される2つの枢動アーム53の間に取り付けられる。軸48の一端は、旋回中心57を中心とするアーム53の限定された旋回を可能にするように寸法決めされた筐体10の開口部49を通って突出する。歯車47および45間の係合が偶発的に解除されないように、フック状の爪64(図4および図6に最も明確に示される)がアーム53の旋回を防止し、歯車47および45が係合状態に保持される。さらに、一端が筐体10に連結固定された付勢ばね59は、軸48を下方に引っ張ることによって歯車同士を係合状態に保つ。以下で説明するように、解放要素60は、ボタン42を押し下げることによって歯車47および45の係合状態を解除するように構成されるため、ばね40のトルクを受けて自由に回転するように軸32が解放され、ばね内に蓄積されたエネルギーが解放される。
【0026】
図6および図7は、解放機構を示すために外部カバー及び電子部品(ソレノイドおよび電極)が除去された装置100を下方から見た2つの斜視図である。解放機構は、旋回中心61を中心として筐体10の一つの側壁上に枢着された部材60と、旋回中心71を中心として筐体10の前記側壁に対向する側壁上に枢着された部材70と、旋回中心81を中心として筐体10の底面に枢着された部材80とを備える。部材60、70、および80は各々、初期位置と押ボタン42および44を押したときの駆動位置との間で移動するように構成される。部材60、70、および80は、駆動位置に移動されるためにはボタン42および44の両方を同時に押さなければならないように構成される。部材60、70、および80はそれぞれ、付勢ばね65、75、85によって、図6A及び図7Aに示す初期位置に保たれる。上述したように、荷重を印加されたばね40の解放は、軸32と軸48の係合状態を解除することによって行われる。図6を参照すると、軸48は、筐体10の開口部49を通って延びている。開口部49は、図5について上述したように、軸48が回動中心57を中心とする小さな限られた範囲で回動できるように寸法決めされる。旋回中心64’を中心として筐体10に枢着された爪64は、フック62によって軸32と係合した位置に軸48を保持するように構成される。解放部材60の傾斜部69は、部材60がボタン42によって旋回中心61の周りで傾斜したときに、爪64を傾斜させて、その結果、軸48を軸32から図6Bに示す位置に押し離すように構成される。しかしながら、部材80の一端から上方に突出し、かつ、部材80が初期位置にあるときに部材60の水平延長部67の下に位置する垂直延長部83は、部材60が傾動することを防止する。図7を参照すると、部材80の第2の端部には、部材70が初期位置にあるときに部材70のフック様端部77と係合する延長部87が設けられる。図7Bおよび図6Bを参照すると、ボタン44が押されると、部材70のフック77は下方に傾動し、これにより延長部87は、フック77の傾斜面74によって後方に押される。その結果、部材80は、延長部67の下方の位置から停止突出部83を移動させるように傾動する。したがって、ボタン42を同時に押すと解放部材60が自由に移動できるため、軸32と軸48の係合状態を解除する部材60の前端は、ばね40のトルクを受けて軸32を回動させることができる。ボタン42および44が解放されるとすぐに、部材60’、70、および80は、ばね65、75、および85によって初期位置に復帰し、軸48は、ばね59(図5参照)によって軸32との係合位置に復帰することが理解されるであろう。しかしながら、叩打が既に与えられた後においては、動力システムに影響を与えることなく、ボタン42および44を押した状態に保つことができる。
【0027】
図8は、電子区画90内に収容された電子回路(図示せず)にそれぞれ接続された電極95およびソレノイド96を含む装置100の電子部品を示す。電子回路は、患者の心臓の状態を判断するために、特に細動ショックが妥当であるか否かを判断するために、当技術分野で公知の方法に従って、電極95から受信した信号を分析するマイクロプロセッサを備える。電子回路は、分析結果に従ってショックの伝達を有効化/防止する制御手段をさらに含む。ディスプレイ92上には心電図を表示してもよい。これに代えて、またはこれに加えて、分析結果を、装置の操作に関する指示とともにディスプレイ92上に表示してもよい。必要に応じ、またはこれに加えて、電子的説明は、音声指示であってもよい。装置を起動すべきか否かを表示するLED等の表示器をさらに備えていてもよい。上述した機械式解放機構の電子制御は、スイッチ93を介して電子回路に接続されたプルソレノイド96によって行われる。部材60から突出するロッド68は、プランジャ97が拡張位置にあるとき、すなわちソレノイド96に電流が供給されていないときに部材60の傾動を防止するように、かつ、ソレノイド96が電流を受けてプランジャ97を内方に引くときにこのような傾動が可能になるように構成される。したがって、機械式解放要素の駆動は、ソレノイド96に電力が供給されたときにのみ可能である。ソレノイド96への電力供給は、スイッチ93を介して、心電図分析結果に従って電子回路によって制御される。心室細動が認識された場合、ソレノイド96に電力が供給され、ボタン42および44を押し下げて叩打を与えることができる。同時に、スイッチ93は、部材60の延長部94によって押圧される。部材60が初期位置に復帰する前に拡張位置へ解放されることによるプランジャ97の損傷の発生を防止するために、スイッチ93によって示されるように、ソレノイド96は、ボタン42が押し下げられている限り電力供給状態に保たれる。解放機構の電子制御は、患者の心臓の状態が機械的ショックに適切ではないときに機械的ショックを発射することを防止するのみならず、除細動以外の目的で装置が誤用されることを防止する。
【0028】
図9乃至図13は、全体が符号200にて示される本発明の機械式除細動器の第2の実施形態を示す。実施形態200の寸法は、実施形態100と同様である。除細動器200は、装置の様々な構成要素を収納しかつ支持する複数の補強仕切りリブを有する略矩形のフレーム110を備える。枢動アーム114上に支持される2つのハンドル112は、フレーム110の対向する側端上にそれぞれ位置する。枢動アーム114は、図9に示されるように、使用されていないときに保管位置にハンドル112を置くこと、かつ、図13に示されるような垂直姿勢をとるようにハンドル112を上方に回動させることを可能にする。フレーム110は、その前面において、以下で説明するように装置を手動で装填する回転つまみ115と、装置に充填されたエネルギーレベルおよびこれに対応する与えられる衝撃の力を示す、隣接した目盛り117を有する透明目盛窓116とを備える。目盛りにはさらに、操作者が目の前の患者に好適な力を選択しやすいように、子供の像、成人の像等の画像を付すことができる。また、フレーム110の前面にはさらに、操作者がハンドル112を保持して患者の胸部に装置を押し当てながら衝撃を与えるために親指で押し下げられるように構成された、2つのばね付勢式押しボタン118および119が設けられている。実施形態200によれば、装置200の底部に設けられた別の独立したストッパ152(図10参照)は、装置が適切に患者の胸部に押し当てられなければ装置が解放されないようにする。
【0029】
フレーム110の上部開口部内には、相補的な形状を有する2つの翼形部122および124を含む2枚折れ上部カバー120が取り付けられる。翼形部122および124は、先の実施形態100の翼形部22および24と同様に、それぞれ、基端においては共通軸136aおよび136bを中心にヒンジ連結され、かつ、先端においては固定軸132及び可動軸134を中心にヒンジ連結される。軸132は、フレーム110の対向する内壁121に連結固定される。軸134は、(図12および図13に示すように)軸134が固定軸132に向かって内方に摺動するときにカバー120が軸136の周りで外方に折れ曲がることを可能にするように、対向する壁121間に設けられた対向する長形スリット142a、142b上に摺動可能に取り付けられる。カバー120が平坦な姿勢をとるときに、フレーム110の略中央にて、衝撃部材150が、翼形部124の半円延長部125の内面上に連結固定される。部材150は、耐久性がある硬質プラスチック材料または軽量金属で形成された、約40mmの直径を有し、底面が丸味を帯びた円筒体であることが好ましい。翼形部122および124は、部材150により妨げられることなく、最上方位置までのカバー120の折れ曲がりを可能にするように形成される。錘150が突出する開口部135を有するカバープレート130は、フレーム110の底面を閉鎖する。プレート130上には主ストッパ152も設けられる。
【0030】
ここで図11および図12を参照すると、錘150を装填するための装填機構が示されている。実施形態200によれば、装填可能な要素は、図11Aに最も明瞭に示されるように、固定軸132の周りに巻き付けられ、かつ、フレーム110に連結固定された2つの螺旋端部分163a、163b間に配置されたU字形レバー中間部162を含むコイルばね160である。錘150と翼形部122との間には、レバー162の閉端が収容される。軸136周りの折れカバー120は、図12および図13に示されるように、ネズミ捕り式にばね160に荷重を印加する捻り力を発生させることが認識されるであろう。つまみ115を介してばね160に荷重を印加する装填機構は、フレーム110の内側区画170内に収納される。装填機構は、支持リブ171間に回動可能に取り付けられた軸172と、ウォーム部分175を有し、かつアーム176によって軸172に連結された平行シャフト174とを備える。アーム176は、シャフト174と軸172の相対位置を保持するが、軸172を中心とするシャフト174の回動は許容しない。軸172上に取り付けられた傾斜部182は、回転つまみ115を回すと軸172が自らを中心に回転するように、回転つまみ115の内側傾斜部184と常に係合した状態にある。軸172およびシャフト174の係合歯車186および188は、それぞれ軸172およびシャフト174の回転運動の間で連結される。可動軸134から延在し、かつ、シャフト174のウォーム部分175と係合されたライダーバー185は、シャフト174と可動軸134とを連結する。バー185の内面(図示せず)は、シャフト174が回転するにつれてバー185がウォーム175に沿って内方に移動するように、ウォーム175と螺合するようにねじ切りされている。したがって、つまみ115が回されると、軸172が自らを中心として回転し、それによってシャフト174が係合歯車186、188を介して反対方向に回転する。シャフト174がその軸を中心に回転すると、ライダーバー185は、シャフト174に沿って移動し、翼形部122および124が、底部カバー130から離れるように(そして、患者の胸部から離れるように)強制的に外側に折り曲げられて、主ばね160に荷重を印加する。ライダーバー185からカバー120に向けて延在し、かつ、窓116と位置合わせされた指針189(図13に示す)は、窓越しにライダーバー185が移動した範囲、つまりはばね160に荷重が印加された程度を表示する。2つのストッパ192は、シャフト174をライダーバー185に押し付けて、ばねに荷重が印加されたときに、ばね160によってライダーバー上に及ぼされた力を受けてシャフト174が移動しないようにする。主ストッパ152に結合されたストッパ192は、主ストッパ152が押し下げられたときにシャフト174から離れるように回動する。実施形態200はさらに、先の実施形態100の解放機構と同様に構成することができるボタン118および119に結合された、解放要素と、ストッパ要素と、ストッパ解放要素とを含む解放機構(図示せず)を備える。したがって、実施形態200によれば、ボタン118および119の両方、ならびにストッパ152は、シャフト174とライダーバー185の係合状態を解除するためには全てが同時に押されなければならず、その結果、レバー162がばね力を受けて下方に旋回するように解放され、叩打を与えるように衝撃部材150を押す。叩打の終わりに、カバー120は平坦な姿勢を回復し、ライダーバー185は、ウォーム175の遠端の位置に復帰し、装置は再装填可能な状態になる。
【0031】
図14および図15は、全体的が符号300にて示される機械式除細動器の別の実施形態を示す。この実施形態によれば、衝撃部材250は、1つの内壁のスリット222、224およびフレーム210の対向する壁の対向スリット(図示せず)内に摺動可能に取り付けられた4つのアーム212、214、216、および218上に取り付けられる。衝撃部材250の周りにおいてアーム212、214、216、218上に支持されたばね260は、第1の端部262にてフレーム210に、第2の端部264において部材250に連結固定される。アーム212、214、216、218が内方に摺動すると、衝撃部材250は上方に押され(即ち、患者の胸部から離れるように押され)、同時に、ばね260に荷重が印加される。アーム212および214は、ライダーバー(図示せず)によって、シャフト240の逆方向にねじきりされた(mirror)ウォーム部分242および244に結合される。ライダーバーは、これらアームから区画270内へ延びており、先の実施形態200においてライダーバー185がシャフト174に沿って移動するのと同様に、シャフトが自らを中心として回転するときに互いに向かって内方に移動するように構成される。軸230から延在する外部回転ハンドル235は、係合歯車232、234によってシャフト240を回転させるように構成される。シャフト240は、アーム252によって軸230に枢着され、かつ、シャフトがばね260の力を受けて移動することを防止するストッパによって所定の位置に保持される。実施形態100および200に関連して先述した方法と同様に、ばね付勢式トリガ280を押し下げると、シャフト240から離れるようにストッパが回動し、ばねトルクを受けて、患者の胸部に叩打を与えるために衝撃部材250を下方に押すばね260の解放が可能になる。叩打が与えられた後、アーム212、214、216、および218は、元の位置に復帰し、装置が再装填可能な状態になる。
【0032】
当業者であれば、上述した種々の実施形態が本発明を限定する例として挙げたものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態を実施可能であることが理解されるであろう。例えば、本発明の機械式除細動器は、必ずしも力調整機構を含む必要はなく、予め設定された固定値の衝撃を与えるために、予め設定されたエネルギー固定値に至るまで荷重が印加されるように設計することができる。同様に、本装置の装填機構は、衝撃用錘が、上述したような歯車システムによってではなく、牽引運動によって直接上昇させられる、より単純なネズミ捕り式の機構であってもよい。同様に、解放機構は、本装置が患者の胸部に対して押し下げられたときに、衝撃用錘を解放する浮動床であるように設計することができる。また、上記の種々の代替機構、および特定の実施形態に関連して説明した種々の特徴のいずれも、本発明の装置の設計に組み入れ可能であることが理解されるであろう。
(力測定装置)
力測定装置は、特に、水平面での叩打によって印加された力を測定するために製作されたものである。この装置は、典型的な拳による叩打の値を確立し、かつ、本発明の機械式除細動装置による叩打のシミュレーションを行うべく、複数の成人による拳での叩打による力、および荷重が印加されたばねによって装填された錘の衝撃による力を測定するために使用された。該装置は、広範囲にわたるばねパラメータによる広範囲にわたる機械的構成の測定を可能にするように設計した。全体が符号500にて示される装置を図16に示す。装置500は、2つの垂直板502間に取り付けられた水平板501を含む机のような構成を有する。印加された力を測定する歪み計(図示せず)に結合された円形板510(仮想線で示す)は、板501前面の中央部に位置し、柔らかい組織を想定してシリコン層によって覆われる。板501上にはばね取付アセンブリ520が摺動可能に取り付けられ、広範なアーム長さでのばねの測定を可能にしている。アセンブリ520は、支柱515が取り外し可能に取り付けられた水平板521を備える。図16に示す構成においては、錘550に結合された1つのアームと、要素532によって板521に結合された第2のアームとを有する支柱515の周りに、2つのトルクばね530が巻き付けられる。要素532間の距離は、ばねの2つの端部の間の距離に合うように調整することができる。錘550は、調整可能なテンションプーリ540によってステンレス製ケーブル560に連結される。ステンレス製ケーブル560は、シャフト555に巻きつけられてこれに連結される。テンションプーリ540は、2つのテンションプーリ車543と545を備える。プーリ540は、ばね取付アセンブリ520の2つの垂直壁522間に取り付けられた支柱525の高さを調節することによって、必要に応じて調整することができる。シャフト555の一端に設けられた回転ハンドル570によって、錘550を板510よりも上の所望の高さまで上昇させることができる。回転ハンドル570に連結されたラチェット575は、シャフト555がケーブルの張力を受けて反対方向に回転することを防止する。ケーブル560は、錘550の頂部に挿入された引き出しピン534によって錘550に結合される。錘550を解放するために、ケーブル530の自由端は、引っ張りハンドル542によって引き出しピン534まで引っ張られ、その結果、錘550が解放されて板510を打つ。歪み計の読取り値は、較正用錘を板510上に配置することによって予め較正されたオシロスコープ(図示せず)に供給される。装置500は、所望の寸法の制約下で最大約180Kgまでの叩打を与えるように調整することができる種々の構成を発見するために、トルクばねによって装填された錘の様々な構成によって印加された力を測定するために使用した。
【0033】
手を使った心叩打法によって生成された力および衝撃持続時間を試験するために、CPR救急のために訓練された救急救命士(イスラエルMDA団体所属)28名からなるグループを装置500で試験した。被検者の年齢は20歳から45歳である。身長、体重およびBMI(体格指数)を含む身体的パラメータを各被検者について取得した。被検者1人当たりの平均叩打力を得るために、各被検者について板510に対する叩打を3回測定した。全ての結果を表1にまとめた。
【0034】
【表1】
結果の統計的分析から、力の平均値は87.08Kgであった。さらに、統計的分析から、この力の平均値は、試験対象の被検者の身体的なパラメータとは殆ど関係がないものであることが分かった。したがって、本発明の機械式除細動器では、約50〜120Kg、好ましくは、70〜100Kgの衝撃を与えるべきであると推測される。しかしながら、心臓の拍動を回復させるために心停止状態の心臓を刺激するために最も適切な機械的衝撃の最適なパラメータをより適切に確立するために、今後、本発明の装置に関する各種試験が予定されている。
【0035】
本発明が本願で図示しかつ説明したものに限定されるものではないことは、当業者に理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】未装填状態の除細動器を示す、本発明の第1の実施形態による機械式除細動器の斜視図。
【図2】装填状態の除細動器を示す、本発明の第1の実施形態による機械式除細動器の斜視図。
【図3】図1の除細動器を下方からみた斜視図。
【図4】内部構造を示すために頂部カバーが除去された状態の図1の除細動器の上面図。
【図5】本装置の装填機構を示す図1の除細動器の部分図。
【図6A】初期位置にある装填要素を示すために外部カバーおよび電子要素が除去された状態にある、上下が逆さにされた図1の装置の斜視図。
【図6B】駆動位置にある装填要素を示すために外部カバーおよび電子要素が除去された状態にある、上下が逆さにされた図1の装置の斜視図。
【図7A】図6Aの装置を反対側から見た斜視図。
【図7B】図6Bの装置を反対側から見た斜視図。
【図8】図1の装置の電子部品を示す図6Aおよび図6Bと同じ方向から見た斜視図。
【図9】本発明の第2の実施形態による機械式除細動器を上方から見た斜視図。
【図10】本発明の第2の実施形態による機械式除細動器を下方から見た斜視図。
【図11】未装填状態の除細動器を示す、下部カバーが除去された状態にある図9の除細動器の底面図。
【図11A】図9乃至図13の実施形態のトルクばねの分解図。
【図12】装填状態の除細動器を示す、下部カバーが除去された状態にある図9の実施形態を下方から見た斜視図。
【図13】装填状態にある図9の除細動器を上方から見た斜視図。
【図14】本発明の第3の実施形態による除細動器の上面図。
【図15】本発明の第3の実施形態による除細動器を下方から見た斜視図。
【図16A】ばね力測定装置を前方から見た斜視図。
【図16B】ばね力測定装置を後方から見た斜視図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用除細動器に関する。より詳細には、機械的除細動衝撃を患者の胸部に与えるために、蓄積された機械的エネルギーを使用する携帯用装填型機械式除細動器に関する。
【背景技術】
【0002】
突然心停止(SCA)の主原因の1つは、心臓の電気系が短絡したときに心臓が正常なリズムで血液を送り出さずに痙攣する心室細動(VF)である。血液が効果的に送り出されないため、正常な心調律が数分以内に回復されない場合には深刻な脳障害が発生したり、死に至ることがある。VFには、先天性欠陥、疾患、心臓発作、および環境的条件を含め、多くの原因がある。VFは、高齢者に多発しているが、胸部への激しい打撃により若いスポーツ参加者にも発生する場合がある。心臓振盪として知られるこの現象は、心疾患の既往歴がない若者に起こる。結論としては、VFは、年齢および場所を問わず発生するおそれがある。
【0003】
心臓にショックを与えて正常なリズムにする除細動は、VFを処置する唯一の効果的な方法である。ショックは、電気的な混乱状態を終わらせて、心臓の生来の整調区域が正常な機能を回復して心臓の正常な血液送り出し活動を再開することを可能にする。突然心停止から生還する可能性は、時間の経過と共に低くなる。助かる最良のチャンスを得るためには、除細動ショックを数分以内に与えるべきである。したがって、できるだけ早く除細動ショックを与える素早い対応が非常に重要である。米国心臓協会では、VFを処置する機器がもっと普及していれば米国だけでも年間5万人の命が救われると推定している。除細動器の普及の重要性と必要性は、2000年10月26日に米国議会で可決された「心停止発生時の緊急医療に関する法律」に示されている。同法律は、全ての連邦の公共建築物における自動体外式除細動器(AED)の設置について規定している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
心停止の従来の処置は、患者への強い電気ショックの適用である。電気ショックを生成して与える除細動器がこれまでに知られており、病院および緊急医療施設において長年にわたってその使用に成功している。近年、科学技術の進展により、医療専門家が不在である緊急時に一般の救助者によって使用されるように設計された、電気ショックを与える自動体外式除細動器(AED)が開発されている。しかしながら、これらの装置の価格は依然として高く、公共の場所および民間の施設で広く普及してはいない。さらには、電気ショックを与える除細動器は、電気ショックを生成するに当たっては電力に依存している。電力は、電気出力から供給することができるが、この場合、装置の使用は、このような電源ラインがある場所に限定される。あるいは、携帯型AEDにおいてより一般的であるのは、バッテリを電源とすることである。しかしながら、バッテリの電力は、限られた回数の電気ショックに十分な有限のものであるため、装置を再利用する前に最充電するか、または交換する必要がある。さらに、バッテリは、経時的に劣化し、電力が失われる。したがって、適切に保守されない除細動器は、必要なときに作動しないおそれがある。体外式電気的除細動器に関連したもう1つの主要な欠点は、装置の操作者または患者の近くにいる他の者へ電気ショックを与える危険があることである。したがって、患者への一切の接触を防止するために特別な注意を払うべきである。
【0005】
細動中または停止した心臓にショックを与えて正常なリズムを再開させる別の方法は、機械的ショックによるものである。握りこぶしで胸部中央を1回または2回叩打して心臓を自発的に再開させることができ、心マッサージの必要性が未然に防がれることが知られている。「胸部叩打法」または「心叩打法」として知られているこの方法は、心臓の救急処置の一環として一部の団体によって推奨されている。この方法は救命方法であることが分かっているが、欠点があり、主たる欠点としては、再現可能に叩打の強度を制御することができないことが挙げられる。叩打が強すぎると、身体的危害が発生する恐れがあり、一方、叩打が弱いと効果を生じないおそれがある。したがって、この有用な救命処置の実践を容易にするために、特に、電気式AEDが入手できない場合に、標準化された処置を確立し、かつ、衝撃の力および持続時間が患者に付き添う特定の個人から切り離されたものとなるように、制御された方法で心停止患者の胸骨に予め設定された値の機械的衝撃を与えることを可能にする手段を提供する必要がある。したがって、本発明の目的は、患者の胸部に予め設定された値の機械的衝撃を与える機械式除細動器を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、機械的叩打を与える前に操作者が手動で装填可能な機械式除細動器を提供することである。
本発明の更なる目的は、電源に依存しない、操作が容易で、軽量かつ低コストであり、耐久性及び信頼性に優れた機械式除細動器を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、単純な手動操作によって手動操作で所定のレベルまで装填することができる機械的エネルギー蓄積要素からエネルギーを受け取る機械式除細動器を提供することである。
【0008】
本発明の更なる目的は、緊急時に、最小限の医療訓練を受けた者が操作できる機械式除細動器を提供することである。
本発明の更なる目的は、心室細動(VF)を認識する感知手段と、VFが検出されなかった場合に装置の作動を防止する手段とを有する機械式除細動器を提供することである。
【0009】
本発明の上記および他の目的は、以下の説明から当業者に明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、予め設定された力による制御可能な機械的衝撃を心停止患者の胸部に与えるように構成された機械式除細動器を提供する。衝撃力は、予め設定された固定値または予め設定された調整可能な値とすることができる。除細動器は、患者の胸部上に配置されるように構成されたフレーム上に取り付けられた衝撃部材を備える。本除細動器はさらに、再装填可能なエネルギー蓄積要素をさらに備え、該エネルギー蓄積要素は、衝撃部材に結合されるとともに、衝撃部材がフレームより上方に上昇させられたときに装填され、かつ衝撃部材が解放されたときに解放され、これにより再装填可能な要素から解放されたエネルギーが機械的衝撃に転用されるように構成される。装填可能な要素に充填されたエネルギー量は、衝撃部材が上昇させられる高さに対応する。本機械式除細動器は、再装填可能なエネルギー蓄積要素内に蓄積されたエネルギーを解放して衝撃部材の衝撃エネルギーにするための制御可能な解放機構と、衝撃部材を被術者の胸部よりも上方の制御可能な高さまで制御可能に上昇させるための制御可能な装填機構とをさらに備える。装填機構は、除細動器の操作者によって手動操作されることが好ましい。本装置は、最大180Kgまでの衝撃を与えることができるように制御可能に装填できることが好ましい。本除細動器はさらに、装填レベルを表示する表示器をさらに備えることができる。衝撃部材は、約100〜400gの重量を有し、かつ約20〜50mmの直径を有する円筒形錘であるであることが好ましい。
【0011】
本除細動器には、被術者の心臓の活動を感知する少なくとも1つのセンサーと、心臓の活動を分析して心室細動を検出する分析手段とをさらに備えることができる。本除細動器は、心室細動が検出されない場合には解放を防止する停止手段をさらに備えることができる。
【0012】
本除細動器は、解放機構を手動で駆動する駆動要素をさらに備えることができる。起動要素は、衝撃部材を解放するように構成された解放要素と、解放部材が衝撃要素を解放することを防止するように構成されたストッパ要素と、解放を可能にするためにストッパ要素を解放するように構成されたストッパ解放要素とを備えることができる。本除細動器はさらに、本除細動器が被術者の胸部に適切に押し付けられない場合には解放を防止するように構成された主ストッパを備えることができる。
【0013】
本発明はさらに、除細動ショックを心停止患者に与える方法を提供し、該方法は、衝撃部材を備える機械装置によって、予め設定された力による制御可能な機械的衝撃を患者の胸部に与える工程を含む。
本発明は、図面とともに行われる以下の詳細な説明からより完全に理解かつ認識されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、所定のかつ再現可能な力の機械的衝撃を心停止患者の胸部に与えるように構成された機械式除細動器を提供する。本装置は、患者の胸部上に配置されるように構成されるフレーム上に取り付けられた衝撃部材を備える。衝撃部材は、再装填可能なエネルギー蓄積要素に結合される。エネルギー蓄積要素内に蓄積されたエネルギーを解放する制御可能な手段は、衝撃部材を駆動して所定の力の叩打を患者の胸部に与えることができる。エネルギー蓄積要素は、衝撃を与える前に手動で装填されることが好ましい。本発明の除細動器は、予め設定された固定値の力の衝撃を与えるように設計してもよく、あるいは所定の範囲内で衝撃力の調整を行うことができるように設計してもよい。衝撃力は、好ましくは最大180Kgまでであり、より好ましくは60〜160Kgの範囲、かつ、持続時間が約10〜50msecである。
【0015】
以下の実施形態で示されるように、本発明の除細動器の動力源は、叩打を与える直前に装置の操作者が手動で装填することができる最充填可能な機械的エネルギー蓄積要素であることが好ましい。これによって、本装置に無尽蔵の動力という利点が与えられる。さらに、本装置は、毎回の叩打の前に意図的に装填しなければならないことから、偶発的な叩打の可能性を低減するという利点を有する。さらに、偶発的に与えられる叩打を防止するために、本装置は、幾つかの独立した予備的ストッパと、これに対応する駆動トリガとを備えることができる。駆動トリガは、本装置が適切に患者の胸部上に設置されなかった場合、および/または、患者が除細動ショックを必要とする状態ではない場合に、叩打を与えないことを確実にする。
【0016】
外部エネルギー源から独立しており、かつ、手動で再装填可能であることによって、本装置の可搬性、ならびに、保守および使用の低コストが助長される。本装置は、いかなる場所(家庭および公共の場所)で使用することができ、かつ、応急処置用品の一つとして備え付けることができる。
【0017】
本装置の装填は手動で行われることが好ましいが、本発明は、手動装填機構に限定されるものではなく、装置の装填には他の方法を用い得ることが理解されるであろう。例えば、相対的に低電力小型モータを使用して、本除細動器の機械的エネルギー蓄積要素を所望のレベルまで充填することができる。
【0018】
本発明の機械式除細動器は、また、患者の心臓の活動を感知する感知手段と、除細動ショックが妥当であるか否か判断する上で心室細動の有無を認識するために心臓の活動を分析する計算手段とを備えることができる。心臓の活動の分析は、当技術分野で公知である分析方法に従って行うことができる。本装置にはさらに、患者の心臓の状態が細動状態であるか否かを除細動器の操作者に表示する、LED等の表示器を備えることができる。一回の衝撃を与えた後、感知手段は、再び心臓の活動を測定して、正常な心拍が改めて確立されたか否かを確認することができる。初回のショックで正常なリズムが再開されなかった場合には2回目の叩打を与える場合がある。必要に応じて、本装置にはさらに、心臓の活動分析によって発見されるような、患者の状態がこのようなショックに適応するものではないときに、本装置が機械的ショックを与えることを自動的にできなくする停止手段を備える。感知手段および電子回路に電力を供給するために必要とされる電源を、低電力バッテリとすることができることは理解されるであろう。これに代えて、または、これに加えて、本装置は、電子部品に必要とされる低電力を供給するために手動で装填することができる電力用コンデンサを備えることができる。
【0019】
ここで図面を参照すると、図1乃至図8は、本発明の第1の好適な実施形態による、全体が符号100にて示される機械式除細動器を示す。図1および図2を参照すると、除細動器100は、略平坦な矩形の箱様形状を有しており、本装置の操作者が両手でしっかりと装置を把持できるように2つのハンドル14がその両端から延在する。本装置の寸法は、約220mm×約130mm×約40mmであることが好ましい。除細動器100の上面はフレーム様の頂部カバー12を備え、延在するハンドル14はこれと一体的に形成される。フレーム12内には、相補的形状を有する翼形部22および24を有する2枚折れ内ドア20が取り付けられる。翼形部22は、以下で詳細に説明するように、装置100内に取り付けられた衝撃用錘50の上面に設けられた対応する凹部に挿入されたプラグ51によって、衝撃用錘50と結合される。装填されると、ドア20は、錘50によって押されて、図2に示すように上方に折れ曲がる。翼形部22および24は、錘50が最高位置まで上昇することができるように構成される。実施形態100によれば、翼形部22および24は、装置の動力システムの一部を構成するものではなく、使用しないときに装置の内部構成要素を保護するためにカバーとしての役目をするにすぎないことに注意されたい。
【0020】
装置を手動で装填する回転つまみ16は、頂部カバー12上に設けられる。垂直方向に配向されるように上方に引くことができる引き出しハンドル16aは、つまみ16を回しやすくする。また、除細動器100の頂部には、装填レベルを表示する透明窓17と、患者の心臓の状態を表示する電子ディスプレイ92と、叩打を与えるために装置を駆動する2つの押ボタン42および44とが設けられる。図3を参照すると、除細動器100の底部カバー15は中央開口部19を有し、該開口部19を介して衝撃用錘50が突き出ることができる。また、底面には、2つの電極95(図8に示す)の延在先端部95aを備える。作動時においては、つまみ16を手で回すことによって、窓17越しに見える所望のレベルまで装填を行った後、装置100は、電極95が接触するように患者の胸部上に配置される。電極95によって感知された患者の心臓の状態が除細動ショックに適したものである場合、操作者がハンドル14を握って両手で装置100をしっかりと保持し、装置を患者の胸部に押し付けながら、押ボタン42および44を親指で押すと、衝撃用錘50が解放されて、開口部19を介して機械的叩打が与えられる。
【0021】
図4を参照すると、装置100の内部構造の全体図が示されている。内部構成要素および外カバー部品はすべて、略矩形の筐体10上に取り付けられる。これは、装置を丈夫な構造にし、衝撃用錘50によって与えられる衝撃のショックに耐えることを可能にする。
【0022】
上述した折れドア20の2つの翼形部22および24は、それぞれ、筐体10の対向する壁の間を延びる軸32および34の周りであって、かつ錘50内に挿入固定された共通の2分割軸36の周りに取り付けられる。軸32は、筐体10の対向する壁に対して連結固定され、軸34は、対向する長形スリット13間に摺動可能に取り付けられる。このため、カバー20は、図2に示すように、錘50が装填されるときに軸36の周りにおいて上方に折れ曲がることができる。上述したように、ドア20の翼形部22は、プラグ51によって錘50に結合される。
【0023】
装置100の内部構成要素は、以下のサブシステム、すなわち、トルクばね40によってネズミ捕り式に軸32上に取り付けられた衝撃用錘50を含む動力システム;つまみ16を介して手動でばね40に荷重を印加する、全体が符号55にて示される装填システム;押ボタン42に結合された解放部材60を含む解放システム(図6および図7に最もよく示される);ストッパ部材80と押ボタン44に結合されたストッパ解放部材70;ならびに電子箱90内に収納された電子回路にそれぞれ接続された電極95およびソレノイド96を含む電子システムにグループ化することができる。
【0024】
トルクばね40は、2つのアーム41および43にて終端する、軸32の周りに巻き付けられた数個のループから成るコイル部分を備える。長い方のアーム43は、錘50に連結固定される。第2のアーム41(図7および図8に最も明瞭に示される)は、筐体10に連結固定される。好ましくは、錘50は、耐久性のある硬質プラスチック材料または被覆金属で形成された、径約40mm、高さ約40mm、重量約300gの円筒体である。錘50の底面は若干丸味を帯びており、好ましくは、衝撃を和らげ、患者に傷害を与えないように、軟質薄層で被覆される。ばね40は、好ましくは3mmステンレス鋼ばねであり、アーム43の長さは、好ましくは約50mmである。ばね40の均衡状態は、筐体10の平面に対して約−20°の角度をなし(即ち、20°下方に指向し)、最大に装填されたときの最大角度は、筐体平面より上方で約60〜80°をなすことが好ましい。窓17に位置合わせして可動軸34の一端に取り付けられた指針13は、窓越しに、軸34の移動範囲、つまりはばね40に荷重が印加された程度を表示するものである。
【0025】
図5を参照すると、ばね40に荷重を印加する装填機構55が詳細に示されている。平歯車41および43を介して、つまみ16のウォーム歯車11に軸48が結合される。トルクばね40が巻き付けられた(図4参照)軸32は、別のウォーム・平歯車の組47−45を介して軸48に結合される。したがって、軸の周りにおいてつまみ16を回すことによって、回転運動が軸32に伝達されて、ばね40に荷重を印加する。ウォーム歯車と平歯車からなる2つの組、すなわち、11−41および47−45は、2つに折る力を減少させること、および比較的容易にばね40を手動で高いトルクレベルまで装填しやすくすることを可能にする。また、歯車47−45の構造は、荷重を受けたばね40によって軸32上に及ぼされたトルクを受けて軸32が回転することを防止する。図4に最も明瞭に示されるように、軸48は、枢動軸57を中心として枢着される2つの枢動アーム53の間に取り付けられる。軸48の一端は、旋回中心57を中心とするアーム53の限定された旋回を可能にするように寸法決めされた筐体10の開口部49を通って突出する。歯車47および45間の係合が偶発的に解除されないように、フック状の爪64(図4および図6に最も明確に示される)がアーム53の旋回を防止し、歯車47および45が係合状態に保持される。さらに、一端が筐体10に連結固定された付勢ばね59は、軸48を下方に引っ張ることによって歯車同士を係合状態に保つ。以下で説明するように、解放要素60は、ボタン42を押し下げることによって歯車47および45の係合状態を解除するように構成されるため、ばね40のトルクを受けて自由に回転するように軸32が解放され、ばね内に蓄積されたエネルギーが解放される。
【0026】
図6および図7は、解放機構を示すために外部カバー及び電子部品(ソレノイドおよび電極)が除去された装置100を下方から見た2つの斜視図である。解放機構は、旋回中心61を中心として筐体10の一つの側壁上に枢着された部材60と、旋回中心71を中心として筐体10の前記側壁に対向する側壁上に枢着された部材70と、旋回中心81を中心として筐体10の底面に枢着された部材80とを備える。部材60、70、および80は各々、初期位置と押ボタン42および44を押したときの駆動位置との間で移動するように構成される。部材60、70、および80は、駆動位置に移動されるためにはボタン42および44の両方を同時に押さなければならないように構成される。部材60、70、および80はそれぞれ、付勢ばね65、75、85によって、図6A及び図7Aに示す初期位置に保たれる。上述したように、荷重を印加されたばね40の解放は、軸32と軸48の係合状態を解除することによって行われる。図6を参照すると、軸48は、筐体10の開口部49を通って延びている。開口部49は、図5について上述したように、軸48が回動中心57を中心とする小さな限られた範囲で回動できるように寸法決めされる。旋回中心64’を中心として筐体10に枢着された爪64は、フック62によって軸32と係合した位置に軸48を保持するように構成される。解放部材60の傾斜部69は、部材60がボタン42によって旋回中心61の周りで傾斜したときに、爪64を傾斜させて、その結果、軸48を軸32から図6Bに示す位置に押し離すように構成される。しかしながら、部材80の一端から上方に突出し、かつ、部材80が初期位置にあるときに部材60の水平延長部67の下に位置する垂直延長部83は、部材60が傾動することを防止する。図7を参照すると、部材80の第2の端部には、部材70が初期位置にあるときに部材70のフック様端部77と係合する延長部87が設けられる。図7Bおよび図6Bを参照すると、ボタン44が押されると、部材70のフック77は下方に傾動し、これにより延長部87は、フック77の傾斜面74によって後方に押される。その結果、部材80は、延長部67の下方の位置から停止突出部83を移動させるように傾動する。したがって、ボタン42を同時に押すと解放部材60が自由に移動できるため、軸32と軸48の係合状態を解除する部材60の前端は、ばね40のトルクを受けて軸32を回動させることができる。ボタン42および44が解放されるとすぐに、部材60’、70、および80は、ばね65、75、および85によって初期位置に復帰し、軸48は、ばね59(図5参照)によって軸32との係合位置に復帰することが理解されるであろう。しかしながら、叩打が既に与えられた後においては、動力システムに影響を与えることなく、ボタン42および44を押した状態に保つことができる。
【0027】
図8は、電子区画90内に収容された電子回路(図示せず)にそれぞれ接続された電極95およびソレノイド96を含む装置100の電子部品を示す。電子回路は、患者の心臓の状態を判断するために、特に細動ショックが妥当であるか否かを判断するために、当技術分野で公知の方法に従って、電極95から受信した信号を分析するマイクロプロセッサを備える。電子回路は、分析結果に従ってショックの伝達を有効化/防止する制御手段をさらに含む。ディスプレイ92上には心電図を表示してもよい。これに代えて、またはこれに加えて、分析結果を、装置の操作に関する指示とともにディスプレイ92上に表示してもよい。必要に応じ、またはこれに加えて、電子的説明は、音声指示であってもよい。装置を起動すべきか否かを表示するLED等の表示器をさらに備えていてもよい。上述した機械式解放機構の電子制御は、スイッチ93を介して電子回路に接続されたプルソレノイド96によって行われる。部材60から突出するロッド68は、プランジャ97が拡張位置にあるとき、すなわちソレノイド96に電流が供給されていないときに部材60の傾動を防止するように、かつ、ソレノイド96が電流を受けてプランジャ97を内方に引くときにこのような傾動が可能になるように構成される。したがって、機械式解放要素の駆動は、ソレノイド96に電力が供給されたときにのみ可能である。ソレノイド96への電力供給は、スイッチ93を介して、心電図分析結果に従って電子回路によって制御される。心室細動が認識された場合、ソレノイド96に電力が供給され、ボタン42および44を押し下げて叩打を与えることができる。同時に、スイッチ93は、部材60の延長部94によって押圧される。部材60が初期位置に復帰する前に拡張位置へ解放されることによるプランジャ97の損傷の発生を防止するために、スイッチ93によって示されるように、ソレノイド96は、ボタン42が押し下げられている限り電力供給状態に保たれる。解放機構の電子制御は、患者の心臓の状態が機械的ショックに適切ではないときに機械的ショックを発射することを防止するのみならず、除細動以外の目的で装置が誤用されることを防止する。
【0028】
図9乃至図13は、全体が符号200にて示される本発明の機械式除細動器の第2の実施形態を示す。実施形態200の寸法は、実施形態100と同様である。除細動器200は、装置の様々な構成要素を収納しかつ支持する複数の補強仕切りリブを有する略矩形のフレーム110を備える。枢動アーム114上に支持される2つのハンドル112は、フレーム110の対向する側端上にそれぞれ位置する。枢動アーム114は、図9に示されるように、使用されていないときに保管位置にハンドル112を置くこと、かつ、図13に示されるような垂直姿勢をとるようにハンドル112を上方に回動させることを可能にする。フレーム110は、その前面において、以下で説明するように装置を手動で装填する回転つまみ115と、装置に充填されたエネルギーレベルおよびこれに対応する与えられる衝撃の力を示す、隣接した目盛り117を有する透明目盛窓116とを備える。目盛りにはさらに、操作者が目の前の患者に好適な力を選択しやすいように、子供の像、成人の像等の画像を付すことができる。また、フレーム110の前面にはさらに、操作者がハンドル112を保持して患者の胸部に装置を押し当てながら衝撃を与えるために親指で押し下げられるように構成された、2つのばね付勢式押しボタン118および119が設けられている。実施形態200によれば、装置200の底部に設けられた別の独立したストッパ152(図10参照)は、装置が適切に患者の胸部に押し当てられなければ装置が解放されないようにする。
【0029】
フレーム110の上部開口部内には、相補的な形状を有する2つの翼形部122および124を含む2枚折れ上部カバー120が取り付けられる。翼形部122および124は、先の実施形態100の翼形部22および24と同様に、それぞれ、基端においては共通軸136aおよび136bを中心にヒンジ連結され、かつ、先端においては固定軸132及び可動軸134を中心にヒンジ連結される。軸132は、フレーム110の対向する内壁121に連結固定される。軸134は、(図12および図13に示すように)軸134が固定軸132に向かって内方に摺動するときにカバー120が軸136の周りで外方に折れ曲がることを可能にするように、対向する壁121間に設けられた対向する長形スリット142a、142b上に摺動可能に取り付けられる。カバー120が平坦な姿勢をとるときに、フレーム110の略中央にて、衝撃部材150が、翼形部124の半円延長部125の内面上に連結固定される。部材150は、耐久性がある硬質プラスチック材料または軽量金属で形成された、約40mmの直径を有し、底面が丸味を帯びた円筒体であることが好ましい。翼形部122および124は、部材150により妨げられることなく、最上方位置までのカバー120の折れ曲がりを可能にするように形成される。錘150が突出する開口部135を有するカバープレート130は、フレーム110の底面を閉鎖する。プレート130上には主ストッパ152も設けられる。
【0030】
ここで図11および図12を参照すると、錘150を装填するための装填機構が示されている。実施形態200によれば、装填可能な要素は、図11Aに最も明瞭に示されるように、固定軸132の周りに巻き付けられ、かつ、フレーム110に連結固定された2つの螺旋端部分163a、163b間に配置されたU字形レバー中間部162を含むコイルばね160である。錘150と翼形部122との間には、レバー162の閉端が収容される。軸136周りの折れカバー120は、図12および図13に示されるように、ネズミ捕り式にばね160に荷重を印加する捻り力を発生させることが認識されるであろう。つまみ115を介してばね160に荷重を印加する装填機構は、フレーム110の内側区画170内に収納される。装填機構は、支持リブ171間に回動可能に取り付けられた軸172と、ウォーム部分175を有し、かつアーム176によって軸172に連結された平行シャフト174とを備える。アーム176は、シャフト174と軸172の相対位置を保持するが、軸172を中心とするシャフト174の回動は許容しない。軸172上に取り付けられた傾斜部182は、回転つまみ115を回すと軸172が自らを中心に回転するように、回転つまみ115の内側傾斜部184と常に係合した状態にある。軸172およびシャフト174の係合歯車186および188は、それぞれ軸172およびシャフト174の回転運動の間で連結される。可動軸134から延在し、かつ、シャフト174のウォーム部分175と係合されたライダーバー185は、シャフト174と可動軸134とを連結する。バー185の内面(図示せず)は、シャフト174が回転するにつれてバー185がウォーム175に沿って内方に移動するように、ウォーム175と螺合するようにねじ切りされている。したがって、つまみ115が回されると、軸172が自らを中心として回転し、それによってシャフト174が係合歯車186、188を介して反対方向に回転する。シャフト174がその軸を中心に回転すると、ライダーバー185は、シャフト174に沿って移動し、翼形部122および124が、底部カバー130から離れるように(そして、患者の胸部から離れるように)強制的に外側に折り曲げられて、主ばね160に荷重を印加する。ライダーバー185からカバー120に向けて延在し、かつ、窓116と位置合わせされた指針189(図13に示す)は、窓越しにライダーバー185が移動した範囲、つまりはばね160に荷重が印加された程度を表示する。2つのストッパ192は、シャフト174をライダーバー185に押し付けて、ばねに荷重が印加されたときに、ばね160によってライダーバー上に及ぼされた力を受けてシャフト174が移動しないようにする。主ストッパ152に結合されたストッパ192は、主ストッパ152が押し下げられたときにシャフト174から離れるように回動する。実施形態200はさらに、先の実施形態100の解放機構と同様に構成することができるボタン118および119に結合された、解放要素と、ストッパ要素と、ストッパ解放要素とを含む解放機構(図示せず)を備える。したがって、実施形態200によれば、ボタン118および119の両方、ならびにストッパ152は、シャフト174とライダーバー185の係合状態を解除するためには全てが同時に押されなければならず、その結果、レバー162がばね力を受けて下方に旋回するように解放され、叩打を与えるように衝撃部材150を押す。叩打の終わりに、カバー120は平坦な姿勢を回復し、ライダーバー185は、ウォーム175の遠端の位置に復帰し、装置は再装填可能な状態になる。
【0031】
図14および図15は、全体的が符号300にて示される機械式除細動器の別の実施形態を示す。この実施形態によれば、衝撃部材250は、1つの内壁のスリット222、224およびフレーム210の対向する壁の対向スリット(図示せず)内に摺動可能に取り付けられた4つのアーム212、214、216、および218上に取り付けられる。衝撃部材250の周りにおいてアーム212、214、216、218上に支持されたばね260は、第1の端部262にてフレーム210に、第2の端部264において部材250に連結固定される。アーム212、214、216、218が内方に摺動すると、衝撃部材250は上方に押され(即ち、患者の胸部から離れるように押され)、同時に、ばね260に荷重が印加される。アーム212および214は、ライダーバー(図示せず)によって、シャフト240の逆方向にねじきりされた(mirror)ウォーム部分242および244に結合される。ライダーバーは、これらアームから区画270内へ延びており、先の実施形態200においてライダーバー185がシャフト174に沿って移動するのと同様に、シャフトが自らを中心として回転するときに互いに向かって内方に移動するように構成される。軸230から延在する外部回転ハンドル235は、係合歯車232、234によってシャフト240を回転させるように構成される。シャフト240は、アーム252によって軸230に枢着され、かつ、シャフトがばね260の力を受けて移動することを防止するストッパによって所定の位置に保持される。実施形態100および200に関連して先述した方法と同様に、ばね付勢式トリガ280を押し下げると、シャフト240から離れるようにストッパが回動し、ばねトルクを受けて、患者の胸部に叩打を与えるために衝撃部材250を下方に押すばね260の解放が可能になる。叩打が与えられた後、アーム212、214、216、および218は、元の位置に復帰し、装置が再装填可能な状態になる。
【0032】
当業者であれば、上述した種々の実施形態が本発明を限定する例として挙げたものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態を実施可能であることが理解されるであろう。例えば、本発明の機械式除細動器は、必ずしも力調整機構を含む必要はなく、予め設定された固定値の衝撃を与えるために、予め設定されたエネルギー固定値に至るまで荷重が印加されるように設計することができる。同様に、本装置の装填機構は、衝撃用錘が、上述したような歯車システムによってではなく、牽引運動によって直接上昇させられる、より単純なネズミ捕り式の機構であってもよい。同様に、解放機構は、本装置が患者の胸部に対して押し下げられたときに、衝撃用錘を解放する浮動床であるように設計することができる。また、上記の種々の代替機構、および特定の実施形態に関連して説明した種々の特徴のいずれも、本発明の装置の設計に組み入れ可能であることが理解されるであろう。
(力測定装置)
力測定装置は、特に、水平面での叩打によって印加された力を測定するために製作されたものである。この装置は、典型的な拳による叩打の値を確立し、かつ、本発明の機械式除細動装置による叩打のシミュレーションを行うべく、複数の成人による拳での叩打による力、および荷重が印加されたばねによって装填された錘の衝撃による力を測定するために使用された。該装置は、広範囲にわたるばねパラメータによる広範囲にわたる機械的構成の測定を可能にするように設計した。全体が符号500にて示される装置を図16に示す。装置500は、2つの垂直板502間に取り付けられた水平板501を含む机のような構成を有する。印加された力を測定する歪み計(図示せず)に結合された円形板510(仮想線で示す)は、板501前面の中央部に位置し、柔らかい組織を想定してシリコン層によって覆われる。板501上にはばね取付アセンブリ520が摺動可能に取り付けられ、広範なアーム長さでのばねの測定を可能にしている。アセンブリ520は、支柱515が取り外し可能に取り付けられた水平板521を備える。図16に示す構成においては、錘550に結合された1つのアームと、要素532によって板521に結合された第2のアームとを有する支柱515の周りに、2つのトルクばね530が巻き付けられる。要素532間の距離は、ばねの2つの端部の間の距離に合うように調整することができる。錘550は、調整可能なテンションプーリ540によってステンレス製ケーブル560に連結される。ステンレス製ケーブル560は、シャフト555に巻きつけられてこれに連結される。テンションプーリ540は、2つのテンションプーリ車543と545を備える。プーリ540は、ばね取付アセンブリ520の2つの垂直壁522間に取り付けられた支柱525の高さを調節することによって、必要に応じて調整することができる。シャフト555の一端に設けられた回転ハンドル570によって、錘550を板510よりも上の所望の高さまで上昇させることができる。回転ハンドル570に連結されたラチェット575は、シャフト555がケーブルの張力を受けて反対方向に回転することを防止する。ケーブル560は、錘550の頂部に挿入された引き出しピン534によって錘550に結合される。錘550を解放するために、ケーブル530の自由端は、引っ張りハンドル542によって引き出しピン534まで引っ張られ、その結果、錘550が解放されて板510を打つ。歪み計の読取り値は、較正用錘を板510上に配置することによって予め較正されたオシロスコープ(図示せず)に供給される。装置500は、所望の寸法の制約下で最大約180Kgまでの叩打を与えるように調整することができる種々の構成を発見するために、トルクばねによって装填された錘の様々な構成によって印加された力を測定するために使用した。
【0033】
手を使った心叩打法によって生成された力および衝撃持続時間を試験するために、CPR救急のために訓練された救急救命士(イスラエルMDA団体所属)28名からなるグループを装置500で試験した。被検者の年齢は20歳から45歳である。身長、体重およびBMI(体格指数)を含む身体的パラメータを各被検者について取得した。被検者1人当たりの平均叩打力を得るために、各被検者について板510に対する叩打を3回測定した。全ての結果を表1にまとめた。
【0034】
【表1】
結果の統計的分析から、力の平均値は87.08Kgであった。さらに、統計的分析から、この力の平均値は、試験対象の被検者の身体的なパラメータとは殆ど関係がないものであることが分かった。したがって、本発明の機械式除細動器では、約50〜120Kg、好ましくは、70〜100Kgの衝撃を与えるべきであると推測される。しかしながら、心臓の拍動を回復させるために心停止状態の心臓を刺激するために最も適切な機械的衝撃の最適なパラメータをより適切に確立するために、今後、本発明の装置に関する各種試験が予定されている。
【0035】
本発明が本願で図示しかつ説明したものに限定されるものではないことは、当業者に理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】未装填状態の除細動器を示す、本発明の第1の実施形態による機械式除細動器の斜視図。
【図2】装填状態の除細動器を示す、本発明の第1の実施形態による機械式除細動器の斜視図。
【図3】図1の除細動器を下方からみた斜視図。
【図4】内部構造を示すために頂部カバーが除去された状態の図1の除細動器の上面図。
【図5】本装置の装填機構を示す図1の除細動器の部分図。
【図6A】初期位置にある装填要素を示すために外部カバーおよび電子要素が除去された状態にある、上下が逆さにされた図1の装置の斜視図。
【図6B】駆動位置にある装填要素を示すために外部カバーおよび電子要素が除去された状態にある、上下が逆さにされた図1の装置の斜視図。
【図7A】図6Aの装置を反対側から見た斜視図。
【図7B】図6Bの装置を反対側から見た斜視図。
【図8】図1の装置の電子部品を示す図6Aおよび図6Bと同じ方向から見た斜視図。
【図9】本発明の第2の実施形態による機械式除細動器を上方から見た斜視図。
【図10】本発明の第2の実施形態による機械式除細動器を下方から見た斜視図。
【図11】未装填状態の除細動器を示す、下部カバーが除去された状態にある図9の除細動器の底面図。
【図11A】図9乃至図13の実施形態のトルクばねの分解図。
【図12】装填状態の除細動器を示す、下部カバーが除去された状態にある図9の実施形態を下方から見た斜視図。
【図13】装填状態にある図9の除細動器を上方から見た斜視図。
【図14】本発明の第3の実施形態による除細動器の上面図。
【図15】本発明の第3の実施形態による除細動器を下方から見た斜視図。
【図16A】ばね力測定装置を前方から見た斜視図。
【図16B】ばね力測定装置を後方から見た斜視図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心停止患者の胸部に対して予め設定された力の制御可能な機械的衝撃を与えるように構成された衝撃部材を備える機械式除細動器。
【請求項2】
前記衝撃部材が、前記患者の胸部上に配置されるように構成されるフレーム上に取り付けられ、前記除細動器が、前記衝撃部材に結合された再装填可能なエネルギー蓄積要素をさらに備え、該エネルギー蓄積要素は、前記衝撃部材が前記フレームよりも上方に上昇させられたときに装填されるように構成される、請求項1に記載の機械式除細動器。
【請求項3】
前記エネルギー蓄積要素内に蓄積されたエネルギーを解放して前記衝撃部材の衝撃エネルギーとするように構成された解放機構を更に備える、請求項2に記載の機械式除細動器。
【請求項4】
前記エネルギー蓄積要素に制御可能に荷重を印加し、同時に患者の胸部よりも上方の制御可能な高さまで前記衝撃部材を上昇させる装填機構をさらに備える、請求項2に記載の機械式除細動器。
【請求項5】
前記予め設定された力が固定値である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記固定値が70〜100Kgの範囲である、請求項6に記載の装置。
【請求項7】
前記予め設定された力は最大180Kgまで調整することができる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記予め設定された力を表示する表示器をさらに備える、請求項1に記載の除細動器。
【請求項9】
被術者の心臓の活動を感知する少なくとも1つのセンサーをさらに備える、請求項1に記載の除細動器。
【請求項10】
前記心臓の活動を分析し、かつ、心室細動を検出する分析手段を更に備える、請求項7に記載の除細動器。
【請求項11】
心室細動が検出されなかった場合に解放を防止する停止手段をさらに備える、請求項8に記載の除細動器。
【請求項12】
前記装填機構が手動操作される、請求項4に記載の除細動器。
【請求項13】
前記解放機構を手動で駆動する駆動要素をさらに備える、請求項3に記載の除細動器。
【請求項14】
前記駆動要素が、前記衝撃部材を解放するように構成された解放要素と、前記解放部材が前記衝撃要素を解放することを妨げるストッパ要素と、解放を可能にするために前記ストッパ要素を解放するストッパ解放要素とを備える、請求項13に記載の除細動器。
【請求項15】
前記フレームが、前記装置の操作者が両手で保持する2つのハンドルをさらに備える、請求項2に記載の除細動器。
【請求項16】
前記除細動器が被術者の胸部に適切に押し付けられない場合には解放を防止する主ストッパをさらに備える、請求項3に記載の除細動器。
【請求項17】
前記再装填可能なエネルギー蓄積要素が、機械的エネルギー蓄積要素である、請求項2に記載の除細動器。
【請求項18】
前記再装填可能なエネルギー蓄積要素がばねである、請求項3に記載の除細動器。
【請求項19】
前記再装填可能なエネルギー蓄積要素がトルクばねである、請求項3に記載の除細動器。
【請求項20】
前記衝撃部材が、重量約100〜400g、直径約20〜50mmの円筒形錘である、請求項1に記載の除細動器。
【請求項21】
予め設定された力の機械的衝撃を被術者の胸部に与える機械式除細動器であって、
被術者の胸部上に配置可能なフレームと、
被術者の胸部よりも上方に上昇させられるように構成された、前記フレーム上に取り付けられた衝撃用錘と、
前記衝撃用錘に結合された装填可能な要素と、
前記装填可能な要素を装填し、かつ前記衝撃用錘を上昇させる装填機構と、
前記装填可能な要素内に蓄積されたエネルギーを解放して、機械的衝撃を被術者の胸部に与えるために前記衝撃用錘を駆動する解放機構と
を備える機械式除細動器。
【請求項22】
除細動ショックを心停止患者に与える方法であって、
衝撃部材を備える機械装置によって、予め設定された力の制御可能な機械的衝撃を患者の胸部に与える工程を含む方法。
【請求項1】
心停止患者の胸部に対して予め設定された力の制御可能な機械的衝撃を与えるように構成された衝撃部材を備える機械式除細動器。
【請求項2】
前記衝撃部材が、前記患者の胸部上に配置されるように構成されるフレーム上に取り付けられ、前記除細動器が、前記衝撃部材に結合された再装填可能なエネルギー蓄積要素をさらに備え、該エネルギー蓄積要素は、前記衝撃部材が前記フレームよりも上方に上昇させられたときに装填されるように構成される、請求項1に記載の機械式除細動器。
【請求項3】
前記エネルギー蓄積要素内に蓄積されたエネルギーを解放して前記衝撃部材の衝撃エネルギーとするように構成された解放機構を更に備える、請求項2に記載の機械式除細動器。
【請求項4】
前記エネルギー蓄積要素に制御可能に荷重を印加し、同時に患者の胸部よりも上方の制御可能な高さまで前記衝撃部材を上昇させる装填機構をさらに備える、請求項2に記載の機械式除細動器。
【請求項5】
前記予め設定された力が固定値である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記固定値が70〜100Kgの範囲である、請求項6に記載の装置。
【請求項7】
前記予め設定された力は最大180Kgまで調整することができる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記予め設定された力を表示する表示器をさらに備える、請求項1に記載の除細動器。
【請求項9】
被術者の心臓の活動を感知する少なくとも1つのセンサーをさらに備える、請求項1に記載の除細動器。
【請求項10】
前記心臓の活動を分析し、かつ、心室細動を検出する分析手段を更に備える、請求項7に記載の除細動器。
【請求項11】
心室細動が検出されなかった場合に解放を防止する停止手段をさらに備える、請求項8に記載の除細動器。
【請求項12】
前記装填機構が手動操作される、請求項4に記載の除細動器。
【請求項13】
前記解放機構を手動で駆動する駆動要素をさらに備える、請求項3に記載の除細動器。
【請求項14】
前記駆動要素が、前記衝撃部材を解放するように構成された解放要素と、前記解放部材が前記衝撃要素を解放することを妨げるストッパ要素と、解放を可能にするために前記ストッパ要素を解放するストッパ解放要素とを備える、請求項13に記載の除細動器。
【請求項15】
前記フレームが、前記装置の操作者が両手で保持する2つのハンドルをさらに備える、請求項2に記載の除細動器。
【請求項16】
前記除細動器が被術者の胸部に適切に押し付けられない場合には解放を防止する主ストッパをさらに備える、請求項3に記載の除細動器。
【請求項17】
前記再装填可能なエネルギー蓄積要素が、機械的エネルギー蓄積要素である、請求項2に記載の除細動器。
【請求項18】
前記再装填可能なエネルギー蓄積要素がばねである、請求項3に記載の除細動器。
【請求項19】
前記再装填可能なエネルギー蓄積要素がトルクばねである、請求項3に記載の除細動器。
【請求項20】
前記衝撃部材が、重量約100〜400g、直径約20〜50mmの円筒形錘である、請求項1に記載の除細動器。
【請求項21】
予め設定された力の機械的衝撃を被術者の胸部に与える機械式除細動器であって、
被術者の胸部上に配置可能なフレームと、
被術者の胸部よりも上方に上昇させられるように構成された、前記フレーム上に取り付けられた衝撃用錘と、
前記衝撃用錘に結合された装填可能な要素と、
前記装填可能な要素を装填し、かつ前記衝撃用錘を上昇させる装填機構と、
前記装填可能な要素内に蓄積されたエネルギーを解放して、機械的衝撃を被術者の胸部に与えるために前記衝撃用錘を駆動する解放機構と
を備える機械式除細動器。
【請求項22】
除細動ショックを心停止患者に与える方法であって、
衝撃部材を備える機械装置によって、予め設定された力の制御可能な機械的衝撃を患者の胸部に与える工程を含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11A】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11A】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【公表番号】特表2008−541921(P2008−541921A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514299(P2008−514299)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000630
【国際公開番号】WO2006/129309
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(507393780)
【氏名又は名称原語表記】WEINTRAUB,David
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000630
【国際公開番号】WO2006/129309
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(507393780)
【氏名又は名称原語表記】WEINTRAUB,David
【Fターム(参考)】
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