説明

機能性分子ゲル化剤

【課題】分離膜、センサー、触媒、無機材料、電子材料、バイオ素材等、様々な分野への応用が可能な、機能性分子を提示するゲル化剤およびそれを有効成分とするゲルを提供する。
【解決手段】式(1)で示されるベンズアミド誘導体。
【化7】


(式中、Rは分子構造中にアミノ基またはカルボキシル基を含んだ化合物の当該アミノ基の1つまたは当該カルボキシル基の1つを除いた部分構造を、Aは、Rの元となる分子構造からアミノ基を除いた場合には、NHCOのアミド結合を、Rの元となる分子構造からカルボキシル基を除いた場合には、CONHのアミド結合を表す。また、BはNHCOまたはCONHのアミド結合を、mは1から6までの整数を、nは1から6までの整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸やペプチド等の機能性残基をその構造内に有するゲル化剤およびそれを有効成分とするゲルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
低分子ゲルは、低分子化合物が分子間力による自己組織化により繊維状の構造を形成し、それが複雑に絡み合った3次元ネットワークを形成することによって、溶媒分子を捕捉したゲルである(例えば、非特許文献1参照)。
ゲルを形成する低分子化合物の分子設計が可能なことから、分離膜、センサー、触媒、無機材料、電子材料、バイオ素材等、様々な分野への応用が期待されている(例えば、非特許文献2参照)。
我々も、新規な構造を有する3,4,5−長鎖アルキルオキシベンズアミド誘導体を合成し(特許文献1参照)、その一部の化合物が有機溶媒をゲル化することを見出し(非特許文献3参照)、さらにこれらの化合物を改良して、より高いゲル化能を有する化合物を提供した(特許文献2参照)。
【0003】
しかし、我々が開示した化合物は末端が水酸基あるいは糖鎖に限られ、分離膜、センサー、触媒、無機材料、電子材料、バイオ素材等、様々な分野への応用を考えた場合、より多くの機能性分子を提示するための改良が望まれていた。
【特許文献1】特開2001−122889号公報
【特許文献2】特開2004−262809号公報
【非特許文献1】ケミカル・レビュー(Chem. Rev.)、1997年、97巻、p.3133−3159
【非特許文献2】アンゲバンテ・ヘミー・インターナショナル・エディション(Angew. Chem. Int. Ed.)、2000年、39巻、p.2263−2266
【非特許文献3】膜、2001年、13号、p.13−16
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、これまでに開示した3,4,5−長鎖アルキルオキシベンズアミド誘導体ゲル化剤を改良し、より多くの機能性分子を提示するゲル化剤およびそれを有効成分とするゲルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を鋭意検討した結果、本発明者らは、既に発明を開示している式(3)で示される3,4,5−長鎖アルキルオキシベンズアミド誘導体の末端構造をアミノ基あるいはカルボキシル基に改変した式(2)で示される化合物を合成し、そのゲル形成能を確認し、また、式(2)にアミノ酸、ペプチド、ビオチン等の機能性分子を結合させた式(1)で示される化合物を合成し、そのゲル形成能を確認し、さらに、式(1)、(2)及び(3)で示される化合物の一群から、構造の異なった2つ以上の化合物を選択した混合物のゲル形成能を確認して、本発明を完成するに至った。
【化4】

(式中、RはHまたはガラクトピラノシル基等の糖鎖を、mは2から6までの整数を、nは1から6までの整数を表す。)
【0006】
すなわち、本発明は、式(1)で示されるベンズアミド誘導体、
【化5】

(式中、Rは分子構造中にアミノ基またはカルボキシル基を含んだ化合物の当該アミノ基の1つまたは当該カルボキシル基の1つを除いた部分構造を、Aは、Rの元となる分子構造からアミノ基を除いた場合には、NHCOのアミド結合を、Rの元となる分子構造からカルボキシル基を除いた場合には、CONHのアミド結合を表す。また、BはNHCOまたはCONHのアミド結合を、mは1から6までの整数を、nは1から6までの整数を表す。)
および、式(2)で示されるベンズアミド誘導体を提供する。
【化6】

(式中、AはNH2のアミノ基またはCO2Hのカルボキシル基を、BはNHCOまたはCONHのアミド結合を、mは1から6までの整数を、nは1から6までの整数を表す。)
【0007】
また、本発明は、式(1)または式(2)で示される化合物を有効成分とするゲル化剤、および、式(1)または式(2)で示される化合物を有効成分とするゲルを提供する。
さらに、本発明は、式(1)、(2)及び(3)で示される化合物の一群から、構造の異なった2つ以上の化合物を選択した混合物を有効成分とするゲル化剤、および、そのゲル化剤を有効成分とするゲルを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の化合物の合成は如何なる方法によっても構わない。
例えば、既に報告した方法(特開2001−122889号公報)に従い、3,4,5−トリス(ドデシルオキシ)安息香酸を合成し、そのカルボキシル基に、各種のアミノ酸またはジアミンを、必要に応じてカルボキシル基または一端のアミノ基を適当な保護基で保護して、通常のアミド縮合に用いられる試薬を用いて縮合させ、必要に応じて脱保護することにより、1つめのアミド結合を導入した中間体が得られる。
続いて、各種のアミノ酸あるいはジアミンあるいはジカルボン酸を、必要に応じて一端のカルボキシル基またはアミノ基を適当な保護基で保護して、通常のアミド縮合に用いられる試薬を用いて縮合させ、2つめのアミド結合を導入し、必要に応じて脱保護することにより、式(2)で示すゲル化剤が得られる。
【0009】
この式(2)で示される化合物に、アミノ酸、ペプチド、ビオチン等、末端がカルボキシル基またはアミノ基である機能性分子を、必要に応じて適当な保護基で保護して、通常のアミド縮合に用いられる試薬を用いて縮合させ、必要に応じて脱保護することにより、式(1)で示すゲル化剤が得られる。
ペプチド等のように、結合させる機能性分子自体が複数の構成成分からなる場合には、例えば、式(2)で末端がアミノ基の化合物にC端からアミノ酸1残基ずつN端まで順次縮合する、あるいは、式(2)で末端がカルボキシル基の化合物にN端からアミノ酸1残基ずつC端まで順次縮合することによって、式(1)で示すゲル化剤を得ることもできる。
【0010】
このようにして合成されたゲル化剤またはその混合物を、適当量のサンプルを有機溶媒に懸濁させ、サンプルが完全に溶解するまで加熱した後、室温に放置するか、必要によって、さらに冷却することによってゲルが得られる。
【0011】
以下に、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記述に限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
(N−(N−(6−アミノヘキシル)−3−カルバモイルプロピル)−3,4,5−トリス(ドデシルオキシ)ベンズアミドの合成)
N−(3,4,5−トリス(ドデシルオキシ)ベンゾイル)−4−アミノ酪酸(502 mg, 0.660 mmol)、水溶性カルボジイミド(166 mg, 0.866 mmol)、1−ベンゾトリアゾール(133 mg, 0.869 mmol)をジクロロメタン(30 ml)に溶かし、室温で30分撹拌した後、N−Boc−ヘキサンジアミン(0.29 ml, 1.32 mmol)を加え、さらに室温で2.5時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を1M塩酸、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムをろ別し、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=19:1)で精製し、N−(N−(N−Boc−6−アミノヘキシル)−3−カルバモイルプロピル)−3,4,5−トリス(ドデシルオキシ)ベンズアミド(579 mg, 0.594 mmol, 90%)を得た。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.88 (9H, t, J = 6.8 Hz), 1.22-1.38 (52H, m), 1.43 (9H, s), 1.49 (10H, m), 1.74 (2H, m), 1.84 (4H, quint, J = 6.6 Hz), 1.95 (2H, quint, J = 6.3 Hz), 2.33 (2H, t, J = 6.3 Hz), 3.01 (2H, q, J = 6.3 Hz), 3.21 (2H, q, J = 6.3 Hz), 3.48 (2H, q, J = 6.3 Hz), 3.98 (2H, t, J = 6.6 Hz), 4.02 (4H, t, J = 6.6 Hz), 4.60 (1H, brs), 6.20 (1H, brs), 7.05 (2H, s).
【0013】
N−(N−(N−Boc−6−アミノヘキシル)−3−カルバモイルプロピル)−3,4,5−トリス(ドデシルオキシ)ベンズアミド(101 mg, 0.106 mmol)にトリフルオロ酢酸(1.5 ml)を加え室温で3時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、メタノールから再結晶し、N−(N−(6−アミノヘキシル)−3−カルバモイルプロピル)−3,4,5−トリス(ドデシルオキシ)ベンズアミド(52.3 mg, 0.0609 mmol, 58%)を得た。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ 0.88 (9H, t, J = 6.8 Hz), 1.21-1.38 (52H, m), 1.44 (8H, m), 1.63 (2H, m), 1.71-1.85 (6H, m), 1.87 (2H, m), 2.26 (2H, t, J = 6.3 Hz), 2.92 (2H, brs) 3.16 (2H, q, m), 3.40 (2H, m), 3.97 (6H, t, J = 6.5 Hz), 7.05 (2H, s), 7.51 (1H, brs), 8.15 (2H, brs).
【実施例2】
【0014】
(N−(N−(N−ビオチニル−6−アミノヘキシル)−3−カルバモイルプロピル)−3,4,5−トリス(ドデシルオキシ)ベンズアミドの合成)
(+)−ビオチン(150 mg, 0.614 mmol)、水溶性カルボジイミド(128 mg, 0.668 mmol)、1−ベンゾトリアゾール(102 mg, 0.668 mmol)をジクロロメタン(10 ml)とジメチルホルムアミド(5 ml)に溶かし、室温で1時間撹拌した後、N−(N−(6−アミノヘキシル)−3−カルバモイルプロピル)−3,4,5−トリス(ドデシルオキシ)ベンズアミド(300 mg, 0.445 mmol)を加え、室温で一夜撹拌した。反応中に生じた沈殿物をろ取し、メタノール、ジクロロメタンで洗浄し、N−(N−(N−ビオチニル−6−アミノヘキシル)−3−カルバモイルプロピル)−3,4,5−トリス(ドデシルオキシ)ベンズアミド(221 mg, 0.245 mmol, 55%)を得た。
1H-NMR (Methanol-d4, 600 MHz) δ 0.89 (9H, t, J = 6.8 Hz), 1.23-1.55 (52H, m), 1.60-1.79 (8H, m), 1.83 (4H, m), 1.92 (2H, m), 2.19 (2H, t, J = 7.6 Hz), 2.28 (2H, t, J = 7.6 Hz), 2.31 (4H, m), 2.72 (2H, dd, J = 13.1, 2.4 Hz), 2.91 (2H, dd, J = 7.6, 5.5 Hz), 2.94 (2H, t, J = 7.6, 4.8 Hz), 3.15 (5H, m), 3.40 (2H, t, J = 6.2 Hz), 4.01 (2H, t, J = 6.2 Hz), 4.06 (4H, t, J = 6.2 Hz), 4.30 (1H, dd, J = 7.6, 4.1 Hz), 4.32 (1H, dd, J = 7.6, 4.1 Hz), 4.48 (1H, t, J = 4.1 Hz), 4.50 (1H, t, J = 4.1 Hz), 7.13 (2H, s).
【実施例3】
【0015】
(N−(N−(3,4,5−トリス(ドデシルオキシ)ベンゾイル)−4−アミノブチリル)−6−アミノヘキサン酸の合成)
6−アミノヘキサン酸(1.42 g, 13.8 mmol)と炭酸水素ナトリウム(1.73 g, 20.6 mmol)を純水(20 ml)に溶かし、塩化ベンジルオキシカルボニル(2.4 ml)を滴下し、室温で一夜撹拌した。生じた沈殿物をろ取し、ヘキサンで洗浄した。ろ液はヘキサンで洗浄後、水層に1M塩酸を加えて酸性にし、クロロホルムで抽出した。クロロホルム層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、硫酸ナトリウムをろ別後、溶媒を留去した。濃縮後の残渣とろ別しておいた沈澱物を合わせてシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製し、N−ベンジルオキシカルボニル−6−アミノヘキサン酸(2.34 g, 8.81 mmol, 95%)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ1.37 (2H, quint, J = 7. 6 Hz), 1.53 (2H, quint, J = 7.6 Hz), 1.65 (2H, quint, J = 7.6 Hz), 2.35 (2H, t, J = 7.6 Hz), 3.20 (2H, q, J = 7.6 Hz), 4.77 (1H, m), 5.27 (2H, s), 7.36 (5H, m).
【0016】
N−ベンジルオキシカルボニル−6−アミノヘキサン酸(1.08 g, 4.04 mmol)をエタノール(20 ml)に溶かし、フッ化ホウ素エーテル錯体(0.5 ml, 2.37 mmol)を加え2時間加熱還流した。反応終了後、トリエチルアミン(2 ml)を加えて濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製し、N−ベンジルオキシカルボニル−6−アミノヘキサン酸エチル(1.12 g, 3.83 mmol, 94%)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ1.25 (3H, t, J = 6.9 Hz), 1.36 (2H, quint, J = 7. 6 Hz), 1.52 (2H, quint, J = 7.6 Hz), 1.64 (2H, quint, J = 7.6 Hz), 2.29 (2H, t, J = 7.6 Hz), 3.20 (2H, q, J = 7.6 Hz), 4.12 (2H, q, J = 6.9 Hz), 4.74 (1H, m), 5.09 (2H, s), 7.36 (5H, m).
【0017】
N−ベンジルオキシカルボニル−6−アミノヘキサン酸エチル(1.10 g, 3.76 mmol)をエタノール(20 ml)に溶かし、10%パラジウム−炭素を加え、水素雰囲気下で一夜撹拌し、6−アミノヘキサン酸エチルのエタノール溶液を調製した。
N−(3,4,5−トリス(ドデシルオキシ)ベンゾイル)−4−アミノ酪酸(843 mg, 1.11 mmol)、水溶性カルボジイミド(260 mg, 1.36 mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(203 mg, 1.33 mmol)を乾燥ジクロロメタン(30 ml)に溶解させ、アルゴン雰囲気下、室温で30分撹拌した後、先に調製しておいた6−アミノヘキサン酸エチルのエタノール溶液を加え、さらに室温で2時間撹拌した。1M塩酸、飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムをろ別し、溶媒を減圧下留去後、粗生成物をメタノールから再結晶し、N−(N−(3,4,5−トリス(ドデシルオキシ)ベンゾイル)−4−アミノブチリル)−6−アミノヘキサン酸エチル(956 mg, 1.06 mmol, 96%)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ0.88 (9H, t, J = 7.6 Hz), 1.24-1.36 (H, m), 1.49 (8H, m), 1.62 (2H, quint, J = 7.6 Hz), 1.73 (2H, quint, J = 7.6 Hz), 1.81 (4H, quint, J = 7.6 Hz), 1.96 (2H, m), 2.28 (2H, t, J = 7.6 Hz), 2.32 (2H, t, J = 6.2 Hz), 3.24 (2H, q, J = 6.2 Hz), 3.49 (2H, q, J = 6.2 Hz), 3.98 (2H, t, J = 6.9 Hz), 4.03 (4H, t, J = 6.9 Hz), 4.11 (2H, q, J = 6.9 Hz), 6.03 (1H, t, J = 6.2 Hz), 7.04 (2H, s), 7.10 (1H, t, J = 6.2 Hz).
【0018】
N−(N−(3,4,5−トリス(ドデシルオキシ)ベンゾイル)−4−アミノブチリル)−6−アミノヘキサン酸エチル(930 mg, 1.03 mmol)をエタノール(30 ml)に溶かし、純水(8 ml)に溶かした水酸化カリウム(421 mg, 7.50 mmol)を加え、40℃で30分撹拌した。反応終了後、1M塩酸で中和し、クロロホルムで抽出後、クロロホルム層を飽和食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、硫酸ナトリウムをろ別し、溶媒を減圧下留去した。残渣はメタノールから再結晶し、N−(N−(3,4,5−トリス(ドデシルオキシ)ベンゾイル)−4−アミノブチリル)−6−アミノヘキサン酸(854 mg, 0.978 mmol, 95%)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ0.88 (9H, t, J = 7.6 Hz), 1.24-1.34 (H, m), 1.46 (8H, m), 1.63 (2H, quint, J = 7.6 Hz), 1.73 (2H, quint, J = 6.8 Hz), 1.81 (4H, quint, J = 7.6 Hz), 1.97 (2H, quint, J = 6.9 Hz), 2.30 (2H, t, J = 6.9 Hz), 2.33 (2H, t, J = 6.9 Hz), 3.26 (2H, q, J = 6.2 Hz), 3.49 (2H, q, J = 6.2 Hz), 3.99 (2H, t, J = 6.9 Hz), 4.03 (4H, t, J = 6.9 Hz), 6.03 (1H, m), 6.87 (1H, m), 7.02 (2H, s).
【実施例4】
【0019】
(単体化合物のゲル形成)
ゲル形成は、試料を容器に計り取り、所定の濃度になるように有機溶媒を加え、加熱還流して試料を完全に溶解させた後、室温で放冷した状態で判定した。室温で溶液であった場合は、さらに、氷冷した状態を観察した。有機溶媒として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、酢酸エチル、ヘキサン、トルエンを用いた。
式(3)において、RがH、mが6、nが3の化合物は、20mM、室温で、酢酸エチル、ヘキサンを、氷冷下で、エタノール、1−プロパノール、酢酸エチル、ヘキサン、トルエンをゲル化した。
式(2)において、AがNH2、BがNHCO、mが6、nが3の化合物は、20mM、氷冷下で、メタノール、トルエンをゲル化した。
式(1)において、Rが(CH33CO、AがCONH、BがNHCO、mが6、nが3の化合物は、20mM、室温で、酢酸エチル、ヘキサンを、氷冷下で、酢酸エチル、ヘキサン、トルエンをゲル化した。
【実施例5】
【0020】
(混合物のゲル形成)
ゲル形成は、実施例4と同様の方法により確認した。
式(3)において、RがH、mが6、nが3の化合物は、60mM、室温で、酢酸エチル、ヘキサンを、氷冷下で、エタノール、1−プロパノール、酢酸エチル、ヘキサン、トルエンをゲル化した。
式(2)において、AがNH2、BがNHCO、mが6、nが3の化合物は、60mM、氷冷下で、メタノール、エタノールをゲル化した。
式(2)において、AがCO2H、BがNHCO、mが5、nが3の化合物は、60mM、室温で、メタノール、酢酸エチル、氷冷下で、メタノール、エタノール、1−プロパノール、酢酸エチルをゲル化した。
式(3)において、RがH、mが6、nが3の化合物に対して、式(2)において、AがNH2、BがNHCO、mが6、nが3の化合物を10%混合した場合、60mM、室温で、ヘキサンを、氷冷下で、メタノール、エタノール、1−プロパノール、酢酸エチル、ヘキサン、トルエンを、30%または50%混合した場合、60mM、氷冷下で、メタノール、エタノール、1−プロパノール、ヘキサン、トルエンをゲル化した。
式(3)において、RがH、mが6、nが3の化合物に対して、式(2)において、AがCO2H、BがNHCO、mが5、nが3の化合物を10%または30%混合した場合、60mM、室温で、酢酸エチルを、氷冷下で、メタノール、エタノール、1−プロパノール、酢酸エチル、トルエンを、50%混合した場合、60mM、室温で、メタノール、酢酸エチルを、氷冷下で、メタノール、エタノール、1−プロパノール、酢酸エチル、トルエンをゲル化した。
この結果、混合によりゲル化する溶媒の種類が増えることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、分離膜、センサー、触媒、無機材料、電子材料、バイオ素材等、様々な分野への応用が可能な機能性分子ゲル化剤を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示されるベンズアミド誘導体。
【化1】

(式中、Rは分子構造中にアミノ基またはカルボキシル基を含んだ化合物の当該アミノ基の1つまたは当該カルボキシル基の1つを除いた部分構造を、Aは、Rの元となる分子構造からアミノ基を除いた場合には、NHCOのアミド結合を、Rの元となる分子構造からカルボキシル基を除いた場合には、CONHのアミド結合を表す。また、BはNHCOまたはCONHのアミド結合を、mは1から6までの整数を、nは1から6までの整数を表す。)
【請求項2】
式(2)で示されるベンズアミド誘導体。
【化2】

(式中、AはNH2のアミノ基またはCO2Hのカルボキシル基を、BはNHCOまたはCONHのアミド結合を、mは1から6までの整数を、nは1から6までの整数を表す。)
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した化合物を有効成分とするゲル化剤。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載した化合物を有効成分とするゲル。
【請求項5】
請求項1及び請求項2に記載した化合物、及び、式(3)で示される化合物からなる一群から、構造の異なった2つ以上の化合物を選択した混合物を有効成分とするゲル化剤。
【化3】

(式中、RはHまたはガラクトピラノシル基等の糖鎖を、mは2から6までの整数を、nは1から6までの整数を表す。)
【請求項6】
請求項5に記載のゲル化剤を有効成分とするゲル。

【公開番号】特開2006−282656(P2006−282656A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39287(P2006−39287)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000173924)財団法人野口研究所 (108)
【Fターム(参考)】