説明

機能性成分含有ミストの発生装置、及び発生方法

【課題】
機能性成分をナノサイズのミストとともに大量に放出させることができ、冷蔵庫の庫内環境や室内環境を改善することができる機能性成分含有ミストの発生装置および発生方法を提供する。
【解決手段】
吸水性および保水性を有する多孔質の保水基材11と、保水基材11に突設された多孔質の放出基材12と、からなる多孔質成型体2と、保水基材11に、不揮発性の機能性成分を含む水溶液を供給する給水手段3と、多孔質成型体2に負極が接続され、不揮発性の機能性成分を含む水溶液を保持した多孔質成型体2を負に帯電させる直流高電圧電源4と、を備えて機能性成分含有ミストの発生装置1が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、冷蔵庫の庫内環境や室内環境を改善すべく、ビタミン類などの機能性成分を含むミストを空気中に放出する機能性成分含有ミストの発生装置、及び発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビタミンCなどの機能性成分は、健康サプリメントや医薬品を始めとして、化粧品や衣類などにも含有されており、健康サプリメントの摂取、医薬品の服用、化粧品の塗用、または衣類の着用などによって、人体に直接吸収させるという利用方法が主体であった。また、ヒノキチオールやローズマリーなどの揮発性の機能性成分は、従来より抗酸化または抗菌などの目的で家電にも利用されているが、不揮発性の機能性成分は、真水や揮発性溶媒であるアルコールなどに溶解させて用いても、任意に空気中に放出させることは困難であった。
【0003】
超音波発生装置を利用すると、不揮発性の機能性成分を水溶液のままミストとして放出することが可能である。しかし、超音波により発生させたミストは粒子が目視可能な程度に大きく、湿度過剰や濡れが生じて腐食やカビなどを発生させることがあった。
【0004】
近年、冷蔵庫の庫内環境や室内環境を改善する試みが種々なされている。例えば、冷蔵庫では、庫内環境を改善する手段として、庫内にマイナスイオンを発生させて野菜室を中心にした生鮮食料品の鮮度を保持したり、活性炭またはパラジウムやマンガン、鉄などの金属を利用したエチレンやメチルメルカプタン、トリメチルアミンなどの脱臭材や、ローズマリーなどの揮発性天然材料による抗酸化剤を庫内に設置することがなされている。また、エアコンや空気清浄機、加湿器などでは、室内環境を改善する手段として、コロナ放電を利用したマイナスイオンの発生装置や、水を蒸発させてミストを放出する加湿装置を附属機能として装備することがなされている。
【0005】
例えば、特開2004−358358号公報(特許文献1)には、水保持部内に収容されている水に負電圧を印加する印加電極と、接地されている対向電極と、上記水に接触しているとともに上記対向電極に先端の針状霧化部を対向させて水保持部から吸い上げた水を静電霧化させる吸水体と、上記対向電極との間のコロナ放電でマイナスイオンを発生させるイオン化針と、からなるマイナスイオン発生機能付き静電霧化装置を備えた空気清浄機が提案されている。
【特許文献1】特開2004−358358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されたマイナスイオン発生技術のように、市販されているナノサイズのミスト発生装置は、マイナスイオンを大量に発生させることを目的に開発されており、マイナスイオン量の発生量を大きくする目的からミスト放出基材の先端部を鋭利に尖った形状に形成している。そのため、先端部を鋭利加工する要請からミスト放出基材として研削加工特性の良い硬い材質が採用されており、十分な吸水力や保水力が得られないので、任意の水分量をミストとして放出することができず、ミストに機能性成分を含ませて放出させることは困難である。
【0007】
また、市販されている機能性成分の空気中への放出手段としては、揮発性成分以外ではビタミンのイオン導入機が挙げられるが、超音波を利用した発生装置ではミスト粒子が大き過ぎて皮膚へ浸透し難く、マイナスイオンを利用した発生装置ではミスト粒子がナノサイズと小さいものもあるが、十分なミスト量が得られない。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みて創案されたものであり、その目的は、ビタミン類などの機能性成分をナノサイズのミストとともに大量に放出させることができ、冷蔵庫等の内部環境や室内環境を改善することができる機能性成分含有ミストの発生装置および発生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたもので、請求項1に記載のものは、多孔質の保水基材に多孔質の放出基材を突設して吸水性および保水性を有する多孔質成型体と、
前記保水基材に、不揮発性の機能性成分を含む水溶液を供給する給水手段と、
前記多孔質成型体に負極が接続され、不揮発性の機能性成分を含む水溶液を保持した前記多孔質成型体を負に帯電させる直流高電圧電源と、
を備え、前記放出基材から機能性成分含有ミストを放出させることを特徴とする機能性成分含有ミストの発生装置である。
【0010】
請求項2に記載のものは、前記多孔質成型体に、不揮発性の機能性成分が担持され、前記給水手段は前記保水基材に水を供給することを特徴とする請求項1に記載の機能性成分含有ミストの発生装置である。
【0011】
請求項3に記載のものは、前記機能性成分が、ビタミン類、ビタミン誘導体、カテキン、ヒアルロン酸、アミノ酸、コラーゲンのような有機系可溶性成分、あるいは、銀または食塩のような無機系可溶性成分のうちの1種類もしくは2種類以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機能性成分含有ミストの発生装置である。
【0012】
請求項4に記載のものは、前記放出基材および前記保水基材が、セラミックス材料、合成樹脂材料もしくは金属材料の多孔体、または繊維体により形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の機能性成分含有ミストの発生装置である。
【0013】
請求項5に記載のものは、前記放出基材の保水率は40〜130%であり、前記保水基材よりも高い保水率を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の機能性成分含有ミストの発生装置である。
【0014】
請求項6に記載のものは前記放出基材は棒状体であり、前記保水基材に複数突設されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の機能性成分含有ミストの発生装置である。
【0015】
請求項7に記載のものは、前記放出基材の先端部が丸みを帯びた曲面で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の機能性成分含有ミストの発生装置である。
【0016】
請求項8に記載のものは、多孔質成型体に不揮発性の機能性成分を含む水溶液を吸水保持し、該多孔質成型体に直流高電圧電源の負極を接続して負に帯電させることにより、該多孔質成型体に突設した放出基材から不揮発性の機能性成分を含むミストを放出させることを特徴とする機能性成分含有ミストの発生方法である。
【0017】
請求項9に記載のものは、無機または有機化合物のバインダーにより機能性成分を担持させた多孔質成型体に水を吸水保持し、該多孔質成型体に直流高電圧電源の負極を接続して負に帯電させることにより、該多孔質成型体に突設した放出基材から不揮発性の機能性成分を含むミストを放出させることを特徴とする機能性成分含有ミストの発生方法である。
【0018】
請求項10に記載のものは、前記機能性成分として、ビタミン類、ビタミン誘導体、カテキン、ヒアルロン酸、アミノ酸、コラーゲンのような有機系可溶性成分、あるいは、銀または食塩のような無機系可溶性成分のうちの1種類もしくは2種類以上を選択することを特徴とする請求項8または請求項9のいずれかに記載の機能性成分含有ミストの発生方法である。
【0019】
請求項11に記載のものは、多孔質成型体が、セラミックス材料、合成樹脂材料もしくは金属材料の多孔体、または繊維体であることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれかに記載の機能性成分含有ミストの発生方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、次のような優れた効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、多孔質成型体の保水基材に、不揮発性の機能性成分を含む水溶液を保水させ、この水溶液を保持した多孔質成型体に直流高電圧電源の負極を接続して負に帯電させると、前記保水基材に突設された放出基材から自然放電現象が起こり、そのイオン風を利用して機能性成分をナノサイズのミストとともに大量に放出させることができる。したがって、この発生装置を、例えば、冷蔵庫の庫内や室内に設置することにより、冷蔵庫の庫内環境や室内環境を改善することができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、保水基材に不揮発性の機能性成分を担持させた場合には、給水手段から水のみを供給すればよい。したがって、保水基材に担持させる不揮発性の機能性成分を異ならせると、保水基材を適宜に選択することにより所望の機能成分含有ミストを発生させることができる。また、放出基材への供給量または溶出、吸い上げ速度を制御することができ、機能性成分の放出速度または放出量を制御することができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、機能性成分が、ビタミン類、ビタミン誘導体、カテキン、ヒアルロン酸、アミノ酸、コラーゲンのような有機系可溶性成分、あるいは、銀または食塩のような無機系可溶性成分のうちの1種類もしくは2種類以上であることにより、様々な雰囲気の環境改善に対応させることができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、放出基材および保水基材が、セラミックス材料、合成樹脂材料もしくは金属材料の多孔体、または繊維体により形成されているので、吸水力および保水力に優れた放出基材および保水基材を実現することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、放出基材の保水率は40〜130%であることが好ましく、放出基材が保水基材よりも高い吸水力を有するので、機能性成分を含む水溶液が保水基材に留まることがなく、放出基材へと供給または溶出させることができる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、放出基材を棒状体で形成することにより機能性成分を含むミストが放出し易くなり、保水基材に放出基材を複数突設することにより機能性成分含有ミストの放出量を増大させることができる。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、放出基材の先端部が丸みを帯びた曲面で形成されているので、電荷が集中し過ぎてアーク放電となることを防止でき、放出するミストに機能性成分を効率良く含ませてミスト化することができる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、不揮発性の機能性成分を含む水溶液を吸水保持する多孔質成型体に直流高電圧電源の負極を接続して負に帯電させることにより、多孔質成型体に突設された放出基材から自然放電現象が起こり、そのイオン風を利用して機能性成分をミストとともに大量に放出させることができる。したがって、例えば、冷蔵庫の庫内環境や室内環境を改善することができる。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、無機または有機化合物で機能性成分を溶解して多孔質成型体に担持させることにより、放出基材への機能性成分の供給量または溶出量、吸い上げ速度を制御することができ、機能性成分の放出速度または放出量を制御することができる。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、機能性成分として、ビタミン類、ビタミン誘導体、カテキン、ヒアルロン酸、アミノ酸、コラーゲンのような有機系可溶性成分、あるいは、銀または食塩のような無機系可溶性成分のうちの1種類もしくは2種類以上を選択することにより、様々な雰囲気の環境改善に対応させることができる。
【0030】
請求項11に記載の発明によれば、多孔質成型体が、セラミックス材料、合成樹脂材料もしくは金属材料の多孔体、または繊維体であることにより、吸水力および保水力に優れた多孔質成型体を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、機能性成分含有ミストの発生装置を示す概略図である。
第1の実施形態のミスト発生装置1は、図示するように、不揮発性の機能性成分を含む水溶液を吸水保持する多孔質成型体2と、該多孔質成型体2に不揮発性の機能性成分を含む水溶液を供給する給水手段3と、不揮発性の機能性成分を含む水溶液を保持した多孔質成型体2を負に帯電させる直流高電圧電源4と、から概ね構成されている。
【0032】
多孔質成型体2は、吸水性および保水性を有し、平板状を呈する多孔質の保水基材11と、該保水基材11に突設された多孔質の放出基材12と、から構成されている。これら保水基材11および放出基材12は、優れた吸水力および保水力を備えており、セラミックス材料、合成樹脂材料もしくは金属材料の多孔体、または繊維体により形成されている。
【0033】
多孔体や繊維体の保水基材11を構成するセラミックス材料としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニアのような単一酸化物、またはムライト、ゼオライト、ベントナイト、セピオライト、アタパルジャイト、シリマナイト、カオリン、セリサイト、珪藻土、長石、蛙目粘土、珪酸塩化合物(パーライト、バーミキュライト、セリサイトなど)が挙げられ、天然繊維材料としては、パルプ繊維、綿、ウール繊維、麻繊維などが挙げられ、合成樹脂材料としては、ポリエステル、ナイロンやレーヨン、ウレタン(ポリウレタンを含む)、アクリル、ポリプロピレンなどが挙げられ、金属材料としては、ステンレス、銅、チタン、スズ、プラチナ、金、銀などが挙げられる。
【0034】
多孔体や繊維体の形状の他にも、ハニカム構造やコルゲート構造が挙げられ、パイプ状、シート状、プリーツ状なども挙げられるが、必要条件は優れた吸水力および保水力を有するということである。
【0035】
放出基材12は、棒状体(スティック体)として形成され、機能性成分を含む水溶液を1〜100nm程度の微細なミストとして放出する先端部材であり、保水基材11の片面に複数本突設されている。このように放出基材12を棒状体として形成することにより、該放出基材12から機能性成分を含むミストが放出し易くなり、また、保水基材11に放出基材12を複数本突設することにより、機能性成分含有ミストの放出量を増大させることができる。また、放出基材12の先端部の構造は、フラット面よりもエッジになった構造が好ましいが、先端部が鋭利に尖っている必要はない。また、放出基材12の先端部の縦断面は、図2(a)に示すようなエッジがある四角よりも、図2(b)に示すような丸みを帯びた円もしくは楕円であること(要するに鋭角尖端よりも曲面で形成すること)が好ましく、このように形成することにより、放出するミストに大量の機能性成分を含ませることができる。なお、この放出基材12の長さや径、本数、および先端形状によって機能性成分含有ミストの放出量が異なり、その詳細については後述する実施例において考察する。
【0036】
さらに、放出基材12の保水率は40〜130%程度が好ましく、より好ましくは80%〜130%程度が好ましい。そして、放出基材12は、保水基材11よりも高い吸水力を有することが好ましい。これは、保水基材11に吸水した機能性成分を含む水溶液を該保水基材11に留まらせることなく、放出基材12へと供給または溶出させるためである。
【0037】
放出基材12としては、セラミックス繊維(セラミックスファイバー、ガラス繊維など)、有機繊維(ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維など)、金属繊維(ステンレス繊維、銅繊維、チタン繊維など)などを棒状体として形成したものが挙げられ、その他、セラミックス粒子や金属粒子を棒状体として焼結させた多孔体や、ウレタン樹脂やスチレン樹脂などの発泡体を棒状体として形成したものが挙げられる。なお、多孔体の場合、独立した微細泡の集合体であるよりも、無数の微細孔が連続しているものであることが、水溶液が通過する上で都合が良い。
【0038】
セラミックスまたは樹脂、金属等の多孔質構造は、水の吸水特性で放出性能が決定され、特に時間当りの水の吸い上げ量が重要である。これらの性能は、多孔体のもつ時間当りの吸水率で性能が決定され、いずれの素材においてもその吸水率は10〜200%程度が適しているが、特に材質別に見れば、セラミックス材料では10〜80%が好ましく、樹脂では100〜200%が好ましく、金属では10〜60%が好ましい。
【0039】
図3に示すように、放出基材12を繊維状構造に形成する場合の具体的な構成として、セラミックスでは、セラミックスファイバーと呼ばれるガラス質またはシリカやムライト結晶質の繊維をバインダーを用いて成形したものが挙げられ、合成樹脂では、ポリエステルやナイロン、アクリルなどの繊維があり、短繊維はそれらをバインダーを使って成型し、長繊維はそれらを束ねて任意の太さになるようにしたものを適切な仕様でカットして用いる。これら繊維状構造では、機能性成分を含む水溶液を保水基材11から毛細管現象により吸い上げることができる。
【0040】
給水手段3は、ビタミン類などの機能性成分を含む水溶液を収容するとともに、毛細管現象などを利用して、常時、上記保水基材11に機能性成分を含む水溶液を供給する手段であり、本実施形態では、収容瓶13と供給チューブ14とから構成されており、その内部には水量センサ15が設けられている。
【0041】
機能性成分としては、ビタミンC(L−アスコルビン酸)、ビタミンCエステル(L−アスコルビン酸リン酸マグネシウム、L−アスコルビン酸リン酸ナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウムなど)、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンD、ビタミンDα−リポ酸、アミノ酸、茶葉抽出物(カテキン、タンニン、サポニン、テアニン、カフェインなど)、ヒアルロン酸、コラーゲン、アロマ精油(ラベンダー、ローズマリー、レモングラス、ティートリー、セージ、クローブ、オレンジ、グレープフルーツ、シナモン、ジャスミンなど)、コーヒー豆、茶葉、ワサビ、ヒノキチオール、キチン、キトサン、プロポリスなどのような有機系可溶性成分が挙げられ、その他、無機物(無機系可溶性成分)では銀または食塩が挙げられる。
【0042】
ここで「機能性」とは、生活環境を快適にして、健康に改善できる性質をいい、消臭性(脱臭、分解など)、抗微生物性(抗菌性、殺菌性、静菌性、抗カビ性、抗ウィルス性など)、リラクゼイション性(アロマテラピー性)、保湿性、抗酸化性、有害小生物忌避性、静電気抑制性、防塵性などのうち、少なくとも一種類の性質を有することを意味する。
【0043】
直流高電圧電源4は、例えば、10kV程度のDCマイナス電圧を発生させる電源であり、その負極が導線16を介して上記保水基材11に接続され、機能性成分を含む水溶液を保持する保水基材11を負に帯電させている。直流高電圧電源4の負極を保水基材11に接続することにより、電流は最も放電しやすい場所を求めて流れ、通常、先端が尖っている場所や金属など通電性に優れた場所に集まる性質を利用して、放出基材12へと集まることになる。
【0044】
機能性成分含有ミストの発生方法は、以上の如く構成された第1の実施形態のミスト発生装置1を用いて行われ、保水基材11に給水手段3から不揮発性の機能性成分を含む水溶液を供給し、不揮発性の機能性成分を含む水溶液を保持した保水基材11に直流高電圧電源4の負極を接続して負に帯電させるものである。このように不揮発性の機能性成分を含む水溶液を保持した保水基材11を負に帯電させると、上記保水基材11に突設された複数本の放出基材12の先端部まで電流が流れて自然放電現象が起こり、その放電作用でイオン風が発生し、このイオン風を利用してビタミン類等の機能性成分をナノサイズ(1〜100nm程度)の目に見えない微細なミストとともに大量に放出させることができる。
【0045】
多孔質成型体2は、セラミックス材料、合成樹脂材料、金属材料の1種類または2種類以上を複合化させて構成されており、放出基材12から放出される機能性成分含有ミストの粒子は、多孔質成型体2の電気伝導度あるいは電圧に左右され、およそ1〜100nm程度の粒子ミストになっているので、風を利用して室内の隅々まで飛散させることができる。また、放出基材12は運転中は常に湿潤状態であり、上述したように、放出基材12を構成する多孔質材料の保水量、放出基材12の長さおよび径や先端形状、本数または形状により、機能性成分を放出する性能が異なる。
【0046】
次に、機能性成分の長期的な効果が得られる第2の実施形態として、保水基材11と放出基材12とからなる多孔質成型体2に、不揮発性の機能性成分を担持させてもよい。具体的には、放出基材12の特性と同様に吸水力および保水力に優れた保水基材11に、無機または有機化合物のバインダーを用いて機能性成分を含浸させたり、或いは添着させる。多孔体や繊維体から成る保水基材11に無機または有機化合物のバインダーで機能性成分を固定させると、放出基材12への機能性成分の供給量または溶出量、吸い上げ速度を制御することができ、機能性成分の放出速度または放出量が制御可能となり、長期的な寿命が期待できる。
【0047】
固定する担持物の多孔体もしくは繊維体は、吸水力および保水力に優れていることが必要であり、特に多孔体の場合にはポーラス構造が連孔であることが重要である。素材としては、セラミックス繊維(セラミックスファイバー、ガラス繊維など)や有機繊維(ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維など)、金属繊維(ステンレス繊維、銅繊維、チタン繊維など)などをシート状またはブロック状に成形したものが挙げられ、その他、セラミックス粒子や金属粒子を焼結させた多孔質体やウレタン樹脂やスチレン樹脂などの発泡体が挙げられる。
【0048】
保水基材11に機能性成分を担持(固定)するバインダーとして、無機化合物では、珪酸リチウムや珪酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸ジルコニウム珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、エチルシリケート、シリカゾル、オルガノシリケートなどのケイ酸塩、あるいは、燐酸、ポリ燐酸、ウルトラポリ燐酸、燐酸アルミニウム、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウムなどの燐酸塩などが挙げられ、有機化合物では、メチルセルロースやカルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ウレタンエマルション、アクリルエマルション、酢酸ビニルエマルションなどが挙げられる。
【0049】
多孔体または繊維体の保水基材11への機能性成分の含浸、付着は、無機または有機化合物のバインダー水溶液に機能性成分の1種類もしくは2種類以上を配合したものを溶解し、この水溶液に保水基材11を接触させて乾燥させることにより行う。
【0050】
機能性成分を担持した保水基材11は、本実施形態においては、機能性成分が溶出した水溶液を放出基材12に供給するために設ける機能性成分ストックヤードとして機能するものであり、保水基材11に求められる特性は、第1に水溶液の保水量であり、第2に機能性成分が溶出した水溶液を長期に渡って供給できる構造である。すなわち、無機または有機化合物のバインダーを利用して水に機能性成分を徐々に溶出させてゆくことができれば、放出基材12への長期的な機能性成分の供給が可能となる。
【0051】
このように機能性成分を担持(固定)した保水基材11に給水手段3から水を供給し、保水状態の保水基材11に直流高電圧電源4の負極を接続して負に帯電させると、上記保水基材11に突設された複数本の放出基材12の先端部まで電流が流れて自然放電現象が起こり、その放電作用でイオン風が発生し、このイオン風により、保水基材11に固定された機能性成分は放出基材12まで水溶液として移動しながら、ナノサイズ(1〜100nm程度)の目に見えない微細なミストとともに大量に放出される。そして、使用する用途に応じて、放出基材12の材質選択や、放出基材12の長さおよび径や先端形状、本数を適宜設計することにより、機能性成分を含むミスト放出量を任意に設計することができる。
【0052】
本発明の機能性成分を空気中に放出することを可能とした発生装置1は、冷蔵庫の庫内やエアコン、空気清浄機および加湿器などのカートリッジやフィルター、ファンなどに応用することができる。例えば、冷蔵庫の庫内では、野菜、果物、肉および魚などの生鮮食料品の鮮度保持や消臭、抗菌などの効果が期待でき、エアコン、空気清浄機および加湿器などでは、肌に潤いを供給し肌の乾燥を抑えるなど、抗酸化や保湿効果、消臭、抗菌などが期待できる。さらに、自動車内やクリーンルームなどでは静電気防止対策としても利用できる。
【0053】
また、上記機能性成分を含んだミストは、その粒子径が1〜100nm程度のナノサイズであり、壁面などが濡れない程度の極めて微細な状態にあるので、ファン等の風を利用することにより、冷蔵庫の庫内や室内、車内の隅々まで行き渡らせることができる。
【0054】
さらに、皮膚への浸透性が高い超微細な機能性成分を含むミストが得られるので、皮膚への保湿効果、美白効果、シミやソバカス、火傷跡の低減効果などが期待され、美顔器用あるいは医療用のミスト発生装置への利用が期待できるものである。
【実施例】
【0055】
〔実施例1〕
実施例1は、機能性成分を含むミスト(以下、「ビタミンミスト」という。)の放出コントロールを可能にする目的で、放出基材の保水量の影響について評価したものである。
(試験装置)
図4に示すように、試験装置としては、一辺が1mの中空立方体状のアクリル製容器20(1m)の床上に、評価用のビタミンミスト発生装置21を設置し、このビタミンミスト発生装置21の放出基材を漏斗状のガラス製容器28で覆い、放出されたビタミンミストを直接吸引して、真空ポンプ26で真空引きした容器27内の純水にバブリングさせて溶解させる評価システムを用いた。また、アクリル製容器20は、予め25℃−55%RHに保持された室内に設置しておいた。図4において、22は保水基材、23は放出基材、24は吸い上げチューブ、25は直流高電圧電源である。試作した放出基材の長さは30mmで、太さ(径)は2.0mmφであり、下記表1には試作した放出基材の材質と重量%を示している。
【0056】
【表1】

【0057】
(試験条件)
試験条件は、測定環境が気温25℃、湿度55%、放出基材の材質がポリエステル繊維と多孔質アルミナ、放出基材の本数が24本、DCマイナス電圧が10kV、運転時間が6時間であり、ビタミン放出量測定機として日立製の分光光度計U−3010を用いた。
【0058】
(試験内容)
ビタミンミストの放出試験方法は、ビタミンミスト発生装置には、ナノサイズのミストを放出する基材として多孔質の放出基材が複数本突設されているが、放出基材の保水量、すなわち保水率を変えた場合に、放出基材から放出されるビタミンミストの時間当たりの放出量への影響について、放出基材の本数および先端形状、マイナス電圧を一定として、ミスト放出量を比較分析した。即ち、図4に示すように、アクリル製容器20内における密閉空間に、ビタミンミスト発生装置21と真空ポンプ26、容器27内に収容した純水などを準備し、ビタミンミスト発生装置21から放出されたビタミンミストをダイレクトに純水にバブリングさせ、純水に溶解した時間当たりのビタミン濃度を定量分析し、放出基材23の保水量による時間当たりのビタミン放出量を比較し、放出基材23の保水量を変えた仕様の試作基材を複数本準備し、保水量の異なる各試作基材におけるビタミンミスト放出能力を比較検証した。なお、本評価は、1%のビタミン水溶液を用い、時間当たりのビタミンミスト放出量を測定した。
【0059】
(ビタミン放出濃度の分析方法)
図5に示すように、このようにして放出試験をしたビタミンミストをバブリングして溶解させた純水のDPPHラジカル還元量の数値からビタミン成分であるアスコルビン酸濃度を求めた。分析方法はDPPH溶液にアスコルビン酸が溶解すると、その濃度によりDPPHラジカルが消去される性質(抗酸化作用)を利用して、アスコルビン酸の含有濃度を分光光度計を使って定量分析する方法である。
【0060】
DPPHを(和光純薬製:1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)0.125mmol/・エタノ−ル溶液に調製したものを5cc三角フラスコに入れ、それを30℃の恒温振とう水槽に入れる。まず、DPPHエタノ−ル溶液のピークを測定し、サンプル1ccを入れる。サンプルに抗酸化性があれば、DPPHエタノ−ル溶液のラジカルが減少し、紫色から黄色に溶液が変色する。そのときのピークをDPPHエタノ−ル溶液のピークから引いた値が、抗酸化力を示す値となる。
【0061】
(試験結果)
下記表2は、ポリエステル繊維からなる各試作基材の測定結果を示しており、図6は、この測定結果に基づいて、ポリエステル基材の保水率によるビタミン放出性能への影響を示した説明図である。
【0062】
【表2】

【0063】
また、下記表3は、セラミックス多孔体(多孔質アルミナ)からなる各試作基材の測定結果を示しており、図7は、この測定結果に基づいて、セラミックス多孔体基材の保水率によるビタミン放出性能への影響を示した説明図である。
【0064】
【表3】

【0065】
本実施例によれば、図6および図7に示すように、放出基材の保水量(保水率)の影響は、低保水量では思うようにビタミンミストが発生し難く、保水量80〜100%程度で最も多い発生量が得られる。しかし、更に保水量が多くなり過飽和になるにつれて、急速にビタミン発生量は低下するという傾向を確認することができた。放出基材の放出性能は、材質よりもその保水量に依存し、保水率は40〜130%の範囲、好ましくは80〜100%の範囲であることがビタミンミストを最も多く放出できる条件であると考えられる。
【0066】
〔実施例2〕
実施例2は、機能性成分を含むミスト(以下、「ビタミンミスト」という。)の放出コントロールを可能にする目的で、放出基材の長さと径(太さ)の影響について評価したものである。
【0067】
(試験装置)
試験装置としては、実施例1と同様に図4に示した評価システムを用いた。また、アクリル製容器20は、予め25℃−55%RHに保持された室内に設置しておいた。下記表4は、試作した放出基材の長さ/径を示している。
【0068】
【表4】

【0069】
(試験条件)
試験条件は、測定環境が気温25℃、湿度55%、放出基材の材質がポリエステル繊維、放出基材の本数が24本、DCマイナス電圧が10kV、運転時間が6時間であり、ビタミン放出量測定機として日立製の分光光度計U−3010を用いた。
【0070】
(試験内容)
ビタミンミストの放出試験方法は、ビタミンミスト発生装置には、ナノサイズのミストを放出する基材として多孔質の放出基材が複数本突設されているが、放出基材の長さまたは径を変えた場合に、放出基材から放出されるビタミンミストの時間当たりの放出量への影響について、放出基材の本数および先端形状、マイナス電圧を一定として、ミスト放出量を比較分析した。即ち、図4に示すように、アクリル製容器20内における密閉空間に、ビタミンミスト発生装置21と真空ポンプ26、容器27に収容した純水などを準備し、ビタミンミスト発生装置21から放出されたビタミンミストをダイレクトに純水にバブリングさせ、純水に溶解した時間当たりのビタミン濃度を定量分析し、放出基材の長さまたは径による時間当たりのビタミン放出量を比較し、放出基材の長さまたは径を変えた場合のビタミンミスト放出能力を比較検証した。なお、本評価は、1%のビタミン水溶液を用い、時間当たりのビタミンミスト放出量を測定した。
【0071】
(ビタミン放出濃度の分析方法)
ビタミン放出濃度の分析方法は、実施例1と同様に、アスコルビン酸の含有濃度を分光光度計を使って定量分析する方法を採った。
【0072】
(試験結果)
下記表5に各試作基材の測定結果を示しており、図8は、この測定結果に基づいて、放出基材の長さ/太さによる放出量への影響を示した説明図である。
【0073】
【表5】

【0074】
本実施例によれば、図8に示すように、放出基材の長さおよび太さ(径)の影響は、長さが長くなるほどビタミンミストの放出量が多いという傾向を確認することができた。また、長さが同じ場合には、放出基材の太さが太くなるほどビタミンミストの放出量が減少するという傾向を確認することができた。
【0075】
さらに、ビタミンミストの放出量を多くする適正条件は、放出基材の長さが長く、太さ(径)は1〜2mm程度が好ましいと判断される。また、放出基材の長さは、20mmを超えると放出量が安定してくる傾向があり、15mm程度を下回ると急激に減少すると考えられる。
【0076】
〔実施例3〕
実施例3は、機能性成分を含むミスト(以下、「ビタミンミスト」という。)の放出コントロールを可能にする目的で、放出基材の先端部の形状(先端形状)の影響について評価したものである。
【0077】
(試験装置)
試験装置としては、実施例1および実施例2と同様に図4に示した評価システムを用いた。また、アクリル製容器20は、予め25℃−55%RHに保持された室内に設置しておいた。図9は、試作した放出基材の先端形状を示している。
【0078】
(試験条件)
試験条件は、実施例2と同様であり、ビタミン放出量測定機として日立製の分光光度計U−3010を用いた。
【0079】
(試験内容)
ビタミンミストの放出試験方法は、ビタミンミスト発生装置には、ナノサイズのミストを放出する基材として多孔質の放出基材が複数本突設されているが、放出基材の先端形状を変えた場合に、放出基材から放出されるビタミンミストの時間当たりの放出量への影響について、放出基材の本数およびマイナス電圧を一定として、ミスト放出量を比較分析した。即ち、図4に示すように、アクリル製容器20内における密閉空間に、ビタミンミスト発生装置21と真空ポンプ26、容器27に収容した純水などを準備し、ビタミンミスト発生装置21から放出されたビタミンミストをダイレクトに純水にバブリングさせ、純水に溶解した時間当たりのビタミン濃度を定量分析し、放出基材の先端形状による時間当たりのビタミン放出量を比較し、放出基材の先端形状を変えた場合のビタミンミスト放出能力を比較検証した。なお、本評価は、1%のビタミン水溶液を用い、時間当たりのビタミンミスト放出量を測定した。
【0080】
(ビタミン放出濃度の分析方法)
ビタミン放出濃度の分析方法は、実施例1および実施例2と同様に、アスコルビン酸の含有濃度を分光光度計を使って定量分析する方法で行った。
【0081】
(試験結果)
下記表6に各試作基材の測定結果を示しており、図10は、この測定結果に基づいて、放出基材の先端形状によるビタミンミスト放出量への影響を示した説明図である。
【0082】
【表6】

【0083】
本実施例によれば、図10に示すように、放出基材の先端形状は、あまりに鋭利に尖っている試作基材(1)の超鋭利形状や、試作基材(5)のフラット形状は、通電時間が経過してもアスコルビン酸濃度が高まり難い形状であると判断される。放出基材の先端形状は、試作基材(3)や(4)の丸みを帯びた形状が機能性成分を含んだミストを放出するのに適していると考えられる。
【0084】
〔実施例4〕
実施例4は、ビタミンミストの発生装置が、加湿器では十分対応ができなかった室内の調湿コントロールを可能にすることを確認する目的で、ビタミンミストの発生装置による調湿試験データを提供するものである。
【0085】
(試験装置)
図11に示すように、試験装置としては、一辺が1mの中空立方体状のアクリル製容器30(1m)の上部に、評価用のビタミンミスト発生装置31を取り付け、アクリル製容器30の床上にはエアーファン(軸流ファン)32および湿度データーローガー33を設置した評価システムを用いた。また、アクリル製容器30は、予め25℃−55%RHに保持された室内に設置しておいた。このような試験装置を用いて、放出基材(ピン)の本数またはマイナス電圧の違いによるビタミンミスト放出量の影響について試験した。
【0086】
(試験条件)
試験条件は、測定環境が気温25℃、湿度55%、放出基材の本数が24本、18本、12本、6本、DCマイナス電圧が10kVと5kV、運転時間が6時間であり、湿度測定機としてデジタル式湿度データーローガーを用いた。
【0087】
(試験内容)
ビタミンミストの放出試験方法は、ビタミンミスト発生装置には、ナノサイズのミストを放出する基材として多孔質の放出基材が複数本突設されているが、放出基材の本数を変えた場合、またはDC電源から発生させるマイナス電圧を変えた場合に、放出基材から放出されるビタミンミストの放出量への影響について、アクリル製容器30内における密閉空間での湿度変化を測定し、諸条件における調湿効果を比較検証した。なお、本評価は、5%のビタミン水溶液を用い、アクリル製容器30内における密閉空間での湿度変化を測定した。
【0088】
(試験結果)
下記表7に各試作基材の測定結果を示しており、図12は、この測定結果に基づいて、30分毎のクリアミスト放出による湿度の推移を示した説明図である。
【0089】
【表7】

【0090】
本実施例によれば、図12に示すように、ビタミンミストの放出基材(ピン)の本数は、放出するビタミンミストに大きく影響していることが判る。また、放出基材の本数が同一の場合、負荷される電圧によりビタミンミストの放出量は影響し、放出基材の本数が多くなるにつれて、電圧差によるビタミンミストの放出量の差が大きくなる傾向が見られた。さらに、放出基材の本数は、運転時間とともにクリアミスト放出量の差が大きくなる傾向が見られた。特に6本では、電圧差による影響がほとんど見られず、ある程度の本数の放出基材が必要と判断される。上記実施例1から実施例3で説明したように、その他に放出基材の保水量、放出基材の長さや太さ(径)、先端形状などによりビタミンミストの放出量が影響し、調湿効果も異なると思われる。このように放出させるビタミンミストの放出量は、いくつかの条件設定にてコントロール可能であると思われる。
【0091】
〔実施例5〕
実施例5は、ビタミンミスト発生装置を冷蔵庫の庫内取り付けた場合の庫内環境の改善効果を検証したものである。
【0092】
まず、図13に示すように、冷蔵庫45の野菜室46内にビタミンミスト発生装置41を取り付け、保水基材42に突設する放出基材43の本数を0本、6本、9本、12本、15本に変化させて、放出基材の本数と加湿依存性を評価した。なお、44は保水基材42にビタミン水を供給する給水手段である。下記表8は、野菜室内の初期湿度が45%である場合の各本数における10分後、30分後、60分後、90分後の湿度の測定結果を示すものであり、図14は、この測定結果に基づいて、放出基材の本数と加湿依存性を示す説明図である。図示するように、放出基材の本数が多いほど加湿効果が高く、時間が経過するにつれて加湿効果が増大しているのが判る。
【0093】
【表8】

【0094】
また、図15は、ビタミンミスト運転による野菜室の保水性比較を示す説明図であり、ミストなしの場合、ミストのみを放出させた場合、およびビタミンミストを放出させた場合におけるほうれん草の保水性を比較している。図示するように、ほうれん草の保水性はいずれの場合でも時間が経過するにつれて低下するものの、全評価期間に亘ってビタミンミストを放出させた場合が多の場合に比べて保水性が高いことが判った。
【0095】
〔実施例6〕
実施例6は、ビタミンミスト発生装置をルームエアコン、空気清浄機、または加湿器に応用する場合の室内環境の改善効果を検証したものである。
これらの機器に応用する場合の装置構成としては、図16に示すように、ルームエアコン、空気清浄機、または加湿器などの吹き出し口等にビタミンミスト発生装置51を取り付け、保水基材52に突設する放出基材53に給水手段54から水またはビタミン水溶液を供給し、直流高電圧電源55の負極を保水基材52に接続して、保水状態の保水基材52を負に帯電させるものが考えられる。
【0096】
(試験内容)
1mの立方体をした密閉容器内に吸引式タバコ煙発生装置で5本のタバコ(マイルドセブン)の煙を満たし、アンモニアガス専用のガス検知管(ガステック社製)を用いて、ドライミスト連続運転における残留アンモニア濃度を30分後、60分後に計測した。タバコが全部燃え切った時点を初期濃度とし、ドライミストのスイッチをオンにした。
30分後、60分後の各臭気成分の消臭率の算出方法は、次式により求めた。
【0097】
消臭率(%) η30=(1−C30/C)×100
η60=(1−C60/C)×100
【0098】
(試験結果)
下記表9は、ドライミスト−10kVの場合、ドライミスト−10kVおよび消臭剤の場合、ドライミスト−5kVの場合、空運転した場合おける30分後、60分後のアンモニア濃度の測定結果を示すものであり、図17は、この測定結果に基づいて、アンモニア濃度の時間変化を示す説明図である。
【0099】
【表9】

【0100】
本実施例によれば、図17に示すように、いずれの場合も時間が経過するにつれてアンモニア濃度が低下してきており、ドライミスト−10kVの場合とドライミスト−10kVおよび消臭剤の場合がアンモニア消臭効果が高いことが判る。
【0101】
〔実施例7〕
実施例7は、ビタミンミスト発生装置を美顔器に応用する場合であり、ビタミンを含んだドライミストエアーが皮膚の水分に及ぼす影響を肌水分計を使って検証したものである。
【0102】
(測定条件)
測定条件としては、50歳男性、35歳男性、45歳女性、および22歳女性の4名の被験者について、顔(目尻左右、口元左右)を測定箇所として、肌水分率、測定時の温度および湿度を測定した。また、測定装置にはコルネオメーター(Corneometer:水分測定能力 0.1% 測定面積 49mm)を用い、空調条件は温度25±1℃で湿度50〜60%とした。
【0103】
(試験方法)
試験方法は、(1)まず、30分間空調を作動させた一定環境の部屋で被験者達を安静にさせ、それから被験者達の測定箇所の肌水分率を測定した。(2)次に、空調を止め、ビタミンドライミストを発生させない状態にて、20分後、40分後、60分後の各測定箇所の肌水分率を測定し、部屋の室温および湿度も計測した。(3)その後、空気清浄機を停止して、再度、30分間空調を入れた一定環境の部屋で被験者達を安静にさせ、それから被験者達の測定箇所の肌水分率を測定した。(4)そして、ビタミンドライミストを取り付けた空気清浄機を運転させ、上記(2)と同様に20分後、40分後、60分後の各測定箇所の肌水分率を測定し、部屋の室温および湿度も計測した。
【0104】
(試験結果)
図18は左目尻の皮膚保水率への影響を示す説明図、図19は右目尻の皮膚保水率への影響を示す説明図、図20は左口元の皮膚保水率への影響を示す説明図、図21は右口元の皮膚保水率への影響を示す説明図である。これらの図面に示すように、被験者および測定箇所によって多少のばらつきはあるものの、全体として時間が経過するにつれて皮膚保水率はおおよそ増大する傾向を示しているが、いずれの被験者の場合でも、ビタミンドライミストを発生させた場合の方がビタミンを含まないノマルミストを発生させた場合に比べて左目尻の皮膚保水率が高いことが判る。
【0105】
〔実施例8〕
実施例8は、ミスト発生装置を空気清浄機に適用した場合の室内環境の改善効果を検証したものである。
まず、下記表10は、室内においてミストを発生させた場合、ナノeマイナスイオンを発生させた場合、空運転した場合の30分後、60分後のホルムアルデヒド消臭性能の測定結果を示すものであり、図22は、この測定結果に基づいて、ホルムアルデヒドの消臭速度の比較を示す説明図である。
【0106】
【表10】

【0107】
図22に示すように、いずれの場合でも時間経過によりホルムアルデヒド消臭率は高くなるが、ミストを発生させた場合が他の場合に比べてホルムアルデヒド消臭効果が高いことが判る。
【0108】
次に、下記表11は、室内においてミストを発生させた場合、ナノeマイナスイオンを発生させた場合、空運転した場合の30分後、60分後のアンモニア消臭性能の測定結果を示すものであり、図23は、この測定結果に基づいて、アンモニアの消臭速度の比較を示す説明図である。
【0109】
【表11】

【0110】
図23に示すように、いずれの場合でも時間経過によりアンモニア消臭率は高くなるが、ミストを発生させた場合が他の場合に比べてアンモニア消臭効果が高いことが判る。
また、下記表12は、タバコ粉塵を自然減衰させた場合、静電フィルターにより除去した場合、ミストを発生させた場合、ナノeマイナスイオンを発生させた場合の10分後、20分後、30分後、40分後のタバコ粉塵濃度の測定結果を示すものであり、図24は、この測定結果に基づいて、タバコ粉塵濃度の比較を示す説明図である。
【0111】
【表12】

【0112】
図24に示すように、いずれの場合でも時間経過によりタバコ粉塵濃度は徐々に低下するが、ビタミンミストを発生させた場合が他の場合に比べてタバコ粉塵濃度を急激に低下させることが判る。
【0113】
さらに、下記表13は、ミストを発生させた場合、ナノeマイナスイオンを発生させた場合、空運転をした場合の30分後、60分後のタバコ消臭性能の測定結果を示すものであり、図25は、この測定結果に基づいて、タバコ消臭速度の比較を示す説明図である。
【0114】
【表13】

【0115】
図25に示すように、いずれの場合でも時間経過によりタバコ消臭率は高くなるが、ビタミンミストを発生させた場合が他の場合に比べてタバコ消臭効果が高いことが判る。
【0116】
なお、上記した実施の形態および実施例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、上記した説明に限らず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】機能性成分含有ミストの発生装置を示す概略図である。
【図2】放出基材の先端部の形状を示す概略図である。
【図3】放出基材を繊維状構造に形成する場合の具体的構成を示す概略図である。
【図4】ビタミンミスト放出の評価システムを示す概略図である。
【図5】アスコルビン酸の含有濃度を分光光度計を使って定量分析する方法を示す概念図である。
【図6】ポリエステル基材の保水率によるビタミン放出性能への影響を示した説明図である。
【図7】セラミックス多孔体基材の保水率によるビタミン放出性能への影響を示した説明図である。
【図8】放出基材の長さ/太さによる放出量への影響を示した説明図である。
【図9】試作した各放出基材の先端形状を示す概略図である。
【図10】放出基材の先端形状によるビタミンミスト放出量への影響を示した説明図である。
【図11】調湿試験の試験装置を示す概略図である。
【図12】30分毎のクリアミスト放出による湿度の推移を示した説明図である。
【図13】冷蔵庫の野菜室内にビタミンミスト発生装置を取り付ける場合を示す概略図である。
【図14】放出基材の本数と加湿依存性を示す説明図である。
【図15】ビタミンミスト運転による野菜室の保水性比較を示す説明図である。
【図16】ビタミンミスト発生装置をルームエアコン、空気清浄機、または加湿器に応用する場合の装置構成を示す概略図である。
【図17】アンモニア濃度の時間変化を示す説明図である。
【図18】左目尻の皮膚保水率への影響を示す説明図である。
【図19】右目尻の皮膚保水率への影響を示す説明図である。
【図20】左口元の皮膚保水率への影響を示す説明図である。
【図21】右口元の皮膚保水率への影響を示す説明図である。
【図22】ホルムアルデヒドの消臭速度の比較を示す説明図である。
【図23】アンモニアの消臭速度の比較を示す説明図である。
【図24】タバコ粉塵濃度の比較を示す説明図である。
【図25】タバコ消臭速度の比較を示す説明図である。
【符号の説明】
【0118】
1 機能性成分含有ミストの発生装置(ミスト発生装置)
2 多孔質成型体
3 給水手段
4 直流高電圧電源
11 保水基材
12 放出基材
13 収容瓶
14 供給チューブ
15 水量センサ
16 導線
17 LED
20 アクリル製容器
21 ビタミンミスト発生装置
22 保水基材
23 放出基材
24 吸い上げチューブ
25 直流高電圧電源
26 真空ポンプ
27 容器
28 ガラス製容器
30 アクリル製容器
31 ビタミンミスト発生装置
32 エアーファン(軸流ファン)
33 湿度データーローガー
41 ビタミンミスト発生装置
42 保水基材
43 放出基材
44 給水手段
45 冷蔵庫
46 野菜室
51 ビタミンミスト発生装置
52 保水基材
53 放出基材
54 給水手段
55 直流高電圧電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の保水基材に多孔質の放出基材を突設して吸水性および保水性を有する多孔質成型体と、
前記保水基材に、不揮発性の機能性成分を含む水溶液を保水させる給水手段と、
前記多孔質成型体に負極が接続され、不揮発性の機能性成分を含む水溶液を保持した前記多孔質成型体を負に帯電させる直流高電圧電源と、
を備え、前記放出基材から機能性成分含有ミストを放出させることを特徴とする機能性成分含有ミストの発生装置。
【請求項2】
前記多孔質成型体に、不揮発性の機能性成分が担持され、
前記給水手段は前記保水基材に水を供給することを特徴とする請求項1に記載の機能性成分含有ミストの発生装置。
【請求項3】
前記機能性成分が、ビタミン類、ビタミン誘導体、カテキン、ヒアルロン酸、アミノ酸、コラーゲンのような有機系可溶性成分、あるいは、銀または食塩のような無機系可溶性成分のうちの1種類もしくは2種類以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機能性成分含有ミストの発生装置。
【請求項4】
前記放出基材および前記保水基材が、セラミックス材料、合成樹脂材料もしくは金属材料の多孔体、または繊維体により形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の機能性成分含有ミストの発生装置。
【請求項5】
前記放出基材の保水率は40〜130%であり、前記保水基材よりも高い保水率を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の機能性成分含有ミストの発生装置。
【請求項6】
前記放出基材は棒状体であり、前記保水基材に複数突設されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の機能性成分含有ミストの発生装置。
【請求項7】
前記放出基材の先端部が丸みを帯びた曲面で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の機能性成分含有ミストの発生装置。
【請求項8】
多孔質成型体に不揮発性の機能性成分を含む水溶液を吸水保持し、該多孔質成型体に直流高電圧電源の負極を接続して負に帯電させることにより、該多孔質成型体に突設した放出基材から不揮発性機能性成分を含むミストを放出させることを特徴とする機能性成分含有ミストの発生方法。
【請求項9】
無機または有機化合物のバインダーにより機能性成分を担持させた多孔質成型体に水を吸水保持し、該多孔質成型体に直流高電圧電源の負極を接続して負に帯電させることにより、該多孔質成型体に突設した放出基材から不揮発性機能性成分を含むミストを放出させることを特徴とする機能性成分含有ミストの発生方法。
【請求項10】
前記機能性成分として、ビタミン類、ビタミン誘導体、カテキン、ヒアルロン酸、アミノ酸、コラーゲンのような有機系可溶性成分、あるいは、銀または食塩のような無機系可溶性成分のうちの1種類もしくは2種類以上を選択することを特徴とする請求項8または請求項9のいずれかに記載の機能性成分含有ミストの発生方法。
【請求項11】
多孔質成型体が、セラミックス材料、合成樹脂材料もしくは金属材料の多孔体、または繊維体であることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれかに記載の機能性成分含有ミストの発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2006−212156(P2006−212156A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26958(P2005−26958)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(596129008)泰陽株式会社 (2)
【Fターム(参考)】