説明

機能性立体ネット編地シート

【課題】 立体ネット編地を利用した機能性立体ネット編地シートを提供する。
【解決手段】 マルチフィラメント糸をネット地組織に編成した表編地21と裏編地22とをモノフィラメント糸からなる連結糸23で所定の厚み間隔を保って連結してなるダブルラッセル編成による立体ネット編地20において、表編地21の6角ネット孔21Hを裏編地22の6角ネット孔22Hに対して粗目に形成し、粗目に形成した表編地21の6角ネット孔21Hを介して表編地21と裏編地22との間に、例えば、マイナスイオン発生機能や、芳香放散機能を有する随意の種類の機能性の球状体35を緊密に装填し、全体として特定の機能を有するシート状体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルラッセル編成の立体ネット編地シートの内部空隙に各種の機能性を発揮する球状体を装填してなる機能性立体ネット編地シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ダブルラッセル編成による立体ネット編地が提供されている。この素材は、ポリエステルやナイロンから紡製されたマルチフィラメント糸をネット地組織に編成した表編地と裏編地とを両者間を往来するモノフィラメントの連結糸で所定の厚み間隔を保つように連結してなり、表裏のネット地は、霜柱で相互に浮き上がったかのような特異な外観を呈する。極めて強靭で、クッション性、体圧分散性、排水性、通気性に優れ、技術的にも高度な繊維製品である。しかし、余りにも素材特性が繊維製品に要求される一般特性から極端にかけ離れているために、高度な繊維製品であるにもかかわらず一般用途には、却って使い難いという面がある。
【0003】
【特許文献1】特許2720985号公報
【特許文献2】特開2001−89959号公報 立体ネット編地の強靭性、クッション性、体圧分散性、通気性に着目し、椅子用クッションシート材に適した3次元立体シートや椅子用置き敷きクッションシートとしての提案が既になされている(特許文献1および特許文献2参照)。しかし、立体ネット編地を利用した製品の普及度は、全体としては低い現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記立体ネット編地の特異的な特性を利用して新規なシート状素材を開発する観点からなされたものであり、従来存在した製品の欠点や問題点を克服することを意識していない。開発に際しての着目点は、表編地と裏編地との間に存在する空隙である。すなわち、この空隙に一定の機能を発揮する各種の組成物を装填することによって立体ネット編地を多様な用途に応用することができるようになると考えられる。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、いかなる組成物をいかなる形態のものとしてどのような方法で立体ネット編地の空隙内に安定に装填するかということである。具体的には、立体ネット編地の表編地と裏編地との間には、モノフィラメントの連結糸が霜柱様に往来しているため、単板状の物体を装填することはできない。ビーズ状の物体を立体ネット編地の切断端面から自由移動によって流し込み端面を綴じる方法も試みられたが、この場合には、ビーズ状物体の片寄りを制御することができない。本発明は、これらの問題およびその他の付随的な問題を解決して提案されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として本発明は、次のような構成を採用する。
【0007】
本発明の請求項1に記載の機能性立体ネット編地シートは、マルチフィラメント糸を粗目の6角ネット孔を有するネット地組織に編成した表編地とマルチフィラメント糸を細目の6角ネット孔を有するネット地組織に編成した裏編地とを、表編地と裏編地との間を往来するように編み込まれたモノフィラメント糸からなる連結糸で所定の厚み間隔を保って連結してなるダブルラッセル編製による立体ネット編地の厚み間隔内に、多数の機能性の球状体を装填してなり、この際、機能性の球状体は、表編地の6角ネット孔を押し広げて通過可能な直径に成形され、表編地の6角ネット孔を介して緊密に装填することを特徴とする。
【0008】
上記構成を有する立体ネット編地の表編地および裏編地は、共にマルチフィラメント糸をネット地組織に編成したものであるから、大きな伸縮性を発揮することができる。すなわち、表編地および裏編地の6角ネット孔は、外力によって強制的に開拡させることができる。ここで、裏編地の6角ネット孔に対して表編地の6角ネット孔は、意図的に粗目としてあり、したがって、粗目である表編地の6角ネット孔を介して立体ネット編地の厚み間隔内に緊密に装填された機能性の球状体は、細目である裏編地の6角ネット孔からは脱出することができない。すなわち、立体ネット編地は、機能性の球状体を特定位置に担持する担体として利用されている。機能性の球状体は、表編地の全ての6角ネット孔に装填してもよく、また、一部の6角ネット孔のみに装填してもよい。球状体は、方向性がないので、方向性を選別することなく装填することが可能であり、球状体を整然と装填した立体ネット編地は、皮膚がマッサージされるような特異な肌触りを発揮する。したがって、球状体の機能用途のみならず、この肌触りを生かした用途にも応用することができる。なお、球状体の組成や機能は、特に限定されることはなく、表編地のネット孔6角ネット孔を介して装填可能な直径に形成されていれば足りる。
【0009】
本発明の請求項2に記載の機能性立体ネット編地シートは、表編地と裏編地との間の厚み間隔内に、異なる機能を有する複数種類の球状体を混在させて装填することを特徴とする。
【0010】
上記構成を有する機能性立体ネット編地シートは、装填する2種類以上の球状体の機能が、例えば、芳香性と消臭性のように互いに相殺し合う機能でない限りは、複合的または相乗的な機能を発揮することができるので、機能の組合せによってより広範囲の用途に適合させることが可能になる。
【0011】
本発明の請求項3に記載の機能性立体ネット編地シートは、装填する球状体が、遠赤外線放射能を有するセラミックスを主たる機能成分とする組成物の球状成形物であることを特徴とする。
【0012】
上記構成を有する機能性立体ネット編地シートは、浴室の洗い場の床面や浴槽の底面、浴室の出入り口等に敷設することによって、遠赤外線による身体芯部からの安定した温暖感をもたらすことができる。布団の下敷として用いても極めて快適である。
【0013】
本発明の請求項4に記載の機能性立体ネット編地シートは、装填する球状体が、マイナスイオン放射能を有するセラミックスを主たる機能成分とする組成物の球状成形物であることを特徴とする。
【0014】
上記構成を有する機能性立体ネット編地シートは、球状体から発生するマイナスイオンによって、臭気物質の活性を失活させる効果や、特有のリラックス効果を奏することができるので。トイレ床面の敷物や乗り物のシートの背当てや椅子敷き等に好適に使用することができる。
【0015】
本発明の請求項5に記載の機能性立体ネット編地シートは、装填する球状体が、香気放散能を有する芳香性材料を主たる機能成分とする組成物の球状成形物であることを特徴とする。
【0016】
上記構成において球状体を組成する芳香性材料としては、自然の植物から抽出した自然芳香物質を用いることが好ましい。例えば、ヒノキチオール、バニラ、ラベンダ、ローズ、イグサ、タケ、ササ、クロモジ、クスノキ等の抽出精油成分である。枕カバー等に使用することに適する。
【0017】
本発明の請求項6に記載の機能性立体ネット編地シートは、装填する球状体が、調湿能を有する炭化物を主たる機能成分とする組成物の球状成形物であることを特徴とする。
【0018】
上記構成を有する機能性立体ネット編地シートは、押し入れ内の敷物や、洋服ダンスと壁面間の介装部材として用いることによって、湿気や、湿気に起因するカビの発生を防止することができる。
【0019】
本発明の請求項7に記載の機能性立体ネット編地シートは、装填する球状体が、弾性回復能を有する多孔質組成物の球状成形物であることを特徴とする。
【0020】
上記構成を有する機能性立体ネット編地シートにおいて、弾性回復能を有する多孔質組成物とは、発泡ゴムや、低反発性または高反発性のスポンジ等を指している。装填する球状体の弾性力を加減することによって、体圧分散性等の調節をすることができるので、座布団カバーやベッドの下敷きや上敷き等の多様な用途に適応することができる。また、球状体が変形するので、利用者において容易に球状体の脱着をし、個人的に好ましい状態として利用することもできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の機能性立体ネット編地シートは、ネット地組織に編成した表編地の6角ネット孔を粗目するとともに、ネット地組織に編成した裏編地の6角ネット孔を細目に設定し、表編地と裏編地との間の厚み間隔内に表編地の6角ネット孔を押し広げて通過可能な直径に成形した各種の機能性の球状体を表編地の6角ネット孔を介して緊密に装填することによって、立体ネット編地によって随意に選択可能な球状体を保持したシート状体を形成することができるので、球状体の機能に適合する各種の用途に幅広く応用することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を引用しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
本発明に係る機能性立体ネット編地シート50は、多数個の機能性の球状体35…と立体ネット編地20とによって構成されている(図1,図2)。
【0024】
立体ネット編地20は、専用のダブルラッセル編製機によって編み上げられた特殊構造のネット地であり、通常、「三次元立体ネット」、「三次元シート」、「立体編み物」等とも称して従来より市販に供されているものである。この立体ネット編地20は、いずれも、6角ネット孔を有する表編地21と裏編地22と、両者間を往来するように編み込まれる連結糸23からなる。連結糸23は、表編地21と裏編地22と所定の厚み間隔D1を保って連結し、その変形性によって立体ネット編地20に厚み間隔相当のクッション性を付与している。そして、表編地21の6角ネット孔21Hのサイズ、裏編地22の6角ネット孔22Hのサイズおよび厚み間隔D1は、ダブルラッセル編製機の設定によって個別に変化させることができる。
【0025】
立体ネット編地20において通常使用される繊維材料は、ナイロンまたはポリエステルである。また、表編地21および裏編地22には、強度に捲縮加工されたマルチフィラメント糸が使用され、連結糸23には丸断面の太いモノフィラメント糸が用いられている。この結果、表編地21および裏編地22を構成している構成糸21S糸は、引っ張り外力によって単位長さL1の略150%にまで伸びることができる(図3)。
【0026】
本発明における立体ネット編地20には、表編地21の6角ネット孔21を粗目とし、裏編地22の6角ネット孔22Hを相対的に細目とするとともに、表編地21と裏編地22間の厚み間隔D1を機能性の球状体35の直径D2相当に設定した立体ネット編地20が用いられる。また、表編地21の6角ネット孔21Hのサイズと球状体35の直径D2とは、人為的外力によって球状体35が6角ネット孔21Hを押し広げて通過可能であって、球状体35の通過後は、6角ネット孔21Hが球状体35の直径D2内に収まる態様となるようにサイズ設定されている(図4)。
【0027】
本実施の機能性立体ネット編地シート50に使用可能な球状体35は、極めて多種類に及ぶ。本実施の形態に用いるのは、一般的な陶材料にシリカの焼成微粉末を加えたものである。陶材料およびシリカの焼成微粉末は、市販のもので足りるが、シリカの微粉末は、マイナスイオンおよび遠赤外線発生用途に用いるものとして用途指定して提供されているものを用いることが好ましい。陶材料は、通常、粘土板状態で提供されているので、これを適度な大きさに裁断し、20重量%程度のシリカの微粉末を加え、均等質となるまで十分に水練りする。
【0028】
水練りした組成物は、造粒に適度する含水率に加圧脱水して造粒機にかけ、6角ネット孔21Hとの関係で要求される直径D2になるように調製する。所定の直径D2に造粒された組成物は、自然乾燥させ、これを電気炉に供し、800度〜900度で20分程度の一次焼きをする。一次焼きを経た組成物は、立体ネット編地シート50の用途によっては、このまま本発明用の球状体35として使用することもできる。ただし、この状態の球状体35は、素焼き状態であって表面が粗いので、肌触りを改善するには、一次焼きしたものに少量の釉薬を付与し、これを900度〜1000度の温度で60分〜120分程度の本焼きをすることによって適度な肌触りの球状体35とすることができる。なお、この際に用いる釉薬にも、20重量%程度のシリカを加えることがマイナスイオンおよび遠赤外線の発生量を確保する上で好ましい。
【0029】
立体ネット編地20は、用途毎の使用サイズに裁断し、縁処理加工25をしておく(図1)。完成した球状体35を立体ネット編地20の表編地21側から6角ネット孔21H内に押し入れる。6角ネット孔21Hを介して立体ネット編地20の厚み間隔D1内に装填された球状体35は、表編地21と裏編地22と連結糸23とによってその位置に拘束保持される(図5)。なお、この作業は、現時点では手作業であるが、困難な作業内容ではないので球状体35の装填作業は、意外に時間を要しない。しかし、立体ネット編地20をロールに巻き付け、球状体35上を転動させる等の作業の合理化を検討中である。
【0030】
この形態の機能性立体ネット編地シート50は、例えば、浴槽の底に敷設して利用することによって、マイナスイオン浴、遠赤外線浴、マッサージ感のある独特の肌触りを堪能することができる。この形態の球状体35は、硬質物質であるが、各球状体35は、立体ネット編地20の裏編地22の上に載った状態であるため、直接浴槽とは接触せず、浴槽を傷つけるような不都合も発生しない。水切れが良好であるため、使用後、シャワー水を掛けて浴槽の側面に掛けておくのみで、衛生状態を保つことができる。この形態の機能性立体ネット編地シート50は、マイナスイオンによる臭気物質の失活作用を有するので、炬燵敷きとしても好適性を示す。
【0031】
球状体35は、硬質のものに限らず、例えば、発泡ゴムやスポンジ等の弾性回復能を有する多孔質組成物を用いることができる。立体ネット編地20のみの場合のクッション性は、専ら連結糸23のみに依存するのであるが、立体ネット編地20に弾性を有する球状体35を装填することで、クッション性を自在に調節し、椅子や乗り物のシートの背当てや置き敷きにより好適な性格を付与することができる。この用途では、球状体35の装填位置や装填量を個人の好みに応じて変えられることも大きな利点となる。
【0032】
本発明の機能性立体ネット編地シート50は、立体ネット編地20に異なる機能を有する複数種類の球状体を混在させて装填することができることも大きな特徴である。例えば、乗り物のシートに用いる場合においても、マッサージ効果を欲する位置には、硬質の球状体35を装填し、クッション効果を欲する位置には、弾性体の球状体35を装填する等の利用が簡単に実現されるのである。
【0033】
なお、本発明の機能性立体ネット編地シート50に利用できる球状体35の種類は、上述したように多岐に及ぶが、これらを全て自ら製造することは、合理的であるとは言えない。ガラスの球状体35は、玩具用ビー玉の業者から、木製の球状体35は、木製ビーズ簾を手がけている業者から、弾性の球状体35は、スポンジボールの製造業者から、炭化物の球状体35は、燃料業者からそれぞれ入手すれば足り、これによって多様な産業分野に寄与することもできるのである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態を模式的に示す分解斜視図である。
【図3】本発明に使用する立体ネット編地の構成糸の説明図である。
【図4】本発明実施の形態における表編地の要部拡大平面図である。
【図5】本発明の実施の形態を示す要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0035】
D1 厚み間隔
D2 球状体の直径
20 立体ネット編地
21 表編地
21H 6角ネット孔
22 裏編地
22H 6角ネット孔
23 連結糸
35 球状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチフィラメント糸を粗目の6角ネット孔を有するネット地組織に編成した表編地とマルチフィラメント糸を細目の6角ネット孔を有するネット地組織に編成した裏編地とを、該表編地と裏編地との間を往来するように編み込まれたモノフィラメント糸からなる連結糸で所定の厚み間隔を保って連結してなるダブルラッセル編製による立体ネット編地の厚み間隔内に、多数の機能性の球状体を装填してなり、
前記機能性の球状体は、表編地の6角ネット孔を押し広げて通過可能な直径に成形され、前記表編地の6角ネット孔を介して緊密に装填することを特徴とする機能性立体ネット編地シート。
【請求項2】
異なる機能を有する複数種類の球状体を混在させて装填することを特徴とする請求項1に記載の機能性立体ネット編地シート。
【請求項3】
前記球状体は、遠赤外線放射能を有するセラミックスを主たる機能成分とする組成物の球状成形物であることを特徴とする請求項1に記載の機能性立体ネット編地シート。
【請求項4】
前記球状体は、マイナスイオン放射能を有するセラミックスを主たる機能成分とする組成物の球状成形物であることを特徴とする請求項1に記載の機能性立体ネット編地シート。
【請求項5】
前記球状体は、香気放散能を有する芳香性材料を主たる機能成分とする組成物の球状成形物であることを特徴とする請求項1に記載の機能性立体ネット編地シート。
【請求項6】
前記球状体は、調湿能を有する炭化物を主たる機能成分とする組成物の球状成形物であることを特徴とする請求項1に記載の機能性立体ネット編地シート。
【請求項7】
前記球状体は、弾性回復能を有する多孔質組成物の球状成形物であることを特徴とする請求項1に記載の機能性立体ネット編地シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−16363(P2007−16363A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201218(P2005−201218)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(594079349)
【出願人】(504329241)
【Fターム(参考)】