説明

機能発揮状態を強調表示できる緩衝部材並びにこれが適用された履物

【課題】 使用者が視覚的に安心感、信頼感を得られるよう、機能発揮状態を強調して表示できる緩衝部材等を開発することを技術課題とした。
【解決手段】 衝撃を吸収する主緩衝部2と、主緩衝部2の変形状態を確認させるための確認支援手段3とを具え、この確認支援手段3の像を露見部50に発現させるものであり、且つ前記確認支援手段3の像に対して光学的効果を加えるための光学素子5を具えたことを特徴として成り、主緩衝部2の変形が、露見部50に発現される確認支援手段3の像として光学的効果が加えられた状態で明示されるため、使用者はその変形の様子を視認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスポーツシューズに適用することが好ましい緩衝構造であって、特にその緩衝作用の視覚確認を容易にした、機能発揮状態を強調表示できる緩衝部材並びにこれが適用された履物に係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えばアスリート用スポーツシューズをはじめ、ウォーキングシューズからビジネスシューズに至る広い範囲で、履物には緩衝機能の向上が求められている。
この要請に応える手段として、ゲル状ブロックパーツ等の緩衝部材をソール部に組み込んで緩衝機能を向上させることが行われている。
そしてこのような機能については、ユーザーの満足感、信頼感を視覚的にも得られるように、緩衝部材の一部がソール部側面や底面等から目視できるような構造が採られている。
しかしながらこのような構造は、単に高機能な緩衝部材が組み込まれていることを表すに留まり、このものが実際に緩衝機能を発揮している状態までを顕示しているものではなかった。
【0003】
そこで本出願人らは緩衝機能基材を目的形状に成型して部材本体とし、この部材本体の表面に対して、部材本体にかかる外力による変形に伴って歪むインジケーション模様を設け、部材本体が外力を受けて変形したときに、この変形に追随して生じた歪みによって模様要素の配列の規則性が壊されることとなり、この歪みが視認できるものを提案した(特許文献1参照)。
【0004】
ところで実際の緩衝部材の変形について見ると、一般に緩衝機能のみを重視した場合には変形量が多いほうが好ましい。一方、変形が過剰である場合には足の蹴り出しが緩衝部材の変形にいわば食われた状態となってしまい、思うような動きが妨げられてしまうこととなり、特にアスリートにとっては致命的なものとなってしまう。
このため現状では、競技の種類、競技者の年齢等を勘案してそれに適した緩衝部材の硬さが選択決定されている。
結果的に見ると、選択されたゲル状ブロックパーツ等の緩衝部材は比較的硬く、前記特許文献1において提案された措置を施さなければ、その変形量は僅かであるため視覚的にはほとんどその変形が認識し得ないのが実情である。
【0005】
しかしながらアスリートにとっては、使用する用具に対して心理的な安心感、信頼感を維持していることが不可欠であって、スポーツシューズの場合には充分な緩衝機能が発揮されて足への無用な負担がないことを認識することで、競技への集中を高めることが可能となっている。
このようなスポーツシューズの機能に対する信頼感を醸成するにあたっては、緩衝部材の僅かな変形量であっても、この変形を認識・確認できることは、競技に臨むアスリートに対して、いわゆるメンタル面で極めて重要なファクターとなっている。
しかしながら現状では、このような要求までを充分に満足させる緩衝構造については提案されていないのが実情である。
【特許文献1】特願2006−049959
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、使用者が視覚的に安心感、信頼感を得られるよう、機能発揮状態を強調して表示できる緩衝部材等を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載の機能発揮状態を強調表示できる緩衝部材は、要緩衝機材内に組み込まれ弾性変形することにより衝撃を緩和する部材であって、この部材は、衝撃を吸収する主緩衝部と、主緩衝部の変形状態を確認させるための確認支援手段とを具え、この確認支援手段の像を露見部に発現させるものであり、且つ前記確認支援手段の像に対して光学的効果を加えるための光学素子を具えたことを特徴として成るものである。
この発明によれば、主緩衝部の変形が、露見部に発現される確認支援手段の像として光学的効果が加えられた状態で明示されるため、使用者はその変形の様子を視認することができる。
【0008】
また請求項2記載の機能発揮状態を強調表示できる緩衝部材は、前記要件に加え、前記光学素子は、凸レンズ、凹レンズ、フルネルレンズ、プリズムレンズの中から選択される一種のレンズまたは複数のレンズ作用体であることを特徴として成るものである。
この発明によれば、露見部に発現される確認支援手段の像を拡大して明示したり、実際の変形位置から変位させて明示することができる。
また特に拡大して明示するときには、使用者は主緩衝部の微細な変形までをも視認することが可能となる。
【0009】
更にまた請求項3記載の機能発揮状態を強調表示できる緩衝部材は、前記請求項1記載の要件に加え、前記光学素子は基台上に複数の柔軟突起が配列されて成るものであり、
この柔軟突起部は、無負荷あるいは軽負荷時には前記確認支援手段と点接触し、重負荷時には変形して前記確認支援手段と面接触するものであり、前記点接触時には柔軟突起部において光が全反射して確認支援手段の像が基台裏面の露見部に発現しない状態と成り、
一方、前記面接触時には変形した柔軟突起部において光が透過して確認支援手段の像が露見部に発現する状態と成るものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、緩衝部材が緩衝機能を発揮しているときのみ確認支援手段の像が露見部に発現されるため、使用者は明確に機能発揮状態を確認することができる。
【0010】
更にまた請求項4記載の機能発揮状態を強調表示できる緩衝部材は、前記要件に加え、前記光学素子は、主緩衝部と一体成型されたものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、光学素子に入射する光の減衰や乱反射を抑えて、確認支援手段の像を鮮明に発現させることができるとともに、緩衝部材の製造コストを抑えることができる。
【0011】
更にまた請求項5記載の機能発揮状態を強調表示できる緩衝構造は、前記要件に加え、前記露見部以外の個所に、外光を取り込む光輝導入手段を具えていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、露見部に発現される確認支援手段の像に対して別途光による装飾を加えることができる。
【0012】
また請求項6記載の機能発揮状態を強調表示できる緩衝構造が適用された履物は、前記請求1乃至5記載の緩衝部材を、ソール部に設けたことを特徴として成るものである。
この発明によれば、緩衝部材が緩衝機能を発揮している様子を強調して露見部に発現させることができるため、履物の使用者は視覚的に安心感、信頼感を得ることができ、履物製品に対する信頼性を高めるとともに、その商品価値を高めることができる。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、緩衝部材が緩衝機能を発揮している様子を、機能発揮状態が強調された確認支援手段の像として視認することができるため、使用者に視覚的な安心感、信頼感を与えることができ、もって製品への信頼性をも高めてその商品価値を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の「機能発揮状態を強調表示できる緩衝部材並びにこれが適用された履物」の最良の形態の一つは以下の実施例に説明するとおりであって、以下、緩衝部材1及びこのものが組み込まれたスポーツシューズSについて説明する。
なおこれらの実施例に対して、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例】
【0015】
図1中、符号Sで示すものは、要緩衝機材たる履物の一例であるスポーツシューズであって、このソール部S1のかかと側、あるいは側面等の要緩衝個所に、本発明の機能発揮状態を強調表示できる緩衝部材1(以下、緩衝部材1と称する。)が、その一部を外部に露出させ、確認支援手段3が外部より視認可能な状態で組み付けられる。
なお本発明の緩衝部材1は、組み付け対象を前出のスポーツシューズSに限るものではなく、例えば身体用プロテクタ、ヘルメット等を組み付け対象とすることができるものである。
【0016】
始めに前記緩衝部材1について説明すると、このものは衝撃を吸収する主緩衝部2と、この主緩衝部2の変形状態を確認させるための確認支援手段3とを具え、この確認支援手段3の像を露見部50に発現させるものであり、且つ前記確認支援手段3の像に対して光学的効果を加えるための光学素子5を具えて成るものである。
【0017】
前記主緩衝部2は、スチレン系、ウレタン系、ケイ素系の樹脂あるいはシリコーンゲルが採用されるものであるが、これらの他、良好な緩衝性能が確保されたものであれば、適宜のものを採用することができる。
なおスチレン系、ウレタン系、ケイ素系の樹脂によって形成された主緩衝部2は保形性が高いため、無垢の状態とされ、一方、シリコーンゲルによって形成された主緩衝部2は保形性が低いため、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の透明樹脂を素材とした表殻部材によって保形されるものである。
更に主緩衝部2は透明あるいは透明度が保たれる程度の着色が施されたものとする。
【0018】
次に前記確認支援手段3について説明すると、このものは一例としてポリエチレン等の樹脂を素材としたシート3aに対して、文字、記号、模様、ホログラフ等のマーカ3bを印刷して成るものであり、前記主緩衝部2に対して密接した状態で設置されるものである。
また前記マーカ3bを直接主緩衝部2に印刷するようにしてもよい。
【0019】
次に前記光学素子5について説明すると、このものは、後述する露見部50に発現させられる確認支援手段3の像に対して光学的効果を加えるためのものである。
なおこの光学素子5の形態は、請求項2で定義されたものと、請求項3で定義されたものとに大別されるため、以下、それぞれの形態毎に説明を行う。
【0020】
〔光学素子をレンズ作用体とした実施例〕
まず請求項2で定義された、光学素子5をレンズ作用体51とした実施例について説明する。
この実施例で示す光学素子5は図4に示すように、凸レンズ51a(図4(a)(b)参照)、凹レンズ51b(図4(c)(d)参照)、フルネルレンズ51c(図4(e)(f)参照)、プリズムレンズ51d(図4(g)(h)参照)の中から選択される一種のレンズまたは複数のレンズ作用体51が適用されたものである。
なお複数のレンズ作用体51が適用されたものの一例を図1、2に示すものであり、このものは主緩衝部2をプリズムレンズ51dと凸レンズ51aとを組み合わせて形成したものであり、凸レンズ51aの表面を露見部50としたものである。更に主緩衝部2の底面に確認支援手段3が密接されるようにした。
またこの実施例では、前記光学素子5を主緩衝部2と一体成型するようにしたが、これらを別体として成型し、適宜一体化するよういしてもよい。
【0021】
上述のようにして構成された緩衝部材1は、図1に示すようにソール部S1のかかと側、あるいは側面等の要緩衝個所に組み付けられるものであり、露見部50を外部に露出させ、ここからマーカ3bが外部より視認可能な状態で組み付けられる。
すなわち底面に位置するマーカ3bの像は、プリズムレンズ51dの作用によって屈折して凸レンズ51aに至り、その表面である露見部50に拡大された像を発現させることとなるものである。
この結果、図3に示すように緩衝部材1に負荷が掛かってこのものが変形する際に、主緩衝部2の微細な変形までをも、マーカ3bの像の変化として視認することが可能となるものである。
【0022】
〔光学素子を柔軟突起が配列されたものとした実施例〕
次に請求項3で定義された、光学素子5を基台53上に複数の柔軟突起52が配列されたものとした実施例について説明する。
前記柔軟突起52は図5(c)に示すように、無負荷あるいは軽負荷時には確認支援手段3と点接触し、図5(d)に示すように重負荷時には変形して確認支援手段3と面接触するように構成されるものである。
この実施例で示す光学素子5は図5(a)、(b)に示すように、立方体の一つの頂点52aが最上部となるような形状の柔軟突起52が複数配列されるものである。なお前記頂点52aに集結する三本の辺をそれぞれ稜線52bと呼ぶ。 そしてこのような柔軟突起52が配列された光学素子5は、図6に示すようにソール部S1の底面に埋設されるものであり、基台53の裏面を露見部50とするとともに、ここに透明な保護シート52cが被覆される。
【0023】
そして図5(c)に示すような点接触時には、図5(e)に示すように稜線52b部において光が全反射して確認支援手段3の像が露見部50に発現しない状態と成り、一方、図5(d)に示すような面接触時には、図5(f)に示すように変形して確認支援手段3と密接した柔軟突起52を光が透過して確認支援手段3の像が露見部50に発現する状態と成るものである。
この結果、緩衝部材1が緩衝機能を発揮しているときのみ確認支援手段3の像が露見部50に発現されるため、使用者は明確に機能発揮状態を確認することができる。
【0024】
〔光輝導入手段を設けた実施例〕
上述した実施例において説明した緩衝部材1は、露見部50から主緩衝部2内に入射した外光が確認支援手段3において反射し、この反射光が光学素子5を通過した後、露見部50に発現されるというものであったが、外光の入射個所を露見部50以外の個所に設けることもできる。
具体的には図7の水平断面図に示すように、光輝導入手段6として、導光板、光ファイバー等、空気よりも屈折率の高い部材が適用されるものであり、これらにより緩衝部材1に入射した外光によって、確認支援手段3がライトアップされた状態となるため、露見部50に発現される確認支援手段3の像がより認識し易いものとすることができる。
なお光輝導入手段6を適宜着色することにより、更なる加飾効果を奏することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の緩衝部材及びこのものが繰み込まれたスポーツシューズを示す斜視図である。
【図2】緩衝部材を示す側面図及び斜視図である。
【図3】緩衝部材が緩衝機能を発揮している状態を説明するための正面図である。
【図4】光学素子としてレンズ作用体を採用した種々の例を示す側面図及び正面図である。
【図5】光学素子として柔軟突起を採用した例を示す平面図及び縦断側面図である。
【図6】緩衝部材をソール底面に設置した様子を示す底面図である。
【図7】光輝導入手段を採用した実施例を示す水平断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 緩衝部材
2 主緩衝部
3 確認支援手段
3a シート
3b マーカ
5 光学素子
50 露見部
51 レンズ作用体
51a 凸レンズ
51b 凹レンズ
51c フルネルレンズ
51d プリズムレンズ
52 柔軟突起
52a 頂点
52b 稜線
52c 保護シート
53 基台
6 光輝導入手段
S スポーツシューズ
S1 ソール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
要緩衝機材内に組み込まれ弾性変形することにより衝撃を緩和する部材であって、この部材は、衝撃を吸収する主緩衝部と、主緩衝部の変形状態を確認させるための確認支援手段とを具え、この確認支援手段の像を露見部に発現させるものであり、且つ前記確認支援手段の像に対して光学的効果を加えるための光学素子を具えたことを特徴とする機能発揮状態を強調表示できる緩衝部材。
【請求項2】
前記光学素子は、凸レンズ、凹レンズ、フルネルレンズ、プリズムレンズの中から選択される一種のレンズまたは複数のレンズ作用体であることを特徴とする請求項1記載の機能発揮状態を強調表示できる緩衝部材。
【請求項3】
前記光学素子は基台上に複数の柔軟突起が配列されて成るものであり、この柔軟突起部は、無負荷あるいは軽負荷時には前記確認支援手段と点接触し、重負荷時には変形して前記確認支援手段と面接触するものであり、前記点接触時には柔軟突起部において光が全反射して確認支援手段の像が基台裏面の露見部に発現しない状態と成り、一方、前記面接触時には変形した柔軟突起部において光が透過して確認支援手段の像が露見部に発現する状態と成るものであることを特徴とする請求項1記載の機能発揮状態を強調表示できる緩衝部材。
【請求項4】
前記光学素子は、主緩衝部と一体成型されたものであることを特徴とする請求項1、2または3記載の機能発揮状態を強調表示できる緩衝部材。
【請求項5】
前記露見部以外の個所に、外光を取り込むための光輝導入手段を具えていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の機能発揮状態を強調表示できる緩衝部材。
【請求項6】
前記請求1乃至5記載の緩衝部材を、ソール部に設けたことを特徴とする機能発揮状態を強調表示できる緩衝部材が適用された履物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−61853(P2008−61853A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243641(P2006−243641)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(306011034)株式会社ジェルテック (11)
【出願人】(306026980)株式会社タイカ (62)
【Fターム(参考)】