説明

欄間構造およびその施工方法

【課題】安全且つ容易に施工できる新規な欄間構造およびその施工方法を提供する。
【解決手段】開口部に左右縦枠11,12および横枠13を固定した後にこれらによる枠組内に欄間パネル14を取り付けて欄間構造10を形成するに際して、欄間パネルの両側面木口の溝32に縦枠内面から突出する凸部20を嵌入させた状態にして上方にスライド移動させることにより、欄間パネルの上端が横枠下面の凹部27に嵌入されると共にその下端から一面側に突出する突出部22が縦枠内面に固定したL字金具21の欄間固定片21bに当接した位置関係を形成する。この位置関係において、縦枠内面のダボ穴25にダボ24を挿入することにより欄間パネルを下方から支持して仮固定した後、欄間固定片を介して欄間パネルを左右縦枠に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欄間構造およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋の開口部に設置される左右縦枠間の上部に欄間パネルを取り付けた欄間構造は公知であり、このような欄間パネルの取付構造として、特許文献1には、欄間パネルの上部および左右の見込面に形成された凹溝に、左右縦枠および上枠に設けた凸形ブラケットを嵌合させた状態にして、欄間パネルの下面の取付孔に下方からボルトを通して、左右縦枠の凸形ブラケットの下端の内向き折曲部に形成した雌ネジ穴およびナットに螺着して固定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実願昭61−62759(実開昭63−28783)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、欄間パネルを固定する際に、欄間パネルと左右縦枠および上枠との間で所定の位置関係を保持しながら、下方から上方に向けてボルトを締め付ける必要がある。このため、欄間パネルが落下しないように片手で押さえながらボルト固定作業を行わなければならない。不安定な状態での固定作業は作業者にとって危険であり、また、ボルトの締め具合も不十分になりがちになるため施工後に緩みが生じてしまう恐れがある。さらに、左右縦枠および上枠に凸形ブラケットを設け、その下端を内向きに折り曲げて雌ネジ穴を形成すると共にナットを付設したり、下方から取り付けたボルトを隠すために欄間パネルの下端溝を溝塞ぎ材で覆うなど、施工の際に使用される部材点数が多く、施工手間を要するものであった。
【0005】
したがって、本発明が課題とするところは、このような従来技術の不利欠点を解消し、安全且つ容易に施工できる新規な欄間構造およびその施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、開口部に設けられる左右縦枠および横枠と、これら左右縦枠および横枠に囲まれた空間に固定される欄間パネルとからなる欄間構造であって、欄間パネルの両側面木口にはそれぞれ高さ方向に延長する溝が形成されると共にその下端には一面から突出する突出部が設けられ、左右縦枠にはそれぞれ欄間パネルの両側面木口の溝に嵌入する凸部が形成されると共にその所定高さ位置において欄間固定片が内方に突出し、さらに欄間固定片から所定間隔をおいた下方位置において内方に突出する支持部材が取り付けられ、横枠の下面には欄間パネルの上端が嵌入される凹部が形成されており、欄間固定片と支持部材との間に欄間パネルの突出部が挟み込まれた状態で欄間固定片を介して欄間パネルが固定されてなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る本発明は、一面に凸部を有すると共にその下方位置において欄間固定片が突出している縦枠部材と、一面に凹部を有する横枠部材と、両側面木口に少なくとも上端に開口する溝が形成されると共に下端には一面側に突出する突出部を有する欄間パネル部材とを準備し、開口部に一対の縦枠部材を前記一面側が内面側になるようにして固定して左右縦枠とすると共にこれら左右縦枠の上端間において横枠部材を凹部形成面が下面となるようにして開口部天面に固定して横枠として枠組を形成し、左右縦枠の間に欄間パネル部材を入れて、その両側面木口の溝に左右縦枠から内方に突出している凸部を嵌入させた状態にして上方にスライド移動させて、欄間パネル部材の上端が横枠下面の凹部に嵌入されると共にその突出部が左右縦枠から内方に突出している欄間固定片に当接した位置関係を形成し、この位置関係において支持部材を左右縦枠の内面に取り付けて欄間パネル部材を下方から支持して仮固定した後、欄間固定片を介して欄間パネル部材を左右縦枠に固定して欄間パネルとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る本発明によれば、比較的少ない部材点数で簡単な構成の欄間構造が提供されるので、施工も容易である。横枠に形成された凹部に欄間パネルの上端が嵌入されているので、施工現場にて開口部の寸法(特に高さ)や下方に設置する扉の高さなどに応じて欄間パネルの上端を切除する場合であっても、その上端の切り口が露出しないので見栄えが良好になると共に、横枠と欄間パネルとの間に隙間が生じないので明かり漏れを防ぐことができる。また、欄間パネル部材の突出部が欄間固定片と支持部材との間に挟持された状態で固定されるので、強度的に優れた欄間構造が得られる。
【0009】
請求項2に係る本発明によれば、欄間パネルを取り付ける際に、欄間パネルの両側面木口の溝に左右縦枠から内方に突出する凸部を嵌入させた状態にして上方にスライド移動させながら高さ方向および厚さ方向の位置決めを容易に行うことができる。さらに、欄間パネルを所定の高さまで引き上げた状態で支持部材によって欄間パネルを下方から支持することができるので、作業者は欄間パネル部材から手を離しても落下することなく所定高さ位置に保持される。したがって、欄間固定片にビスなどの固定具を打ち込んで欄間パネル部材を固定する作業を安全且つ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による欄間構造を示す正面図である。
【図2】図1中X−X断面図である。
【図3】この欄間構造に用いられる欄間パネルの正面図(a)、平面図(b)、左側面図(c)、変形例の左側面図(d)およびさらに別の変形例の左側面図(e)である。
【図4】この欄間構造に用いられる縦枠について、凸部がダボで形成された実施形態(a)および凸部が棒状部材で形成された実施形態(b)を示す各斜視図である。
【図5】この欄間構造に用いられる横枠について、一部材で形成された実施形態(a)および二部材で形成された実施形態(b)を示す各側面図である。
【図6】この欄間構造の施工に際して欄間パネルを取り付ける手順を示す正面図である。
【図7】図6(b)の状態を左縦枠内面を基準として見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による欄間構造およびその施工方法について、以下添付図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
図1および図2は本発明の一実施形態による欄間構造10を示し、開口部(符号なし)に設けられた左右縦枠11,12および横枠13に囲まれた空間に欄間パネル14が固定されている。この実施形態では、枠組空間において欄間パネル14の下方には扉15が取手16による操作を介して開閉自在に設けられ、より具体的には図1に示す閉止状態と図1の正面から見て反対側に開く開放状態との間で開閉可能である。符号17a,17bは戸当たりであり、左右縦枠11,12の各内面に長さ方向に亘って延長形成される一対の戸当たり溝19(図4参照)に取り付けられて、戸当たり17aは閉止状態にある扉15の左右側面木口近くの一表面(図1正面)側部分に当接し、戸当たり17bは後述する欄間パネル14の左右側面木口近くの一表面(図1正面)側部分に当接する。また、図2中、符号34は柱であり、符号35は柱34の両面に張設された壁面パネルである。扉15は、欄間パネル14の下面と床面との間でピボット支持され、あるいは一方縦枠(図示実施形態では左縦枠11)に設けた蝶番などによって、開閉可能に設けられる。本発明は欄間構造に関連するものであるから、扉15は本発明の主題に直接関連しないので、これ以上の詳細な説明は割愛する。なお、扉15を設けずに、通行可能な単なる空間としても良い。
【0013】
左右縦枠11,12は図4に示される縦枠部材18から形成される。この縦枠部材18は開口部の高さと略同一の長さ寸法を有すると共に開口部の厚さと略同一の幅寸法を有する長尺板状体であり、その一面(施工状態において内面側となる面)には略全長に亘って一対の戸当たり溝19が連続的に延長形成されている。この戸当たり溝19に、扉15の高さ領域においては戸当たり17aの脚部が、欄間パネル14の高さ領域においては戸当たり17bの脚部が、それぞれ嵌め込まれて戸当たり17a,17bが取り付けられるものである。そして、縦枠部材18の該側面の上端近くにおいて戸当たり溝19の片側には凸部20が形成される。凸部20は、一または長さ方向に間隔を置いて設けられる任意個数のダボ状凸部(図4(a))であっても良いし、あるいは、所定の長さに亘って延長する棒状部材(図4(b))であっても良い。いずれにしても、凸部20は、施工された欄間構造10において左右縦枠11,12の上端近くの内面から内方に向けて突出し、欄間パネル14の左右側面木口に形成される溝32(図3,図7参照)に上下スライド移動可能に嵌合する。
【0014】
施工状態において内面側となる縦枠部材18の側面には、さらに、凸部20の下方にL字金具21が固定される。L字金具21は縦枠固定片21aと欄間固定片21bとを有し、いずれの固定片21a,21bにも任意数の固定穴21c,21dが形成されている。そして、縦枠固定片21aの固定穴21cにビスなどの固定金具(図示せず)を通して縦枠部材18の該側面に固定される。このようにしてL字金具21が固定されることにより、欄間固定片21bは施工状態において該側面(内面)から内方に向けて突出する(図2,図4,図6参照)。この際に、欄間固定片21bが欄間パネル14の下端から一面側に向けて突出する突出部22の上面に当接する高さ位置となるように、L字金具21が縦枠部材18に対して所定位置に固定される。
【0015】
縦枠固定片21aは一対の戸当たり溝19の間で固定することが好ましく、このようにすると施工状態において欄間パネル14の左右側面木口近くの一表面(図1正面)側に当接するように縦枠11,12に取り付けられる戸当たり22の下端部によって縦枠固定片21aを隠蔽することができる。欄間固定片21bについては欄間パネル14と同色に着色したり、あるいは樹脂製のカバーを被せるなどによって目立たないようにしても良いし、欄間固定片21bが当接する領域において欄間パネル14の突出部22の上面に、欄間固定片21bの厚みと略同一の深さの座堀り部23(図3(b))を設けて該座掘り部23に欄間固定片21bを嵌合収容させることで目立たなくしても良い。
【0016】
施工状態において内面側となる縦枠部材18の側面には、さらに、上記のようにして固定されたL字金具21の下方に所定間隔を置いた位置にダボ24を挿入可能なダボ穴25が形成される(図4(a))。ダボ穴25も一対の戸当たり溝19の間に形成することが好ましく、このようにすると施工後にダボ24を引き抜いて除去したときであっても、扉15の左右側面木口近くの一表面(図1正面)側に当接するように縦枠11,12に取り付けられる戸当たり17aの上端部によってダボ穴25を隠蔽することができる。この実施形態ではダボ穴25に挿入されるダボ24が欄間パネル14の施工時に下方より支持する「支持部材」を構成するが、同様の作用を果たすものであればダボ24に限定されない。たとえば、縦枠部材18の内面の所定高さ位置にバネ付勢された状態で設けられた埋没および突出可能なバネ式突起や、木ネジを半嵌入状態にして内方に突出させて設けたものなども「支持部材」として採用することができる。縦枠部材18に固定されたL字金具21の欄間固定片21bと、ダボ穴25に挿入されたダボ24などの支持部材との間の高さ方向間隔は、用いられる欄間パネル14の突出部22の厚さ(高さ)と略同一であり、これらの間に突出部22を挟持することができるようにされている。
【0017】
縦枠部材18の施工状態にて内面となる一側面には、上述の位置関係で凸部20、L字金具21および支持部材24が設けられるように、あらかじめ目印となるマークを付けておくと良い。凸部20および支持部材24としてダボが用いられる場合は、ダボを挿入するダボ穴が目印マークとして働く。
【0018】
なお、欄間パネル14および扉15が設けられる開口部の高さに応じて縦枠部材18を切除して縦枠11,12として使用する場合は、上述の位置関係が損なわれないように注意する。たとえば、欄間パネル14や扉15の高さ寸法に応じて、L字金具21の位置を基準として上下いずれか一方または両方を切除して長さを合わせると良い。
【0019】
横枠13は図5に示される横枠部材26から形成される。この横枠部材26は開口部の幅と略同一の長さ寸法を有し、その一面(施工状態において下面側となる面)に欄間パネル14の上端部が嵌入される凹部27が長さ方向に連続して形成されている。このような形状を有する横枠部材26は、矩形状断面を有する単一の長尺板状体の一面側に凹部27を切り欠き形成しても良い(図5(a))し、あるいは、矩形状断面を有する長尺板状体である枠部材28と断面L字形の長尺薄板である幕板部材29の2部材で形成し、その固定片29aの上面を開口部天面に固定すると共に幕板片29bを欄間パネル14の上端表面に被覆させるようにして、固定片29aと幕板片29bとの間に凹部27を形成するようにしても良い(図5(b))。後者の構成によれば、単一部材において凹部27を形成するための加工手間が省けると共に、欄間パネル14が厚いときには幕板部材29を枠部材28との間に隙間をあけて固定することによって幅広の凹部27を与えるようにし、欄間パネル14が薄いときには幕板部材29の固定片29aの先端側を切除して凹部27を幅狭とすることができ、欄間パネル14の厚さに応じて凹部27の幅を容易に調整することができる利点がある。
【0020】
欄間パネル14は図3に示される欄間パネル部材30から形成される。この欄間パネル部材30は、開口幅(左右縦枠11,12間の間隔)と略同一の幅寸法および開口厚(左右縦枠11,12の厚さ)と略同一の厚さ寸法を有すると共に所定の高さ寸法を有するパネル31の下端から一面側に突出する突出部22が設けられてなる側面視略L字形に形成されている。パネル31はフラッシュ構造を有するものであっても良いし、一枚の板材からなるものであっても良い。パネル31はあらかじめ上記寸法を有するものとして工場生産されても良いが、施工現場にて開口部の寸法(特に高さ)や下方に設置する扉15の高さなどに応じて上端を切除して用いるようにしても良い。既述したように、パネル31の左右側面木口には、左右縦枠11,12の内面に設けられる凸部20を上下スライド移動可能に嵌合収容する溝31が設けられるが、上端を切除する場合は、切除後のパネル31の左右側面木口にその上端から少なくとも所定の長さに亘って(下端まで連続しても良い)溝32が形成されている必要がある。また、フラッシュ構造のパネル31を用いて施工現場で上端を切除する場合は、上端領域に幅広のパネル芯材を用いてその範囲内で切除するようにする。これは、フラッシュ構造のパネル31を芯材が存在しない領域で切除すると、切除後のパネル31の上端において表裏の面材が固定されない状態となり、湿度によって波打ちが生じたり、場合によっては芯材から剥がれ落ちてしまう恐れがあるためである。
【0021】
突出部22は、パネル31の下端全幅において下面が面一になるようにして一面側に突出するものであり、突出部32がパネル31の下端一面側から突出する突出長さは、縦枠11,12の内面に固定されたL字金具21の欄間固定片21bの幅寸法と同等またはそれより大きい寸法であり、既述したように、その上面の左右両端には欄間固定片21bを嵌合収容するに十分な長さと深さを有する座掘り部23が形成されている。
【0022】
突出部22の形成手法としては、たとえば、パネル31の下端を一面側から切り欠いて、パネル31の幅と略同一長さの矩形断面棒状部材33aを該切り欠き内に収めて固定した実施形態(図3(c))のほか、パネル31の下端にパネル31の幅と略同一の長さ寸法を有すると共にパネル31の厚さより大きい幅寸法を有する矩形断面棒状部材33bをパネル31の一面側にのみ突出させるようにして固定した実施形態(図3(d))や、パネル31の下端一面側にパネル31の幅と略同一長さの矩形断面棒状部材33cを固定した実施形態(図3(e))などを採用することができる。これらの実施形態によれば、施工状態において欄間パネル14の荷重をL字金具21を介して棒状部材33a〜33cで受けることとなり、パネル31自体の耐久性を高めることができる。また、施工状態において棒状部材33a〜33cが突出する側(図1正面側)からは該棒状部材が中鴨居のように目視される(図1参照)だけでなく、反対側においてパネル31と棒状部材との接合面(線)が現れる場合には当該反対側からも中鴨居があるかのように目視されることになる。したがって、図3(d)の実施形態によれば表裏いずれの側から見たときにも中鴨居が形成されているように目視され、一方、図3(c)および図3(e)の実施形態の場合は棒状部材突出側から見たときだけ中鴨居が形成されているように目視される。従来であれば、中鴨居付きの欄間を施工する場合、開口部に左右縦枠および横枠を枠組した後にその内部に中鴨居を取り付け、左右縦枠、横枠および中鴨居に囲まれた空間に欄間パネルを嵌め込むと言った煩雑な工程で欄間を施工していたが、図3に示される実施形態によれば、突出部22を有する欄間パネル部材30を、あらかじめ縦枠11,12に固定されたL字金具21に固定するだけで少なくとも突出側においては突出部22が中鴨居であるかのように目視され、且つ、突出部22を形成するための棒状部材33a〜33cの取付に関する実施形態によって反対側からも中鴨居を目視させたりさせなかったりすることが可能であり、中鴨居付きの欄間を構成することが容易であると共に、表裏における意匠性に変化を持たせることができる
【0023】
次に、この欄間構造10の施工方法についてさらに図6を参照して説明する。開口部に、縦枠部材18(図4)を戸当たり溝19、凸部20、L字金具21およびダボ穴25が内面を向くようにして取り付けて左右縦枠11,12とすると共に、これら縦枠11,12の上端間に横枠部材26(図5)を凹部27が下向きに開口するようにして開口部天面に取り付けて横枠13として、枠組を構成する。そして、この枠組の内部に欄間パネル部材30(図3)を入れて固定することにより欄間パネル14を取り付ける。より詳しくは、まず、欄間パネル部材30を、突出部22を前方に向けた状態にして、且つ、その上端が凸部20(図4(a)のように複数のダボからなる凸部20とされている場合は最下方位置のダボ)に干渉しないよう該凸部20より若干低い高さ位置となるようにして、枠組内に嵌め込む。そうすると、欄間パネル部材30の側面(図1正面側の側面)がL字金具21の欄間固定片21bの側面に当接することで、縦枠11,12の幅(開口幅)における欄間パネル部材30の位置が自動的に合い、縦枠11,12から内方に突出する凸部20と欄間パネル部材30の左右側面木口に形成された溝32とが上下方向に整列する。この位置関係を保持したまま、欄間パネル部材30を枠組内において上方に引き上げることにより、凸部20が溝32に挿入されるので、この嵌合状態のままで欄間パネル部材30を上方にスライド移動させていく(図6(a))。
【0024】
このようにして欄間パネル部材30を上方にスライド移動させていくと、最終的に、その上端が横枠13の下面の凹部27に嵌合収容されると共に、突出部22の上面に形成した座掘り部23に、縦枠部材11,12の内面から突出するL字金具21の欄間固定片21bが嵌合収容された状態となる。このとき、縦枠11,12の内面において欄間固定片21bの下方に形成されているダボ穴24が欄間パネル部材30の突出部22の直下で露出することになるので、このダボ穴24にダボ25を嵌入することによって、欄間パネル部材30を下方より支持して落下を防止することができ、作業者は欄間パネル部材30から手を離して、L字金具21の欄間固定片21bに開口する取付穴21dに固定具であるビス21fを上方より打ち込んで欄間パネル部材30を固定する。これによって欄間パネル14が取り付けられる。
【0025】
ダボ25は、このようにして欄間パネル14の取り付けを完了した後に取り外しても良いし、そのまま取り付けたままにしておいても良い。後者によれば、欄間パネル部材30の突出部22がL字金具21の欄間固定片21bとダボ25との間に挟持された状態で固定されることになるので、強度的に優れた欄間構造10が得られる利点がある。前者の場合には、ダボ25を取り外した後にダボ穴24が露出することになるので、これをシールなどの隠蔽部材によって隠蔽することが好ましい。ダボ25に代えて木ネジが「支持手段」として用いられる場合も、同様に、木ネジを取り外した後に露出するネジ穴をシールなどの隠蔽部材によって隠蔽することが好ましい。バネ式突起が「支持手段」として用いられる場合は、突起を埋没させた状態にして同様にシールなどの隠蔽部材で隠蔽することが好ましい。あるいは、L字金具21の下方において戸当たり溝19に取り付けられる戸当たり17aの上端部によってこれらダボ穴、ネジ穴やバネ式突起などを隠蔽するようにしても良い。
【0026】
次いで、縦枠11,12の内面に形成されている戸当たり溝19に戸当たり17bを取り付ける。この実施形態では断面略コ字状に形成された合成樹脂製などの戸当たり17a,17bの一対の脚部を一対の戸当たり溝19にそれぞれ嵌入して固定するものとされており、縦枠11,12の上端からL字金具21の欄間固定片21bの上面近くに至る長さの戸当たり17bをこのようにして取り付けることにより、L字金具21の縦枠固定片21aを隠蔽することができる。
【0027】
なお、凸部20およびL字金具21は、工場であらかじめ縦枠部材18に取り付けておいても良いし、施工現場にて縦枠11,12として施工する前に縦枠部材18に取り付けても良い。また、開口部に縦枠11,12および横枠13を取り付けた後にすぐに欄間パネル14を取り付けない場合、この状態で縦枠11,12の内面から凸部20やL字金具21の欄間固定片21bが突出していると、これらに物がぶつかってその物や凸部20、L字金具21が破損してしまうことが考えられるので、縦枠11,12を取り付けた後、欄間パネル14の施工直前に縦枠11,12に対して凸部20やL字金具21を取り付けても良い。
【0028】
なお、既述したように扉15は本発明の主題に直接関連しないので、その施工方法の説明は割愛する。
【符号の説明】
【0029】
10 欄間構造
11,12 縦枠
13 横枠
14 欄間パネル
15 扉
16 取手
17 戸当たり
18 縦枠部材
19 戸当たり溝
20 凸部
21 L字金具
21a 縦枠固定片
21b 欄間固定片
21c,21d 取付穴
21e,21f ビス(固定具)
22 突出部
23 座掘り部
24 ダボ(支持部材)
25 ダボ穴
26 横枠部材
27 凹部
28 枠部材
29 幕板部材
29a 固定片
29b 幕板片
30 欄間パネル部材
31 パネル
32 溝
33a〜33c 棒状部材
34 柱
35 壁面パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部に設けられる左右縦枠および横枠と、これら左右縦枠および横枠に囲まれた空間に固定される欄間パネルとからなる欄間構造であって、欄間パネルの両側面木口にはそれぞれ高さ方向に連続する溝が形成されると共にその下端には一面から突出する突出部が設けられ、左右縦枠にはそれぞれ欄間パネルの両側面木口の溝に嵌入する凸部が形成されると共にその所定高さ位置において欄間固定片が内方に突出し、さらに欄間固定片から所定間隔をおいた下方位置において内方に突出する支持部材が取り付けられ、横枠の下面には欄間パネルの上端が嵌入される凹部が形成されており、欄間固定片と支持部材との間に欄間パネルの突出部が挟み込まれた状態で欄間固定片を介して欄間パネルが固定されてなることを特徴とする欄間構造。
【請求項2】
一面に凸部を有すると共にその下方位置において欄間固定片が突出している縦枠部材と、一面に凹部を有する横枠部材と、両側面木口に少なくとも上端に開口する溝が形成されると共に下端には一面側に突出する突出部を有する欄間パネル部材とを準備し、開口部に一対の縦枠部材を前記一面側が内面側になるようにして固定して左右縦枠とすると共にこれら左右縦枠の上端間において横枠部材を凹部形成面が下面となるようにして開口部天面に固定して横枠として枠組を形成し、左右縦枠の間に欄間パネル部材を入れて、その両側面木口の溝に左右縦枠から内方に突出している凸部を嵌入させた状態にして上方にスライド移動させて、欄間パネル部材の上端が横枠下面の凹部に嵌入されると共にその突出部が左右縦枠から内方に突出している欄間固定片に当接した位置関係を形成し、この位置関係において支持部材を左右縦枠の内面に取り付けて欄間パネル部材を下方から支持して仮固定した後、欄間固定片を介して欄間パネル部材を左右縦枠に固定して欄間パネルとすることを特徴とする欄間構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−127093(P2012−127093A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278626(P2010−278626)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(390030340)株式会社ノダ (146)
【Fターム(参考)】