説明

止着テープ製造用長尺シート部材の製作方法

【課題】基材シートの上面中央部分に沿ってフックテープが設けられた長尺シート部材を切断分割して止着テープを製造する方法において、製造工程を簡略化することのできる止着テープ製造用長尺シート部材を提供する。
【解決手段】本発明の止着テープ製造用長尺シート部材10は、基材シート12の上面に、中央部分に沿って長手方向に延長するフック部15とその両側に沿って各々延長する一対の非止着帯22とからなる長尺のフックテープシート14を接合一体化して構成される。フックテープシート14の非止着帯12は、フックテープ13の両側部分を押しつぶして形成することができ、この押しつぶし作業は、フックテープシート14を圧着して基材シート12に接合一体化する際に、同時に行っても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤が塗布された長尺の基材シートの上面中央部分に沿ってフックテープが設けられた長尺シート部材を、一本の蛇行曲線に沿って長手方向に切断して二分割するとともに上記長尺シート部材の側辺に対して垂直に延長する直線に沿って切断して多数の止着テープを得る止着テープの製造方法において使用する二層構造の止着テープ製造用長尺シート部材に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨てオムツや衣料等の分野に広く用いられている、これらを人体等に装着するための止着テープとしては、メカニカルな締結テープであるフックテープによるものが知られている。このようなフックテープを用いた止着テープは、オムツや衣料等への取付け部分である粘着剤層を備えた基端部と、フックテープによる止着部と、先端のタブ部と、基端部と止着部との間の非止着部とからなるもので、例えば本願出願人の出願に係る特願平9−358331号に記載されている方法によって製造される。
【0003】
すなわち、特願平9−385331号に記載の製造方法によれば、長尺の基材シートの一面にその全面に亘って粘着剤を塗布するとともに、この基材シートの長手方向に沿う中央部分に、長尺のフックテープの貼付された基材シートより細幅の長尺のフィルムを接着することにより、基材シートとフィルムとフックテープとからなる3層構造の長尺の止着テープシートを形成し、この止着テープシートを、一本の蛇行曲線に沿って長手方向に切断して二分割するとともにこれの側辺に対して垂直に延長する直線に沿って切断して、複数個の止着テープを製造することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような製造方法によれば、3層構造の長尺の止着テープシートを得るために、長尺の部材である基材シート、フィルム、及びフックテープを各々の接着してゆく必要があるため、製造工程が煩雑になる。
【0005】
本発明は、このような基材シートの上面中央部分に沿ってフックテープが設けられた長尺シート部材を切断分割して止着テープを製造する方法において、製造工程を簡略化することのできる止着テープ製造用長尺シート部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、粘着剤が塗布された長尺の基材シートの上面中央部分に沿ってフックテープが設けられた長尺シート部材を、一本の蛇行曲線に沿って長手方向に切断して二分割するとともに上記長尺シート部材の側辺に対して垂直に延長する直線に沿って切断して複数個の止着テープを得る止着テープの製造方法において使用する二層構造の長尺シート部材であって、上記基材シートの上面に、中央部分に沿って長手方向に延長するフック部と該フック部の両側に沿って各々延長する一対の非止着帯とからなる長尺のフックテープシートを接合一体化してなる止着テープ製造用長尺シート部材を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0007】
そして、本発明によれば、切断分割して止着テープを得るための長尺シート部材が、基材シートの上面に、フック部とこれの両側の非止着帯とからなるフックテープシートを接合一体化してなる2層構造なので、3層構造のものと比較してその製作が容易であり、これによっての止着テープの製造工程を簡略化することが可能になる。また3層構造における中間層としてのフィルムを必要としないので、製造原反を減らすことも可能になる。
【0008】
また、基材シートに接着される、フック部とその両側に一体となった非止着帯とからなる長尺のフックテープシートは、当該フックテープシートの幅に相当する幅を有するフックテープに対して、その中央部分を挟んだ両側部分のフックを、非止着帯の幅に応じて、ヒートエンボスや超音波シール等の圧着手段を用いて長手方向に帯状に押しつぶしてゆくことにより容易に形成することができる。なお、このようにフックテープのフックを押しつぶして形成された非止着帯は、長尺シート部材の切断分割によってタブ部を構成することになるが、これが相当の厚さを備えていることによって、摘みやすくなる。
【0009】
このような圧着手段を用いたフックテープの両側部分の押しつぶしは、フックテープシートとなる当該フックテープを、ヒートエンボスや超音波シール等の圧着手段により基材シートに圧着して接合一体化してゆく際に、この圧着工程と同時に行うことができ、これによって止着テープの製造工程をさらに簡略化することが可能になる。また、圧着手段によってフックテープシートを基材シートに圧着してゆくことにより、粘着剤すなわち接着剤を用いることなくこれらを接合一体化してゆくこともできる。
【0010】
なお、フックテープは、「マジックテープ」(登録商標、クラレ社製)等のメカニカルファスナーのオス部材に相当する構成を備えるもので、例えばシート基材の表面に錨状のオス型係合部材がフックとして多数配設されたものや、シート基材の表面に釣型のオス型係合部材がフックとして多数配設されたものをテープ状に形成したものである。また、メカニカルファスナーとしては、他に、「クイックロン」(登録商標、YKK社製)、「マジクロス」(登録商標、カネボウベルタッチ社製)、「CS−200」(商品名、3M社製)等の各種の市販品を挙げることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の止着テープ製造用長尺シート部材は、基材シートの上面に、中央部分に沿って長手方向に延長するフック部とその両側に沿って各々延長する一対の非止着帯とからなる長尺のフックテープシートを接合一体化した2層構造なので、基材シートの上面にフックテープが設けられた長尺シート部材を切断分割して止着テープを製造する方法において、その製造工程を容易に簡略化することがができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、止着テープ製造用長尺シート部材10は、図1に示すように、粘着剤11が塗布された長尺の基材シート12の上面中央部分に沿って、フックテープ13が、フックテープシート14のフック部15として設けられたもので、これを一本の蛇行曲線16に沿って長手方向に切断して二分割するとともに側辺17に対して垂直に延長する直線18に沿って切断して、複数個の止着テープ19を得る止着テープ19の製造方法において使用される。
【0013】
すなわち、本実施形態の止着テープ製造用長尺シート部材10は、その切断前のA−A断面を示す図2に記載されるように、長尺の基材シート12と、この基材シート12の上面の中央部分に沿って延長するようにして接合一体化された長尺のフックテープシート14とからなるものである。
【0014】
基材シート12は、好ましくはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム材料、又は不織布等からなり、特に好ましくはポリプロピレンのフィルム材料によって形成される。また、基材シート12の厚さは、この基材シート12がフィルム材料からなる場合には、好ましくは30〜150μm、更に好ましくは60〜100μmであり、この基材シート12が不織布からなる場合には、好ましくは0.3〜2.0mm、更に好ましくは0.7〜1.3mmである。さらに基材シート12の幅W1は、好ましくは50〜120mm、更に好ましくは70〜100mmである。基材シート12の厚さ及び幅W1がこれらの範囲にある場合、切断分割して得られる各止着テープ19に適当な長さ及び可撓性が与えられる。
【0015】
また、この基材シート12の上面には、この基材シート12の両側端部を僅かに残して略全面に粘着剤11が塗布されている。この粘着剤11としては、ゴム系、エバ系、オレフィン系、アクリル系等の通常の吸収性物品等に使用できるものなら何を用いてもかまわないが、ゴム系のものが好ましく用いられる。なお、この粘着剤11は、後述するフックテープシート14との接合一体化を容易にするとともに、フックテープシート14が接合されない基材シート12の両側部分においては、基材シート12と共に左右対称な一対の接着帯23を構成して、切断分割後の止着テープ19において、オムツや衣料等への取付け部分である粘着剤層を備えた基端部20(図1参照)となる。
【0016】
一方、フックテープシート14は、基材シート12の幅W1より狭い、好ましくは30〜90mm、さらに好ましくは45〜65mmの幅W2のフックテープ13の両側部分を、その中央部分を好ましくは20〜50mm、さらに好ましくは25〜35mmの幅W3の帯状のフック部15として残しながら、ヒートエンボスや超音波シールによってオス型係合部材21を押しつぶしてゆくことにより、フック部15の両側に沿って長手方向に延長する左右対称な帯状の非止着帯22を、フック部15の両側に備えるものである。
【0017】
そして、この実施形態によれば、フックテープシート14が、粘着剤11が塗布された基材シート12の上面中央部分に沿って、その両側に上記接着帯23を残置した状態で、基材シート12に接合一体化されて、2層構造の止着テープ製造用長尺シート部材10が得られることになる。かかる接合一体化は、ヒートエンボスや超音波シールを用いて、フックテープシート14を基材テープ12に押圧圧着することにより、粘着剤11を介して容易に行うことができる。ここで、上述のヒートエンボスや超音波シールによってフックテープ13の両側部分のオス型係合部材21を押しつぶしてゆく作業は、かかるフックテープシート14の基材テープ12への押圧圧着と同時に行うことができ、これによって製造工程をさらに簡略化することが可能になる。
【0018】
また、上述のヒートエンボスや超音波シールによる押圧圧着によれば、かかる圧着のみによってもフックテープシート14と基材テープ12との十分な接合を図ることができるので、フックテープシート14の下方の接合部分においては、必ずしも基材シート12の表面に粘着剤12を塗布しておく必要はない。
【0019】
このようにして得られた、本実施形態の長尺シート部材10はフックテープシート14のフック部15を中心とした左右対称な形状を有し、図1に示すように、規則的に蛇行する一本の蛇行曲線16に沿って長手方向に切断して左右同様の形状に二分割する。
【0020】
次いで、二分割された長尺シート部材10を、直線18,18・・に沿って切断して複数個の止着テープ19,19・・を得る。ここで、直線18,18・・は、蛇行曲線16の湾曲部24,24・・の各頂点から、それぞれ長尺シート部材10の両側辺17に対して垂直に延長している。
【0021】
このように切断分割して量産された多数の止着テープ18は、各々、オムツや衣料等への取付け部分である接着帯23による基端部20と、オムツや衣料等を装着する際の、フックテープシート14のフック部15による止着部25と、フックテープシート14の非止着帯22による先端のタブ部26と、フックテープシート14の非止着帯22による基端部20と止着部25との間の非止着部27とからなる。そして図4に示すように、止着テープ18を例えば使い捨てオムツ29に使用する場合には、基端部20の粘着剤層を使い捨てオムツ29を構成するシート間に介在させて、使い捨てオムツ29の後側ウエスト28の側端部に固定でき、使い捨てオムツ29の止着テープ18として、安定した止着力を与えることができる。また、この止着テープ18は、タブ部26を備えるとともに、これが相当の厚さを備えているため使用し易く(摘み易く)、またタブ26がラウンドを有するため使用者の肌等を傷つけ難く、さらに非止着部27に適当な幅を持たせているため止着部25が使用者の腰部の肌を刺激するおそれがない。
【0022】
そして、本実施形態によれば、止着テープ製造用長尺シート部材10が、基材テープ12にフックテープシート14を一体化した2層構造なので、3層構造のものと比較してその製作が容易であり、止着テープ18を量産する製造工程を簡略化することが可能になる。
【0023】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく種々の変更が可能である。例えば、基材シートに接合一体化されるフックテープシートは、必ずしもフックテープ13の両側部分を押しつぶして非止着帯22を形成したものである必要はなく、図3に示すように、もともとその中央部分にしかフック30を備えていないシート部材33によって、フック部31とその両側に沿って延長する非止着帯32とからなる長尺のフックテープシート34を構成することもでき、また、基材シートとフックテープシートとの接合一体化は、必ずしもヒートエンボスや超音波シール等の圧着手段を用いて行う必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の止着テープ製造用長尺シート部材により止着テープを製造する状況を説明する部分平面図である。
【図2】本実施形態の止着テープ製造用長尺シート部材の構成を示す、図1のA−Aに沿った切断前の断面図である。
【図3】他の実施形態に係る止着テープ製造用長尺シート部材の構成を示す断面図である。
【図4】本実施形態により製造された止着テープを使い捨てオムツに使用する状況を示す要部平面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 止着テープ製造用長尺シート部材
11 粘着剤
12 基材シート
13 フックテープ
14 フックシートテープ
15 フック部
16 蛇行曲線
17 側辺
18 直線
19 止着テープ
20 基端部
21 オス型係合部材
22 非止着帯
23 接着帯
25 止着部
26 タブ部
27 非止着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤が塗布された長尺の基材シートの上面中央部分に沿ってフックテープが設けられた長尺シート部材を、一本の蛇行曲線に沿って長手方向に切断して二分割するとともに上記長尺シート部材の側辺に対して垂直に延長する直線に沿って切断して複数個の止着テープを得る止着テープの製造方法において使用する二層構造の長尺シート部材であって、上記基材シートの上面に、中央部分に沿って長手方向に延長するフック部と該フック部の両側に沿って各々延長する一対の非止着帯とからなる長尺のフックテープシートを接合一体化してなる止着テープ製造用長尺シート部材。
【請求項2】
上記フックテープシートの非止着帯が、フックテープの長手方向の両側部分を押しつぶして形成される請求項1記載の止着テープ製造用長尺シート部材。
【請求項3】
上記フックテープシートを圧着して上記基材シートに接合一体化する際に、上記フックテープの両側部分を押しつぶす請求項2記載の止着テープ製造用長尺シート部材。
【請求項4】
上記フックテープシートが粘着剤を介することなく圧着によって上記基材シートに直接に接合一体化される請求項1〜3のいずれかに記載の止着テープ製造用長尺シート部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−12332(P2008−12332A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233537(P2007−233537)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【分割の表示】特願平10−268622の分割
【原出願日】平成10年9月22日(1998.9.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】