説明

止血用絆創膏

【課題】 ライナーより容易に剥離可能であり、製造が容易且つコストも安価な止血用絆創膏の提供。
【解決手段】 ライナーと、裏面に粘着層およびパッドを備え前記ライナーに剥離自在に接着されたシート部とからなる止血用絆創膏であって、前記ライナーの少なくとも一の側辺部に沿った部位には、該側辺部より複数の切り込み線を設けて区画された小片部を備えており、前記シート部が該小片部の一部ないし全部を被覆するように前記ライナーに接着されているとともに、該小片部をライナーの他の部位より起立させることにより前記シート部の一部をライナーより剥離させることを特徴とする止血用絆創膏。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止血用絆創膏に関し、更に詳細には、ライナーより容易に剥離可能であり、且つ、低コストで製造可能な止血用絆創膏に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静脈注射や採血、点滴等を行った後、注射針を抜いた穿刺部に止血用の小さな絆創膏を穿刺部に貼付して止血する方法が一般に行われている。このような止血用絆創膏としては、台紙となるライナーに粘着部および止血パッドを有するシートを剥離可能に接着させたものが知られている。
【0003】
しかしながら、このタイプのものの多くは、シートの粘着部がライナーに全面貼付されているため、シートをライナーから剥離する作業が困難であり、粘着部が指にまとわりついて貼付しづらい場合があるなどの使用上の問題を有し、また、粘着部に指が触れるため衛生上の問題も指摘されていた。
【0004】
かかる課題を解消すべく、シートの粘着部の一部にライナーとは別の剥離可能な小片を介在させ、かかる小片を摘んで、小片とともにシートをライナーから剥がすことができる止血用絆創膏が知られている。さらに、特許文献1では、シートの一側部に沿う非粘着部を残して粘着部を設け、かかる非粘着部を摘んでライナーから剥がすことができる止血用絆創膏が開示されている。
【0005】
ところが、前者のシートの粘着部の一部にライナーとは別の剥離可能な小片を介在させるタイプのものは、部品点数が増え、製造工程も増えることからコスト増加につながり、使用後に処分しなければならないゴミも増えるという問題を有していた。
【0006】
また、後者のシートの一側部に沿う非粘着部を摘んでライナーから剥がすことができるタイプのものは、以下の理由により製造が困難であった。すなわち、非粘着部は、最初からシートの一部分に非粘着部を設けておくか、あるいは、予めシートの裏面全部に粘着部を形成しておき、後からその一部分を薬剤等で処理して粘着性を除去し、非粘着部とする方法が考えられる。しかしながら、最初からシートの一部分に非粘着部を設ける場合、工程が増えるのみならず、製造上、機械的な精度も要求され、容易ではない。また、予めシートの裏面全部に粘着部を形成しておき、後からその一部分を薬剤等で処理して非粘着部とする方法では、工程が増えるのみならず、処理用の薬剤も必要となり、その分コスト増加につながる。また、上記のいずれの方法によっても、非粘着部となる部分については余分にシート材が必要となるため、シートの原材料コストがより多くかかるものであった。更には、穿刺部に貼付した後、時間が経つと、非粘着部側から剥がれてくるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−314214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明は、ライナーから容易に剥離可能であり、製造が容易且つコストも安価な止血用絆創膏の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、ライナーと、裏面に粘着層およびパッドを備え前記ライナーに剥離自在に接着されたシート部とからなる止血用絆創膏であって、前記ライナーの少なくとも一の側辺部に沿った部位には、該側辺部より複数の切り込み線を設けて区画された小片部を備えており、前記シート部が該小片部の一部ないし全部を被覆するように前記ライナーに接着されているとともに、該小片部をライナーの他の部位より起立させることにより前記シート部の一部をライナーより剥離させることを特徴とする止血用絆創膏である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の止血用絆創膏は、ライナーの一部を起立可能な小片部として形成しているため、かかる小片部を起立させることにより容易にライナーよりシートの一部を剥離することが可能となっている。
【0011】
また、本発明の止血用絆創膏は、前記小片部をライナーより切り離してシートを貼付することにより、指が粘着部に接触することによる衛生上および使用上の問題が生じない。
【0012】
さらに、本発明の止血用絆創膏は、ライナーの一部を切り込み線および切り離し線で区画することにより小片部を形成しているため、製造も容易であり、また、材料コストも従来品と同じで済むため、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の止血用絆創膏の正面図である。
【図2】本発明の止血用絆創膏の正背面図である。
【図3】本発明の別態様の止血用絆創膏の正面図である。
【図4】本発明の別態様の止血用絆創膏の背面図である。
【図5】本発明の別態様の止血用絆創膏の正面図である。
【図6】本発明の別態様の止血用絆創膏の背面図である。
【図7】本発明の別態様の止血用絆創膏の正面図である。
【図8】本発明の別態様の止血用絆創膏の背面図である。
【図9】(a)本発明の止血用絆創膏のライナーよりシートを剥離する一連の状態を表した一部拡大断面図である。 (b)本発明の止血用絆創膏のライナーよりシートを剥離する一連の状態を表した一部拡大断面図である。 (c)本発明の止血用絆創膏のライナーよりシートを剥離する一連の状態を表した一部拡大断面図である。
【図10】本発明の止血用絆創膏のライナーよりシートを剥離する図3bの状態を表した斜視図である。
【図11】本発明の止血用絆創膏の別態様の小片部を備えたものの小片部背面図である。
【図12】本発明の止血用絆創膏の別態様の小片部を備えたものの小片部背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の止血用絆創膏の実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の止血用絆創膏の正面図、図2は本発明の止血用絆創膏の背面図である。図中、1はライナー、2は小片部、3はシート、4はパッド、6は隙間、11は側辺部、21は切り込み線をそれぞれ示す。
【0016】
図1及び図2の止血用絆創膏は、1枚の矩形状のライナー1に、10枚のシート3が剥離可能に接着されている。シート3にはその裏面の全部に粘着層が施され、その中央には止血用のパッド4が貼付されている。複数のシート3は、ライナー1の長手方向に2列になるよう接着されている。また、同列の隣り合うシート3同士の間には、隙間6が形成されている。
【0017】
ライナー1の両方の側辺部11に沿った部位では、かかる側辺部11よりライナー1の中央部に向けて切り込み線21が1枚のシート3につき2本ずつ形成されており、かかる2本の切り込み線21により小片部2が区画されている。切り込み線21はライナー1を連続的に切断して設けた1本の切断線からなる。本実施態様では、切り込み線21は直線でそれぞれ構成されているが、直線、曲線、またはそれらの組み合わせから適宜選択できる。なお、本発明において、「小片部2」とは、1枚のシート3に対して設けられた2本の切り込み線21の先端を仮想線で結んだときに、該仮想線、2本の切り込み線21、および側辺部11により他の部分から区画される部位を意味する。以下同様とする。
【0018】
小片部2は、その両側が2本の切り込み線21によりライナー1の他の部位より予め分離している。また、小片部2の幅、すなわち2本の切り込み線21の間隔は、シート3の幅よりも狭く形成され、小片部2全部を被覆するようにシート3が接着されている。したがって、小片部2を起立させると、小片部2の周囲、特に小片部2の両側部分のシート3がライナー1より剥がされて起立することになる。なお、本実施態様では、小片部2全部を被覆するようにシート3が接着されているが、小片部2の一部を被覆するように接着されていてもよい。
【0019】
図3は、本発明の別の態様の止血用絆創膏の正面図、図4は同背面図である。本態様では、小片部2の基端部において、2本の切り込み線21の先端を結ぶ折り曲げ線22が形成されている。かかる折り曲げ線22は、ライナー1を断続的に切断して設けた破線状の切断線からなり、曲線で構成されている。この折り曲げ線22に関し、直線、曲線、またはそれらの組み合わせから適宜選択でき、更に、本実施態様のような破線状のほか、かかる折り曲げ線で折り曲げ可能であれば良く、例えば点線状、鎖線状などから適宜選択しても良い。
【0020】
小片部2は、その両側が2本の切り込み線21によりライナー1の他の部位より予め分離しており、その基端部において破線状の切断線である折り曲げ線22が設けられ折り曲げ可能となっているため、折り曲げ線22部分より上方へ折り曲げて小片部2をライナー1の他の部位から起立させることが可能となっている。また、小片部2の幅、すなわち2本の切り込み線21の間隔は、シート3の幅よりも狭く形成され、小片部2全部を被覆するようにシート3が接着されている。したがって、小片部2を起立させると、小片部2の周囲、特に小片部2の両側部分のシート3がライナー1より剥がされて起立することになる。なお、本実施態様では、小片部2全部を被覆するようにシート3が接着されているが、小片部2の一部を被覆するように接着されていてもよい。
【0021】
また、図5及び6に示すように、本発明の止血用絆創膏において、ライナー1の長手方向に2列になるように接着されたシート3の列の間に切断線5を形成しても良い。かかる切断線5は、ライナー1およびシート3を連続的に切断して設けた切込みであり、該切断線を形成することにより、シート剥離時の取り扱い性が向上する。また、シートをライナー上に接着した後に切断線を形成することにより容易に2列に配列させた状態を形成することができ、製造工程を一部簡略化することができるので、好ましい。
【0022】
また、本発明の止血用絆創膏におけるシートの形状は、図1等に示すような四角形状のものに加え、4辺の少なくとも1辺を曲線や山型線等により構成される波状、あるいは直線と曲線とを組み合わせた形状としても良い。例えば、図7、図8のように2列のシートの隣り合う1辺を波状にした場合、ライナーからシートを剥離する際に、2列のシート間のライナーを折り曲げることにより、該波状部位が押し上げられ、シートの端部がライナーより剥離される。これにより、該剥離されたシート端部を指で摘むことにより、容易にシートをライナーから剥離することができる。その結果、該止血用絆創膏を使用する際に、シートを前記の小片部と2列のシートの隣接部のいずれからもシートを容易に剥離することが可能になり、使用者の利便性を向上させることができ、好ましい。
【0023】
次に、本発明の止血用絆創膏の使用方法について、説明する。図9a−bは、本発明の止血用絆創膏のライナー1よりシート3を剥離する一連の状態を表した一部拡大断面図、図10は図9bの状態における斜視図である。図9aは、シート3の剥離前の状態を表している。この状態において、まず、小片部2を指で挟持し、上方へ折り曲げることにより、ライナー1の他の部位から起立させる(図9b)。このとき、小片部2とともに、小片部2に接着された部分およびその周辺のシート3も起立し、周辺部においてライナー1から剥離される(図10)。その後、起立した小片部2の周囲のシート端部を指で摘み、シート3全体をライナー1より完全に剥離することができる。
【0024】
また、本発明の止血用絆創膏に破線状などの折り曲げ線22を設けた場合(図9a−c)、小片部2を指で挟持し、折り曲げ線22部分で上方へ折り曲げることにより、ライナー1の他の部位から起立させ(図9b)、それから小片部2とともに、小片部2に接着された部分およびその周辺のシート3も起立し、そのままの状態で小片部2を指で挟持したまま持ち上げていけば、折り曲げ線22は破線状の切断線のため、小片部2がその部位より切り離される(図9c)。その結果、シート3全体をライナー1より完全に剥離することができる。
【0025】
皮膚へ貼付する際は、小片部2を指で挟持したままパッド4を穿刺部にあてがって、ライナー3の粘着層31部分を穿刺部周囲の皮膚に貼ればよい。このとき、小片部2も併せて貼付されることになるが、小片部2側の隅も含め、シート3の四隅は皮膚に貼付されているので、時間の経過とともに小片部2側から剥がれてしまうというおそれはない。また、よりしっかりと皮膚に貼付定着しておきたい場合には、小片部2を付けたままシート3を貼付し、その後、小片部2をシート3から剥がして、シート3全体を貼付すればよい。
【0026】
小片部2を付けたまま貼付しておけば、止血後は、小片部2側から剥がせばよいので、容易に剥がすことができ、かかる絆創膏にありがちな、剥がしにくいという問題もない。また、粘着層31に直接指が触れることもないので、衛生的である。
【0027】
なお、折り曲げ線22を設けた場合においても、小片部2をライナー1より切り離しさせず、起立させたときに、シート3のライナー1より剥離した部位を指で挟持し、小片部2はライナー1に残してシート3のみ剥離して貼付するという方法も可能である。しかし、上述の通り、衛生面の問題、貼りやすさなどを考慮すれば、小片部2をライナー1より切り離して使用する方法がより好ましい。
【0028】
図11および図12は、本発明の止血用絆創膏の小片部2の別の態様について表したものである。図11のものは、切り込み線21および折り曲げ線22が共に直線にて構成されている。また、図12のものは、切り込み線21が側辺部11より弧を描くように形成されており、2本の切り込み線21が出会うところで、折り曲げ線22が形成されている。これらの態様のうち、図12のものは、折り曲げ線22が他の態様のものに比べ、非常に短くなっているため、ライナー1からの小片部2の切り離しがより容易となっている。
【0029】
上述の通り、本発明の止血用絆創膏は、ライナー1から容易に剥離可能である。さらに、ライナー1の一部に切り込み線21および折り曲げ線22を施す場合、剥離時に指が粘着層に触れないため、衛生的であり、かつ、製造が容易であるうえ、原材料コストも増加しない。
【0030】
本発明の止血用絆創膏は、ライナー1の材質として、剥離処理した紙、樹脂シート等を適宜採用することができる。シート3に関しては、樹脂シート、不織布、布、紙等から適宜選択可能であり、柔軟性、伸縮性、通気性のある不織布、編布等が好ましい。パッド4は、不織布、布、綿、圧縮綿、ガ−ゼ、その他吸液性を有するもの、あるいはそれらを組み合わせて使用することができる。なお、パッド4に使用する不織布等は、必要に応じて滅菌消毒したものや、殺菌剤等を含浸させたものを使用しても良い。粘着層31は、主にゴム系、アクリル系、シリコン系、ポリビニルアルコール系等の粘着剤で形成され、適宜に酸化防止剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、顔料、紫外線吸収剤など各種添加剤成分や経皮投与性の薬剤を含有させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の絆創膏は、主に、注射後の止血を目的としているが、本発明を他の一般的な絆創膏および貼付剤等に利用可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1 … … ライナー
2 … … 小片部
3 … … シート
4 … … パッド
5 … … 切断線
6 … … 隙間
11 … … 側辺部
21 … … 切り込み線
22 … … 折り曲げ線
31 … … 粘着層
以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライナーと、裏面に粘着層およびパッドを備え前記ライナーに剥離自在に接着されたシート部とからなる止血用絆創膏であって、前記ライナーの少なくとも一の側辺部に沿った部位には、該側辺部より複数の切り込み線を設けて区画された小片部を備えており、前記シート部が該小片部の一部ないし全部を被覆するように前記ライナーに接着されているとともに、該小片部をライナーの他の部位より起立させることにより前記シート部の一部をライナーより剥離させることを特徴とする止血用絆創膏。
【請求項2】
前記小片部が、二本の前記切り込み線および該切り込み線の先端を結ぶ仮想線により前記ライナーの他の部位から区画され、前記二本の切り込み線の間隔は前記シートの幅に対し幅狭に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の止血用絆創膏。
【請求項3】
前記小片部が、二本の前記切り込み線の先端を結んで設けられた折り曲げ線により、ライナーの他の部位より起立自在に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の止血用絆創膏。
【請求項4】
前記小片部が、前記ライナーの他の部位から前記折り曲げ線より切り離し自在に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかの項に記載の止血用絆創膏。
【請求項5】
前記折り曲げ線が、断続的に形成された切断線であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかの項に記載の止血用絆創膏。
【請求項6】
前記小片部を形成する切り込み線および/または折り曲げ線が、直線および/または曲線により構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかの項に記載の止血用絆創膏。
【請求項7】
前記シートが、前記ライナーに対し、一列ないし二列になるよう複数並んで接着されており、前記小片部が該シート列に沿ってライナーの一の側辺部ないし両側辺部に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかの項に記載の止血用絆創膏。
【請求項8】
前記シートが、前記ライナーに対し、二列になるよう複数並んで接着されており、隣り合うシート列同士の間には、シートおよびライナーに切断線が設けられ、同列において隣り合うシート同士は間隔をあけてライナーに接着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかの項に記載の止血用絆創膏。
【請求項9】
前記シートが、前記ライナーに対し、二列になるよう複数並んで接着されており、隣り合うシート列の辺部が波状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかの項に記載の止血用絆創膏。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−62230(P2011−62230A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212845(P2009−212845)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(390000929)祐徳薬品工業株式会社 (14)