説明

正帯電トナー、正帯電現像剤、画像形成方法

【課題】 カラー高速機のようにモード差の大きい画像形成装置においても、線幅が安定し、濃度ムラが無く、画像流れも発生しないトナー画像が得られ、さらにトナーリサイクル特性にも優れた正帯電トナー、正帯電現像剤及び画像形成方法を提供する。
【解決手段】 アミン、アンモニウム塩を分子内に有する共重合体を、トナー粒子表面部分に含有することを特徴とする正帯電トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正帯電トナー、正帯電現像剤及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成方法では、感光体上に形成された静電潜像をトナーを用いて現像して画像形成を行っており、安定した画像形成を長期にわたり行う上で、トナーを負帯電にして画像形成を行う方法が主に採られている。ところで、トナーを負帯電させて画像形成を行う場合、オゾン発生の問題を完全に解消することは難しいものであった。とりわけ、近年では画像形成装置の小型化が進み、プリンターやファクシミリ等の機器を狭いオフィスや一般家庭等で使用する機会も増えてきた。オゾンガスは臭気を発するので、たとえその発生量が人体に悪影響を与えないとされる低いレベルであってもユーザにとって不快なものであり、画像形成装置では、以前からオゾン対策が積極的に行われてきた。代表的なオゾン対策技術としては、オゾンフィルタが挙げられる。これは、帯電器または装置全体の排気を1カ所に集約し、オゾンフィルタで回収(または触媒で分解)することにより、大気中へのオゾン排出を防止するものである(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、オゾンフィルタは、フィルタ自体のコストが高いことや、経時によって回収性能が低下していくという問題は避けられず、十分にオゾン問題を解決できるものではなかった。
【0004】
その一方、静電潜像を形成するときにオゾン発生の問題を懸念させることのない正帯電トナーを用いた画像形成技術も注目されていた。その中でも、重合トナーに代表される水系媒体中でトナー粒子を形成した後に乾燥させて生成するケミカルトナーを正帯電トナーとして画像形成を行う技術は有力で、オゾン発生の防止という効果に加え、ケミカルトナーがトナー粒径や粒度分布を制御しながら製造することが可能なことから、デジタル方式におけるドット画像を正確に再現できるような小径で、大きさのそろったトナーが得られる。
【0005】
また、ケミカルトナーではトナーの製造時に、ワックスや定着助剤等を添加してトナー粒子を形成することができるのでカプセル化、樹脂層による表面修飾が可能で、定着性と保存安定性とを両立することができる。
【0006】
また、ケミカルトナーではトナー形状をコントロールすることも比較的容易に行えるので、例えば転写率の高い形状のトナーを製造してクリーナーレスプロセスタイプの装置に適用したり、特定範囲の形状に制御したトナーを製造してブレードクリーニングのプロセスに適応することも可能であり、プリントボリュームの大きい高速機にも適用できる。
【0007】
さらに、トナーを、特定の形状にそろえたり、粒度分布をシャープにすることを容易に行えるので、帯電速度が速い画像形成方式にも適用可能で、1成分系現像剤による画像形成、特に非磁性1成分系現像剤による画像形成に好適である。
【0008】
しかしながら、正帯電性のケミカルトナーの製造する際には困難を伴っている。それは、水系媒体中で分散剤や樹脂粒子を安定して分散させるためアクリル酸、メタクリル酸という負帯電性を助長する極性モノマーを使用しなければならないことである。
【0009】
従来技術では、トナーに正帯電を付与するためにアンモニウム基などの正帯電性を付与する化合物を正帯電荷電制御剤としてトナーに内添したり、或いは正帯電のシリカ等外添剤を添加することによりトナーに正帯電性を付与することが行われてきたが、これらの方法はコストと安定性に問題があった(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
また、正帯電性トナーを用いる画像形成に使用される感光体としては、耐久性に優れるアモルファスシリコン感光体や安定した潜像形成能を有する有機感光体(OPC)等が挙げられる。しかしながら、正帯電方式の画像形成方式では、感光体表面近傍に設けられた感光層をみだりに減耗させないように制御することが要求されるので、どうしても感光体表面に付着した異物を完全に除去することができる様なクリーニングを行うことが難しかった。したがって、感光体表面に付着する異物に起因する画像流れの問題を解消することができなかった。これらの問題を解決するためにトナー中に300〜1000nmの研磨性微粒子を含有させる対策が採られていたが、この研磨性微粒子が定着性を阻害したり、カラー画像の光沢や透明性を低下させる原因となっていた(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
この様に正帯電方式による画像形成技術では安定した画像形成を行うには不十分なもので、デジタル画像を精度良く再現させるような高画質のトナー画像が得られる正帯電トナーの開発はまだ途上の段階にあった。
【特許文献1】特開2003−302787号公報
【特許文献2】特開2001−166662号公報
【非特許文献1】続電子写真技術の基礎と応用(電子写真学会編 1996.11.15コロナ社発行 p238〜241参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、画像形成時におけるオゾンガスの影響のない快適な画像出力が行えると共に、帯電時には均一な帯電性の得られる正帯電トナー、正帯電トナーを用いた正帯電現像剤と画像形成方法を提供することを目的とするものである。
【0013】
また、本発明は、感光体に対して研磨性粒子を添加しなくても、画像流れの発生がない正帯電トナー、正帯電トナーを用いた正帯電現像剤と画像形成方法を提供することを目的とするものである。
【0014】
さらに、トナーリサイクル特性にも優れ、感光体クリーニング装置から回収したトナーを現像器に戻して再使用してもトナー飛散によるトラブルを発生させない正帯電トナー、正帯電トナーを用いた正帯電現像剤と画像形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の課題は下記構成をとることにより達成される。
【0016】
(請求項1)
アミン、アンモニウム塩を分子内に有する共重合体を、トナー粒子表面部分に含有することを特徴とする正帯電トナー。
【0017】
(請求項2)
前記アミン、アンモニウム塩を分子内に有する共重合体は、アミン、アンモニウム塩で置換された(メタ)アクリルアミドを有する共重合体であることを特徴とする請求項1記載の正帯電トナー。
【0018】
(請求項3)
前記アミン、アンモニウム塩で置換された(メタ)アクリルアミドを有する共重合体は、下記一般式(1)、(2)または(3)で表されるアミノアクリル(メタ)アクリルアミドをモノマー成分として有することを特徴とする請求項2記載の正帯電トナー。
【0019】
【化1】

【0020】
〔式中、R1、R3、R4及びR5はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R2及びR6はそれぞれ(CH2nを表し、nは1〜10の整数である。Xは、Cl、Br、IまたはHSO3を表す。〕
(請求項4)
請求項1〜3のいずれか1項に記載の正帯電トナーと、シリコーン樹脂被覆キャリアとを含むことを特徴とする正帯電現像剤。
【0021】
(請求項5)
デジタル露光してアモルファスシリコン感光体上に形成した静電像を、請求項1〜3のいずれか1項に記載の正帯電トナーを用いて現像することを特徴とする画像形成方法。
【0022】
(請求項6)
デジタル露光して正帯電有機感光体上に形成した静電像を、請求項1〜3のいずれか1項に記載の正帯電トナーを用いて現像することを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、正帯電トナーを用いることにより、画像形成時におけるオゾンガスの影響のない快適な作業環境が確保され、狭いオフィスや一般家庭向けのプリンタ、複写機の提供を可能にした。
【0024】
また、本発明によれば、帯電時には均一な帯電性能が得られ、画像形成時には帯電立ち上がり速度が速く、しかも、長期にわたり安定した帯電性を維持することの可能な正帯電トナーにより、安定した画像形成を長期にわたり発現することが可能になった。即ち、大量プリント時の線幅変動、モード差による画像均一性を安定して維持することが可能になった。
【0025】
さらに、本発明では、定着性や画像の透明性を阻害する研磨性粒子を添加しなくても感光体上の残存トナーや付着物の除去が円滑に行え、フィルミングによる画像流れのない良好な画像形成を行えるようになった。
【0026】
さらに、トナーリサイクル特性にも優れ、感光体クリーニング装置から回収したトナーを現像器に戻して再使用してもトナー飛散によるトラブルを発生させない優れた正帯電トナー、正帯電現像剤及び画像形成方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の正帯電トナーは、樹脂と着色剤を含有し、アミン、アンモニウム塩を分子内に有する共重合体をトナー粒子表面部分に含有することを特徴としている。これにより、正帯電性に優れた特性を有するトナーを得ることができる。
【0028】
また、アミン、アンモニウム塩を分子内に有する共重合体がトナー粒子表面部分に含有するため、環境変化による影響を受けにくく、且つ、プリント時の外圧等によっても影響を受けにくく、結果として高耐久性を有する。
【0029】
一つの態様ではトナー粒子は4〜10mmの質量平均粒径を有する。このトナー粒子は、粒子の表面にさらにアミン、アンモニウム塩を有する重合体を設けた形を取るので、便宜上、それぞれ内部粒子、表面部分(外層ともいう)と呼ぶ。
【0030】
このアミンまたはアンモニウム塩を有する重合体で形成される表面部分は内部粒子の表面に約20ないし約200nmの厚みで設けられる。表面部分の厚みはトナー粒子の粒径に比べこの厚みは無視できるので、トナー粒子の粒径は実質的に内部粒子の粒径と同じである。
【0031】
アミンまたはアンモニウム塩を有する重合体はトナー粒子の表面に設けられる。内部粒子が微量、例えば、0.1モル%以下のアミンまたはアンモニウム塩を有する重合体を含んでもよいが、含まない方が好ましい。
【0032】
表面部分は内部粒子表面の50%以上の面積に設けられる。好ましくは80%以上の表面に設けられる。すべてのあるいはすべての表面を覆ってもよい。表面部分の厚みは無視できるほどに小さいため、トナーとして要求される着色剤は内部粒子に含ませればよく、表面部分には着色剤は含まなくてよい。表面部分は帯電特性を調整するなどの内部粒子では得られない機能を分担する。
【0033】
樹脂粒子全体に占める表面部分の量は、樹脂粒子全体の1〜50質量%が、さらには5〜50質量%が好ましい。
【0034】
表面部分を形成する重合体は、アミン、アンモニウム塩を含む1種類以上の重合性単量体を重合して設けられる。この重合体はホモポリマー、またはコポリマーである。
【0035】
表面部分は、アミンまたはアンモニウム塩を有する単量体を樹脂の構成成分として、0.5〜10mol%含むことが好ましく、2.5〜5.5mol%含むことがより好ましい。この含有量のコポリマーを用いてもよいし、ホモポリマー、多量のアミンまたはアンモニウム塩を有するコポリマーを用いるときは、アミンまたはアンモニウム塩の量に応じてアミンまたはアンモニウム塩を含まないポリマーを混合することにより調整する。
【0036】
本発明の正帯電トナーにおいては、アミン、アンモニウム塩を分子内に有する共重合体が、アミン、アンモニウム塩で置換された(メタ)アクリルアミドを有する共重合体であることが好ましく、更にアミン、アンモニウム塩で置換された(メタ)アクリルアミドを有する共重合体が、下記一般式(1)、(2)または(3)で表されるアミノアクリル(メタ)アクリルアミドをモノマー成分として有することが好ましい。
【0037】
【化2】

【0038】
上記一般式(1)、(2)及び(3)において、R1、R3、R4及びR5はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、アルキル基は好ましくは炭素数1〜10の飽和炭化水素基である。R2及びR6はそれぞれ(CH2nを表し、nは1〜10の整数である。Xは、Cl、Br、IまたはHSO3を表し、好ましくはClである。
【0039】
以下、一般式(1)、(2)及び(3)で表される具体的化合物例を、以下に示す。
【0040】
【化3】

【0041】
【化4】

【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

【0044】
表面部分に用いられるアミンまたはアンモニウム塩を有する共重合体は、上記化合物と下記の重合性単量体と重合して用いることができる。
【0045】
具体的には、ビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
【0046】
ビニル芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体及びその誘導体が挙げられる。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、メタクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0048】
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられ、ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0049】
また、モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0050】
次に、本発明の正帯電性トナーの製造方法について説明する。
【0051】
本発明の正帯電性トナーは、基本的に着色剤及びバインダー樹脂を含む内部粒子の表面にアミンまたはアンモニウム塩を分子内に有する重合体の表面部分を設けて作製する。この時、内部粒子は、離型剤などの添加剤を含んでもよい。
【0052】
内部粒子は、従来のトナー粒子と同様に作製することができる。表面部分は、内部粒子の表面にアミンまたはアンモニウム塩を含むモノマーを重合させる、あるいはアミンまたはアンモニウム塩を含むポリマーの微粒子を塩析、融着させるなどの方法によって形成することができる。
【0053】
好ましい製造法の例を述べる。
【0054】
モノマーを重合し、200nm程度の粒径の樹脂粒子を調製し、これを着色剤とともに塩析、融着してトナー粒子として必要な粒径まで成長させ内部粒子を作る。
【0055】
これに別途調製したアミンまたはアンモニウム塩を含む樹脂粒子を加え、塩析、融着により内部粒子の表面に表面部分を設ける。この際、内部粒子として酸モノマーを含有させることが好ましい。この理由としては明確ではないが、内部にアニオン性を付与し、シェルにカチオン性を付与した粒子を加えることでシェリングが容易になると推定される。
【0056】
または内部粒子の分散液にアミンまたはアンモニウム塩を含むモノマーと重合に使われる開始剤などを加えて重合反応をさせて内部粒子の表面に重合体による表面部分を形成する。
【0057】
他の好ましい例は、モノマーを着色剤とともに重合し、トナー粒子として必要な粒径まで成長させ、内部粒子を作製する。この内部粒子の分散液にアミンまたはアンモニウム塩を含むモノマーと重合に使われる開始剤などを加えて重合反応をさせて内部粒子の表面に重合体による表面部分を設ける。
【0058】
樹脂粒子と着色剤とで内部粒子を調製する方法例を説明する。この方法では、下記の各工程を含む。
【0059】
1:樹脂粒子製造工程
2:樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させて内部粒子を得る工程
3:アミノ基、アンモニウム基を有する重合体からなる表面部分を形成する工程
4:トナー粒子の分散系から当該トナー粒子を固液分離する固液分離工程、当該トナー粒子から界面活性剤などを洗浄して除去する洗浄工程
5:洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程
6:乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程。
【0060】
以下、各工程について、述べる。
【0061】
《1:樹脂粒子製造工程》
樹脂粒子は、乳化重合によって行うことが好ましい。さらに、多段重合によって樹脂粒子を製造することが好ましい。
【0062】
多段重合工程とは、樹脂粒子の分子量分布を拡大させるために行う重合方法である。すなわち、1つの樹脂粒子において異なる分子量分布を有する相を形成するために重合反応を多段階に分けて行う。得られた樹脂粒子がその粒子の中心より表層に向かって分子量勾配を形成させる様に行うことができる。例えば、はじめに高分子量の樹脂粒子分散液を得た後、新たに重合性単量体と連鎖移動剤を加えることによって低分子量の表層を形成する方法が採られる。強度があり、オフセット発生防止したトナーを得るのに適している。
【0063】
製造の安定性及び得られるトナーの破砕強度の観点から三段重合以上の多段重合法を採用することが好ましい。
【0064】
以下、多段重合法の代表例である二段重合法及び三段重合法について説明する。この様な多段階重合反応によって得られるトナーでは破砕強度の観点から表層が低分子量のものが好ましい。
【0065】
(二段重合法)
二段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)と、低分子量樹脂から形成される表層とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。この樹脂粒子をトナーの内部粒子として用いるときは中心部には離型性のある結晶性物質を含有させてもよい。
【0066】
この方法を具体的に説明すると、単量体溶液を水系媒体(例えば、界面活性剤水溶液)中に油滴分散させた後、この系を重合処理(第一段重合)することにより、高分子量の樹脂粒子の分散液を調製する。結晶性物質を含有させるときは結晶性物質を単量体に溶解させた単量体溶液を調製して用いる。
【0067】
次いで、この樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体を含む単量体とを添加し、樹脂粒子の存在下で重合処理(第二段重合)を行うことにより、表層を形成する。
【0068】
(三段重合法)
三段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)、中間層及び表層を有する樹脂粒子を製造する方法である。中間層には結晶性物質を含有させてもよい。
【0069】
この方法を具体的に説明すると、先ず、常法に従った重合処理(第一段重合)により得られた樹脂粒子(核)の分散液を、水系媒体(例えば、界面活性剤の水溶液)に添加するとともに、上記水系媒体中に、単量体溶液を油滴分散させた後、この系を重合処理(第二段重合)することにより、樹脂粒子(核)の表面に、被覆層(中間層)を形成して、樹脂粒子(高分子量樹脂−中間分子量樹脂)の分散液を調製する。第二段重合で結晶性物質を単量体に溶解させた単量体溶液を用いることにより中間層に結晶性物質を含有させることができる。
【0070】
得られた樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体を含む重合性単量体とを添加し、樹脂粒子の存在下で重合性単量体を重合処理(第三段重合)することにより、樹脂粒子の表面に、表層を形成する。
【0071】
この多段重合では100〜300nmの粒径の樹脂粒子を調製し、この分散液を塩析融着することにより内部粒子を形成する。
【0072】
次に、トナー粒子製造工程で用いられる各構成因子について、詳細に説明する。
【0073】
〈重合性単量体〉
本発明に用いられる樹脂粒子を造るための重合性単量体としては、疎水性単量体を必須の構成成分とし、必要に応じて架橋性単量体が用いられる。また、疎水性単量体にアクリル酸またはメタアクリル酸の共重合体を形成できるものを用いることが好ましい。
【0074】
(1)疎水性単量体
種々の疎水性単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、アクリル酸またはメタアクリル酸の1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0075】
具体的には、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、モノビニル芳香族系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
【0076】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0077】
ビニル芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体及びその誘導体が挙げられる。
【0078】
ビニルエステル系単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられ、ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0079】
また、モノオレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、ジオレフィン系単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0080】
(2)架橋性単量体
樹脂粒子の特性を改良するために架橋性単量体を添加しても良い。架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0081】
(3)酸性極性基を有する単量体
酸性極性基を有する単量体としては、例えば、a)カルボキシル基(−COOH)を有する重合性単量体、及びb)スルホン基(−SO3H)を有する重合性単量体を挙げることができる。
【0082】
a)のカルボキシル基を有する重合性単量体としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル、及びこれらのNa、Zn等の金属塩類等を挙げることができる。
【0083】
b)のスルホン基を有する重合性単量体としては、例えば、スルホン化スチレン、及びそのNa塩、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル、及びこれらのNa塩等を挙げることができる。
【0084】
本発明では、a)のカルボキシル基を有する重合性単量体が好ましく用いられ、特に好ましくはメタクリル酸、アクリル酸を用いるのがよい。
【0085】
〈陰イオン性界面活性剤〉
前述の重合性単量体を使用して、特にミニエマルジョン重合を行うためには、陰イオン性界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行うことが好ましい。この際に使用することのできる界面活性剤としては下記の陰イオン性界面活性剤を好適な化合物の例として挙げることができる。
【0086】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
【0087】
本発明では、下記一般式(A)、(B)で表される陰イオン性界面活性剤が特に好ましく用いられる。
【0088】
一般式(A)
1(OR2nOSO3
一般式(B)
1(OR2nSO3
一般式(A)、(B)において、R1は炭素数6〜22のアルキル基またはアリールアルキル基を表すが、好ましくは炭素数8〜20のアルキル基またはアリールアルキル基であり、更に好ましくは炭素数9〜16のアルキル基またはアリールアルキル基である。
【0089】
1で表される炭素数6〜22のアルキル基としては、例えば、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、R1で表されるアリールアルキル基としては、ベンジル基、ジフェニルメチル基、シンナミル基、スチリル基、トリチル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0090】
一般式(A)、(B)において、R2は炭素数2〜6のアルキレン基を表すが、好ましくは炭素数2〜3のアルキレン基である。R2で表される炭素数2〜6のアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基等が挙げられる。
【0091】
一般式(A)、(B)において、nは1〜11の整数であるが、好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜5であり、特に好ましくは2〜3である。
【0092】
一般式(A)、(B)において、Mで表される1価の金属元素としてはナトリウム、カリウム、リチウムが挙げられる。中でも、ナトリウムが好ましく用いられる。
【0093】
以下に、一般式(A)、(B)で表される界面活性剤の具体例を示す。
【0094】
化合物(101):C1021(OCH2CH22OSO3Na
化合物(102):C1021(OCH2CH23OSO3Na
化合物(103):C1021(OCH2CH22SO3Na
化合物(104):C1021(OCH2CH23SO3Na
化合物(105):C817(OCH2CH(CH3))2OSO3Na
化合物(106):C1837(OCH2CH22OSO3Na
〈離型剤〉
本発明で用いられる離型剤としては、公知のものを用いることができる。
【0095】
この様に樹脂粒子中に離型剤を含有させた樹脂粒子を着色剤粒子と水系媒体中で塩析/融着させることで、微細に離型剤が分散されたトナーを得ることができる。
【0096】
本発明の正帯電トナーでは、離型機能を有する物質として、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等が好ましく、特に好ましくは、下記式で表されるエステル系化合物である。
【0097】
1−(OCO−R2n
式中、nは1〜4の整数で、好ましくは2〜4、更に好ましくは3〜4、特に好ましくは4である。R1、R2は、各々置換基を有しても良い炭化水素基を示す。R1は、炭素数1〜40、好ましくは1〜20、更に好ましくは2〜5がよい。R2は、炭素数1〜40、好ましくは16〜30、更に好ましくは18〜26がよい。
【0098】
次に、代表的な離型剤の例を以下に示す。
【0099】
【化7】

【0100】
【化8】

【0101】
また、本発明では、離型剤として結晶性ポリエステルも用いることができる。結晶性ポリエステルとしては、脂肪族ジオールと、脂肪族ジカルボン酸(酸無水物及び酸塩化物を含む)とを反応させて得られるポリエステルが好ましい。
【0102】
上記化合物の添加量は、トナー全体に対し1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%である。
【0103】
〈着色剤〉
本発明の正帯電トナーは、上記の複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着して得られるものである。本発明の正帯電トナーを構成する着色剤(複合樹脂粒子との塩析/融着に供される着色剤粒子)としては、各種の無機顔料、有機顔料を挙げることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
【0104】
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0105】
これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0106】
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜60質量%添加することが好ましい。
【0107】
有機顔料としては、従来公知のものを用いることができ、好ましい有機顔料を以下に例示する。
【0108】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185等が挙げられる。
【0109】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156等が挙げられる。
【0110】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0111】
これらの有機顔料は、所望に応じて、単独または複数を選択併用することが可能である。また、顔料の添加量は、重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%である。
【0112】
樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は30〜74℃が好ましく、更に好ましくは40〜64℃である。また、樹脂粒子の軟化点は95〜140℃が好ましい。
【0113】
本発明に用いられる水系媒体とは、水50〜100質量%と水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等を例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0114】
《2:内部粒子を得る工程》
前記多段重合工程によって得られた樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる(塩析と融着とを同時に起こさせる)ことによって、内部粒子を得る。
【0115】
塩析/融着とは、塩析(粒子の凝集)と融着(粒子間の界面消失)とが同時に起こること、または、塩析と融着とを同時に起こさせる工程をいう。塩析と融着とを同時に行わせるためには、樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件において粒子(樹脂粒子及び着色剤粒子)を凝集させることが好ましい。
【0116】
《3:表面部分を形成する工程》
表面部分を形成する工程内部粒子が必要な粒径に達したら、内部粒子の分散液に表面部分を形成する。
【0117】
3−A:内部粒子に分散液に表面部分を形成するアミノ基またはアンモニウム基を有する重合体の粒子を加え、ひき続き塩析/融着を続ける。この時、内部粒子同士が融着することを防止するため、表面部分用粒子を添加するまでに、少量の凝集停止剤(凝集抑制剤)を加えると良い。凝集停止剤としていは、1価の陽イオンに解離する塩が好ましい。
【0118】
3−B:別の方法は、内部粒子に分散液に表面部分を形成するアミノ基またはアンモニウム基を有するモノマーを含むモノマー溶液及び重合開始剤など重合反応に必要な材料を加えて内部粒子状にアミノ基またはアンモニウム基を有する重合体を形成する。
【0119】
塩析・融着によって表面部分を形成するために重合体粒子を用いるとき、粒径は100〜500nm、特に150〜300nmが好ましい。この粒径の粒子を用いて塩析・融着を行い、好ましくは150〜300nm、更に好ましくは180〜250nmの厚さの表面部分を得ることができる。
【0120】
アミノ基またはアンモニウム基を分子内に有する重合体粒子は、先に述べた内部粒子を形成するための粒子と同様に、多段重合によって得ることができる。このとき、重合性単量体のすべてまたは一部にアミノ基またはアンモニウム基を有するモノマーを用いる。アミノ基またはアンモニウム基を有するモノマーは多段重合の最後の段(二段重合では第二段、三段重合では第三段)に用いることが好ましい。
【0121】
アミノ基またはアンモニウム基を分子内に有する重合体粒子は、ホモポリマー粒子でもコポリマー粒子でもよい。コポリマー粒子を用いることが好ましい。ホモポリマー粒子はアミノ基またはアンモニウム基を有さない重合体粒子と組み合わせて用いられる。
【0122】
重合体粒子は、アミンまたはアンモニウム塩を分子内に有する単量体粒子を単独で用いることがことが好ましい。樹脂の単量体構成成分として、アミンまたはアンモニウム塩を0.5〜10モル%、さらには2.5〜5.5mol%含むことがより好ましい。
【0123】
表面部分を形成する樹脂のTgは40〜80℃が好ましい。また、表面部分を形成する樹脂の分子量としては、GPCにて測定されたスチレン換算分子量で、ピーク分子量が1,000〜20,000、好ましくは2,000〜10,000、さらに好ましくは3,000〜7,000であり、また重量平均分子量が10,000〜200,000のものが好ましい。このピーク分子量とすることで内部粒子に対する接着性を向上させることができる。この理由は明確ではないが、比較的低分子量領域にピークを有する樹脂とすることで粒子間の融着を効果的に行うことができ、かつ表面部分の機能である保護機能の両立をはかることができるものと推定される。
【0124】
内部粒子の酸成分(A)mol%と、表面部分を形成する樹脂のアミンまたはアンモニウム塩成分(B)mol%の比率A/Bは、0.1〜10が好ましい。この比率範囲内とすることで、表面部分の形成を均一にすることができる。
【0125】
樹脂粒子の融着後も温度を結晶性物質の融点近傍、好ましくは融点±20℃に保ち、一定の強度で攪拌を継続してトナー粒子分散液を調製する。
【0126】
《4:固液分離・洗浄工程》
この固液分離・洗浄工程では、上記の工程で得られたトナー粒子の分散系から当該トナー粒子を固液分離する工程と、固液分離されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。固液分離は、遠心分離器、ブッフナー漏斗、フィルタープレス等を使用して行うことができる。
【0127】
《5:乾燥工程》
洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する。
【0128】
この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0129】
乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下である。
【0130】
乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0131】
《6:外添剤処理工程》
上記で得られた陽イオン性界面活性剤処理済みトナー粒子をそのままトナーとして使用してもよいが、トナー粒子上の正帯電性を安定させ、流動性の改良やクリーニング性の向上等の目的で、いわゆる外添剤をトナー粒子に添加して使用することができる。これら外添剤として種々の無機微粒子、有機微粒子及び滑剤を使用することができる。
【0132】
外添剤として使用できる無機微粒子としては、負帯電性の外添剤を好ましく用いることができる。トナー粒子からの遊離を防止し、帯電性を安定させるとともに、感光体や転写部材の汚染を防止する観点から、負帯電性シリカが好ましい。
【0133】
具体的には、シリカ微粒子、チタン微粒子、アルミナ微粒子等を好ましく用いることができる。これら無機微粒子は疎水性であることが好ましい。
【0134】
シリカ微粒子の具体例としては、日本アエロジル株式会社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、キャボット株式会社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
【0135】
チタン微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル株式会社製の市販品T−805、T−604、テイカ株式会社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン株式会社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産株式会社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0136】
アルミナ微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル株式会社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業株式会社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0137】
外添剤として使用できる有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の微粒子を挙げることができる。かかる有機微粒子の構成材料としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体等を挙げることができる。
【0138】
外添剤として使用できる滑剤としては、高級脂肪酸の金属塩を挙げることができる。かかる高級脂肪酸の金属塩の具体例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸銅、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩;オレイン酸亜鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉄、オレイン酸銅、オレイン酸マグネシウム等のオレイン酸金属塩;パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム等のパルミチン酸金属塩;リノール酸亜鉛、リノール酸カルシウム等のリノール酸金属塩;リシノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム等のリシノール酸金属塩等が挙げられる。
【0139】
外添剤の添加量としては、トナーに対して0.1〜5質量%程度であることが好ましい。
【0140】
外添剤をトナーに混合する装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシエルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機等の種々の公知の混合装置を挙げることができ、これらの中でヘンシェルミキサーが好ましい。
【0141】
なお、本発明では、上記外添剤を添加するものであるが、研磨性粒子を付与する目的で外添剤を添加する必要はないものである。
【0142】
次に、本発明の正帯電トナーについて説明する。
【0143】
本発明の正帯電トナーは、非磁性1成分現像剤、キャリアと混合して用いる2成分現像剤としても用いることができる。
【0144】
以下、正帯電トナーとキャリアを混合して用いる正帯電2成分現像剤について説明する。
【0145】
キャリアは、磁性体粒子を樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性体粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましく用いられる。被覆用の樹脂として具体的には、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂またはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられるが、これらの中ではシリコーン系樹脂が好ましい。
【0146】
磁性体粒子としては、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等からなる公知のものを用いることができ、これらの中ではフェライト粒子が好ましい。
【0147】
上記キャリアの体積平均粒径は15〜100μmのものが好ましく、25〜80μmのものがより好ましい。キャリアの体積平均粒径の測定は、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス」(シンパティック株式会社製)により測定することができる。
【0148】
本発明に係る感光体としては、正帯電の有機感光体(OPC)やアモルファスシリコン感光体を用いることが好ましく、本発明の正帯電トナー及び本発明に係る正帯電現像剤と組み合わせて用いると長期間安定した画像が得られる。
【0149】
正帯電有機感光体は、一般に導電性支持体上には下引層(UCL)、その上に機能分離した電荷輸送層(CTL)と電荷発生層(CGL)を順に設ける多層構成をとるのが好ましい。しかし、単層構造の正帯電感光体では導電性支持体上には下引層(UCL)の上に感光層(電荷発生+電荷輸送)を設けた構成でも良い。
【0150】
アモルファスシリコン感光体は、アモルファスシリコン層または非晶質シリコン層を有する感光体を云い、特開昭54−83746号公報、特開昭57−11556号公報、特開昭60−67951号公報、特開昭62−168161号公報、特開昭57−158650号公報等に公知のアモルファスシリコン系感光体を用いることができる。
【0151】
本発明の画像形成方法は、アモルファスシリコン感光体或いは正帯電有機感光体を搭載した画像形成装置で、本発明の正帯電トナーを用い正帯電方式で画像形成する方法である。
【0152】
本発明の画像形成方式の1例として、中間転写ベルト方式のタンデム型カラー画像形成装置について説明する。
【0153】
図1は、本発明に係る画像形成装置の1例を示す概略構成図である。
【0154】
図1に示す画像形成装置は、複写機、レーザービームプリンター等として使用できるものである。図1に示す画像形成装置は、ユニット10Y、10M、10C、10Bkと、ベルト形状の中間転写体16と、転写ローラ17Y、17M、17C、17Bkと、記録紙搬送ローラ18と、定着装置2とを備えている。本発明では、ベルト形状の中間転写体16のベルト材料として、ベルト形状の前記本発明に係る中間転写体を備える。本発明では中間転写体16や、後述する定着装置2のエンドレスベルトのベルト材料として、ポリイミド樹脂が使用される。なお、本発明に係る画像形成装置で使用されるベルト材料に使用するポリイミド樹脂については後述する。
【0155】
ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、矢印の時計方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転可能にそれぞれ感光体ドラム11Y、11M、11C、11Bk(図示ないが、感光体ドラムにはフランジが固定されている。)が備えられる。感光体ドラム11Y、11M、11C、11Bkの周囲には、コロトロン帯電器12Y、12M、12C、12Bkと、露光器13Y、13M、13C、13Bkと、各色現像器(イエロー現像器14Y、マゼンタ現像器14M、シアン現像器14C、ブラック現像器14Bk)と、感光体クリーナー15Y、15M、15C、15Bkとがそれぞれ配置されている。
【0156】
ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、中間転写ベルト16に対して4つ並列に配置されているが、ユニット10Bk、10Y、10C、10Mの順等、画像形成方法に合わせて適当な順序を設定することができる。
【0157】
中間転写ベルト16は、バックアップローラ30、支持ローラ31、32、33によって、矢印の反時計方向に感光体ドラム11Y、11M、11C、11Bkと同じ周速度をもって回転可能になっており、支持ローラ32、33の中間に位置するその一部が感光体ドラム11Y、11M、11C、11Bkとそれぞれ接するように配置されている。中間転写ベルト16は、ベルト用クリーニング装置34が備えられている。支持ローラ31はテンションローラの役割を担い、中間転写ベルト16面方向に移動可能に配置され、中間転写ベルト16のテンションを調節することができる。
【0158】
転写ローラ17Y、17M、17C、17Bkは、中間転写ベルト16の内側であって、中間転写ベルト16と感光体ドラム11Y、11M、11C、11Bkとが接している部分に対向する位置にそれぞれ配置され、感光体ドラム11Y、11M、11C、11Bkと、中間転写ベルト16にトナー画像転写する一次転写部(ニップ部)を形成している。
【0159】
バイアスローラ35は、中間転写ベルト16のトナー像が担持される表面側に、中間転写ベルト16を介しバックアップローラ30と対向して配置されている。この中間転写ベルト16を介したバイアスローラ35とバックアップローラ30とで二次転写部(ニップ部)を形成している。また、バックアップローラ30には、バックアップローラ30に圧接して回転する電極ローラ26を備える。
【0160】
定着装置2は、記録シートPが上記二次転写部を通過した後に搬送できるように配置されている。
【0161】
図1に示す画像形成装置において、ユニット10Yにおいては、感光体ドラム11Yを回転駆動させる。これと連動してコロトロン帯電器12Yが駆動し、感光体ドラム11Yの表面を所定の極性・電位に一様に帯電させる。表面が一様に帯電された感光体ドラム11Yは、次に、露光器13Yによって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される。
【0162】
続いて該静電潜像は、イエロー現像器14Yによって現像されと、感光体ドラム11Yの表面にトナー画像が形成される。
【0163】
このトナー画像は、感光体ドラム11Yと中間転写ベルト16との一次転写部(ニップ部)を通過すると同ときに、転写ローラ17Yから印加される転写バイアスにより形成される電界により、中間転写ベルト16の外周面に順次、一次転写される。
【0164】
この後、感光体ドラム11Y上に残存したトナーは、感光体クリーナ15Yによって清掃・除去される。そして、感光体ドラム11Yは、次の転写サイクルに供される。
【0165】
以上の転写サイクルは、ユニット10M、10C、10Bkでも同様に行われ、第2色のトナー像、第3色のトナー像、第4色のトナー像が順次形成され中間転写ベルト16上に重ね合わせられて、フルカラートナー像が形成される。
【0166】
中間転写ベルト16に転写されたフルカラートナー像は、転写ベルト16の回転でバイアスローラ35が設置された二次転写部(ニップ部)に到る。
【0167】
記録シートPは、二次転写部の中間転写ベルト16とバイアスローラ35との間に所定のタイミングで給送される。バイアスローラ35及びバックアップローラ30による圧接搬送と中間転写ベルト16の回転により、該中間転写ベルト16に担持されたトナー像が記録シートP上に転写される。
【0168】
トナー像が転写された記録シートPは、定着装置2に搬送され、加圧/加熱処理でトナー像を定着する。なお、転写の終了した中間転写ベルト16は、二次転写部の下流に設けたベルト用クリーニング装置34で残留トナーの除去が行われて次の転写に備える。
【0169】
本発明に係る画像形成装置の中間転写ベルトや、定着装置のエンドレスベルトには、ベルト材料としてポリイミド樹脂が好ましく使用される。
【0170】
図1に示す画像形成装置では、感光体として正帯電の有機感光体或いはアモルファスシリコン感光体を用いることができ、現像器として磁性2成分現像剤タイプ或いは非磁性1成分タイプを用いることができる。
【0171】
図2は、非磁性1成分現像剤に用いる現像器の1例を示す断面構成図である。
【0172】
図2において、11は感光体ドラム、102は現像ローラ、103は金属弾性ブレード、104は非磁性1成分トナー、105は撹拌羽根、106はリカバリープレートを示す。なお、現像ローラ102は、その表面がシリコーン樹脂107で被覆されたものを用いる。
【実施例】
【0173】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0174】
実施例1
〔トナー1−Cの調製〕
内部粒子となる着色粒子分散液(M1)と、外層となる外層用樹脂粒子分散液(S1)とを各々調製した後、内部粒子となる着色粒子分散液(M1)と外層用樹脂粒子分散液(S1)とを混合し、内部粒子となる着色粒子の表面上に外層用樹脂粒子を固着させて、トナー1−Cを作製した。
【0175】
1.外層用樹脂粒子分散液を製造する工程
内部粒子となる着色粒子表面に固着させる外層用樹脂粒子(s1)を含む外層用樹脂粒子分散液(S1)を調製した。
【0176】
(重合性単量体溶液1−1−1)
下記組成を、重合性単量体溶液1−1−1とする。
【0177】
スチレン 70.1g
n−ブチルアクリレート 19.9g
メタクリル酸 10.9g
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコに、ノニオン系界面活性剤「ナロアクティーN200」(三洋化成工業社製)の7.08gをイオン交換水の3010gに溶解させ、窒素気流下、攪拌しながら、内温を80℃に昇温させて、界面活性剤溶液を調製した。この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)の9.2gを、イオン交換水の200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、上記重合性単量体溶液1−1−1を1時間かけて滴下し、滴下終了後、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、攪拌することにより重合(第一段重合)を行い、樹脂粒子を調製した。これを、樹脂粒子(1−1−1)とする。
【0178】
(重合性単量体溶液1−1−2)
攪拌装置を取り付けたフラスコ内において、以下の重合性単量体の混合液に離型剤(例示化合物(19))を96.0g添加し、80℃に加温し溶解した。これを、重合性単量体溶液(1−1−2)とする。
【0179】
スチレン 122.9g
n−ブチルアクリレート 49.7g
メタクリル酸 16.3g
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコに、ノニオン系界面活性剤「ナロアクティーN200」(三洋化成工業社製)の5.7gをイオン交換水の1340gに溶解させた界面活性剤溶液を調製した。この界面活性剤溶液を80℃に加熱した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により、上記重合性単量体溶液1−1−2を2時間混合分散させ、分散粒子径(646nm)を有する乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。次いで、前記分散液(乳化液)にイオン交換水1460mlと重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)6.51gをイオン交換水254mlに溶解させた重合開始剤溶液と、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステルの0.75gとを樹脂粒子(1−1−1)に添加し、この系を80℃にて3時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第2段重合)を行い、樹脂粒子(1−1−1)を原料とした樹脂粒子を得た。これを樹脂粒子(1−1−2)とする。
【0180】
上記で得られた樹脂粒子(1−1−2)に、重合開始剤「VA−057」(和光純薬工業社製)の8.87gをイオン交換水の346mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、次いで、95℃の温度条件下に、以下の重合性単量体溶液1−1−3を1時間かけて滴下した。
【0181】
(重合性単量体溶液1−1−3)
スチレン 322.3g
n−ブチルアクリレート 121.9g
メタクリル酸 35.5g
例示化合物(1−3) 4.5g
n−オクチルメルカプタン 6.4g
滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第3段重合)を行った後、28℃まで冷却し、樹脂粒子(1−1−2)を原料とした外層用樹脂粒子(s1)の分散液を得た。この樹脂粒子分散液を外層用樹脂粒子分散液(S1)と呼ぶ。
【0182】
2.内部粒子用樹脂粒子分散液を製造する工程
2−1.トナー粒子の内部粒子となる樹脂粒子の製造
(重合性単量体溶液2−1−1)
攪拌装置を取り付けたフラスコ内において、以下の重合性単量体の混合液に離型剤(例示化合物(19))を96.0g添加し、80℃に加温し、溶解した。これを、重合性単量体溶液2−1−1とする。
【0183】
スチレン 172.9g
n−ブチルアクリレート 55.0g
メタクリル酸 23.1g
一方、撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた5000mlのセパラブルに、アニオン性界面活性剤(例示化合物101)2.5gをイオン交換水1340gに溶解させ界面活性剤溶液を調製した。前記界面活性剤溶液を80℃に加熱した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により、重合性単量体溶液2−1−1を2時間混合分散させ、分散粒子径(482nm)を有する乳化粒子(油滴)を含む乳化液(分散液)を調製した。
【0184】
次いで、イオン交換水1460mlを添加した後、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)7.5gをイオン交換水142mlに溶解させた開始剤溶液と、n−オクタンチオール6.74gとを添加し、この系を80℃にて3時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第一段重合)を行い、樹脂粒子を得た。これを樹脂粒子(2−1−1)とする。
【0185】
これに、重合開始剤(KPS)11.6gをイオン交換水220mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、次いで、80℃の温度条件下に、以下の重合性単量体溶液2−1−2を1時間かけて滴下した。
【0186】
(重合性単量体溶液2−1−2)
スチレン 291.2g
n−ブチルアクリレート 132.2g
メタクリル酸 42.9g
n−オクタンチオール 7.51g
滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第二段重合)を行った後、28℃まで冷却し、樹脂粒子(2−1−1)を原料とした樹脂粒子(2−1−2)の分散液を得た。
【0187】
2−2.トナー粒子内部粒子の凝集工程
以下に示す着色剤分散液と上記の樹脂粒子(2−1−2)の分散液を用いて塩析/融着を行った。
【0188】
(着色剤分散液Cの調製)
アニオン系界面活性剤(101)59.0gをイオン交換水1600mlに攪拌溶解し、この溶液を攪拌しながら、シアン顔料C.I.Pigment Blue15:1、280.0gを徐々に添加し、次いで「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、着色剤分散液Cを調製した。
【0189】
樹脂粒子(2−1−2)259.3g(固形分換算)と、イオン交換水1120gと、上記の着色剤分散液Cの237gとを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を取り付けた四つ口フラスコに入れ攪拌した。容器内の温度を30℃に調整した後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整した。
【0190】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物55.3gをイオン交換水55.3mlに溶解した水溶液を、攪拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて90℃まで昇温し、樹脂粒子(2−1−2)と着色剤との塩析/融着を行った。
【0191】
攪拌と加熱を続けながら、「コールターカウンターTA−II」(ベックマン・コールター社製)にて内部粒子となる粒子の粒径を測定し、体積平均粒径が5.5μmになった時点で、塩化ナトリウム15.3gをイオン交換水100mlに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、内部粒子となる着色粒子分散液(M1)を得た。
【0192】
3.トナー粒子外層を形成する工程
外層用樹脂粒子分散液(S1)の87.5g(固形分換算)を、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH8に調整した。
【0193】
一方、内部粒子となる着色粒子分散液(M1)の加熱攪拌を約1時間以上継続して形状制御を行い、円形度が0.944になったところで、上記の外層用樹脂粒子分散液(S1)を添加し、内部粒子表面に外層用樹脂粒子(s1)を融着し外層を形成した。
【0194】
その後、塩化ナトリウム123.9gをイオン交換水500gに溶解した水溶液を加え、粒子の凝集力を更に弱めた上、95℃にて更に2時間加熱攪拌を続けた。その後、8℃/分の条件で30℃まで冷却し、塩酸を添加してpH2に調整し、攪拌を停止した。これをトナー粒子1−Cの分散液とする。トナー粒子1−Cの円形度の平均値は0.964であった。
【0195】
4.固液分離、洗浄する工程
トナー粒子1−Cの分散液を遠心脱水機にかけたのち、固形分に対して、20倍量のイオン交換水をふりかけながら洗浄し、トナーケーキ1−Cを得た。
【0196】
5.乾燥する工程
洗浄して得られたトナーケーキ1−Cを減圧乾燥機で、水分量が4質量%になるまで乾燥してトナー粒子1−Cを得た。
【0197】
6.外添混合する工程
上記のトナー粒子1−Cに、疎水性シリカ「R805」(日本アエロジル社製)0.8質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工株式会社製)の回転翼の周速を30m/秒に設定し25分間混合した。その後、目開き45μmのフルイを用いて粗粒を除去し、トナー1−Cを作製した。
【0198】
〔トナー1−Mの調製〕
上記トナー1−Cの調製において、シアン顔料C.I.Pigment Blue15:1の280.0gを、マゼンタ顔料C.I.Pigment Red184の420gに変更した以外は同様にして、トナー1−Mを調製した。
【0199】
〔トナー1−Yの調製〕
上記トナー1−Cの調製において、シアン顔料C.I.Pigment Blue15:1の280.0gを、イエロー顔料C.I.Pigment Yellow74の420gに変更した以外は同様にして、トナー1−Yを調製した。
【0200】
〔トナー1−Bkの調製〕
上記トナー1−Cの調製において、シアン顔料C.I.Pigment Blue15:1の280.0gを、中性カーボンブラック「リーガル660」(キャボット社製)の420gに変更した以外は同様にして、トナー1−Bkを調製した。
【0201】
実施例2
〔トナー2−Cの調製〕
上記トナー1−Cの調製において、外層用樹脂粒子(s1)の調製時に用いた例示化合物(1−3)を、例示化合物(2−6)に変更した以外は同様にして、トナー2−Cを調製した。
【0202】
〔トナー2−Mの調製〕
上記トナー2−Cの調製において、シアン顔料C.I.Pigment Blue15:1の280.0gを、マゼンタ顔料C.I.Pigment Red184の420gに変更した以外は同様にして、トナー2−Mを調製した。
【0203】
〔トナー2−Yの調製〕
上記トナー2−Cの調製において、シアン顔料C.I.Pigment Blue15:1の280.0gを、イエロー顔料C.I.Pigment Yellow74の420gに変更した以外は同様にして、トナー2−Yを調製した。
【0204】
〔トナー2−Bkの調製〕
上記トナー2−Cの調製において、シアン顔料C.I.Pigment Blue15:1の280.0gを、中性カーボンブラック「リーガル660」(キャボット社製)の420gに変更した以外は同様にして、トナー2−Bkを調製した。
【0205】
比較例1
〔トナー3−Cの調製〕
トナー1−Cの調製において、外層用樹脂粒子(s1)の調製時に用いた例示化合物(1−3)を加えなかった以外は同様にして、トナー3−Cを調製した。
【0206】
〔トナー3−Mの調製〕
上記トナー3−Cの調製において、シアン顔料C.I.Pigment Blue15:1の280.0gを、マゼンタ顔料C.I.Pigment Red184の420gに変更した以外は同様にして、トナー3−Mを調製した。
【0207】
〔トナー3−Yの調製〕
上記トナー3−Cの調製において、シアン顔料C.I.Pigment Blue15:1の280.0gを、イエロー顔料C.I.Pigment Yellow74の420gに変更した以外は同様にして、トナー3−Yを調製した。
【0208】
〔トナー3−Bkの調製〕
上記トナー3−Cの調製において、シアン顔料C.I.Pigment Blue15:1の280.0gを、中性カーボンブラック「リーガル660」(キャボット社製)の420gに変更した以外は同様にして、トナー3−Bkを調製した。
【0209】
比較例2
〔トナー4−Cの調製〕
上記トナー1−Cの調製において、凝集工程で内部粒子用樹脂粒子(2−1−2)の259.3g(固形分換算)と、イオン交換水の1120gと、着色剤分散液Cの23.7gとを凝集させ、表面部分の形成を省いた以外は同様にして、トナー4−Cを調製した。
【0210】
〔トナー4−Mの調製〕
上記トナー4−Cの調製において、シアン顔料C.I.Pigment Blue15:1の280.0gを、マゼンタ顔料C.I.Pigment Red184の420gに変更した以外は同様にして、トナー4−Mを調製した。
【0211】
〔トナー4−Yの調製〕
上記トナー4−Cの調製において、シアン顔料C.I.Pigment Blue15:1の280.0gを、イエロー顔料C.I.Pigment Yellow74の420gに変更した以外は同様にして、トナー4−Yを調製した。
【0212】
〔トナー4−Bkの調製〕
上記トナー4−Cの調製において、シアン顔料C.I.Pigment Blue15:1の280.0gを、中性カーボンブラック「リーガル660」(キャボット社製)の420gに変更した以外は同様にして、トナー4−Bkを調製した。
【0213】
表1に、用いたアミンまたはアンモニウム塩を有する化合物、トナー粒子の円形度の平均値を示す。
【0214】
【表1】

【0215】
《2成分現像剤の作製》
縮合反応型シリコーン樹脂の1質量部を、キシレンの50質量部に溶解してなる被覆樹脂溶液中に、体積平均粒径40μmのフェライト粒子の100質量部を浸漬した。その後、加熱してキシレンを除去し、更に200℃で3時間にわたり熱処理して焼結し、次いで凝集物をふるい分けし、シリコーン樹脂で被覆されたキャリアを作製した。
【0216】
前記調製した各トナーと上記キャリアをトナー濃度が6質量%となるよう「V型混合機」で混合し、各2成分現像剤を作製した。
【0217】
《現像剤の評価》
〔評価機〕
評価は、2種類の評価機を用いて行った。
【0218】
(評価機1)
正帯電有機感光体を搭載し、非磁性一成分現像方式である市販の電子写真式プリンター「HL−5040」(ブラザー工業社製)を用いた。
【0219】
(評価機2)
二成分現像方式である市販の電子写真式プリンター「STIOS9331」(コニカミノルタビジネステクノロジー社製)の感光体をアモルファスシリコン感光体に変更し、画像形成プロセスを正帯電で画像形成できるよう変更して用いた。
【0220】
評価は、上記で作製した各トナーと各2成分現像剤を評価機に装填し、プリントを行い、以下の項目について行った。
【0221】
〔評価機1を用いての評価〕
上記評価機1を用いて、下記の各評価を行った。
【0222】
(画像の安定性1:線幅)
C、M、Y、Bkの4色で100μm幅のラインチャートを印字し、1万枚プリントごとに線幅を測定し、計10万枚のプリントを昼夜連続で行った。
【0223】
〈評価基準〉
A:各色の線幅が100±5μmを満たす
B:各色の線幅が100±10μmを満たす
C:いずれか1色でも100±10μmを満たさないサンプルがあった
(画像の安定性2:モード差)
フルカラーで文字写真混在画像を5000枚プリントした後、黒文字画像5000枚をプリントするプリントサイクルを5回繰り返し、画像の切り替え時に各色ソリッド画像(ベタ)を印字し、その均一性を目視で評価した。
【0224】
〈評価基準〉
A:濃度ムラが一切なく均質な画像のみで優良
B:画像のごく一部に濃度ムラが検知されるものの、問題なく良好
C:濃度ムラ、転写抜け等白っぽい部分発生、あるいは画質にざらつき感があり不良
(感光体フィルミングによる画像流れ)
連続30万枚を行った後の感光体表面を目視にて観察するとともに、フィルミング(感光体上への汚れ付着)による画像流れを目視にて評価した。
【0225】
画像流れとは、1日連続してプリントを行った後、翌朝8ポイントの文字画像を全面にプリントし、文字の輪郭がぼやけたり、トナーが文字周辺に拡散したように判別される画像不良である。
【0226】
〈評価基準〉
A:30万枚プリント時点でフィルミング、画像流れ発生なし
B:30万枚プリント時点で軽微なフィルミングが認められるものの、画像流れ発生無し
C:30万枚プリント未満で感光体表面にフィルミング発生有り、画像流れも頻発する (トナーリサイクル特性)
感光体クリーニング装置から回収したトナーを現像器に戻し再使用するように改造し、黒の画像率6%、赤の画像率0.6%、緑の画像率0.6%で10万枚プリントした。
【0227】
〈評価基準〉
A:混色、トナー飛散による機内汚れ無し
B:わずかなトナー飛散は認められるが清掃の必要無し
C:混色、トナー飛散による画像汚れが画像に出る
以上により得られた評価機1による評価結果を、表2に示す。
【0228】
【表2】

【0229】
〔評価機2を用いての評価〕
上記評価機2を用いて、下記の各評価を行った。
【0230】
(画像の安定性1:線幅)
C、M、Y、Bkの4色で100μm幅のラインチャートを印字し、1万枚プリントごとに線幅を測定し、計10万枚のプリントを昼夜連続で行った。
【0231】
〈評価基準〉
A:各色の線幅が100±5μmの範囲に入っているを満たす
B:各色の線幅が100±10μmを満たすの範囲に入っている
C:いずれか1色でも100±10μmの範囲に入らないを満たさないサンプルがあった
(画像の安定性2:モード差)
フルカラーで文字写真混在画像を5000枚プリントした後、黒文字画像5000枚をプリントするプリントサイクルを5回繰り返し、画像の切り替え時に各色ソリッド画像(ベタ)を印字し、その均一性を目視で評価した。
【0232】
〈評価基準〉
A:濃度ムラが一切なく均質な画像のみで優良
B:画像のごく一部に濃度ムラが検知されるものの、問題なく良好
C:濃度ムラ、転写抜け等白っぽい部分発生、あるいは画質にざらつき感があり不良
(画像流れ)
連続100万枚プリントを行った後の感光体表面を目視にて観察するとともに、フィルミング(感光体上への汚れ付着)による画像流れを目視にて評価した。
【0233】
画像流れとは、1日連続してプリントを行った後、翌朝8ポイントの文字画像を全面にプリントし、文字の輪郭がぼやけたり、トナーが文字周辺に拡散したように判別される画像不良である。
【0234】
〈評価基準〉
A:100万枚プリント時点でフィルミング、画像流れ発生なし
B:100万枚プリント時点で軽微なフィルミングが認められるものの、画像流れ発生無し
C:100万枚プリント未満で感光体表面にフィルミング発生有り、画像流れも頻発する
(トナーリサイクル特性)
感光体クリーニング装置から回収したトナーを現像器に戻し再使用するように改造し、黒の画像率6%、赤の画像率0.6%、緑の画像率0.6%で10万枚プリントした。
【0235】
〈評価基準〉
A:混色、トナー飛散による機内汚れ無し
B:わずかなトナー飛散は認められるが清掃の必要無し
C:混色、トナー飛散による画像汚れが画像に出る
以上により得られた評価機2による評価結果を、表3に示す。
【0236】
【表3】

【0237】
表2および表3に記載の結果より明らかなように、本発明の実施例「トナー1−C〜トナー2−Bk」は、すべての評価項目で比較例「トナー3−C〜トナー4−Bk」より優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】非磁性1成分現像剤に用いる現像器の一例を示す断面構成図である。
【符号の説明】
【0239】
10Y、10M、10C、10Bk ユニット
11Y、11M、11C、11Bk 感光体ドラム
12Y、12M、12C、12Bk コロトロン帯電器
13Y、13M、13C、13Bk 露光器
14Y、14M、14C、14Bk 現像器
15Y、15M、15C、15Bk 感光体クリーナ
16 中間転写ベルト(中間転写体)
17Y、17M、17C、17Bk 転写ローラ
30 バックアップローラ
31、32、33 支持ローラ
34 ベルト用クリーニング装置
35 バイアスローラ
36 電極ローラ
P 記録シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン、アンモニウム塩を分子内に有する共重合体を、トナー粒子表面部分に含有することを特徴とする正帯電トナー。
【請求項2】
前記アミン、アンモニウム塩を分子内に有する共重合体は、アミン、アンモニウム塩で置換された(メタ)アクリルアミドを有する共重合体であることを特徴とする請求項1記載の正帯電トナー。
【請求項3】
前記アミン、アンモニウム塩で置換された(メタ)アクリルアミドを有する共重合体は、下記一般式(1)、(2)または(3)で表されるアミノアクリル(メタ)アクリルアミドをモノマー成分として有することを特徴とする請求項2記載の正帯電トナー。
【化1】

〔式中、R1、R3、R4及びR5はそれぞれ水素原子またはアルキル基を表し、R2及びR6はそれぞれ(CH2nを表し、nは1〜10の整数である。Xは、Cl、Br、IまたはHSO3を表す。〕
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の正帯電トナーと、シリコーン樹脂被覆キャリアとを含むことを特徴とする正帯電現像剤。
【請求項5】
デジタル露光してアモルファスシリコン感光体上に形成した静電像を、請求項1〜3のいずれか1項に記載の正帯電トナーを用いて現像することを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
デジタル露光して正帯電有機感光体上に形成した静電像を、請求項1〜3のいずれか1項に記載の正帯電トナーを用いて現像することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−18251(P2006−18251A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163670(P2005−163670)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】