説明

歩数計及びプログラム

【課題】ユーザが静止中か否かの状態を判定する技術を使って、歩行中のカウント漏れと静止中の誤カウントを共に防止できるようにする。
【解決手段】中央制御部1は、3軸方向振動センサ12によって検出される振動状態と歩行判定用の第1の閾値とを比較することによってユーザが静止中か否かの状態を判定する。すなわち、静止中に適した閾値と、静止中でない場合(歩行中)に適した閾値とを使い分けて静止中か否か判定する。静止中でない場合には、その振動状態と歩行判定用の第2の閾値とを比較することによって歩数を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ユーザの歩数を計測する機能を有する歩数計及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、加速度センサを用いた歩数計においては、加速度センサの検出結果からノイズ成分をフィルタ処理して除去しつつ、加速度(振動)の大きさが歩行判定用の閾値を越えたか否かを判別し、この閾値を越えた際に一歩として判定して歩数をカウントするようにしているが、従来では、この歩数のカウント精度を高めるために、振動の変化に応じて歩行判定用の閾値を連続的に変化させることによって、振動の変化に閾値を追従させるようにした技術が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−115242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した先行技術のように振動の変化に閾値を変化(追従)させる手法においては、歩行中のカウント漏れ(マイナスの誤カウント)を防ごうとして、その閾値の最小値を下げてしまうと、静止中の誤カウント(プラスの誤カウント)が発生し易くなる。すなわち、歩行中ではない静止中の受動振動(例えば、ちょっとした動作や乗り物などによる振動)と歩行中の振動との差は、極僅かであるため、歩行中のカウント漏れを防止する観点から閾値の最小値を小さく設定すると、静止中の誤カウントが起こり易くなり、逆に、歩行中の閾値を大きくすると、静止中のカウント漏れが増えてしまうという欠点があった。
【0004】
この発明の課題は、ユーザが静止中か否かの状態を判定する技術を使って、歩行中のカウント漏れと静止中の誤カウントを共に防止できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために請求項1記載の発明は、ユーザの歩数を計測する機能を有する歩数計であって、当該歩数計の振動状態を検出する振動検出手段と、この振動検出手段によって検出される振動状態に基づいてユーザの歩数を計測する歩数計測手段と、この振動検出手段によって検出される振動状態に基づいてユーザが静止中か否かの状態を判定する状態判定手段と、を備え、前記状態判定手段は、前記振動検出手段によって検出される振動状態と歩行判定用の第1の閾値とを比較することによってユーザが静止中か否かの状態を判定し、前記歩数計測手段は、前記状態判定手段によって静止中でないと判定された場合に、前記振動検出手段によって検出される振動状態と歩行判定用の第2の閾値とを比較することによって歩数を計測する、ようにしたことを特徴とする。
【0006】
請求項1に従属する発明として、前記状態判定手段は、前記第1の閾値以上の振動状態が所定の条件を満たして継続しているか否かに基づいてユーザが静止中か否かの状態を判定する、ようにしたことを特徴とする請求項2記載の発明であってもよい。
【0007】
請求項1に従属する発明として、前記振動検出手段によって検出される振動状態を積分する積分手段と、この積分手段によって得られた積分値に基づいて前記第2の閾値をユーザの歩行状態に追従するように変化させる閾値追従手段と、を更に備え、前記歩数計測手段は、前記振動検出手段によって検出される振動状態と前記閾値追従手段によって得られた第2の閾値とを比較することによって歩数を計測する、ようにしたことを特徴とする請求項3記載の発明であってもよい。
【0008】
請求項3に従属する発明として、前記第1の閾値は、前記第2の閾値の最小値よりも大きい値である、ことを特徴とする請求項4記載の発明であってもよい。
【0009】
また、上述した課題を解決するために請求項5記載の発明は、コンピュータに対して、歩数計の振動状態を検出する機能と、前記検出される振動状態と第1の閾値を比較することによってユーザが静止中か否かの状態を判定する機能と、ユーザが静止中でないと判定された場合に、前記検出される振動状態と第2の閾値とを比較することによって歩数を計測する機能と、を実現させるためのプログラムを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、ユーザが静止中か否かの状態を判定する技術を使って、静止中に適した閾値と静止中でない場合に適した閾値とを使い分け、歩数の計測の開始、停止を判定することにより、静止中でない場合の歩数を計測することができるので、ユーザの正確な歩数を計測することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1〜図3を参照して本発明の実施形態を説明する。
この実施形態は、ユーザの歩数を計測する歩数計として、歩数計測機能を備えた携帯電話機に適用した場合を例示したもので、この携帯電話機の基本的な構成要素を示したブロック図である。
この携帯電話機は、通話機能、電子メール機能、インターネット接続機能(Webアクセス機能)、音楽再生機能などのほか、歩数計測機能が備えられている。この歩数計測機能は、歩行によって携帯電話機に伝わる振動状態に基づいて当該携帯電話機を身に着けているユーザの歩数を計測するもので、その計測値(総歩数など)は、携帯電話機の表示部から出力される。
【0012】
中央制御部1は、二次電池などを備えた電源部2からの電力供給によって動作し、記憶部3内の各種のプログラムに応じて当該携帯電話機の全体動作を制御するもので、この制御部1にはCPU(中央演算処理装置)やメモリなどが設けられている。記憶部3は、プログラム領域とデータ領域とを有し、このプログラム領域には、後述する図3に示す動作手順に応じて本実施形態を実現するためのプログラムが格納されている。また、記憶部3のデータ領域には、携帯電話機が動作するために必要な各種のデータ(例えば、フラグ情報、タイマ情報、歩行判定用の閾値情報など)を一時的に記憶するワーク領域などが設けられている。
【0013】
発振部4は、所定の周波数信号を発振する水晶発信器などであり、この発振周波数信号は、制御部1の基本クロック信号や歩数計測機能を動作させる動作クロック信号などに分周されて各部に供給される。無線通信部5は、無線部、ベースバンド部、多重分離部などを備え、例えば、通話機能、電子メール機能、インターネット接続機能などの動作時に、最寄りの基地局との間でデータの送受信を行うもので、通話機能の動作時にはベースバンド部の受信側から信号を取り込んで受信ベースバンド信号に復調したのち、音声信号処理部6を介して送話スピーカSPから音声出力させる。また、無線通信部5は、受話マイクMCからの入力音声データを音声信号処理部6から取り込み、送信ベースバンド信号に符号化したのち、ベースバンド部の送信側に与えてアンテナから発信出力させる。
【0014】
表示部7は、高精細液晶あるいは有機ELなどを使用し、例えば、文字情報、待受画像、歩数計測機能で計測された計測結果(総歩数)などを表示する。操作部8は、ダイヤル入力、文字入力、コマンド入力などを入力するもので、例えば、電源スイッチ、アプリケーション起動ボタン、歩数計測開始を指示する開始ボタン、歩数計測終了を指示する終了ボタンなどを備え、中央制御部1は、操作部8からの入力操作信号に応じた処理を実行する。アプリ処理関係部9は、電子メール機能、インターネット接続機能、歩数計測機能などのアプリケーション処理に関する情報を記憶したり、その処理に関する制御を行ったりする。なお、サウンドスピーカ10は、着信報知用又は音楽再生用のスピーカであり、バイブレータ11は、着信報知用の振動モータである。
【0015】
3軸方向振動センサ12は、歩数計測機能として利用される3軸タイプの加速度センサで、サンプリング周期(例えば、30ms)毎に、ユーザの動きに応じた加速度(振動)の大きさとして、互いに直交する3軸方向(X・Y・Z方向)の加速度成分を検出するようにしているが、この3軸方向の加速度成分の中から垂直方向(上下方向)の加速度成分を携帯電話機(3軸方向振動センサ12)の向きに応じて選択して、振動波形信号VWとして出力するようにしている。この3軸方向振動センサ12の検出結果(振動状態)に基づいて中央制御部1は、歩数の計測を行うようにしているが、その際、3軸方向振動センサ12からの振動波形信号VWと歩行判定用の第1の閾値とを比較することによってユーザが静止中か否かを判定し、静止中ではない歩行中であると判定した場合には、3軸方向振動センサ12からの振動波形信号VWと歩行判定用の第2の閾値とを比較することによって歩数の計測を行うようにしている。なお、ユーザの動きに応じて3軸方向振動センサ12から出力される振動波形信号VWは、増幅後、ノイズ成分が除去されたものとなっている。
【0016】
図2は、ユーザの振動状態に応じて3軸方向振動センサ12から出力される振動波形信号VWと歩行判定用の閾値を説明するための概念図である。
図2に示す振動波形信号VWは、縦軸を加速度(振動)の大きさ、横軸を時間としたもので、“1G”は、重力加速度を示し、3軸方向振動センサ12から出力される振動波形信号VWは、重力加速度1Gを境として上方向(+方向)に向く正の振動波形(接地時の衝撃波形)と、下の方向(−)に向く負の振動波形(衝撃に対する反動波形)とが連続したものとなっている。中央制御部1は、振動波形信号VWのうち、例えば、正の振動波形を対象に、その振幅の大きさ順次積分することによって振幅の変化を振幅エンベロープとして算出すると共に、この振幅エンベロープに追従させるように一歩判定値(第2の閾値)を順次変化(更新)するようにしている。
【0017】
図中、J1は、歩行中ではない静止中での一歩判定値(第1の閾値)であり、この静止中の第1の閾値J1は、一定値(例えば、1.5G)となっている。また、図中、J2は、歩行中における一歩判定値(第2の閾値)であり、この歩行中の第2の閾値J2は、上述の振幅エンベロープに追従するように刻々変化する値となっている。ここで、図示のように、第2の閾値J2を示す曲線(実線)に続けて描いた曲線(破線)は、上述した先行技術の静止中において閾値が追従している様子を示したもので、J0は、この静止中の追従閾値(従来閾値)を示している。
【0018】
また、図中、JSは、第2の閾値J2の最小値を示したもので、この最小値JSは、重力加速度1Gにマージン(余裕:+α、例えば、α=0.25G)を考慮した限界値(下限値、例えば、1.25G)を示し、この最小値JSと第1の閾値J1との大小関係は、例えば、J1>JSとなっており、例えば、最小値JS(1.25G)に対して第1の閾値J1は、1.5Gである。なお、図示の例において第1の閾値J1と第2の閾値J2とが連続する部分は、その差(0.25G)だけジャンプした状態となっている。
【0019】
次に、この実施形態における歩数計測処理を図3に示すフローチャートを参照して説明する。ここで、このフローチャートに記述されている各機能は、読み取り可能なプログラムコードの形態で格納されており、このプログラムコードにしたがった動作が逐次実行される。また、伝送媒体を介して伝送されてきた上述のプログラムコードに従った動作を逐次実行することもできる。すなわち、記録媒体のほかに、伝送媒体を介して外部供給されたプログラム/データを利用してこの実施形態特有の動作を実行することもできる。なお、図3は、携帯電話機の全体動作のうち、本実施形態の特徴部分の動作概要を示したフローチャートであり、この図3のフローから抜けた際には、全体動作のメインフロー(図示省略)に戻る。
【0020】
図3は、歩数計測開始を指示する開始ボタンの操作に応答して実行開始される歩数計測処理を示したフローチャートである。なお、この歩数計測処理は、歩数計測終了を指示する終了ボタンが操作された際に終了する。
先ず、中央制御部1は、3軸方向振動センサ12を駆動したり、歩数表示の値を“0”にしたりするなど、歩数計測の準備のための初期化処理を実行したのち(ステップS1)、歩行中フラグを“0”にセットする(ステップS2)。この歩行中フラグは、静止中か歩行中かを示すもので、“0”は静止中を示し、“1”は歩行中を示している。ここで、歩数計測開始操作時には静止中であることを示すために歩行中フラグには“0”がセットされる。そして、記憶部3のワーク領域内の一時保存歩数に“0”をセットしてその値をクリアしたのち(ステップS3)、そのワーク領域内に静止中の第1の閾値J1として、一定値“1.5G”を設定する(ステップS4)。
【0021】
この状態において、中央制御部1は、3軸方向振動センサ12から出力される振動波形信号VWと第1の閾値J1とを比較することによって、振動波形信号VWの振動の大きさは第1の閾値J1以上となったか、つまり、一歩目を検出したか(歩行開始を検出したか)を調べ、その振動の大きさが閾値J1以上となるまで待機状態となる(ステップS5)。いま、静止中に第1の閾値J1以上の振動を検出することによって歩行開始を検出したときには(ステップS5でYES)、上述のワーク領域内の一時保存歩数に“1”を加算したのち(ステップS6)、歩行以外の動作の検出を排除するために不感帯(マスク時間)を上述のワーク領域に設定する(ステップS7)。
【0022】
この不感帯(マスク時間)は、例えば、ユーザが立ち上がったり、座ったりするなど、歩行以外の動作の検出を排除するための時間帯であり、ユーザ操作によって予め任意に設定した一定値(例えば、0.6秒など)であるが、ユーザの歩幅や歩行速度などの歩行状態を分析することによって算出した値であってもよい。このようにしてマスク時間を設定したのち、このタイマ(加算タイマ)の計測動作をスタートさせる(ステップS8)。
【0023】
この状態において、マスク時間外に閾値J1以上の振動を検出したかを調べる(ステップS9)。つまり、上述のマスク時間とタイマ計測時間とを比較した結果、このタイマをスタートさせてからのマスク時間の経過時に、第1の閾値J1以上の振動を検出したか(歩行を検出したか)を調べる。ここで、マスク時間外に閾値J1以上の振動を検出しなければ(ステップS9でNO)、最初の一歩目の検出は、立ち上がるなどの歩行以外の動作に起因したものと判断し、タイマの計測動作をストップさせてその計測時間をクリアする(ステップS10)。そして、上述のワーク領域内の一時保存歩数をクリアしたのち(ステップS11)、上述のステップS5に戻る。
【0024】
一方、マスク時間外に閾値J1以上の振動を検出した場合には(ステップS9でYES)、上述のワーク領域内の一時保存歩数に“1”を加算してその値を更新したのち(ステップS12)、タイマの計測動作をストップさせてその計測時間をクリアする(ステップS13)。そして、この一時保存歩数は、所定歩数(例えば、3歩)以上かを調べ(ステップS14)、所定歩数未満であれば、ステップS8に戻り、一時保存歩数が“3”となるまで歩数を計測する動作を継続するが、一時保存歩数が所定歩数以上であれば(ステップS14でYES)、歩行を開始したものと判定する。すなわち、第1の閾値J1以上の振動状態が所定の条件(マスク時間の経過)を満たして継続している場合(一時保存歩数が3歩となった場合)には、静止中ではなく、歩行を開始した状態であると判定する。
【0025】
このように静止中の状態から歩行を開始した状態に移行したときには、上述のワーク領域内の一時保存歩数を総歩数に加算して当該総歩数の更新を行う(ステップS15)。この総歩数は、歩数計測開始を指示する開始ボタンが操作されてから歩数計測終了を指示する終了ボタンが操作されるまでの歩行中に計測された累計値(計測結果)である。そして、総歩数表示を更新させる(ステップS16)。この場合、上述の所定歩数が3歩であれば、総歩数表示は、“0”から“3”に更新される。そして、上述の歩行中フラグを“1”にセットしたのち(ステップ17)、第2の閾値J2の最小値JSとして、一定値“1.25G”を設定する(ステップS18)。
【0026】
この状態において、歩行以外の動作の検出を排除するために不感帯(マスク時間)を上述のワーク領域に設定する(ステップS19)。なお、この歩行中のマスク時間は、ユーザの歩行状態などを加味することによって、上述した静止中のマスク時間とは異なる時間としてもよい。そして、タイマ(加算タイマ)の計測動作をスタートさせたのち(ステップS20)、歩行中での振幅エンベロープ算出用として、今回検出した振動の大きさを上述のワーク領域内に記録しておく(ステップS21)。
【0027】
ここで、中央制御部1は、マスク時間外に閾値J2以上の振動を検出したかを調べる(ステップS22)。この場合、上述した歩行中のマスク時間とタイマ計測時間とを比較した結果、このタイマをスタートさせてからのマスク時間の経過時に、第2の閾値J2以上の振動を検出したか(歩行を検出したか)を調べる。いま、マスク時間外に閾値J2以上の振動を検出しなければ(ステップS22でNO)、歩行を停止した場合であると判断して上述のステップS2に戻るが、閾値J2以上の振動を検出した場合には(ステップS22でYES)、一歩と判定して上述のワーク領域内の総歩数に“1”を加算その値を更新したのち(ステップS24)、その総歩数表示を更新する(ステップS25)。
【0028】
次に、上述のワーク領域内に記録されている振動の大きさを読み出し、過去の一定期間の振動の大きさを順次積分することによってその振幅の変化を振幅エンベロして計算すると共に(ステップS26)、この振幅エンベロープに基づいてそれに追従する歩行中の閾値を算出する(ステップS27)。そして、この算出閾値とその最小値JSとを比較することによって、算出閾値は最小値JS以上かを調べ(ステップS28)、算出閾値が最小値JS未満であれば(ステップS28でNO)、第2の閾値J2の限界値を最小値JSとするために上述のステップS18に戻るが、算出閾値が最小値JS以上であれば(ステップS28でNO)、振動変化に閾値を追従させるために、歩行中の第2の閾値J2を算出閾値に更新したのち(ステップS29)、上述のステップS20に戻る。以下、上述の動作を繰り返すことによって第2の閾値J2は、振動変化に追従しながら更新されるが、その下限は最小値JSを下回ることはない。
【0029】
以上のように、この実施形態において中央制御部1は、3軸方向振動センサ12によって検出される振動状態と歩行判定用の第1の閾値とを比較することによってユーザが静止中か否かの状態を判定し、静止中でない場合に、その振動状態と歩行判定用の第2の閾値とを比較することによって歩数を計測するようにしたので、静止中に適した閾値と、静止中でない場合(歩行中)に適した閾値とを使い分けて、歩数の計測の開始、停止を判定することができ、静止中でない場合(歩行中)の歩数を計測することが可能となり、歩数計を身に付けているユーザの正確な歩数を計測することができる。
【0030】
また、第1の閾値以上の振動状態が所定の条件(マスク時間)を満たして継続しているか(一時歩数が3歩となったか)否かに基づいてユーザが静止中か否かの状態を判定するようにしたので、ユーザが静止中か否か(歩行を開始したか否か)の状態を、正確に判定することが可能となる。
【0031】
また、過去の一定期間の振動の大きさを順次積分することによってその振幅の変化を振幅エンベロープとして計算すると共に、この振幅エンベロープに基づいてそれに追従する歩行中の閾値J2を算出し、閾値J2に基づいて歩数を計測するようにしたので、静止中でない場合(歩行中)の場合に、より正確な歩数を計測することが可能となる。
【0032】
第1の閾値J1は、第2の閾値J2の最小値JSよりも大きくなるように設定するようにしたので、 静止中でない場合(歩行中)に、実際に歩いているのに歩数としてカウントされないカウント漏れを防止しつつ、静止中の場合に、実際は歩いていないのに歩数としてカウントされてしまう誤カウントを防止することが可能となる。
【0033】
なお、上述した実施形態においては、第1の閾値J1を“1.5G”とし、第2の閾値J2の最小値JSを“1.25G”とした場合を示したが、第1の閾値J1と最小値JSとの大小関係がJ1>JSを成立する限り、その値は一定の範囲内(例えば、1G以内)において任意である。また、上述した実施形態においては、不感帯(マスク時間)として0.6秒を例示したが、この時間も一定の範囲内(例えば、2秒以内)において任意である。
【0034】
また、上述した実施形態においては、3軸方向振動センサ12によって検出された3軸方向の加速度成分のうち、垂直方向(上下方向)の加速度成分を選択して振動波形信号VWとして出力すると共に、この振動波形信号VWと歩行判定用の閾値とを比較して歩数を計測するようにしたが、例えば、3軸方向の加速度成分をそれぞれ二乗してそれらの和を求め、この二乗和の変化と歩行判定用の閾値とを比較し、二乗和が閾値を越えた際に一歩と計測するようにしてもよく、また、この二乗和の平方根の値と歩行判定用の閾値とを比較し、この平方根の値が閾値を越えた際に一歩と計測するようにしてもよい。これによって、3軸方向の加速度成分の中から垂直方向の加速度成分を携帯電話機(3軸方向振動センサ)の向きに応じて選択する必要がなくなり、歩数をより確実に計測することが可能となる。
【0035】
また、上述した実施形態においては、振動センサとして3軸タイプの加速度センサを例示したが、2軸、1軸の加速度センサであってもよく、また、加速度の検出に限らずに、おもりの変位を検出するようにしてもよい。
【0036】
また、上述した実施形態においては、一時保存歩数が所定歩数(例えば、3歩)に達して歩行を開始したと判定した際に総歩数表示を行うようにしたので、総歩数表示は、0”から“3”に更新されるが、一時保存歩数を更新する毎にその値を表示させるようにしてもよい。この場合、一時保存歩数が“0”、“1”、“0”
…、又は“0”、“1”、“2”、“0”、…のように変化したときには、それに応じて歩数表示は、“0”、“1”、“0”
…、又は““0”、“1”“2”、“0”、…のように更新される。
【0037】
また、総歩数は表示に限らず、音声で出力するようにしてもよい。また、総歩数に応じて消費カロリーなどを算出して出力するようにしてもよい。
その他、歩数計測機能付きの携帯電話機に限らず、例えば、歩数計測機能付きのPDA(個人用の携帯情報端末)・デジタルカメラ・音楽プレイヤーでよく、勿論、歩数計(専用機)自体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】歩数計として歩数計測機能を備えた携帯電話機の基本的な構成要素を示したブロック図。
【図2】ユーザの振動状態に応じて3軸方向振動センサ12から出力される振動波形信号VWと歩行判定用の閾値を説明するための概念図。
【図3】歩数計測開始を指示する操作に応答して実行開始される歩数計測処理を示したフローチャート。
【符号の説明】
【0039】
1 中央制御部
3 記憶部
4 発振部
7 表示部
8 操作部
12 3軸方向振動センサ
VW 振動波形信号
J1 静止中の第1の閾値
J2 歩行中の第2の閾値
JS 第2の閾値の最小値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの歩数を計測する機能を有する歩数計であって、
当該歩数計の振動状態を検出する振動検出手段と、
この振動検出手段によって検出される振動状態に基づいてユーザの歩数を計測する歩数計測手段と、
この振動検出手段によって検出される振動状態に基づいてユーザが静止中か否かの状態を判定する状態判定手段と、
を備え、
前記状態判定手段は、前記振動検出手段によって検出される振動状態と歩行判定用の第1の閾値とを比較することによってユーザが静止中か否かの状態を判定し、
前記歩数計測手段は、前記状態判定手段によって静止中でないと判定された場合に、前記振動検出手段によって検出される振動状態と歩行判定用の第2の閾値とを比較することによって歩数を計測する、
ようにしたことを特徴とする歩数計。
【請求項2】
前記状態判定手段は、前記第1の閾値以上の振動状態が所定の条件を満たして継続しているか否かに基づいてユーザが静止中か否かの状態を判定する、
ようにしたことを特徴とする請求項1記載の歩数計。
【請求項3】
前記振動検出手段によって検出される振動状態を積分する積分手段と、
この積分手段によって得られた積分値に基づいて前記第2の閾値をユーザの歩行状態に追従するように変化させる閾値追従手段と、
を更に備え、
前記歩数計測手段は、前記振動検出手段によって検出される振動状態と前記閾値追従手段によって得られた第2の閾値とを比較することによって歩数を計測する、
ようにしたことを特徴とする請求項1記載の歩数計。
【請求項4】
前記第1の閾値は、前記第2の閾値の最小値よりも大きい値である、
ことを特徴とする請求項3記載の歩数計。
【請求項5】
コンピュータに対して、
歩数計の振動状態を検出する機能と、
前記検出される振動状態と歩行判定用の第1の閾値とを比較することによってユーザが静止中か否かの状態を判定する機能と、
ユーザが静止中でないと判定された場合に、前記検出される振動状態と歩行判定用の第2の閾値とを比較することによって歩数を計測する機能と、
を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−113647(P2010−113647A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287652(P2008−287652)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)