説明

歩数計

【課題】 歩行時と走行時に歩数を測定する場合、測定モードの選択操作が不要で、高精度な歩数測定を可能にすること。
【解決手段】 歩行センサ101によって検出された検出信号は電荷−電圧変換手段102を介して第1増幅手段103によって増幅され出力される。第1及び第2増幅手段103、106の中の第1増幅手段103のみを経由した検出信号2BがCPU108の入力2に入力されている場合には、CPU108は走行中と判断して、マスク時間等を走行用に設定して、検出信号2Bに基づいて歩数算出処理を行う。第1増幅手段103のみを経由した検出信号2BはCPU108の入力2には入力されず、第1増幅手段103及び第2増幅手段106の双方を経由した検出信号1BがCPU108の入力1に入力されている場合には、CPU108は歩行中と判断して、マスク時間等を歩行用に設定して、検出信号1Bに基づいて歩数算出処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の歩行を検出して歩数測定を行う歩数計に関し、特に、歩行時と走行時の歩数測定機能を有する歩数計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歩行時と走行時の歩数を測定することが可能な歩数計が開発されている。
例えば、特許文献1に記載された歩数計では、外部入力手段により測定する移動動作(歩行又は走行)の種類を選択することによって、対応する移動動作における歩数を測定可能な測定モード(歩行時の歩数を測定する歩行測定モード又は走行時の歩数を測定する走行測定モード)に設定し、設定した測定モードに応じて、フィルタのフィルタ特性や増幅器の増幅率を切り換えていた。
【0003】
しかしながら、歩数測定の都度、移動動作の種類を選択して測定モードを設定しなければならないため、歩行から走行に連続して移動動作を変更する場合等のように、連続して異なる移動動作を行う場合、歩数測定途中で、測定する移動動作の種類を変更するための操作ボタンの操作を強いられることになる。
また、移動動作の定義が曖昧なとき、どちらの測定モードに設定してよいのか迷ってしまい、使い勝手が悪いという問題がある。また、測定モードの設定を誤った場合には、正確な歩数測定ができないという問題がある。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2518217号公報(第2頁左欄第50行目〜第4頁右欄第43行目、第3図〜第6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、歩行時と走行時に歩数を測定する場合、測定モードの選択操作が不要で、高精度な歩数測定を可能にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、被測定者の移動動作を検出して対応する検出信号を出力するセンサと、前記センサからの検出信号を増幅して出力する第1増幅手段と、前記第1増幅手段からの信号中の検出信号を通過させるフィルタ手段と、前記フィルタ手段からの検出信号を増幅して出力する第2増幅手段と、前記第1増幅手段、第2増幅手段を経由する検出信号の中の、前記第1増幅手段のみを経由した検出信号と前記第1増幅手段及び第2増幅手段を経由した検出信号とに基づいて歩数を算出する歩数算出手段とを備え、前記歩数算出手段は、前記第1増幅手段のみを経由した検出信号が得られる場合には前記第1増幅手段のみを経由した検出信号に基づいて歩数を算出し、前記第1増幅手段のみを経由した検出信号が得られず前記第2増幅手段を経由した検出信号が得られる場合には前記第2増幅手段を経由した検出信号に基づいて歩数を算出することを特徴とする歩数計が提供される。
【0007】
歩数算出手段は、第1増幅手段のみを経由した検出信号が得られる場合には前記第1増幅手段のみを経由した検出信号に基づいて歩数を算出し、前記第1増幅手段のみを経由した検出信号が得られず第2増幅手段を経由した検出信号が得られる場合には前記第2増幅手段を経由した検出信号に基づいて歩数を算出する。
【0008】
ここで、前記第1増幅手段からの検出信号を二値化する第1二値化手段と、前記第2増幅手段からの検出信号を二値化する第2二値化手段とを備え、前記歩数算出手段は、前記第1二値化手段から検出信号が得られる場合には前記第1二値化手段からの検出信号に基づいて歩数を算出し、前記第1二値化手段から検出信号が得られず前記第2二値化手段から検出信号が得られる場合には前記第2二値化手段からの検出信号に基づいて歩数を算出するように構成してもよい。
【0009】
また、前記フィルタ手段は、その周波数特性が所定周波数以上の信号を遮断するように設定されて成り、歩行時の検出信号は通過させると共に走行時の検出信号は遮断するように構成してもよい。
また、前記歩数算出手段は、前記第1増幅手段と第2増幅手段のいずれからの検出信号に基づいて歩数算出を行うかに応じて、歩数算出用アルゴリズムを変更して歩数を算出するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、歩行時と走行時に歩数を測定する場合、測定モードの選択操作が不要になり、適切な測定モードで高精度な歩数測定が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る歩数計のブロック図である。
図1において、歩数計は、被測定者の移動動作を検出する毎に対応する電荷の検出信号を出力する歩行センサ(本実施の形態では加速度センサ)101、歩行センサ101からの検出信号を対応する電圧の検出信号に変換して出力する電荷−電圧変換手段102、電荷−電圧変換手段102からの検出信号を増幅して出力する第1増幅手段103、第1増幅手段103からのアナログ信号形式の検出信号をデジタル信号形式の検出信号に変換して出力する第1二値化手段104を備えている。
【0012】
また、歩数計は、第1増幅手段103からの信号の所定周波数以上の信号を遮断するフィルタ手段105、フィルタ手段105からの検出信号を増幅して出力する第2増幅手段106、第2増幅手段106からのアナログ信号形式の検出信号をデジタル信号形式の検出信号に変換して出力する第2二値化手段107、第1及び第2二値化手段104、107からの検出信号に基づいて歩数の算出処理等を行う中央処理装置(CPU)108、操作スイッチ等によって構成され歩数測定開始操作等の各種操作を行う入力手段109、測定した歩数やピッチ等を表示する表示手段110、警報等を音で行う報音手段111、CPU112用の規準クロック信号や計時動作を行う際の時間信号の元になる信号を発生する発振手段112、CPU108が実行するプログラムや測定した歩数等のデータを記憶する記憶手段113を備えている。
【0013】
CPU108は、検出信号を受信するための2つの入力端子(入力1、入力2)を有しており、入力1、2に入力された検出信号に基づいて歩数算出処理を行う。
フィルタ手段105は、その周波数特性が所定周波数以上の信号を遮断するように設定され、歩行時の検出信号は通過させると共に走行時の検出信号は遮断するように構成されている。
【0014】
例えば、歩行時のピッチは90〜120歩/分、走行時のピッチは170〜190歩/分であり、この場合、フィルタ手段105は、ピッチが90〜120歩/分の検出信号は通過させるが、ピッチが170歩/分以上の検出信号は遮断するように構成されている。フィルタ手段105は、バンドパスフィルタ、あるいはローパスフィルタ及びハイパスフィルタの組み合わせによって構成される。
【0015】
第1及び第2二値化手段104、107はコンパレータによって構成され、信号レベルが所定の基準値以上の信号を検出信号として出力するように構成されている。
尚、電荷−電圧変換手段102、第1及び第2増幅手段103、106、第1及び第2二値化手段104、107及びフィルタ手段105は検出回路114を構成している。また、CPU108は、歩数算出手段及び各構成要素の制御を行う制御手段を構成している。
【0016】
図2は、図1の歩数計の処理を示すフローチャートであり、主としてCPU108が記憶手段113に記憶したプログラムを実行することによって行う処理を示している。
図3は本実施の形態に係る歩数計のタイミング図で、同図(a)は歩行時のタイミング図、同図(b)は走行時のタイミング図である。図3(a)に示すように、歩行中は、歩行センサ101から出力される検出信号は小さいため、第1増幅手段103から出力される検出信号2Aは低いレベルであり、検出信号2Aを所定基準値によって第1二値化手段104が二値化した場合、第1二値化手段104からはデジタル信号形式の検出信号が出力されない。
【0017】
その一方、歩行時の検出信号は周波数が低く所定周波数以下となるため、第1増幅手段103からの検出信号2Aはフィルタ手段105を通過し、第2増幅手段106によって増幅されて、所定レベル以上の検出信号1Aとして第2二値化手段107に入力される。第2二値化手段107は、アナログ信号形式の検出信号1Aをデジタル信号形式の検出信号1BとしてCPU108に出力する。このときCPU108に入力される検出信号1Bは、歩行に対応する検出信号である。
【0018】
図3(b)に示すように、走行中の場合は、歩行センサ101から出力される検出信号は大きいため、第1増幅手段103から出力される検出信号2Aは高いレベルである。第1二値化手段104が検出信号2Aを所定基準値によって二値化した場合、第1二値化手段104からはデジタル信号形式の検出信号2BがCPU108に出力される。このときCPU108に入力される検出信号2Bは、走行に対応する検出信号である。
【0019】
その一方、走行時の検出信号は周波数が高く所定周波数以上(フィルタ手段105によって遮断される周波数)となるため、第1増幅手段103からの検出信号2Aはフィルタ手段105によって遮断される。したがって、第2増幅手段106からは検出信号が出力されず、第2二値化手段107からも検出信号は出力されないことになる。
以下、図1〜図3を参照して、本実施の形態に係る歩数計の動作を詳細に説明する。
【0020】
歩数を測定する場合、被測定者は歩数計を自己の腕等に装着し、入力手段109によって開始操作を行って、歩数の測定を開始する。
CPU108は、入力手段109の開始操作に応答して、検出回路114に電源供給して測定開始する(ステップS201)。この状態で、被測定者は運動を開始して、移動動作を行う(ステップS202)。
【0021】
CPU108は、第1増幅手段103のみを経由して第1二値化手段104から入力2に検出信号2Bが入力されたか否かを判断し(ステップS203)、入力2に検出信号2Bが入力されていないと判断した場合には、第1及び第2増幅手段103、106を経由して第2二値化手段107から入力1に検出信号1Bが入力されたか否かを判断する(ステップS204)。
CPU108は、処理ステップS204において、入力1に検出信号1Bが入力されたと判断した場合には、所定時間経過したか否かを判断し(ステップS205)、所定時間経過したと判断した場合(即ち、検出信号が所定時間継続して発生し検出された場合)、被測定者が歩行中と判断する(ステップS206)。
【0022】
前述したように、歩行中は、図3(a)に示すように、第1二値化手段104からは検出信号2Bが出力されないが、第2二値化手段107からは検出信号1Bが出力されることになる。
CPU108は、処理ステップS206において歩行中と判断すると、隣り合う検出信号1B間の所定時間は検出動作を行わないようにマスクする時間(マスク時間)の設定処理等の歩数算出用アルゴリズムを歩行用のアルゴリズムに設定する(ステップS207)。
【0023】
CPU108は、第2二値化手段107から入力1に入力された検出信号1Bに基づいて歩数を算出し、算出した歩数を記憶手段113に記憶すると共に表示手段110に歩数を表示する(ステップS208)。
次に、CPU108は、入力手段109からの終了命令があるか否かを判断し(ステップS209)、終了命令がある場合には検出回路114の電源供給を停止して(ステップS210)、歩数測定処理を終了する。
【0024】
CPU108は、処理ステップS209において、終了命令が入力されていないと判断した場合には、処理ステップS203に戻って前記処理を繰り返す。
また、CPU108は、処理ステップS205において、所定時間経過していないと判断した場合には、前記同様に処理ステップS203に戻って前記処理を繰り返す。
【0025】
また、CPU108は、処理ステップS204において、入力1に検出信号1Bが入力されていないと判断した場合、所定のタイムアウト時間が経過したか否かを判断し(ステップS211)、前記タイムアウト時間が経過している場合には検出回路114の電源供給を停止して(ステップS212)、歩数測定処理を終了し、前記タイムアウト時間を経過していなければ、処理ステップS203に戻って前記処理を繰り返す。
【0026】
一方、CPU108は、処理ステップS203において、入力2に検出信号2Bが入力されたと判断した場合には、所定時間経過したか否かを判断する(ステップS213)。
CPU108は、処理ステップS213において、所定時間経過したと判断した場合、走行中と判断する(ステップS214)。
前述したように、走行中は、図3(b)に示すように、第2二値化手段107からは検出信号1Bが出力されないが、第1二値化手段104からは検出信号2Bが出力されることになる。
【0027】
CPU108は、処理ステップS214において走行中と判断すると、隣り合う検出信号2B間の所定時間は検出動作を行わないようにマスクする時間(マスク時間)の設定処理等の歩数算出用アルゴリズムを走行用のアルゴリズムに設定する(ステップS215)。
CPU108は、第1二値化手段104から入力2に入力された検出信号2Bに基づいて歩数を算出し、算出した歩数を記憶手段113に記憶すると共に表示手段110に歩数を表示した後(ステップS216)、処理ステップS209に移行する。
CPU108は、処理ステップS213において、所定時間経過していないと判断した場合には処理ステップS203に戻って前記処理を繰り返す。
【0028】
以上述べたように、本実施の形態に係る歩数計は、歩行時の検出信号の周波数は走行時の検出信号の周波数よりも低周波数であり又、歩行時の検出信号の信号レベルは走行時の検出信号の信号レベルよりも低いレベルであることに着目して成されたものである。
即ち、本実施の形態に係る歩数計は、第1増幅手段103のみを経由した検出信号2BがCPU108の入力2に入力されている場合には、CPU108は走行中と判断して、マスク時間等の測定に必要な特性や処理(歩数算出用アルゴリズム)を走行用に設定して、歩数算出処理を行う。
【0029】
その一方、第1増幅手段103のみを経由した検出信号2BはCPU108の入力2には入力されず、第1増幅手段103及び第2増幅手段106の双方を経由した検出信号1BがCPU108の入力1に入力されている場合には、CPU108は歩行中と判断して、マスク時間等の測定に必要な特性や処理(歩数算出用アルゴリズム)を歩行用に設定して、歩数算出処理を行うように構成している。
【0030】
したがって、歩行時と走行時に歩数を測定する場合、測定モードを手動によって選択操作する必要がなく、自動的に適切な測定モードに設定されるため、高精度な歩数測定が可能になる。また、手動によるモード設定が不要になるため、簡単に使用することが可能になるという効果を奏する。
尚、前記実施の形態では、被測定者の腕に装着して使用する腕時計型の歩数計の例で説明したが、腰に装着して使用する方式の歩数計、バッグ等に収納して保持した状態で使用する方式の歩数計、時計機能を内蔵する歩数計等、各種の歩数計に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
腕に装着して使用する方式の歩数計、腰に装着して使用する方式の歩数計、バッグ等に収納して保持した状態で使用する方式の歩数計、時計機能を内蔵する歩数計等、各種の歩数計に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る歩数計のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る歩数計の処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る歩数計のタイミング図である。
【符号の説明】
【0033】
101・・・歩行センサ
102・・・電荷−電圧変換手段
103・・・第1増幅手段
104・・・第1二値化手段
105・・・フィルタ手段
106・・・第2増幅手段
107・・・第2二値化手段
108・・・歩数算出手段及び制御手段を構成するCPU
109・・・入力手段
110・・・表示手段
111・・・報音手段
112・・・発振手段
113・・・記憶手段
114・・・検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の移動動作を検出して対応する検出信号を出力するセンサと、前記センサからの検出信号を増幅して出力する第1増幅手段と、前記第1増幅手段からの信号中の検出信号を通過させるフィルタ手段と、前記フィルタ手段からの検出信号を増幅して出力する第2増幅手段と、前記第1増幅手段、第2増幅手段を経由する検出信号の中の、前記第1増幅手段のみを経由した検出信号と前記第1増幅手段及び第2増幅手段を経由した検出信号とに基づいて歩数を算出する歩数算出手段とを備え、
前記歩数算出手段は、前記第1増幅手段のみを経由した検出信号が得られる場合には前記第1増幅手段のみを経由した検出信号に基づいて歩数を算出し、前記第1増幅手段のみを経由した検出信号が得られず前記第2増幅手段を経由した検出信号が得られる場合には前記第2増幅手段を経由した検出信号に基づいて歩数を算出することを特徴とする歩数計。
【請求項2】
前記第1増幅手段からの検出信号を二値化する第1二値化手段と、前記第2増幅手段からの検出信号を二値化する第2二値化手段とを備え、
前記歩数算出手段は、前記第1二値化手段から検出信号が得られる場合には前記第1二値化手段からの検出信号に基づいて歩数を算出し、前記第1二値化手段から検出信号が得られず前記第2二値化手段から検出信号が得られる場合には前記第2二値化手段からの検出信号に基づいて歩数を算出することを特徴とする請求項1記載の歩数計。
【請求項3】
前記フィルタ手段は、その周波数特性が所定周波数以上の信号を遮断するように設定されて成り、歩行時の検出信号は通過させると共に走行時の検出信号は遮断することを特徴とする請求項1又は2記載の歩数計。
【請求項4】
前記歩数算出手段は、前記第1増幅手段と第2増幅手段のいずれからの検出信号に基づいて歩数算出を行うかに応じて、歩数算出用アルゴリズムを変更して歩数を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の歩数計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−77368(P2008−77368A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255444(P2006−255444)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】