説明

歩行を補助する運動補助着

【課題】歩行時に大腿を上げる動作を補助することのできる歩行を補助する運動補助着を提供する。
【解決手段】運動補助着1には、ズボン形状のボトム10と、右大腿を上げる動作が行なわれるときに同動作を補助する右側の補助部40と、左大腿を上げる動作が行なわれるときに同動作を補助する左側の補助部40とが設けられている。各補助部40には、内向部分50、外向部分60、背面部分70、および交差部分41が設けられている。また各補助部40は、内向始点部分50Xから外向始点部分60Xまでにわたり、かつこれら部分の間において、内向第1部分50A、内向第2部分50B、内向第3部分50C、背面中間部分70A、外向第3部分60C、外向第2部分60B、および外向第1部分60Aを順に通過する1本のベルト形状の部材として構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行を補助する運動補助着に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、緊締力の強い生地を股関節の回りに配置することにより、股関節の動きに関連する筋肉に負荷を与えるボトムが記載されている。使用者は、この負荷に抗して脚を動かすことにより、股関節の動きに関連する筋肉を鍛錬することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−212814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、足腰の筋肉(例えば、大腰筋および大腿四頭筋)は加齢により次第に衰える。そして、足腰の筋肉が衰えたときには、歩行時に大腿を上げることが難しくなる。この場合、歩行すること自体が負担となり、これにより歩行の頻度が低下して足腰の筋肉がさらに衰えるおそれがある。
【0005】
一方、特許文献1のボトムのように、股関節の動きに関連する筋肉を鍛えるボトムは、足腰の筋肉が衰えていない使用者の使用には適しているものの、足腰の筋肉が衰えた使用者の歩行を補助するものとはならない。すなわち、ボトムから脚に付与される負荷により大腿を上げる動作が妨げられるため、足腰の筋力が衰えた使用者においては上記ボトムを着用することにより歩行が一層困難になると考えられる。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、大腿を上げる動作を補助することのできる歩行を補助する運動補助着を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段を以下に記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、歩行を補助する運動補助着において、大腿の動作を補助する補助部が設けられていること、この補助部に内向部分、外向部分、および背面部分が設けられていること、前記内向部分が部分Aから部分Bを介して部分Cまでにわたり設けられていること、前記外向部分が部分Dから部分Eを介して部分Fまでにわたり設けられていること、前記背面部分が部分Cから部分Gを介して部分Fまでにわたり設けられていること、前記部分A〜前記部分Gがそれぞれ以下の(a)〜(g)により規定されること、
(a)前記部分Aは、大腿正面の付け根よりも上方に対応する部分
(b)前記部分Bは、大腿正面の付け根に対応する部分
(c)前記部分Cは、大腿正面の内側の部分に対応する部分
(d)前記部分Dは、大腿正面の付け根よりも上方に対応しかつ前記部分Aとは別の部分
(e)前記部分Eは、大腿正面の付け根に対応する部分
(f)前記部分Fは、大腿正面の外側の部分に対応する部分
(g)前記部分Gは、大腿背面に対応する部分
ならびに、前記内向部分と前記外向部分とが互いに交差する部分を交差部分として、ならびに、前記内向部分と前記外向部分とが互いに交差する部分を交差部分として、正面においてウエストから大腿下部までの少なくとも一部分に対応してこの交差部分が設けられていることこの交差部分が設けられていることを要旨としている。
【0008】
上記発明によれば、大腿を上げる動作が行なわれるとき、大腿を上げる方向の動作が補助部により補助されるため、大腰筋および大腿四頭筋の負荷が軽減される。このため、大腿を上げる動作を容易に行なうことができる。なお、交差部分の構成には、複数枚の生地が互いに重ね合わせられた構成、および1枚の生地が内向部分および外向部分に共通して用いられる構成が含まれる。
【0009】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の歩行を補助する運動補助着において、大腿正面の付け根または大腿正面の付け根付近に対応する部分に前記交差部分が設けられていることを要旨としている。
【0010】
上記発明によれば、交差部分が付け根から遠い部分に設けられる構成と比較して、大腿の背面に設けられる部分Gを上方かつ前方に引き上げる力が大きくなるため、大腿を上げる方向の動作を補助する力が大きくなる。
【0011】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の歩行を補助する運動補助着において、ボトムとして構成されていること、前記補助部が前記ボトムの基礎部に取り付けられていること、ならびに、前記補助部の緊締力が前記基礎部の緊締力よりも大きいことを要旨としている。
【0012】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の歩行を補助する運動補助着において、前記補助部のうちの前記基礎部から独立している部分を独立部分として、前記交差部分にこの独立部分が形成されていることを要旨としている。
【0013】
大腿正面の付け根に対応する部分に交差部分が設けられる運動補助着においては、脚が前方かつ上方に向けて動かされるとき、大腿正面の付け根に交差部分が押し付けられるため、股関節の屈曲運動が阻害される。上記発明によれば、脚が前方かつ上方に向けて動かされるとき、交差部分が大腿正面の付け根から離れるため、交差部分により股関節の屈曲運動が阻害されることが抑制される。
【0014】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の歩行を補助する運動補助着において、前記補助部のうちの前記基礎部から独立している部分を独立部分として、前記内向部分の少なくとも一部にこの独立部分が形成されていることを要旨としている。
【0015】
上記発明によれば、内向部分に生じる張力が基礎部に分散することが抑制されるため、内向部分に独立部分が形成されていない構成と比較して、大腿を上げる方向の動作を補助する力が大きくなる。
【0016】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項3〜5のいずれか一項に記載の歩行を補助する運動補助着において、前記補助部のうちの前記基礎部から独立している部分を独立部分として、前記外向部分の少なくとも一部にこの独立部分が形成されていることを要旨としている。
【0017】
上記発明によれば、外向部分に生じる張力が基礎部に分散することが抑制されるため、外向部分に独立部分が形成されていない構成と比較して、大腿を上げる方向の動作を補助する力が大きくなる。
【0018】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項3〜6のいずれか一項に記載の歩行を補助する運動補助着において前記背面部分が前記基礎部に接続されていることを要旨としている。
上記発明によれば、背面部分が基礎部から独立している構成とは異なり、背面部分が基礎部からずれることに起因して、大腿を上げる方向の動作を補助する力が小さくなることが抑制される。
【0019】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項3〜7のいずれか一項に記載の歩行を補助する運動補助着において、前記基礎部において下半身の表面に沿う前記部分Aから前記部分Cまでの長さを第1基準長さとし、前記基礎部において下半身の表面に沿う前記部分Dから前記部分Fまでの長さを第2基準長さとして、前記内向部分の長さが前記第1基準長さよりも小さいこと、ならびに、前記外向部分の長さが前記第2基準長さよりも小さいことを要旨としている。
【0020】
上記発明によれば、内向部分の長さが第1基準長さよりも小さく、かつ外向部分の長さが第2基準長さよりも小さいため、着用者が運動補助着を着用したとき、内向部分および外向部分が基礎部よりも伸長する。このため、内向部分および外向部分に生じる張力がより大きくなる。
【0021】
(9)請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の歩行を補助する運動補助着において、前記部分Gが膝の上部付近の部分に対応していることを要旨としている。
【0022】
上記発明によれば、大腿を上げる動作が行なわれるとき、膝の上部付近が部分Gにより引き上げられるため、部分Gが膝の上部付近よりもさらの上方の部分に対応している構成と比較して、大腿を上げることを補助する効果が高くなる。
【0023】
(10)請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の歩行を補助する運動補助着において、右半身または左半身において幅方向の中間に対応する部分に前記交差部分が設けられていることを要旨としている。
【0024】
上記発明によれば、大腿に対して上方かつ外側に向けて作用する内向部分の張力と、大腿に対して上方かつ内側に向けて作用する外向部分の張力との間に大きな差が生じることが抑制されるため、歩行時に大腿が内側または外側に振れにくくなる。
【0025】
(11)請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の運動補助着において、前記交差部分において前記内向部分と前記外向部分とが互いに接続されていることを要旨としている。
【0026】
上記発明によれば、交差部分において内向部分と外向部分とが互いに接続されていることにより、内向部分と外向部分との相対的な位置が大きくずれることが抑制されるため、大腿を上げる方向の動作を補助する効果が安定して得られる。
【0027】
(12)請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の歩行を補助する運動補助着において、前記内向部分に生じる張力と前記外向部分に生じる張力との差が所定範囲内に収められるように前記内向部分および前記外向部分が構成されていることを要旨としている。
【0028】
上記発明によれば、着用者が運動補助着を着用したときに内向部分から大腿に付与される力と外向部分から大腿に付与される力との差が過度に大きくなることが抑制されるため、歩行時に大腿が内側または外側に振れにくくなる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、大腿を上げる動作を補助することのできる歩行を補助する運動補助着を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態の歩行を補助する運動補助着について、その正面構造を示す正面図。
【図2】同実施形態の運動補助着について、その背面構造を示す背面図。
【図3】同実施形態の運動補助着について、その分解斜視構造を示す分解斜視図。
【図4】同実施形態の運動補助着について、腹当部の表側の生地が省略された状態の正面構造を示す正面図。
【図5】同実施形態の運動補助着について、その機能を模式的に示す作用図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本実施形態では、人体に密着する運動補助着として本発明の「歩行を補助する運動補助着」を具体化した一例を示している。なお、図1、図2、および図4においては、生地の裏側に設けられた別の生地を破線で示している。また、図1、図2、図4、および図5においては、ユーザに着用された状態の運動補助着1を示している。
【0032】
ここで、身体の部位について以下のように用語を定義する。
・「前方」は、身体の背面から正面に向かう方向を示す。
・「後方」は、身体の正面から背面に向かう方向を示す。
・「上方」は、足から頭に向かう方向を示す。
・「下方」は、頭から足に向かう方向を示す。
・「左方」は、使用者からみて右半身から左半身に向かう方向を示す。
・「右方」は、使用者からみて左半身から右半身に向かう方向を示す。
・「奥行き方向」は、前方および後方に沿う方向を示す。
・「高さ方向」は、上方および下方に沿う方向を示す。
・「幅方向」は、右方および左方に沿う方向を示す。
・「内側」は、幅方向においての身体の中心側を示す。
・「外側」は、幅方向においての身体の中心側とは反対側を示す。
・「下腹部」は、腹部のうちのウエストよりも下方の部分を示す。
・「臀部」は、体幹の背面においての骨盤およびその付近の部分を示す。
・「膝」は、下肢においての膝関節およびその付近の部分を示す。
・「大腿」は、下肢においての膝関節よりも上方の部分を示す。
・「下腿」は、下肢においての膝関節よりも下方の部分を示す。
・「内股」は、大腿の内側の側面の部分を示す。
・「外股」は、大腿の外側の側面の部分を示す。
【0033】
図1〜図3を参照して、運動補助着1の構成について説明する。なお、後述する図3に基づく生地の種類の説明までの部分において、参照する図面を明記していない文章は、図1に示される構成についての説明を記述しているものとする。
【0034】
運動補助着1には、ズボン形状のボトム10と、右大腿を上げる動作が行なわれるときに同動作を補助する右側の補助部40と、左大腿を上げる動作が行なわれるときに同動作を補助する左側の補助部40とが設けられている。各補助部40は、図1に示されるボトム10の正面側に対応する部分、および図2に示されるボトム10の背面側に対応する部分を含めて構成されている。
【0035】
ボトム10には、右大腿および左大腿を覆いボトム10の主要な部分を構成する基礎部20と、基礎部20の表側に縫い付けられて下腹部を覆う腹当部30と、基礎部20の上縁に縫い付けられてウエストを覆うウエスト部11と、基礎部20において股間に対応する部分に縫い付けられて股間を覆う股布12とが設けられている。
【0036】
基礎部20には、図1に示される腰および大腿の正面を覆う正面部21と、図2に示される臀部および大腿の背面を覆う背面部22とが設けられている。正面部21および背面部22は、それぞれ身体の中心に対して左右対称の形状を有する2枚の生地が互いに縫い合わせられることにより構成されている。
【0037】
図3に示されるように、腹当部30には、互いに重ね合わせられた同一形状の2枚の生地が設けられている。また、腹当部30の表側の生地と裏側の生地との間には、補助部40を構成する外向部分60の一部分が設けられている。
【0038】
各補助部40には、図1に示される大腿の正面に対応する部分おいて、上方から下方に向かうにつれて外側から内側に向けて傾斜する内向部分50が設けられている。また、図1に示される大腿の正面に対応する部分において、上方から下方に向かうにつれて内側から外側に傾斜する外向部分60が設けられている。また、図2に示される大腿の背面に対応する部分において、膝裏の上付近の部分を外股から内股までにわたりまたぐ背面部分70が設けられている。
【0039】
内向部分50と外向部分60とは、大腿の正面に対応する部分において互いに重ね合わせられている。内向部分50および外向部分60が重ね合わせられた部分(以下、「交差部分41」)は、右半身または左半身の幅方向の中間かつ大腿正面の付け根の部分に対応して設けられている。
【0040】
補助部40は、内向部分50、背面部分70、および外向部分60が順につなぎ合わせられた1本のベルト形状の部分として構成されている。また、右側の補助部40と左側の補助部40とは互いに独立して構成されている。
【0041】
図3を参照して、運動補助着1を構成する各部分の生地の種類について説明する。
運動補助着1は、緊締力の強さが互いに異なる3種類の生地により構成されている。すなわち、緊締力が大きい強緊締力生地、緊締力が小さい弱緊締力生地、および緊締力が大きくかつ伸縮性の小さいパワー生地により構成されている。
【0042】
基礎部20の各部分すなわち、正面部21および背面部22、ならびに腹当部30の表側の生地は、弱緊締力生地により構成されている。弱緊締力生地としては、一般の肌着に用いられる生地と同程度の伸縮性を有するものが用いられている。
【0043】
補助部40の各部分すなわち、内向部分50、外向部分60、および背面部分70は、強緊締力生地により構成されている。強緊締力生地としては、展開された状態において長手方向の伸縮性よりも短手方向の伸縮性が小さい帯状の生地が用いられている。
【0044】
腹当部30の裏側の生地は、パワー生地により構成されている。パワー生地としては、強緊締力生地と同程度の緊締力を有し、かつ強緊締力生地よりも伸縮性が小さい生地が用いられている。
【0045】
運動補助着1の基礎部20、腹当部30、および補助部40以外の各部分は、それぞれ次のように構成されている。すなわち、ウエスト部11は平ゴムにより構成されている。また、股布12は弱緊締力生地により構成されている。
【0046】
図1〜図3を参照して、運動補助着1の各部分の縁の種類について説明する。
図3の基礎部20の縁について次のように定義する。
(a)基礎部20の上部の縁を「上側縁23」とする。
(b)正面部21と背面部22との内側下部の境界を「内側縁24」とする。
(c)正面部21と背面部22との外側の境界を「外側縁25」とする。
(d)上側縁23と内側縁24とをつなぐ内側上部の縁を「中間縁26」とする。
【0047】
内側縁24には、正面部21の内側の縁および背面部22の内側の縁が含まれるものとする。また、外側縁25には、正面部21の内側の縁および背面部22の外側の縁が含まれるものとする。
【0048】
図1の腹当部30の縁について次のように定義する。
(a)腹当部30の上部の縁を「上側縁31」とする。
(b)腹当部30の下部の縁を「下側縁32」とする。
(c)上側縁31と下側縁32とをつなぐ各縁を「外縦縁33」とする。
(d)各外縦縁33のうち外向部分60に対応する部分を「中間縁34」とする。
【0049】
図1の内向部分50の縁について次のように定義する。
(a)内向部分50の上部の縁を「上側縁51」とする。
(b)内向部分50の下部の縁を「下側縁52」とする。
(c)上側縁51と下側縁52とをつなぐ内側の縁を「内縦縁53」とする。
(d)上側縁51と下側縁52とをつなぐ外側の縁を「外縦縁54」とする。
(e)各縦縁53,54のうちの外向部分60と対応する部分を「交差縁55」とする。
【0050】
図1の外向部分60の縁について次のように定義する。
(a)外向部分60の上部の縁を「上側縁61」とする。
(b)外向部分60の下部の縁を「下側縁62」とする。
(c)上側縁61と下側縁62とをつなぐ内側の縁を「内縦縁63」とする。
(d)上側縁61と下側縁62とをつなぐ外側の縁を「外縦縁64」とする。
(e)各縦縁63,64のうちの内向部分50と対応する部分を「交差縁65」とする。
【0051】
図2の背面部分70の縁について次のように定義する。
(a)背面部分70の上部の縁を「上側縁71」とする。
(b)背面部分70の下部の縁を「下側縁72」とする。
(c)上側縁71と下側縁72とをつなぐ内側の縁を「内縦縁73」とする。
(d)上側縁71と下側縁72とをつなぐ外側の縁を「外縦縁74」とする。
【0052】
図1〜図3を参照して、運動補助着1の各部分の縫い合わせについて説明する。
図1の腹当部30の各縁は次のように各部分に縫い付けられている。
(a)上側縁31は、ウエスト部11に縫い付けられている。
(b)下側縁32は、股布12に縫い付けられている。
(c)外縦縁33は、基礎部20の中間縁26に縫い付けられている。
【0053】
運動補助着1においては、外縦縁33の全体が正面部21に縫い付けられている。また、補助部40の外向部分60が腹当部30の表側の生地と裏側の生地との間に設けられている(図3)。このため、外向部分60において外縦縁33と重なり合う部分(以下、「縫付部分66」)の全体が外縦縁33とともに基礎部20の正面部21に縫い付けられている。
【0054】
図1の内向部分50の各縁は次のように各部分に縫い付けられている。
(a)上側縁51は、基礎部20の外側縁25に縫い付けられている。
(b)下側縁52は、基礎部20の内側縁24に縫い付けられている。
(c)下側縁52は、背面部分70の内縦縁73に縫い付けられている。
(d)内縦縁53の交差縁55は、外向部分60に縫い付けられている。
(e)外縦縁54の交差縁55は、外向部分60に縫い付けられている。
(f)内縦縁53は、基礎部20から独立している。
(g)外縦縁54は、基礎部20から独立している。
【0055】
内向部分50においては、上側縁51、下側縁52、内縦縁53、および外縦縁54により囲まれる部分が基礎部20に縫い付けられていない。すなわち、同部分が基礎部20から独立している。
【0056】
図1の外向部分60の各縁は次のように各部分に縫い付けられている。
(a)上側縁61は、腹当部30の上側縁31に縫い付けられている。
(b)上側縁61は、ウエスト部11に縫い付けられている。
(c)下側縁62は、基礎部20の外側縁25に縫い付けられている。
(d)下側縁62は、背面部分70の外縦縁74に縫い付けられている。
(e)内縦縁63の交差縁65は、内向部分50に縫い付けられている。
(f)外縦縁64の交差縁65は、内向部分50に縫い付けられている。
(g)縫付部分66を除く内縦縁63は、基礎部20から独立している。
(h)縫付部分66を除く外縦縁64は、基礎部20から独立している。
【0057】
外向部分60においては、上側縁61、下側縁62、内縦縁63、および外縦縁64により囲まれる部分のうちの縫付部分66を除く部分が基礎部20に縫い付けられていない。すなわち、同部分が基礎部20から独立している。
【0058】
図2の背面部分70の各縁は次のように各部分に縫い付けられている。
(a)上側縁71は、基礎部20に縫い付けられている。
(b)下側縁72は、基礎部20に縫い付けられている。
(c)内縦縁73は、基礎部20の内側縁24に縫い付けられている。
(d)外縦縁74は、基礎部20の外側縁25に縫い付けられている。
【0059】
図4を参照して、補助部40と身体の部位との対応について説明する。なお、同図においては、腹当部30の表側の生地を省略した状態の運動補助着1を示している。また、一点鎖線は大腿の付け根に対応する部分を示している。
【0060】
補助部40は、内向始点部分50X、内向終点部分50Y、内向第1部分50A、内向第2部分50B、内向第3部分50C、外向始点部分60X、外向終点部分60Y、外向第1部分60A、外向第2部分60B、外向第3部分60C、および背面中間部分70Aに対応して設けられている。
【0061】
上記各部分の内容を以下に示す。
・内向始点部分50Xは、下腹部の側面と対応する部分を示す。
・内向終点部分50Yは、大腿下部の内側面と対応する部分を示す。
・内向第1部分50Aは、大腿正面の付け根よりも上方の部分と対応する部分を示す。
・内向第2部分50Bは、大腿正面の付け根と対応する部分を示す。
・内向第3部分50Cは、大腿正面の内側の部分かつ大腿下部と対応する部分を示す。
・外向始点部分60Xは、下腹部の上部と対応する部分を示す。
・外向終点部分60Yは、大腿下部の外側面と対応する部分を示す。
・外向第1部分60Aは、大腿正面の付け根よりも上方の部分と対応する部分を示す。
・外向第2部分60Bは、大腿正面の付け根と対応する部分を示す。
・外向第3部分60Cは、大腿正面の外側の部分かつ大腿下部と対応する部分を示す。
・背面中間部分70Aは、大腿背面かつ大腿下部に対応する部分を示す。
【0062】
内向第1部分60Aおよび外向第1部分60Aの相互の関係について、外向第1部分60Aは、内向第1部分50Aよりも内側に位置している。内向第2部分50Bおよび外向第2部分60Bの相互の関係について、外向第2部分60Bは、内向第2部分50Bよりも内側に位置している。
【0063】
内向第3部分50Cは、内向部分50の下側縁52と背面部分70の内縦縁73との境界部分に対応している。また、外向第3部分60Cは、外向部分60の下側縁62と背面部分70の外縦縁74との境界部分に対応している。
【0064】
補助部40は次のように上記各部分に対応している。
内向部分50は、内向始点部分50Xから内向終点部分50Yまでにわたり、かつ内向第1部分50A、内向第2部分50B、および内向第3部分50Cを順に通過して設けられている。
【0065】
外向部分60は、外向始点部分60Xから外向終点部分60Yまでにわたり、かつ外向第1部分60A、外向第2部分60B、および外向第3部分60Cを順に通過して設けられている。
【0066】
背面部分70は、内向終点部分50Yから外向終点部分60Yまでにわたり、かつ背面中間部分70Aを通過して設けられている。背面中間部分70Aの高さ方向の中心は、内向終点部分50Yの高さ方向の中心、および外向終点部分60Yの高さ方向の中心よりも下方に位置している。
【0067】
以上のように補助部40は、内向始点部分50Xから外向始点部分60Xまでにわたり、かつこれら部分の間において、内向第1部分50A、内向第2部分50B、内向第3部分50C、背面中間部分70A、外向第3部分60C、外向第2部分60B、および外向第1部分60Aを順に通過する1本のベルト形状の部材として構成されている。
【0068】
なお、内向第1部分50Aは「部分A」に相当する。また、内向第2部分50Bは「部分B」に相当する。また、内向第3部分50Cは「部分C」に相当する。また、外向第1部分60Aは「部分D」に相当する。また、外向第2部分60Bは「部分E」に相当する。また、外向第3部分60Cは「部分F」に相当する。また、背面中間部分70Aは「部分G」に相当する。
【0069】
運動補助着1の各部の長さについて説明する。
ここで、運動補助着1の各部分の長さを次のように定義する。
(a)内向部分50の内向始点部分50Xから内向終点部分50Yまでの長さを「内向全体長さLM1」とする。
(b)内向部分50の内向始点部分50Xから外向部分60の上側の交差縁65までの長さを「内向上部長さLM2」とする。
(c)外向部分60の外向始点部分60Xから外向終点部分60Yまでの長さを「外向全体長さLN1」とする。
(d)外向部分60の外向始点部分60Xから内向部分50の上側の交差縁55までの長さを「外向上部長さLN2」とする。
(e)ボトム10において内向始点部分50Xから内向終点部分50Yまでに対応する部分の長さを「第1基準長さLMX」とする。
(f)ボトム10において外向始点部分60Xから外向終点部分60Yまでに対応する部分の長さを「第2基準長さLNX」とする。
【0070】
内向部分50は、着用者が運動補助着1を着用していない状態、すなわち内向部分50およびボトム10が着用者の身体に合わせて伸長していない状態において、内向全体長さLM1が第1基準長さLMXよりも短くなるように構成されている。一方、着用者が運動補助着1を着用している状態においては、内向部分50およびボトム10が伸長するため、内向全体長さLM1と第1基準長さLMXとが互いに等しくなる。
【0071】
外向部分60は、着用者が運動補助着1を着用していない状態、すなわち外向部分60およびボトム10が着用者の身体に合わせて伸長していない状態において、外向全体長さLN1が第2基準長さLNXよりも短くなるように構成されている。一方、着用者が運動補助着1を着用している状態においては、外向部分60およびボトム10が伸長するため、外向全体長さLN1と第2基準長さLNXとが互いに等しくなる。
【0072】
運動補助着1においては、着用者が運動補助着1を着用したときに内向部分50および外向部分60に生じる張力が実質的に同じ大きさとなるように補助部40が構成されている。
【0073】
すなわち、補助部40において以下の(構成A)〜(構成D)が採用されている。
(構成A)内向上部長さLM2と外向上部長さLN2とが略同じ大きさに設定されていること。
(構成B)交差部分41が右半身または左半身の幅方向の中間かつ大腿正面の付け根の部分に対応して設けられていること。
(構成C)内向部分50の内向始点部分50Xと外向部分60の外向始点部分60Xとが高さ方向において略同じ位置に設けられていること。
(構成D)内向部分50の内向終点部分50Yと外向部分60の外向終点部分60Yとが高さ方向において略同じ位置に設けられていること。
【0074】
図5を参照して、補助部40の歩行補助機能について説明する。同図においては、右脚の動作にともない補助部40から右脚に付与される力を示している。なお、左脚については、右脚の動作に準じた態様で補助部40から力が付与されるため、左脚の動作の図示を省略している。
【0075】
図5(a)に示されるように、着用者がつま先を揃えた立位の状態のとき、内向部分50には、矢印ANの方向に作用する張力、すなわち大腿の下部内側から大腿の上部外側に向かう張力が生じる。また外向部分60には、矢印AEの方向に作用する張力、すなわち大腿の下部外側から大腿の上部内側に向かう張力が生じる。
【0076】
図5(b)に示されるように、着用者が図5(a)の立位の姿勢から矢印PWの方向に大腿を動かして一歩を踏み出すとき、すなわち右足裏の全体が地面に設置した状態から右足裏を地面から離すとき、大腰筋および大腿四頭筋の作用により大腿が上方かつ前方に向けて動かされる。
【0077】
このとき、背面部分70には内向部分50の張力および外向部分60の張力が付与されているため、大腿の上方への移動が背面部分70の張力により補助される。すなわち大腿を上方かつ前方に上げる大腰筋および大腿四頭筋の動作が補助部40により補助される。
【0078】
補助部40は、このような大腿の動作の補助に加えて大腿の鍛錬にも寄与する。
歩行周期の右脚の立脚期において、着用者が右足を体幹よりも前方から体幹よりも後方に移動させるとき、すなわち右足裏で地面を蹴りだすとき、ハムストリングスの作用により大腿が後方に向けて動かされる。
【0079】
このとき、背面部分70には内向部分50の張力および外向部分60の張力が付与されているため、大腿の後方への移動が背面部分70の張力により妨げられる。すなわち、補助部40の張力が大腿の動作に対する負荷として作用する。このため、後方に向かう大腿の動作にともないハムストリングスが鍛錬される。
【0080】
(実施形態の効果)
本実施形態の運動補助着1によれば以下の効果が得られる。
(1)運動補助着1には、大腿の動作を補助する補助部40が設けられている。また補助部40には、内向部分50、外向部分60、背面部分70、および交差部分41が設けられている。
【0081】
この構成によれば、大腿を上げる動作が行なわれるとき、同動作が補助部40により補助されるため、大腰筋および大腿四頭筋の負荷が軽減される。このため、大腿を上げる動作を容易に行なうことができる。
【0082】
(2)運動補助着1においては、大腿の付け根と対応する部分に内向部分50と外向部分60とが交差する交差部分41が設けられている。この構成によれば、交差部分41が付け根から遠い部分に設けられる構成と比較して、背面部分70を上方かつ前方に引き上げる力が大きくなるため、大腿を上げる方向の動作を補助する力が大きくなる。
【0083】
(3)運動補助着1においては、大腿背面に対応する背面部分70を含めて補助部40が構成されている。この構成によれば、大腿を後ろに振り上げるとき、補助部40により大腿に負荷がかけられるため、ハムストリングスが鍛えられる。
【0084】
(4)運動補助着1においては、交差部分41に独立部分が形成されている。すなわち交差部分41において、交差縁55、交差縁65、およびこれら交差縁55,65に囲まれる部分が基礎部20から独立している。
【0085】
この構成によれば、脚が前方かつ上方に向けて動かされるとき、交差部分41が大腿正面の付け根から離れるため、交差部分41により股関節の屈曲運動が阻害されることが抑制される。
【0086】
(5)運動補助着1においては、内向部分50に独立部分が形成されている。すなわち内向部分50において、上側縁51、下側縁52、内縦縁53、および外縦縁54により囲まれる部分、内縦縁53、および外縦縁54が基礎部20から独立している。
【0087】
この構成によれば、内向部分50に生じる張力が基礎部20に分散することが抑制されるため、内向部分50に独立部分が形成されていない構成と比較して、大腿を上げる方向の動作を補助する力が大きくなる。
【0088】
(6)運動補助着1においては、外向部分60に独立部分が形成されている。すなわち外向部分60において、上側縁61、下側縁62、内縦縁63、および外縦縁64により囲まれる部分のうちの縫付部分66を除く部分、縫付部分66を除く内縦縁63、および縫付部分66を除く外縦縁64が基礎部20から独立している。
【0089】
この構成によれば、外向部分60に生じる張力が基礎部20に分散することが抑制されるため、外向部分60に独立部分が形成されていない構成と比較して、大腿を上げる方向の動作を補助する力が大きくなる。
【0090】
(7)運動補助着1においては、背面部分70の縁の全体が基礎部20に接続されている。すなわち、上側縁71、下側縁72、内縦縁73、および外縦縁74が基礎部20に縫い付けられている。
【0091】
この構成によれば、背面部分70が基礎部20から独立している構成とは異なり、背面部分70が基礎部20からずれることに起因して、大腿を上げる方向の動作を補助する力が小さくなることが抑制される。また、着用者が運動補助着1を着用するにあたり、背面部分70が足に引っ掛かることが抑制される。
【0092】
(8)運動補助着1においては、内向部分50の内向全体長さLM1が基礎部20の第1基準長さLMXよりも小さく、かつ外向部分60の外向全体長さLN1が基礎部20の第2基準長さLNXよりも小さい。
【0093】
この構成によれば、着用者が運動補助着1を着用したとき、内向部分50および外向部分60が基礎部20よりも伸長するため、内向部分50および外向部分60に生じる張力がより大きくなる。
【0094】
(9)運動補助着1においては、背面部分70の背面中間部分70Aが膝の上部付近に対応して設けられている。この構成によれば、大腿を上げる動作が行なわれるとき、膝の上部付近が背面中間部分70Aにより引き上げられるため、背面中間部分70Aが膝の上部付近よりもさらの上方の部分に対応している構成と比較して、大腿を上げる方向の動作を補助する効果が高くなる。
【0095】
(10)運動補助着1においては、右半身および左半身の幅方向の中間かつ大腿正面の付け根の部分に対応して交差部分41が設けられている。
この構成によれば、大腿に対して上方かつ外側に向けて作用する内向部分50の張力と、大腿に対して上方かつ内側に向けて作用する外向部分60の張力との間に大きな差が生じることが抑制される。このため、歩行時に大腿が内側または外側に振れにくくなる。
【0096】
(11)運動補助着1においては、内向部分50と外向部分60とが交差部分41において互いに縫い合わせられている。この構成によれば、内向部分50と外向部分60との相対的な位置が大きくずれることが抑制されるため、大腿を上げる方向の動作を補助する効果が安定して得られる。
【0097】
(12)運動補助着1においては、着用者が着用したときに内向部分50および外向部分60に生じる張力が実質的に同じ大きさとなるように補助部40が構成されている。この構成によれば、着用者が運動補助着1を着用したときに内向部分50から大腿に付与される力と外向部分60から大腿に付与される力との差が過度に大きくなることが抑制される。このため、歩行時に大腿が内側または外側に振れにくくなる。
【0098】
(13)運動補助着1においては、腹当部30の表側の生地と裏側の生地との間に外向部分60の一部分が設けられている。また、外向部分60の縫付部分66が基礎部20の中間縁26および腹当部30の中間縁34に縫い付けられている。この構成によれば、股関節を曲げたとき等に外向部分60が基礎部20から離れることにともない外向部分60に大きなたわみが生じることが抑制される。
【0099】
(その他の実施形態)
本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示すように変更することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0100】
・上記実施形態では、大腿背面の膝上付近と対応する背面中間部分70Aを通過するように背面部分70を構成しているが、背面部分70の構成を次のように変更することもできる。なお、この場合には、内向部分50の下側縁52および外向部分60の下側縁62の位置が背面部分70の位置に応じて上方または下方に変更される。
(A)大腿背面において膝と対応する部分を通過するように背面部分70を構成する。
(B)大腿背面において上記実施形態の背面中間部分70Aと大腿付け根との間に対応する部分を通過するように背面部分70を構成する。
【0101】
・上記実施形態では、内向部分50の内縦縁53の全体が基礎部20から独立しているが、内縦縁53の少なくとも一部が基礎部20に縫い付けられた構成に変更することもできる。
【0102】
・上記実施形態では、内向部分50の外縦縁54の全体が基礎部20から独立しているが、外縦縁54の少なくとも一部が基礎部20に縫い付けられた構成に変更することもできる。
【0103】
・上記実施形態では、外向部分60の縫付部分66を除く内縦縁63の全体が基礎部20から独立しているが、内縦縁63のその他の部分の少なくとも一部が基礎部20に縫い付けられた構成に変更することもできる。
【0104】
・上記実施形態では、外向部分60の縫付部分66を除く外縦縁64の全体が基礎部20から独立しているが、外縦縁64のその他の部分の少なくとも一部が基礎部20に縫い付けられた構成に変更することもできる。
【0105】
・上記実施形態では、外向部分60の内縦縁63において縫付部分66が基礎部20に縫い付けられているが、縫付部分66が基礎部20から独立した構成、すなわち内縦縁63の全体が基礎部20から独立した構成に変更することもできる。
【0106】
・上記実施形態では、外向部分60の外縦縁64において縫付部分66が基礎部20に縫い付けられているが、縫付部分66が基礎部20から独立した構成、すなわち外縦縁64の全体が基礎部20から独立した構成に変更することもできる。
【0107】
・上記実施形態では、交差部分41において内向部分50と外向部分60とを互いに縫い合わせているが、この縫い合わせを省略し、交差部分41において内向部分50と外向部分60とが互いに独立した構成に変更することもできる。
【0108】
・上記実施形態では、背面部分70の縁の全体が基礎部20に縫い付けられているが、背面部分70の縁の少なくとも一部が基礎部20から独立した構成に変更することもできる。
【0109】
・上記実施形態では、背面部22の裏側に背面部分70が設けられているが、背面部22の表側に背面部分70が設けられた構成に変更することもできる。
・上記実施形態では、内向全体長さLM1を第1基準長さLMXよりも小さくしているが、内向全体長さLM1を第1基準長さLMXと同じ大きさにすること、または内向全体長さLM1を第1基準長さLMXよりも大きくすることもできる。
【0110】
・上記実施形態では、外向全体長さLN1を第2基準長さLNXよりも小さくしているが、外向全体長さLN1を第2基準長さLNXと同じ大きさにすること、または外向全体長さLN1を第2基準長さLNXよりも大きくすることもできる。
【0111】
・上記実施形態では、ボトム10に腹当部30が設けられているが、ボトム10から腹当部30が省略された構成に変更することもできる。
・上記実施形態では、腹当部30が2枚の生地により構成されているが、1枚の生地により構成される腹当部30を用いることもできる。
【0112】
・上記実施形態では、補助部40の素材として強緊締力生地が用いられているが、パワー生地、ゴム、または紐を補助部40の素材として用いることもできる。
・上記実施形態では、着用者が運動補助着1を着用したときに内向部分50および外向部分60に生じる張力が実質的に同じ大きさとなるように補助部40が構成されているが、補助部40の構成を次のように変更することもできる。
(A)着用時の内向部分50の張力を外向部分60の張力よりも大きくする。
(B)着用時の外向部分60の張力を内向部分50の張力よりも大きくする。
【0113】
上記の(A)および(B)のいずれの構成においても、内向部分50の張力と外向部分60の張力との差が所定範囲内に収められるように補助部40を構成することにより、歩行時に大腿が内側または外側に振れることを抑制する効果が得られる。
【0114】
・上記実施形態では、内向部分50の上側縁51について幅方向の位置が下腹部の側面と対応する部分に設定されているが、内向部分50の上側縁51の形成位置を次のように変更することもできる。
(A)上側縁51を大腿背面と対応する部分に設ける。
(B)上側縁51を大腿正面と対応する部分に設ける。
【0115】
・上記実施形態では、内向部分50の上側縁51について高さ方向の位置がウエストよりも下方と対応する部分に設定されているが、内向部分50の上側縁51の形成位置を次のように変更することもできる。
(A)上側縁51をウエストと対応する部分に設ける。なお、この場合の構成の一例としては、例えば外向部分60の上側縁61に準じた態様で内向部分50の上側縁51をウエスト部11に縫い付ける構成が挙げられる。
(B)上側縁51をウエストよりも上方に設ける。なお、この場合にはボトム10の上縁がウエストよりも上方に設けられる。
【0116】
・上記実施形態では、外向部分60の上側縁61について高さ方向の位置がウエストと対応する部分に設定されているが、外向部分60の上側縁61の形成位置を次のように変更することもできる。
(A)上側縁61をウエストよりも下方かつ大腿の付け根よりも上方と対応する部分に設ける。
(B)上側縁61をウエストよりも上方に設ける。なお、この場合にはボトム10の上縁がウエストよりも上方に設けられる。
【0117】
・上記実施形態では、大腿の幅方向の中間かつ大腿正面の付け根の部分に対応して交差部分41が設けられているが、交差部分41の形成位置を次のように変更することもできる。
(A)幅方向の形成位置を右半身または左半身の幅方向の中間部分よりも内側にする。
(B)幅方向の形成位置を右半身または左半身の幅方向の中間部分よりも外側にする。
(C)高さ方向の形成位置を下腹部正面と対応する部分にする。
(D)高さ方向の形成位置を大腿上部の正面と対応する部分にする。
(E)高さ方向の形成位置を大腿下部の正面と対応する部分にする。
【0118】
・上記実施形態では、補助部40として内向部分50および外向部分60がそれぞれ別の強緊締力生地により構成されたものが設けられているが、補助部40の構成を次のように変更することもできる。すなわち、同実施形態の内向部分50および外向部分60の形状に対応した1枚のX字形状の強緊締力生地と背面部分70とを互いに縫い合わせて補助部を構成することもできる。
【0119】
・上記実施形態では、ボトム10に補助部40が縫い付けられる構成を用いているが、すなわちボトム10単独で大腿が覆われるように運動補助着1を構成しているが、補助部40をボトム10の一部として用いることもできる。すなわち、上記実施形態の基礎部20に代わる基礎部として、基礎部20から補助部40に対応する部分が省略された形状のものを用いる。そして、この基礎部の縁と補助部40の縁とを互いに縫い合わせることにより運動補助着1を構成する。
【0120】
・上記実施形態では、下着としての運動補助着1に対して本発明を適用した構成を例示しているが、スポーツ用の被服および日常着に本発明を適用することもできる。また、サポーターとして本発明を実施することもできる。サポーターとしての運動補助着の構成の一例としては、例えば上記実施形態の運動補助着1から基礎部20および腹当部30が省略され、かつウエスト部11および補助部40により構成されるものが挙げられる。
【符号の説明】
【0121】
1…運動補助着、10…ボトム、11…ウエスト部、12…股布、20…基礎部、21…正面部、22…背面部、23…上側縁、24…内側縁、25…外側縁、26…中間縁、30…腹当部、31…上側縁、32…下側縁、33…外縦縁、34…中間縁、40…補助部、41…交差部分、50…内向部分、50X…内向始点部分、50Y…内向終点部分、50A…内向第1部分、50B…内向第2部分、50C…内向第3部分、51…上側縁、52…下側縁、53…内縦縁、54…外縦縁、55…交差縁、60…外向部分、60X…外向始点部分、60Y…外向終点部分、60A…外向第1部分、60B…外向第2部分、60C…外向第3部分、61…上側縁、62…下側縁、63…内縦縁、64…外縦縁、65…交差縁、66…縫付部分、70…背面部分、70A…背面中間部分、71…上側縁、72…下側縁、73…内縦縁、74…外縦縁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行を補助する運動補助着において、
大腿の動作を補助する補助部が設けられていること、
この補助部に内向部分、外向部分、および背面部分が設けられていること、
前記内向部分が部分Aから部分Bを介して部分Cまでにわたり設けられていること、
前記外向部分が部分Dから部分Eを介して部分Fまでにわたり設けられていること、
前記背面部分が部分Cから部分Gを介して部分Fまでにわたり設けられていること、
前記部分A〜前記部分Gがそれぞれ以下の(a)〜(g)により規定されること、
(a)前記部分Aは、大腿正面の付け根よりも上方に対応する部分
(b)前記部分Bは、大腿正面の付け根に対応する部分
(c)前記部分Cは、大腿正面の内側の部分に対応する部分
(d)前記部分Dは、大腿正面の付け根よりも上方に対応しかつ前記部分Aとは別の部分
(e)前記部分Eは、大腿正面の付け根に対応する部分
(f)前記部分Fは、大腿正面の外側の部分に対応する部分
(g)前記部分Gは、大腿背面に対応する部分
ならびに、前記内向部分と前記外向部分とが互いに交差する部分を交差部分として、正面においてウエストから大腿下部までの少なくとも一部分に対応してこの交差部分が設けられていること
を特徴とする歩行を補助する運動補助着。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行を補助する運動補助着において、
大腿正面の付け根または大腿正面の付け根付近に対応する部分に前記交差部分が設けられていること
を特徴とする歩行を補助する運動補助着。
【請求項3】
請求項1または2に記載の歩行を補助する運動補助着において、
ボトムとして構成されていること、
前記補助部が前記ボトムの基礎部に取り付けられていること、
ならびに、前記補助部の緊締力が前記基礎部の緊締力よりも大きいこと
を特徴とする歩行を補助する運動補助着。
【請求項4】
請求項3に記載の歩行を補助する運動補助着において、
前記補助部のうちの前記基礎部から独立している部分を独立部分として、前記交差部分にこの独立部分が形成されていること
を特徴とする歩行を補助する運動補助着。
【請求項5】
請求項3または4に記載の歩行を補助する運動補助着において、
前記補助部のうちの前記基礎部から独立している部分を独立部分として、前記内向部分の少なくとも一部にこの独立部分が形成されていること
を特徴とする歩行を補助する運動補助着。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の歩行を補助する運動補助着において、
前記補助部のうちの前記基礎部から独立している部分を独立部分として、前記外向部分の少なくとも一部にこの独立部分が形成されていること
を特徴とする歩行を補助する運動補助着。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか一項に記載の歩行を補助する運動補助着において、
前記背面部分が前記基礎部に接続されていること
を特徴とする歩行を補助する運動補助着。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか一項に記載の歩行を補助する運動補助着において、
前記基礎部において下半身の表面に沿う前記部分Aから前記部分Cまでの長さを第1基準長さとし、前記基礎部において下半身の表面に沿う前記部分Dから前記部分Fまでの長さを第2基準長さとして、前記内向部分の長さが前記第1基準長さよりも小さいこと、
ならびに、前記外向部分の長さが前記第2基準長さよりも小さいこと
を特徴とする歩行を補助する運動補助着。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の歩行を補助する運動補助着において、
前記部分Gが膝の上部付近の部分に対応していること
を特徴とする歩行を補助する運動補助着。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の歩行を補助する運動補助着において、
右半身または左半身において幅方向の中間に対応する部分に前記交差部分が設けられていること
を特徴とする歩行を補助する運動補助着。
【請求項11】
請求項10に記載の運動補助着において、
前記交差部分において前記内向部分と前記外向部分とが互いに接続されていること
を特徴とする歩行を補助する運動補助着。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の歩行を補助する運動補助着において、
前記内向部分に生じる張力と前記外向部分に生じる張力との差が所定範囲内に収められるように前記内向部分および前記外向部分が構成されていること
を特徴とする歩行を補助する運動補助着。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−214935(P2012−214935A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82176(P2011−82176)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【特許番号】特許第4903904号(P4903904)
【特許公報発行日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(000131555)株式会社シャルレ (16)
【Fターム(参考)】