説明

歩行器

歩行補助として機能することに加え、座位からの起立、及び座位への着座のために配置された2組のハンドルを有する歩行器(10)を開示する。この歩行器は、フレームを含み、フレームは、1対の前方鉛直支持体(11,12)及び硬質の横材(13)を含む前方セクションと、後方鉛直支持体(14,15)を各々が含む2つの側方セクションとを含む。後方鉛直支持体(14,15)は、地面と係合する点を通って形成される荷重支持軸を有する。フレームは、また、側方セクションを前方セクションに連結する硬質のコネクタも含む。この歩行器は、また、ユーザが起立又は歩行位置にあるときにユーザを支持するように配置された第1の対のハンドル(36,37)と、ユーザが座位から起立するとき又は座位に着座するときにユーザを支持するために、第1の対のハンドルより下に、且つ第1の対のハンドルより後方に配置された第2の対のハンドル(38,39)とを含み、第2の対のハンドルの各々の幾何学的中央が、後方鉛直支持体の各々の荷重支持軸より後方に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間が座位から起立すること及び座位に着座することを補助するように配置された補助ハンドルを有する歩行補助装置に関する。
関連出願の相互参照
本出願は、2003年8月25日に出願された米国特許仮出願60/497,633号の利益を主張し、この出願を援用して本文の記載の一部とする。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの損傷及び外科手術から回復しつつある人々、又は、加齢や他の原因に関連した状態による衰弱又は不安定さを経験している人々が、座位へ、及び座位から移動することを補助するために、様々なタイプの装置が用いられてきた。このような目的のために、複雑で高価な装置、例えば、傾斜椅子などが開発されてきた。椅子又はベッドにより支持されるように設計された様々なタイプの4脚歩行器及び装置も、この目的のために用いられてきた。
【0003】
この分野の開発者がこの問題に注目し続け、様々なケイン(杖)又は杖状の装置が、多くの特許又は特許関連文献に開示されている。ウォルカー(Walker)の特許文献1;パーカー(Parker)に付与された特許文献2;及び、アーリイ(Early) らに付与された特許文献3は、複数のハンドル及び杖状構造物を有する装置を開示している。また、ワリー( Warry) に付与された特許文献4は、単一のシャフトを有するテレスコープ式の松葉杖状の装置を開示しており、この装置においては、松葉杖を完全に伸展させたときに補助ハンドルが握られ得る。
【0004】
特許文献1の装置は、4つのハンドルを装置の上部に有し、下部ハンドルが、着座している人間により把持され得る。これは、装置が前位置にある状態でユーザが起立状態に自分を引き上げるときにハンドルを引くためである。ウォルカーの装置の上部ハンドルと下部ハンドルは互いに近接して配置されており、この装置は、高さが異なる2つのケインに配置された2対のハンドルを有するような装置である。
【0005】
特許文献2の装置は2つのハンドルを有するが、ハンドルは、ハンドルの幾何学的中央がシャフト部材より上にあるようには配置されていない。パーカーのケイン2つのハンドルの主な用途は、ユーザが高低差のある地面を進んでいるときに安定させるためのものである。パーカーの上部ハンドルと下部ハンドルは、互いに比較的近接している(例えば、約15.24cm(約6インチ))。従って、これらのケインを用いようとすると、ハンドルの押圧により、座位から起立しようとしたときにユーザの手首に幾らかの回転力を生じることになる。多くのユーザが関節炎の症状をもっているため、手首にかかるトルクは不都合であり、概して避けられるべきである。さらに、パーカーの装置のハンドルは互いに非常に近接しているため、このようなケインを、特に椅子の傍で用いる人間は、両手間の利用可能空間が限定されることにより、手首、手、及び前腕を快適でない位置におくことを経験するであろう。この装置も、ウォルカーの装置と同様に、起立するためにケインを用いるための、より快適で生物力学的に有利な位置が、椅子の近傍にあり、且つ、着座している人間の重心に近接している。パーカーの2つのハンドルが近接していることが、このような方法での装置の便利な使用を困難にしている。
【0006】
特許文献3の装置は、ケインのハンドルに近接したカラー(環状部)を有する。カラーは、ユーザが起立位置に自分を引き上げるために引こうとするための小さい面をもたらす。しかし、カラーは、押し下げ運動に有効に用いられるには、ハンドルに近すぎる位置に
配置されている。
【0007】
補助ハンドルを開示している別の特許は、シュマール(Schmerl) に付与された特許文献5であり、このハンドルは、ケインハンドルに近接して枢動される長い安定バーを有し、バーは、ケインシャフトに対して実質的に垂直の位置まで回転され得る。ケインのユーザが起立位置にてケインハンドル上に片手を置くときに、第2の手は、安定バーに沿って置かれ得る。このバーも、主要ケインハンドルの付近に配置され、従って、椅子から起立する人間を補助することにおいて不都合である。
【0008】
他の構造物、例えば、ボイス(Boyce) らに付与された特許文献6に例示されているような構造物も、起立の補助をもたらすために開発されてきた。この装置は、ユーザの臀部を取り囲むのに十分な距離で横方向に離隔された1対のアームレストを有する。これらのアームレストは、人間が座位から立位に起立するために手を支持する役割を果たす。
【0009】
歩行補助装置及び起立補助装置としてのケインの開発に加えて、他の歩行補助装置が、ユーザの歩行中に安定した支持を提供するための複数の脚部材を有するように開発されてきた。このような装置は、間隔を有して配置された4つの脚部を典型的に有する歩行器、例えば、エドワード(Edward)らに付与された特許文献7に開示されたような歩行器を含む。ユーザは、歩行器を、自分より前方に腕の長さの距離だけ前進させ、次いで、歩行器に向って前方に歩くときに歩行器に寄りかかる。
【0010】
座位からの起立の補助ももたらす歩行器装置が特許文献に開示されてきた。ブレシュナー(Blechner)に付与された特許文献8は、間隔を有して配置された2つのフットレストを有する歩行器を開示しており、これらの2つのフットレストの上に、ユーザは、前方バーを把持して自分自身を起立位置に引き上げるときにユーザの足を置く。フットレストの使用は特定の姿勢を要求し、これにより、使用が困難になり、従って安全でないことがある。
【0011】
キップス(Kippes)に付与された特許文献9は、ユーザが装置の前方バーを引くことに対して平衡を保つための地面高さに延ばされた水平ロッドを有した、起立用の装置を開示している。キップスの装置は、また、第2の人間が起立位置にいて、起立するユーザを補助するために装置の前方部分を固定するように助けることが必要であることを開示している。キップスの構造物は、起立するための装置としてのみ働き、歩行補助装置としては機能しない。
【0012】
バーニング(Berning) に付与された特許文献10は、2つの脚と、ユーザが座位から起立するとき又は階段を上るときにユーザを補助するための互いに離隔された2組のグリップとを有する歩行補助装置を開示している。しかし、バーニングの装置の、鉛直方向に離隔された2つのグリップの間隔が非常に狭いため、この装置は、起立補助装置として効果的に用いられることができない。さらに、バーニングの装置は、実質的に細長い、鉛直方向に延びた輪郭を有するため、本質的に不安定である。
【0013】
カニングハム(Cunningham)に付与された特許文献11及び特許文献12は、共に、関節状のブレース(支え)部材が取り付けられた歩行器装置を開示しており、関節状のブレース部材は、椅子又は他の座席構造物の水平面上に配置可能であるように、歩行器フレームから外側にスイングする。展開されるブレースは、ユーザが座位から起立することを補助するようにユーザにより把持されるように設計されている。しかし、このようなブレースは、歩行器フレームに回転可能に取付けられることにより、横方向において不安定である。カニングハムの装置は、また、起立中にブレースを支持する安定面を必要とする。従って、このような装置は、起立補助装置として不都合である。
【0014】
ブロック(Block) らに付与された特許文献13は、起立又は歩行中に用いるためのハンドルと、それに加えて、人間が座位から起立すること及び座位に着座することを補助するのに用いる第2組の把持部とを有する歩行器を開示している。ブロックの歩行器の第2組の把持部は、他の従来の歩行器の把持部と同様に、地面と係合する先端及び後脚を通って形成された長手方向軸より前に配置されることにより、ユーザに安定性をもたらす。しかし、この配置により、第2組の把持部は、着座しているユーザから不都合に離れた位置になる。
【特許文献1】英国特許出願第2136290A号
【特許文献2】米国特許第3,289,685号
【特許文献3】米国特許第4,562,850号
【特許文献4】米国特許第1,400,394号
【特許文献5】米国特許第4,121,605号
【特許文献6】米国特許第4,941,495号
【特許文献7】米国特許第3,442,276号
【特許文献8】米国特許第4,474,202号
【特許文献9】米国特許第5,347,666号
【特許文献10】米国特許第4,941,496号
【特許文献11】米国特許第5,005,599号
【特許文献12】米国特許第5,445,174号
【特許文献13】米国特許第5,785,070号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記の歩行補助装置は、着座位置から起立しようとする人間を補助することにおける様々な能力を有するが、各々が、主に装置の不安定性及び/又は使用の容易さに関する独自の欠点を有する。これらの設計により、起立するユーザを補助するように意図されたこれらの装置の支持ハンドルは不安定であり、又は、歩行器の後方の着座位置にいる人間に対して不都合に位置づけられる。従って、歩行補助と起立補助を組み合わせた装置であって、安定性があり、且つ、ユーザの座位から起立及び座位への着座の両方を容易に補助するように、好都合に配置された把持部をもたらすように構成された装置を提供することが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に従えば、ユーザの歩行、並びに、座位からの起立及び座位への着座を補助するために人間工学的及び生体力学的に構成された歩行器が提供される。歩行器は、1対の前方鉛直支持体を有するフレームを含み、この1対の前方鉛直支持体は、間隔を有して配置され、且つ、横材により堅固に連結されている。フレームは、また、荷重支持軸を有する1対の後方鉛直支持体を有し、荷重支持軸は、1対の硬質コネクタにより前方鉛直支持体に連結された各後方鉛直支持体の地面係合点を通って形成されている。第1組のハンドルが、フレームに、前方鉛直支持体の各々の上端にて取り付けられ、前方鉛直支持体から後方に延在するように配置されている。第2組のハンドルが、フレームに、後方鉛直支持体の各々の上端にて取り付けられ、第1組のハンドルより下に、且つ、第1組のハンドルより後方に配置されている。第2組のハンドルの幾何学的中央が、各々、ハンドルが取り付けられている後方鉛直支持体の荷重支持軸より後方に位置する。この構造において、第1組のハンドルは、起立又は歩行位置にあるときのユーザを支持するように配置され、第2組のハンドルは、座位から起立し、又は座位に着座するときのユーザを支持するために容易に把持可能であるように配置される。歩行器は、さらに、前方鉛直支持体と後方鉛直支持体の間のさらなる硬質のコネクタ、前方鉛直支持体及び/又は後方鉛直支持体の下端の車輪及び/又はスキッド(滑り材)、座席、ポケット、若しくは、私物品を運ぶための他
のタイプの区画、及び、アクセサリ(例えば、ポール、把持具などのツール)のための取付け点、並びに、私物品及び/又は医療品を支持するための取付け点を含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、ユーザの歩行、並びに、ユーザが座位から起立すること及び座位に着座することを補助するように構成された歩行器であって、製造及び使用の両方において多くの利点を有する歩行器を提供する。この歩行器は、前方セクション及び2つの側方セクションを有する3面型の(three-sided) フレームを含み、これらのセクションは、ユーザが起立又は歩行時に歩行器を用いるときにユーザにより占められるべき空間を画成する。歩行器のフレームは、間隔を有して配置された1対の鉛直方向の前方支持体を含み、これらの前方鉛直支持体は、これらの前方支持体間に配置された硬質の横材により連結されている。フレームは、また、少なくとも1対の硬質のコネクタにより前方鉛直支持体に連結された1対の後方鉛直支持体を含む。別の実施形態において、歩行器は、単一の前方鉛直支持体と、この単一の前方鉛直支持体に取り付けられた1対の後方鉛直支持体とを有する2面型のフレームを含み、これらの鉛直支持体は、ユーザが起立又は歩行時に歩行器を用いるときにユーザにより占められる三角形の空間を画成する。本文中に示される本発明の詳細な説明は、3面型フレームを有する歩行器に関するものであるが、本発明が、2面型フレームを有する歩行器も含み、また、本文中に記載される本発明の他の特徴も同様に2面型フレームに適用及び適応され得ることが理解されるであろう。
【0018】
フレームは、様々な身長及び寸法を有する人間が使用するようにほぼ適合される寸法につくられ、また、歩行器を用いる人間が、歩行、起立及び着座するときに一般に加える荷重を支持できる、任意の適切な材料又は材料の組合せからつくられ得る。適切な材料は、例えば、アルミニウム及びスチールなどの金属、複合材料、セラミック及びプラスチックを含む。一実施形態において、歩行器のフレームは、アルミニウム管を含む。
【0019】
フレームの部品は、相対移動できない3つのサイドを形成するように互いに堅固に連結され得る。或いは、フレームの部品は、輸送又は保管のためにフレームが折り畳まれるために、フレームの2つの側方セクションが前方セクションに向って内側へ独立に回転され得るように枢動可能に連結され得る。一実施形態において、フレームの各側方セクションのための枢動軸は前方鉛直支持体に沿って配置され、この枢動軸に硬質のコネクタが取り付けられる。別の実施形態において、フレームの各側方セクションのための枢動軸は、横材の横方向端に配置され、この枢動軸に前方鉛直支持体が取り付けられる。枢動軸を有する実施形態において、フレームは、さらに、枢動軸に配置された、又は枢動軸から離れて配置された少なくとも1つの機構を含むことができ、この機構は、使用中にフレームの部品が「開放」位置にロックされること、及び、側方セクションが前方セクションに対して「閉鎖」位置に移動可能であるように解除されることを可能にする。図1〜図7に示されているように、歩行器10の一実施形態は、ロック機構16及びロック機構17により横材13に枢動可能に取り付けられた前方の鉛直支持体11及び前方の鉛直支持体12を含み、ロック機構16及びロック機構17は、各枢動軸に配置されている。
【0020】
前方鉛直支持体の各々は、単一の構造であっても、又は、前方鉛直支持体の長さが調節されるための相対移動を可能にする2つ以上の部分を含んでもよい。フレームが、管材(例えばアルミニウム管)を含む実施形態において、各前方鉛直支持体は、1つの管部分、又は、直径の異なる2つ以上の管部分を含むことができ、これらの管部分は、管の1つの部分を他の部分にテレスコープ状に入れ込むことにより前方鉛直支持体の長さ調節を可能にするように同軸状に配置されている。図1〜図7は、前方鉛直支持体11及び前方鉛直支持体12を有する歩行器の一実施形態を示し、支持体11は、同軸状に配置された管下部11a及び管上部11bを含み、支持体12は、同軸状に配置された管下部12a及び管上部12bを含む。2つ以上の部分を含む前方鉛直支持体は、さらに、前方鉛直支持体
を含む管部分間の相対移動を、許容、抑制又は防止することができるロック機構を含み得る。
【0021】
前方鉛直支持体の一方又は両方の上部は、歩行器に付属物を取り付けるための1以上の取付け点を有し得る。前方鉛直支持体が管材を含む実施形態において、前方鉛直支持体の一方又は両方の上部に開放端が設けられることができ、開放端には、さらに、開放端を覆うためのキャップが設けられ得る。図1〜図5及び図7は、前方鉛直支持体11及び前方鉛直支持体12にそれぞれキャップ18及びキャップ19が設けられた歩行器の実施形態を示す。キャップは、前方鉛直支持体が適合可能な付属物(例えばポール又はツール(図示せず))を受けることを可能にするように、開放端に永久的又は着脱可能に配置され得る。前方鉛直支持体の一方又は両方の上部に差し込まれるポールは、私物品又は医療品、例えば、医薬品、静脈バッグ若しくは酸素ボンベを保持するために用いられ得る。前方鉛直支持体の一方又は両方の上部に差し込まれるツールは、例えば、ユーザが物品を、或る距離(例えば高い棚)から掴み、且つ/又は操作することを可能にする把持具であり得る。
【0022】
各前方鉛直支持体の底部の端部にもキャップが取り付けられることができ、また、さらに車輪組立体又はグライド組立体が取り付けられ得る。図1〜図7に示した歩行器の実施形態は、前方鉛直支持体11及び前方鉛直支持体12の下端がそれぞれキャップ20及びキャップ21を終端とし、これらの下端付近にそれぞれ車輪組立体22及び車輪組立体23が取り付けられ、車輪組立体22,23は、それぞれ、軸24,25、ホイール26,27、及び、タイヤ28,29を含む。車輪組立体を用いる実施形態は、歩行器に用いられるのに適した任意の標準的な構造を有し得る。このような車輪組立体は、一般に、支持体に取り付けられた軸、軸を受けるための中央ボアを有する金属又はプラスチック製のホイール、及び、ホイールに取り付けられた、中実の又は膨張可能なラバータイヤを含む。車輪を有する歩行器は、さらに、車輪の回転速度を制御するためのブレーキ、例えばハンドブレーキを含み得る。別の実施形態において、各前方鉛直支持体の下端にグライド組立体が設けられる。グライド組立体は、或る範囲の適切な材料、例えば金属又はプラスチックから、様々な適切な形状及び寸法のいずれかを有してつくられ得る。
【0023】
一実施形態において、前方鉛直支持体に、ステム部及びキャップ部を有する、マッシュルーム形状のプラスチック製グライドが設けられる。このような実施形態において、このようなマッシュルーム形状のグライドのステム部は、前方鉛直支持体の下端に挿入されることができる中実の、又は中空の部材として構成され得る。或いは、ステム部は、前方鉛直支持体の下端を受けるためのキャビティを有して構成され得る。ステム部と各鉛直支持体の下端との係合は、摩擦嵌めによるものであっても、又はロック機構によるものであってもよく、また、永久的であっても、或いは、摩耗したグライドの交換を容易に可能にするように一時的であってもよい。このようなマッシュルーム形状のグライドのキャップ部は、単一構造の態様としてステム部と一体であっても、又は、グライドのステム部に永久的に若しくは着脱可能に取り付けられる別個の要素を含んでもよい。いずれの構造においても、グライドのキャップ部は、水平面における歩行器の任意の方向への並進移動を容易に可能にする面をもたらす。さらに、本発明のマッシュルーム形状のグライドは、慣用の全てのタイプの歩行器にも同様に適合可能である。
【0024】
横材は、前方鉛直支持体を、互いに対して固定された安定位置に連結及び維持することができる任意の硬質の構造物であり得る。横材は、単一構造物であってよく、又は、2つ以上の部品、例えば、バー、管、若しくはパネルを含んでもよい。横材は、歩行、起立及び着座の際の使用時に人間が一般的に歩行器に加える荷重を支持できる任意の適切な材料からつくられ得る。適切な材料の例は、プラスチック、複合材料、セラミック、又は、金属、例えばスチール若しくはアルミニウムを含む。図1〜図7に示されている一実施形態
において、横材13は、前方鉛直支持体11と前方鉛直支持体12とを互いに連結する、硬質で単一構造の成形プラスチックパネルを含む。
【0025】
後方鉛直支持体の各々は、単一構造であっても、又は、後方鉛直支持体の長さが調節されることを可能にする2つ以上の部分を含んでもよい。フレームが、管材(例えばアルミニウム管)を含む実施形態において、各後方鉛直支持体は、1つの管部分、又は、直径の異なる2つ以上の管部分を含むことができ、これらの管部分は、管の1つの部分を他の部分にテレスコープ状に入れ込むことにより長さ調節を可能にするように同軸状に配置されている。2つ以上の部分を有する実施形態は、さらに、後方鉛直支持体を含む管の部分間の相対移動を許容又は防止することができるロック機構を含み得る。図1〜図7は、単一構造の後方鉛直支持体14及び後方鉛直支持体15を含む歩行器の一実施形態を示す。
【0026】
後方鉛直支持体は、前方鉛直支持体に、少なくとも1対の硬質のコネクタ(連結材)により連結されている。1対のみのコネクタを有する実施形態において、各コネクタは、前方鉛直支持体に、前方鉛直支持体の底部から離隔された位置にて取り付けられる。各コネクタは、また、対応する後方鉛直支持体に、後方鉛直支持体の上部にて、又は、第2ハンドルが後方鉛直支持体に連結される位置にて、若しくはこの位置を通って、或いは、第2ハンドルより下に離隔された位置にて取り付けられる。コネクタの第2の対が用いられる実施形態において、前方鉛直支持体と後方鉛直支持体は2つの点にて連結されることができ、それにより、各支持体が、より大きい構造的完全性及び剛性をもたらす。図1〜図7は、2対のコネクタを含む歩行器の一実施形態を示す。この実施形態において、第1の対のコネクタであるコネクタ30,コネクタ31は、コネクタの一端が、前方鉛直支持体11,前方鉛直支持体12のそれぞれの中央部に取り付けられ、コネクタの他端が、後方鉛直支持体14,後方鉛直支持体15のそれぞれの上部に取り付けられ、第2の対のコネクタであるコネクタ32,コネク33は、対応する左側の前方鉛直支持体11の下端と左側の後方鉛直支持体14の下端との間、及び、右側の前方鉛直支持体12の下端と右側の後方鉛直支持体15の下端との間のブレース(支え材)として水平方向に延在する。
【0027】
各後方鉛直支持体の底部にも、終端にキャップが設けられることができ、また、前方鉛直支持体に関して先に記載したように、車輪組立体が取り付けられ得る。後方鉛直支持体に車輪が取り付けられた歩行器は、さらに、車輪の回転速度を制御するためのブレーキ、例えばハンドブレーキを含み得る。別の実施形態において、各後方鉛直支持体の下端にグライド組立体が設けられる。グライド組立体は、或る範囲の適切な材料、例えば金属又はプラスチックから、様々な適切な形状及び寸法のいずれかを有してつくられ得る。特定の一実施形態において、後方鉛直支持体に、プラスチック製のマッシュルーム形状のグライドが設けられる。図1〜図7は、後方鉛直支持体14,15の下端の終端にグライド34,35が取り付けられている歩行器の実施形態を示す。
【0028】
前方鉛直支持体及び後方鉛直支持体は、横材、及び、1以上の対の硬質のコネクタと共に、歩行器のフレームを構成する。前方支持体及び/又は後方支持体に関する用語「鉛直」は、本文にて用いられる場合、鉛直、すなわち、水平面に対して垂直であることだけでなく、鉛直方向から任意の方向に45度まで傾斜した方向も含むものとする。
【0029】
ハンドルの第1の対が、フレームに、前方鉛直支持体の各々の上端にて取り付けられている。第1の対のハンドルの各々が、ハンドルが取り付けられた前方鉛直支持体から後方に延在し、ユーザが直立位置にあるときにユーザに把持されるように配置されている。第1の対のハンドルは、前方鉛直支持体に永久的に取り付けられることができ、又は、後に、調節、取り外し、及び/又は交換が可能であるように取り付けられ得る。調節可能なハンドルに、ロック又はクランプなどの機構が設けられることができ、これらの機構は、第1の対のハンドルと、第1の対のハンドルが取り付けられた前方鉛直支持体との相対移動
を、許容、抑制又は防止する。着脱可能なハンドルは、後に、ユーザのニーズに応じて、同じタイプの他のハンドルに、又は、異なる寸法、形状及び/又は材料でつくられたハンドルに取り替えられ又は交換され得る。前方鉛直支持体が少なくとも2つの部分を含む歩行器の実施形態において、第1の対のハンドルは、好ましくは、上方部分に配置される。このような実施形態において、第1の対のハンドルの地面からの高さは、異なる寸法のユーザに適合するように容易に調節されることができ、この調節は、4本の鉛直支持体全てにおいて前記部分を調節することによってではなく、前方鉛直支持体の上方部分のみを移動させることにより行われ得る。図1〜図5及び図7は、第1の対のハンドルであるハンドル36及びハンドル37が、それぞれ前方鉛直支持体11及び前方鉛直支持体12の上端に取り付けられた歩行器の一実施形態を示す。
【0030】
ハンドルの第2の対が、歩行器に、座位からの起立及び座位への着座における把持部として機能するように設けられる。この第2の対のハンドルは、後方鉛直支持体に、第1の対のハンドルより下の位置に、且つ第1の対のハンドルの後方に取り付けられ、また、第2の対のハンドルの幾何学的中央が後方鉛直支持体の荷重支持軸よりも後方になるように配置される。この位置において、第2の対のハンドルは、人間が座位から起立し、又は座位に着座するときに用いるための、容易に把持可能な、妨げられていない、人間工学に基づいた把持部をもたらす。
【0031】
ユーザが着座し得る座席の前縁が、仮想の鉛直面と一致していることが図から把握できる。座位から立位に起立するとき、又は、立位から座位に着座するとき、人間は、特に、身体の重心を、この仮想鉛直面の一方の側から他方の側へ移動させなければならない。この体重移動を補助するために人間が自分の手を使うとき、体重移動の全体を通じての、人間に対する把持部の位置が、このような把持部が補助をもたらす範囲に影響する。従来の歩行器においては、後方鉛直支持体が、座席の前縁と一致する仮想鉛直面と歩行器のハンドルとが交差することを妨げる。従って、このような歩行器を用いて着座した人間が起立位置まで立ち上がるときに、面を横切って配置され且つ人間の重心の位置から離れたハンドルを掴まなくてはならない。本発明の歩行器の第2の対のハンドルの幾何学的中央を後方鉛直支持体の荷重支持軸より後方に配置することにより、ハンドルは、前記仮想面の、着座している人間と同じ側に配置され得る。このようにすることで、ハンドルが、人間の重心付近に配置されることができ、これにより、立位に起立するときに、より大きい、梃子の原理による作用が加えられることを可能にする。
【0032】
第2の対のハンドルの使用中、フレームの荷重支持特性、及び、後方鉛直支持体に用いられている材料の剛性により、安定性が維持される。この安定性は、フレームの側方セクションが或る領域を画定し、荷重の少なくとも一部がこの領域の外側にかけられることを可能にする。
【0033】
第2の対のハンドルは、後方鉛直支持体に取り付けられて後方鉛直支持体から延在することができ、或いは、フレームと一体であることができ、後方鉛直支持体に1対の硬質のコネクタを取り付けるときに通される構造物の一部であり得る。ハンドルは、後方鉛直支持体に永久的に取り付けられることができ、又は、後に調節及び/又は除去することを可能にするように取り付けられ得る。調節可能なハンドルには、ロック又はクランプなどの機構が設けられることができ、これらの機構は、第2の対のハンドルと、第2の対のハンドルが取り付けられた後方鉛直支持体との相対移動を、許容、抑制又は防止する。着脱可能なハンドルは、ユーザのニーズに応じて、後に、同じタイプの他のハンドルに、又は、異なる寸法、形状及び/又は材料のハンドルに取り替えられ、又は交換され得る。
【0034】
フレームと一体に形成された第2の対のハンドルを有する歩行器の実施形態が図1〜図7に示されている。第2の対のハンドル38,39は、第1の対のハンドル36,37か
ら、第2の対のハンドル38,39の使用が妨害されないように十分に間隔を有して配置されている。第2の対のハンドル38,39は、後方鉛直支持体14,15の底部に配置されたグライド34,35から、予め決められた距離を有して配置されている。この配置は、着座したユーザが、座位から立ち上がるとき又は座位に着座するときに第2の対のハンドル38,39を快適に把持できるような位置である。図4に示されているように、第2の対のハンドル38,39の幾何学的中央は、後方鉛直支持体14,15の荷重支持軸より後方に位置している。この位置において、ハンドルは、着座状態の人間により容易にアクセス可能である。
【0035】
歩行器には、さらに、歩行器のフレームに固定されるように又は調節可能に取り付けられた座席が設けられ得る。座席付き歩行器の1つのタイプが、バティストンに付与された米国特許第6,371,142号に開示されており、この開示の全てを援用して本文の記載の一部とする。座席付き歩行器の一実施形態において、座席は、人間が起立又は歩行の際に歩行器を用いるときに邪魔にならないほぼ垂直の位置と、座席として使用されるためのほぼ水平位置との間を移動可能であるように、座席の一端が、前方鉛直支持体又は横材に枢動可能に取り付けられている。ほぼ水平の下げられた位置において、座席は、ブレース及び/又はコードにより支持され得る。一実施形態において、前方鉛直支持体と後方鉛直支持体とを連結している硬質のコネクタも、座席を支持するためのブレースとして働く。図1〜図7は、横材13に取り付けられ且つ硬質のコネクタ32,33により支持される座席40を有する一実施形態を示す。座席には、ほぼ垂直の位置とほぼ水平の位置との間の移動を容易にするためのハンドルがさらに設けられ得る。図1及び図5〜図7は、座席40の一実施形態を示し、この実施形態において、ハンドル41が座席40の後縁の中央に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の歩行器の一実施形態の前方斜視図。
【図2】図1に示した歩行器の前面図。
【図3】図1に示した歩行器の後面図。
【図4】図1に示した歩行器の側面図。
【図5】図1に示した歩行器の上面図。
【図6】図1に示した歩行器の底面図。
【図7】図1に示した歩行器の後方斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、該フレームは、上端及び下端を各々が有する1対の前方鉛直支持体、及び第1の横方向端及び第2の横方向端を有する硬質の横材からなる前方セクションを有することと、前記該硬質の横材は前方鉛直支持体間に配置され、且つ、前方鉛直支持体に前記横方向端にて取り付けられることと、前記フレームは、2つの側方セクションを有し、各側方セクションが後方鉛直支持体からなることと、前記後方鉛直支持体は、上端、下端、及び各後方鉛直支持体の下端における地面係合点を通って形成される荷重支持軸を有することと、前記側方セクションの各々は、前方セクションに、硬質のコネクタにより連結されていることと、
ユーザが起立又は歩行位置にあるときにユーザを支持するために配置された第1の対のハンドルと、前記第1の対のハンドルは前方鉛直支持体の各々の上端にてフレームに取り付けられるとともに後方に延在することと、
ユーザが座位から起立するとき又は座位に着座するときにユーザを支持するために、前記第1の対のハンドルより下に、且つ第1の対のハンドルより後方に配置された第2対のハンドルと、第2の対のハンドルの各々の幾何学的中央は、後方鉛直支持体の各々の荷重支持軸より後方に位置することとを備える、歩行器。
【請求項2】
前記側方セクションが開放位置にある第1位置と、前記側方セクションが閉鎖位置にある第2位置との間で前記側方セクションが枢動可能に移動することを可能にするための1対の枢動軸をさらに備える、請求項1に記載の歩行器。
【請求項3】
枢動軸が前方鉛直支持体に沿って配置された請求項2に記載の歩行器。
【請求項4】
枢動軸が横材の横方向端に配置された請求項2に記載の歩行器。
【請求項5】
1対のロック機構をさらに備え、前記ロック機構が、前記側方セクションが開放位置又は閉鎖位置にロックされることを可能にする請求項2に記載の歩行器。
【請求項6】
前記フレームがアルミニウム管からなる請求項1に記載の歩行器。
【請求項7】
前記鉛直支持体が、各々、少なくとも2つの同軸状の管状部分からなり、前記管状部分が軸方向の相対移動を可能にする請求項6に記載の歩行器。
【請求項8】
前記鉛直支持体がさらにロック機構を備え、前記ロック機構が、前記管状部分の軸方向の相対移動を制限する請求項7に記載の歩行器。
【請求項9】
前記第1の対のハンドルが、前記前方鉛直支持体の上端に対して調節可能である請求項1に記載の歩行器。
【請求項10】
前記第2の対のハンドルの各々が、後方鉛直支持体の各々の上端にてフレームに取り付けられ、且つ後方に延在している請求項1に記載の歩行器。
【請求項11】
前記第2の対のハンドルが前記後方鉛直支持体に対して調節可能である請求項10に記載の歩行器。
【請求項12】
前記第2の対のハンドルの各々がフレームと一体である請求項1に記載の歩行器。
【請求項13】
前方鉛直支持体及び後方鉛直支持体のうちの少なくとも一方の下端に取り付けられた車輪をさらに備える、請求項1に記載の歩行器。
【請求項14】
車輪の回転速度を制御するための少なくとも1つのハンドブレーキをさらに備える、請求項13に記載の歩行器。
【請求項15】
前方鉛直支持体及び後方鉛直支持体のうちの少なくとも一方の下端に取り付けられたグライドをさらに備える、請求項1に記載の歩行器。
【請求項16】
前記グライドが、各々、鉛直支持体の下端と係合するためのステム部、及び、面と係合するためのキャップ部を含む請求項15に記載の歩行器。
【請求項17】
前記フレームに取り付けられた座部をさらに備え、前記座部が、ほぼ鉛直位置に配置された第1位置と、座部がユーザのための座席をもたらすようにほぼ水平である第2位置との間を移動可能である請求項1に記載の歩行器。
【請求項18】
私物品を運ぶためにフレームに取り付けられた少なくとも1つの区画をさらに備える請求項1に記載の歩行器。
【請求項19】
前記前方鉛直支持体の少なくとも1つに、前記鉛直支持体の上端にて、ポール又はツールを受け入れるように適合された取付け点が設けられている請求項1に記載の歩行器。
【請求項20】
請求項1に記載の歩行器を提供するステップを含む、座位から起立する人間を補助するための方法。
【請求項21】
フレームと、該フレームは上端及び下端を有した前方鉛直支持体からなることと、前記フレームはまた、2つの側方セクションを有し、各側方セクションが後方鉛直支持体からなることと、前記後方鉛直支持体は、上端、下端、及び各後方鉛直支持体の下端における地面係合点を通って形成される荷重支持軸を有することと、前記側方セクションが、各々、前方セクションに、硬質のコネクタにより連結されていることと、
ユーザが起立又は歩行位置にあるときにユーザを支持するために配置された第1の対のハンドルと、前記第1の対のハンドルがフレームに取り付けられ、且つ後方に延在することと、
ユーザが座位から起立するとき又は座位に着座するときにユーザを支持するために、前記第1の対のハンドルより下に、且つ第1の対のハンドルより後方に配置された第2の対のハンドルと、第2の対のハンドルの各々の幾何学的中央が、後方鉛直支持体の各々の荷重支持軸より後方に位置することとを備える、歩行器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−503264(P2007−503264A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524800(P2006−524800)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/027471
【国際公開番号】WO2005/020867
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506067604)
【氏名又は名称原語表記】KARASIN,Craig E.