説明

歩行型薬剤施用苗株移植機

【課題】簡易な構成で施用タイミングを確実に合わせて規定量の薬剤を苗に対して適切に施用することができる歩行型薬剤施用苗株移植機を提供する。
【解決手段】歩行型薬剤施用苗株移植機は、変速伝動装置(7)に主車輪(10)および歩行操作用の操縦ハンドル(8)を設けた機体と、その変速伝動装置(7)の後方で昇降駆動される植付ホッパ(3)によって苗株を植付けする植付装置と、薬剤を定量吐出する繰出機構(52)を備えた薬剤施用装置(51)とを備えて構成され、上記薬剤施用装置(51)は、植付装置と操縦ハンドル(8)との間の位置に配置するとともに、植付ホッパ(3)の昇降駆動動作を受けて繰出機構(52)を連動駆動する繰出伝動機構(55)を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速伝動装置に主車輪および歩行操作用の操縦ハンドルを設けた機体に植付装置と薬剤施用装置とを備える歩行型薬剤施用苗株移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
変速伝動装置に主車輪および歩行操作用の操縦ハンドルを設けた機体に植付装置と薬剤施用装置とを備える歩行型薬剤施用苗株移植機において、植付けするべき各苗株について規定量の薬剤(肥料や殺菌剤や殺虫剤などの薬剤)を施用するためには、植付ホッパのタイミングと合わせるとともに、株間距離の変更に対応するための複雑な伝動系による薬剤吐出手段を要し、コスト上およびメンテナンス上の問題を避けることができないことから、この問題を解決するために、特許文献1に示される薬剤施用装置を備えた植付装置が知られている。
【0003】
この苗株移植機の植付装置は、投入苗株を受ける周回カップを備えた回転テーブルによる苗株供給装置に薬剤施用装置を設けることによって簡易かつ確実に規定量の薬剤を施用しつつ、その下方で上下動作する植付ホッパによって苗株を圃場に植付けすることができる。
【特許文献1】特開2000−125619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成の薬剤施用装置は、周回カップ内の苗に上方から薬剤が供給される構成であるために、苗の葉や茎に薬剤が大量に付着してしまって、苗が薬害を受けてしまい、移植後の苗の成育に問題があった。また、植付けする苗株を移送するカップ内に薬剤が付着したり植付具に付着することがあり、施用量のバラツキを招くという問題があった。
【0005】
解決しようとする問題点は、簡易な構成で施用タイミングを確実に合わせて規定量の薬剤を苗に対して適切に施用することができる歩行型薬剤施用苗株移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、変速伝動装置に主車輪および歩行操作用の操縦ハンドルを設けた機体と、その変速伝動装置の後方で昇降駆動される植付ホッパによって苗株を植付けする植付装置と、薬剤を繰出す繰出機構を備えた薬剤施用装置とを備える歩行型薬剤施用苗株移植機において、上記薬剤施用装置は、植付装置と操縦ハンドルとの間の位置に配置するとともに、植付ホッパの昇降駆動動作を受けて繰出機構を連動駆動する繰出伝動機構を設けたことを特徴とする。
上記薬剤施用装置は、植付装置と操縦ハンドルの間で、機体バランスが改善されるとともに、植付装置の前側に乗用作業座席を設けた場合を含め、作業者から直近位置となり、また、繰出機構が近接の植付装置から繰出伝動機構によって連動駆動される。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、前記繰出伝動機構は、一方向送りによる間欠伝動部材を介して繰出機構に伝動することを特徴とする。
上記薬剤施用装置の薬剤は、間欠伝動部材によって間欠施用される。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1の構成において、前記繰出機構は、機体の前後方向にロール軸線を向けた定量繰出ロールを備えることを特徴とする。
上記苗株移植機は、定量繰出ロールのロール軸線が機体の前後方向なので、繰出機構の前後位置に繰出伝動機構と繰出量調節部が配置される。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3の構成において、前記薬剤施用装置は、繰出機構と薬剤タンクを一体に構成するとともに、機体幅方向に延びる横断フレームによってスライド移動可能に支持したことを特徴とする。
上記薬剤施用装置は、一体の繰出機構と薬剤タンクの着脱の際に、横断フレームが機体幅方向のスライドガイドとして機能する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1の構成において、前記機体には、植付装置の直近に鎮圧装置の支持フレームを設け、この支持フレームに薬剤施用装置を装荷したことを特徴とする。
上記薬剤施用装置は、植付装置の直近の鎮圧装置の支持フレームにを装荷されて鎮圧ウェートとして機能し、また、植付けた苗株の直近位置の鎮圧装置から最短距離で薬剤が施用される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明の歩行型薬剤施用苗株移植機は、植付装置と操縦ハンドルとの間に薬剤施用装置を配置したことから、薬剤施用装置の繰出伝動機構が、近接する植付装置によって簡易に構成することができるのみならず、機体バランスの改善とともに、植付装置の前側に乗用作業座席を設けた場合の薬剤タンクの確認操作を含め、操縦ハンドル側からの薬剤タンクの視認性を損なうことなく、施用タイミングを確実に合わせて規定量の薬剤を苗に対して適切に施用することができる。
【0012】
請求項2の発明の歩行型薬剤施用苗株移植機は、請求項1の効果に加え、簡易な間欠伝動部材により、薬剤を集中点播可能に薬剤施用装置を構成することができる。
【0013】
請求項3の発明の歩行型薬剤施用苗株移植機は、請求項1の効果に加え、機体の前後方向をロール軸線とする定量繰出ロールを備えることにより、繰出機構の前側に繰出伝動機構、後側に繰出量調節部を構成することができるので、簡易な伝動構成で調節操作が容易な薬剤施用装置を構成することができる。
【0014】
請求項4の発明の歩行型薬剤施用苗株移植機は、請求項3の効果に加え、繰出機構と薬剤タンクを一体に機体幅方向にスライド移動して着脱可能となることから、薬剤タンクの残量排出操作や機器のメンテナンスの際に、機体外側の広いスペースを利用して薬剤施用装置を容易に着脱することができる。
【0015】
請求項5の発明の歩行型薬剤施用苗株移植機は、請求項1の効果に加え、植付装置の直近の鎮圧装置の支持フレームに薬剤施用装置を装荷したことから、鎮圧ウェートを兼ねつつ、植付けた苗株の直近から時間遅れを抑えて施用タイミング精度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る歩行型薬剤施用苗株移植機の側面図である。
この発明の実施の一形態の2条植え苗株移植機を以下に説明する。尚、以下の説明では、操縦ハンドル8を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン6を配置した側を前とする。そして、機体後部において機体前部側に向って立つ作業者の右手側を右とし、左手側を左とする。
【0017】
機体2は、前部にエンジン6、及び変速伝動装置であるミッションケース7を配置して、その後方に延びるフレーム2cの後端部に操縦ハンドル8を設け、ミッションケース7の両側に張出す左右アクスルハウジング9の周りに回動する回動筒部9aに各々上下揺動する左右の車輪伝動ケース1を設け、この車輪伝動ケース1の後端部に設けた車軸11に主車輪10を軸装して、これら左右の車輪10と、機体2前端部に設けた前輪軸12に軸装した左右の前輪13とによって走行する構成にしている。また、エンジン6の上側には燃料タンク6bが設けられ、その上部をボンネット6cが覆い、このボンネット6cの上方に苗株を投入する作業者用の座席33を設ける。
【0018】
機体2には左右の車輪10を上下動させて機体高さを制御する機体制御機構が設けられている。この機体制御機構は、ミッションケース7の上に配置した油圧バルブユニットから後方に向けて昇降アクチュエータとしての昇降油圧シリンダ15が設けられ、該昇降油圧シリンダ15のピストンロッドの先端部に機体左右方向に長いアームとしての連動アーム16が上下方向の軸まわりに回動自在に取り付けられている。ピストンロッドは、前部が油圧バルブユニットに支持され後部が機体2に固着された取付部材2aに支持されたガイド軸2bに沿って摺動するようになっている。連動アーム16の左右両端部と、回動筒部9aに固着した左右のハウジングアーム14とが、連結体としての左右ロッド18を介して連結されている。左側の左ロッド18は、ローリングシリンダ17が組み込まれており、該ローリングシリンダ17を伸縮作動させることにより長さを変えられるようになっている。
【0019】
昇降油圧シリンダ15及びローリングシリンダ17は、各々作動油を油圧バルブユニット内の昇降制御バルブとローリング制御バルブとで制御して作動させられる。昇降油圧シリンダ15を伸縮作動させると、左右車輪10が同方向に同量だけ機体に対し上下動し、機体が昇降する。また、ローリングシリンダ17を伸縮作動させると、左車輪10が機体に対し上下動し、機体が左右に傾斜する。
【0020】
5は畝上面を検出する昇降センサであって、該昇降センサ5が上下回動すると、その回動を連結ロッドにて昇降制御バルブに伝え、昇降センサ5の角度が元に戻る方向に昇降油圧シリンダ15を作動させる。これにより、畝の上面から機体までの高さを一定に維持するように機体を昇降制御し、畝の高さ変更に係わらず常に苗の植付深さが一定になるように制御され、植付後の苗の成育が良い。
【0021】
なお、油圧バルブユニット内のローリング制御バルブは後述の左右鎮圧具4の相対高さの変動による畝A上面の左右傾斜検出に連動して切り替わるようになっており、機体が左右に傾斜するとローリングシリンダ17が適宜作動し、機体を左右水平に戻すように制御する。また、操縦ハンドル8の基部には操作パネル8aが設けられ、該操作パネル8aに、昇降制御バルブを手動操作して機体を手動にて上下動させると共に植付部の駆動を止める植付昇降レバー8bとメインクラッチの入・切操作をするメインクラッチレバー8cが設けられている。
【0022】
即ち、一方のハウジングアーム14と連動アーム16の側端部との間を連結する一側部の前記ローリングシリンダ17の伸縮によって、この側の車輪10を、他側部の前記ロッド18によって連結された側の車輪10に対して昇降させて、機体2をローリングさせて、機体2の左右傾斜を水平にしたり、土壌面に対して平行状にすることができ、機体2の左右傾斜姿勢を制御することができる。そして、このような昇降制御は、後述の昇降センサ5の検出により行い、ローリング制御は、苗植位置の植付けた苗に対して左右側部から鎮圧作用を行なう鎮圧具4によって左右傾斜状態を検出して行うものである。
【0023】
ここにおいて、左右の車輪伝動ケース1を上下揺動可能に設けた苗植機において、機体左右方向に2つ並列して配置した左右の植付具である植付ホッパ3による左右各苗植付位置を鎮圧する左右鎮圧具4の上下揺動によってローリング制御する構成である。植付ホッパ3の昇降によって圃場に植付けた苗の左右側方を鎮圧具4によって鎮圧し、苗植付姿勢を安定した状態とする。このとき、左右の苗植付位置を各々鎮圧する左右鎮圧具4の支持フレーム4aを、苗植付土壌面の左右傾斜を検出するセンサとして機能する構成にしている。左右の各鎮圧具4は、左右の苗植位置毎に独立的に上下揺動して、この揺動位置の高さの差異によって植付土壌面の左右傾斜を検出して、これらの土壌面の傾斜検出によって前記一方の車輪伝動ケース1を上下に揺動させて、機体2を土壌面と左右平行状に維持するようにローリング制御する。
【0024】
また、前記左右の車輪伝動ケース1の非苗植位置への揺動(左右車輪10を最下動させて機体を最も上昇させた状態)によって、左右両鎮圧具4を非接地高さへ上昇するように連動構成している。即ち、機体を高く上昇させるときは、左右車輪伝動ケース1を最下動させて機体2を非苗植姿勢に上昇させ、左右鎮圧具4が非作用姿勢位置へ連動して上昇され、機体2の走行旋回の邪魔にならない状態となり、容易に機体の旋回が行える。
【0025】
前記植付ホッパ3は、左右一定間隔位置に配置の2条植え構成として、左右車輪10間の後側幅内に配置している。機体2の後部には、ターンテーブル構成に複数の苗カップ19を連接して回転搬送する苗供給装置20を設け、この苗供給装置20の機体後側の下側に植付ホッパ3を左右に2つ配置している。この苗カップ19を左右方向へ回転することによって、機体2上部の補助苗受台21に予め搭載されている苗トレイから苗を取出しながら各苗カップ19へ供給する。この各苗カップ19が回転して植付ホッパ3の上側に位置したときは、カップ底部のシャッタが開かれて、収容していた苗を下側の植付ホッパ3に落下供給する構成である。
【0026】
この植付ホッパ3は、苗植ブラケット22に対して左右へ開閉回動可能に設けられて、上側に前記苗カップ19から供給される苗を落下案内するホッパ23を有し、植付伝動機構である苗植伝動ケース24に対して平行リンクアーム25、26を介して昇降駆動する構成としている。前記苗植伝動ケース24は機体2のフレーム部に固着して、前記ミッションケース7部から伝動構成される。この伝動機構の一部によって回転されるクランクアーム軸27によってロッド28を介して上側のリンクアーム25が昇降回動されて、植付ホッパ3を上下方向に軌跡Pにて植付作動する。
【0027】
前記苗植ブラケット22のレバー29と下側のリンクアーク26の基端部に形成のアーム30との間はワイヤ31で連結して、植付ホッパ3の昇降に伴って、この植付ホッパ3を開閉するものである。前記クランクアーム軸27の回転によって植付ホッパ3を略楕円形状の植付軌跡Pを描いて昇降させると共に、この上死点直前位置から下降する行程ではこの植付ホッパ3を閉鎖状態とし、最下降位置で開き上昇行程は開いたままである。
【0028】
左右植付ホッパ3は、苗植伝動ケース24に装着した位置から大きく左右外側方に変位した位置になるように構成している。即ち、左側の植付ホッパ3は、苗植伝動ケース24に対して平行リンクアーム25、26を介して昇降駆動する構成としているが、該平行リンクアーム25、26は苗植伝動ケース24に装着された基部から機体左外側に向けて折り曲げた構成としており、該平行リンクアーム25、26の先端部に装着される左植付ホッパ3の前方には空間部が構成された構造となっている。後述の左車輪10の左右位置調節(トレッド調節)により、この空間部に左車輪10を位置させることができ、左苗植付位置のすぐ近傍に左車輪10を配置することができる。
【0029】
同様に、右側の植付ホッパ3は、苗植伝動ケース24に対して平行リンクアーム25、26を介して昇降駆動する構成としているが、該平行リンクアーム25、26は苗植伝動ケース24に装着された基部から機体右外側に向けて折り曲げた構成としており、該平行リンクアーム25、26の先端部に装着される右植付ホッパ3の前方には空間部が構成された構造となっている。後述の右車輪10の左右位置調節(トレッド調節)により、この空間部に右車輪10を位置させることができ、右苗植付位置のすぐ近傍に右車輪10を配置することができる。従って、畝Aの左右端のぎりぎりの位置に苗を植付けが行える。
【0030】
(薬剤施用装置)
薬剤施用装置51は、苗供給装置20と操縦ハンドル8の間に繰出機構52と薬剤タンク53を配置し、繰出機構52から案内ホース54を接続し、条間調節によっても苗位置との関係が固定されるように下端の吐出口を鎮圧装置4の支持フレーム4aに取付ける。薬剤タンク53は、増量ホッパとして使用できるように、口径を予備薬剤53aのボトル径と同じにする。繰出機構52の繰出ロール52aは、株間が変わっても点播間隔が維持されるように、植付ホッパ3の苗植ブラケット22の上下動作と連動するリンクを連結し、条間調節のないリンクから回動駆動する繰出伝動機構55を設ける。繰出機構52は、ラチェット等の一方回動による間欠伝動部材52bを備え、連続回転または動作を間欠動作に変換して薬剤を点播する。
【0031】
このように、苗供給装置20と操縦ハンドル8の間に薬剤施用装置51を配置することにより、操縦ハンドル8の旋回操作時でも、乗車走行時でも、薬剤タンク53の確認が容易となり、また、後方バランスとすることにより、ハンドル押し下げ荷重を低減できる。
【0032】
また、薬剤施用装置51のロール中心位置は、図1の苗株移植機の要部背面図を図2に示すように、条間調節による薬剤落下までのタイムラグが変化しないように、スライドする案内ホース54の最大条間と最小条間の中心位置とする。案内ホース54の吐出口の基本位置は、苗の植付け位置よりも畦の中央寄りとすることにより、畦の左右外側が落ち込んで薬剤が降雨によって流れ易い台形畦の場合に対応することができる。薬剤位置の微調節は、鎮圧装置4の支持フレーム4aをレールとして前後方向に調節する。
【0033】
(スライド支持構成)
次に、スライド支持構成の薬剤施用装置61について説明する。なお、以下において、前記同様の部材は、その符号を付すことにより説明を省略する。
この薬剤施用装置61は、要部側面図および背面図をそれぞれ図3,図4に示すように、繰出機構62の定量繰出ロール62aの軸線を機体の前後方向に向け、車幅方向に延びる横断フレーム63によって機体の外側方向に着脱可能に支持する。ロール62aの前側にはラチェットによる間欠伝動部材62bを介して繰出伝動機構64と連結し、後側には繰出量調節ノブ62cを設ける。繰出伝動機構64のリンクは、上死点付近の作動をカットするために、長穴連結部64aを介設して構成する。
【0034】
上記構成の薬剤施用装置61は、繰出伝動機構64のリンクを左右方向に向けて構成できるので、アーム比設定の自由度が増し、繰出ロール62aの送り量の変更が容易となる。繰出量については、操縦ハンドル8側に位置する繰出量調節ノブ62cにより、乗車前に容易に確認することができるとともに、調節操作も容易である。また、一体構成のタンク53の残量取出しの際は、横断フレーム63による車幅方向のスライド操作により外側方の広いスペースを利用して容易に着脱可能なので、機体の前後方向に植付装置3等が近接して十分な操作スペースがとれなくても、操作性を確保することができる。
【0035】
(鎮圧輪フレーム装荷)
次に、鎮圧輪フレーム装荷の薬剤施用装置について説明する。この薬剤施用装置71は、要部側面図および背面図をそれぞれ図5,図6に示すように、支持スプリング4bを連結した鎮圧装置4の支持フレーム4aに本体部を装荷する。繰出機構72の繰出ロール72aにはその揺動駆動用の繰出アーム72bを設け、この繰出アーム72bに作用する作用アーム73を植付ホッパ3に取付けて植付ホッパ3と連動する繰出伝動機構を構成し、支持フレーム4aに案内ホース74を固定する。
【0036】
このように薬剤施用装置71を構成することにより、案内ホース74の落下位置を固定したままで条間調節することができるので、最短の落下距離でタイムラグを最小限まで抑えることができるとともに、その自重を鎮圧装置の鎮圧荷重として有効に利用することができる。
【0037】
また、鎮圧輪4には、放射状のリブ4cを内側面Bに形成し、この内側面Bを外側に傾斜して薬剤が当たる位置に案内ホース74の吐出口を固定する。リブ4cは、鎮圧輪4の中心部を高く外周側を徐々に低くすることにより、鎮圧輪4が回動するまで上部に受けた薬剤を一時的に保持し、鎮圧輪4の回転に伴って鎮圧前の植え穴に確実に入れることができる。
【0038】
(植付けホッパ装荷)
次に、植付けホッパ装荷の薬剤施用装置について説明する。この薬剤施用装置81は、その要部側面図を図7(a)に示すように、ゴムボール入りの薬剤ホッパ81aを植付ホッパ3に取付け、植付けた苗株の株元近くに薬剤を落とすように案内ホース82を取付け、その下端に吐出機構83を設けて構成する。吐出機構83は、その拡大図を同図(b)に示すように、圃場面を検出するためのローラー構造の感知部84を一体に構成した弁体85をリターンスプリング85aによって閉鎖状態に軸支する。薬剤ホッパ81aは、案内ホース82の角度変化を抑えるように案内ホース82の接続口を植付ホッパ3に近接して形成する。感知部84には、弁体85の開閉タイミングおよび開放角度を変化させて施用量を調節するために、検出位置調節用のアジャスタ84aを設ける。
【0039】
上記構成の薬剤施用装置81は、植付ホッパ3が下降して感知部84が圃場面によって突き上げられることにより弁体85が開放されて案内ホース82から薬剤が吐出される。その弁体85については、内面にスポンジゴムを貼り付けておくことによって薬剤を密閉保持することができ、また、弁体85の開き側を植付ホッパ3に向けることにより、植付けた苗株の株元に近接して薬剤を施用することができる。
【0040】
(植付部カバー内配置)
次に、植付部カバー内配置の薬剤施用装置について説明する。この薬剤施用装置91は、その要部側面図を図8に示すように、苗供給装置20の下部を覆って設けた植付部カバー92の内部に薬剤ホッパ91aをフレーム2cに取付けて構成する。薬剤ホッパ91aから連通する案内ホース93の下端には、ホースホルダ94を取付けて開閉可能にシャッタ94aを設け、畦面高さに合わせて薬剤を落とすように、取付ステーを介して鎮圧輪の支持フレーム4aにホースホルダ94を取付ける。ホースホルダ94には、前後方向の位置調節部94bを設け、鎮圧輪の覆土前に薬剤を落として薬剤が株元に寄せられるように位置を定める。
【0041】
シャッタ94aは開閉レバー94cを一体に構成し、リターンスプリングを取付けてホースホルダ94に軸支するとともに、開閉レバー94cに作用する作用部95を植付ホッパ3から突設することにより、植付ホッパ3の下降位置と対応してシャッタ94aが開いて薬剤が吐出される。
【0042】
上記薬剤ホッパ91aは、機体後部から投入操作するための投入口91bを傾斜して形成することにより、薬剤投入の際の操作性を確保することができる。また、開閉レバー94cは、長さ調節可能に構成することにより、シャッタ94aの開き具合を調節して薬剤吐出量を調節することができる。機体旋回の際は、鎮圧輪の支持フレーム4aの上昇によってシャッタ94aを含むホースホルダ94が上昇することから、畦面に引きずることなく容易に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る歩行型薬剤施用苗株移植機の側面図
【図2】図1の苗株移植機の要部背面図
【図3】スライド支持構成の薬剤施用装置の要部側面図
【図4】図3の薬剤施用装置の背面図
【図5】鎮圧輪フレーム装荷の薬剤施用装置の要部側面図
【図6】図5の薬剤施用装置の背面図
【図7】植付けホッパ装荷の薬剤施用装置の要部側面図(a)とその拡大図(b)
【図8】植付部カバー内配置の薬剤施用装置の要部側面図
【符号の説明】
【0044】
2 機体
2c フレーム
3 植付ホッパ(植付装置)
4 鎮圧輪(鎮圧装置)
4a 支持フレーム
7 変速伝動装置
8 操縦ハンドル
10 主車輪
20 苗供給装置
33 座席
51 薬剤施用装置
52 繰出機構
52a 繰出ロール
52b 間欠伝動部材
53 薬剤タンク
55 繰出伝動機構
61 薬剤施用装置
62 繰出機構
62a 繰出ロール
62b 間欠伝動部材
62c 繰出量調節ノブ
63 横断フレーム
64 繰出伝動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速伝動装置(7)に主車輪(10)および歩行操作用の操縦ハンドル(8)を設けた機体と、その変速伝動装置(7)の後方で昇降駆動される植付ホッパ(3)によって苗株を植付けする植付装置と、薬剤を繰出す繰出機構(52)を備えた薬剤施用装置(51)とを備える歩行型薬剤施用苗株移植機において、
上記薬剤施用装置(51)は、植付装置と操縦ハンドル(8)との間の位置に配置するとともに、植付ホッパ(3)の昇降駆動動作を受けて繰出機構(52)を連動駆動する繰出伝動機構(55)を設けたことを特徴とする歩行型薬剤施用苗株移植機。
【請求項2】
前記繰出伝動機構(55)は、一方向送りによる間欠伝動部材(52b)を介して繰出機構(52)に伝動することを特徴とする請求項1記載の歩行型薬剤施用苗株移植機。
【請求項3】
前記繰出機構(52)は、機体の前後方向にロール軸線を向けた定量繰出ロール(52a)を備えることを特徴とする請求項1記載の歩行型薬剤施用苗株移植機。
【請求項4】
前記薬剤施用装置は、繰出機構(62)と薬剤タンク(65)を一体に構成するとともに、機体幅方向に延びる横断フレーム(63)によってスライド移動可能に支持したことを特徴とする請求項1記載の歩行型薬剤施用苗株移植機。
【請求項5】
前記機体には、植付装置の直近に鎮圧装置(4)の支持フレーム(4a)を設け、この支持フレーム(4a)に薬剤施用装置を装荷したことを特徴とする請求項1記載の歩行型薬剤施用苗株移植機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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