説明

歩行支援装具

【課題】歩行を容易にするばかりでなく、日常の歩行が大腿四頭筋のストレッチングにもなり、しかも特に体裁を気にする使用者用として好適な歩行支援装具を提供する。
【解決手段】 腰部取付帯1と一対の工状の膝関節装着サポータ5,6とから成り、前記腰部取付帯1には両端に接合面積を大きくした面ファスナー2a,2bを取付けると共に、中央部の2箇所に下端に留め具の雄部材3aを設けたゴムを織り込んだ2本の膝関節引上げ用弾性伸縮ベルトを取り付ける。前記工状の膝関節装着サポータ5,6の突出部5a,5b,5c,5d及び6a,6b,6c,6dにはそれぞれ面ファスナー7a,7a,7b,7b及び8a,8a,8b,8bを設け且つ各膝関節装着サポータ5,6の一つの突出部5a,6bにそれぞれ留め具の雌部材3b、3bを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高齢化社会に伴い、これを支えるさまざまな製品開発が試みられている。本発明もその一つで、ウォーキングやトレッキング時の歩行支援並びに、高齢者の歩行支援に有用な歩行支援装具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
60歳の膝の伸展能力は、平均的には40歳のときの7割程度になり、65歳から75歳までの高齢者の約半数は、5kgの荷物を持てなくなる。
【0003】
このため、高齢者は特に立ち上がりや中腰姿勢、歩行動作に困難さを感じており、次第に移動が億劫になり、筋力特に収縮力と収縮の早さが運動神経に追従しなくなり、脚が充分上がらなくなって、階段や1〜2cm程度の段差のある場所で躓き、怪我をすることが多くなる。
【0004】
この問題を解消するために、従来は膝を手で曲げて引き付ける運動や、片膝を前にして曲げ、後方に足を伸ばす運動、あるいは片膝を曲げて座り、体を後方に倒す運動等によって大腿四頭筋に対するストレッチングを行っている。しかし乍、これらのストレッチングを毎日行うことは煩わしいので忘れがちである。
【0005】
一方、特許文献1や特許文献2に示すような、歩行補助装具を体に装着してトレーニングする方法が提案されているが、リハビリテーション用としてはよいが、外見を重要視する現代においては、日常装具としては好ましいものとは言えず、また着脱の使い勝手に難があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭63−186452号公報
【特許文献2】特開平6−238012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、歩行を容易にするばかりでなく、日常の歩行が大腿四頭筋のストレッチングにもなり、しかも特に体裁を気にする使用者用として好適な歩行支援装具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、請求項1記載の発明は、腰部取付帯と一対の工状の膝関節装着サポータとから成り、これら腰部取付帯と工状の膝関節装着サポータの何れか一方に留め具の一方を、他方には、先端に前記留め具の相手方を設けた膝関節引上げ用弾性伸縮ベルトを取付けると共に、前記弾性伸縮ベルトの取付位置を大腿部の前部に配置したことを特徴とする歩行支援装具である。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、腰部取付帯と工状の膝関節装着サポータは接合面積を大きくした面ファスナーによって装着するものを使用したことを特徴とする歩行支援装具である。
【0010】
膝関節引上げ用弾性伸縮ベルトの長さは、前記腰部取付帯を装着した場合の位置と工状の膝関節サポータを装着した場合の位置の距離よりも短く設定する。そして、その長さは着用者の身長や体力などによって異なるので、膝関節引上げ用弾性伸縮ベルトの長さは、調整できるように構成することが好ましい。例えば、日字状部を設けた留め具を用いるようにし、この日字状部に膝関節引上げ用弾性伸縮ベルトの端部を潜らせて長さを調整するようにする。
【0011】
使用方法は、腰部取付帯を仙腸関節付近に装着すると共に、左右の脚に工状の膝関節装着サポータをそれぞれ装着した後、留め具を結合させて膝関節引上げ用弾性ベルトを腰部取付帯又は工状の膝関節装着サポータに連結させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる歩行支援装具を体に装着した場合、直立時に、膝関節引上げ用弾性ベルトが伸ばされ腰部取付帯と膝関節装着サポータ間にテンションが加えられることになるので、前方に移動する時や階段を昇る時に、大腿四頭筋の収縮力を支援し、脚を上げる行為の助けとなり、歩行を軽快にする。特に階段を昇る時の脚を上げる速度を加速して躓きを防止する効果がある。また、脚を下げる時は、膝関節引上げ用弾性ベルトを伸張させるために必要な後部大腿四頭筋の収縮力を要するので、大腿四頭筋のストレッチング効果がある。
【0013】
しかも、膝関節引上げ用弾性ベルトの両端は、膝関節にしっかりと固定された膝関節サポータと腰部取付帯に連結する方式のため、膝関節に引上げ用弾性ベルトが緩むことがなく、前進時に確実に膝を上げることが出来、階段を昇る時、蹴躓くことがない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
そして、留め具を外す事により膝関節引上げ用弾性ベルトを自由にすれば、日常の起居に支障なくすることができ、その留め具の着脱は、簡単容易であるから、使い勝手に優れている。
【0015】
図面は、本発明の実施の一例を示すもので、図1は留め具結合前即ち、日常生活時の本発明にかかる歩行支援装具の装着状態を示す正面図、図2は、腰部取付帯の展開平面図、図3は片側の突出部を開いた左右の膝関節装着サポータの正面図である。
【0016】
図において、1は弾性素材で作られた腰部取付帯で、図2に示すように両端には接合面積を大きくした面ファスナー2a、2bが取付けられ、中央部の2箇所に、下端に留め具の雄部材3aを設けたゴムを織り込んだ2本の膝関節引上げ用弾性伸縮ベルト4,4が垂下取付けられている。
【0017】
5,6は図3に示すように工状の膝関節装着サポートで、4箇所の突出部5a,5b,5c,5d及び6a,6b、6c,6dには面ファスナー7a,7a、7b,7b及び8a,8a、8b,8bがそれぞれ取付けられ、また上部の突出部の一つ5a,6bに留め具の雌部材3b,3bが取付けられている。
【0018】
なお、この実施例では、膝関節引上げ用弾性伸縮ベルト4,4の長さは、装着時の腰部取付帯1の下縁と工状の膝関節サポータ6,6の上縁間の長さの1/2強の長さに、即ち留め具の雄部材3aと雌部材3bを結合した時テンションを生じる長さに設定されている。
【0019】
本発明にかかる実施例に示す歩行支援装具は、通常肌着の上に装着して使用する。即ち腰部取付帯1は、図1に示すように仙腸関節付近の肌着上に巻きつけるようにして装着する。そして工状の膝関節サポータ5、6は股引を着用している場合は、その上に、また股引を着用していない場合は、直接膝関節に巻き付けるようにして装着する。
【0020】
そして、次に腰部取付帯1から垂下している膝関節引上げ用伸縮ベルト4,4の留め具の各雄部材3a,3aを雌部材3b,3bにそれぞれ結合させる。この結合操作は、男性の場合、ズボンを下げれば容易に行うことができ、またスカート、ワンピースを着用した女性の場合は裾をあげれば頗る簡単に行うことができる。
【0021】
このように本歩行支援装具を着用した場合、膝関節引上げ用伸縮ベルト4が前脚を上げる時に力を貸して、老化した時や疲労時に、ややもすると上がらない足を健常時と同様の速度で支障を起こさない位置まで上げて、特に階段上昇時の蹴躓きを未然に防ぎ、また、後脚に着用の膝関節引上げ用伸縮ベルト4は伸張されて収縮力を増すために、弾みを付け、歩行を軽快にする効果と研究に膝関節を引き上げる効果がある。
【0022】
一方両脚には歩行時に繰り返し負荷が掛かる事になるので、歩行自体が大腿四頭筋のストレッチングになる効果がある。
【0023】
そして、この実施例における腰部取付帯1は、背柱と骨盤の整骨効果があり、腰痛解消にも役立つ効果があり、また膝関節装着サポータは膝関節のズレを防止する効果と確実に膝関節を引き上げる効果がある。
【0024】
以上説明したように、本歩行支援装具を着用することにより、老化及び疲労時における躓きを軽減すると共に、大腿四頭筋のストレッチング並びに歩行の軽快化に効果があり、高齢者は勿論のこと、ウォーキングやトレッキングを行う人々の歩行支援装具として有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例の留め具結合前(日常生活時)の正面図。
【図2】片側の突出部を開いた左右の膝関節装着サポータの正面図。
【図3】腰部取付帯の展開平面図。
【符号の説明】
【0026】
1 腰部取付帯
2a 面ファスナー
3a 留め具の雄部材
3b 留め具の雌部材
4 弾性伸縮ベルト
5,6 膝関節装着サポータ
7a,7b 面ファスナー
8a,8b 面ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰部取付帯と一対の工状の膝関節装着サポータとから成り、これら腰部取付帯と工状の膝関節装着サポータの何れか一方に留め具の一方を、他方には、先端に前記留め具の相手方を設けた膝関節引上げ用弾性伸縮ベルトを取付けると共に、前記弾性伸縮ベルトの取付位置を大腿部の前部に配置したことを特徴とする歩行支援装具。
【請求項2】
腰部取付帯と工状の膝関節装着サポータは接合面積を大きくした面ファスナーによって装着するものを使用したことを特徴とする請求項1記載の歩行支援装具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−36367(P2011−36367A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185830(P2009−185830)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(591116092)株式会社福原鋳物製作所 (23)