歩行補助器
【課題】ハンドル部の位置を自在に調節し、使用者が無理のない姿勢で安全に歩行可能な歩行補助器を提供する。
【解決手段】歩行補助器は、車台1と、その上部に取り付けられたハンドル部2とを含み、車台1に対するハンドル部2の傾斜角度を変更し上下に首振りさせる機構と、車台1に対してハンドル部2を左右に首振りさせる機構とを備えている。ハンドル部2の上下首振り機構を構成する角度調節板30は、嵌合凹溝33を有し、ハンドル部2の下部に設けられている。嵌合凹溝33は、角度調節板30の板面に円弧状に設けられている。連結ロッド31は、一端が角度調節板30に揺動可能に軸止めされている。嵌合凸片38は、連結ロッド31において、嵌合凹溝33に嵌合可能な位置に取り付けられ、嵌合凹溝33に嵌合された状態で連結ロッド31の揺動を規制し、傾斜角度θを固定する。
【解決手段】歩行補助器は、車台1と、その上部に取り付けられたハンドル部2とを含み、車台1に対するハンドル部2の傾斜角度を変更し上下に首振りさせる機構と、車台1に対してハンドル部2を左右に首振りさせる機構とを備えている。ハンドル部2の上下首振り機構を構成する角度調節板30は、嵌合凹溝33を有し、ハンドル部2の下部に設けられている。嵌合凹溝33は、角度調節板30の板面に円弧状に設けられている。連結ロッド31は、一端が角度調節板30に揺動可能に軸止めされている。嵌合凸片38は、連結ロッド31において、嵌合凹溝33に嵌合可能な位置に取り付けられ、嵌合凹溝33に嵌合された状態で連結ロッド31の揺動を規制し、傾斜角度θを固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行補助器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、高齢者や傷病者、身体障害者(障害者等)の単独歩行を補助する器具として、例えば特許文献1に開示されているような歩行補助器が知られている。特許文献1の歩行補助器は、車台と、ハンドル部とを含み、ハンドル部は、一対の肘掛部を有し、車台の上部に設けられている。
【0003】
ところで、この種の歩行補助器の使用者の多くは障害者等であるから、歩行補助器には、使用者が無理のない楽な姿勢で歩行できるように、ハンドル部の位置を自在に調節しうることが求められる。
【0004】
これに対し、特許文献1の歩行補助器では、ハンドル部の位置を自在に調節することができない。その結果、使用者がハンドル部を把持して歩行するときに、肘や腕が肘掛部からずれ落ち、甚だしくは肘掛部を脇に抱え込むようにして歩行せざるを得ないような不具合が生じる。このような無理な姿勢での歩行を強いられると、使用者の体に負担がかかり疲れやすくなるとともに、予期せぬ転倒や傷病の悪化を招く。
【0005】
また、歩行補助器の使用者は障害者等であるから、ハンドル部の位置を調節する操作は、片手でも簡単に行える程度に単純であることが求められるところ、特許文献1の歩行補助器では、該要請に充分に応えることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−126192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、使用者が無理のない姿勢で歩行可能な歩行補助器を提供することである。
本発明のもう1つの課題は、ハンドル部の位置を自在に調節しうる歩行補助器を提供することである。
本発明の更にもう一つの課題は、ハンドル部の位置の調節操作が簡単である歩行補助器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明に係る歩行補助器は、車台と、その上部に取り付けられたハンドル部とを含み、車台に対するハンドル部の傾斜角度を変更し上下に首振りさせる機構と、車台に対してハンドル部を左右に首振りさせる機構とを備えている。
【0009】
ハンドル部の上下首振り機構は、角度調節板と、連結ロッドと、嵌合凸片とを有している。角度調節板は、嵌合凹溝を有し、ハンドル部の下部に設けられている。嵌合凹溝は、角度調節板の板面に円弧状に設けられている。連結ロッドは、長手方向の一端が角度調節板に揺動可能に軸止めされている。嵌合凸片は、連結ロッドにおいて、嵌合凹溝に嵌合可能な位置に取り付けられ、嵌合凹溝に嵌合された状態で連結ロッドの揺動を規制し、車台に対するハンドル部の傾斜角度を固定する。
【0010】
上述したように、本発明に係る歩行補助器は、ハンドル部の上下首振り機構と、ハンドル部の左右首振り機構とを備え、ハンドル部の上下首振り機構を構成する角度調節板は、ハンドル部の下部に設けられており、連結ロッドは、長手方向の一端が角度調節板に揺動可能に軸止めされている。この構成によると、ハンドル部を、連結ロッドの軸止め箇所を支点として揺動させ、車台に対するハンドル部の傾斜角度を変更させることにより、ハンドル部を上下に首振りさせることができる。従って、ハンドル部の位置を自在に調節しうる歩行補助器を提供することができる。
【0011】
さらに、ハンドル部の上下首振り機構は、上述したハンドル部の揺動を規制する機構として嵌合凸片を有している。より詳細に説明すると、角度調節板は板面に円弧状の嵌合凹溝を有しており、連結ロッドは嵌合凹溝上を揺動可能に接続されている。嵌合凸片は、連結ロッドにおいて、嵌合凹溝に嵌合可能な位置に取り付けられ、嵌合凹溝に嵌合された状態で連結ロッドの揺動を規制し、車台に対するハンドル部の傾斜角度を固定する。この構成によると、ハンドル部を上下に首振りさせて所望の傾斜角度に配置した後、その首振り位置で嵌合凸片を嵌合凹溝に嵌合させ、固定することができる。従って、使用者が無理のない姿勢で歩行可能な歩行補助器を提供することができる。
【0012】
しかも、本発明に係るハンドル部の上下首振り機構によると、嵌合凸片を嵌合凹溝に嵌合させる簡単な操作で連結ロッドの揺動が規制され、車台に対するハンドル部の傾斜角度が固定される。従って、ハンドル部の位置の調節操作が簡単である歩行補助器を提供することができる。
【0013】
ハンドル部の左右首振り機構において、車台は、支持フレームを有し、支持フレームは、車台の上部に突出する突出端を有しており、連結ロッドは、長手方向の他端が支持フレームの突出端に軸回転可能に接続されており、継手具は、支持フレームの他端と、連結ロッドの突出端との接続部分に着脱可能に取り付けられ、取り付けられた状態で、連結ロッドの軸回転を規制する、との構成をとることもできる。この構成によると、連結ロッドを、支持フレームに対して軸回転させることにより、ハンドル部を左右に首振りさせることができる。従って、歩行補助器使用者の姿勢に追従して、ハンドル部の位置を自在に調節することができる。
【0014】
ハンドル部の左右首振り機構は、継手具を有し、継手具は、支持フレームの他端と、連結ロッドの突出端との接続部分に着脱可能に取り付けられ、取り付けられた状態で、連結ロッドの軸回転を規制するから、ハンドル部を左右の首振り位置を調節した後、そのまま固定することができる。従って、ハンドル部の位置を調節するための操作が簡単である。
【0015】
本発明に係る歩行補助器は、さらに車台に対するハンドル部の高さ位置を調節する機構を備え、ハンドル部の高さ位置調節機構は、可動軸と、固定具とを含み、可動軸は、長手方向の一端が連結ロッドに接続され、ハンドル部を高さ方向に沿って上下動させ、固定具は、可動軸の中間部分に着脱可能に結合し、結合した状態で可動軸の上下動を規制する、との構成をとることもできる。この構成によると、歩行補助器の使用者の身長に追従して、ハンドル部の高さ位置を自在に調節することができる。この構成おいても本発明に係る歩行補助器を構成するハンドル部は、上下および左右に首振しうるから、使用者は無理のない楽な姿勢で安全に歩行することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)使用者が無理のない姿勢で歩行可能な歩行補助器を提供することができる。
(2)ハンドル部の位置を自在に調節しうる歩行補助器を提供することができる。
(3)ハンドル部の位置の調節操作が簡単である歩行補助器を提供することができる。
【0017】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る歩行補助器の斜視図である。
【図2】図1の歩行補助器の側面図である。
【図3】図2の歩行補助器の一部を拡大して示す側面図である。
【図4】図3の歩行補助器の一部を取り出して示す側面図である。
【図5】図2の歩行補助器の一部を拡大して示す正面断面図である。
【図6】図5の歩行補助器の別の状態について一部を拡大して示す正面断面図である。
【図7】図2の歩行補助器の一部を拡大して示す正面断面図である。
【図8】図2の歩行補助器の一部を取り出して示す斜視図である。
【図9】図2の歩行補助器の一部を拡大して示す正面断面図である。
【図10】図2の歩行補助器の一部を拡大して示す側面断面図である。
【図11】図10の歩行補助器の別の状態について一部を拡大して示す側面断面図である。
【図12】図10の歩行補助器の別の状態について一部を拡大して示す側面断面図である。
【図13】本発明のもう一つの実施形態に係る歩行補助器の側面図である。
【図14】図13の歩行補助器を変形した介助用車椅子の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1乃至図14において同一符号は、同一又は対応部分を示すものとする。図1及び図2の歩行補助器は、車台1と、その上部に設けられた一対のハンドル部2、2とを含む。車台1は、歩行補助器の幅方向Wに間隔を隔てて向かい合う一対の車体フレーム10、10と、複数の車輪15と、座椅子部16とを有している。
【0020】
車体フレーム10は、側面視、三角形状であって、軽量化の観点から内部に中空部を有する金属パイプによって構成されている。より詳細に説明すると、車体フレーム10は、下部フレーム11と、側部フレーム12とを有している。下部フレーム11は該三角形状の底辺に相当する部分であり、側部フレーム12は該三角形状の頂部を形成する2辺に相当する部分である。側部フレーム12の頂部には、支持フレーム120が形成されている。支持フレーム120は、歩行補助器の高さ方向Hでみた車台1の上部に突出し、突出端においてハンドル部2を支持している。
【0021】
複数の車輪15は、歩行補助器の前後方向Fでみた下部フレーム11の両端付近の下部において、回転自在に設けられている。側部フレーム12の下部には、後側の車輪15の回転を規制するためのサイドブレーキ17が設けられている。
【0022】
座椅子部16は、座面160と、背もたれ161とを含み、高さ方向Hでみた側部フレーム12の略中央に設けられている。座面160は、前後方向F及び幅方向Wに所定の広さを持っており、一対の側部フレーム12を幅方向Wに架橋している。背もたれ161は、側部フレーム12に着脱可能に設けられ、その着脱位置が、前後方向Fでみた座面160の前方又は後方の何れかの位置に選択可能である。
【0023】
幅方向Wでみて左右一対となるハンドル部2、2は、肘掛台20と、グリップ部21と、管状部分22とを有している。肘掛台20は、凹面201を有し、前後方向Fでみたグリップ部21の後方に設けられている。凹面201は、その開口部分が高さ方向Hでみた上方を指向するように配置されている。
【0024】
管状部分22は、肘掛台20の下部において、肘掛台20の延長方向と一致する前後方向Fに沿って固定されている。グリップ部21は、高さ方向Hに立ち上がった円柱状の部分であり、その基部がスライドロッド23の一端に固定されている。スライドロッド23は、他端が管状部分22の内部に案内され、管状部分22にスライド可能に挿入されている。違う言葉で表現すれば、管状部分22は、肘掛台20の下部において、スライドロッド23を前後方向Fに沿ってスライド可能に収納している。
【0025】
スライドロッド23は、管状部分22に取り付けられた調整ねじ70によって、前後方向Fに沿ったスライド動作が規制又は許可されている。スライドロッド23は、調整ねじ70を緩めることで、管状部分22から取り外して分離しうることが好ましい。
【0026】
図1及び図2の歩行補助器は、上述した歩行補助器の基本的構成に加え、車台1に対するハンドル部2の傾斜角度θを変更し上下に首振りさせる機構(図3参照)と、車台1に対してハンドル部2を左右に首振りさせる機構(図7、図8参照)とを備えている点に特徴の一つがある。以下、ハンドル部2の上下首振り機構、及び、左右の首振り機構について、対応する図を参照しながら説明する。
【0027】
まず、図3の上下首振り機構は、角度調節板30(図4参照)と、連結ロッド31とを含む。図4の角度調節板30は、基板部32と、嵌合凹溝33と、軸止め孔34とを有している。基板部32は、側面視、略半円形状の金属板体であって、直線状の端縁に相当する部分が肘掛台20の下部に設けられ、好ましくは管状部分22の下部において前後方向Fに沿って垂設されている。
【0028】
嵌合凹溝33は、傾斜角度θを設定するガイド溝として機能するものであって、溝の中心を通る線a1が、基板部32の板面において略円弧状となるように設けられている。嵌合凹溝33は、基板部32を板厚方向Wに貫通する貫通構造を有し、その開口端縁が、高さ方向Hで向かい合う2つの縁部331、332で構成されている。縁部331、332のそれぞれは、基板部32の板面において同心状に形成され、軸止め孔34に向かって凹凸を繰り返す鋸歯状となっている。
【0029】
嵌合凹溝33において、縁部331の凸部の頂点を結んだ線a2、縁部331の凹部の角を結んだ線a3、縁部332の凸部の頂点を結んだ線a4、縁部332の凹部の角を結んだ線a5は、全て軸止め孔34を中心とする同心円弧となっている。軸止め孔34は、線a1〜a5の円弧の中心の位置に設けられ、基板部32を、その板厚方向に一致する幅方向Wに貫通している。
【0030】
図4の角度調節板30は、図3、図5及び図6に示すように、連結ロッド31と組み合わされる。連結ロッド31は、長手方向に一致する高さ方向Hの一端が角度調節板30に揺動可能に軸止めされ、他端が支持フレーム120に着脱可能に挿入されている。より詳細に説明すると、連結ロッド31は、高さ方向Hの一端に、ハウジング310と、弾性部材36と、レバー部37と、嵌合凸片38とを有し、高さ方向Hの一端が軸止め孔34に軸止めされ、嵌合凹溝33上を揺動可能に接続されている。
【0031】
ハウジング310は、半割り構造を有し、上部がボルト及びナットで構成された止め具71によって一体化されており、下部が止め金具35によって連結ロッド31の一端に結合されている。さらに、ハウジング310は、第1の収納空間311と、第2の収納空間312と、収納空間311、312を連通する挿通孔313と、この挿通孔313に平行する挿通孔314とを有している。ハウジング310は、組み合わせ面に一対の凹部を有しており、組み合わされた状態で、凹部の相対向面間に第1の収納空間311が画定される。
【0032】
角度調節板30は、嵌合凹溝33が第1の収納空間311と重なり合う高さ位置において、ハウジング310の組み合わせ面に挟持され、挟持された状態で、軸止め孔34に挿通された止め具71によって揺動可能に固定されている。
【0033】
弾性部材36は、高さ方向Hでみて上下一対となる発条361、362で構成されている。発条361、362は、断面視コの字状(又はクリップ状)であって、前記コの字状の開口部が上下向かい合わせになる関係で配置され、一方の側壁部が他方の開口部に案内されることにより互い違いに重ね合わされた状態で、第2の収納空間312に収納されている。発条361、362は、側壁部の一方のみが、第2の収納空間312を画定する内壁に、螺子72により固定されている。この構成によると、側壁部の他方を引き上げ操作することにより、発条361、362の開口部が拡張され、引き上げ方向とは反対方向に矢印Pで示す付勢力が生じる。
【0034】
レバー部37は、主軸371と、ガイド軸372と、支軸373との組み合わせで構成されている。主軸371は、高さ方向Hでみた支軸373の中間部分において、支軸373に交差する関係で取り付けられており、さらに主軸371の軸方向に一致する幅方向Wへスライド可能な状態で、挿通孔313に挿通され、第1、第2の収納空間311、312を連通している。ガイド軸372は、支軸373の高さ方向Hの下部において、主軸371と平行する関係で支軸373に取り付けられており、さらにガイド軸372の軸方向に一致する幅方向Wへスライド可能な状態で挿通孔314に挿通されている。
【0035】
嵌合凸片38は、嵌合凹溝33に対して入れ子可能な構造を有し、連結ロッド31の一端部分において、嵌合凹溝33に嵌合可能な位置に取り付けられている。より詳細に説明すると、嵌合凸片38は、嵌合凹溝33の開口端縁の形状(鋸歯形状)に追従した外形形状を有し、第1の主軸371上に固定されている。嵌合凸片38は、収納空間311において主軸371を幅方向Wにスライドさせることにより、嵌合凹溝33の内部に出し入れされる。図5の嵌合凸片38は、嵌合凹溝33に嵌合されており、車台1に対するハンドル部2の傾斜角度θ、換言すれば角度調節板30に対する連結ロッド31の交差角度がθに固定されている。
【0036】
図5の状態の主軸371には、付勢力Pが加わっており、主軸371のスライド動作が規制されているから、嵌合凸片38が嵌合凹溝33から脱落する不具合が回避される。
【0037】
図3及び図5の状態から傾斜角度θを変更するには、レバー部37を操作して主軸371を幅方向Wに移動させ、嵌合凸片38を嵌合凹溝33から一旦離脱させる。図6の状態において、ハンドル部2は、連結ロッド31と角度調節板30との間に介在する止め具71によって、揺動可能に軸止めされているのみであるから、例えば肘掛台20に肘や腕を乗せた状態で、前端又は後端を高さ方向Hに傾けることにより、ハンドル部2の全体が止め具71を中心としてシーソー状に揺動する。使用者は、肘掛台20が適当な角度となった状態でレバー部37を操作し、ガイド軸372を支点として主軸371を幅方向Wに移動させ、嵌合凸片38を嵌合凹溝33に嵌合させることにより、ハンドル部2の揺動が規制され、傾斜角度θが固定される。主軸371には、弾性部材36により付勢力Pが加えられているから、レバー部37を操作して嵌合凸片38を嵌合凹溝33に速やかに案内することができる。
【0038】
次に、図1及び図2の歩行補助器を構成するハンドル部2の左右の首振り位置を調整するための機構(左右首振り機構)について、図7及び図8を参照して説明する。図7及び図8の左右首振り機構は、支持フレーム120と、連結ロッド31と、通し棒40と、継手具41と、ストッパー43によって構成されている。
【0039】
支持フレーム120は、凸部121を有している。図8(a)及び(c)に示す凸部121は、支持フレーム120の軸方向に一致する高さ方向Hでみた支持フレーム120の中間部から突出端までの外面において、周方向に沿って凹凸を繰り返す鋸歯状であって、高さ方向Hに沿って帯状に形成されている。例えば、凸部121は、支持フレーム120の高さ方向Hに沿って、鋸歯状の溝を切り込みで形成することができる。
【0040】
他方、連結ロッド31は、凸部315を有し、他端が支持フレーム120の高さ方向Hに配置され、支持フレーム120の突出端に接続されている。凸部315は、高さ方向Hでみた連結ロッド31の中間部から他端までの外面において、周方向に沿って凹凸を繰り返す鋸歯状であって、帯状に形成されている。凸部121と凸部315とは、断面でみて同一の凹凸構造となっており、高さ方向Hに重なり合うことができる。
【0041】
通し棒40は、連結ロッド31及び支持フレーム120の内部を連通し、一端が連結ロッド31の内部において軸周りに回転可能に結合され、且、他端が支持フレーム120の内部において軸周りに回転可能に結合されている。違う言葉で表現すれば、連結ロッド31は、内部に挿通された通し棒40によって、支持フレーム120に軸回転可能に接続されている。
【0042】
継手具41は、所謂カップリング具であって、筒状基体部分の内面に凹部42を有している。図8(b)に示す凹部42は、内面の周方向に沿って凹凸を繰り返す断面視鋸歯状であって、凸部315と同一の凹凸構造を有している。例えば、凹部42は、高さ方向Hに沿って鋸歯状の溝を切り込みで形成することができる。
【0043】
継手具41は、支持フレーム120の突出端と、連結ロッド31の他端との接続部分に跨り、且、同接続部分の外面を覆う態様で、高さ方向Hに沿ってスライド可能に取り付けられている。継手具41は、取り付けられた状態で凹部42が凸部121及び凸部315に一体的に凹凸嵌合し、連結ロッド31の軸回転を規制する。他方、継手具41を高さ方向Hに沿ってスライドさせ、支持フレーム120と連結ロッド31との接続部分から離脱させることにより、連結ロッド31の軸回転が許可される。
【0044】
ストッパー43は、継手具41のスライド動作を規制するものであって、連結ロッド31の外面に着脱可能に掛止られている。ストッパー43は、連結ロッド31側に配置された場合には上げ止まりとなり、支持フレーム120側に配置された場合(図示しない)には下げ止まりとなる。
【0045】
図7及び図8の左右首振り機構によると、例えば肘掛台20に肘や腕を乗せた状態で、肘掛台20を左右に首振りさせることにより、ハンドル部2全体が連結ロッド31の周方向に沿って左右に回転する。使用者は、肘掛台20の左右の首振り位置が適当な位置となった状態で、継手具41を支持フレーム120と連結ロッド31との接続部分に嵌合させることにより、連結ロッド31の軸回転が規制され、ハンドル部2の左右の首振り位置が固定される。
【0046】
図1及び図2の歩行補助器は、図5及び図6の上下首振り機構と、図7及び図8の左右首振り機構とに加え、さらに肘掛台20の下部に操作レバー6を有しており、この操作レバー6を操作することによりハンドル部2の高さ位置を調節することができる。以下、図9乃至図12を参照して、ハンドル部2の高さ位置を調節するための機構を説明する。
【0047】
まず、図9及び図10の高さ位置調節機構は、可動軸51と、ケーシング52と、一対の固定具53、54と、第1の弾性部材55(引き上げ発条)と、第2の弾性部材56(引き戻し発条)と、連動ワイヤ57と、回転ドラム58と、操作ドラム59と、操作ワイヤ60とを有している。
【0048】
可動軸51は、断面視、四角形形状の金属製棒状体であって、可動軸51の軸方向(高さ方向)Hに沿った長手寸法を有し、4つの側面のうちの一面に複数の係合歯510を有している。係合歯510は、前記一面から突出し、突出端が高さ方向Hで見た下側に向けて斜めに立ち上がっている。複数の係合歯510は、高さ方向Hに間隔を隔てて等配され、高さ方向Hに隣接する係合歯510の突出端の間に、下向きの開口部が形成されている。係合歯510は、波形状の切り込み又は彫り込みによって構成することができる。
【0049】
可動軸51は、車台1を構成する側部フレーム12の内部に高さ方向Hにスライド可能に収納され、一端が連結ロッド31に螺子止めされており、高さ方向Hにスライド動作することにより、連結ロッド31を介して、図1及び図2のハンドル部2全体を高さ方向Hに沿って上下動させる。
【0050】
ケーシング52は、側部フレーム12の中間部分に設けられ、周壁によって画定された収納空間に、固定具53、54と、第1、第2の弾性部材55、56と、連動ワイヤ57と、回転ドラム58とが収納され、外部側面に操作ドラム59が設置されている。
【0051】
固定具53、54のそれぞれは、長手方向の一方に係合端531、541を有し、係合端531、541は、長手方向の一方に向かうに従って厚みが減少する先細り形状を有している。固定具53、54のそれぞれは、高さ方向Hに間隔を隔てて上下一対となるように配置されている。より詳細に説明すると、固定具53、54のそれぞれは、係合端531、541が、係合歯510に向かう合う関係で上向きに配置され、配置された状態で、隣接する係合歯510の突出端の間に、係合端531、541が案内されている。固定具53は、固定具54の係合機能を補助するものであって、ケーシング52の内部側面に揺動可能に軸止めされている。
【0052】
第1、第2の弾性部材55、56は、固定具53、54のそれぞれに取り付けられている。第1の弾性部材55は、所謂引き上げ発条であって、一端が係合端531、541に取り付けられ、係合端531、541に対して可動軸51から離れる方向M1に付勢力を加えている。他方、第2の弾性部材56は、所謂引き戻し発条であって、一端が軸を経由して係合端531、541に結合され、係合端531、541に対して可動軸51へ近づく方向M2に付勢力を加えている。
【0053】
回転ドラム58は、高さ方向Hでみた固定具53、54の間において、ケーシング52の内部側面に回転可能に軸止めされている。連動ワイヤ57は、両端のそれぞれが、高さ方向Hに隣接する第1の弾性部材55の端部に結合され、中間部分が回転ドラム58に巻きつけられ、又は、結合されている。
【0054】
操作ドラム59は、ケーシング52の外部側面において、回転ドラム58を軸止めしている軸580に取り付けられている。すなわち、軸580はケーシング52の側壁部分を内面から外面に貫通し、内面において回転ドラム58を軸止めし、外面において操作ドラム59を軸止めしている。この構造によると、例えば、操作ドラム59を、指でつまんで回転操作することにより、回転ドラム58を右回転及び左回転させるこができる。
【0055】
操作ワイヤ60は、一端が操作レバー6(図1及び図2)に接続されており、他端がケーシング52の内部に案内され、固定具54に結合されている。図10の固定具54は、高さ方向Hでみた上側に操作ワイヤ60の一端が結合され、高さ方向Hでみた下側に第3の弾性部材61の一端が結合されている。第3の弾性部材61は、他端が高さ方向Hに向かい合うケーシング52の内部底面に結合されている。すなわち、固定具54は、操作ワイヤ60によって高さ方向Hに吊り下げられ、吊り上げられた状態で、高さ方向Hでみた反対側(下側)が第3の弾性部材61によって引き下げられていることにより、ケーシング52の内部において、高さ方向Hに上下動可能な宙吊り状態で配置されている。
【0056】
操作レバー6は、本体部分に収納された巻き上げ機構(図示しない)を操作するものであり、高さ方向Hに上げ下げ操作することにより、操作ワイヤ60が巻き上げ機構に巻き上げられ、又は、操作ワイヤ60が巻き上げ機構から繰り出される。
【0057】
図9及び図10の高さ位置調節機構の操作方法には、ハンドル部2を高さ方向Hに上下動させる場合(図11)と、ハンドル部2を高さ方向Hの上側にのみ引き上げる場合(図12)とがある。以下、個別具体的に説明する。
【0058】
ハンドル部2を高さ方向Hに上下動させる場合、使用者は、まず、図10に示すように回転ドラム58を回転(例えば右回転R1)させる。回転ドラム58の回転操作は、軸580を介して接続されている操作ドラム59を、直接、指でつまんで行うことができる。回転ドラム58を右回転R1させたとき、回転ドラム58によって連動ワイヤ57が巻き取られることにより、第1の弾性部材55を介して、係合端531、541が可動軸51から離れる方向M1に引き上げられ、係合歯510から離脱する(図11参照)。
【0059】
図11に示すように、係合端531、541が係合歯510から離脱した状態では、可動軸51のスライド動作に対する規制が失われるから、使用者は、例えばグリップ部21などを把持して高さ方向Hに引き上げ、又は、押し下げることにより、ハンドル部2全体を上下動させ、適当な高さ位置に調節することが可能となる。
【0060】
その後、ハンドル部2を適当な高さ位置で固定するには、上述した解除操作と逆の手順によって行うことができる。簡単に説明すると、操作ドラム59を操作し、回転ドラム58を逆方向に回転(例えば左回転R2)させることにより、回転ドラム58から連動ワイヤ57が繰り出され、係合端531、541が可動軸51に近づく方向M2に降下し、係合歯510に係合する。係合端531、541が、係合歯510に係合することにより、再び可動軸51のスライド動作に対して規制が加えられる。係合端531、541には第2の弾性部材56の他端が結合され、可動軸51へ近づく方向M2に付勢力が加えられているから、係合歯510に対する係合端531、541の降下動作は円滑に行われる。
【0061】
次に、ハンドル部2を高さ方向Hの上側にのみ引き上げる場合、使用者は、まず、図12に示すように、操作レバー6を1ストローク分操作して、操作ワイヤ60を巻き上げることにより、固定具54が、高さ位置H1から位置H2に1ストローク分だけ引き上げられる。この固定具54の引き上げ動作によって、係合端541と当接する係合歯510が、高さ位置H2に引き上げられ、その結果、可動軸51を介して、ハンドル部2全体が高さ方向Hの上側に1ストローク分だけ引き上げられる。
【0062】
他方、固定具53は、所定の位置において揺動することにより、係合端531が、高さ方向Hに引き上げられる係合歯510の突出端を順次乗り越える。その後、固定具54の引き上げ動作が停止した位置(高さ位置H2)で、係合端531が、向かい合う係合歯510の突出端の間に案内されることにより、可動軸51のスライド動作が一時的に規制される。
【0063】
一方、固定具54は、固定具53が可動軸51を一時的に規制している状態で、第3の弾性部材61の付勢力によって、元の高さ位置H1に引き戻される。引き戻された固定具54は、元の高さ位置H1で、係合端541が、向かい合う係合歯510の突出端の間に案内されることとなり、可動軸51のスライド動作が、固定具53、54の両方によって規制される。
【0064】
上述した操作レバー6による1ストローク分の引き上げ操作を、所定の回数(数ストローク分)繰り返すことにより、ハンドル部2全体を少しづつ引き上げ、適当な高さ位置に調節することが可能となる。
【0065】
図1乃至図12を参照して説明した歩行補助器の構造によると、以下の効果を奏することができる。まず、歩行補助器を構成するハンドル部2は、グリップ部21の後方に一対の肘掛台20が設けられ、しかも、かかる一対の肘掛台20のそれぞれには上向きに窪んだ凹面201が形成されているから、使用者は腕や肘を凹面201に沈み込ませてグリップ部21を把持することができ、歩行移動時に使用者の肘や腕が肘掛台20からずれ落ちることを防止することができる。よって、肘や腕を介して体重をかけても安定して歩行移動を行うことが可能となり、また、下半身への加重負担を抑制し、姿勢を保った歩行移動も可能となる。
【0066】
ところで、この種の歩行補助器の使用者の多くは、高齢者や傷病者、身体障害者(障害者等)であるから、歩行補助器には、使用者が無理のない楽な姿勢で歩行できるように、ハンドル部の位置を自在に調節しうることが求められる。例えば、従来の歩行補助器では、ハンドル部(2)が水平状態、又は、相互に平行な状態で固定され、使用者の腕の曲がりや姿勢に合った肘掛台(20)の配置を実現することができず、肘や腕が肘掛部からずれ落ち、甚だしくは肘掛部を脇に抱え込むようにして歩行せざるを得ないような不具合が生じる。このような無理な姿勢で歩行すると、使用者の体に負担がかかり疲れやすくなるとともに、予期せぬ転倒や傷病の悪化を招く。また、従来の歩行補助器では、使用者はグリップ部(21)に頼りがちで体が自然と前のめりになり、前輪(15)への加重による躓きや跳ね上がり転倒、傷病の悪化を招く恐れもあった。
【0067】
さらに、歩行補助器の使用者は障害者等であるから、ハンドル部の位置を調節する操作は、片手でも簡単に行えることが求められる。
【0068】
図1乃至図12の歩行補助器は、上述した2つの要請に応えるため、ハンドル部2の上下首振り機構(図3乃至図6参照)と、ハンドル部2の左右首振り機構(図7及び図8参照)とを備え、上下および左右に首振しうる点に特徴の一つがある。
【0069】
まず、ハンドル部2の上下首振り機構は、図3乃至図6を参照して説明したように、ハンドル部2の下部には角度調節板30が設けられており、この角度調節板30に、連結ロッド31の一端が揺動可能に軸止めされている。この構成によると、ハンドル部2を、連結ロッド31の軸止め箇所を支点として揺動させ、車台1に対するハンドル部2の傾斜角度θを変更させることにより、ハンドル部2を上下に首振りさせることができる。従って、歩行補助器使用者の姿勢に追従して、ハンドル部2の傾斜角度θを自在に調節しうる歩行補助器を提供することができる。
【0070】
さらに、ハンドル部2の上下首振り機構は、傾斜角度θを固定する機構として、嵌合凹溝33と、嵌合凸片38とを有している。角度調節板30は、板面に円弧状の嵌合凹溝33を有しており、連結ロッド31は嵌合凹溝33上を揺動可能に接続されている。嵌合凸片38は、連結ロッド31において、嵌合凹溝33に嵌合可能な位置に取り付けられ、嵌合凹溝33に嵌合された状態で連結ロッド31の揺動を規制し、傾斜角度θを固定する。この構成によると、ハンドル部2を上下に首振りさせて所望の傾斜角度θに配置した後、その首振り位置で固定することができる。従って、使用者が無理のない姿勢で歩行可能な歩行補助器を提供することができる。
【0071】
しかも、図3乃至図6のハンドル部2の上下首振り機構によると、レバー部37の簡単な操作によって、嵌合凸片38が嵌合凹溝33に嵌合され、傾斜角度θが固定される。従って、ハンドル部2の位置の調節操作が簡単である歩行補助器を提供することができる。
【0072】
次に、ハンドル部2の左右首振り機構は、図7及び図8を参照して説明したように、車台1を構成する支持フレーム120の突出端と、連結ロッド31の他端とが軸回転可能に接続されている。この構成によると、使用者は、例えば、肘掛台20に肘や腕を乗せた状態で、肘掛台20を左右に首振りさせることにより、ハンドル部2全体を左右に首振りさせることができる。従って、歩行補助器使用者の姿勢に追従して、ハンドル部2の位置を自在に調節することができる。
【0073】
また、ハンドル部2の左右首振り機構は、連結ロッド31の軸回転を規制する機構として、継手具41を有するとともに、支持フレーム120の外面に凸部121が設けられ、連結ロッド31の他端部分の外面に凸部315が設けられている。継手具41は、凹面201を有しており、支持フレーム120と連結ロッド31との接続部分に着脱可能に取り付けられ、取り付けられた状態で、凹面201が凸部121及び凸部315に一体的に凹凸嵌合し、連結ロッド31の軸回転を規制する。この構造によると、ハンドル部2の左右の首振り位置を調節した後、その所望の位置で固定することができる。
【0074】
しかも、継手具41の着脱操作は、高さ方向Hにスライドさせることにより行うことができるから、ハンドル部2の位置を調節するための操作が簡単であり、障害者等であっても容易に操作することができる。
【0075】
さらに、図1及び図2の歩行補助器は、図9乃至図12を参照して説明したように、車台1に対するハンドル部2の高さ位置を調節する機構を備えている。図9乃至図12のハンドル部2の高さ位置調節機構は、可動軸51と、固定具53、54とを含み、可動軸51は、一端が連結ロッド31に接続され、ハンドル部2を高さ方向Hに沿って上下動させ、固定具53、54は、可動軸51の中間部分に着脱可能に結合し、結合した状態で可動軸51の上下動を規制する。この構成によると、歩行補助器の使用者の身長に追従して、ハンドル部2の高さ位置を自在に調節することができる。この構成おいてもハンドル部2は、上下および左右に首振しうるから、使用者は無理のない楽な姿勢で安全に歩行することができる。
【0076】
ハンドル部2の上下及び左右の首振り機構は、各操作は電池類やセンサーなど電子機構の使用を控え、全ての操作をレバーの上下動などの構造的な機構で実現されている。したがって、従来の歩行器が締め込み方式の摘みねじで行っていたのとは異なり、障害者等にとって操作しやすいものである。
【0077】
上述したように、図1乃至図12の歩行補助器を構成する一対の肘掛台20は、前後方向Fや幅方向Wに首振り可能であり、且、高さ方向Hにも位置調節が可能であるから、使用者の腕の曲がりや姿勢、身長に合った肘掛台20の配置を実現することができ、腕や肘が肘掛台20からはみ出したり、前のめりになったりすることを防止することができる。よって、肘掛台20の凹面201の既述の作用と相俟って、体重をかけた歩行移動の安定性を一層高めることができた。
【0078】
グリップ部21は、一対の肘掛台20に対して、肘掛台20における凹面201の前後方向Fに沿ってスライド可能であるので、腕の長さや肘の位置など使用者の身体的特徴に合わせて、グリップ部21と一対の肘掛台20との最適な距離を実現することができる。これによっても、凹面201の存在や肘掛台20の首振り機構と相俟って、体重をかけた歩行移動の安定性を一層高めることができる。
【0079】
グリップ部21の位置や肘掛台20の上下首振り中心となる支持フレーム120の突出端は、図2から分るように前後の車輪15との間に位置している。このため、使用者からの加重が前後の車輪15に分散し、躓きや跳ね上がり転倒を防止することができる。なお、かかる防止効果は、上述した肘掛台20及びグリップ部21の相対距離調整機構や肘掛台20の首振り機構と組み合わされていることで、一層高められている。
【0080】
図13は本発明のもう一つの実施形態に係る歩行補助器の側面図、図14は図13の歩行補助器を変形した介助用車椅子の側面図である。これまで、歩行補助器は、本来の使用態様に限られ、他の用途に用いることは想定されていなかった。しかしながら、図1乃至図12の歩行補助器においては、図13及び図14に示す介助用車椅子への変形が可能となっている。しかも、上述したように安定した歩行移動を行うことが可能となった歩行補助器において、歩行補助器及び介助用車椅子への変形ができるようになっている。
【0081】
図13の歩行補助器の変形は次のような手順で行われる。図1及び図2の歩行補助器において、調整ねじ70を緩め、支持フレーム120から連結ロッド31を取り外すと共に、管状部分33からスライドロッド23を取り外す。そして、図13に示されるように、グリップ部21が後方を指向するように、スライドロッド23を支持フレーム120に挿入する。図13の歩行補助器は、図1乃至図12を参照して説明した高さ調節機構を有している。図14の歩行補助器への変形は、座椅子部16における背もたれ161を座面160の前端側から後端側へと位置変更することによって実現する。
【0082】
図13及び図14の実施形態においては、ハンドル部2と車台1との接続部である支持フレーム120が、前後の車輪15の間に位置していることから、使用者からの加重を前後に分散し、躓きや跳ね上がり転倒を防止する効果が得られる。
【0083】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0084】
1 車台
120 支持フレーム
121 凸部
2 ハンドル部
30 角度調節板
31 連結ロッド
33 嵌合凹溝
38 嵌合凸片
41 継手具
H 高さ方向
θ ハンドル部の傾斜角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行補助器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、高齢者や傷病者、身体障害者(障害者等)の単独歩行を補助する器具として、例えば特許文献1に開示されているような歩行補助器が知られている。特許文献1の歩行補助器は、車台と、ハンドル部とを含み、ハンドル部は、一対の肘掛部を有し、車台の上部に設けられている。
【0003】
ところで、この種の歩行補助器の使用者の多くは障害者等であるから、歩行補助器には、使用者が無理のない楽な姿勢で歩行できるように、ハンドル部の位置を自在に調節しうることが求められる。
【0004】
これに対し、特許文献1の歩行補助器では、ハンドル部の位置を自在に調節することができない。その結果、使用者がハンドル部を把持して歩行するときに、肘や腕が肘掛部からずれ落ち、甚だしくは肘掛部を脇に抱え込むようにして歩行せざるを得ないような不具合が生じる。このような無理な姿勢での歩行を強いられると、使用者の体に負担がかかり疲れやすくなるとともに、予期せぬ転倒や傷病の悪化を招く。
【0005】
また、歩行補助器の使用者は障害者等であるから、ハンドル部の位置を調節する操作は、片手でも簡単に行える程度に単純であることが求められるところ、特許文献1の歩行補助器では、該要請に充分に応えることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−126192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、使用者が無理のない姿勢で歩行可能な歩行補助器を提供することである。
本発明のもう1つの課題は、ハンドル部の位置を自在に調節しうる歩行補助器を提供することである。
本発明の更にもう一つの課題は、ハンドル部の位置の調節操作が簡単である歩行補助器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明に係る歩行補助器は、車台と、その上部に取り付けられたハンドル部とを含み、車台に対するハンドル部の傾斜角度を変更し上下に首振りさせる機構と、車台に対してハンドル部を左右に首振りさせる機構とを備えている。
【0009】
ハンドル部の上下首振り機構は、角度調節板と、連結ロッドと、嵌合凸片とを有している。角度調節板は、嵌合凹溝を有し、ハンドル部の下部に設けられている。嵌合凹溝は、角度調節板の板面に円弧状に設けられている。連結ロッドは、長手方向の一端が角度調節板に揺動可能に軸止めされている。嵌合凸片は、連結ロッドにおいて、嵌合凹溝に嵌合可能な位置に取り付けられ、嵌合凹溝に嵌合された状態で連結ロッドの揺動を規制し、車台に対するハンドル部の傾斜角度を固定する。
【0010】
上述したように、本発明に係る歩行補助器は、ハンドル部の上下首振り機構と、ハンドル部の左右首振り機構とを備え、ハンドル部の上下首振り機構を構成する角度調節板は、ハンドル部の下部に設けられており、連結ロッドは、長手方向の一端が角度調節板に揺動可能に軸止めされている。この構成によると、ハンドル部を、連結ロッドの軸止め箇所を支点として揺動させ、車台に対するハンドル部の傾斜角度を変更させることにより、ハンドル部を上下に首振りさせることができる。従って、ハンドル部の位置を自在に調節しうる歩行補助器を提供することができる。
【0011】
さらに、ハンドル部の上下首振り機構は、上述したハンドル部の揺動を規制する機構として嵌合凸片を有している。より詳細に説明すると、角度調節板は板面に円弧状の嵌合凹溝を有しており、連結ロッドは嵌合凹溝上を揺動可能に接続されている。嵌合凸片は、連結ロッドにおいて、嵌合凹溝に嵌合可能な位置に取り付けられ、嵌合凹溝に嵌合された状態で連結ロッドの揺動を規制し、車台に対するハンドル部の傾斜角度を固定する。この構成によると、ハンドル部を上下に首振りさせて所望の傾斜角度に配置した後、その首振り位置で嵌合凸片を嵌合凹溝に嵌合させ、固定することができる。従って、使用者が無理のない姿勢で歩行可能な歩行補助器を提供することができる。
【0012】
しかも、本発明に係るハンドル部の上下首振り機構によると、嵌合凸片を嵌合凹溝に嵌合させる簡単な操作で連結ロッドの揺動が規制され、車台に対するハンドル部の傾斜角度が固定される。従って、ハンドル部の位置の調節操作が簡単である歩行補助器を提供することができる。
【0013】
ハンドル部の左右首振り機構において、車台は、支持フレームを有し、支持フレームは、車台の上部に突出する突出端を有しており、連結ロッドは、長手方向の他端が支持フレームの突出端に軸回転可能に接続されており、継手具は、支持フレームの他端と、連結ロッドの突出端との接続部分に着脱可能に取り付けられ、取り付けられた状態で、連結ロッドの軸回転を規制する、との構成をとることもできる。この構成によると、連結ロッドを、支持フレームに対して軸回転させることにより、ハンドル部を左右に首振りさせることができる。従って、歩行補助器使用者の姿勢に追従して、ハンドル部の位置を自在に調節することができる。
【0014】
ハンドル部の左右首振り機構は、継手具を有し、継手具は、支持フレームの他端と、連結ロッドの突出端との接続部分に着脱可能に取り付けられ、取り付けられた状態で、連結ロッドの軸回転を規制するから、ハンドル部を左右の首振り位置を調節した後、そのまま固定することができる。従って、ハンドル部の位置を調節するための操作が簡単である。
【0015】
本発明に係る歩行補助器は、さらに車台に対するハンドル部の高さ位置を調節する機構を備え、ハンドル部の高さ位置調節機構は、可動軸と、固定具とを含み、可動軸は、長手方向の一端が連結ロッドに接続され、ハンドル部を高さ方向に沿って上下動させ、固定具は、可動軸の中間部分に着脱可能に結合し、結合した状態で可動軸の上下動を規制する、との構成をとることもできる。この構成によると、歩行補助器の使用者の身長に追従して、ハンドル部の高さ位置を自在に調節することができる。この構成おいても本発明に係る歩行補助器を構成するハンドル部は、上下および左右に首振しうるから、使用者は無理のない楽な姿勢で安全に歩行することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)使用者が無理のない姿勢で歩行可能な歩行補助器を提供することができる。
(2)ハンドル部の位置を自在に調節しうる歩行補助器を提供することができる。
(3)ハンドル部の位置の調節操作が簡単である歩行補助器を提供することができる。
【0017】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る歩行補助器の斜視図である。
【図2】図1の歩行補助器の側面図である。
【図3】図2の歩行補助器の一部を拡大して示す側面図である。
【図4】図3の歩行補助器の一部を取り出して示す側面図である。
【図5】図2の歩行補助器の一部を拡大して示す正面断面図である。
【図6】図5の歩行補助器の別の状態について一部を拡大して示す正面断面図である。
【図7】図2の歩行補助器の一部を拡大して示す正面断面図である。
【図8】図2の歩行補助器の一部を取り出して示す斜視図である。
【図9】図2の歩行補助器の一部を拡大して示す正面断面図である。
【図10】図2の歩行補助器の一部を拡大して示す側面断面図である。
【図11】図10の歩行補助器の別の状態について一部を拡大して示す側面断面図である。
【図12】図10の歩行補助器の別の状態について一部を拡大して示す側面断面図である。
【図13】本発明のもう一つの実施形態に係る歩行補助器の側面図である。
【図14】図13の歩行補助器を変形した介助用車椅子の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1乃至図14において同一符号は、同一又は対応部分を示すものとする。図1及び図2の歩行補助器は、車台1と、その上部に設けられた一対のハンドル部2、2とを含む。車台1は、歩行補助器の幅方向Wに間隔を隔てて向かい合う一対の車体フレーム10、10と、複数の車輪15と、座椅子部16とを有している。
【0020】
車体フレーム10は、側面視、三角形状であって、軽量化の観点から内部に中空部を有する金属パイプによって構成されている。より詳細に説明すると、車体フレーム10は、下部フレーム11と、側部フレーム12とを有している。下部フレーム11は該三角形状の底辺に相当する部分であり、側部フレーム12は該三角形状の頂部を形成する2辺に相当する部分である。側部フレーム12の頂部には、支持フレーム120が形成されている。支持フレーム120は、歩行補助器の高さ方向Hでみた車台1の上部に突出し、突出端においてハンドル部2を支持している。
【0021】
複数の車輪15は、歩行補助器の前後方向Fでみた下部フレーム11の両端付近の下部において、回転自在に設けられている。側部フレーム12の下部には、後側の車輪15の回転を規制するためのサイドブレーキ17が設けられている。
【0022】
座椅子部16は、座面160と、背もたれ161とを含み、高さ方向Hでみた側部フレーム12の略中央に設けられている。座面160は、前後方向F及び幅方向Wに所定の広さを持っており、一対の側部フレーム12を幅方向Wに架橋している。背もたれ161は、側部フレーム12に着脱可能に設けられ、その着脱位置が、前後方向Fでみた座面160の前方又は後方の何れかの位置に選択可能である。
【0023】
幅方向Wでみて左右一対となるハンドル部2、2は、肘掛台20と、グリップ部21と、管状部分22とを有している。肘掛台20は、凹面201を有し、前後方向Fでみたグリップ部21の後方に設けられている。凹面201は、その開口部分が高さ方向Hでみた上方を指向するように配置されている。
【0024】
管状部分22は、肘掛台20の下部において、肘掛台20の延長方向と一致する前後方向Fに沿って固定されている。グリップ部21は、高さ方向Hに立ち上がった円柱状の部分であり、その基部がスライドロッド23の一端に固定されている。スライドロッド23は、他端が管状部分22の内部に案内され、管状部分22にスライド可能に挿入されている。違う言葉で表現すれば、管状部分22は、肘掛台20の下部において、スライドロッド23を前後方向Fに沿ってスライド可能に収納している。
【0025】
スライドロッド23は、管状部分22に取り付けられた調整ねじ70によって、前後方向Fに沿ったスライド動作が規制又は許可されている。スライドロッド23は、調整ねじ70を緩めることで、管状部分22から取り外して分離しうることが好ましい。
【0026】
図1及び図2の歩行補助器は、上述した歩行補助器の基本的構成に加え、車台1に対するハンドル部2の傾斜角度θを変更し上下に首振りさせる機構(図3参照)と、車台1に対してハンドル部2を左右に首振りさせる機構(図7、図8参照)とを備えている点に特徴の一つがある。以下、ハンドル部2の上下首振り機構、及び、左右の首振り機構について、対応する図を参照しながら説明する。
【0027】
まず、図3の上下首振り機構は、角度調節板30(図4参照)と、連結ロッド31とを含む。図4の角度調節板30は、基板部32と、嵌合凹溝33と、軸止め孔34とを有している。基板部32は、側面視、略半円形状の金属板体であって、直線状の端縁に相当する部分が肘掛台20の下部に設けられ、好ましくは管状部分22の下部において前後方向Fに沿って垂設されている。
【0028】
嵌合凹溝33は、傾斜角度θを設定するガイド溝として機能するものであって、溝の中心を通る線a1が、基板部32の板面において略円弧状となるように設けられている。嵌合凹溝33は、基板部32を板厚方向Wに貫通する貫通構造を有し、その開口端縁が、高さ方向Hで向かい合う2つの縁部331、332で構成されている。縁部331、332のそれぞれは、基板部32の板面において同心状に形成され、軸止め孔34に向かって凹凸を繰り返す鋸歯状となっている。
【0029】
嵌合凹溝33において、縁部331の凸部の頂点を結んだ線a2、縁部331の凹部の角を結んだ線a3、縁部332の凸部の頂点を結んだ線a4、縁部332の凹部の角を結んだ線a5は、全て軸止め孔34を中心とする同心円弧となっている。軸止め孔34は、線a1〜a5の円弧の中心の位置に設けられ、基板部32を、その板厚方向に一致する幅方向Wに貫通している。
【0030】
図4の角度調節板30は、図3、図5及び図6に示すように、連結ロッド31と組み合わされる。連結ロッド31は、長手方向に一致する高さ方向Hの一端が角度調節板30に揺動可能に軸止めされ、他端が支持フレーム120に着脱可能に挿入されている。より詳細に説明すると、連結ロッド31は、高さ方向Hの一端に、ハウジング310と、弾性部材36と、レバー部37と、嵌合凸片38とを有し、高さ方向Hの一端が軸止め孔34に軸止めされ、嵌合凹溝33上を揺動可能に接続されている。
【0031】
ハウジング310は、半割り構造を有し、上部がボルト及びナットで構成された止め具71によって一体化されており、下部が止め金具35によって連結ロッド31の一端に結合されている。さらに、ハウジング310は、第1の収納空間311と、第2の収納空間312と、収納空間311、312を連通する挿通孔313と、この挿通孔313に平行する挿通孔314とを有している。ハウジング310は、組み合わせ面に一対の凹部を有しており、組み合わされた状態で、凹部の相対向面間に第1の収納空間311が画定される。
【0032】
角度調節板30は、嵌合凹溝33が第1の収納空間311と重なり合う高さ位置において、ハウジング310の組み合わせ面に挟持され、挟持された状態で、軸止め孔34に挿通された止め具71によって揺動可能に固定されている。
【0033】
弾性部材36は、高さ方向Hでみて上下一対となる発条361、362で構成されている。発条361、362は、断面視コの字状(又はクリップ状)であって、前記コの字状の開口部が上下向かい合わせになる関係で配置され、一方の側壁部が他方の開口部に案内されることにより互い違いに重ね合わされた状態で、第2の収納空間312に収納されている。発条361、362は、側壁部の一方のみが、第2の収納空間312を画定する内壁に、螺子72により固定されている。この構成によると、側壁部の他方を引き上げ操作することにより、発条361、362の開口部が拡張され、引き上げ方向とは反対方向に矢印Pで示す付勢力が生じる。
【0034】
レバー部37は、主軸371と、ガイド軸372と、支軸373との組み合わせで構成されている。主軸371は、高さ方向Hでみた支軸373の中間部分において、支軸373に交差する関係で取り付けられており、さらに主軸371の軸方向に一致する幅方向Wへスライド可能な状態で、挿通孔313に挿通され、第1、第2の収納空間311、312を連通している。ガイド軸372は、支軸373の高さ方向Hの下部において、主軸371と平行する関係で支軸373に取り付けられており、さらにガイド軸372の軸方向に一致する幅方向Wへスライド可能な状態で挿通孔314に挿通されている。
【0035】
嵌合凸片38は、嵌合凹溝33に対して入れ子可能な構造を有し、連結ロッド31の一端部分において、嵌合凹溝33に嵌合可能な位置に取り付けられている。より詳細に説明すると、嵌合凸片38は、嵌合凹溝33の開口端縁の形状(鋸歯形状)に追従した外形形状を有し、第1の主軸371上に固定されている。嵌合凸片38は、収納空間311において主軸371を幅方向Wにスライドさせることにより、嵌合凹溝33の内部に出し入れされる。図5の嵌合凸片38は、嵌合凹溝33に嵌合されており、車台1に対するハンドル部2の傾斜角度θ、換言すれば角度調節板30に対する連結ロッド31の交差角度がθに固定されている。
【0036】
図5の状態の主軸371には、付勢力Pが加わっており、主軸371のスライド動作が規制されているから、嵌合凸片38が嵌合凹溝33から脱落する不具合が回避される。
【0037】
図3及び図5の状態から傾斜角度θを変更するには、レバー部37を操作して主軸371を幅方向Wに移動させ、嵌合凸片38を嵌合凹溝33から一旦離脱させる。図6の状態において、ハンドル部2は、連結ロッド31と角度調節板30との間に介在する止め具71によって、揺動可能に軸止めされているのみであるから、例えば肘掛台20に肘や腕を乗せた状態で、前端又は後端を高さ方向Hに傾けることにより、ハンドル部2の全体が止め具71を中心としてシーソー状に揺動する。使用者は、肘掛台20が適当な角度となった状態でレバー部37を操作し、ガイド軸372を支点として主軸371を幅方向Wに移動させ、嵌合凸片38を嵌合凹溝33に嵌合させることにより、ハンドル部2の揺動が規制され、傾斜角度θが固定される。主軸371には、弾性部材36により付勢力Pが加えられているから、レバー部37を操作して嵌合凸片38を嵌合凹溝33に速やかに案内することができる。
【0038】
次に、図1及び図2の歩行補助器を構成するハンドル部2の左右の首振り位置を調整するための機構(左右首振り機構)について、図7及び図8を参照して説明する。図7及び図8の左右首振り機構は、支持フレーム120と、連結ロッド31と、通し棒40と、継手具41と、ストッパー43によって構成されている。
【0039】
支持フレーム120は、凸部121を有している。図8(a)及び(c)に示す凸部121は、支持フレーム120の軸方向に一致する高さ方向Hでみた支持フレーム120の中間部から突出端までの外面において、周方向に沿って凹凸を繰り返す鋸歯状であって、高さ方向Hに沿って帯状に形成されている。例えば、凸部121は、支持フレーム120の高さ方向Hに沿って、鋸歯状の溝を切り込みで形成することができる。
【0040】
他方、連結ロッド31は、凸部315を有し、他端が支持フレーム120の高さ方向Hに配置され、支持フレーム120の突出端に接続されている。凸部315は、高さ方向Hでみた連結ロッド31の中間部から他端までの外面において、周方向に沿って凹凸を繰り返す鋸歯状であって、帯状に形成されている。凸部121と凸部315とは、断面でみて同一の凹凸構造となっており、高さ方向Hに重なり合うことができる。
【0041】
通し棒40は、連結ロッド31及び支持フレーム120の内部を連通し、一端が連結ロッド31の内部において軸周りに回転可能に結合され、且、他端が支持フレーム120の内部において軸周りに回転可能に結合されている。違う言葉で表現すれば、連結ロッド31は、内部に挿通された通し棒40によって、支持フレーム120に軸回転可能に接続されている。
【0042】
継手具41は、所謂カップリング具であって、筒状基体部分の内面に凹部42を有している。図8(b)に示す凹部42は、内面の周方向に沿って凹凸を繰り返す断面視鋸歯状であって、凸部315と同一の凹凸構造を有している。例えば、凹部42は、高さ方向Hに沿って鋸歯状の溝を切り込みで形成することができる。
【0043】
継手具41は、支持フレーム120の突出端と、連結ロッド31の他端との接続部分に跨り、且、同接続部分の外面を覆う態様で、高さ方向Hに沿ってスライド可能に取り付けられている。継手具41は、取り付けられた状態で凹部42が凸部121及び凸部315に一体的に凹凸嵌合し、連結ロッド31の軸回転を規制する。他方、継手具41を高さ方向Hに沿ってスライドさせ、支持フレーム120と連結ロッド31との接続部分から離脱させることにより、連結ロッド31の軸回転が許可される。
【0044】
ストッパー43は、継手具41のスライド動作を規制するものであって、連結ロッド31の外面に着脱可能に掛止られている。ストッパー43は、連結ロッド31側に配置された場合には上げ止まりとなり、支持フレーム120側に配置された場合(図示しない)には下げ止まりとなる。
【0045】
図7及び図8の左右首振り機構によると、例えば肘掛台20に肘や腕を乗せた状態で、肘掛台20を左右に首振りさせることにより、ハンドル部2全体が連結ロッド31の周方向に沿って左右に回転する。使用者は、肘掛台20の左右の首振り位置が適当な位置となった状態で、継手具41を支持フレーム120と連結ロッド31との接続部分に嵌合させることにより、連結ロッド31の軸回転が規制され、ハンドル部2の左右の首振り位置が固定される。
【0046】
図1及び図2の歩行補助器は、図5及び図6の上下首振り機構と、図7及び図8の左右首振り機構とに加え、さらに肘掛台20の下部に操作レバー6を有しており、この操作レバー6を操作することによりハンドル部2の高さ位置を調節することができる。以下、図9乃至図12を参照して、ハンドル部2の高さ位置を調節するための機構を説明する。
【0047】
まず、図9及び図10の高さ位置調節機構は、可動軸51と、ケーシング52と、一対の固定具53、54と、第1の弾性部材55(引き上げ発条)と、第2の弾性部材56(引き戻し発条)と、連動ワイヤ57と、回転ドラム58と、操作ドラム59と、操作ワイヤ60とを有している。
【0048】
可動軸51は、断面視、四角形形状の金属製棒状体であって、可動軸51の軸方向(高さ方向)Hに沿った長手寸法を有し、4つの側面のうちの一面に複数の係合歯510を有している。係合歯510は、前記一面から突出し、突出端が高さ方向Hで見た下側に向けて斜めに立ち上がっている。複数の係合歯510は、高さ方向Hに間隔を隔てて等配され、高さ方向Hに隣接する係合歯510の突出端の間に、下向きの開口部が形成されている。係合歯510は、波形状の切り込み又は彫り込みによって構成することができる。
【0049】
可動軸51は、車台1を構成する側部フレーム12の内部に高さ方向Hにスライド可能に収納され、一端が連結ロッド31に螺子止めされており、高さ方向Hにスライド動作することにより、連結ロッド31を介して、図1及び図2のハンドル部2全体を高さ方向Hに沿って上下動させる。
【0050】
ケーシング52は、側部フレーム12の中間部分に設けられ、周壁によって画定された収納空間に、固定具53、54と、第1、第2の弾性部材55、56と、連動ワイヤ57と、回転ドラム58とが収納され、外部側面に操作ドラム59が設置されている。
【0051】
固定具53、54のそれぞれは、長手方向の一方に係合端531、541を有し、係合端531、541は、長手方向の一方に向かうに従って厚みが減少する先細り形状を有している。固定具53、54のそれぞれは、高さ方向Hに間隔を隔てて上下一対となるように配置されている。より詳細に説明すると、固定具53、54のそれぞれは、係合端531、541が、係合歯510に向かう合う関係で上向きに配置され、配置された状態で、隣接する係合歯510の突出端の間に、係合端531、541が案内されている。固定具53は、固定具54の係合機能を補助するものであって、ケーシング52の内部側面に揺動可能に軸止めされている。
【0052】
第1、第2の弾性部材55、56は、固定具53、54のそれぞれに取り付けられている。第1の弾性部材55は、所謂引き上げ発条であって、一端が係合端531、541に取り付けられ、係合端531、541に対して可動軸51から離れる方向M1に付勢力を加えている。他方、第2の弾性部材56は、所謂引き戻し発条であって、一端が軸を経由して係合端531、541に結合され、係合端531、541に対して可動軸51へ近づく方向M2に付勢力を加えている。
【0053】
回転ドラム58は、高さ方向Hでみた固定具53、54の間において、ケーシング52の内部側面に回転可能に軸止めされている。連動ワイヤ57は、両端のそれぞれが、高さ方向Hに隣接する第1の弾性部材55の端部に結合され、中間部分が回転ドラム58に巻きつけられ、又は、結合されている。
【0054】
操作ドラム59は、ケーシング52の外部側面において、回転ドラム58を軸止めしている軸580に取り付けられている。すなわち、軸580はケーシング52の側壁部分を内面から外面に貫通し、内面において回転ドラム58を軸止めし、外面において操作ドラム59を軸止めしている。この構造によると、例えば、操作ドラム59を、指でつまんで回転操作することにより、回転ドラム58を右回転及び左回転させるこができる。
【0055】
操作ワイヤ60は、一端が操作レバー6(図1及び図2)に接続されており、他端がケーシング52の内部に案内され、固定具54に結合されている。図10の固定具54は、高さ方向Hでみた上側に操作ワイヤ60の一端が結合され、高さ方向Hでみた下側に第3の弾性部材61の一端が結合されている。第3の弾性部材61は、他端が高さ方向Hに向かい合うケーシング52の内部底面に結合されている。すなわち、固定具54は、操作ワイヤ60によって高さ方向Hに吊り下げられ、吊り上げられた状態で、高さ方向Hでみた反対側(下側)が第3の弾性部材61によって引き下げられていることにより、ケーシング52の内部において、高さ方向Hに上下動可能な宙吊り状態で配置されている。
【0056】
操作レバー6は、本体部分に収納された巻き上げ機構(図示しない)を操作するものであり、高さ方向Hに上げ下げ操作することにより、操作ワイヤ60が巻き上げ機構に巻き上げられ、又は、操作ワイヤ60が巻き上げ機構から繰り出される。
【0057】
図9及び図10の高さ位置調節機構の操作方法には、ハンドル部2を高さ方向Hに上下動させる場合(図11)と、ハンドル部2を高さ方向Hの上側にのみ引き上げる場合(図12)とがある。以下、個別具体的に説明する。
【0058】
ハンドル部2を高さ方向Hに上下動させる場合、使用者は、まず、図10に示すように回転ドラム58を回転(例えば右回転R1)させる。回転ドラム58の回転操作は、軸580を介して接続されている操作ドラム59を、直接、指でつまんで行うことができる。回転ドラム58を右回転R1させたとき、回転ドラム58によって連動ワイヤ57が巻き取られることにより、第1の弾性部材55を介して、係合端531、541が可動軸51から離れる方向M1に引き上げられ、係合歯510から離脱する(図11参照)。
【0059】
図11に示すように、係合端531、541が係合歯510から離脱した状態では、可動軸51のスライド動作に対する規制が失われるから、使用者は、例えばグリップ部21などを把持して高さ方向Hに引き上げ、又は、押し下げることにより、ハンドル部2全体を上下動させ、適当な高さ位置に調節することが可能となる。
【0060】
その後、ハンドル部2を適当な高さ位置で固定するには、上述した解除操作と逆の手順によって行うことができる。簡単に説明すると、操作ドラム59を操作し、回転ドラム58を逆方向に回転(例えば左回転R2)させることにより、回転ドラム58から連動ワイヤ57が繰り出され、係合端531、541が可動軸51に近づく方向M2に降下し、係合歯510に係合する。係合端531、541が、係合歯510に係合することにより、再び可動軸51のスライド動作に対して規制が加えられる。係合端531、541には第2の弾性部材56の他端が結合され、可動軸51へ近づく方向M2に付勢力が加えられているから、係合歯510に対する係合端531、541の降下動作は円滑に行われる。
【0061】
次に、ハンドル部2を高さ方向Hの上側にのみ引き上げる場合、使用者は、まず、図12に示すように、操作レバー6を1ストローク分操作して、操作ワイヤ60を巻き上げることにより、固定具54が、高さ位置H1から位置H2に1ストローク分だけ引き上げられる。この固定具54の引き上げ動作によって、係合端541と当接する係合歯510が、高さ位置H2に引き上げられ、その結果、可動軸51を介して、ハンドル部2全体が高さ方向Hの上側に1ストローク分だけ引き上げられる。
【0062】
他方、固定具53は、所定の位置において揺動することにより、係合端531が、高さ方向Hに引き上げられる係合歯510の突出端を順次乗り越える。その後、固定具54の引き上げ動作が停止した位置(高さ位置H2)で、係合端531が、向かい合う係合歯510の突出端の間に案内されることにより、可動軸51のスライド動作が一時的に規制される。
【0063】
一方、固定具54は、固定具53が可動軸51を一時的に規制している状態で、第3の弾性部材61の付勢力によって、元の高さ位置H1に引き戻される。引き戻された固定具54は、元の高さ位置H1で、係合端541が、向かい合う係合歯510の突出端の間に案内されることとなり、可動軸51のスライド動作が、固定具53、54の両方によって規制される。
【0064】
上述した操作レバー6による1ストローク分の引き上げ操作を、所定の回数(数ストローク分)繰り返すことにより、ハンドル部2全体を少しづつ引き上げ、適当な高さ位置に調節することが可能となる。
【0065】
図1乃至図12を参照して説明した歩行補助器の構造によると、以下の効果を奏することができる。まず、歩行補助器を構成するハンドル部2は、グリップ部21の後方に一対の肘掛台20が設けられ、しかも、かかる一対の肘掛台20のそれぞれには上向きに窪んだ凹面201が形成されているから、使用者は腕や肘を凹面201に沈み込ませてグリップ部21を把持することができ、歩行移動時に使用者の肘や腕が肘掛台20からずれ落ちることを防止することができる。よって、肘や腕を介して体重をかけても安定して歩行移動を行うことが可能となり、また、下半身への加重負担を抑制し、姿勢を保った歩行移動も可能となる。
【0066】
ところで、この種の歩行補助器の使用者の多くは、高齢者や傷病者、身体障害者(障害者等)であるから、歩行補助器には、使用者が無理のない楽な姿勢で歩行できるように、ハンドル部の位置を自在に調節しうることが求められる。例えば、従来の歩行補助器では、ハンドル部(2)が水平状態、又は、相互に平行な状態で固定され、使用者の腕の曲がりや姿勢に合った肘掛台(20)の配置を実現することができず、肘や腕が肘掛部からずれ落ち、甚だしくは肘掛部を脇に抱え込むようにして歩行せざるを得ないような不具合が生じる。このような無理な姿勢で歩行すると、使用者の体に負担がかかり疲れやすくなるとともに、予期せぬ転倒や傷病の悪化を招く。また、従来の歩行補助器では、使用者はグリップ部(21)に頼りがちで体が自然と前のめりになり、前輪(15)への加重による躓きや跳ね上がり転倒、傷病の悪化を招く恐れもあった。
【0067】
さらに、歩行補助器の使用者は障害者等であるから、ハンドル部の位置を調節する操作は、片手でも簡単に行えることが求められる。
【0068】
図1乃至図12の歩行補助器は、上述した2つの要請に応えるため、ハンドル部2の上下首振り機構(図3乃至図6参照)と、ハンドル部2の左右首振り機構(図7及び図8参照)とを備え、上下および左右に首振しうる点に特徴の一つがある。
【0069】
まず、ハンドル部2の上下首振り機構は、図3乃至図6を参照して説明したように、ハンドル部2の下部には角度調節板30が設けられており、この角度調節板30に、連結ロッド31の一端が揺動可能に軸止めされている。この構成によると、ハンドル部2を、連結ロッド31の軸止め箇所を支点として揺動させ、車台1に対するハンドル部2の傾斜角度θを変更させることにより、ハンドル部2を上下に首振りさせることができる。従って、歩行補助器使用者の姿勢に追従して、ハンドル部2の傾斜角度θを自在に調節しうる歩行補助器を提供することができる。
【0070】
さらに、ハンドル部2の上下首振り機構は、傾斜角度θを固定する機構として、嵌合凹溝33と、嵌合凸片38とを有している。角度調節板30は、板面に円弧状の嵌合凹溝33を有しており、連結ロッド31は嵌合凹溝33上を揺動可能に接続されている。嵌合凸片38は、連結ロッド31において、嵌合凹溝33に嵌合可能な位置に取り付けられ、嵌合凹溝33に嵌合された状態で連結ロッド31の揺動を規制し、傾斜角度θを固定する。この構成によると、ハンドル部2を上下に首振りさせて所望の傾斜角度θに配置した後、その首振り位置で固定することができる。従って、使用者が無理のない姿勢で歩行可能な歩行補助器を提供することができる。
【0071】
しかも、図3乃至図6のハンドル部2の上下首振り機構によると、レバー部37の簡単な操作によって、嵌合凸片38が嵌合凹溝33に嵌合され、傾斜角度θが固定される。従って、ハンドル部2の位置の調節操作が簡単である歩行補助器を提供することができる。
【0072】
次に、ハンドル部2の左右首振り機構は、図7及び図8を参照して説明したように、車台1を構成する支持フレーム120の突出端と、連結ロッド31の他端とが軸回転可能に接続されている。この構成によると、使用者は、例えば、肘掛台20に肘や腕を乗せた状態で、肘掛台20を左右に首振りさせることにより、ハンドル部2全体を左右に首振りさせることができる。従って、歩行補助器使用者の姿勢に追従して、ハンドル部2の位置を自在に調節することができる。
【0073】
また、ハンドル部2の左右首振り機構は、連結ロッド31の軸回転を規制する機構として、継手具41を有するとともに、支持フレーム120の外面に凸部121が設けられ、連結ロッド31の他端部分の外面に凸部315が設けられている。継手具41は、凹面201を有しており、支持フレーム120と連結ロッド31との接続部分に着脱可能に取り付けられ、取り付けられた状態で、凹面201が凸部121及び凸部315に一体的に凹凸嵌合し、連結ロッド31の軸回転を規制する。この構造によると、ハンドル部2の左右の首振り位置を調節した後、その所望の位置で固定することができる。
【0074】
しかも、継手具41の着脱操作は、高さ方向Hにスライドさせることにより行うことができるから、ハンドル部2の位置を調節するための操作が簡単であり、障害者等であっても容易に操作することができる。
【0075】
さらに、図1及び図2の歩行補助器は、図9乃至図12を参照して説明したように、車台1に対するハンドル部2の高さ位置を調節する機構を備えている。図9乃至図12のハンドル部2の高さ位置調節機構は、可動軸51と、固定具53、54とを含み、可動軸51は、一端が連結ロッド31に接続され、ハンドル部2を高さ方向Hに沿って上下動させ、固定具53、54は、可動軸51の中間部分に着脱可能に結合し、結合した状態で可動軸51の上下動を規制する。この構成によると、歩行補助器の使用者の身長に追従して、ハンドル部2の高さ位置を自在に調節することができる。この構成おいてもハンドル部2は、上下および左右に首振しうるから、使用者は無理のない楽な姿勢で安全に歩行することができる。
【0076】
ハンドル部2の上下及び左右の首振り機構は、各操作は電池類やセンサーなど電子機構の使用を控え、全ての操作をレバーの上下動などの構造的な機構で実現されている。したがって、従来の歩行器が締め込み方式の摘みねじで行っていたのとは異なり、障害者等にとって操作しやすいものである。
【0077】
上述したように、図1乃至図12の歩行補助器を構成する一対の肘掛台20は、前後方向Fや幅方向Wに首振り可能であり、且、高さ方向Hにも位置調節が可能であるから、使用者の腕の曲がりや姿勢、身長に合った肘掛台20の配置を実現することができ、腕や肘が肘掛台20からはみ出したり、前のめりになったりすることを防止することができる。よって、肘掛台20の凹面201の既述の作用と相俟って、体重をかけた歩行移動の安定性を一層高めることができた。
【0078】
グリップ部21は、一対の肘掛台20に対して、肘掛台20における凹面201の前後方向Fに沿ってスライド可能であるので、腕の長さや肘の位置など使用者の身体的特徴に合わせて、グリップ部21と一対の肘掛台20との最適な距離を実現することができる。これによっても、凹面201の存在や肘掛台20の首振り機構と相俟って、体重をかけた歩行移動の安定性を一層高めることができる。
【0079】
グリップ部21の位置や肘掛台20の上下首振り中心となる支持フレーム120の突出端は、図2から分るように前後の車輪15との間に位置している。このため、使用者からの加重が前後の車輪15に分散し、躓きや跳ね上がり転倒を防止することができる。なお、かかる防止効果は、上述した肘掛台20及びグリップ部21の相対距離調整機構や肘掛台20の首振り機構と組み合わされていることで、一層高められている。
【0080】
図13は本発明のもう一つの実施形態に係る歩行補助器の側面図、図14は図13の歩行補助器を変形した介助用車椅子の側面図である。これまで、歩行補助器は、本来の使用態様に限られ、他の用途に用いることは想定されていなかった。しかしながら、図1乃至図12の歩行補助器においては、図13及び図14に示す介助用車椅子への変形が可能となっている。しかも、上述したように安定した歩行移動を行うことが可能となった歩行補助器において、歩行補助器及び介助用車椅子への変形ができるようになっている。
【0081】
図13の歩行補助器の変形は次のような手順で行われる。図1及び図2の歩行補助器において、調整ねじ70を緩め、支持フレーム120から連結ロッド31を取り外すと共に、管状部分33からスライドロッド23を取り外す。そして、図13に示されるように、グリップ部21が後方を指向するように、スライドロッド23を支持フレーム120に挿入する。図13の歩行補助器は、図1乃至図12を参照して説明した高さ調節機構を有している。図14の歩行補助器への変形は、座椅子部16における背もたれ161を座面160の前端側から後端側へと位置変更することによって実現する。
【0082】
図13及び図14の実施形態においては、ハンドル部2と車台1との接続部である支持フレーム120が、前後の車輪15の間に位置していることから、使用者からの加重を前後に分散し、躓きや跳ね上がり転倒を防止する効果が得られる。
【0083】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0084】
1 車台
120 支持フレーム
121 凸部
2 ハンドル部
30 角度調節板
31 連結ロッド
33 嵌合凹溝
38 嵌合凸片
41 継手具
H 高さ方向
θ ハンドル部の傾斜角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台と、その上部に取り付けられたハンドル部とを含み、前記車台に対する前記ハンドル部の傾斜角度を変更し上下に首振りさせる機構と、前記車台に対して前記ハンドル部を左右に首振りさせる機構とを備えている歩行補助器であって、
前記ハンドル部の上下首振り機構は、角度調節板と、連結ロッドと、嵌合凸片とを有しており、
前記角度調節板は、嵌合凹溝を有し、前記ハンドル部の下部に設けられており、
前記嵌合凹溝は、前記角度調節板の板面に円弧状に設けられており、
前記連結ロッドは、長手方向の一端が前記角度調節板に揺動可能に軸止めされており、
前記嵌合凸片は、前記連結ロッドにおいて、前記嵌合凹溝に嵌合可能な位置に取り付けられ、前記嵌合凹溝に嵌合された状態で前記連結ロッドの揺動を規制し、前記車台に対する前記ハンドル部の傾斜角度を固定する、
歩行補助器。
【請求項2】
請求項1に記載された歩行補助器であって、前記ハンドル部の左右首振り機構は、継手具を有しており、
前記車台は、支持フレームを有し、前記支持フレームは、車台の上部に突出する突出端を有しており、
前記連結ロッドは、前記長手方向の他端が前記支持フレームの前記突出端に軸回転可能に接続されており、
前記継手具は、前記支持フレームの他端と、前記連結ロッドの前記突出端との接続部分に着脱可能に取り付けられ、取り付けられた状態で、前記連結ロッドの軸回転を規制する、
歩行補助器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された歩行補助器であって、さらに前記車台に対する前記ハンドル部の高さ位置を調節する機構を備えており、
前記ハンドル部の高さ位置調節機構は、可動軸と、固定具とを含み、
前記可動軸は、長手方向の一端が前記連結ロッドに接続され、前記ハンドル部を高さ方向に沿って上下動させ、
前記固定具は、前記可動軸の中間部分に着脱可能に結合し、結合した状態で前記可動軸の上下動を規制する、
歩行補助器。
【請求項1】
車台と、その上部に取り付けられたハンドル部とを含み、前記車台に対する前記ハンドル部の傾斜角度を変更し上下に首振りさせる機構と、前記車台に対して前記ハンドル部を左右に首振りさせる機構とを備えている歩行補助器であって、
前記ハンドル部の上下首振り機構は、角度調節板と、連結ロッドと、嵌合凸片とを有しており、
前記角度調節板は、嵌合凹溝を有し、前記ハンドル部の下部に設けられており、
前記嵌合凹溝は、前記角度調節板の板面に円弧状に設けられており、
前記連結ロッドは、長手方向の一端が前記角度調節板に揺動可能に軸止めされており、
前記嵌合凸片は、前記連結ロッドにおいて、前記嵌合凹溝に嵌合可能な位置に取り付けられ、前記嵌合凹溝に嵌合された状態で前記連結ロッドの揺動を規制し、前記車台に対する前記ハンドル部の傾斜角度を固定する、
歩行補助器。
【請求項2】
請求項1に記載された歩行補助器であって、前記ハンドル部の左右首振り機構は、継手具を有しており、
前記車台は、支持フレームを有し、前記支持フレームは、車台の上部に突出する突出端を有しており、
前記連結ロッドは、前記長手方向の他端が前記支持フレームの前記突出端に軸回転可能に接続されており、
前記継手具は、前記支持フレームの他端と、前記連結ロッドの前記突出端との接続部分に着脱可能に取り付けられ、取り付けられた状態で、前記連結ロッドの軸回転を規制する、
歩行補助器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された歩行補助器であって、さらに前記車台に対する前記ハンドル部の高さ位置を調節する機構を備えており、
前記ハンドル部の高さ位置調節機構は、可動軸と、固定具とを含み、
前記可動軸は、長手方向の一端が前記連結ロッドに接続され、前記ハンドル部を高さ方向に沿って上下動させ、
前記固定具は、前記可動軸の中間部分に着脱可能に結合し、結合した状態で前記可動軸の上下動を規制する、
歩行補助器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−19831(P2012−19831A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158027(P2010−158027)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(504463006)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(504463006)
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