歩行補助装置
【課題】歩行者が片手で操作を行っても、歩行者が意図する動作を実施することができる歩行補助装置を提供する。
【解決手段】歩行補助装置1Aは、ハンドル部2aを有するフレーム体2と、フレーム体2の左右両側に配置された車輪3a〜3dと、各車輪3a〜3dをそれぞれ回転駆動させるインホイールモータと、ハンドル部2aに設けられた左右2つのコントローラーバー5a,5b及び中央コントローラーバー5cと、制御ユニット6とから構成されている。制御ユニット6は、コントローラーバー5a,5bの何れか一方のみが押し操作されるか、コントローラーバー5cが押し操作された場合、歩行補助装置1Aを直進させるようにインホイールモータを制御するECUを有している。
【解決手段】歩行補助装置1Aは、ハンドル部2aを有するフレーム体2と、フレーム体2の左右両側に配置された車輪3a〜3dと、各車輪3a〜3dをそれぞれ回転駆動させるインホイールモータと、ハンドル部2aに設けられた左右2つのコントローラーバー5a,5b及び中央コントローラーバー5cと、制御ユニット6とから構成されている。制御ユニット6は、コントローラーバー5a,5bの何れか一方のみが押し操作されるか、コントローラーバー5cが押し操作された場合、歩行補助装置1Aを直進させるようにインホイールモータを制御するECUを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手押し車型の歩行補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の手押し車型の歩行補助装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、歩行者が望む方向にハンドル部を動かした場合に、ハンドル部に加えられた力を検出し、その検出値と目標値とを比較して車輪の駆動を調整することにより、歩行者の歩行を介助する歩行介助装置が知られている。
【特許文献1】特許3156367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、駆動部を有さない手押し車は、ハンドル部の中心から少し左右にずれたところを押した場合であっても、直進性に打ち勝つ程度の横力やモーメントが加わらない限りは、直進性を維持することができる。一方、駆動部を有する電動式手押し車は、ハンドル部に設けられたセンサによって直進操作または旋回操作を判定して駆動部を制御しているため、ハンドル部の左右どちらかにずれた位置を押し操作した場合には、旋回判定となってしまう。特許文献1に記載の手押し車では、直進・旋回制御の操作部が左右に分けて設けられている。このため、片手で操作部が押し操作されると、操作された側の操作部に力の片寄りが生じるため、歩行者が直進を保ちたい場合であっても旋回動作に移行してしまうおそれがあった。
【0004】
そこで本発明の目的は、歩行者が片手で操作を行っても、歩行者が意図する動作を実施することができる歩行補助装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る歩行補助装置は、歩行者が握るハンドル部を有するフレーム体と、フレーム体の両側に配置された左右の車輪と、各車輪をそれぞれ回転駆動させる複数の駆動部と、ハンドル部の左右両側に設けられた左操作部及び右操作部を有し、直進または旋回動作を設定指示するための操作手段と、操作手段が操作されたかどうかを判断する判断手段と、判断手段により左操作部及び右操作部の何れか一方のみが押し操作されたと判断された場合には、直進させるように各駆動部を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明に係わる歩行補助装置においては、左操作部及び右操作部のどちらか一方のみが押し操作された場合には、直進させるように各駆動部を制御する。これにより、例えば歩行者が片手で右操作部のみを押し操作した場合であっても、歩行補助装置の直進を維持することができるので、歩行者にとって不本意な旋回を防止することが可能となる。したがって、歩行者が片手で操作手段を操作する場合であっても、歩行者の意図する動作を行うことができる。
【0007】
好ましくは、操作手段は、ハンドル部における左操作部と右操作部との間に設けられた中央操作部を更に有し、制御手段は、判断手段により中央操作部が押し操作されたと判断された場合には、直進させるように各駆動部を制御する。この場合には、左操作部と右操作部との間に設けられた中央操作部を押し操作すると、歩行補助装置が直進するので、左操作部または右操作部を押し操作する場合に比べて違和感なく、片手で簡単に直進の制御を行うことができる。
【0008】
また、好ましくは、左操作部、右操作部及び中央操作部は、ハンドル部に前後方向に回転可能に設けられており、制御手段は、判断手段により左操作部、右操作部及び中央操作部の何れかが前後方向に回転操作されたと判断された場合には、旋回させるように各駆動部を制御する。この場合には、例えば中央操作部等を後側に回転操作すると右旋回させ、中央操作部等を前側に回転操作すると左旋回させるようにすることで、片手でも簡単に歩行補助装置を旋回させることが可能となる。
【0009】
また、好ましくは、左操作部、右操作部及び中央操作部は、ハンドル部に左右方向にスライド可能に設けられており、制御手段は、判断手段により左操作部、右操作部及び中央操作部の何れかが左右方向にスライド操作されたと判断された場合には、旋回させるように各駆動部を制御する。この場合には、例えば中央操作部等を右側にスライド操作すると右旋回させ、中央操作部等を左側にスライド操作すると左旋回させるようにすることで、片手でも簡単に歩行補助装置を旋回させることが可能となる。
【0010】
また、好ましくは、左操作部、右操作部及び中央操作部は、ハンドル部に左右方向に回転可能に設けられており、制御手段は、判断手段により左操作部、右操作部及び中央操作部の何れかが左右方向に回転操作されたと判断された場合には、旋回させるように各駆動部を制御する。この場合には、例えば中央操作部等を右側(時計回り)に回転操作すると右旋回させ、中央操作部等を左側(反時計回り)に回転操作すると左旋回させるようにすることで、片手でも簡単に歩行補助装置を旋回させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の歩行補助装置によれば、歩行者が片手で操作を行っても、歩行者が意図する動作を実施することができる。これにより、利便性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係わる歩行補助装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係わる歩行補助装置の第1の実施形態の外観を示す斜視図である。同図において、歩行補助装置1Aは、歩行者の歩行を補助する電動手押し車である。歩行補助装置1Aは、ハンドル部2aを有するフレーム体2と、フレーム体2の左右両側に配置された車輪3a〜3dと、各車輪3a〜3dをそれぞれ独立に回転駆動させるインホイールモータ4a〜4dと、ハンドル部2aに設けられた右コントローラーバー(右操作部)5a、左コントローラーバー(左操作部)5b、及び中央コントローラーバー(中央操作部)5cと、制御ユニット6とから構成されている。
【0014】
フレーム体2は、歩行者が握る上記のハンドル部2aと、ハンドル部2aの両端から前側斜め下方に延びる一対のメインフレーム2bと、各メインフレーム2bの略中央部から後側斜め下方にそれぞれ延びる一対のサブフレーム2cと、各メインフレーム2bに対して各サブフレーム2cを回動自在に連結する一対のジョイント2dとにより構成されている。各メインフレーム2bの下端部には、上記の車輪(前輪)3a,3cが取り付けられ、各サブフレーム2cの下端部には、上記の車輪(後輪)3b,3dが取り付けられている。
【0015】
ハンドル部2aは、歩行者が把持可能な高さに設けられている。ハンドル部2aには、歩行補助装置1Aの直進動作または旋回動作を指示操作するための上記2つのコントローラーバー5a,5b及び中央コントローラーバー5cが前後方向に回転可能に設けられている。
【0016】
インホイールモータ4a〜4dは、車輪3a〜3dの回転駆動力を各々発生する電動モータである。
【0017】
制御ユニット6は、フレーム体2のジョイント2dから吊り下げられている。制御ユニット6の内部には、ECU20及び電源部21(図2参照)が設けられている。また、制御ユニット6は、荷物を収容するための荷室を兼ね備えている。
【0018】
図2は、インホイールモータ4a〜4dを制御する制御系を示すブロック図である。図2において、歩行補助装置1Aは、右回転角度センサ11aと、左回転角度センサ11bと、中央回転角度センサ11cと、右押し力センサ12aと、左押し力センサ12bと、中央押し力センサ12cと、ECU(Electronic Control Unit)20と、電源部21とを備えている。
【0019】
右回転角度センサ11a、左回転角度センサ11b、及び中央回転角度センサ11cは、歩行者によって前後方向に回転(捻り)操作されたコントローラーバー5a〜5cの前後回転角度をそれぞれ検出するセンサである。右回転角度センサ11a、左回転角度センサ11b、及び中央回転角度センサ11cの検出信号(回転角度信号)はECU20に送出される。
【0020】
右押し力センサ12a、左押し力センサ12b、及び中央押し力センサ12cは、歩行者によって押し操作されたコントローラーバー5a〜5cの前後押し力をそれぞれ検出するセンサである。右押し力センサ12a、左押し力センサ12b、及び中央押し力センサ12cの検出信号(押し力信号)はECU20に送出される。
【0021】
ECU20は、回転角度センサ11a〜11cから送出された前後回転角度信号と押し力センサ12a〜12cから送出された押し力信号とに基づいて、コントローラーバー5a〜5cの操作状態を判断し、その判断結果に応じてインホイールモータ4a〜4dを制御する。
【0022】
図3は、ECU20により実行される処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【0023】
図3において、まず回転角度センサ11a〜11cからの前後回転角度信号及び押し力センサ12a〜12cからの押し力信号が入力される(手順S301)。続いて、中央コントローラーバー5cが操作されたかどうかを判断し(手順S302)、中央コントローラーバー5cが操作されたと判断された場合には、手順S303に進む。一方、中央コントローラーバー5cが操作されていないと判断された場合には、手順S306に進む。
【0024】
手順S302において中央コントローラーバー5cが前後回転操作されたと判断された場合には、中央回転角度センサ11cからの前後回転角度信号が入力されたかどうかを判断することにより、中央コントローラーバー5cが前後回転操作されたかどうかを判断し(手順S303)、前後回転操作がされたと判断された場合には、手順S304に進む。一方、中央コントローラーバー5cが前後回転操作されていない、つまり中央コントローラーバー5cが押し操作されたと判断された場合には、歩行者に直進する意思があるものとして、手順S312に進む。
【0025】
手順S303においてコントローラーバー5cが前後回転操作されたと判断されたときは、中央回転角度センサ11cからの前後回転角度信号に基づいて、コントローラーバー5cの前後回転角度が所定の角度以上であるかを判断し(手順S304)、前後回転角度が所定の角度以上であると判断された場合には、手順S305に進む。一方、前後回転角度が所定の角度以上でないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S312に進む。
【0026】
続いて、回転角度センサ11cからの前後回転角度信号に基づいて、コントローラーバー5cの前後回転操作の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S305)、前後回転操作が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S313に進む。一方、前後回転操作が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S312に進む。
【0027】
一方、手順S302において中央コントローラーバー5cの操作がされていないと判断されたときは、左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作されたかどうかを判断し(手順S306)、コントローラーバー5a,5bが同時に操作されたと判断された場合には、手順S307に進む。一方、コントローラーバー5a,5bが同時に操作されていないと判断された場合には、手順S309に進む。
【0028】
手順S306において左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作された判断されたときは、押し力センサ12a,12bの押し力信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの前後押し力の左右差が所定の力以上であるかを判断し(手順S307)、前後押し力の左右差が所定の力以上であると判断された場合には、手順S308に進む。一方、前後押し力の左右差が所定の力以上でないと判断され場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S312に進む。
【0029】
続いて、押し力センサ12a,12bからの押し力信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの前後押し力の左右差の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S308)、前後押し力の左右差が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S313に進む。一方、前後押し力の左右差が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S312に進む。
【0030】
一方、手順S306において左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作されていないと判断されたときは、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が前後回転操作されたかどうかを判断し(手順S309)、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が前後回転操作されたと判断された場合には、手順S310に進む。一方、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が前後回転操作されず、押し操作されたと判断された場合には、歩行者に直進する意思があるものとして、手順S312に進む。
【0031】
手順S309において左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が操作されたと判断されたときは、回転角度センサ11a,11bの前後回転角度信号に基づいて、前後回転角度が所定の角度以上であるかを判断し(手順S310)、前後回転角度が所定の角度以上であると判断された場合には、手順S311に進む。一方、前後回転角度が所定の角度以上でないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S312に進む。
【0032】
続いて、回転角度センサ11a,11bからの前後回転角度信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの前後回転操作の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S311)、前後回転操作が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S313に進む。一方、前後回転操作が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S312に進む。
【0033】
手順S312では、歩行補助装置1Aを直進させるような回転トルク指令値を求め、手順S314に進む。
【0034】
一方、手順S313では、コントローラーバー5a〜5cの回転操作方向及び角度、或いは左右のコントローラーバー5a,5bの押し力の差に応じて、歩行補助装置1Aを旋回させるような回転トルク指令値を求め(手順S313)、手順S314に進む。
【0035】
手順S314では、それぞれに求められた回転トルク指令値に応じたインホイールモータ駆動信号をインホイールモータ4a〜4dに送出し、インホイールモータ4a〜4dの駆動を制御する。
【0036】
ここで、歩行補助装置1Aの動作例を示す。例えば、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方を片手で操作したり、中央コントローラーバー5cを片手で押し操作すると、歩行補助装置1Aが直進する。
【0037】
一方、例えば図4に示すように、中央コントローラーバー5cが片手で後側に回転(捻り)操作されると、左の車輪3c,3dは前側に回転し、右の車輪3a,3bは左の車輪3c,3dよりも小さい回転トルク(回転トルク0でもよい)で前側に回転する。これにより、歩行補助装置1Aが右旋回する。中央コントローラーバー5cが片手で前側に回転(捻り)操作されると、上記とは逆に動作し、歩行補助装置1Aが左旋回する。なお、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が片手で回転操作された場合についても同様である。
【0038】
以上において、インホイールモータ4a〜4dは、各車輪3a〜3dをそれぞれ回転駆動させる複数の駆動部を構成する。コントローラーバー5a〜5cは、直進または旋回動作を設定指示するための操作手段を構成する。回転角度センサ11a〜11c及び押し力センサ12a〜12cとEUC20の手順S301、S302、S303、S306、S309とは、操作手段が操作されたかどうかを判断する判断手段を構成する。ECU20の手順S312、S314は、判断手段によりコントローラーバー5a,5bの何れか一方のみが押し操作されたと判断された場合には、直進させるように、各駆動部を制御する制御手段を構成する。
【0039】
以上のように本実施形態の歩行補助装置1Aにあっては、左右のコントローラーバー5a,5bのどちらか一方のみが押し操作される、或いは中央コントローラーバー5cが押し操作された場合には、歩行補助装置1Aを直進させるようにインホイールモータ4a〜4dを制御する。これにより、歩行者が片手でコントローラーバー5a〜5cを押し操作した場合であっても、歩行補助装置1Aの直進を維持することができるので、歩行者にとって不本意な旋回を防止することが可能となる。また、コントローラーバー5a〜5cの何れかが前後回転操作された場合には、歩行補助装置1Aを旋回させるようにインホイールモータ4a〜4dを制御する。これにより、歩行者が片手でコントローラーバー5a〜5cを操作した場合であっても、歩行補助装置1Aを旋回させることができる。したがって、歩行者の意図する直進または旋回動作を行うことができ、利便性の向上を図ることができる。
【0040】
(第2の実施形態)
図5は、本発明に係わる歩行補助装置の第2の実施形態の外観を示す斜視図である。同図において、歩行補助装置1Bは、歩行補助装置1Bの直進動作または旋回動作を指示操作するための2つのコントローラーバー5a,5b及び中央コントローラーバー5cが左右方向にスライド可能にハンドル部2aに設けられている点で第1の実施形態と異なる。
【0041】
図6は、インホイールモータ4a〜4dを制御する制御系を示すブロック図である。図6において、歩行補助装置1Bは、右スライドセンサ13aと、左スライドセンサ13bと、中央スライドセンサ13cと、右押し力センサ12aと、左押し力センサ12bと、中央押し力センサ12cと、ECU20と、電源部21とを備えている。
【0042】
スライドセンサ13a〜13cは、歩行者によって左右方向にスライド操作されたコントローラーバー5a〜5cの左右のスライド量をそれぞれ検出するセンサである。スライドセンサ13a〜13cの検出信号(左右スライド信号)はECU20に送出される。
【0043】
ECU20は、スライドセンサ13a〜13cから送出された左右スライド信号と押し力センサ12a〜12cから送出された押し力信号とに基づいて、コントローラーバー5a〜5cの操作状態を判断し、その判断結果に応じてインホイールモータ4a〜4dを制御する。
【0044】
図7は、ECU20により実行される処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【0045】
図7において、まずスライドセンサ13a〜13cからの左右スライド信号及び押し力センサ12a〜12cからの押し力信号が入力される(手順S701)。続いて、中央コントローラーバー5cが操作されたかどうかを判断し(手順S702)、中央コントローラーバー5cが操作されたと判断された場合には、手順S703に進む。一方、中央コントローラーバー5cが操作されていないと判断された場合には、手順S706に進む。
【0046】
手順S702において中央コントローラーバー5cが左右スライド操作されたと判断された場合には、スライドセンサ13cからの左右スライド信号が入力されたかどうかを判断することにより、中央コントローラーバー5cが左右スライド操作されたかどうかを判断し(手順S703)、左右スライド操作がされたと判断された場合には、手順S704に進む。一方、中央コントローラーバー5cが左右スライド操作されていない、つまり中央コントローラーバー5cが押し操作されたと判断された場合には、歩行者に直進する意思があるものとして、手順S712に進む。
【0047】
手順S703においてコントローラーバー5cが左右スライド操作されたと判断されたときは、スライドセンサ13cからの左右スライド信号に基づいて、コントローラーバー5cの左右スライド量が所定の量以上であるかを判断し(手順S704)、左右スライド量が所定の量以上であると判断された場合には、手順S705に進む。一方、左右スライド量が所定の量以上でないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S712に進む。
【0048】
続いて、スライドセンサ13cからの左右スライド信号に基づいて、コントローラーバー5cの左右スライド操作の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S705)、左右スライド操作が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S713に進む。一方、左右スライド操作が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S712に進む。
【0049】
一方、手順S702において中央コントローラーバー5cの操作がされていないと判断されたときは、左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作されたかどうかを判断し(手順S706)、コントローラーバー5a,5bが同時に操作されたと判断された場合には、手順S707に進む。一方、コントローラーバー5a,5bが同時に操作されていないと判断された場合には、手順S709に進む。
【0050】
手順S706において左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作された判断されたときは、押し力センサ12a,12bの押し力信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの前後押し力の左右差が所定の力以上であるかを判断し(手順S707)、前後押し力の左右差が所定の力以上であると判断された場合には、手順S708に進む。一方、前後押し力の左右差が所定の力以上でないと判断され場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S712に進む。
【0051】
続いて、押し力センサ12a,12bからの押し力信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの前後押し力の左右差の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S708)、前後押し力の左右差が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S713に進む。一方、前後押し力の左右差が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S712に進む。
【0052】
一方、手順S706において左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作されていないと判断されたときは、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が左右スライド操作されたかどうかを判断し(手順S709)、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が左右スライド操作されたと判断された場合には、手順S710に進む。一方、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が左右スライド操作されずに押し操作されたと判断された場合には、歩行者に直進する意思があるものとして、手順S712に進む。
【0053】
手順S709において左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が操作されたと判断されたときは、スライドセンサ13a,13bの左右スライド信号に基づいて、左右スライド量が所定の量以上であるかを判断し(手順S710)、左右スライド量が所定の量以上であると判断された場合には、手順S711に進む。一方、左右スライド量が所定の量以上でないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S712に進む。
【0054】
続いて、スライドセンサ13a,13bからの左右スライド信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの左右スライド操作の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S711)、左右スライド操作が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S713に進む。一方、左右スライド操作が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S712に進む。
【0055】
手順S712では、歩行補助装置1Bを直進させるような回転トルク指令値を求め、手順S714に進む。
【0056】
一方、手順S713では、コントローラーバー5a〜5cのスライド操作方向及び量、或いは左右のコントローラーバー5a,5bの押し力の差に応じて、歩行補助装置1bを旋回させるような回転トルク指令値を求め(手順S713)、手順S714に進む。
【0057】
手順S714では、それぞれに求められた回転トルク指令値に応じたインホイールモータ駆動信号をインホイールモータ4a〜4dに送出し、インホイールモータ4a〜4dの駆動を制御する。
【0058】
例えば図8に示すように、中央コントローラーバー5cが片手で右側にスライド操作されると、左の車輪3c,3dは前側に回転し、右の車輪3a,3bは左の車輪3c,3dよりも小さい回転トルク(回転トルク0でもよい)で前側に回転する。これにより、歩行補助装置1Bが右旋回する。中央コントローラーバー5cが片手で左側にスライド操作されると、上記とは逆に動作し、歩行補助装置1Bが左旋回する。なお、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が片手でスライド操作された場合についても同様である。
【0059】
以上のように本実施形態の歩行補助装置1Bにあっては、コントローラーバー5a〜5cの何れかが左右方向にスライド操作された場合には、歩行補助装置1Bを旋回させるようにインホイールモータ4a〜4dを制御する。したがって、第1の実施形態と同様に、歩行者が片手でコントローラーバー5a〜5cを操作する場合であっても、歩行者の意図する直進または旋回動作を行うことができ、利便性の向上を図ることができる。
【0060】
(第3の実施形態)
図9は、本発明に係わる歩行補助装置の第3の実施形態の外観を示す斜視図である。同図において、歩行補助装置1Cは、歩行補助装置1Cの直進動作または旋回動作を指示操作するための2つのコントローラーバー5a,5b及び中央コントローラーバー5cが左右方向(時計回り方向または反時計回り方向)に回転可能にハンドル部2aに設けられている点で第1及び第2の実施形態と異なる。
【0061】
図10は、インホイールモータ4a〜4dを制御する制御系を示すブロック図である。図10において、歩行補助装置1Cは、右回転角度センサ14aと、左回転角度センサ14bと、中央回転角度センサ14cと、右押し力センサ12aと、左押し力センサ12bと、中央押し力センサ12cと、ECU20と、電源部21とを備えている。
【0062】
右回転角度センサ14a、左回転角度センサ14b及び中央回転角度センサ14cは、歩行者によって左右方向に回転操作されたコントローラーバー5a〜5cの左右の回転角度をそれぞれ検出するセンサである。右回転角度センサ14a、左回転角度センサ14b、及び中央回転角度センサ14cの検出信号(回転角度信号)はECU20に送出される。
【0063】
ECU20は、回転角度センサ14a〜14cから送出された左右回転角度信号と押し力センサ12a〜12cから送出された押し力信号とに基づいて、コントローラーバー5a〜5cの操作状態を判断し、その判断結果に応じてインホイールモータ4a〜4dを制御する。
【0064】
図11は、ECU20により実行される処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【0065】
図11において、まず回転角度センサ14a〜14cからの左右回転角度信号及び押し力センサ12a〜12cからの押し力信号が入力される(手順S1101)。続いて、手順S1101において中央コントローラーバー5cが操作されたかどうかを判断し(手順S1102)、中央コントローラーバー5cが操作されたと判断された場合には、手順S1103に進む。一方、中央コントローラーバー5cが操作されていないと判断された場合には、手順S1106に進む。
【0066】
手順S1102において中央コントローラーバー5cが左右回転操作されたと判断された場合には、中央回転角度センサ14cからの左右回転角度信号が入力されたかどうかを判断することにより、中央コントローラーバー5cが左右回転操作されたかどうかを判断し(手順S1103)、左右回転操作がされたと判断された場合には、手順S1104に進む。一方、中央コントローラーバー5cが左右回転操作されていない、つまり中央コントローラーバー5cが押し操作されたと判断された場合には、歩行者に直進する意思があるものとして、手順S1112に進む。
【0067】
手順S1103においてコントローラーバー5cが左右回転操作されたと判断されたときは、中央回転角度センサ14cからの左右回転角度信号に基づいて、コントローラーバー5cの左右回転角度が所定の角度以上であるかを判断し(手順S1104)、左右回転角度が所定の角度以上であると判断された場合には、手順S1105に進む。一方、左右回転角度が所定の角度以上でないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S1112に進む。
【0068】
続いて、中央回転角度センサ14cからの左右回転角度信号に基づいて、コントローラーバー5cの左右回転操作の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S1105)、左右回転操作が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S1113に進む。一方、左右回転操作が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S1112に進む。
【0069】
一方、手順S1102において中央コントローラーバー5cの操作がされていないと判断されたときは、左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作されたかどうかを判断し(手順S1106)、コントローラーバー5a,5bが同時に操作されたと判断された場合には、手順S1107に進む。一方、コントローラーバー5a,5bが同時に操作されていないと判断された場合には、手順S1109に進む。
【0070】
手順S1106において左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作された判断されたときは、押し力センサ12a,12bの押し力信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの前後押し力の左右差が所定の力以上であるかを判断し(手順S1107)、前後押し力の左右差が所定の力以上であると判断された場合には、手順S1108に進む。一方、前後押し力の左右差が所定の力以上でないと判断され場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S1112に進む。
【0071】
続いて、押し力センサ12a,12bからの押し力信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの前後押し力の左右差の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S1108)、前後押し力の左右差が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S1113に進む。一方、前後押し力の左右差が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S1112に進む。
【0072】
一方、手順S1106において左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作されていないと判断されたときは、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が左右回転操作されたかどうかを判断し(手順S1109)、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が左右回転操作されたと判断された場合には、手順S1110に進む。一方、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が左右回転操作されずに押し操作されたと判断された場合には、歩行者に直進する意思があるものとして、手順S1112に進む。
【0073】
手順S1109において左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が操作されたと判断されたときは、回転角度センサ14a,14bの左右回転角度信号に基づいて、左右回転角度が所定の角度以上であるかを判断し(手順S1110)、左右回転角度が所定の角度以上であると判断された場合には、手順S1111に進む。一方、左右回転角度が所定の角度以上でないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S1112に進む。
【0074】
続いて、回転角度センサ14a,14bからの左右回転角度信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの左右回転操作の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S1111)、左右回転操作が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S1113に進む。一方、左右回転操作が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S1112に進む。
【0075】
手順S1112では、歩行補助装置1Cを直進させるような回転トルク指令値を求め、手順S1114に進む。
【0076】
一方、手順S1113では、コントローラーバー5a〜5cの回転操作方向及び角度、或いは左右のコントローラーバー5a,5bの押し力の差に応じて、歩行補助装置1Cを旋回させるような回転トルク指令値を求め(手順S1113)、手順S1114に進む。
【0077】
手順S1114では、それぞれに求められた回転トルク指令値に応じたインホイールモータ駆動信号をインホイールモータ4a〜4dに送出し、インホイールモータ4a〜4dの駆動を制御する。
【0078】
例えば図12に示すように、中央コントローラーバー5cが片手で右側(時計回り)に回転操作されると、左の車輪3c,3dは前側に回転し、右の車輪3a,3bは左の車輪3c,3dよりも小さい回転トルク(回転トルク0でもよい)で前側に回転する。これにより、歩行補助装置1Cが右旋回する。中央コントローラーバー5cが片手で左側(反時計回り)に回転操作されると、上記とは逆動作し、歩行補助装置1Cが左旋回する。なお、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が片手で回転操作された場合についても同様である。
【0079】
以上のように本実施形態の歩行補助装置1Cにあっては、コントローラーバー5a〜5cの何れかが左右方向に回転操作された場合には、歩行補助装置1Cを旋回させるようにインホイールモータ4a〜4dを制御する。したがって、第1及び第2の実施形態と同様に、歩行者が片手でコントローラーバー5a〜5cを操作する場合であっても、歩行者の意図する直進または旋回動作を行うことができ、利便性の向上を図ることができる。
【0080】
なお、上記実施形態では、全ての車輪3a〜3dに対して回転駆動力を与えるインホイールモータ4a〜4dを設けたが、前輪のみに回転駆動力を与えても良いし、後輪のみに回転駆動力を与えても良い。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】第1の実施形態に係る歩行補助装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示した歩行補助装置の制御系を示すブロック図である。
【図3】図2に示したECUにより実行される処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図4】前後回転操作による旋回の一例を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る歩行補助装置の概観を示す斜視図である。
【図6】図5に示した歩行補助装置の制御系を示すブロック図である。
【図7】図6に示したECUにより実行される処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図8】スライド操作による旋回の一例を示す図である。
【図9】第3の実施形態に係る歩行補助装置の外観を示す斜視図である。
【図10】図9に示した歩行補助装置の制御系を示すブロック図である。
【図11】図10に示したECUにより実行される処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図12】左右回転操作による旋回の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1A,1B,1C…歩行補助装置、2…フレーム体、2a…ハンドル部、3a〜3d…車輪、4a〜4d…インホイールモータ(駆動部)、5a…右コントローラーバー(右操作部、操作手段)、5b…左コントローラーバー(左操作部、操作手段)、5c…中央コントローラーバー(中央操作部、操作手段)、11a…右回転角度センサ(判断手段)、11b…左回転角度センサ(判断手段)、11c…中央回転角度センサ(判断手段)、12a…右押し力センサ(判断手段)、12b…左押し力センサ(判断手段)、12c…中央押し力センサ(判断手段)、13a…右スライドセンサ(判断手段)、13b…左スライドセンサ(判断手段)、13c…中央スライドセンサ(判断手段)、14a…右回転角度センサ(判断手段)、14b…左回転角度センサ(判断手段)、14c…中央回転角度センサ(判断手段)、20…ECU(判断手段、制御手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、手押し車型の歩行補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の手押し車型の歩行補助装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、歩行者が望む方向にハンドル部を動かした場合に、ハンドル部に加えられた力を検出し、その検出値と目標値とを比較して車輪の駆動を調整することにより、歩行者の歩行を介助する歩行介助装置が知られている。
【特許文献1】特許3156367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、駆動部を有さない手押し車は、ハンドル部の中心から少し左右にずれたところを押した場合であっても、直進性に打ち勝つ程度の横力やモーメントが加わらない限りは、直進性を維持することができる。一方、駆動部を有する電動式手押し車は、ハンドル部に設けられたセンサによって直進操作または旋回操作を判定して駆動部を制御しているため、ハンドル部の左右どちらかにずれた位置を押し操作した場合には、旋回判定となってしまう。特許文献1に記載の手押し車では、直進・旋回制御の操作部が左右に分けて設けられている。このため、片手で操作部が押し操作されると、操作された側の操作部に力の片寄りが生じるため、歩行者が直進を保ちたい場合であっても旋回動作に移行してしまうおそれがあった。
【0004】
そこで本発明の目的は、歩行者が片手で操作を行っても、歩行者が意図する動作を実施することができる歩行補助装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る歩行補助装置は、歩行者が握るハンドル部を有するフレーム体と、フレーム体の両側に配置された左右の車輪と、各車輪をそれぞれ回転駆動させる複数の駆動部と、ハンドル部の左右両側に設けられた左操作部及び右操作部を有し、直進または旋回動作を設定指示するための操作手段と、操作手段が操作されたかどうかを判断する判断手段と、判断手段により左操作部及び右操作部の何れか一方のみが押し操作されたと判断された場合には、直進させるように各駆動部を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明に係わる歩行補助装置においては、左操作部及び右操作部のどちらか一方のみが押し操作された場合には、直進させるように各駆動部を制御する。これにより、例えば歩行者が片手で右操作部のみを押し操作した場合であっても、歩行補助装置の直進を維持することができるので、歩行者にとって不本意な旋回を防止することが可能となる。したがって、歩行者が片手で操作手段を操作する場合であっても、歩行者の意図する動作を行うことができる。
【0007】
好ましくは、操作手段は、ハンドル部における左操作部と右操作部との間に設けられた中央操作部を更に有し、制御手段は、判断手段により中央操作部が押し操作されたと判断された場合には、直進させるように各駆動部を制御する。この場合には、左操作部と右操作部との間に設けられた中央操作部を押し操作すると、歩行補助装置が直進するので、左操作部または右操作部を押し操作する場合に比べて違和感なく、片手で簡単に直進の制御を行うことができる。
【0008】
また、好ましくは、左操作部、右操作部及び中央操作部は、ハンドル部に前後方向に回転可能に設けられており、制御手段は、判断手段により左操作部、右操作部及び中央操作部の何れかが前後方向に回転操作されたと判断された場合には、旋回させるように各駆動部を制御する。この場合には、例えば中央操作部等を後側に回転操作すると右旋回させ、中央操作部等を前側に回転操作すると左旋回させるようにすることで、片手でも簡単に歩行補助装置を旋回させることが可能となる。
【0009】
また、好ましくは、左操作部、右操作部及び中央操作部は、ハンドル部に左右方向にスライド可能に設けられており、制御手段は、判断手段により左操作部、右操作部及び中央操作部の何れかが左右方向にスライド操作されたと判断された場合には、旋回させるように各駆動部を制御する。この場合には、例えば中央操作部等を右側にスライド操作すると右旋回させ、中央操作部等を左側にスライド操作すると左旋回させるようにすることで、片手でも簡単に歩行補助装置を旋回させることが可能となる。
【0010】
また、好ましくは、左操作部、右操作部及び中央操作部は、ハンドル部に左右方向に回転可能に設けられており、制御手段は、判断手段により左操作部、右操作部及び中央操作部の何れかが左右方向に回転操作されたと判断された場合には、旋回させるように各駆動部を制御する。この場合には、例えば中央操作部等を右側(時計回り)に回転操作すると右旋回させ、中央操作部等を左側(反時計回り)に回転操作すると左旋回させるようにすることで、片手でも簡単に歩行補助装置を旋回させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の歩行補助装置によれば、歩行者が片手で操作を行っても、歩行者が意図する動作を実施することができる。これにより、利便性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係わる歩行補助装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係わる歩行補助装置の第1の実施形態の外観を示す斜視図である。同図において、歩行補助装置1Aは、歩行者の歩行を補助する電動手押し車である。歩行補助装置1Aは、ハンドル部2aを有するフレーム体2と、フレーム体2の左右両側に配置された車輪3a〜3dと、各車輪3a〜3dをそれぞれ独立に回転駆動させるインホイールモータ4a〜4dと、ハンドル部2aに設けられた右コントローラーバー(右操作部)5a、左コントローラーバー(左操作部)5b、及び中央コントローラーバー(中央操作部)5cと、制御ユニット6とから構成されている。
【0014】
フレーム体2は、歩行者が握る上記のハンドル部2aと、ハンドル部2aの両端から前側斜め下方に延びる一対のメインフレーム2bと、各メインフレーム2bの略中央部から後側斜め下方にそれぞれ延びる一対のサブフレーム2cと、各メインフレーム2bに対して各サブフレーム2cを回動自在に連結する一対のジョイント2dとにより構成されている。各メインフレーム2bの下端部には、上記の車輪(前輪)3a,3cが取り付けられ、各サブフレーム2cの下端部には、上記の車輪(後輪)3b,3dが取り付けられている。
【0015】
ハンドル部2aは、歩行者が把持可能な高さに設けられている。ハンドル部2aには、歩行補助装置1Aの直進動作または旋回動作を指示操作するための上記2つのコントローラーバー5a,5b及び中央コントローラーバー5cが前後方向に回転可能に設けられている。
【0016】
インホイールモータ4a〜4dは、車輪3a〜3dの回転駆動力を各々発生する電動モータである。
【0017】
制御ユニット6は、フレーム体2のジョイント2dから吊り下げられている。制御ユニット6の内部には、ECU20及び電源部21(図2参照)が設けられている。また、制御ユニット6は、荷物を収容するための荷室を兼ね備えている。
【0018】
図2は、インホイールモータ4a〜4dを制御する制御系を示すブロック図である。図2において、歩行補助装置1Aは、右回転角度センサ11aと、左回転角度センサ11bと、中央回転角度センサ11cと、右押し力センサ12aと、左押し力センサ12bと、中央押し力センサ12cと、ECU(Electronic Control Unit)20と、電源部21とを備えている。
【0019】
右回転角度センサ11a、左回転角度センサ11b、及び中央回転角度センサ11cは、歩行者によって前後方向に回転(捻り)操作されたコントローラーバー5a〜5cの前後回転角度をそれぞれ検出するセンサである。右回転角度センサ11a、左回転角度センサ11b、及び中央回転角度センサ11cの検出信号(回転角度信号)はECU20に送出される。
【0020】
右押し力センサ12a、左押し力センサ12b、及び中央押し力センサ12cは、歩行者によって押し操作されたコントローラーバー5a〜5cの前後押し力をそれぞれ検出するセンサである。右押し力センサ12a、左押し力センサ12b、及び中央押し力センサ12cの検出信号(押し力信号)はECU20に送出される。
【0021】
ECU20は、回転角度センサ11a〜11cから送出された前後回転角度信号と押し力センサ12a〜12cから送出された押し力信号とに基づいて、コントローラーバー5a〜5cの操作状態を判断し、その判断結果に応じてインホイールモータ4a〜4dを制御する。
【0022】
図3は、ECU20により実行される処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【0023】
図3において、まず回転角度センサ11a〜11cからの前後回転角度信号及び押し力センサ12a〜12cからの押し力信号が入力される(手順S301)。続いて、中央コントローラーバー5cが操作されたかどうかを判断し(手順S302)、中央コントローラーバー5cが操作されたと判断された場合には、手順S303に進む。一方、中央コントローラーバー5cが操作されていないと判断された場合には、手順S306に進む。
【0024】
手順S302において中央コントローラーバー5cが前後回転操作されたと判断された場合には、中央回転角度センサ11cからの前後回転角度信号が入力されたかどうかを判断することにより、中央コントローラーバー5cが前後回転操作されたかどうかを判断し(手順S303)、前後回転操作がされたと判断された場合には、手順S304に進む。一方、中央コントローラーバー5cが前後回転操作されていない、つまり中央コントローラーバー5cが押し操作されたと判断された場合には、歩行者に直進する意思があるものとして、手順S312に進む。
【0025】
手順S303においてコントローラーバー5cが前後回転操作されたと判断されたときは、中央回転角度センサ11cからの前後回転角度信号に基づいて、コントローラーバー5cの前後回転角度が所定の角度以上であるかを判断し(手順S304)、前後回転角度が所定の角度以上であると判断された場合には、手順S305に進む。一方、前後回転角度が所定の角度以上でないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S312に進む。
【0026】
続いて、回転角度センサ11cからの前後回転角度信号に基づいて、コントローラーバー5cの前後回転操作の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S305)、前後回転操作が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S313に進む。一方、前後回転操作が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S312に進む。
【0027】
一方、手順S302において中央コントローラーバー5cの操作がされていないと判断されたときは、左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作されたかどうかを判断し(手順S306)、コントローラーバー5a,5bが同時に操作されたと判断された場合には、手順S307に進む。一方、コントローラーバー5a,5bが同時に操作されていないと判断された場合には、手順S309に進む。
【0028】
手順S306において左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作された判断されたときは、押し力センサ12a,12bの押し力信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの前後押し力の左右差が所定の力以上であるかを判断し(手順S307)、前後押し力の左右差が所定の力以上であると判断された場合には、手順S308に進む。一方、前後押し力の左右差が所定の力以上でないと判断され場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S312に進む。
【0029】
続いて、押し力センサ12a,12bからの押し力信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの前後押し力の左右差の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S308)、前後押し力の左右差が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S313に進む。一方、前後押し力の左右差が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S312に進む。
【0030】
一方、手順S306において左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作されていないと判断されたときは、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が前後回転操作されたかどうかを判断し(手順S309)、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が前後回転操作されたと判断された場合には、手順S310に進む。一方、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が前後回転操作されず、押し操作されたと判断された場合には、歩行者に直進する意思があるものとして、手順S312に進む。
【0031】
手順S309において左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が操作されたと判断されたときは、回転角度センサ11a,11bの前後回転角度信号に基づいて、前後回転角度が所定の角度以上であるかを判断し(手順S310)、前後回転角度が所定の角度以上であると判断された場合には、手順S311に進む。一方、前後回転角度が所定の角度以上でないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S312に進む。
【0032】
続いて、回転角度センサ11a,11bからの前後回転角度信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの前後回転操作の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S311)、前後回転操作が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S313に進む。一方、前後回転操作が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S312に進む。
【0033】
手順S312では、歩行補助装置1Aを直進させるような回転トルク指令値を求め、手順S314に進む。
【0034】
一方、手順S313では、コントローラーバー5a〜5cの回転操作方向及び角度、或いは左右のコントローラーバー5a,5bの押し力の差に応じて、歩行補助装置1Aを旋回させるような回転トルク指令値を求め(手順S313)、手順S314に進む。
【0035】
手順S314では、それぞれに求められた回転トルク指令値に応じたインホイールモータ駆動信号をインホイールモータ4a〜4dに送出し、インホイールモータ4a〜4dの駆動を制御する。
【0036】
ここで、歩行補助装置1Aの動作例を示す。例えば、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方を片手で操作したり、中央コントローラーバー5cを片手で押し操作すると、歩行補助装置1Aが直進する。
【0037】
一方、例えば図4に示すように、中央コントローラーバー5cが片手で後側に回転(捻り)操作されると、左の車輪3c,3dは前側に回転し、右の車輪3a,3bは左の車輪3c,3dよりも小さい回転トルク(回転トルク0でもよい)で前側に回転する。これにより、歩行補助装置1Aが右旋回する。中央コントローラーバー5cが片手で前側に回転(捻り)操作されると、上記とは逆に動作し、歩行補助装置1Aが左旋回する。なお、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が片手で回転操作された場合についても同様である。
【0038】
以上において、インホイールモータ4a〜4dは、各車輪3a〜3dをそれぞれ回転駆動させる複数の駆動部を構成する。コントローラーバー5a〜5cは、直進または旋回動作を設定指示するための操作手段を構成する。回転角度センサ11a〜11c及び押し力センサ12a〜12cとEUC20の手順S301、S302、S303、S306、S309とは、操作手段が操作されたかどうかを判断する判断手段を構成する。ECU20の手順S312、S314は、判断手段によりコントローラーバー5a,5bの何れか一方のみが押し操作されたと判断された場合には、直進させるように、各駆動部を制御する制御手段を構成する。
【0039】
以上のように本実施形態の歩行補助装置1Aにあっては、左右のコントローラーバー5a,5bのどちらか一方のみが押し操作される、或いは中央コントローラーバー5cが押し操作された場合には、歩行補助装置1Aを直進させるようにインホイールモータ4a〜4dを制御する。これにより、歩行者が片手でコントローラーバー5a〜5cを押し操作した場合であっても、歩行補助装置1Aの直進を維持することができるので、歩行者にとって不本意な旋回を防止することが可能となる。また、コントローラーバー5a〜5cの何れかが前後回転操作された場合には、歩行補助装置1Aを旋回させるようにインホイールモータ4a〜4dを制御する。これにより、歩行者が片手でコントローラーバー5a〜5cを操作した場合であっても、歩行補助装置1Aを旋回させることができる。したがって、歩行者の意図する直進または旋回動作を行うことができ、利便性の向上を図ることができる。
【0040】
(第2の実施形態)
図5は、本発明に係わる歩行補助装置の第2の実施形態の外観を示す斜視図である。同図において、歩行補助装置1Bは、歩行補助装置1Bの直進動作または旋回動作を指示操作するための2つのコントローラーバー5a,5b及び中央コントローラーバー5cが左右方向にスライド可能にハンドル部2aに設けられている点で第1の実施形態と異なる。
【0041】
図6は、インホイールモータ4a〜4dを制御する制御系を示すブロック図である。図6において、歩行補助装置1Bは、右スライドセンサ13aと、左スライドセンサ13bと、中央スライドセンサ13cと、右押し力センサ12aと、左押し力センサ12bと、中央押し力センサ12cと、ECU20と、電源部21とを備えている。
【0042】
スライドセンサ13a〜13cは、歩行者によって左右方向にスライド操作されたコントローラーバー5a〜5cの左右のスライド量をそれぞれ検出するセンサである。スライドセンサ13a〜13cの検出信号(左右スライド信号)はECU20に送出される。
【0043】
ECU20は、スライドセンサ13a〜13cから送出された左右スライド信号と押し力センサ12a〜12cから送出された押し力信号とに基づいて、コントローラーバー5a〜5cの操作状態を判断し、その判断結果に応じてインホイールモータ4a〜4dを制御する。
【0044】
図7は、ECU20により実行される処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【0045】
図7において、まずスライドセンサ13a〜13cからの左右スライド信号及び押し力センサ12a〜12cからの押し力信号が入力される(手順S701)。続いて、中央コントローラーバー5cが操作されたかどうかを判断し(手順S702)、中央コントローラーバー5cが操作されたと判断された場合には、手順S703に進む。一方、中央コントローラーバー5cが操作されていないと判断された場合には、手順S706に進む。
【0046】
手順S702において中央コントローラーバー5cが左右スライド操作されたと判断された場合には、スライドセンサ13cからの左右スライド信号が入力されたかどうかを判断することにより、中央コントローラーバー5cが左右スライド操作されたかどうかを判断し(手順S703)、左右スライド操作がされたと判断された場合には、手順S704に進む。一方、中央コントローラーバー5cが左右スライド操作されていない、つまり中央コントローラーバー5cが押し操作されたと判断された場合には、歩行者に直進する意思があるものとして、手順S712に進む。
【0047】
手順S703においてコントローラーバー5cが左右スライド操作されたと判断されたときは、スライドセンサ13cからの左右スライド信号に基づいて、コントローラーバー5cの左右スライド量が所定の量以上であるかを判断し(手順S704)、左右スライド量が所定の量以上であると判断された場合には、手順S705に進む。一方、左右スライド量が所定の量以上でないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S712に進む。
【0048】
続いて、スライドセンサ13cからの左右スライド信号に基づいて、コントローラーバー5cの左右スライド操作の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S705)、左右スライド操作が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S713に進む。一方、左右スライド操作が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S712に進む。
【0049】
一方、手順S702において中央コントローラーバー5cの操作がされていないと判断されたときは、左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作されたかどうかを判断し(手順S706)、コントローラーバー5a,5bが同時に操作されたと判断された場合には、手順S707に進む。一方、コントローラーバー5a,5bが同時に操作されていないと判断された場合には、手順S709に進む。
【0050】
手順S706において左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作された判断されたときは、押し力センサ12a,12bの押し力信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの前後押し力の左右差が所定の力以上であるかを判断し(手順S707)、前後押し力の左右差が所定の力以上であると判断された場合には、手順S708に進む。一方、前後押し力の左右差が所定の力以上でないと判断され場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S712に進む。
【0051】
続いて、押し力センサ12a,12bからの押し力信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの前後押し力の左右差の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S708)、前後押し力の左右差が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S713に進む。一方、前後押し力の左右差が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S712に進む。
【0052】
一方、手順S706において左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作されていないと判断されたときは、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が左右スライド操作されたかどうかを判断し(手順S709)、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が左右スライド操作されたと判断された場合には、手順S710に進む。一方、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が左右スライド操作されずに押し操作されたと判断された場合には、歩行者に直進する意思があるものとして、手順S712に進む。
【0053】
手順S709において左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が操作されたと判断されたときは、スライドセンサ13a,13bの左右スライド信号に基づいて、左右スライド量が所定の量以上であるかを判断し(手順S710)、左右スライド量が所定の量以上であると判断された場合には、手順S711に進む。一方、左右スライド量が所定の量以上でないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S712に進む。
【0054】
続いて、スライドセンサ13a,13bからの左右スライド信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの左右スライド操作の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S711)、左右スライド操作が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S713に進む。一方、左右スライド操作が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S712に進む。
【0055】
手順S712では、歩行補助装置1Bを直進させるような回転トルク指令値を求め、手順S714に進む。
【0056】
一方、手順S713では、コントローラーバー5a〜5cのスライド操作方向及び量、或いは左右のコントローラーバー5a,5bの押し力の差に応じて、歩行補助装置1bを旋回させるような回転トルク指令値を求め(手順S713)、手順S714に進む。
【0057】
手順S714では、それぞれに求められた回転トルク指令値に応じたインホイールモータ駆動信号をインホイールモータ4a〜4dに送出し、インホイールモータ4a〜4dの駆動を制御する。
【0058】
例えば図8に示すように、中央コントローラーバー5cが片手で右側にスライド操作されると、左の車輪3c,3dは前側に回転し、右の車輪3a,3bは左の車輪3c,3dよりも小さい回転トルク(回転トルク0でもよい)で前側に回転する。これにより、歩行補助装置1Bが右旋回する。中央コントローラーバー5cが片手で左側にスライド操作されると、上記とは逆に動作し、歩行補助装置1Bが左旋回する。なお、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が片手でスライド操作された場合についても同様である。
【0059】
以上のように本実施形態の歩行補助装置1Bにあっては、コントローラーバー5a〜5cの何れかが左右方向にスライド操作された場合には、歩行補助装置1Bを旋回させるようにインホイールモータ4a〜4dを制御する。したがって、第1の実施形態と同様に、歩行者が片手でコントローラーバー5a〜5cを操作する場合であっても、歩行者の意図する直進または旋回動作を行うことができ、利便性の向上を図ることができる。
【0060】
(第3の実施形態)
図9は、本発明に係わる歩行補助装置の第3の実施形態の外観を示す斜視図である。同図において、歩行補助装置1Cは、歩行補助装置1Cの直進動作または旋回動作を指示操作するための2つのコントローラーバー5a,5b及び中央コントローラーバー5cが左右方向(時計回り方向または反時計回り方向)に回転可能にハンドル部2aに設けられている点で第1及び第2の実施形態と異なる。
【0061】
図10は、インホイールモータ4a〜4dを制御する制御系を示すブロック図である。図10において、歩行補助装置1Cは、右回転角度センサ14aと、左回転角度センサ14bと、中央回転角度センサ14cと、右押し力センサ12aと、左押し力センサ12bと、中央押し力センサ12cと、ECU20と、電源部21とを備えている。
【0062】
右回転角度センサ14a、左回転角度センサ14b及び中央回転角度センサ14cは、歩行者によって左右方向に回転操作されたコントローラーバー5a〜5cの左右の回転角度をそれぞれ検出するセンサである。右回転角度センサ14a、左回転角度センサ14b、及び中央回転角度センサ14cの検出信号(回転角度信号)はECU20に送出される。
【0063】
ECU20は、回転角度センサ14a〜14cから送出された左右回転角度信号と押し力センサ12a〜12cから送出された押し力信号とに基づいて、コントローラーバー5a〜5cの操作状態を判断し、その判断結果に応じてインホイールモータ4a〜4dを制御する。
【0064】
図11は、ECU20により実行される処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【0065】
図11において、まず回転角度センサ14a〜14cからの左右回転角度信号及び押し力センサ12a〜12cからの押し力信号が入力される(手順S1101)。続いて、手順S1101において中央コントローラーバー5cが操作されたかどうかを判断し(手順S1102)、中央コントローラーバー5cが操作されたと判断された場合には、手順S1103に進む。一方、中央コントローラーバー5cが操作されていないと判断された場合には、手順S1106に進む。
【0066】
手順S1102において中央コントローラーバー5cが左右回転操作されたと判断された場合には、中央回転角度センサ14cからの左右回転角度信号が入力されたかどうかを判断することにより、中央コントローラーバー5cが左右回転操作されたかどうかを判断し(手順S1103)、左右回転操作がされたと判断された場合には、手順S1104に進む。一方、中央コントローラーバー5cが左右回転操作されていない、つまり中央コントローラーバー5cが押し操作されたと判断された場合には、歩行者に直進する意思があるものとして、手順S1112に進む。
【0067】
手順S1103においてコントローラーバー5cが左右回転操作されたと判断されたときは、中央回転角度センサ14cからの左右回転角度信号に基づいて、コントローラーバー5cの左右回転角度が所定の角度以上であるかを判断し(手順S1104)、左右回転角度が所定の角度以上であると判断された場合には、手順S1105に進む。一方、左右回転角度が所定の角度以上でないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S1112に進む。
【0068】
続いて、中央回転角度センサ14cからの左右回転角度信号に基づいて、コントローラーバー5cの左右回転操作の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S1105)、左右回転操作が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S1113に進む。一方、左右回転操作が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S1112に進む。
【0069】
一方、手順S1102において中央コントローラーバー5cの操作がされていないと判断されたときは、左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作されたかどうかを判断し(手順S1106)、コントローラーバー5a,5bが同時に操作されたと判断された場合には、手順S1107に進む。一方、コントローラーバー5a,5bが同時に操作されていないと判断された場合には、手順S1109に進む。
【0070】
手順S1106において左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作された判断されたときは、押し力センサ12a,12bの押し力信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの前後押し力の左右差が所定の力以上であるかを判断し(手順S1107)、前後押し力の左右差が所定の力以上であると判断された場合には、手順S1108に進む。一方、前後押し力の左右差が所定の力以上でないと判断され場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S1112に進む。
【0071】
続いて、押し力センサ12a,12bからの押し力信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの前後押し力の左右差の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S1108)、前後押し力の左右差が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S1113に進む。一方、前後押し力の左右差が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S1112に進む。
【0072】
一方、手順S1106において左右のコントローラーバー5a,5bが同時に操作されていないと判断されたときは、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が左右回転操作されたかどうかを判断し(手順S1109)、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が左右回転操作されたと判断された場合には、手順S1110に進む。一方、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が左右回転操作されずに押し操作されたと判断された場合には、歩行者に直進する意思があるものとして、手順S1112に進む。
【0073】
手順S1109において左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が操作されたと判断されたときは、回転角度センサ14a,14bの左右回転角度信号に基づいて、左右回転角度が所定の角度以上であるかを判断し(手順S1110)、左右回転角度が所定の角度以上であると判断された場合には、手順S1111に進む。一方、左右回転角度が所定の角度以上でないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S1112に進む。
【0074】
続いて、回転角度センサ14a,14bからの左右回転角度信号に基づいて、コントローラーバー5a,5bの左右回転操作の持続時間が所定の時間以上であるかを判断し(手順S1111)、左右回転操作が所定の時間以上持続していると判断された場合には、手順S1113に進む。一方、左右回転操作が所定の時間以上持続していないと判断された場合には、歩行者に旋回する意思がないものとして、手順S1112に進む。
【0075】
手順S1112では、歩行補助装置1Cを直進させるような回転トルク指令値を求め、手順S1114に進む。
【0076】
一方、手順S1113では、コントローラーバー5a〜5cの回転操作方向及び角度、或いは左右のコントローラーバー5a,5bの押し力の差に応じて、歩行補助装置1Cを旋回させるような回転トルク指令値を求め(手順S1113)、手順S1114に進む。
【0077】
手順S1114では、それぞれに求められた回転トルク指令値に応じたインホイールモータ駆動信号をインホイールモータ4a〜4dに送出し、インホイールモータ4a〜4dの駆動を制御する。
【0078】
例えば図12に示すように、中央コントローラーバー5cが片手で右側(時計回り)に回転操作されると、左の車輪3c,3dは前側に回転し、右の車輪3a,3bは左の車輪3c,3dよりも小さい回転トルク(回転トルク0でもよい)で前側に回転する。これにより、歩行補助装置1Cが右旋回する。中央コントローラーバー5cが片手で左側(反時計回り)に回転操作されると、上記とは逆動作し、歩行補助装置1Cが左旋回する。なお、左右のコントローラーバー5a,5bの何れか一方が片手で回転操作された場合についても同様である。
【0079】
以上のように本実施形態の歩行補助装置1Cにあっては、コントローラーバー5a〜5cの何れかが左右方向に回転操作された場合には、歩行補助装置1Cを旋回させるようにインホイールモータ4a〜4dを制御する。したがって、第1及び第2の実施形態と同様に、歩行者が片手でコントローラーバー5a〜5cを操作する場合であっても、歩行者の意図する直進または旋回動作を行うことができ、利便性の向上を図ることができる。
【0080】
なお、上記実施形態では、全ての車輪3a〜3dに対して回転駆動力を与えるインホイールモータ4a〜4dを設けたが、前輪のみに回転駆動力を与えても良いし、後輪のみに回転駆動力を与えても良い。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】第1の実施形態に係る歩行補助装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示した歩行補助装置の制御系を示すブロック図である。
【図3】図2に示したECUにより実行される処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図4】前後回転操作による旋回の一例を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る歩行補助装置の概観を示す斜視図である。
【図6】図5に示した歩行補助装置の制御系を示すブロック図である。
【図7】図6に示したECUにより実行される処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図8】スライド操作による旋回の一例を示す図である。
【図9】第3の実施形態に係る歩行補助装置の外観を示す斜視図である。
【図10】図9に示した歩行補助装置の制御系を示すブロック図である。
【図11】図10に示したECUにより実行される処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図12】左右回転操作による旋回の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1A,1B,1C…歩行補助装置、2…フレーム体、2a…ハンドル部、3a〜3d…車輪、4a〜4d…インホイールモータ(駆動部)、5a…右コントローラーバー(右操作部、操作手段)、5b…左コントローラーバー(左操作部、操作手段)、5c…中央コントローラーバー(中央操作部、操作手段)、11a…右回転角度センサ(判断手段)、11b…左回転角度センサ(判断手段)、11c…中央回転角度センサ(判断手段)、12a…右押し力センサ(判断手段)、12b…左押し力センサ(判断手段)、12c…中央押し力センサ(判断手段)、13a…右スライドセンサ(判断手段)、13b…左スライドセンサ(判断手段)、13c…中央スライドセンサ(判断手段)、14a…右回転角度センサ(判断手段)、14b…左回転角度センサ(判断手段)、14c…中央回転角度センサ(判断手段)、20…ECU(判断手段、制御手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者が握るハンドル部を有するフレーム体と、
前記フレーム体の両側に配置された左右の車輪と、
前記各車輪をそれぞれ回転駆動させる複数の駆動部と、
前記ハンドル部の左右両側に設けられた左操作部及び右操作部を有し、直進または旋回動作を設定指示するための操作手段と、
前記操作手段が操作されたかどうかを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記左操作部及び前記右操作部の何れか一方のみが押し操作されたと判断された場合には、直進させるように前記各駆動部を制御する制御手段とを備えることを特徴とする歩行補助装置。
【請求項2】
前記操作手段は、前記ハンドル部における前記左操作部と前記右操作部との間に設けられた中央操作部を更に有し、
前記制御手段は、前記判断手段により前記中央操作部が押し操作されたと判断された場合には、直進させるように前記各駆動部を制御することを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置。
【請求項3】
前記左操作部、前記右操作部及び前記中央操作部は、前記ハンドル部に前後方向に回転可能に設けられており、
前記制御手段は、前記判断手段により前記左操作部、前記右操作部及び前記中央操作部の何れかが前後方向に回転操作されたと判断された場合には、旋回させるように前記各駆動部を制御することを特徴とする請求項2に記載の歩行補助装置。
【請求項4】
前記左操作部、前記右操作部及び前記中央操作部は、前記ハンドル部に左右方向にスライド可能に設けられており、
前記制御手段は、前記判断手段により前記左操作部、前記右操作部及び前記中央操作部の何れかが左右方向にスライド操作されたと判断された場合には、旋回させるように前記各駆動部を制御することを特徴とする請求項2に記載の歩行補助装置。
【請求項5】
前記左操作部、前記右操作部及び前記中央操作部は、前記ハンドル部に左右方向に回転可能に設けられており、
前記制御手段は、前記判断手段により前記左操作部、前記右操作部及び前記中央操作部の何れかが左右方向に回転操作されたと判断された場合には、旋回させるように前記各駆動部を制御することを特徴とする請求項2に記載の歩行補助装置。
【請求項1】
歩行者が握るハンドル部を有するフレーム体と、
前記フレーム体の両側に配置された左右の車輪と、
前記各車輪をそれぞれ回転駆動させる複数の駆動部と、
前記ハンドル部の左右両側に設けられた左操作部及び右操作部を有し、直進または旋回動作を設定指示するための操作手段と、
前記操作手段が操作されたかどうかを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記左操作部及び前記右操作部の何れか一方のみが押し操作されたと判断された場合には、直進させるように前記各駆動部を制御する制御手段とを備えることを特徴とする歩行補助装置。
【請求項2】
前記操作手段は、前記ハンドル部における前記左操作部と前記右操作部との間に設けられた中央操作部を更に有し、
前記制御手段は、前記判断手段により前記中央操作部が押し操作されたと判断された場合には、直進させるように前記各駆動部を制御することを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置。
【請求項3】
前記左操作部、前記右操作部及び前記中央操作部は、前記ハンドル部に前後方向に回転可能に設けられており、
前記制御手段は、前記判断手段により前記左操作部、前記右操作部及び前記中央操作部の何れかが前後方向に回転操作されたと判断された場合には、旋回させるように前記各駆動部を制御することを特徴とする請求項2に記載の歩行補助装置。
【請求項4】
前記左操作部、前記右操作部及び前記中央操作部は、前記ハンドル部に左右方向にスライド可能に設けられており、
前記制御手段は、前記判断手段により前記左操作部、前記右操作部及び前記中央操作部の何れかが左右方向にスライド操作されたと判断された場合には、旋回させるように前記各駆動部を制御することを特徴とする請求項2に記載の歩行補助装置。
【請求項5】
前記左操作部、前記右操作部及び前記中央操作部は、前記ハンドル部に左右方向に回転可能に設けられており、
前記制御手段は、前記判断手段により前記左操作部、前記右操作部及び前記中央操作部の何れかが左右方向に回転操作されたと判断された場合には、旋回させるように前記各駆動部を制御することを特徴とする請求項2に記載の歩行補助装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−148312(P2009−148312A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326368(P2007−326368)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
[ Back to top ]