説明

歩行補助装置

【課題】左右方向の傾斜した路面に好適に対処することが可能な歩行補助装置を提供する。
【解決手段】歩行補助装置10は、左右一対のジョイントの間に横架された支持部材であって、左右一対のジョイントにより左右方向軸回りに回動自在に支持されると共に、前後方向軸回りに回動自在に構成された少なくとも一つの回動支持部を有する支持部材26と、支持部材の回動支持部から吊り下げられた、前側車輪および後側車輪の駆動制御用の電装部品22と、支持部材に対する電装部品の前後方向軸回りの吊下げ角を検出する吊下げ角センサ34と、吊下げ角センサにより検出された電装部品の前後方向軸回りの吊下げ角に基づいて、左側メインフレームおよび左側サブフレームの連結角度および右側メインフレームおよび右側サブフレームの連結角度をそれぞれ独立して制御するコントローラ12dと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者の歩行を補助するための歩行補助装置、特に手押し車型の歩行補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来文献(特許文献1‐4)には、歩行補助装置の例が示されている。
【特許文献1】特許3156367号
【特許文献2】特開平10‐216183号公報
【特許文献3】国際公開WO98/41182
【特許文献4】特開昭61‐501611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
歩行補助装置は、平坦な路面上で使用されるだけではなく、傾斜した路面上で使用されることもある。特に、路面が歩行補助装置の進行方向に対して垂直な方向(言い換えれば、歩行者の左右方向)に傾斜している場合には、歩行補助装置は不安定な状態となる。路面が過度に左右方向に傾斜している場合には、歩行補助装置が横転してしまう虞がある。
【0004】
また、路面が歩行補助装置の進行方向に対して垂直な方向に傾斜している場合には、歩行補助装置の姿勢が歩行者に対して斜めになってしまう。例えば、歩行者の左右方向に傾斜した路面では、歩行補助装置のハンドルが歩行者に対して左側または右側に移動してしまう。このように、歩行者の左右方向に傾斜した路面では、歩行補助装置は歩行者にとって使用しづらいものとなる。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、左右方向の傾斜した路面に好適に対処することが可能な歩行補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明の歩行補助装置は、歩行者が把持可能な高さで路面に対して水平に延設されるハンドルと、ハンドルの両端から歩行者の前側の斜め下方に向けて路面近傍まで延びる左右一対のメインフレームと、メインフレームの途中部分から歩行者付近の路面に向けて路面近傍まで延びる左右一対のサブフレームと、メインフレームの途中部分に設けられ、メインフレームに対してサブフレームを回動自在に連結する左右一対のジョイントと、メインフレームの路面近傍の下端に設けられ左右一対の前側車輪と、サブフレームの路面近傍の下端に設けられ左右一対の後側車輪と、左右一対のジョイントの間に横架された支持部材であって、左右一対のジョイントにより左右方向軸回りに回動自在に支持されると共に、前後方向軸回りに回動自在に構成された少なくとも一つの回動支持部を有する支持部材と、支持部材の回動支持部から吊り下げられた、前側車輪および後側車輪の駆動制御用の電装部品と、支持部材に対する電装部品の前後方向軸回りの吊下げ角を検出する吊下げ角センサと、吊下げ角センサにより検出された電装部品の前後方向軸回りの吊下げ角に基づいて、左側メインフレームおよび左側サブフレームの連結角度および右側メインフレームおよび右側サブフレームの連結角度をそれぞれ独立して制御するコントローラと、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の歩行補助装置では、左右一対のジョイントの間に支持部材が横架されており、この支持部材は、左右一対のジョイントにより左右方向軸回りに回動自在に支持されると共に、前後方向軸回りに回動自在に構成された回動支持部を有している。この支持部材の回動支持部には、前側車輪および後側車輪の駆動制御用の電装部品が吊り下げられており、吊下げ角センサが支持部材に対する電装部品の前後方向軸回りの吊下げ角を検出する。コントローラは、吊下げ角センサにより検出された電装部品の前後方向軸回りの吊下げ角に基づいて、左側メインフレームおよび左側サブフレームの連結角度および右側メインフレームおよび右側サブフレームの連結角度をそれぞれ独立して制御する。このため、本発明の歩行補助装置によれば、路面が左右方向に傾斜していても、左側メインフレームおよび左側サブフレームの連結角度および右側メインフレームおよび右側サブフレームの連結角度をそれぞれ独立して制御することで、歩行補助装置を安定な状態とすることができる。また、本発明の歩行補助装置によれば、路面が左右方向に傾斜していても、左側メインフレームおよび左側サブフレームの連結角度および右側メインフレームおよび右側サブフレームの連結角度をそれぞれ独立して制御することで、ハンドルの左右への移動を軽減することができる。
【0008】
また、本発明の歩行補助装置において、コントローラは、吊下げ角センサにより検出された電装部品の前後方向軸回りの吊下げ角に基づいて、左側が山側であり右側が谷側であると判定される場合に、右側メインフレームおよび右側サブフレームの連結角度よりも、左側メインフレームおよび左側サブフレームの連結角度を大きくすることが好ましい。この構成によれば、左側が山側であり右側が谷側であると判定される場合に、右側メインフレームおよび右側サブフレームの連結角度よりも、左側メインフレームおよび左側サブフレームの連結角度を大きくするため、歩行補助装置を安定な状態とすることができる。
【0009】
また、本発明の歩行補助装置において、コントローラは、吊下げ角センサにより検出された電装部品の前後方向軸回りの吊下げ角に基づいて、左側が谷側であり右側が山側であると判定される場合に、左側メインフレームおよび左側サブフレームの連結角度よりも、右側メインフレームおよび右側サブフレームの連結角度を大きくすることが好ましい。この構成によれば、左側が谷側であり右側が山側であると判定される場合に、左側メインフレームおよび左側サブフレームの連結角度よりも、右側メインフレームおよび右側サブフレームの連結角度を大きくするため、歩行補助装置を安定な状態とすることができる。
【0010】
また、本発明の歩行補助装置は、左側メインフレームおよび左側サブフレームの連結角度を調節自在な左側ジョイントアクチュエータと、右側メインフレームおよび右側サブフレームの連結角度を調節自在な右側ジョイントアクチュエータと、をさらに備え、コントローラは、吊下げ角センサにより検出された電装部品の前後方向軸回りの吊下げ角に基づいて、左側ジョイントアクチュエータおよび右側ジョイントアクチュエータのそれぞれを制御して、左前側車輪から左後側車輪までの左側車輪間距離および右前側車輪から右後側車輪までの右側車輪間距離を調節することにより、メインフレームおよびサブフレームの連結角度を制御することが好ましい。この構成によれば、メインフレームおよびサブフレームの連結角度を制御するために、左側ジョイントアクチュエータおよび右側ジョイントアクチュエータのそれぞれを制御するため、歩行補助装置を安定な状態とすることができる。
【0011】
また、本発明の歩行補助装置において、コントローラは、ハンドルが水平な状態を維持するように、左側メインフレームおよび左側サブフレームの連結角度および右側メインフレームおよび右側サブフレームの連結角度をそれぞれ独立して制御する。よって、傾斜した路面であってもハンドルが略水平となるため、歩行者にとって歩行補助装置の使い心地を向上することができる。
【0012】
また、本発明の歩行補助装置において、各車輪は、車輪にモータが内蔵されたインホイールモータであってもよい。また、本発明の歩行補助装置において、電装部品は、各車輪に電力を供給するための電源ユニットであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、左右方向の傾斜した路面に好適に対処することが可能な歩行補助装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素または同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
図1および図2は、本実施形態に係る歩行補助装置10の外観を示している。また、図3は、本実施形態に係る歩行補助装置10のブロック図を示している。図1、図2および図3を参照して、本実施形態に係る歩行補助装置10の構成を説明する。
【0016】
歩行補助装置10は手押し車型であり、ハンドル12、メインフレーム14L,14R、サブフレーム16L,16R、ジョイント18L,18R、支持部材26、電源ユニット22および車輪20FL,20FR,20RL,20RRにより構成されている。図2に示されるように、歩行補助装置10は、歩行者が歩行補助装置10を手前に配置して、歩行補助装置10の上端に配置されるハンドル12を持つことにより、歩行補助装置10が歩行者を支持し、歩行者の歩行を補助するように構成されている。
【0017】
歩行補助装置10のハンドル12は、歩行者の胸部手前の把持可能な高さにおいて、路面に対して左右方向に水平に延設されている。ハンドル12には、歩行者が歩行補助装置10を制御するための複数のスイッチ類12a,12b,12c(使用開始/終了スイッチ12bなど)が設けられている。また、ハンドル12の内部には、スイッチ類12a,12b,12cからの信号を取り込んで歩行補助装置10の動作を制御するためのコントローラ12dが設けられている。また、ハンドル12の内部には、歩行者がハンドル12を押す力を検出するための押力センサ13が設けられている。
【0018】
一対のメインフレーム14L,14Rは、ハンドル12の両端から歩行者の前側の斜め下方に向けて延びている。一対のメインフレーム14L,14Rは、ハンドル12の左端から延びる左側のメインフレーム14Lと、ハンドル12の右端から延びる右側のメインフレーム14Rとからなる。各メインフレーム14L,14Rは路面近傍まで延びており、各メインフレーム14L,14Rの先端には前側車輪20FL,20FRが回転自在に取り付けられている。
【0019】
一対のサブフレーム16L,16Rは、左側メインフレーム14Lから延びる左側サブフレーム16Lと、右側メインフレーム14Rから延びる右側サブフレーム16Rとからなる。一対のサブフレーム16L,16Rは、メインフレーム14L,14Rの途中部分から斜め下方に向けて延びている。より詳しく説明すると、一対のサブフレーム16L,16Rは、メインフレーム14L,14Rの途中部分に設けられたジョイント18L,18Rから、歩行者付近の路面に向けて延びている。各サブフレーム16L,16Rは路面近傍まで延びており、各サブフレーム16L,16Rの先端には後側車輪20RL,20RRが取り付けられている。
【0020】
メインフレーム14L,14Rおよびサブフレーム16L,16Rに取り付けられた車輪20FL,20FR,20RL,20RRのそれぞれは、車輪20FL,20FR,20RL,20RRに駆動力または制動力を付与するためのモータを内蔵するインホイールモータユニットである。このインホイールモータユニット20FL,20FR,20RL,20RRは、コントローラ12dによりそれぞれ独立して制御可能である。すなわち、このインホイールモータユニット20FL,20FR,20RL,20RRのそれぞれは、電源ユニット22から電力の供給を受けて、コントローラ12dからの制御指令に応じて駆動力または制動力を出力する。
【0021】
メインフレーム14L,14Rの途中部分に設けられた一対のジョイント18L,18Rは、メインフレーム14L,14Rに対してサブフレーム16L,16Rを回動自在に連結する。一対のジョイント18L,18Rのそれぞれには、サブフレーム16L,16Rの連結角度A,A(図4参照)を調節するためのジョイントアクチュエータ19L,19Rが内蔵されている。このジョイントアクチュエータ19L,19Rは、コントローラ12dによりそれぞれ独立して制御可能である。すなわち、このジョイントアクチュエータ19L,19Rのそれぞれは、電源ユニット22から電力の供給を受けて、コントローラ12dからの制御指令に応じてサブフレーム16L,16Rを回動する。このジョイントアクチュエータ19L,19Rのそれぞれは、メインフレーム14L,14Rに対するサブフレーム16L,16Rの連結角度A,Aを検出するためのフレーム角センサ30L,30Rを有している。
【0022】
一対のジョイント18L,18Rは、メインフレーム14L,14Rに固定された軸受を用いてサブフレーム16L,16Rを軸支しており、メインフレーム14L,14Rに対してサブフレーム16L,16Rを回動可能としている。但し、ジョイント18L,18Rは、メインフレーム14L,14Rの一部でサブフレーム16L,16Rを回動可能にすればよいため、例えば、メインフレーム14L,14Rとサブフレーム16L,16Rとの間にゴム製のブッシュを介装した簡素化された構造としてもよい。これにより、歩行補助装置10を軽量で安価に構成することができる。
【0023】
一対のジョイント18L,18Rの間には、電源ユニット22を吊り下げて支持するための支持部材26が横架されている。支持部材26は、上から見て十字形の部材であり、中央から左側ジョイント18Lまで延設される左側延設部26aと、中央から右側ジョイント18Rまで延設される右側延設部26cと、中央から前方に延設される前側延設部26bと、中央から後方に延設される後側延設部26dと、を有している。左側延設部26aおよび右側延設部26cは一対のジョイント18L,18Rにより軸支されており、一対のジョイント18L,18Rにより左右方向軸回りに回動自在に支持されている。前側延設部26bの前端付近には前側回動支持部28Fが設けられており、後側延設部26dの後端付近には後側回動支持部28Rが設けられている。
【0024】
電源ユニット22は、各車輪20FL,20FR,20RL,20RRの駆動制御用の電装部品であり、各車輪20FL,20FR,20RL,20RRに駆動用電力を供給する。電源ユニット22は、前側吊下げバンド24Fおよび後側吊下げバンド24Rを用いて、前側回動支持部28Fおよび後側回動支持部28Rから吊り下げられている。前側回動支持部28Fにはフレキシブルな1本の前側吊下げバンド24Fが掛けられており、前側吊下げバンド24Fの一端は電源ユニット22の左前端に固定され、前側吊下げバンド24Fの他端は電源ユニット22の右前端に固定されている。また、後側回動支持部28Rにはフレキシブルな1本の後側吊下げバンド24Rが掛けられており、後側吊下げバンド24Rの一端は電源ユニット22の左後端に固定され、後側吊下げバンド24Rの他端は電源ユニット22の右後端に固定されている。
【0025】
コントローラ12dは、押力センサ13の検出値を取り込むと、押力センサ13の検出値に応じた目標速度を設定する。ここで、目標速度は、歩行補助装置10から歩行者に適度な反力を与えて、歩行者が歩行補助装置10に適度に寄り掛かることができる程度に設定される。コントローラ12dは、歩行補助装置10が目標速度で移動するようにインホイールモータ20FL,20FR,20RL,20RRを制御する。この歩行補助装置10の制御方法によれば、歩行者が歩行補助装置10に与える押力、言い換えれば、歩行補助装置10が歩行者に与える反力を略一定にする。このため、歩行者は歩行補助装置10に一定押力で寄り掛かることができるため、歩行者の姿勢を安定させることができると共に、歩行者の使い心地を向上することができる。
【0026】
前側回動支持部28Fの内部において、前側吊下げバンド24Fは前後方向軸回りに回動自在に支持されている。また、後側回動支持部28Rの内部において、後側吊下げバンド24Rは前後方向軸回りに回動自在に支持されている。よって、電源ユニット22の重心は、常に、支持部材26の中央から重力の作用する方向に位置する。すなわち、歩行補助装置10が平坦な路面にある時だけでなく、歩行補助装置10が傾斜した路面にある時にも、電源ユニット22の重心は支持部材26の中央の真下に位置する。
【0027】
前後方向に傾斜した路面において歩行補助装置10が傾斜した場合には、ジョイント18L,18Rにおいて支持部材26が左右方向軸回りに回動するため、ジョイント18L,18Rに対して電源ユニット22は回動する。また、左右方向に傾斜した路面において歩行補助装置10が傾斜した場合には、前側回動支持部28Fおよび後側回動支持部28Rにおいて吊下げバンド24F,24Rが前後方向軸回りに回動するため、支持部材26に対して電源ユニット22は回動する。
【0028】
なお、図4には、支持部材26および電源ユニット22を取り外した歩行補助装置10が示されている。図4に示されるように、左側連結角度Aは、左側ジョイント18Lを頂点として左側メインフレーム14Lおよび左側サブフレーム16Lがなす角度であり、右側連結角度Aは、右側ジョイント18Rを頂点として右側メインフレーム14Rおよび右側サブフレーム16Rがなす角度である。また、左側車輪間距離Dは、左前側車輪20FLの回転軸から左後側車輪20RLの回転軸までの前後方向の離間距離であり、右側車輪間距離Dは、右前側車輪20FRの回転軸から右後側車輪20RRの回転軸までの前後方向の離間距離である。
【0029】
ジョイント18L,18Rの内部には、電源ユニット22の左右方向軸回りの吊下げ角AFRを検出するための第1吊下げ角センサ32が設けられている。図5に示されるように、第1吊下げ角センサ32は、ジョイント18L,18Rに対する電源ユニット22の回動角AFRを検出する。この電源ユニット22の回動角AFRは、歩行補助装置10の側方から見て路面垂線Lと重力作用方向Lとがなす角度であり、路面の前後方向の傾斜角度に相当する。すなわち、第1吊下げ角センサ32は、路面の前後方向の勾配を検出するための勾配センサである。
【0030】
また、回動支持部28F,28Rの内部には、電源ユニット22の前後方向軸回りの吊下げ角ALRを検出するための第2吊下げ角センサ34が設けられている。図6に示されるように、第2吊下げ角センサ34は、回動支持部28F,28Rに対する電源ユニット22の回動角ALRを検出する。この電源ユニット22の回動角ALRは、歩行補助装置10の前方から見て路面垂線Lと重力作用方向Lとがなす角度であり、路面の左右方向の傾斜角度に相当する。すなわち、第2吊下げ角センサ34は、路面の左右方向の勾配を検出するための勾配センサである。
【0031】
本実施形態において、歩行補助装置10は特殊構造を有する。図7を参照して、歩行補助装置10の特殊構造を説明する。歩行補助装置10が略平坦な路面にある場合には、メインフレーム14L,14Rのジョイント18L,18Rよりも上側の部分(以下、メインフレーム上部と呼ぶ)14La,14Raは、メインフレーム14L,14Rのジョイント18L,18Rよりも下側の部分(以下、メインフレーム下部と呼ぶ)14Lb,14Rbとロックされて一体化されており、メインフレーム下部14Lb,14Rbと直線的に結合している。一方、歩行補助装置10が傾斜した路面にある場合には、メインフレーム14L,14Rおよびサブフレーム16L,16Rは、次に説明するように動作可能である。
【0032】
すなわち、歩行補助装置10が傾斜した路面にある場合には、コントローラ12dからの制御信号に応じて、メインフレーム上部14La,14Raとメインフレーム下部14Lb,14Rbとのロックが解除されて、メインフレーム下部14Lb,14Rbはメインフレーム上部14La,14Raから分離される。そして、コントローラ12dからの同制御信号に応じて、メインフレーム上部14La,14Raの姿勢(傾斜角度)を維持したまま、メインフレーム下部14Lb,14Rbおよびサブフレーム16L,16Rの連結角度A,Aを変化させる。ここで、メインフレーム下部14Lb,14Rbの角度変化方向は、サブフレーム16L,16Rの角度変化方向と逆であり、メインフレーム下部14Lb,14Rbの角度変化量は、サブフレーム16L,16Rの角度変化量に等しい。
【0033】
コントローラ12dは、電源ユニット22の前後方向軸回りの吊下げ角ALRに基づいて、左側ジョイントアクチュエータ19Lおよび右側ジョイントアクチュエータ19Rのそれぞれに異なる制御信号を与えて、左側連結角度Aおよび右側連結角度Aをそれぞれ独立して制御する。左側連結角度Aおよび右側連結角度Aをそれぞれ独立して制御することにより、左側車輪間距離Dおよび右側車輪間距離Dのそれぞれを異なる距離に調節することができる。歩行補助装置10が左右方向に傾斜する路面を移動する場合に、コントローラ12dが、第2吊下げ角センサ34により検出された電源ユニット22の前後方向軸回りの吊下げ角ALRに基づいて、左側連結角度Aおよび右側連結角度Aをそれぞれ独立して制御することにより、歩行補助装置10の安定性を向上することができる。
【0034】
上述したように、本実施形態では、メインフレーム14L,14Rはメインフレーム上部14La,14Raおよびメインフレーム下部14Lb,14Rbに分離可能に構成されており、メインフレーム上部14La,14Raの姿勢を維持したまま、メインフレーム下部14Lb,14Rbおよびサブフレーム16L,16Rの連結角度A,Aを変更する。但し、他の実施形態では、メインフレーム14L,14Rを分離不可能に構成し、メインフレーム14L,14Rに対するサブフレーム16L,16Rの連結角度を変更するのみでもよい。
【0035】
次に、図8〜図11を参照して、歩行補助装置10が傾斜した路面にある時のコントローラ12dの制御を説明する。図8は、傾斜した路面におけるコントローラ12dの制御のフローチャートである。図9は、傾斜した路面における支持部材26および電源ユニット22の動作を示している。図10および図11は、傾斜した路面における歩行補助装置10の姿勢変化を示している。
【0036】
ステップ801において、コントローラ12dは、第1吊下げ角センサ32および第2吊下げ角センサ34の検出出力を取り込んで、路面の勾配を検出する。すなわち、図9に示されるように、コントローラ12dは、第1吊下げ角センサ32の検出出力を取り込んで、電源ユニット22の左右方向軸LLR回りの吊下げ角AFRを検出し、この吊下げ角AFRを路面の前後方向の勾配として認識する。また、コントローラ12dは、第2吊下げ角センサ34の検出出力を取り込んで、電源ユニット22の前後方向軸LFR回りの吊下げ角ALRを検出し、この吊下げ角ALRを路面の左右方向の勾配として認識する。コントローラ12dは、路面が左右方向に傾斜している場合には、ステップ802以降の処理を行う。
【0037】
ステップ802において、コントローラ12dは、路面の左右方向の勾配ALRに基づいて、左側車輪間距離Dおよび右側車輪間距離Dを決定する。すなわち、コントローラ12dは、左側が山側であり右側が谷側であると判定される場合に、右側連結角度Aよりも左側連結角度Aを大きくするように、左側車輪間距離Dおよび右側車輪間距離Dを決定する。また、コントローラ12dは、左側が谷側であり右側が山側であると判定される場合に、左側連結角度Aよりも右側連結角度Aを大きくするように、左側車輪間距離Dおよび右側車輪間距離Dを決定する。
【0038】
ステップ803において、コントローラ12dは、決定された左側車輪間距離Dおよび右側車輪間距離Dとなるように、ジョイントアクチュエータ19L,19Rを制御する。この結果、歩行補助装置10は、図10および図11に示される姿勢となる。図10は、路面前側から見た歩行補助装置10を示しており、図11は、路面山側(図10の矢印XI方向)から見た歩行補助装置10を示している。図10および図11に示されるように、歩行補助装置10は、路面山側の車輪間距離Dが長く路面谷側の車輪間距離Dが短い状態となり、ハンドル12および支持部材26が略水平となっている。
【0039】
ステップ804において、コントローラ12dは、押力センサ13の検出値を取り込んで目標速度を設定し、この目標速度で歩行補助装置10が走行するようにインホイールモータ20FL,20FR,20RL,20RRを制御する。歩行補助装置10が目標速度で走行している時に、歩行補助装置10から歩行者に適度な反力が与えられ、歩行者が歩行補助装置10に適度に寄り掛かることができるようになる。
【0040】
上記に説明した左右方向に傾斜した路面における制御方法によれば、コントローラ12dが左側車輪間距離Dおよび右側車輪間距離Dのそれぞれを独立して制御するため、歩行補助装置10を安定な状態とすることができる。すなわち、仮に左側車輪間距離Dおよび右側車輪間距離Dをそれぞれ独立して制御できない場合を想定すると、歩行補助装置10が傾斜した路面にある場合には、路面の傾斜角度に応じて歩行補助装置10の姿勢は傾き、歩行補助装置10が横転する虞がある。これに対して、本実施形態のように左側車輪間距離Dおよび右側車輪間距離Dをそれぞれ独立して制御した場合には、歩行補助装置10が傾斜した路面にある場合でも、路面の傾斜に応じて歩行補助装置10の姿勢を安定させ、歩行補助装置10の横転を未然に防止することができる。
【0041】
また、仮に左側車輪間距離Dおよび右側車輪間距離Dをそれぞれ独立して制御できない場合を想定すると、歩行補助装置10が傾斜した路面にある場合には、路面の傾斜角度に応じて歩行補助装置10の姿勢は傾き、ハンドル12が歩行者に対して左側または右側に移動してしまう。これに対して、本実施形態の制御方法によれば、コントローラ12dが左側車輪間距離Dおよび右側車輪間距離Dのそれぞれを独立して制御するため、歩行補助装置10が傾斜した路面にある場合にも歩行補助装置10を比較的に鉛直な姿勢とすることができる。よって、歩行補助装置10の姿勢が歩行者に対して斜めにならないようにして、歩行補助装置10のハンドルが左側または右側に移動することを防止するため、歩行者にとって歩行補助装置10の使い心地を向上することができる。
【0042】
特に、前述のようにメインフレーム14L,14Rはメインフレーム上部14La,14Raおよびメインフレーム下部14Lb,14Rbに分離可能に構成されており、歩行補助装置10が傾斜した路面にある場合に、ジョイント18L,18Rに対してメインフレーム上部14La,14Raが回動しない。よって、傾斜した路面においてもハンドル12が略水平となるため、歩行者にとって歩行補助装置10の使い心地を向上することができる。
【0043】
図12は、歩行補助装置10の制御系を示すシステム図が示されている。図12に示される歩行補助装置10の制御系により、歩行補助装置10の上記制御が実現される。この歩行補助装置10の制御系では、路面の左右方向の傾斜角度ALRの検出値をフィードバックして、PID制御により歩行補助装置10の姿勢を好適に制御する。より詳しく説明すると、歩行補助装置10のロール角(傾斜角度ALRの検出値M)からロール角目標値を減算して得た偏差Mに比例ゲインGpを乗じた比例項Pを演算し、また偏差Mを積分した値に積分ゲインGiを乗じた積分項Iを演算し、また偏差Mを微分した値に微分ゲインGdを乗じた微分項Dを演算し、これら3つの値P,I,Dを加算して傾斜角度ALRの制御値Oを生成する。そして、制御値Oに差分値(0.5)を加算して得た制御値Sを用いて右側車輪間距離Dを制御すると共に、制御値Oから差分値(0.5)を減算して得た制御値Tを用いて左側車輪間距離Dを制御する。この結果、歩行補助装置10のロール角がロール角目標値に制御される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】歩行補助装置の外観を示す斜視図である。
【図2】歩行補助装置の外観を示す側面図である。
【図3】歩行補助装置を示すブロック図である。
【図4】連結角度A,Aおよび車輪間距離D,Dを示す図である。
【図5】電源ユニットの左右方向軸回りの吊下げ角度AFRを示す図である。
【図6】電源ユニットの前後方向軸回りの吊下げ角度ALRを示す図である。
【図7】歩行補助装置の姿勢変化を示す説明図である。
【図8】左右方向に傾斜した路面における歩行補助装置の制御を示すフローチャートである。
【図9】路面傾斜の検出方法を説明するための説明図である。
【図10】左右方向に傾斜した路面における歩行補助装置を示す前面図である。
【図11】左右方向に傾斜した路面における歩行補助装置を示す側面図である。
【図12】歩行補助装置の制御系を示すシステム図である。
【符号の説明】
【0045】
10…歩行補助装置、12…ハンドル、12a,12b,12c…スイッチ類、12d…コントローラ、13…押力センサ、14L,14R…メインフレーム、14La,14Ra…メインフレーム上部、14Lb,14Rb…メインフレーム下部、16L,16R…サブフレーム、18L,18R…ジョイント、19L,19R…ジョイントアクチュエータ、20FL,20FR,20RL,20RR…車輪(インホイールモータ)、22…電源ユニット(電装部品)、24F…前側吊下げバンド、24R…後側吊下げバンド、26…支持部材、28F,28R…回動支持部、30L,30R…フレーム角センサ、32…第1吊下げ角センサ、34…第2吊下げ角センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者が把持可能な高さで路面に対して水平に延設されるハンドルと、
前記ハンドルの両端から歩行者の前側の斜め下方に向けて路面近傍まで延びる左右一対のメインフレームと、
前記メインフレームの途中部分から歩行者付近の路面に向けて路面近傍まで延びる左右一対のサブフレームと、
前記メインフレームの前記途中部分に設けられ、前記メインフレームに対して前記サブフレームを回動自在に連結する左右一対のジョイントと、
前記メインフレームの路面近傍の下端に設けられ左右一対の前側車輪と、
前記サブフレームの路面近傍の下端に設けられ左右一対の後側車輪と、
前記左右一対のジョイントの間に横架された支持部材であって、前記左右一対のジョイントにより左右方向軸回りに回動自在に支持されると共に、前後方向軸回りに回動自在に構成された少なくとも一つの回動支持部を有する支持部材と、
前記支持部材の前記回動支持部から吊り下げられた、前記前側車輪および前記後側車輪の駆動制御用の電装部品と、
前記支持部材に対する前記電装部品の前後方向軸回りの吊下げ角を検出する吊下げ角センサと、
前記吊下げ角センサにより検出された前記電装部品の前後方向軸回りの吊下げ角に基づいて、前記左側メインフレームおよび前記左側サブフレームの連結角度および前記右側メインフレームおよび前記右側サブフレームの連結角度をそれぞれ独立して制御するコントローラと、
を備えることを特徴とする歩行補助装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記吊下げ角センサにより検出された前記電装部品の前後方向軸回りの吊下げ角に基づいて、左側が山側であり右側が谷側であると判定される場合に、前記右側メインフレームおよび前記右側サブフレームの連結角度よりも、前記左側メインフレームおよび前記左側サブフレームの連結角度を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記吊下げ角センサにより検出された前記電装部品の前後方向軸回りの吊下げ角に基づいて、左側が谷側であり右側が山側であると判定される場合に、前記左側メインフレームおよび前記左側サブフレームの連結角度よりも、前記右側メインフレームおよび前記右側サブフレームの連結角度を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置。
【請求項4】
前記左側メインフレームおよび前記左側サブフレームの連結角度を調節自在な左側ジョイントアクチュエータと、前記右側メインフレームおよび前記右側サブフレームの連結角度を調節自在な右側ジョイントアクチュエータと、をさらに備え、
前記コントローラは、前記吊下げ角センサにより検出された前記電装部品の前後方向軸回りの吊下げ角に基づいて、前記左側ジョイントアクチュエータおよび前記右側ジョイントアクチュエータのそれぞれを制御して、前記左前側車輪から前記左後側車輪までの左側車輪間距離および前記右前側車輪から前記右後側車輪までの右側車輪間距離を調節することにより、前記メインフレームおよび前記サブフレームの連結角度を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の歩行補助装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記ハンドルが水平な状態を維持するように、前記左側メインフレームおよび前記左側サブフレームの連結角度および前記右側メインフレームおよび前記右側サブフレームの連結角度をそれぞれ独立して制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の歩行補助装置。
【請求項6】
前記各車輪は、車輪にモータが内蔵されたインホイールモータであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の歩行補助装置。
【請求項7】
前記電装部品は、前記各車輪に電力を供給するための電源ユニットであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の歩行補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−183405(P2009−183405A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25334(P2008−25334)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)