説明

歩行補助装置

【課題】身体への負担を軽減しつつ、身体を安定的に支持した安全な状態で自分の足を使ってスムーズに進行できる歩行補助装置を提供する。
【解決手段】フレーム12の前部に転動自在に支持された2つの前輪14と、フレーム12の後部に支持された1つの後輪16と、フレーム12に所定高さで支持されたサドル18と、フレーム12の前部側に組み付けられ、前輪14の進行方向を任意に変更する操舵装置20と、操舵装置20の上方に立ち上がった操舵杆46の上端側に連結されつつ所定の高さ位置に支持され、人の腕部を安定して載せ掛ける広幅の肘掛け面58を形成した肘掛け台22と、を備え、人がサドル18に跨った状態で両足又は片足のみで地面を蹴りながら使用することを特徴とする歩行補助装置10から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、怪我や病気により足腰の機能が衰えた障害者や高齢者等が自身の足で移動する際に利用できる歩行補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、脳卒中の後遺症で片麻痺となったり、ひざ関節症や骨折等その他病気や怪我で足腰等の身体機能が低下した障害者又は高齢者等は自身の足で自由に歩行するのが困難である。しかし、車椅子等を使わずに自身の足を使って移動することで、リハビリや身体機能低下を防止することができるとともに、散歩や通院、買物等自身の行動範囲を広げて自由に移動したい要望が高い。従来、歩行を補助するためのツールとして車輪等を備えた歩行補助器等が提案されており、例えば、特許文献1には、複数のキャスターを配設すると共に身体の受入部を形成した前方部体と着座部と大径輪を備えた後方部体を一体的に連結したリハビリ用歩行補助器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−235366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歩行補助器を利用して自分の足で移動する際には、上半身をある程度安定した状態とすることが必要であるが、特許文献1のものでは、ハンドルを手で握るだけで上半身を保持するものであった。しかしながら、例えば、片麻痺患者等では片手での操作が困難だったり、高齢者等では握力が弱かったりして、上半身を十分に安定することが困難な場合があり、上半身がふらついたりし確実な操作や円滑でスピーディな移動を行えず、安全性に劣る場合があった。また、フレームに取付軸部で回動自在に配設されるキャスタの向きを利用者の意図する方向に向けにくく、スムーズに操作しにくい問題があった。
【0005】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、身体への負担を軽減しつつ、身体を安定的に保持でき安全な状態で自分の足を使ってスムーズに進行できる歩行補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、フレーム12の前部に転動自在に支持された2つの前輪14と、フレーム12の後部に転動自在に支持された1つ又は2つの後輪16と、フレーム12に所定高さで支持されたサドル18と、フレーム12の前部側に組み付けられ、前輪14の進行方向を任意に変更する操舵装置20と、操舵装置20の上方に立ち上がった操舵杆46の上端側に連結されつつ所定の高さ位置に支持され、人の腕部を安定して載せ掛ける広幅の肘掛け面58を形成した肘掛け台22と、を備え、人Mがサドル18に跨った状態で両足又は片足のみで地面GLを蹴りながら使用することを特徴とする歩行補助装置10から構成される。例えば、乗る人の体格に応じて肘掛け台22やサドル18の高さを調整できるように設けても良い。
【0007】
さらに、肘掛け台22には、肘掛け面58の前部側に上方に向けて立設され、肘掛け面58に肘を載せた状態で手で握って操舵可能なハンドル60が設けられたこととするとよい。
【0008】
また、後輪16を制動するブレーキ装置62を有しており、肘掛け台22のハンドル60に、握り込み・解放操作でブレーキ装置62を制動・解除操作するブレーキレバー64が取り付けられたこととしてもよい。
【0009】
また、肘掛け台22は、肘掛け面58が平面視略ハ字状に後方側に広がって設けられたこととしてもよい。
【0010】
また、肘掛け台22のサドル18位置に対する前後方向の相対位置を調整可能なように操舵杆46の前後方向の傾斜角度を変更する調整機構54が設けられたこととしてもよい。
【0011】
また、フレーム12は、地面側の低い位置で前輪側から後方に向けて横杆部24aを配置させつつ該横杆部の後端側を略L字状に上向きに屈曲してサドル18を支持する縦杆部24bを形成したL字フレーム24と、該L字フレーム24と後輪16とを接続する後輪支持フレーム28と、を有しており、L字フレーム24と後輪16との間に地面を蹴った足を入れうるスペース34を形成するように、後輪支持フレーム28はL字フレームの縦杆部24a上部側から後方側に延長されながら後輪16を該L字フレーム24から離隔配置させたこととしてもよい。
【0012】
また、フレーム12には、足を載せる底台78と、底台78上に載せた足が滑り落ちるのを防止するように底台78の縁から立設した規制壁80と、を含む足載せ部76が取り付けられたこととしてもよい。足載せ部76は、例えば、両足側に取り付けてもよく、例えば麻痺側の片足側のみに取り付けるようにしてもよい。
【0013】
また、サドル18に跨った人Mが軽く膝を曲げて下腿を略鉛直にした状態で足載せ可能なように、地面GL側の低い高さ位置で、サドル18の真下からやや前方側位置に配置される足載せ部88であって、平面視で1本のフレーム12から左右側方に向けてそれぞれ展開、格納自在に展開される台板部材92を有する2個の足載せ部88と、それぞれの足載せ部88をフレーム12に支持させるとともに、台板部材92をフレーム側方に展開させて足載せ可能とする状態V1と、台板部材を格納させて足で地面GLを蹴るスペース(96)を形成させる状態V2と、を選択的に変換する変換支持機構90と、を含むこととしてもよい。
【0014】
また、フレーム12の後部に支持される後輪16は2つ配置されており、2つの後輪16は、2つの前輪14の対向配置間隔よりも狭い間隔で、かつ地面GLと接する側をハ字状に広げて対向配置されたこととしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の歩行補助装置によれば、フレームの前部に転動自在に支持された2つの前輪と、フレームの後部に転動自在に支持された1つ又は2つの後輪と、フレームに所定高さで支持されたサドルと、フレームの前部側に組み付けられ、前輪の進行方向を任意に変更する操舵装置と、操舵装置の上方に立ち上がった操舵杆の上端側に連結されつつ所定の高さ位置に支持され、人の腕部を安定して載せ掛ける広幅の肘掛け面を形成した肘掛け台と、を備え、人がサドルに跨った状態で両足又は片足のみで地面を蹴りながら使用する構成であるから、利用者はサドルに跨って腰掛け、操舵装置に連係した肘掛け台に肘を掛けて身体全体を安定的に保持できるので、障害者や高齢者等であっても安全かつスムーズに地面を足で蹴りながら自由に移動でき、安全性、操作性が高い。
【0016】
また、肘掛け台には、肘掛け面の前部側に上方に向けて立設され、肘掛け面に肘を載せた状態で手で握って操舵可能なハンドルが設けられた構成とすることにより、肘を載せた状態でハンドルを手で握って操舵することができるので、より安定的に身体を保持して安全性を向上できるとともに確実に操作を行なえる。
【0017】
また、後輪を制動するブレーキ装置を有しており、肘掛け台のハンドルに、握り込み・解放操作でブレーキ装置を制動・解除操作するブレーキレバーが取り付けられた構成とすることにより、肘掛け台に肘を掛けつつハンドルを握った状態で簡単かつ確実なブレーキ操作を行え、安全に使用できる。
【0018】
また、肘掛け台は、肘掛け面が平面視略ハ字状に後方側に広がって設けられた構成とすることにより、略ハ字状に広がった肘掛け面に腕をハ字状にして楽な姿勢で肘を載せ掛けることができるとともに、操舵装置を介して進路を変更して曲る際などにも、肘掛け台が身体に当たりにくく楽に安定して操作できる。
【0019】
また、肘掛け台のサドル位置に対する前後方向の相対位置を調整可能なように操舵杆の前後方向の傾斜角度を変更する調整機構が設けられた構成とすることにより、利用者の体格や病気や怪我の症状等に合わせて肘掛け台の位置を調整することができる。
【0020】
また、フレームは、地面側の低い位置で前輪側から後方に向けて横杆部を配置させつつ該横杆部の後端側を略L字状に上向きに屈曲してサドルを支持する縦杆部を形成したL字フレームと、該L字フレームと後輪とを接続する後輪支持フレームと、を有しており、L字フレームと後輪との間に地面を蹴った足を入れうるスペースを形成するように、後輪支持フレームはL字フレームの縦杆部上部側から後方側に延長されながら後輪を該L字フレームから離隔配置させた構成とすることにより、後輪とL字フレームとの間にスペースが形成されているので、例えば、進行方向を右又は左に曲げて移動する際に、曲る方向内側の地面を蹴った足が後輪やフレーム等の構成部材に当たりにくく、円滑にかつ安全に移動できる。
【0021】
また、フレームには、足を載せる底台と、底台上に載せた足が滑り落ちるのを防止するように底台の縁から立設した規制壁と、を含む足載せ部が取り付けられた構成とすることにより、例えば片麻痺患者等の麻痺側の足を足載せ部に載せることができ、麻痺側の足等を地面に引き摺ったり、車輪に触れたりするのを良好に防止して安全に移動することができる。
【0022】
また、サドルに跨った人が軽く膝を曲げて下腿を略鉛直にした状態で足載せ可能なように、地面側の低い高さ位置で、サドルの真下からやや前方側位置に配置される足載せ部であって、平面視で1本のフレームから左右側方に向けてそれぞれ展開、格納自在に展開される台板部材を有する2個の足載せ部と、それぞれの足載せ部をフレームに支持させるとともに、台板部材をフレーム側方に展開させて足載せ可能とする状態と、台板部材を格納させて足で地面を蹴るスペースを形成させる状態と、を選択的に変換する変換支持機構と、を含む構成とすることにより、麻痺側や病気側の足を足載せ部に載せることができ、患側の足等を地面に引き摺ったり、足が車輪に触れたりするのを良好に防止して安全に移動することができる。同時に、足で地面を蹴る側では、足載せ部を格納させることができるので邪魔になることがない。また、足載せ部に足を載せた際には、載せた側では軽く膝を曲げて下腿を略鉛直にした状態となるので、比較的楽で安定した姿勢で使用できる。また、患側の足を足載せ部へ載せ降ろしする際も比較的簡単に行なえる。
【0023】
また、フレームの後部に支持される後輪は2つ配置されており、2つの後輪は、2つの前輪の対向配置間隔よりも狭い間隔で、かつ地面と接する側をハ字状に広げて対向配置された構成とすることにより、後輪どうしの間隔を狭くして蹴り足の後方側に後輪等の構成要素を存在させないように構成でき、地面を蹴った足が後輪に当たりにくい。さらに、2つの後輪をハ字状に配置させるので間隔が狭くても安定性を維持でき、安全に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る歩行補助装置の概略説明図である。
【図2】図1の歩行補助装置の平面図である。
【図3】図1の歩行補助装置を前方側から見た図である。
【図4】図3のA−A線矢視図で一部分を拡大した説明図である。
【図5】図1の歩行補助装置の調整機構周辺の拡大斜視図である。
【図6】調整機構の作用説明図である。
【図7】図1の歩行補助装置の肘掛け台及びハンドル周辺の斜視図である。
【図8】(a)操舵装置のリンク機構を概略して説明した図、(b)その作用説明である。
【図9】図1の歩行補助装置の使用状態説明図である。
【図10】図1の歩行補助装置を折り畳んだ状態の説明図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る歩行補助装置の概略説明図である。
【図12】図11の歩行補助装置の平面図である。
【図13】図11のB−B線矢視の一部省略説明図である。
【図14】図11の歩行補助装置の使用状態説明図である。
【図15】足載せ部の拡大説明図である。
【図16】足載せ部の作用説明図である。
【図17】足載せ部の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下添付図面を参照しつつ本発明の歩行補助装置の実施形態について説明する。本実施形態にかかる歩行補助装置は、例えば怪我や病気等で足腰機能が低下した患者や高齢者等が自身の足を使って歩行移動又は歩行訓練する際に、足への負荷を軽減しながら移動できる歩行補助器である。図1ないし図10は、本発明の歩行補助装置の第1の実施形態を示している。図1、図2、図3に示すように、本実施形態では、歩行補助装置10は、フレーム12と、2つの前輪14と、1つの後輪16と、サドル18と、前輪14の進行方向を任意に変更する操舵装置20と、肘掛け台22と、を備えている。歩行補助装置10は、前2輪後1輪の3つの車輪をフレームに転動自在に支持した3輪車構成であり、例えばペダルや駆動装置、動力装置等を備えておらず、図9にも示すように利用者Mがサドル18に跨って乗り、足腰への負荷を軽減した状態で、両足又は片足のみで地面GLを蹴りながら前輪、後輪を転動させて進行することができる乗車型の歩行補助具である。なお、利用者Mはサドル18に跨らずに両足で立った状態で歩行補助装置を押しながら進行することもできる。
【0026】
フレーム12は、図1、図2に示すように、2つの前輪14、後輪16、サドル18、操舵装置20、肘掛け台22等の装置構成要素を一体的に組み付けており、本実施形態では、複数の金属製の中空パイプ状の杆部材を組み付けて構成されている。フレーム12は、例えば、L字フレーム24と、前輪14に連結した前輪支持フレーム26と、後輪に連結した後輪支持フレーム28と、が溶接等により固定されて組み付けられている。さらに、フレーム12は、後述の操舵杆46を軸周り回転自在に支持する操舵杆支持フレームを備えている。
【0027】
L字フレーム24は、例えば、地面側の低い位置に前後に向けて横に配置された横杆部24aと、該横杆部24aの後端側から略L字状に上方に向けて屈曲された縦杆部24bと、を含む。縦杆部24bは、L字湾曲部位置より上端側がやや後方側となるように傾斜して設けられている。縦杆部24bの上端側はパイプ中空内部に連通して開口されており、後述のようにサドル18のサドルポスト36が挿入されてサドル18を着脱可能に支持している。L字フレーム24のL字内側空間が広く形成されているとともに、L字フレームの横杆部24aを地面側に低く配置しているので、利用者Mがサドル18に跨る際に足を高く上げなくてもスムーズに跨ることができる。
【0028】
前輪支持フレーム26は、2つの前輪14を歩行補助装置10の進行方向に対して左右幅方向(図2上、上下方向)に略平行に対向配置させて転動自在に支持している。本実施形態では、前輪支持フレーム26は、図2、図8に示すように、L字フレームの横杆部24aの前端部側に平面視T字状に連結されており、T字の両端側にそれぞれの前輪14を独立して支持している。前輪支持フレーム26のT字の左右両端部にはそれぞれ車輪軸支部材27が枢支軸27a回りに回動自在に枢支されており、該車輪軸支部材27を介して前輪14の回転軸と連結されている。前輪14は、操舵装置20と連係されており、操舵装置20の操作に対応して車輪軸支部材27を介して前輪14の向きを任意に変更される。
【0029】
後輪支持フレーム28は、図1、図2に示すように、後輪16を転動自在に支持しており、例えばL字フレームの縦杆部24bの上部側から左右幅方向に二又に分かれるとともに側面視円弧状に斜め下後方に湾曲した1対の湾曲パイプ部材を含む。後輪支持フレーム28の先端側には後輪16を転動自在に支持するブラケット32が設けられており、二又の湾曲パイプ部材先端側で後輪16を両側から挟んだ状態でブラケット32を後輪軸の両側に接続している。後輪支持フレーム28は、後輪16をL字フレーム24から後方にある程度離隔して配置させており、L字フレーム24と後輪16との間にスペース34が設けられている。すなわち後輪支持フレーム28はスペース34を迂回するように形成されている。スペース34を形成したことにより、L字フレーム24と後輪16との間にはフレームパイプ等の構成部材が無いので、例えば、進行方向を右又は左に曲げて移動する際に、曲り内側の地面を蹴った足がフレームや車輪等の構成物に当たることがないので、安全であるとともに円滑に移動することができる。また、サドル18の前後位置より後輪16が後方側に位置するので後ろにひっくり返りにくい。なお、1対の湾曲パイプ部材からなる後輪支持フレーム28間を短パイプ30が横に架設されており、フレーム強度を高めている。
【0030】
本実施形態では、2つの前輪14及び1つの後輪16は例えば公知の車輪からなり、3輪とも車輪径、車輪幅が略同じ構成で設けられている。前2輪の構成なので安定して操作できるとともに、後1輪の構成なので、例えば、足の後方側に構成要素が存在せず地面を蹴った足が後輪に当たることが無く、安全かつスムーズに移動できる車輪構成となっている。
【0031】
サドル18は、フレーム12に所定高さで支持され、利用者Mが跨って腰掛ける着座手段である。本実施形態では、サドルに跨るとは、利用者がサドル上に跨って腰掛ける場合をいう。図1に示すように、サドル18には下方に垂下状に延長されたサドルポスト36が取り付けられており、該サドルポスト36をL字フレームの縦杆部24bの上端開口から挿入して緊締装置38により着脱可能に固定されて支持されている。サドル18の高さは利用者の股下に対応した高さに調整して設定され、緊締装置38を緩めた状態でサドルポスト36の縦杆部24bへの挿入長さを変更してサドルの高さを調整した後、緊締装置38を緊締して固定される。また、サドル18の後方には背もたれ40が設けられており、使用者が背もたれ40にもたれかかった状態で移動又は休憩することができる。なお、背もたれ40は必ずしも設けなくてもよい。また、背もたれ40を必要に応じて着脱できるように構成してもよい。
【0032】
操舵装置20は、前輪14の進行方向を任意に変更する操舵手段であり、フレーム12の前部側に組み付けられている。図3、図4、図8に示すように、本実施形態では、操舵装置20は、2つの前輪14を同期して向きを変更するように前輪14どうしをリンクするリンク機構42と、該リンク機構42と連結されて人の意図を前輪14に伝達するための操作入力部44を上端側に設けた操舵杆46と、を含む。リンク機構42は、例えば、複数のリンク節どうしを軸回り回動自在に枢支連結して構成されており、操舵杆46の軸回りに回動操作に連係して前輪の向きを変更する。
【0033】
リンク機構42は、具体的には、操舵杆46の下端に一端側を固定した操舵杆リンク節420と、前輪14を支持する各車輪軸支部材27に一端を固定した第1、第2リンク節421、422と、第1リンク節421と第2リンク節422とを枢支軸42aを介して連結する第3リンク節423と、操舵杆リンク節420と第1リンク節421とを枢支軸42bを介して連結する第4リンク節424と、を含む。そして、操舵杆46の軸回り回動に従って操舵杆リンク節420を介してリンク機構42が変形し、2つの車輪軸支部材27を枢支軸27a回りに同期して回動させて2つの前輪14の向きを変更する。
【0034】
操舵杆46は、図1、図3、図4に示すように、上端側が後方に傾斜するように斜め上方に立ち上がるように縦に略直線状に長く伸びた金属製直パイプ部材を含み、操舵杆支持フレームを介して長手軸回りに回動自在に支持されている。操舵杆支持フレームは、例えば、操舵杆46の下部側を貫通させつつ軸回り自在に支持する中空の円筒部材48と、円筒部材48をフレーム12の前部位置で地面から上方に離隔した高さ位置で支持する支持パイプ49、50、51と、を含む。円筒部材48は、円筒軸線方向を上端側が後方側となるように傾斜させて配置されている。支持パイプ49、50、51は、例えば、円筒部材48を左右と後方側の3方から支持する3つの湾曲パイプ部材からなる。第1支持パイプ48は、図4に示すように、L字フレームの横杆部24aから上方に立設しつつ中間位置から前方側に略く字状に湾曲して上端側を円筒部材48の外側面後方側に固定している。第2、第3支持パイプ50、51は、図3に示すように、前輪支持フレーム26から上方に立設し、上端側を互いに内向きに曲げて円筒部材48の外側面左右側に固定している。本実施形態では、操舵杆46は、上下中間位置で2分割されて、回動軸52を介して上部杆46aを下部杆46bに対して角度変更できるように連結されており、後述の肘掛け台22の位置を調整する調整機構54を構成する。よって、操舵杆46は、下部杆46bが操舵杆支持フレームの円筒部材48に支持されており、円筒部材48に対して下部杆46bの長手軸回りに自在に回動して前輪14の方向を変更するようになっている。
【0035】
図1、図3、図5に示すように、操舵杆46の上端部側には、自転車のハンドル杆状に変形U字状に設けられたアームフレーム部56が支持部材57を介して固定されており、該アームフレーム部56を介して肘掛け台22が連結支持されている。アームフレーム部56は、前方側から見て略U字状に湾曲されつつ、U字対向部分の上部側が中間位置から後方側に向けて湾曲されている。アームフレーム部56のU字対向部分は後方側に向けて平面視略ハ字状に広がって形成されている。
【0036】
肘掛け台22は、利用者Mがサドル18に跨った状態で肘を載せ掛ける肘掛け手段である。図1、図2、図5に示すように、肘掛け台22は操舵装置22の操舵杆46の上部側にアームフレーム部56に下から支持されてビス等の固定手段で固定されており、サドル18の高さよりも高い所定高さ位置にサドル18の前方側に配置されて支持されている。肘掛け台22は、上面側にある程度広幅で平らな肘掛け面58を形成しており、該肘掛け面58に人の腕部を安定して載せることができる。肘掛け台22は操舵杆46に連結されることから、肘掛け台22を左右に操作するとリンク機構42を介して前輪14の向きを変更することができ操作入力部44の一部を構成している。さらに、前輪14が2つの構成なので、肘掛け台22に肘を載せて前方側に体重がかかっても安定して操作できる。肘掛け台22は、例えば、ある程度のクッション性がある素材からなり、ある程度厚みを有した平面視略U字状のマット部材から設けられており、左右それぞれの肘から前腕部略全体を載せ得るように前後に長く広幅で設けられた肘掛け面58が左右幅方向に離隔配置されている。肘掛け台22は、肘掛け面58が形成されたU字状対向部分が後方側に向けて次第に広がって略ハ字状に設けられており、肘掛け面58は後方側に略ハ字状に広がって設けられている。肘掛け台22の内側には後方側を開放した略台形状の空間が形成されている。これにより、肘掛け台22の内側に人の上半身を入れるスペースが確保されるとともに、操舵装置20を介して進行方向を変更する際に、肘掛け台22を左右に振っても該肘掛け台が人の身体に当たりにくく、円滑かつ確実に、安全に操作できる。また、肘掛け台22は、肘掛け面58は水平面より後方側に若干下り傾斜しており、サドル18へ跨った状態で肘を載せ掛けやすくなっている。
【0037】
肘掛け台22の前部側には、利用者Mが肘掛け面54に肘を掛けた状態のままで手で握ることができるハンドル60が設けられている。ハンドル60は操作装置20の操作入力部44を構成しており、ハンドル60を手で握って操作できるので、より安定して確実な操舵を行える。本実施形態では、ハンドル60は、例えば、断面円形状の丸棒を逆U字状に湾曲した太パイプ部材で形成されており、逆U字の先端部を肘掛け台22の前部側隅部位置に配置した状態で肘掛け面58に対して略垂直状に立設されている。なお、例えばハンドル60の代わりに肘掛け台22の端部側等を手で握って操作することもでき、病気や怪我の症状や身体機能等に合わせて肘掛け台に肘掛け状態と肘を掛けない状態とを選択して使用することとしてもよい。
【0038】
さらに、ハンドル60には後輪16を制動するブレーキ装置62にワイヤ63で連係されたブレーキレバー64が取り付けられている。ブレーキ装置62は、例えば、後輪支持フレーム28を介して後輪軸に隣接して固定されている。ブレーキ装置62は、例えば、ブレーキレバー64の握り込み・開放操作で後輪の後輪軸の回転を摩擦制動・解除操作するようになっている。ブレーキレバー64は逆U字状のハンドル60の一方の縦杆部分に対向配置させており、ブレーキレバー64を握り込んでハンドル60側に近接することでブレーキ装置62を制動操作する。そしてブレーキレバー64の握り込みを開放すると図示しないバネ等の弾性部材を介して復帰してブレーキ装置の制動を解除する。これによりハンドル60を握った状態から簡単にブレーキレバー64の握り込み動作を行なえ、ブレーキ装置の制動・解除操作をスムーズかつ確実に行える。なお、ブレーキレバー64は、例えば、利き手側あるは、片麻痺患者が利用する場合には健常側に対応してハンドルに取り付けると良い。またブレーキ装置62の構成は任意でよく、例えば車輪のリムを摩擦制動・解除する摩擦部材を有する構成等その他の構成でもよい。
【0039】
図1、図5、図6に示すように、肘掛け台22のサドル18に対する前後位置を調整可能とする調整機構54が設けられている。本実施形態では、調整機構54は、例えば、操舵杆46の前後方向の傾斜角度を変更することにより実現されている。調整機構54は、例えば上下分割された操舵杆の上部杆46aを下部杆46bに対して回動軸52回りに回動可能とした枢支構造と、回動軸52回りの所定の角度で上部杆46aを保持するロック装置68と、を備えている。操舵杆46は、例えば、下部杆46bの上端側に断面コ字状の上方を開放した枢支ブラケット66が固定されて回動軸52が支持されており、上部杆46aの下端が回動軸52を介して回動自在に枢支連結されている。ロック装置68は、例えば、操舵杆の上部杆46a側にレバー70の起伏動作に連係して回動軸52と平行方向に進退移動するロックピン部材72と、下部杆46b側の枢支ブラケット66に一体的に支持されロックピン部材72を受ける複数の受け孔73を備えたロック受プレート74と、を有している。ロックピン部材72は、上部杆46aに横長に固設された円柱状部材71を介して支持されてその長手軸方向にスライド自在となっており、一端側にレバー70が枢支ピン70aを介して連係されているとともに、他端側がロック受プレート74側に自在に進退する。レバー70を枢支ピン70a周りに回動して倒すとレバー下端と円柱状部材71を押してロックピン部材72が退避方向にスライドし、レバー70を起すとロックピン部材72が進出方向にスライドするようになっている。ロック受プレート74は枢支ブラケット66の1つの構成壁と一体的に形成されており、円弧状に複数の受け孔73が並列されている。そして、レバー70を倒してロックピン部材72をロック受プレート74の受け孔73から退避させた状態では上部杆46a側を自由に回動軸52周りに回動させて角度を変更できるとともに、所定の角度でレバー70を起してロックピン部材72をロック受プレート74の所要の受け孔73に進出して係止させると上部杆46aが該角度で固定される。これにより、利用者の体格や病気の症状等に対応して操舵杆上部側に支持された肘掛け台22の位置ひいてはハンドル60及び操作入力部44の位置を調整できる。また、図10に示すように、例えばサドル18を取り外して、操舵杆の上部杆46aを後方側に横倒しすると装置全体をコンパクトに折り畳むことができる。なお、ロック装置68は、例えば、バネによりロックピン部材72をロック受プレート74に進出方向に付勢させて、バネに抗してロックピン部材を引っ張ることにより退避させる構造等その他任意の構成でもよい。
【0040】
図1、図2、図4に示すように、フレーム12には、人の足を載せる足載せ部76が取り付けられている。足載せ部76は、例えば、片麻痺患者等が利用する際に麻痺側の足を載せることができ、歩行移動の際に該麻痺側の足が地面を引き摺ったり、車輪に接触したりして怪我するのを防止でき、足の安全保護とスムーズな移動を実現できる。本実施形態では、足載せ部76は、例えば、プラスチック等の合成樹脂で形成されており、上面側に足を載せる足載せ面が形成された底台78と、該底台78の縁から立設された規制壁80と、を含む。底台78は、例えば隅丸四角形プレート状に形成されており、各前輪14の斜め後ろ上方側に配置され支持板82を介して固定されている。底台78を支持する支持板82は、例えば、歩行補助装置10の左右幅方向に長い2つの細長帯状の金属板部材からなり、円筒部材48を支持している略く字状の第1支持パイプ49の斜めに配置される部位に互いに離隔して長手中間位置を溶接等により固定されており、該支持板82上に底台78を図示しないビス等の固定手段で固定している。そして、底台78は、足を載せる足載せ面が後方側が下り傾斜するように、すなわち底台に載せた足がつま先上がりとなるように斜めに設定されている。規制壁80は、底台78上に載せた足が滑り落ちるのを良好に防止する足載せの足落ち防止手段であり、例えば、平面視四角形状の2つ長辺と後方側の短辺の3縁辺に沿って立設されている。長辺に沿った規制壁80は、前方側から後方側、すなわちつま先側から踵側に向けて次第に高くなるように設けられている。本実施形態では、足載せ部76は前輪の上方側に設置しているので、足を載せずに地面を蹴り動作する際や乗り降りする際に邪魔になりにくい。
【0041】
次に、図9を参照しつつ本実施形態に係る歩行補助装置10の作用について説明する。図9に示すように、使用者Mはサドル18に跨って腰掛け、肘を肘掛け台22に載せてハンドル60を握る。必要に応じて、利用者の身長や体格に応じて緊締装置38を介してサドル18の高さや調整機構54を介して肘掛け台22の位置を調整する。例えば片麻痺患者の場合には患側の足を足載せ部76に載せた状態で、健常側の片足で地面を蹴って進行できる。また、例えば、膝関節症等の両足をある程度使える患者等の場合には、足載せ部に足を載せずに両足で交互に地面を蹴って進行できる。利用者Mは肘掛け台へ肘掛け状態でかつハンドル60を手で握って操作するので、上半身を良好に安定保持できるとともに、操舵装置20を介して進路変更する際もスムーズに行え、自身の足を使って安全に自由に移動することができる。なお、歩行補助装置10は、上述のようにサドル18に跨った状態での利用に限らず、例えば上り坂道を進む場合には利用者Mはサドル18から降りて両足で立った状態で歩行補助装置を押しながら歩行するなど、道路の状況や利用者の症状等に応じた種々の態様で利用することもできる。また、図10に示すように、歩行補助装置10を使用しない場合には、例えば、緊締装置38を緩めてサドル18をL字フレーム24から取り外し、調整機構54を介して、操舵杆の上部杆46aを後方側に横倒しすることにより折り畳むことができる。これにより装置全体をコンパクト化でき、自動車に積載して運搬したり、保管するのに省スペースで便利である。
【0042】
次に図11ないし図17を参照しつつ、本発明に係る歩行補助装置の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と同一構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。本実施形態に係る歩行補助装置10aでは、後輪が2つ設けられた前2輪後2輪の4輪車構成であり、上記実施形態のものよりも安定した車体構造となっている。すなわち、本実施形態では、図11、図12、図13に示すように、歩行補助装置10aは、フレーム12と、2つの前輪14と、2つの後輪16と、サドル18と、操舵装置20と、肘掛け台22と、を備えている。
【0043】
図11、図12、図13に示すように、本実施形態では、2つの後輪16は、前輪14の径よりも小さく設けられている。2つの後輪16を支持する後輪支持フレーム28aは、例えば、L字フレーム24の縦杆部24bの上部側から後方に向けて突設された接続ブラケット87に一端を固定され斜め下後方に向けて延長した1本の後パイプ部材84と、後パイプ部材84の延長下端に平面視で後パイプ部材84に対してT字状に固定された横板フレーム86と、を含む。後パイプ部材84には、ブレーキレバー64の握り込み・解放操作に対応して後輪16を摩擦制動、解除するブレーキ装置62が固定されている。なお、図中、83は、ブレーキレバー64を解放した際にブレーキ装置を解除復帰させるバネ等の付勢部材である。横板フレーム86の左右両端側には、後輪16の回転軸を軸支する軸支部が設けられており、それぞれの後輪16を転動自在に支持している。横板フレーム86の左右幅方向長さは、前輪支持フレーム26の左右幅方向長さよりも短く設けられている。よって、2つの後輪16は、2つの前輪14の対向配置間隔よりも狭い間隔で対向配置されている。2つの後輪16は、その回転中心の間隔が、例えば、サドル18の左右幅と略同じ程度かやや狭く配置されている。これにより、後輪16を2つ配置した構成であっても、足の後方に車輪を配置させない構造としており、使用時に利用者が地面を蹴った足が後輪に当たりにくくすることができる。さらに、2つの後輪16は、地面と接する側を広げてハ字状に対向配置されている。したがって、2つの後輪16どうしの間隔が狭くても安定性を高く維持でき、安全に使用できる。
【0044】
本実施形態でも、利用者Mが麻痺等の患側の足を載せることができる足載せ部が設けられているが、上記実施形態のものとは具体的な構成が異なっている。図11、図12に示すように、足載せ部88は、フレーム12の前後中間位置であって、側面視で前輪14と後輪16との間となる位置に、変換支持機構90を介してフレーム12に取り付けられている。足載せ部88は、平面視でL字フレームの横杆部24aを挟んで対称的に左右両側に合計2個設けられている。図15、図16にも示すように、これらの足載せ部88は、変換支持機構90により、フレーム12に対して展開、格納自在に設けられている。なお、図11、図12、図13では、右側の足載せ部88Rを展開し、左側の足載せ部88Lを格納した状態で示している。
【0045】
図14にも示すように、足載せ部88は、例えば、サドル18に跨った人Mが軽く膝を曲げて下腿を略鉛直にした状態で足を載せることが可能なように(矢視LS参照)、地面GL側の低い高さ位置で、サドル18の真下位置からやや前方側位置に配置されて支持されている。図12に示すように、足載せ部88は、平面視では、サドル18と前輪14との間の略中央に配置されている。それぞれの足載せ部88R(88L)は、平面視で1本のL字フレーム24の横杆部24aから右側方(又は左側方)に向けて展開、格納自在に展開される台板部材92を有している。図15、図16にも示すように、台板部材92は、例えば、プラスチック等の硬質合成樹脂で形成された略隅丸四角形状の板部材からなる。台板部材92の一辺側には、変換支持機構90に連結するための連結部94が一体的に設けられている。連結部94は、例えば、台板部材91の端部側から立体ブロック状に突設されているとともに、台板部材92の表面と略平行に貫通孔が穿孔されている。上記のような足載せ部88の配置構成により、足載せ部を前輪14の上方側に配置した上記実施形態の構成(図9参照)と比較して脚が窮屈になりにくく、比較的楽な姿勢で、しかも安定した状態で使用することができる。また、足載せ部88の地面からの高さ位置が比較的低いので、不自由な患側の足を台板部材に載せたり降ろしたりする動作も比較的楽に行える。なお、台板部材92に載せた足が滑り落ちにくいように、台板部材92の表面に滑り止め用の凹凸や高摩擦のゴム面等を形成してもよい。
【0046】
図15、図16、図17に示すように、足載せ部88をフレーム12に支持させる変換支持機構90は、台板部材92をフレーム12の側方に展開させて足載せ可能とする状態V1と、台板部材92を格納させてフレーム側方に該台板部材等の構成部材を存在させず足で地面GLを蹴るためのスペース96を形成させる状態V2と、を選択的に変換する足載せ部88の変換支持手段である。変換支持機構90は、例えば、L字フレーム24に固定される支持ブラケット98と、支持ブラケット98に対して所定範囲内で回動自在に連結されるとともに台板部材92と連結される支持アーム100と、を含む。変換支持機構90は、例えば、台板部材92を2つの直交する軸102a、100a回りに回動変位(図16上、矢印R1、R2方向)させることにより、展開状態(V1)と格納状態(V2)とを変換可能に支持している。
【0047】
支持ブラケット98は、例えば、金属から形成されており、L字フレーム24のL字隅部近傍の左右側方側に溶接等で固定されている。支持ブラケット98は、L字フレーム24への固定片aと、固定片に対して若干離隔して平行に対向配置された外板片と、固定片と外板片の上部側とを連結する連結部と、が一体的に形成され前後と下方側を支持アームの受け入れ部として開放している。支持ブラケット98には、軸方向102aを左右方向に向けた横軸102が架設状に支持されている。
【0048】
支持アーム100は、例えば、金属製の丸杆からなり、長手軸方向100aを横軸102の軸方向102aに対して直交して配置されている。支持アーム100は、一端側が横軸102に連結され他端側を自由端として横軸回り(図16の矢印R1方向)に回動自在となっている。支持アーム100の他端側に台板部材92が連結されている。支持アーム100は、例えば、水平状に横に倒してL字フレームの横杆部24aに略沿わせた倒伏位置と、後傾状に傾斜するように縦に立ててL字フレームの縦杆部24bに略沿わせた起立位置と、の角度範囲内で回動可能となっている。支持アーム100の一端側と支持ブラケットとが係合することにより、倒伏位置と起立位置とでそれぞれ回動範囲を規制する第1ストッパ部104を構成している。第1ストッパ部104は、支持アーム100の倒伏位置では、支持アーム100の一端側が支持ブラケットに下方から当たって係止されることにより、回動が規制される。一方、支持アーム100の起立位置では、支持ブラケット98の連結部の前面側に支持アーム100の中間位置がもたれ掛け状に係止されることにより、回動が規制されるようになっている。なお、支持アーム100は起立位置では、後傾状に傾斜しているので、支持アームを手で回動操作しない状態では、倒伏位置に倒れにくいようになっている。支持アーム100の他端側は、台板部材92の連結部94の貫通孔に嵌挿されており、台板部材92を長手軸100a回り(図16の矢印R2方向)に回動自在に連結している。支持アーム100の他端側には、台板部材92と協働して該台板部材92の回動範囲を所定角度で規制する第2ストッパ部106を構成している。第2ストッパ部106は、例えば、支持アーム100の他端部から長手軸100aに対して直交状に突設された突起部108と、台板部材92側に設けられて突起部108に係止する受片部110と、を含む。図15に示すように、台板部材92がフレーム側方で横に向けて展開した回転位置で台板部材92の受片部110が支持アームの突起部108に係止されることにより、台板部材92の回動を規制する。第1、第2ストッパ部により、台板部材92を展開した状態V1では、載せる足の荷重に抗して台板部材92が2つの軸(100a、102a)回りに回動するのを防止でき、安全に足載せ部に足を載せることができる。
【0049】
次に、本実施形態に係る歩行補助装置10aを使用する際には、図14に示すように、使用者Mはサドル18に跨って腰掛け、肘を肘掛け台22に載せてハンドル60を握り、両足又は片足で地面を蹴って進行できる。よって、上記実施形態同様に安全にかつスムーズに使用できる等の作用効果を奏することができる。さらに本実施形態では、足載せ部88は、例えば、右側が麻痺している片麻痺患者の場合には、図12、図15に示すように、予め右側の足載せ部88Rを展開する(V1)とともに、左側の足載せ部88Lは格納して(V2)、L字フレーム24の左側に地面を蹴るためのスペース96を確保しておく。一方、左側が麻痺している片麻痺患者の場合には、図17に示すように、上述とは逆に、右側の足載せ部88Rを格納して(V2)右側に地面を蹴るためのスペース96を確保しておくとともに、左側の足載せ部88Lを展開する(V1)。これにより、使用者Mの病状等に対応して右側又は左側の足載せ部を展開させて患側の足を載せることができるとともに、進行するために地面を蹴る健常な足側では足載せ部88を格納して邪魔になることがなく、良好に使用できる。また、例えば、両足をある程度使える患者等の場合や、サドル18から降りて両足で立った状態で歩行補助装置10aを押しながら使用する場合には、図16の実線に示すように、左右両方の足載せ部88を格納して(V2)、左右両側に地面を蹴るためのスペース96を確保することができる。使用者Mの病状や使い方に応じて足載せ部88を展開格納しながら使用できる。
【0050】
以上説明した本発明の歩行補助装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の歩行補助装置は、例えば、足腰の機能が低下した怪我人、病人等の患者や高齢者等が自身の足を使って自由に移動するのに好適である。
【符号の説明】
【0052】
10 歩行補助装置
12 フレーム
14 前輪
16 後輪
18 サドル
20 操舵装置
22 肘掛け台
24 L字フレーム
28 後輪支持フレーム
34 スペース
46 操舵杆
54 調整機構
58 肘掛け面
60 ハンドル
62 ブレーキ装置
64 ブレーキレバー
76、88 足載せ部
90 変換支持機構
96 スペース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームの前部に転動自在に支持された2つの前輪と、
フレームの後部に転動自在に支持された1つ又は2つの後輪と、
フレームに所定高さで支持されたサドルと、
フレームの前部側に組み付けられ、前輪の進行方向を任意に変更する操舵装置と、
操舵装置の上方に立ち上がった操舵杆の上端側に連結されつつ所定の高さ位置に支持され、人の腕部を安定して載せ掛ける広幅の肘掛け面を形成した肘掛け台と、を備え、
人がサドルに跨った状態で両足又は片足のみで地面を蹴りながら使用することを特徴とする歩行補助装置。
【請求項2】
肘掛け台には、肘掛け面の前部側に上方に向けて立設され、肘掛け面に肘を載せた状態で手で握って操舵可能なハンドルが設けられた請求項1記載の歩行補助装置。
【請求項3】
後輪を制動するブレーキ装置を有しており、
肘掛け台のハンドルに、握り込み・解放操作でブレーキ装置を制動・解除操作するブレーキレバーが取り付けられた請求項2記載の歩行補助装置。
【請求項4】
肘掛け台は、肘掛け面が平面視略ハ字状に後方側に広がって設けられた請求項1ないし3のいずれかに記載の歩行補助装置。
【請求項5】
肘掛け台のサドル位置に対する前後方向の相対位置を調整可能なように操舵杆の前後方向の傾斜角度を変更する調整機構が設けられた請求項1ないし4のいずれかに記載の歩行補助装置。
【請求項6】
フレームは、地面側の低い位置で前輪側から後方に向けて横杆部を配置させつつ該横杆部の後端側を略L字状に上向きに屈曲してサドルを支持する縦杆部を形成したL字フレームと、
該L字フレームと後輪とを接続する後輪支持フレームと、を有しており、
L字フレームと後輪との間に地面を蹴った足を入れうるスペースを形成するように、後輪支持フレームはL字フレームの縦杆部上部側から後方側に延長されながら後輪を該L字フレームから離隔配置させた請求項1ないし5のいずれかに記載の歩行補助装置。
【請求項7】
フレームには、足を載せる底台と、底台上に載せた足が滑り落ちるのを防止するように底台の縁から立設した規制壁と、を含む足載せ部が取り付けられた請求項1ないし6のいずれかに記載の歩行補助装置。
【請求項8】
サドルに跨った人が軽く膝を曲げて下腿を略鉛直にした状態で足載せ可能なように、地面側の低い高さ位置で、サドルの真下からやや前方側位置に配置される足載せ部であって、平面視で1本のフレームから左右側方に向けてそれぞれ展開、格納自在に展開される台板部材を有する2個の足載せ部と、
それぞれの足載せ部をフレームに支持させるとともに、台板部材をフレーム側方に展開させて足載せ可能とする状態と、台板部材を格納させて足で地面を蹴るスペースを形成させる状態と、を選択的に変換する変換支持機構と、を含む請求項1ないし6のいずれかに記載の歩行補助装置。
【請求項9】
フレームの後部に支持される後輪は2つ配置されており、
2つの後輪は、2つの前輪の対向配置間隔よりも狭い間隔で、かつ地面と接する側をハ字状に広げて対向配置された請求項1ないし8のいずれかに記載の歩行補助装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−94505(P2010−94505A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216473(P2009−216473)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(500202780)アドバンフィット株式会社 (1)