説明

歩行補助装置

【課題】把持部を有する手押し台車に、リハビリ歩行者の歩幅、速度に合わせて、リハビリ歩行者の膝部を前後方向に引くことにより、膝関節を屈曲させながらリハビリ歩行者の状態に沿った歩行補助装置を提供することを目的とする。
【解決手段】手押し車1に搭載されたバッテリィ31からの電力により回転する可変速度直流モータ3と、該可変速度直流モータ3回転数を減速させる変速装置4と、該変速装置4に連結して手押し車2の幅方向に延在した軸部の両端部に互いに略180°異なる方向に屈曲した左右一対のクランクアーム45と、リハビリ歩行者の膝に装着された膝用バンド部材6とを連結すると共に、緩衝部材72を介装した連結部材7と、膝用バンド部材6とを備えたことを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者の歩行を補助するための歩行補助装置で、特に手押し車型の歩行補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行補助装置の先行技術文献として特開2007−268232号(特許文献1)が開示されている。
図7及び、図8に示すように、歩行場所に沿って設置されたガイドレール07と、ガイドレール07に設置されて摺動可能なスライダー06と、スライダー06に取付けられ交互に前後揺動する左右のハンドル01,02と、ハンドル01,02の中間部にタイロッド09で結合されたブレーキシュー08、ブレーキシュー08を案内するブレーキガイド013、ブレーキシュー08の摩擦を受けるブレーキレール014から構成されている。
【0003】
この装置を階段の昇り側に沿って傾斜状態に設定した場合は、操作者は装置の下側の段に立ち、一方のハンドルを手前に引く時はブレーキが作用し、同時にもう一方のハンドルはフリーとなって前方へ押し出されるようにする。これにより、右側ハンドルで身体を引き上げながら、左脚で1段昇り、同時に左側ハンドルが前方に押し出されるのに合わせて、右脚を次の段に掛けるまでを1行程としてこれを繰返すことによって前進する内容となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2007−268232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術によると、階段等を昇降でき、膝関節等が自力で自由に動ける、かなりリハビリの進んだ方々の歩行用補助装置となっている。
ところが、把持部を握り、起立は可能だが、思うように脚が前方に進めることができないような、方々に対しては、従来技術の装置で歩行用リハビリをすることができない不具合を有している。
本発明では上述の問題点に鑑みなされたもので、把持部を有する手押し台車に、リハビリ歩行者の歩幅、速度に合わせて、リハビリ歩行者の膝部を前後方向に引くことにより、リハビリ歩行者の状態に沿った歩行補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はかかる目的を達成するもので、車台に複数の車輪を有する手押し車と、前記車台に搭載された電源装置と、該電源装置からの電力により回転する電動モータと、該電動モータの回転数を減速させる変速装置と、該変速装置に連結して、前記車台の幅方向に延在した軸部の端部に該軸部の軸線と略直角方向に屈曲して、前記軸部の回転運動を前記手押し車の進行方向への往復運動に変換するクランクアームを有したクランク機構と、リハビリ歩行者の膝に装着された膝用バンド部材と、該膝用バンド部材と前記クランクアームとを連結すると共に、前記手押し車の進行方向に緩衝作用をする緩衝部材を介装した連結部材と、前記電源装置からの電力を調整して、前記電動モータ及び前記変速装置の回転数を調整すると共に、前記モータの始動及び停止をコントロールするコントロール装置
【0007】
かかる発明において、リハビリ歩行者が手押し車の把持部を握り、膝間接部の屈曲歩行を電動モータの駆動力で補助することと、変速装置による回転数の減速することにより、歩行リハビリを安全に行うことが可能となった。
また、変速装置を設けたので、リハビリの進捗程度により走行速度を変更できる。
更に、連結部材には連結部材の連結方向に緩衝する緩衝部材を設けたので、リハビリ歩行者の速度とクランクアームの回転速度とが一致しなくとも、リハビリ歩行者の膝への衝撃を和らげ、安全な歩行リハビリが可能となった。
【0008】
また、本発明において好ましくは、前記クランクアームは前記軸部の車幅方向両端部に配設され、夫々の前記クランクアームの屈曲方向は位相が略180°ずれているとよい。
【0009】
このような構成にすることにより、リハビリ歩行者の両脚を同時にリハビリを行うことができる。
【0010】
また、本発明において好ましくは、前記膝用バンド部材は、リハビリ歩行者の前記膝頭部を挟んで前記膝頭部の上側を捲回する上側バンドと、前記膝頭部の下側を捲回する下側バンドと、前記上側バンドと前記下側バンドとを連結して互いに上下へずれるのを防止する維持バンドと、前記膝頭部を捲回して、前記維持バンドに貼着されると共に、前記膝頭部の前側に前記連結部材と連結する連結部を有した連結バンドとを備えるとよい。
【0011】
このような構成にすることにより、バンド部材は上部及び、下部バンドで膝頭を挟み、連結バンドで膝頭を捲回して、維持バンドで上下に連結して、バンド部材で膝頭を包むような構造とすることにより、膝が屈曲、伸長を繰返してもバンド部が上下にずれないので、効果的なリハビリ効果を得ることができる。
【0012】
また、本発明において好ましくは、前記クランクアームは、前記連結部材と結合する結合孔を前記クランクアームの長さ方向に沿って複数備え、前記往復運動のストローク量を複数段階に調整可能とするとよい。
【0013】
このような構成にすることにより、リハビリ歩行者の程度に沿って、クランクアームでのストローク量(歩幅)を決められるので、リハビリ歩行者に無理をさせずに、リハビリができる効果を有している。
【0014】
また、本発明において好ましくは、前記手押し車は前記台車の進行方向後部に後方が開口した平面視が略U字状の把持部を有し、リハビリ歩行者が前記略U字状の把持部の開口部に位置してリハビリを行うようにするとよい。
【0015】
このような構成にすることにより、U字状の両サイドの把持部に肘掛できるので、起立力の弱い人でも歩行リハビリが可能となる。
【0016】
また、本発明において好ましくは、前記把持部はリハビリ歩行者の身長に応じて上下方向に伸縮する高さ調整機構を有するとよい。
【0017】
把持部の高さを伸長に合わせて上下調節できるようにしたので、リハビリ中に不自然な姿勢になるのを防止して、余計な労力が省けるので効率的なリハビリが可能となる
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、把持部を有する手押し台車に、リハビリ歩行者の歩幅、速度に合わせて、リハビリ歩行者の膝部を前後方向に引くことにより、リハビリ歩行者の状態に沿ったリハビリが可能となり、安全で、効果的な介助者歩行リハビリが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明第1実施形態で(A)は歩行補助装置の使用イメージ図、(B)は台車のハンドル部の高さ調整装置詳細構造、(C)は高さ調整装置の固定構造を示す。
【図2】本発明の歩行補助装置の概略構成図を示す。
【図3】本発明の膝バンド部材で(A)は膝バンド部材の装着状態図、(B)は膝バンド部材の展開状態図を示す。
【図4】本発明の連結部材で(A)は概略構成図、(B)はクランクアームと連結部材との結合構造詳細図、(C)はクランクアームの単品形状図を示す。
【図5】可変速度直流モータの出力特性図を示す。
【図6】本発明第2実施形態で(A)は歩行補助装置の使用イメージ図、(B)は(A)のY矢視図を示す。
【図7】従来技術にかかる、概略構成の側面図を示す。
【図8】図7のZ矢視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。
但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0021】
(第1実施形態)
図1は歩行補助装置1の使用イメージ図を示し、図2はその概略構成図を示す。
2は手押し車である台車を示し、台車2には平面視が矩形状をした荷物載置部21の一辺に固定され、上方へ延在してリハビリ歩行者が把持する把持部221を有したハンドル22と、荷物載置部21に搭載した装置を覆うカバー部材26と、荷物載置部21のハンドル22と対向する辺の両側下部に、台車2の直進安定性を保持し、且つ方向変換を容易にするキャスター付車輪24と、ハンドル22側の辺の両側下部に固定軸に回転自在に装着された車輪25とで構成されている。
【0022】
ハンドル22の縦部には把持部221の高さを調整する高さ調整装置23が介装されている。高さ調整装置23は荷物載置部21側から起立しているアウタステー231と、アウタステー231に内嵌し、アウタステー231の軸芯に沿って摺動するインナステー232と、インナステー232の軸線方向に沿って複数穿設された調整孔236とアウタステー231に穿設された係合孔237とを貫通してインナステー232がアウタステー231の軸芯に沿って摺動することを阻止するT字形状のストッパ234と、ストッパ234のT字形状の足部に形成された孔に嵌入して、ストッパ234がアウタステー231の係合孔237及びインナステー232の調整孔236から抜け落ちないようにするストッパピン235とで構成されている。
高さ調整装置23はハンドル22の幅方向左右対称位置に夫々装着されている。
【0023】
荷物載置部21にはリハビリ歩行者の歩行補助の動力源となる電動モータである可変速度直流モータ3と、可変速度直流モータ3に内蔵されたモータの回転数を減速させる第1変速機41と、可変速度直流モータ3内の第1変速機41の出力軸411に連結し、第1変速機41の回転を無段階に変速する第2変速機である無段変速装置42とで構成された変速装置4と、変速装置4の回転出力軸424に連結し、台車2の進行方向と略直行する方向(この方向を以後「幅方向」と略称する)に延在し荷物載置部21上に起立した支持台425に軸芯廻りへ回転自在に軸支された回転出力軸424と、回転出力軸424の幅方向両端部に装着されている左右のクランクアーム45、46と、可変速度直流モータ3の動力源であるバッテリィ31と、ハンドル22の把持部221近傍に配置され、バッテリィ31から可変速度直流モータ2への電力供給量を調整して可変速度直流モータ3の回転速度と、無段変速装置42の回転出力軸424の回転数を調整して、クランク機構の回転数をコントロールするコントローラ5とを備えている。
【0024】
aはバッテリィ31からの電力をコントローラ5へ導く電源動力線であり、bは電力をコントローラ5から可変速度直流モータ3へ回転数を制御した電流を導く動力線であり、c及びdはコントローラ5で制御された信号に基づいて、後述する無段変速装置4の回転出力軸424の回転数制御を行う制御用通信線である。
【0025】
図5は可変速度直流モータ3の出力特性を示す。可変速度直流モータ3のトルクは回転数の変化に対して同じトルクを発生するステップモータを採用している。台車1のハンドル22の把持部221に装着されたコントローラ5にはバッテリィ31からの電力が入力され、コントローラ5のモータRPM部のモータコントロールレバー51を操作することにより可変速度直流モータ3への電流供給量が制御される。本実施形態では、この操作により可変速度直流モータ3の出力回転数は図5に示されるように、可変速度直流モータ3に内蔵された第1変速機41によって、0〜100rpm/minに調整できるようになっているものを使用している。
従って、リハビリの歩行速度に関係なく、一定の膝部牽引力が作用するので、安定したリハビリが可能となる。
【0026】
また、コントローラ5には始動ボタン54と停止ボタン53とを配設してあり、可変速度直流モータ3の出力回転数、後述する無段変速装置42の出力回転数及び、リハビリ歩行者の歩幅等が決定して、それらの条件に沿うようにセットしてから始動ボタン54を操作してリハビリを開始する。中止する場合には、停止ボタン53を操作して可変速度直流モータ3への電流を遮断する。コントローラ5をハンドル22に設置したので、リハビリ歩行者がリハビリ中に自身の歩行ペースにより近づけることが可能となると共に、緊急時には停止ボタン53を操作して可変速度直流モータ3の回転を停止することにより、リハビリ歩行者へのリハビリ中の安全が図られる。
尚、始動ボタン54及び、停止ボタン53はボタンを押すことによりスイッチON、OFFする構造となっており、停止ボタン53は安全性を考慮して、始動ボタン54より大きくして、操作を間違えないように配慮してある。
【0027】
可変速度直流モータ3の出力回転数を無段階に減速する第2変速機である無段変速装置42は、2個の円錐台形状プーリを対向させ、2個のプーリ間の傾斜部間隔を変化させ、傾斜部に介装された駆動ベルト423がプーリの半径方向に移動することにより、駆動側プーリ421及び従動側プーリ422の回転数を円錐型のプーリをベルト駆動によって無段階に変速させる公知の変速機である。
可変速度直流モータ3に内蔵された第1変速機41の出力軸411に、駆動側プーリ421が連結され、従動側プーリ422が荷物載置部21上に起立した支持台425に軸芯が幅方向へ軸支された回転出力軸424に連結されている。駆動側プーリ421と従動側プーリ422間を駆動ベルト423により捲回され、回転出力軸424に動力が伝達されている。
無段変速装置42は、コントローラ5の変速機RPMの変速機コントロールレバー52を操作することにより、駆動側プーリ421と従動側プーリ422の夫々に内蔵されたモータ駆動により、プーリ間の間隔が増減する。
【0028】
例えば、コントロールレバー52を「減」側に操作すると、駆動側プーリ421のプーリ間隔が広がり、駆動ベルト423はプーリの回転中心側に移動する。一方、従動側プーリ422のプーリ間隔は狭まり、駆動ベルト423はプーリの外周側へと移動して、回転出力軸424の回転数は減少する。
コントロールレバー52を「増」側に操作すると、駆動側プーリ421及び従動側プーリ422のプーリ間隔は夫々逆の動作を行い、回転出力軸424の回転数は増加する。
無段変速装置42を介装することにより、さらに、リハビリ歩行者の快復状態に沿った、肌理こまかい回転速度に調整できるので、安全で、効果的なリハビリ歩行が可能となる。
尚、本実施形態の場合、変速装置4は可変速度直流モータ3内に内蔵されている第1変速機41と、上述の無段変速装置42とで構成したが、可変速度直流モータ3内に内蔵されている第1変速機41だけでリハビリ歩行者の歩行ペースに合わせることが可能な場合は、無段変速装置42を省略することも可能である。
【0029】
クランク機構は、回転出力軸424と、回転出力軸424の幅方向両端部の右側(以後、前後左右は、リハビリ歩行者がハンドル12の把持部13を握った状態を基準とする)右クランクアーム45と,左クランクアーム46は回転出力軸424の軸線に対し、略直角方向に延在し、延在方向が右クランクアーム45と左クランクアーム46は夫々180度位相をずらして固着された構成となっている。
また、左右のクランクアーム45,46夫々はアームの長さ方向に沿って複数個の取付け孔451,461が穿設され、クランクアーム45,46(以後、記載の煩雑化防止のため、クランクアームの左右を特定する必要がない場合には「クランクアーム45」で総称する。)の回転によるストローク量(リハビリ歩行者の歩幅に相当)を複数段階に調整できるようになっている。〔図4(C)参照〕
更に、クランクアーム45の複数個の取付け孔452部は回転出力軸424の端部より外方へオフセット(W)させてある。これはクランクアーム45の回転により、連結部材7が回転出力軸424に巻き込まれないように、クランクアーム45と回転出力軸424との取付け面から、連結部材7の取付面を外側にオフセットさせたものである。
【0030】
クランクアーム45の回転出力軸424との結合部は矩形状の孔451に回転出力軸424の端部に設けた矩形状の孔451に対応した係合部に係合させて、回転駆動力を伝達させる構造としてある。
従って、身長の大きさ、リハビリの進捗度に沿った歩幅調整が可能となる。
また、回転出力軸424はリハビリ歩行者の膝の高さと同一か、又は若干高い位置に配設することにより、人間の本来の歩き方に近い方向に膝部の動きができるようにしてある。
更に、回転出力軸424の回転方向は、クランクアーム45が水平位置から上方へ回転する時に、リハビリ歩行者の膝を斜め上方へ牽引する、即ち、図1において時計回りに回転するようにしてある。
リハビリ歩行者の膝を斜め上方へ牽引することは、歩行者の踵を上方へ持ち上げて、膝を屈曲させ床を擦って歩かないようにして、リハビリ効果を上げるようにしてある。
【0031】
図3は膝用バンド部材6を示し、(A)はリハビリ歩行者の膝部にバンド部材6を装着した状態を示す。
(B)は膝用バンド部材6の展開状態を示し、膝用バンド部材6は、膝頭部の上側に巻回され、両端部に巻回時に係止させる貼着部材66を配設した上側バンド61と、膝頭部の下側に巻回され、両端部に巻回時に係止させる貼着部材66を配設した下側バンド62と、上側バンド61及び、下側バンド62の膝頭部の両側部に位置する部分で上側バンド61と下側バンド62とを連結する維持バンドである連結バンド63と、膝頭部を巻回し、連結バンド63と貼着部材66で係合すると共に膝頭部に位置する部分にクランクアーム45と連結する連結部材7が係合するループ状の係合部材64を有し、両端部に巻回時に係止させる貼着部材66を配設した牽引バンド65を具備している。
【0032】
本実施形態では貼着部材66として面ファスナーを用い、面ファスナーはバンドに沿って長めの形状にして使用した。リハビリ歩行者の膝部の太さに柔軟に対応でき、且つ着脱が容易である。
従って、リハビリ歩行者が歩行補助装置によって膝を曲げる動作をしても、バンド部材6が膝から上下にずれることを防止して、効果的な膝を曲げた歩行リハビリができる。
【0033】
図4(A)は連結部材7の概略構成図、(B)はクランクアーム45との結合部構造図、(C)はクランクアーム45の単品形状図を示す。
連結部材7は、一端に牽引バンド65の係合部材64と係合する係合フック71と、係合フック71に固着され、前後方向への伸縮をする緩衝部材72を有し、他端側に右クランクアーム45と結合する取付プレート741を有し、緩衝部材72と取付プレート741とを連結する柔軟部材からなる連結材74とを備えている。
また、図4(A)に示すように、係合フック71は釣針形状のフック部711と、フック部711の半円形状首部712にピン結合され、常時、先端部をフック部711の先端側に押圧するコイルスプリング(図示省略)を配した牽引バンド65の係合部材64との係合解除防止用のストッパ部713から構成されている。
【0034】
また、図4(A)に示すように、緩衝部材72は筒部721の空洞部にコイルスプリング722が収納されており、コイルスプリング722のフック部711側に配設した圧縮用プレート723に連結材74の端部を固着してある。コイルスプリング722のクランクアーム45側(前方側)は、筒部721の外側面に配設されたねじ部に螺合した蓋部材724によって受止められ、筒部721の軸芯部分に連結材74が挿通可能に穿設された挿通孔に挿通されている。
【0035】
図4(B)及び(C)に示すように、連結材74の他端側は、右又は左クランクアーム45,46のいずれか一方にアームの長さ方向に複数個穿設された取付け孔452のいずれかに取付けられる取付プレート741が固着されている。取付プレート741はクランクアーム45に配設した複数の取付け孔452のいずれかに(リハビリ歩行者の歩幅に合わせて決める)平ワッシャ742を介して段付ボルト743にて取付けられる。
取付プレート741は段付ボルト743にて取付けられる構造としたので、取付プレート741は段付ボルト742の軸線回りに回動自在に取付けられている。
【0036】
尚、本実施形態での連結材74は、細い複数のワイヤを捩った物を利用したが、若干の剛性を有して、クランクアーム33の回転により、連結材74が回転出力軸424に容易に巻き込まれないような部材であれば限定するものではない。
尚、連結部材7は右側用と左側用とも同一の構成を成している。
また、本実施形態では右クランクアーム45と右膝とを連結部材7で連結し、左クランクアーム46と左膝とを連結部材7で連結しているが、荷物載置部21に搭載した装置の配置構造によっては、連結部材7が交差するような配置しても同様の効果を得られる。
【0037】
連結部材7には緩衝部材72を配設したので、クランクアーム45の回転による最初の引張力によるリハビリ歩行者の膝への衝撃が緩和され、安全な歩行リハビリが可能となる。
尚、緩衝用として、圧縮型のコイルスプリングを使用したが、引張型のコイルスプリング又は、ゴムバンド等を用いれば、筒部721等が不用となりコスト低減が可能となる。
また、バンド部材6と連結部材7との結合部をストッパ部723が備えられた係合フック71としたので、歩行リハビリ中に歩行スピードが変化して、連結部材7が撓んでも結合部が外れることが無く安全な歩行リハビリが可能となる。
【0038】
本実施形態の利用手順について説明する。
リハビリ歩行者の体格、リハビリの進捗状況を考慮して、右脚用に右クランクアーム45の歩幅(クランクアームによるストローク量)を決め、歩幅に相当する位置に右クランクアーム45に連結部材7を結合する。次に、左脚用に左クランクアーム46の歩幅を決め、歩幅に相当する位置に左クランクアーム46に連結部材7を結合する。リハビリ歩行者の状態によっては、左右の歩幅が異なる場合がある。
次に、可変速度直流モータ3の出力回転数と、該出力回転数に伴う変速装置4の変速比率を決めて、コントローラ5をセットする。
次に、リハビリ歩行者の膝にバンド部材6を捲きつける。その後、バンド部材6の牽引バンド65の係合部材64に連結部材7の係合フック71を係合する。これでリハビリ準備は整い、コントローラ5の始動ボタン54をスイッチONして、リハビリを開始する。
【0039】
本実施形態によると、リハビリ歩行者が手押し車2の把持部221を握り、膝間接部の屈曲歩行を可変速度直流モータ3の一定の駆動力で補助することにより、歩行リハビリを安全に行うことが可能となった。
また、無段変速装置42を設けたので、リハビリの程度により走行速度を無段階に変更できると共に、連結部材には連結部材の連結方向に伸縮して、駆動力の伝達力を緩衝する緩衝部材を設けたので、リハビリ歩行者の速度とクランクアーム45の回転速度とが一致しなくても、リハビリ歩行者の膝への衝撃を和らげ、安全なリハビリ歩行が可能となった。
また、手押し車2にキャスター付車輪24を用いたので、リハビリ場所での方向変換が容易であり、狭い場所でも連続したリハビリ歩行ができる。
尚、本実施形態では、両脚をリハビリする内容で説明したが、リハビリが片方だけの場合は、他の片方は連結部材を外して使用することもできる。
【0040】
(第2実施形態)
図6は本発明第2実施形態で(A)は歩行補助装置の使用イメージ図、(B)は(A)のY矢視図を示す。
尚、本実施形態は台車8の形状が異なる以外は、第1実施例と同じなので、台車8の説明だけを行い、他の部分については説明を省略する。
図6(A)に示すように、台車8は、台車8の進行(走行)方向前端側の台車幅方向両端部にキャスター付車輪24が装着され、台車8の荷物載置部81の後端から後方へ延在した左右の台車フレーム811の後端部812に固定軸を介して回転自在に装着された車輪25が装着されている。台車8の荷物載置部81の後端部から上方へ起立して、リハビリ歩行者の腋の下くらいの高さで後方へ略水平に屈曲した右屈曲部821を有する右フレーム82と、右フレーム82と台車幅方向に対向して、右フレーム82と同形状で左屈曲部831を有した左フレーム83が配設されている。
【0041】
また、右屈曲部821及び左831間を架橋する前把持部841と、前把持部841両端から右屈曲部821及び左右屈曲部831の上面に固着されると共に、右屈曲部821及び左右屈曲部831に沿って、後方へ略水平で且つ、左右の台車フレーム811の後端部812の略上方位置まで延在した右側部把持部842、左側部把持部843と、右側部把持部842、左側部把持部843夫々の後端から下方へ屈曲して、左右の台車フレーム811の後端部812と結合する左右の縦支持部844,845とで形成され、平面視が略U字状〔図6(B)参照〕、側面視が逆L字状の肘掛可能なU字状把持部であるアッパーフレーム84を備えている。
更に、右フレーム82、左フレーム83、及び左右の縦支持部844,845の中間部には、アッパーフレーム84を上下方向に高さ調整する高さ調整機構23が配設されている。
尚、高さ調整機構23は第1実施形態と同じ構造なので説明は省略する。
【0042】
リハビリ歩行者は略U字状のアッパーフレーム84の開口部に位置して、車台8の前後方向に延在するアッパーフレーム84のU字状の両辺に肘を掛けて身体を維持しながらリハビリを実施できる。
また、リハビリ歩行者が肘掛する部分は、台車8の前端側のキャスター付車輪24と後端側の車輪25との間に位置するようにしてあるので、リハビリ歩行者の全体重がアッパーフレーム84の肘掛する部分に作用しても、キャスター付車輪24が床面から浮くようなことが無く、安全なリハビリを実施できる。
更に、右側フレーム82と左側フレーム83の前後左右の縦部材中間部には、第1実施形態と同様構造をした、上下方向へ伸縮する高さ調整機構23が配置されているので、リハビリ歩行者の身長、起立維持状況(リハビリ歩行者の脚部の状況)等に応じて、アッパーフレーム84への体重の掛け具合が調整できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、手押し車に動力源を搭載して、その動力源によってリハビリ歩行者の膝部を前後方向に引くことにより、膝部の屈曲補助を行い、リハビリ歩行者の歩幅、速度に合わせて行うリハビリ歩行の歩行補助装置に適している。
【符号の説明】
【0044】
1、8 歩行補助装置
2 台車
3 可変速度直流モータ
4 変速装置
5 コントローラ
6 膝用バンド部材
7 連結部材
21 荷物載置部
22 ハンドル
23 高さ調整機構
24 キャスター付車輪
31 バッテリィ
41 第1変速機
42 無段変速装置
43 駆動ベルト
45 右クランクアーム
46 左クランクアーム
47 回転出力軸
51 モータコントロールレバー
52 変速機コントロールレバー
53 停止ボタン
54 始動ボタン
61 上側バンド
62 下側バンド
63 連結バンド
65 牽引バンド
71 係合フック
72 緩衝部材
74 連結材
84 アッパーフレーム
421 駆動側プーリ
422 従動側プーリ
423 駆動ベルト
743 段付ボルト
841 前把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車台に複数の車輪を有する手押し車と、前記車台に搭載された電源装置と、該電源装置からの電力により回転する電動モータと、該電動モータの回転数を減速させる変速装置と、該変速装置に連結して、前記車台の幅方向に延在した軸部の端部に該軸部の軸線と略直角方向に屈曲して、前記軸部の回転運動を前記手押し車の進行方向への往復運動に変換するクランクアームを有したクランク機構と、リハビリ歩行者の膝に装着された膝用バンド部材と、該膝用バンド部材と前記クランクアームとを連結すると共に、前記手押し車の進行方向に緩衝作用をする緩衝部材を介装した連結部材と、前記電源装置からの電力を調整して、前記電動モータ及び前記変速装置の回転数を調整すると共に、前記モータの始動及び停止をコントロールするコントロール装置とを備えたことを特徴とする歩行補助装置。
【請求項2】
前記クランクアームは前記軸部の車幅方向両端部に配設され、夫々の前記クランクアームの屈曲方向は位相が略180°ずれていることを特徴とする請求項1記載の歩行補助装置。
【請求項3】
前記膝用バンド部材は、リハビリ歩行者の前記膝頭部を挟んで前記膝頭部の上側を捲回する上側バンドと、前記膝頭部の下側を捲回する下側バンドと、前記上側バンドと前記下側バンドとを連結して互いに上下へずれるのを防止する維持バンドと、前記膝頭部を捲回して、前記維持バンドに貼着されると共に、前記膝頭部の前側に前記連結部材と連結する連結部を有した連結バンドとを備えたことを特徴とする請求項1記載の歩行補助装置。
【請求項4】
前記クランクアームは、前記連結部材と結合する結合孔を前記クランクアームの長さ方向に沿って複数備え、前記往復運動のストローク量を複数段階に調整可能としたことを特徴とする請求項1記載の歩行補助装置。
【請求項5】
前記手押し車は前記台車の進行方向後部に後方が開口した平面視が略U字状の把持部を有し、リハビリ歩行者が前記略U字状の把持部の開口部に位置してリハビリを行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の歩行補助装置。
【請求項6】
前記把持部はリハビリ歩行者の身長に応じて上下方向に伸縮する高さ調整機構を有したことを特徴とする請求項1又は5記載の歩行補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−224294(P2011−224294A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108703(P2010−108703)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(510128487)