説明

歩行補助装置

【課題】人体に装着される歩行補助装置において、関節機構との締結構造、意匠性等を損なうことなく、フレームの長さを使用者の体型に合わせて容易に調整できるようにする。
【解決手段】歩行補助装置は、使用者の体に装着され、使用者の歩行を補助するものである。歩行補助装置は、使用者の下半身の関節に対応する複数の関節機構と、関節機構と締結する中空状の部材からなるフレーム14とを備える。フレーム14の端部25,26には、使用者の体型に合わせて長さを調整するために切断される調整代28が設けられる。フレーム14の内部の調整代28に相当する部分には、関節機構と締結する締結構造30が形成される。締結構造30は、調整代28の全域に渡って同一の断面形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブル型の歩行補助装置に関し、特にその関節機構に連結するフレーム(リンク)の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
人の体に装着してその歩行動作を補助する装置として、特許文献1が開示されている。特許文献1に係る歩行補助装置は、使用者の大腿(上腿)に取り付けられる大腿装着部、下腿に取り付けられる下腿装着部、足に取り付けられる足装着部を有する。大腿装着部、下腿装着部、及び足装着部は、複数の関節機構及び各関節機構を連結するフレームにより連結されている。
【0003】
特許文献2に係る歩行補助装置は、使用者が腰掛ける着座部材及び足に装着する足平装着部を備えている。着座部材と足平装着部とは、複数の関節機構及び各関節機構と連結するリンク部材により連結されている。当該歩行補助装置は、コントローラ、モータドライバ等の電装品の荷重が使用者に掛かるのを防止するために、電装品を筒状のリンク部材の内部に収納することを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−110155号公報
【特許文献2】特開2009−34433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に係る歩行補助装置のように、使用者の脚足部に装着される装置においては、各関節機構間を連結するフレームが使用者の脚部に沿って配置される。例えば、膝関節機構と足首関節機構とを連結するフレームは、使用者の下腿に沿って配置される。そのため、フレームの長さは、使用者の体型に合わせて調整される必要がある。
【0006】
フレームの長さの調整は、フレームの端部を必要な分だけ切断することにより行うことができる。一方、フレームの端部には、関節機構と連結するための締結構造が設けられる必要がある。そのため、フレームの端部を切断すると、上記締結構造に不具合が生ずる場合がある。
【0007】
また、フレームの外形は、周囲の人の目に触れる部分であるため、意匠性を備えることが求められるものである。しかし、フレームの外形が上記締結構造に関与している場合には、フレームの外形は当該締結機能を発揮するために必要な形態とならざるを得ず、所望の意匠性を持たせることが困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、人体に装着される歩行補助装置において、関節機構との締結構造、意匠性等を損なうことなく、フレームの長さを使用者の体型に合わせて容易に調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態は、使用者の体に装着され、前記使用者の歩行を補助する歩行補助装置であって、前記使用者の下半身の関節に対応する複数の関節機構と、前記関節機構と締結する中空状の部材からなるフレームとを備え、前記フレームの端部には、前記使用者の体型に合わせて長さを調整するために切断される調整代が設けられ、前記フレームの内部の前記調整代に相当する部分には、前記関節機構と締結する締結構造が形成され、前記締結構造は、前記調整代の全域に渡って同一の断面形状を有するものである。
【0010】
上記態様によれば、フレームの調整代を適宜切断することにより、その長さを使用者の体型に合わせることができる。また、締結構造が調整代の全域に渡って同一の断面形状を有することにより、フレームの切断により締結構造に不具合が生ずることがない。更に、締結構造は中空状のフレームの内部に設けられていることにより、フレームの外形を所望の形態にすることができ、意匠性を持たせることが容易となる。
【0011】
また、前記締結構造は、例えば、前記フレームの内壁から中心側へ突出するリブ、棒状部材が挿通される孔等により形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、関節機構との締結構造、意匠性等を損なうことなく、フレームの長さを使用者の体型に合わせて容易に調整することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る歩行補助装置の全体的な構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る歩行補助装置が使用者の体格に合わせて調整される様子を例示する図である。
【図3】実施の形態1に係る下腿フレームの外観を示す斜視図である。
【図4】実施の形態1に係る下腿フレームの外観を示す側面図である。
【図5】実施の形態1に係る締結構造の断面形状を示す図である。
【図6】実施の形態1に係る下腿フレームと膝関節機構の一部を構成する締結部材とが締結する様子を示す図である。
【図7】実施の形態1に係る締結構造のリブの好ましい形状を例示する図である。
【図8】実施の形態1に係る下腿フレームの上端部と下端部とにそれぞれ異なる締結構造が形成されている状態を例示する図である。
【図9】実施の形態1に係る下腿フレームの外壁部に意匠的形態を施した状態を例示する図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る歩行補助装置の締結構造を示す図である。
【図11】実施の形態2に係る締結構造の調整代部分の断面形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、実施の形態1に係る歩行補助装置1の全体的な構成を示している。歩行補助装置1は、使用者の脚足部に装着され、使用者の歩行を補助するものである。歩行補助装置1は、膝関節機構11(11A,11B)、足首関節機構12(12A,12B)、上腿フレーム13、下腿フレーム14、足フレーム15、足載置部16、接地部17、及び制御ユニット18を有する。また、歩行補助装置1は、その他にも人体の上腿部、下腿部、足部等を拘束する手段、障害物の接触から人体を保護する手段等を備えている。
【0015】
膝関節機構11は、使用者の膝の位置に対応して配置され、上腿フレーム13と下腿フレーム14とを揺動可能に連結する。上腿フレーム13は、使用者の上腿に固定される。膝関節機構11は、主動部11A及び受動部11Bを有する。主動部11Aは、電動モータ等を含み、制御ユニット18から供給される電源及び制御信号に応じてトルクを発生させる。
【0016】
足首関節機構12は、使用者の足首の位置に対応して配置され、下腿フレーム14と足フレーム15とを揺動可能に連結する。足フレーム15には、使用者の足が載置される足載置部16が固定されている。足載置部16には、地面に接触する接地部17が固定されている。足首関節機構12は、主動部12A及び受動部12Bを有する。主動部12Aは、電動モータ等を含み、制御ユニット18から供給される電源及び制御信号に応じてトルクを発生させる。
【0017】
図2は、歩行補助装置1が使用者の体格に合わせて調整される様子を例示している。同図において、第1の使用者21、第2の使用者22、及び第3の使用者23が示されている。第1の使用者21の体格は、他の使用者22,23よりも小さく、第3の使用者23の体格は、他の使用者21,22よりも大きく、第2の使用者22は、第1の使用者21より大きく且つ第3の使用者23より小さい。
【0018】
長さA1,A2,A3は、上腿の拘束部の上端から膝関節機構11までの距離である。長さB1,B2,B3は、膝関節機構11から足首関節機構12までの距離である。長さC1,C2,C3は、足首関節機構12から足載置部16までの距離である。本例においては、A1<A2<A3,B1<B2<B3,C1<C2<C3の関係が成り立つ。
【0019】
長さA1,A2,A3は、大腿フレーム13の大きさに応じて変化する。長さB1,B2,B3は、下腿フレーム14の大きさに応じて調整される。長さC1,C2,C3は、足フレーム15の大きさに応じて調整される。例えば、第3の使用者23に適合する歩行補助装置1を第1又は第2の使用者21,22に適合するように調整する場合には、各フレーム13,14,15は適切な分だけ切断された後、各関節機構11,12と再締結される。
【0020】
図3は、下腿フレーム14の外観を示す斜視図である。図4は、下腿フレーム14の外観を示す側面図である。下腿フレーム14は、中空状の部材からなり、湾曲形状を有している。当該湾曲形状は、機能的且つ意匠的な観点から施されるものである。
【0021】
下腿フレーム14の上端部25は、上記膝関節機構11と締結し、下端部26は、上記足首関節機構12と締結する。下腿フレーム14の内部には、膝関節機構11及び足首関節機構12と締結する締結構造30が形成されている。図5は、締結構造30の断面形状を示している。本実施の形態に係る締結構造30は、リブ31及び側壁32を有する。当該リブ31及び側壁32により、下腿フレーム14の内部には断面略凹形状の挿通孔33が画成される。リブ31は、例えばCFRP(carbon fiber reinforced plastics)のような積層材料(プリプレグ等)により成形することができる。尚、本実施の形態においては、リブ31が中空状に形成されているが、本発明はこれに限られるものではない。挿通孔33は、その形状に合わせて加工されたシリコン製チューブ等を成形後に引き抜くこと等により成形することができる。
【0022】
図6は、下腿フレーム14と、膝関節機構11の一部を構成する締結部材35とが締結する様子を示している。締結部材35は、締結構造30の挿通孔33と嵌合する挿通部36を有する。挿通部36は、上記リブ31の形状に適合する凹部37を有する。挿通孔33と挿通部36との嵌合後、接着材、他の固定構造等を用いて下腿フレーム14と締結部材35とが強固に固定される。
【0023】
ここで、下腿フレーム14は、図3及び図4に示すように、上述した使用者の体格に合わせてその長さを調整するために切断させる調整代28を有する。本実施の形態に係る調整代28は、上端部25から長さDまで、及び下端部26から長さEまでの部分に相当する。
【0024】
下腿フレーム14の内部の上記調整代28に相当する部分には、上記締結構造30が形成されている。そして、当該締結構造30は、調整代28の全域に渡って同一の断面形状を有する。即ち、本実施の形態においては、締結部材35との締結に実質的に関与する挿通孔32の断面形状が、調整代28の全域に渡って同一となっている。
【0025】
これにより、調整代28のどの部分で切断しても、締結部材35との締結が可能となる。これにより、締結構造の変更等を伴うことなく、使用者の体格に合わせた調整を行うことが可能となる。
【0026】
図7は、締結構造30のリブ31の好ましい形状を例示している。同図中、右側に示す第1の構成例41の方が左側に示す第2の構成例42より好ましいものである。第1の構成例41に係るリブ31の長手方向の幅Fは、第2の構成例42のかかるリブ31の長手方向の幅Gより大きくなっている。即ち、第1の構成例41に係るリブ31は、下腿フレーム14の断面の長手方向の幅を基準とする断面係数が、上記締結部材35との締結を実現できる範囲で最大となるように形成されている。これにより、リブ31と上記締結部材35との接触面積が大きくなり、両者の締結力を大きくすることができる。
【0027】
上腿フレーム13及び足フレーム15についても、上記調整代28と同様の構成を採用することにより、同様の作用効果を得ることができる。上腿フレーム13の場合には、膝関節機構11と締結する側の端部に、足フレーム15の場合には、足首関節機構12と締結する側の端部に、上記調整代28と同様の構成を設ければよい。
【0028】
尚、上記調整代28の想定範囲は、図4に示すような長さD,Eの範囲に限られるものではなく、下腿フレーム14の全域に渡って想定することも可能である。この場合、上記締結構造30は、下腿フレーム14の全域に渡ってその断面形状が同一となるように形成される。
【0029】
また、下腿フレーム14の上端部25及び下端部26には、それぞれ異なる締結構造が形成されていてもよい。図8は、下腿フレーム14の上端部25と下端部26とにそれぞれ異なる締結構造が形成されている状態を例示している。この場合、上端部25の締結構造30の断面形状は、上端部25側の調整代28の全域に渡って同一形状となり、下端部26の締結構造45の断面形状は、下端部26側の調整代46の全域に渡って同一形状となっていればよい。
【0030】
また、上記歩行補助装置1によれば、各フレーム13,14,15の外壁の形状に関わらず、上述のような使用者に合わせた調整を行うことが可能となる。そのため、例えば図9に示すように、下腿フレーム14の外壁部47にアール形状の意匠を施すこと等が可能となる。
【0031】
実施の形態2
図10は、実施の形態2に係る歩行補助装置の締結構造50を示している。図11は、当該締結構造50の調整代51部分の断面形状を示している。
【0032】
締結構造50は、下腿フレーム48の上端部49に開口する2つの挿通孔55を有する。膝関節機構11の締結部材35は、上記挿通孔55に嵌合する2つの挿通棒57を有する。挿通孔55は、調整代51の全体に渡って同一の断面形状を有する。
【0033】
このような締結構造50であっても、上記実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0034】
尚、本発明は上記実施の形態に限られるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能なものである。
【符号の説明】
【0035】
1 歩行補助装置
11A,11B 膝関節機構
12A,12B 足首関節機構
13 上腿フレーム
14,48 下腿フレーム
15 足フレーム
16 足載置部
17 接地部
18 制御ユニット
25,49 上端部
26 下端部
28,46,51 調整代
30,45,50 締結構造
31 リブ
32 側壁
33 挿通孔
35 締結部材
36 挿通部
37 凹部
47 外壁部
55 挿通孔
57 挿通棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の体に装着され、前記使用者の歩行を補助する歩行補助装置であって、
前記使用者の下半身の関節に対応する複数の関節機構と、
前記関節機構と締結する中空状の部材からなるフレームと、
を備え、
前記フレームの端部には、前記使用者の体型に合わせて長さを調整するために切断される調整代が設けられ、
前記フレームの内部の前記調整代に相当する部分には、前記関節機構と締結する締結構造が形成され、
前記締結構造は、前記調整代の全域に渡って同一の断面形状を有する、
歩行補助装置。
【請求項2】
前記締結構造は、前記フレームの内壁から中心側へ突出するリブを有する、
請求項1に記載の歩行補助装置。
【請求項3】
前記締結構造は、棒状部材が挿通される孔を有する、
請求項1に記載の歩行補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−90881(P2013−90881A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236230(P2011−236230)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】