説明

歩行車

【課題】簡単な構成で歩行を補助し、腕の機能回復にも利用可能な歩行車を提供する。
【解決手段】前輪24と後輪20が取り付けられた一対のフレーム体12と、各フレーム体12を左右に連結した連結フレーム13を有する。各フレーム体12に取り付けられ、前後方向に摺動可能に設けられた一対のスライダ16と、各スライダ16に取り付けられたハンドル14と、一端が各スライダ16に軸着され他端が後輪20の各ホイール20aに軸着された一対の連結棒18を備える。一対の後輪20に軸着された各連結棒18の位置は、各後輪20の回転角で互いに180°位相がずれており、左右一対のハンドル14は、後輪20の回転に基づくクランク作用によって互いに反対方向に往復運動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高齢者や身体の不自由な人などが、室内や室外において歩行する場合に、歩行の補助具として使用される歩行車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行車は、車輪が取り付けられたフレームに、一定の高さに保持可能なハンドルが設けられ、手押しにより移動可能に形成されたものが多い。また、お年寄りなどが、買い物籠が設けられた手押し車を歩行車の代用として利用する場合もあった。
【0003】
さらに、歩行車としても使用可能に形成された車椅子や、折りたたみ可能に形成され、簡単な椅子が設けられた歩行車も知られている。
【0004】
また、特許文献1に開示された歩行器は、肘掛けに肘を載せて安定に歩行することができる肘掛け歩行器である。この肘掛け歩行器は、左右一対の肘掛けが上下または左右に首振り可能に設けられている。
【特許文献1】特開2007−209490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の歩行車は、単に歩行時の体の負担を軽くするだけのものであり、足以外の部分の機能回復にはならないものである。
【0006】
また、特許文献1の肘掛け歩行器においては、肘掛けが前後方向または左右に首振り可能であるだけのものであり、例えば手の運動による機能回復訓練等のように、強制的に腕を動かす機能はないものである。
【0007】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたもので、簡単な構成で歩行を補助し、腕の機能回復にも利用可能な歩行車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、前輪と後輪が取り付けられた一対のフレーム体と、このフレーム体を左右に連結した連結フレームにより構成された歩行車において、前記各フレーム体に取り付けられ前後方向に摺動可能に設けられた一対のスライダと、前記各スライダに取り付けられたハンドルと、一端が前記各スライダに軸着され他端が前記後輪の各ホイールに軸着された一対の連結棒とを備え、前記一対の後輪に軸着された各連結棒の位置は、前記各後輪の回転角で互いに180°位相がずれており、前記左右一対のハンドルは、前記後輪の回転に基づくクランク作用によって互いに反対方向に往復運動する歩行車である。
【0009】
また、前記左右一対のスライダは、前記フレーム体の水平な部分であって下向きに湾曲した部分に設けられている。
【発明の効果】
【0010】
この発明の歩行車によれば、手押し状態で自然に腕が動かされるので、腕の機能回復を早める。また、腕の動きは足の動きに連動するので、進行方向に腕を動かしているのと同様の状態となり、リハビリ効果も高いものである。また、正常な歩容に近づける歩行介助となる。さらに、歩行の際、体幹の回旋の動きがみられない多くの高齢者、軽度のパーキンソン病の患者等の歩行訓練として、そして日常の生活の中でも利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の歩行車10の一実施形態について、図1〜図5に基づいて説明する。この実施形態の歩行車10は、図1、図2に示すように、後輪20が取り付けられたメインフレーム12aと、前輪24を360度の方向に首振り可能に取り付けられたフロントフレーム12bと、後述するスライダ16が取り付けられた略水平部分を形成するサイドフレーム12cとを組み合わせて構成されたフレーム体12が、連結フレーム13によって左右一対に連結され、4輪の車台を構成している。なお、各フレームは、アルミなどの金属製のパイプ材を適宜切断して組み合わせたもので、溶接または螺子止めにより組み立てられている。
【0012】
サイドフレーム12cは下方に向かって僅かに湾曲しており、サイドフレーム12cの上部には、ハンドル14が立設されたスライダ16が前後方向に摺動自在に各々設けられている。また、メインフレーム12aには後輪20の回転を制動するブレーキ26を備えており、ブレーキ26は各ハンドル14に併設したブレーキレバー28によって制御される。
【0013】
ハンドル14の摺動部であるスライダ16には、連結棒18の一端が軸着され、連結棒18の他端は、後輪20のホイール20aに軸着されている。一対の連結棒18は、互いに後輪20の回動角に対して、相対的に180°位相がずれて連結されている。即ち、一対の連結棒18は、例えば図1に示すように、車体の左側フレーム体12では、連結棒18の端部はホイール20aの回転軸から半径方向に離れた連結点aに軸着され、車体の右側のフレーム体12では、連結点aと回転軸を挟んで反対側の連結点bに軸着される位置関係にある。この連結棒18のホイール20aでの軸着位置は、後輪20の回転軸から半径方向に離れた連結点a,bが互いに対称位置で半径方向に変更可能であり、固定位置を複数にまたは任意に設定しても良い。さらに、連結棒18の端部をホイール20aの回転軸部に軸支することにより、連結棒が動かないものとすることができるようにしても良い。
【0014】
また、左右一対のフロントフレーム12bには座椅子22が折り畳み可能に取り付けられ、さらに連結フレーム13には、左右のフレーム体12間に、背もたれ板23が取り付けられている。そして、歩行車10を歩行用に使用する場合には座椅子22を縦に折り畳み、椅子として使用する場合には水平位置に倒されるものである。
【0015】
次に、人が歩行車10を用いて歩行するときの歩行車10の動作を図3、図4を用いて説明する。人が車体後方から左右一対のハンドル14を握って歩行車10を前方に押し出すと、車台の前後輪20,24が回転して車台は前進し、人は車台に付いて歩行移動する。車体が前進すると、左右のハンドル14は、後輪20の回転運動によって往復運動する連結棒18のクランク動作によって、交互に前後動する。
【0016】
このとき、左右の連結棒18は、互いに後輪20の回動角に対して相対的に180°位相がずれて連結されているので、左側のハンドル14が後方にあるときは右側のハンドルは前方にあり(図3(a)、図4(a))、逆に左側のハンドル14が前方にあるときは右側のハンドルは後方にある(図3(b)、図4(b))。
【0017】
人が歩行するときは腕の動きは足の動きに連動するが、後輪20が1回転するとスライダ14が1往復する。従って、後輪20の円周の半分が歩行車10を押す人の歩幅と等しければ、足の動きと手の動きが同期する。但し、手のリハビリを兼ねて歩行車10を押す場合は、足の動きに対してスライダ14は遅いもので良い。
【0018】
この実施形態の歩行車10によれば、左右一対のハンドル14が互いに180度位相がずれて往復移動するので、健常者が歩行する際に左右の腕を交互に動かしているのと同じ状態の腕の運動を行うことができる。さらに、サイドフレーム12cは下方に向かってやや湾曲した形状であるので、スライダ16の動きがスムーズである。しかも、健常者が自然体で歩行する腕の動きと同じようにハンドル14が移動するので、歩行車10を用いた歩行においても、体全体の重心移動やバランス感覚を取り戻すために効果的なリハビリを行うことができる。
【0019】
また、後輪20はハンドル14と連動して、相対的に手の振りが足の移動と比較して遅くなるように設定することで、歩行車が前進するスピードが速すぎて体のバランスを失って転倒するなどの事故が起こる心配もなく安全である。
【0020】
また、図5に示すように、歩行車10は、縦に折り畳まれた座椅子22を水平位置に倒せば、背もたれ23と座椅子22によって構成される座席が現れる。例えば歩行訓練中の休憩場所として、あるいは簡易式の車椅子として使用することができる。
【0021】
さらに、歩行車10によれば、手押し状態で容易に腕を動かすことができ、腕の機能回復を早める。また、腕の動きは足の動きに連動するので、進行方向に腕を動かしているのと同様の状態となり、リハビリ効果も高いものである。また、正常な歩行動作に近づける歩行介助となる。さらに、歩行の際、体幹の回旋の動きがみられない多くの高齢者、軽度のパーキンソン病の患者等の歩行訓練として、そして日常の生活の中でも安全に利用できる。
【0022】
なお、この発明の歩行車は上記実施形態に限定されるものではなく、前輪及び後輪の大きさは、適宜選択可能なものである。また、座席の大きさに合わせて、各フレームや車輪などのサイズは適宜設定可能なものである。また、車台を構成する左右のフレーム体の構造は、スライダが前後に往復運動できる略水平な部分を有していればよく、一般的な三角フレーム構造やダイヤモンドフレーム構造(2つの三角形を合体させたダイヤ型)など、人を支えるのに十分な強度を備えた構造であれば特に限定しない。また、フレームの素材や座席を形成する素材など適宜選択可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施形態の歩行車の右側面図である。
【図2】この発明の一実施形態の歩行車の平面図である。
【図3】この発明の一実施形態の歩行車の歩行時の使用状態の右側面図(a)、(b)であ
【図4】この発明の一実施形態の歩行車の歩行時の使用状態の平面図(a)、(b)である。る。
【図5】この発明の一実施形態の歩行車の使用状態を示す右側面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 歩行車
12 フレーム体
13 連結フレーム
14 ハンドル
16 スライダ
18 連結棒
20 後輪
20a ホイール
22 座椅子
24 前輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪と後輪が取り付けられた一対のフレーム体と、このフレーム体を左右に連結した連結フレームにより構成された歩行車において、前記各フレーム体に取り付けられ前後方向に摺動可能に設けられた一対のスライダと、前記各スライダに取り付けられたハンドルと、一端が前記各スライダに軸着され他端が前記後輪の各ホイールに軸着された一対の連結棒とを備え、前記一対の後輪に軸着された各連結棒の位置は、前記各後輪の回転角で互いに180°位相がずれており、前記左右一対のハンドルは、前記後輪の回転に基づくクランク作用によって互いに反対方向に往復運動することを特徴とする歩行車。
【請求項2】
前記左右一対のスライダは、前記フレーム体の水平な部分であって下向きに湾曲した部分に設けられたことを特徴とする請求項1記載の歩行車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−106446(P2009−106446A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280709(P2007−280709)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(507335698)