説明

歪みゲージ

【課題】出力端子及び中性端子を露出させたままでも、湿気の影響を受けにくい歪みゲージを提供すること。
【解決手段】第1、第2の出力端子21、22は、基板1の面10上の辺12側に間隔を隔てて設けられ、歪み抵抗体2の両端を構成している。中性端子23は、基板1の面10上において、第1の出力端子21と第2の出力端子22との間に独立して設けられ、第1の出力端子21及び第2の出力端子22の配置方向Xと直交する方向Yで見て、辺12側の端縁231が、第1の出力端子21の辺12側の端縁211と第2の出力端子22の辺12側の端縁221とを結ぶ線L1よりも辺12側に突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪検出装置等に用いられる歪みゲージに関する。
【背景技術】
【0002】
歪みゲージは、被検出物の歪みを検出するセンサの1つとして、従来より広く用いられてきた。歪みゲージは、一般には、基板と、歪み抵抗体と、対の出力端子とを含む。基板は、歪みゲージとして要求される諸条件を満たすため、ベークライト、エポキシ、ポリイミドまたは紙等の電気絶縁材料からなる。歪み抵抗体は、基板の一面上に設けられていて、基板の歪みに応じて抵抗値が変化する。対の出力端子は、基板の一面上に設けられていて、歪み抵抗体の両端に接続されている。
【0003】
歪みゲージによる歪み検出に際しては、伝統的に抵抗ブリッジ回路が用いられてきた。ブリッジ回路において、歪みゲージはブリッジ回路を構成する4辺の一部または全部に挿入される。ブリッジ回路に生じる4つの接続点のうち、一対の接続点は電源入力端として用いられ、他の一対は信号出力端として用いられる。
【0004】
歪みゲージに歪みを生じていない場合、ブリッジ回路は平衡しており、一対の出力信号端間の電位差はゼロである。歪みゲージに歪みが生じると、ブリッジ回路の平衡が崩れ、一対の信号出力端間に電位差を生じる。従って、一対の信号出力端間に現れる電位差から、歪みを検出することができる。
【0005】
ところで、歪みゲージでは、例えば、湿気の多い雰囲気で用いられた場合、基板の表面で見た電気絶縁抵抗が低下する。基板表面の電気絶縁抵抗が低下すると、歪みが生じていないにもかかわらず、歪みゲージの出力端子間で見た抵抗値が変化するので、歪み零に対応するブリッジ回路の平衡点(歪み零点)にずれを生じる。即ち、零ずれが生じる。歪み零点は検出の基準であるので、このような零ずれは検出誤差を招く。
【0006】
歪みゲージでは、通常、歪みに対する抵抗値の変化は僅かである。歪みゲージは、この僅かな抵抗値変化から歪みを検出するのである。したがって、出力端子間の電気絶縁抵抗の低下、それに伴う歪み零点の変動が僅かであっても、歪み検出に与える影響は大きい。
【0007】
このような問題を解決しようとする技術として、特許文献1は、対の出力端子の間に中性端子を設けるとともに、中性端子を正負電源の中点に接続することにより、出力端子の一つと中性端子とを同一電位に保つ技術を開示している。出力端子の一つと中性端子とが同一電位に保たれていれば、両者間に漏洩電流が流れることはないから、電気絶縁抵抗の低下に影響されることはない。従って、零ずれを生じることがないと、考えたものである。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された発明によっても、湿気による影響を完全には解消することができないことが分かった。出力端子及び中性端子の全体を、例えば、吸湿性の低い保護膜で覆うことができれば、上述した問題点は解決しえようが、出力端子及び中性端子にはリード線が接続されるから、このような対策を採ることができない。
【特許文献1】特開平11−118414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、出力端子及び中性端子を露出させたままでも、湿気の影響を受けにくい歪みゲージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明に係る歪みゲージは、基板と、歪み抵抗体と、第1の出力端子と、第2の出力端子と、中性端子とを含む。
【0011】
前記歪み抵抗体は、前記基板の一面上に設けられている。前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子は、前記基板の前記一面上の一辺側に間隔を隔てて設けられ、前記歪み抵抗体の両端を構成している。前記中性端子は、前記基板の前記一面上において、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子との間に独立して設けられ、前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子の配置方向と直交する方向で見て、前記一辺側の端縁が、前記第1の出力端子の前記一辺側の端縁と前記第2の出力端子の前記一辺側の端縁とを結ぶ線よりも前記一辺側に突出している。
【0012】
本発明に係る歪みゲージを用いて被検出物の歪みを検出するには、従来と同様に、ブリッジ回路を用いる。ブリッジ回路において、歪みゲージは、ブリッジ回路の4辺のうち少なくとも一辺に挿入される。本発明に係る歪みゲージでは、第1の出力端子及び第2の出力端子が、基板の一面上の一辺側に間隔を隔てて設けられ、歪み抵抗体の両端を構成している。更に、中性端子が、基板の一面上において第1の出力端子と第2の出力端子との間に独立して設けられている。従って、ブリッジ回路上で見て、歪みゲージの中性端子を正負電源の中点に接続することで、第1、第2の出力端子間の漏洩電流を防ぐといった基本的な作用効果を得ることができる。
【0013】
更に、本発明に係る歪みゲージの重要な特徴として、中性端子は、第1の出力端子及び第2の出力端子の配置方向と直交する方向で見て、一辺側の端縁が、第1の出力端子の一辺側の端縁と第2の出力端子の一辺側の端縁とを結ぶ線よりも一辺側に突出している。
【0014】
本発明者は、特許文献1に記載された発明で、なぜ、湿気による影響を完全には解消することができないのかを、鋭意検討した。その結果、特許文献1に記載された発明では、出力端子及び中性端子が、基板の端縁から同一寸法のギャップを隔てて配置されていたため、中性端子の端縁と、基板の端縁との間のギャップを通って、出力端子間に漏洩電流が流れ、それによって歪み零に対応するブリッジ回路の平衡点にずれを生じたもの、との結論に至った。
【0015】
この知見に基づき、本発明では、上述したように、中性端子は、第1の出力端子及び第2の出力端子の配置方向と直交する方向で見て、一辺側の端縁が、第1の出力端子の一辺側の端縁と第2の出力端子の一辺側の端縁とを結ぶ線よりも一辺側に突出させた。この構成によれば、中性端子の端縁と、基板の一辺側の端縁との間のギャップを通って、第1、第2の出力端子間に漏洩電流が流れるのを遮断することができるから、ブリッジ回路の平衡点にずれを生じる危険性を減らすことができる。この場合、出力端子及び中性端子の全体を、保護膜で覆う必要はなく、出力端子及び中性端子を露出させたままでよい。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明によれば、出力端子及び中性端子を露出させたままでも、湿気の影響を受けにくい歪みゲージを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明に係る歪みゲージの一実施形態を示す平面図である。図1に示された歪みゲージは、基板1と、歪み抵抗体2と、第1の出力端子21と、第2の出力端子22と、中性端子23とを含む。
【0018】
基板1は、ベークライト、エポキシまたはポリイミド等の電気絶縁材料から構成される。基板1は、長方形の平板状に形成されており、ほぼ平らな面10と、その面10を取り囲む4つの辺11〜14とを有する。
【0019】
歪み抵抗体2は、基板1の面10上において辺11の側に設けられていて、基板1の歪みに応じて抵抗値が変化する。歪み抵抗体2は、周知のものであり、間隔が極めて狭いパターン、例えば蛇行パターンからなっている。
【0020】
第1、第2の出力端子21、22は、基板1の面10上において辺12の側に互いに間隔を隔てて設けられていて、歪み抵抗体2の両端を構成している。第1、第2の出力端子21、22は、基板1の面10上でみてそれぞれ長方形状となっている。
【0021】
中性端子4は、基板1の面10上において、第1の出力端子21と第2の出力端子22との間に独立して設けられている。詳しくは、中性端子4と、第1の出力端子21との間にギャップG1が形成され、中性端子4と、第2の出力端子22との間にギャップG2が形成されている。中性端子4も、基板1の面10上でみて長方形状となっている。
【0022】
本発明の重要な特徴として、中性端子23は、第1、第2の出力端子21、22の配置方向Xと直交する方向Yで見て、辺12側の端縁231が、第1の出力端子21の辺12側の端縁211と、第2の出力端子22の辺12側の端縁221とを結ぶ直線L1よりも突出量ΔH1だけ辺12側に突出するように設けられている。中性端子23の突出量ΔH1は、任意の値に設定できるが、中性端子23の端縁231と、基板1の辺12との間のギャップG3をできるだけ狭めるような値に設定することが好ましい。
【0023】
また、図示された歪みゲージの場合、中性端子23の端縁231とは反対側の端縁232が、第1の出力端子21の辺11側の端縁212と、第2の出力端子22の辺11側の端縁222とを結ぶ直線L2上に位置している。
【0024】
上述した歪み抵抗体2、第1、第2の出力端子21、22及び中性端子23は、基板1の面10上に形成された導体パターンとして構成することができる。更に、保護膜3が、基板1の面10上において歪み抵抗体2を覆うように形成されていてもよい。保護膜3は、基板1について述べたものと同じ電気絶縁材料から構成することができる。
【0025】
次に、歪みゲージを用いた歪み検出装置について、その一例である図2を参照して説明する。図2に示された歪み検出装置は、4つの歪みゲージ41〜44と、正負電源(61、62)と、信号処理部7とを含む。
【0026】
歪みゲージ41〜44は、それぞれ、図1を参照して説明した本発明に係る歪みゲージである。歪みゲージ41〜44は、無歪み抵抗値が互いに等しくなるように設定されている。無歪み抵抗値とは、歪みゲージに歪みが生じていないときの抵抗値である。
【0027】
歪みゲージ41〜44は、ブリッジ回路を構成するように接続されている。詳しくは、歪みゲージ44の第2の出力端子22と、歪みゲージ41の第1の出力端子21とが接続されて電源入力端51を構成し、歪みゲージ41の第2の出力端子22と、歪みゲージ42の第1の出力端子21とが接続されて信号出力端52を構成し、歪みゲージ42の第2の出力端子22と、歪みゲージ43の第1の出力端子21とが接続されて電源入力端53を構成し、歪みゲージ43の第2の出力端子22と、歪みゲージ44の第1の出力端子21とが接続されて信号出力端54を構成している。
【0028】
正負電源(61、62)は、大きさの等しい正電圧+E及び負電圧−Eを電源入力端51、53に入力する。具体的には、正負電源(61、62)は、2つの単一電源61、62を直列に接続した直列回路からなり、その直列回路の両端が電源入力端51、53に接続されている。
【0029】
更に、正負電源(61、62)は、正電圧+E及び負電圧−Eの基準となる中点60を有する。中点60には、各歪みゲージ41〜44の中性端子23が接続されている。更に、中点60は接地されている。信号処理部7は、信号出力端52、54間に現れる電位差を増幅して検出する。
【0030】
次に、図2に示した歪み検出装置の動作を説明する。まず、歪みゲージ41〜44の何れも湿気の影響を受けておらず、第1、第2の出力端子21、22間の絶縁抵抗が一定の高い値を保っている場合について考える。歪みゲージ41〜44の何れにも歪みがないと、4辺の無歪み抵抗値が等しいので、ブリッジ回路は平衡状態となる。従って、信号出力端52、54間の電位差は零である。
【0031】
ここで、歪みゲージ41〜44の何れか一つ、例えば、歪みゲージ41に歪みが生じると、歪みゲージ41の歪み抵抗体2の抵抗値が変化するので、ブリッジ回路の平衡が崩れ、不平衡の度合いに応じた電位差が信号出力端52、54間に生じる。信号処理部7は、この電位差を検出する。これにより、歪みを検出することができる。
【0032】
次に、歪みゲージ41〜44が、湿気の影響を受けた場合について、歪みゲージ41を例にとって説明する。歪ゲージ41には、第1の出力端子21から第2の出力端子22の間に中性端子23が設けられているので、ブリッジ回路上で見た場合、第1の出力端子21から中性端子23までの電流経路と、中性端子23から第2の出力端子22までの電流経路とに分けて考えることができる。
【0033】
まず、第1の出力端子21から中性端子23までの電流経路については、第1の出力端子21は、電源入力端51を通して電源61に接続されているから、第1の出力端子21には電源61の正電圧+Eがかかる。湿気の影響で絶縁抵抗が低下し、第1の出力端子21から中性端子23に漏洩電流が流れても、第1の出力端子21の電圧は、電源61の正電圧+Eであり、一定であるから、ブリッジ回路の平衡状態に悪影響を与えることはない。
【0034】
次に、中性端子23から第2の出力端子22までの電流経路については、第2の出力端子22は、信号出力端52に接続されており、信号出力端52は、ほぼ等しい抵抗からなるブリッジ回路の中点であるから、信号出力端52(第2の出力端子22)の電圧は、ほとんど零(接地電位)になる。また、中性端子23は、正負電源(61、62)の中点60に接続されていることから、その電圧は零(接地電位)である。従って、第2の出力端子22及び中性端子23間の電位差はほぼ零であり、第2の出力端子22及び中性端子23間に漏洩電流が流れることはないので、第2の出力端子22及び中性端子23間の絶縁抵抗が低下しても、ブリッジ回路の平衡状態に悪影響を与えることはない。
【0035】
他の歪みゲージ42〜44のうち、歪ゲージ43は、第1の出力端子21と中性端子23との間の関係及び第2の出力端子22と中性端子23との間の関係が歪ゲージ41と同じであるから、歪ゲージ41で述べた点がそのまま当てはまる。歪ゲージ42、44は、歪ゲージ41の第1の出力端子21が第2の出力端子22に置き換わり、歪ゲージ41の第2の出力端子22が第1の出力端子21に置き換わる点を除けば、歪ゲージ41で述べたことがそのまま当てはまる。
【0036】
ただ、中性端子23を設ける態様によっては、第1の出力端子21から第2の出力端子22へと漏洩電流が流れ、零ずれの問題を生じる可能性があることは、先に述べた通りである。
【0037】
この問題点を解決することが、本発明の中心的課題であり、課題達成手段として、本発明では、図1を参照して説明したように、中性端子23は、第1、第2の出力端子21、22の配置方向Xと直交する方向Yで見て、辺12側の端縁231が、第1の出力端子21の辺12側の端縁211と、第2の出力端子22の辺12側の端縁221とを結ぶ直線L1よりも突出量ΔH1だけ辺12側に突出するように設けられている。
【0038】
この構成によれば、中性端子23の端縁231と、基板1の辺12との間のギャップG3は狭められ、ギャップG3を通って第1、第2の出力端子21、22間に漏洩電流が流れるのを遮断することができるから、ブリッジ回路の平衡点にずれを生じる危険性を減らすことができる。この場合、第1、第2の出力端子21、22及び中性端子23の全体を、保護膜で覆う必要はなく、第1、第2の出力端子21、22及び中性端子23を露出させたままでよい。従って、第1、第2の出力端子21、22及び中性端子23を露出させたままでも、湿気の影響を受けにくい歪みゲージを提供することができる。
【0039】
また、中性端子23の端縁231とは反対側の端縁232の側で漏洩電流が流れる可能性については、歪み抵抗体2を覆う保護膜3を、中性端子23の端縁232まで延長することで、端縁232の側での湿気の付着を防ぎ、そのような可能性を解消することが可能である。
【0040】
図2に示された歪み検出装置では、ブリッジ回路の四辺全てに歪みゲージ41〜44を挿入した構成となっているが、歪み検出装置は、このような構成に限定されることはなく、ブリッジ回路の少なくとも一辺に歪みゲージが挿入されていればよい。例えば、ブリッジ回路の一辺のみに歪みゲージを挿入し、残る三辺に抵抗値一定の抵抗体を挿入した構成でも、同様な作用及び効果を得ることができる。
【0041】
図3は、本発明に係る歪みゲージの別の実施形態を示す平面図である。図示において、先の図1に示された構成部分と同一性ある構成部分には、同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0042】
図3に示された歪みゲージでは、中性端子23は、方向Yで見て、辺11側の端縁232が、第1の出力端子21の辺11側の端縁212と、第2の出力端子22の辺11側の端縁222とを結ぶ直線L2よりも突出量ΔH2だけ辺11側に突出するように設けられている。かかる態様によれば、第1、第2の出力端子21、22間に漏洩電流が流れる可能性をより低減することができる。
【0043】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る歪みゲージの一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示した歪みゲージを用いた歪み検出装置の一例を示す図である。
【図3】本発明に係る歪みゲージの別の実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 基板
2 歪み抵抗体
21 第1の出力端子
22 第2の出力端子
23 中性端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、歪み抵抗体と、第1の出力端子と、第2の出力端子と、中性端子とを含む歪みゲージであって、
前記歪み抵抗体は、前記基板の一面上に設けられており、
前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子は、前記基板の前記一面上の一辺側に、互いに間隔を隔てて設けられ、前記歪み抵抗体の両端を構成しており、
前記中性端子は、前記基板の前記一面上において、前記第1の出力端子と前記第2の出力端子との間に独立して設けられ、前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子の配置方向と直交する方向で見て、前記一辺側の端縁が、前記第1の出力端子の前記一辺側の端縁と前記第2の出力端子の前記一辺側の端縁とを結ぶ線よりも前記一辺側に突出している、
歪みゲージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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