説明

歪みセンサ

【課題】小型で、高温酸化雰囲気を含む多様な環境下で動作可能な歪みセンサを提供する。
【解決手段】歪センサは、基板上に下部電極と、ペロブスカイト型構造を有する金属酸化膜と、上部電極を順次積層した積層構造を有し、検体上に実装されるキャパシタと、前記キャパシタ中、前記上部電極と下部電極の間のリーク電流を測定する測定回路とより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に応力を電気信号に変換する機械−電気変換素子に係り、特に微細化された薄膜歪センサあるいは応力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
歪センサは、自動車や航空機、宇宙機器、自動制御機器、医療機器、圧力測定装置などにおいて、応力測定や歪み測定、圧力測定に広く使われている。これらの用途では、1MPa〜10GPaの範囲の歪みを測定できる小型で信頼性の高い歪センサが要求されている。
【特許文献1】特開昭60−253750号公報
【特許文献2】特開昭62−200544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来歪センサとしては、金属薄膜を使った金属薄膜歪センサ、光弾性現象により歪みを検出する光学歪センサ、半導体薄膜を使った半導体歪センサなどが知られている。このうち金属薄膜センサは値段が高く、また大面積を占有する問題を有している。また光学歪センサは、高感度であり高精度の測定が可能であるが、非常に脆弱であり、また大きなスペースを占有し、工業分野への応用は限定されている。さらに半導体歪センサは、金属薄膜を使った歪センサに比べれば安価に製造することができるが、動作温度が限定され、あるいは温度制御を必要とし、さらに応答速度が限られており、また大面積を専有する問題を有している。
【0004】
図1Aは、従来の金属薄膜歪センサの例を示す。
【0005】
図1Aを参照するに、応力測定の対象となる検体1上には、接着剤層2を介して金属薄膜3が貼り付けられ、前記金属薄膜3の抵抗値を端子3A,3Bを介して測定することにより、前記検体1に誘起されている歪みを算出する。
【0006】
かかる構成では、前記金属薄膜3中を、前記検体1に平行な方向に電流を流す必要があり、従って歪センサの占有面積は必然的に大きくなってしまう。また非常に薄い金属薄膜を貼り付けるため、取り扱いが困難で、さらに雰囲気や温度など、動作環境が制限される。
【0007】
図1Bは、半導体歪センサの例を示す。ただし図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0008】
図1Bを参照するに、前記検体1上には接着剤層2を介してシリコンチップ4が貼り付けられ、前記シリコンチップ4の抵抗値を、端子4A,4Bを介して測定することにより、前記検体1に印加されている応力を算出する。
【0009】
図1の半導体歪センサは安価であり、取り扱いも容易であるが、前記図1Aの構成と同様に検体1上の大きな面積を占有し、さらに雰囲気や温度など、動作環境が制限される問題を有している。
【0010】
図1Cは、別の半導体歪センサの例を示す。ただし図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0011】
図1Cの例では、検体1上にシリコン酸化膜5が直接に堆積され、前記シリコン酸化膜5上にシリコン膜6が直接に堆積される。さらに前記シリコン膜6上に、抵抗測定のため電極6A,6Bが形成される。
【0012】
かかる構成では接着剤層を使わないため、またシリコン膜6の膜厚が薄いため、高温環境を含む幅広い条件下でシリコン膜の抵抗値を高精度に測定することができる。しかし、シリコン酸化膜5およびシリコン膜6の形成に真空プロセスが必要で、図1Cの構成は、安価に形成することはできない。またシリコン膜6を使うため、前記図1Bの構成と同様に、雰囲気が制限され、高温の酸化雰囲気中で使うことはできない。また、先の例と同様に、抵抗測定を検体の表面に平行に行うため、歪センサにより大きな面積が占有されてしまう問題を回避することができない。
【0013】
さらに図1Dは、検体1中に導電性拡散領域7を形成し、かかる導電性拡散領域7の抵抗値を端子7A,7Bを介して測定する構成を示す。
【0014】
図1Dの構成でも接着剤層は使われないため、高温まで歪み測定を行うことが可能であるが、検体1を構成する材料が、前記導電性拡散領域7を形成するためにはSiなどの半導体に制限され、さらにこのような導電性拡散領域7の形成は一般にイオン注入や熱拡散などの工程を必要とするため、歪センサの製造費用が増大してしまう。さらに図1Dの構成でも、前記図1Cの歪センサと同様に、高温酸化雰囲気での使用が制限され、また検体1上の大きな面積を占有する問題を回避できない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一の側面によれば本発明は、基板上に下部電極と、ペロブスカイト型構造を有する金属酸化膜と、上部電極を順次積層した積層構造を有し、検体上に実装されるキャパシタと、前記キャパシタ中、前記上部電極と下部電極の間のリーク電流を測定する測定回路と、よりなることを特徴とする歪センサを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明による歪センサは、基板上に形成された積層構造のリーク電流を膜厚方向に測定する構成のため、ミクロンオーダー以下の大きさまで微細化することができ、非常に微細化された歪センサを実現することができる。その際、本発明では、キャパシタ絶縁膜としてペロブスカイト構造を有する金属酸化膜を使うことにより、従来の金属膜や半導体膜をはるかに凌ぐ、大きなゲージファクタを実現することができ、高感度の歪み測定を実現することができる。またペロブスカイト構造を有する金属酸化膜は酸化物であるため、高温酸化雰囲気中で使っても、特性が劣化することがない。また仮にかかるキャパシタをシリコン基板などの、高温酸化雰囲気中において酸化される材料よりなる基板上に形成しても、基板は測定回路を構成しないため、測定結果が劣化することはない。本発明により、1MPa〜10GPaの範囲の応力を、高温酸化雰囲気を含む様々な環境中において測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施形態]
図2は、本発明の第1の実施形態による歪センサ10の構成を示す。
【0018】
図2を参照するに、前記歪センサ10は強誘電体キャパシタ11と、前記強誘電体キャパシタ11に協働しキャパシタリーク電流を測定する測定回路12とより構成されており、前記強誘電体キャパシタ11は検体上に、接着剤などにより、検体の歪みが膜厚方向に印加されるように固定される。
【0019】
図3は、前記図2のキャパシタ11の構成を詳細に示す。
【0020】
図3を参照するに、シリコン基板11A上には熱酸化膜11BおよびTiあるいはTiNよりなり厚さが例えば2nmの密着層11Cを介して、Ptよりなる下部電極11Dがスパッタ法により例えば100nmの膜厚に形成されており、前記下部電極11D上にはペロブスカイト構造を有する(Ba,Sr)TiO3膜がキャパシタ絶縁膜として、1〜1000nm、図示の例では100nmの膜厚に、スパッタ法により形成されている。
【0021】
さらに前記キャパシタ絶縁膜11E上には、スパッタ法により例えば50nmの厚さに形成されたIrO2膜11F1とスパッタ法により例えば50nmの厚さに形成されたAu膜11F2を積層した上部電極11Fが形成される。
【0022】
前記キャパシタ11は、例えば100μmの寸法Wにパターニングされ、側壁面を接着剤により検体に貼り付けることにより、膜厚方向に応力が印加されるが、本発明の歪センサは、このように前記キャパシタ11に膜厚方向に印加された応力を、前記下部電極11Dと上部電極11Fの間のリーク電流の変化を前記測定回路12により検出することにより測定する。
【0023】
再び図2を参照するに、前記キャパシタ11の下部電極11Dは接地されており、さらに前記測定回路12は、前記キャパシタ11と同一構成の別の基準キャパシタ12Dを、歪みが印加されない状態で保持している。前記基準キャパシタ12Dにおいても、前記下部電極11Dに対応する下部電極は接地されている。
【0024】
より詳細に説明すると、前記測定回路12は、反転入力端子が接地され非反転入力端子が前記上部電極11Fに接続された演算増幅器12Aと、反転入力端子が接地され非反転入力端子が前記基準キャパシタ12Dの上部電極に接続された演算増幅器12Cと、前記演算増幅器12Aの出力を非反転入力端子に供給され前記演算増幅器12Cの出力を反転入力端子に供給される演算増幅器12Bを含み、前記演算増幅器12Aは、前記キャパシタ11において上部電極11Fと下部電極11Dの間のリーク電流を測定する。一方、前記演算増幅器12Cは、前記別のキャパシタにおいて上部電極と下部電極の間のリーク電流を測定する。
【0025】
そこで、図2の測定回路では、前記キャパシタ11のリーク電流とキャパシタ12Dのリーク電流を比較することにより、前記キャパシタ11に誘起された歪みを算出する。
【0026】
図4は、前記キャパシタ11および12Dのリーク電流特性を示す。ただし図4中、横軸はそれぞれのキャパシタにおける、上部電極と下部電極の間の印加電圧を、縦軸はリーク電流を示す。また図4中、ラインAは、100MPaの応力を印加されたキャパシタ11のリーク電流特性を、ラインBは応力印加の無い、基準キャパシタ12Dのリーク電流特性を示す。前記100MPaの応力は、前記キャパシタ11、特にキャパシタ絶縁膜11Eにおける0.1%の歪みに対応している。
【0027】
図4を参照するに、リーク電流は、印加電圧にもよるが、応力印加と共に、原子間距離の減少を反映して増大するのがわかる。
【0028】
図5は、図4におけるラインBのリーク電流特性(Jref)に対するラインAのリーク電流特性(Jsig)の比(Jsig/Jref)を、印加電圧の関数として示す図である。
【0029】
図5を参照するに、前記比(Jsig/Jref)は、印加電圧を5Vに設定した場合に最大となり、10に達することがわかる。
【0030】
このように、図2の歪センサ10では、図3のキャパシタ11を検出器として使い、応力印加により生じるリーク電流の変化を検出することにより、前記キャパシタ11に印加された応力、またかかる応力により誘起された歪みを測定することが可能となる。
【0031】
このような歪センサでは、ゲージファクタGLが、
GL=ΔR/R/ΔL/L
で定義される。ここでRはキャパシタの抵抗値であり、ΔRは応力印加に伴う抵抗値変化を、Lは図3に示すキャパシタ絶縁膜11Eの膜厚であり、ΔLは応力印加に伴う膜厚変化を表す。前記ゲージファクタGLは、値が大きければ大きい程、歪みにより誘起される抵抗変化(すなわちリーク電流の変化)が大きいことを意味している。
【0032】
本発明の発明者は本発明において、前記(Ba,Sr)TiO3よりなるキャパシタ絶縁膜11Dを使ったキャパシタ11では、上記ゲージファクタの値が−900に達することを見いだした。
【0033】
これに対し、前記図1Aで説明した金属膜を使った応力(歪み)センサの場合、前記ゲージファクタはわずか2に止まり、さらに図1B〜1Dで説明した半導体応力(歪み)センサの場合、ゲージファクタの値は−50〜−200に止まる。このため、従来の構成では、必要な精度で応力あるいは歪みを求めようとすると、歪センサを、図1A〜1Dに示すように検体上の広い面積を覆うように設ける必要があったのに対し、本発明では、大きさが1μm以下の領域に設けることが可能であり、1MPa〜10GPaの応力範囲において動作し、応力あるいは歪みを測定することが可能である。
【0034】
本実施形態では、キャパシタ絶縁膜11Eとして(Ba,Sr)TiO3膜を使っているため、本発明の歪センサは、高温酸化雰囲気を含む様々な環境中において動作可能である。図3の例ではキャパシタがシリコン基板11上に形成されているが、このような場合でもシリコン基板11は測定回路の一部を構成しないため、シリコン基板表面が酸化されるような場合でも、測定結果が影響されることはない。

[第2の実施形態]
図6は、本発明の第2の実施形態による歪センサ20の構成を示す。
【0035】
図6を参照するに、歪センサ20は素子分離領域21Iにより素子領域21A,21B,21Cが画成されたシリコン基板21上に形成されており、前記素子領域21A,21B,21Cには、それぞれトランジスタTr,Tr,Trが、図2の測定回路12と同様な測定回路の一部として形成されている。
【0036】
前記トランジスタTr,Tr,Trは、シリコン酸化膜よりなる層間絶縁膜22により覆われており、さらに前記シリコン酸化膜22上にはSiN膜23が、酸素バリアとして形成されている。
【0037】
さらに前記SiN膜23上には、前記素子領域21AにおいてPtよりなる下部電極24Aと(Ba,Sr)TiO3よりなるキャパシタ絶縁膜25AとPtよりなる上部電極26Aが形成され、歪み検出器となるキャパシタC1が構成されている。また下部電極24Bとキャパシタ絶縁膜25Bと上部電極26Bを積層した同じ層構造の基準キャパシタC2が、素子領域21Cに形成されている。その際、前記キャパシタC1では下部電極24AがトランジスタTr1のソース領域に、前記層間絶縁膜22を貫通するプラグ22Aを介して接続されており、前記キャパシタC2では、下部電極24Bが、前記層間絶縁膜22を貫通するプラグ22Bを介してトランジスタTr3のソース領域に接続されている。
【0038】
図6の歪センサ20を検体上に、例えば前記キャパシタC1の側壁面が検体の測定領域に接するように接着剤などで固定することにより、先の実施形態と同様に検体中に誘起された歪みを高精度で測定することが可能となる。
【0039】
図6の構成では、キャパシタC1と測定回路が共通のシリコン基板21上に集積化されており、歪センサ20の扱いが容易になる。
【0040】
図6の構成では、金属酸化膜を有するキャパシタC1,C2は、層間絶縁膜22上において、SiN膜23の上方に形成されているため、前記キャパシタC1,C2の形成に伴う酸素雰囲気が層間絶縁膜22中に侵入しトランジスタTr1〜Tr3の特性を劣化させる問題が回避される。
【0041】
なお図6においては、前記キャパシタC1,C2上に形成される多層配線構造の図示は省略している。

[第3の実施形態]
図7は、本発明の第3の実施形態によるキャパシタ41の構成を示す。本実施形態のキャパシタ41は、図2の歪センサ10においてキャパシタ11を代替するものである。
【0042】
図7を参照するに、キャパシタ21はMgO単結晶基板21A上に形成されており、前記基板21A上にスパッタ法により50nmの厚さで形成されたPt膜よりなる下部電極21Bと、前記下部電極21B上にスパッタ法により、100nmの膜厚で形成された(Ba,Sr)TiO3膜41Cと、前記前記(Ba,Sr)TiO3膜41C上にスパッタ法により100nmの膜厚で形成されたPt膜よりなる上部電極41Dを含んでいる。
【0043】
なお、本実施形態では測定回路12の基準キャパシタ12Dを、キャパシタ絶縁膜が前記(Ba,Sr)TiO3膜41Cと同一組成、同一厚さになるように形成しておく。
【0044】
本実施形態では、基準キャパシタにおいてキャパシタ絶縁膜の組成および膜厚を、検出器となるキャパシタ41のキャパシタ絶縁膜の組成および膜厚と同一にしておくことにより、検出器となるキャパシタがMgO基板など、他の基板上に形成されている場合であっても、図4で説明した基準リーク電流特性を使った歪み検出を、先の実施形態と同様にして行うことができる。本実施形態において、基板41Aは測定回路の一部を構成していないことに注意すべきである。また下部電極41Bおよび上部電極41Dは、基準キャパシタの下部電極および上部電極とそれぞれ同じ組成および厚さに形成するのが好ましいが、これらの電極層の抵抗値は元々低いため、組成や厚さが基準キャパシタのものと異なっていても、測定された歪みに大きな誤差は生じない。
【0045】
本実施形態による構成では、基板が酸化物であるため、キャパシタ41の高温酸化雰囲気に対する耐性がさらに向上する。

[第4の実施形態]
図7は、本発明の第4の実施形態による歪センサ60の構成を示す。ただし図中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0046】
図7を参照するに、本実施形態では測定回路12の代わりに、測定回路62を使っているが、前記測定回路62は基準キャパシタ12Dを有しておらず、その代わりに図4の基準リーク電流特性を格納したメモリ62Dを有している。
【0047】
そこで前記基準リーク電流特性は、前記メモリ62Dから読み出し回路62Cを介して読み出され、演算増幅器12Bの反転入力端子に供給される。
【0048】
かかる構成では、測定回路にキャパシタを形成する必要がなく、構成が簡単化される。
【0049】
なお、以上の説明において、測定回路12あるいは62はアナログ回路で説明したが、これをデジタル回路で構成できることは当然である。
【0050】
前記メモリ62Dとしては、不揮発性のフラッシュメモリあるいは強誘電体メモリ(FeRAM)を使うことができる。
【0051】
本発明において、前記ペロブスカイト型金属酸化物よりなるキャパシタ絶縁膜は、100nmの膜厚に限定されるものではなく、1〜1000nmの膜厚を有することができる。
【0052】
その際、金属酸化膜は、ペロブスカイト構造に対応して一般式ABO3−xで表される組成を有するが、AとしてはBa,Srの他に、Pbなど、1〜3価の陽イオンを使うことができ、BとしてはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Re,Cu,Ag、Auよりなる群から選ばれる少なくとも一つの陽イオンを使うことができる。例えば前記金属酸化膜としては、タンタル酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、ニオブ酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ストロンチウムビスマス、ジルコン酸チタン酸鉛、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸鉛マグネシウムのいずれかを使うことができる。
【0053】
また前記キャパシタが形成される基板としては、酸化物または半導体基板を使うことが可能で、酸化物基板としてはMgO基板が、また半導体基板としては、Si,Ge,SiGe混晶およびIII−V族化合物半導体基板を使うことが可能である。
【0054】
前記下部電極としては、Pt,Pd、Ir,Ru,Rh,Re,Osの少なくとも一つを含む金属あるいは導電性酸化物を使うことができ、またCu,Ag,Auの少なくとも一つを含む金属を使うことが可能である。
【0055】
また前記基板と下部電極の間に設けられる密着層は、TiあるいはTiNに限定されるものではなく、Pt,Ir,Zr,Ti,TiOx,PtOx,ZrOx,TiN,TiAlN,TaN,TaSiNのいずれかを使うことが可能である。
【0056】
前記上部電極としては、Pt,Pd,Ir,Ru,Rh,Reの少なくとも一つを含む金属あるいは導電性酸化物、あるいはAu,Ag,Cu,Ni,Crの少なくとも一つを含む金属を使うことが可能である。
【0057】
前記上部電極は、多層構造を有するものであってもよい。
【0058】
以上、本発明を好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
【0059】
(付記1)基板上に下部電極と、ペロブスカイト型構造を有する金属酸化膜と、上部電極を順次積層した積層構造を有し、検体上に実装されるキャパシタと、
前記キャパシタ中、前記上部電極と下部電極の間のリーク電流を測定する測定回路と、
よりなることを特徴とする歪センサ。
【0060】
(付記2)前記金属酸化膜は、1〜1000nmの膜厚を有することを特徴とする付記1記載の歪センサ。
【0061】
(付記3)前記金属酸化膜は、一般式ABO3−xで表される組成を有し、Aは1〜3の正電荷を有する少なくとも一つの陽イオンであり、BはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Re,Cu,Ag、Auよりなる群から選ばれる少なくとも一つの陽イオンであることを特徴とする付記1または2記載の歪センサ。
【0062】
(付記4)前記金属酸化膜は、タンタル酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、ニオブ酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ストロンチウムビスマス、ジルコン酸チタン酸鉛、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸鉛マグネシウムのいずれかであることを特徴とする付記1または2記載の歪センサ。
【0063】
(付記5)
前記基板は、酸化物または半導体よりなることを特徴とする付記1〜4のうち、いずれか一項記載の歪センサ。
【0064】
(付記6)前記半導体は、Si,Ge,SiGe混晶およびIII−V族化合物半導体のいずれかよりなることを特徴とする付記5記載の歪センサ。
【0065】
(付記7)
前記下部電極は、Pt,Pd、Ir,Ru,Rh,Re,Osの少なくとも一つを含む金属あるいは導電性酸化物よりなることを特徴とする付記1〜6のうち、いずれか一項記載の歪センサ。
【0066】
(付記8)
前記下部電極は、Cu,Ag,Auの少なくとも一つを含む金属よりなることを特徴とする付記1〜6のうち、いずれか一項記載の歪センサ。
【0067】
(付記9)
前記基板と下部電極の間には、Pt,Ir,Zr,Ti,TiOx,PtOx,ZrOx,TiN,TiAlN,TaN,TaSiNのいずれかよりなる密着層が設けられていることを特徴とする付記1〜8のうち、いずれか一項記載の歪センサ。
【0068】
(付記10)
前記上部電極は、Pt,Pd,Ir,Ru,Rh,Reの少なくとも一つを含む金属あるいは導電性酸化物よりなることを特徴とする付記1〜9のうち、いずれか一項記載の歪センサ。
【0069】
(付記11)
前記上部電極は、Au,Ag,Cu,Ni,Crの少なくとも一つを含む金属よりなることを特徴とする付記1〜9記載の歪センサ。
【0070】
(付記12)
前記上部電極は、多層構造を有することを特徴とする付記1〜11のうち、いずれか一項記載の歪センサ。
【0071】
(付記13)
前記測定回路は、前記キャパシタ中の前記金属酸化膜と同一組成、同一厚さでペロブスカイト型構造の金属酸化膜を有する基準キャパシタを有し、前記リーク電流を、前記基準キャパシタにおけるリーク電流と比較することにより、前記キャパシタに印加された歪みを算出することを特徴とする付記1〜12のうち、いずれか一項記載の歪センサ。
【0072】
(付記14)
前記測定回路は、前記キャパシタの無応力時におけるリーク電流の値をデータをして保持するメモリを含むことを特徴とする付記1〜12のうち、いずれか一項記載の歪センサ。
【0073】
(付記15)
前記測定回路は、前記基板とは別の基板上に形成されることを特徴とする付記1〜14のうち、いずれか一項記載の歪センサ。
【0074】
(付記16)
前記測定回路は、前記基板上に、前記キャパシタと共に集積化されることを特徴とする付記1〜14のうち、いずれか一項記載の歪センサ。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1A】本発明の関連技術による歪みセンサの構成を示す図である。
【図1B】本発明の別の関連技術による歪みセンサの構成を示す図である。
【図1C】本発明のさらに別の関連技術による歪みセンサの構成を示す図である。
【図1D】本発明のさらに別の関連技術による歪みセンサの構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による歪みセンサの構成を示す図である。
【図3】図2の歪みセンサで使われるキャパシタの構成を詳細に示す図である。
【図4】図2の歪みセンサで使われるキャパシタのリーク電流特性を示す図である。
【図5】図4のキャパシタにおいて応力印加に伴うリーク電流特性の変化を印加電圧の関数として示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による歪みセンサの構成を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態によるキャパシタの構成を示す図である。
【図8】本発明の第4の実施形態による歪みセンサの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1,11A,21,41A 基板
2 接着剤層
3 金属膜
3A,3B 端子
4 半導体チップ
4A,4B,6A,6B、7A,7B 電極
5 熱酸化膜
6 Si膜
7 拡散領域
10,20,60 歪センサ
11,C1 歪検出キャパシタ
11A 基板
11B 酸化膜
11C 密着層
11D,24A,24B,41B 下部電極
11E,25A,25B,41C ペロブスカイト金属酸化物膜
11F,11F,11F。26A.26B,41D 上部電極
12 測定回路
12A,12B,12C 演算増幅器
12D,C2,41 基準キャパシタ
21A,21B,21C 素子領域
21I 素子分離領域
22 層間絶縁膜
23 SiON膜
62C 読み出し回路
62D メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に下部電極と、ペロブスカイト型構造を有する金属酸化膜と、上部電極を順次積層した積層構造を有し、検体上に実装されるキャパシタと、
前記キャパシタ中、前記上部電極と下部電極の間のリーク電流を測定する測定回路と、
よりなることを特徴とする歪センサ。
【請求項2】
前記金属酸化膜は、一般式ABO3−xで表される組成を有し、Aは1〜3の正電荷を有する少なくとも一つの陽イオンであり、BはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Re,Cu,Ag、Auよりなる群から選ばれる少なくとも一つの陽イオンであることを特徴とする請求項1または2記載の歪センサ。
【請求項3】
前記金属酸化膜は、タンタル酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、ニオブ酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ストロンチウムビスマス、ジルコン酸チタン酸鉛、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸鉛マグネシウムのいずれかであることを特徴とする請求項1または2記載の歪センサ。
【請求項4】
前記基板は、酸化物または半導体よりなることを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか一項記載の歪センサ。
【請求項5】
前記測定回路は、前記キャパシタ中の前記金属酸化膜と同一組成、同一厚さでペロブスカイト型構造の金属酸化膜を有する基準キャパシタを有し、前記リーク電流を、前記基準キャパシタにおけるリーク電流と比較することにより、前記キャパシタに印加された歪みを算出することを特徴とする請求項1〜4のうち、いずれか一項記載の歪センサ。
【請求項6】
前記測定回路は、前記キャパシタの無応力時におけるリーク電流の値をデータとして保持するメモリを含むことを特徴とする請求項1〜4のうち、いずれか一項記載の歪センサ。
【請求項7】
前記測定回路は、前記基板とは別の基板上に形成されることを特徴とする請求項1〜6のうち、いずれか一項記載の歪センサ。
【請求項8】
前記測定回路は、前記基板上に、前記キャパシタと共に集積化されることを特徴とする請求項1〜6のうち、いずれか一項記載の歪センサ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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