説明

歪検出装置

【課題】出力信号の感度が大きい歪検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】起歪体11を水平方向に設置するとともに、この起歪体11の上側に上側歪抵抗素子12を設け、さらに起歪体11の下側にも下側歪抵抗素子13を設け、この下側歪抵抗素子13と前記上側歪抵抗素子12とを回路パターン17で接続することによりブリッジ回路を構成したものであり、上側歪抵抗素子と下側歪抵抗素子との抵抗値の変化の差が大きくなるため、ブリッジ回路による出力信号の感度が大きくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に荷重を付加することによって発生する歪を検出する歪検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の歪検出装置は、図6に示すような構成を有していた。
【0003】
図6は従来の歪検出装置の斜視図、図7は同歪検出装置を相手側取付部材に取り付けた状態を示す側断面図である。
【0004】
図6において、1は弾性材料により円筒形状に構成された起歪体で、この起歪体1は立設されるとともに、外側面に4つの歪抵抗素子2を設けており、この歪抵抗素子2を電源電極3、GND電極(図示せず)および出力電極4と電気的に接続することによりブリッジ回路を構成している。
【0005】
以上のように構成された従来の歪検出装置について、次にその動作を説明する。
【0006】
図7に示すように、歪検出装置における起歪体1の上側を固定部材5に取り付けるとともに、前記起歪体1の下側を押圧部材6に取り付ける。この状態において、押圧部材6により下方から荷重が付加されると、4つの歪抵抗素子2の抵抗値が変化するため、この4つの歪抵抗素子2の抵抗値の変化をブリッジ回路の出力として検出することにより、歪検出装置に加わる荷重を検出するものである。
【0007】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平5−87652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来の構成においては、押圧部材6により荷重が加わった場合、4つの歪抵抗素子2が配置されている起歪体1の部材自身には圧縮応力が加わっているため、4つの歪抵抗素子2の抵抗値の変化の差は微小となるもので、これにより、歪検出装置の出力信号の感度が小さいという課題を有していた。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、出力信号の感度が大きい歪検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0011】
本発明の請求項1に記載の発明は、円筒形状の起歪体と、この起歪体の一端開口部に固着された第1の取付部材と、前記起歪体の他端開口部に固着された第2の取付部材とを備え、前記起歪体を水平方向に設置するとともに、この起歪体の上側に少なくとも1つの上側歪抵抗素子を設け、さらに前記起歪体の下側にも少なくとも1つの下側歪抵抗素子を設け、この下側歪抵抗素子と前記上側歪抵抗素子とを回路パターンで接続することによりブリッジ回路を構成したもので、この構成によれば、起歪体の上側に少なくとも1つの上側歪抵抗素子を設け、さらに前記起歪体の下側にも少なくとも1つの下側歪抵抗素子を設けているため、上側歪抵抗素子を設けた箇所の起歪体と下側歪抵抗素子を設けた箇所の起歪体とで、発生している応力の符号は互いに反対となり、これにより、上側歪抵抗素子と下側歪抵抗素子との抵抗値の変化の差が大きくなるため、ブリッジ回路による出力信号の感度が大きくなるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明の歪検出装置は、円筒形状の起歪体と、この起歪体の一端開口部に固着された第1の取付部材と、前記起歪体の他端開口部に固着された第2の取付部材とを備え、前記起歪体を水平方向に設置するとともに、この起歪体の上側に少なくとも1つの上側歪抵抗素子を設け、さらに前記起歪体の下側にも少なくとも1つの下側歪抵抗素子を設け、この下側歪抵抗素子と前記上側歪抵抗素子とを回路パターンで接続することによりブリッジ回路を構成したものであって、起歪体の上側に少なくとも1つの上側歪抵抗素子を設け、さらに前記起歪体の下側にも少なくとも1つの下側歪抵抗素子を設けているため、上側歪抵抗素子を設けた箇所の起歪体と下側歪抵抗素子を設けた箇所の起歪体とで、発生している応力の符号は互いに反対となり、これにより、上側歪抵抗素子と下側歪抵抗素子との抵抗値の変化の差が大きくなるため、ブリッジ回路による出力信号の感度が大きい歪検出装置を提供できるという優れた効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、一実施の形態を用いて、本発明の請求項1に記載の発明について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態における歪検出装置の斜視図、図2は同歪検出装置の側断面図、図3は同歪検出装置の上面図、図4は同歪検出装置の下面図、図5は同歪検出装置における起歪体を展開した状態を示す図である。
【0015】
図1〜図5において、11はフェライト系ステンレスにより円筒形状に構成された起歪体で、この起歪体は水平方向に設置されるとともに、両端に開口部11aを設けており、そしてこの起歪体11の上側には図3に示すように、上側歪抵抗素子12を設けている。また、この起歪体11は下側にも図4に示すように、下側歪抵抗素子13を設けており、そして図5に示す銀からなる電源電極14、出力電極15およびGND電極16を回路パターン17によって電気的に接続することによりハーフブリッジ回路を構成している。18はSUS430からなる第1の取付部材で、この第1の取付部材18は前記起歪体11の一端側の開口部11aを閉塞するとともに、外側面にネジ部19を設けている。20は第1の取付部材18と同様にSUS430からなる第2の取付部材で、この第2の取付部材20は前記起歪体11の他端側の開口部11aを閉塞するとともに、外側面にネジ部21を設けている。
【0016】
以上のように構成された本発明の一実施の形態における歪検出装置について、次にその組立方法について説明する。
【0017】
まず、ステンレス板(図示せず)の上面にガラスペースト(図示せず)を印刷した後、約850℃で約10分間焼成して起歪体11を形成する。
【0018】
次に、前記起歪体11の上面に位置して銀のペースト(図示せず)を印刷し、約850℃で約10分間焼成することにより、前記起歪体11の上面に電源電極14、出力電極15、GND電極16および回路パターン17を形成する。
【0019】
次に、前記起歪体11の上面における上側歪抵抗素子12を設ける位置と、起歪体11の下面における下側歪抵抗素子13を設ける位置にメタルグレーズ系ペースト(図示せず)を印刷した後、約130℃で約10分間乾燥し、その後、前記起歪体11を約850℃で約10分間焼成することにより、起歪体11に引張応力が発生する上側歪抵抗素子12と、圧縮応力が発生する下側歪抵抗素子13を形成する。
【0020】
次に、起歪体11の一端側に第1の取付部材18を当接させた後、溶接により起歪体11の一端側開口部11aに第1の取付部材18を固着する。
【0021】
最後に、起歪体11の他端側に第2の取付部材20を当接させた後、溶接により起歪体11の他端側開口部11aに第2の取付部材20を固着する。
【0022】
以上のようにして構成され、かつ組み立てられた本発明の一実施の形態における歪検出装置について、次に、その動作を説明する。
【0023】
本発明の一実施の形態における歪検出装置が水平方向になるように、第1の取付部材18を第1の相手側取付部材(図示せず)に取り付けるとともに、第2の取付部材20を第2の相手側取付部材(図示せず)に取り付ける。
【0024】
そして、この状態において、第1の相手側取付部材(図示せず)に、上方より荷重が付加されると、上側歪抵抗素子12に引張応力が発生するとともに、下側歪抵抗素子13に圧縮応力が発生する。このようにして、上側歪抵抗素子12および下側歪抵抗素子13に歪が発生すると、この上側歪抵抗素子12および下側歪抵抗素子13の抵抗値が変化するため、この抵抗値の変化を出力電極15から出力信号として外部のコンピュータ(図示せず)に出力し、起歪体11に加わる荷重を測定するものである。
【0025】
上記した本発明の一実施の形態においては、起歪体11の上側に上側歪抵抗素子12を設け、さらに前記起歪体11の下側にも下側歪抵抗素子13を設けているため、上側歪抵抗素子12を設けた箇所の起歪体11と下側歪抵抗素子13を設けた箇所の起歪体11とで、発生している応力の符号は互いに反対となり、これにより、上側歪抵抗素子12と下側歪抵抗素子13との抵抗値の変化の差が大きくなるため、ブリッジ回路による出力信号の感度が大きくなるという効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明にかかる歪検出装置は、出力信号の感度が大きい歪検出装置を提供できるという効果を有し、自動車のシート重量を検出する用途に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態における歪検出装置の斜視図
【図2】同歪検出装置の側断面図
【図3】同歪検出装置の上面図
【図4】同歪検出装置の下面図
【図5】同歪検出装置における起歪体を展開した状態を示す図
【図6】従来の歪検出装置の斜視図
【図7】同歪検出装置を相手側取付部材に取り付けた状態を示す側断面図
【符号の説明】
【0028】
11 起歪体
12 上側歪抵抗素子
13 下側歪抵抗素子
17 回路パターン
18 第1の取付部材
20 第2の取付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の起歪体と、この起歪体の一端開口部に固着された第1の取付部材と、前記起歪体の他端開口部に固着された第2の取付部材とを備え、前記起歪体を水平方向に設置するとともに、この起歪体の上側に少なくとも1つの上側歪抵抗素子を設け、さらに前記起歪体の下側にも少なくとも1つの下側歪抵抗素子を設け、この下側歪抵抗素子と前記上側歪抵抗素子とを回路パターンで接続することによりブリッジ回路を構成した歪検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−71741(P2007−71741A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260122(P2005−260122)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】