説明

歯ブラシ用ハンドル

【課題】
環境ホルモン性物質を含有せず、透明性、色調、成形性、耐衝撃性、耐候性に優れた歯ブラシ用ハンドルを安価に提供する。
【解決手段】
テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールを主たるグリコール成分とし、全グリコール成分に対するネオペンチルグリコールの含有量が25モル%より多く50モル%以下である共重合ポリエステルを成形してなる歯ブラシ用ハンドルであって、前記共重合ポリエステルがゲルマニウム原子を20〜110ppm、コバルト原子を1〜30ppm、リン原子を1〜45ppm含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、色調、成形性に優れ、高い耐衝撃性、耐候性を持つ歯ブラシ用ハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシは、ヘッド部及びグリップ部を有するハンドルと、ヘッド部に植え付けられたブラシとで構成される。歯ブラシのハンドルの材料は、当初AS樹脂、ABS樹脂が広く使用されていたが、耐ストレスクラック性が悪いために、ポリプロピレン樹脂へと置き換わった。しかし、ポリプロピレン樹脂は、耐薬品性が高いものの、常温での剛性が低く、剛性を維持するためにハンドルのネック部を太くする必要があったり、成形時に結晶化による白化が進むため、透明性を求められる昨今のデザインに適切に対応できなかった。そこで、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート等の樹脂やこれらの混合物が一般に用いられるようになった。
【0003】
最近では、歯ブラシのハンドルにおいては、操作性を高めるために首部をより細長くしたり、グリップ性を高めるために滑り止め、孔、屈曲部等を形成したりして、デザインが複雑化している一方、デザインの複雑化が、コストアップに繋がるため、成形サイクルの短縮化によるコストダウンが求められており、近年、特に成形性が重要視されている。しかしながら、上述した樹脂の成形性は必ずしも良くなく、特にPETは、金型を加熱して成形温度を高めることで対処していた。また、消毒・殺菌等のために歯ブラシを熱湯に曝すこともあり、熱的機械特性の向上も求められている。そこで、金型を積極的に加熱して結晶化度を上げることがなされている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、130℃前後に金型温度を高くして成形温度を高めると、金型からの離型性の悪化、白化現象、脆化が生じたりして、良品を安価に得ることは困難であった。
【0004】
他方、PETにポリアリレートを混合することによって、成形性の改善やクラックの防止を試みることもなされている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、ポリアリレートはビスフェノール樹脂誘導体であることから、環境ホルモンとして懸念され、好ましくない。
【0005】
また、首部を細長くしたデザインにも適応すべく、より高い強度が必要とされるようになった。さらにまた、美観がより重要視されるようになり、ガラス様の透明性及び表面光沢が要求され、また、色調の薄いものほど、耐光性も要求されている。これらの要求に対して、テレフタル酸−エチレングリコールにイソフタル酸を共重合したPET系樹脂を用いることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。この方法では、成形時ゲート部分や厚肉部分が結晶化により透明性が失われるため、透明性を付与するために低温の金型を使用したりすることが有効な手段であるが、この場合も流動性が不足し良好な成形体が得られないという問題があった。また、この方法による歯ブラシ用ハンドルは、耐衝撃性が低いために使用中にクラックやクレイズが発生する問題もあった。
【0006】
また、透明性、成形性、耐衝撃性を両立したものとして、テレフタル酸−エチレングリコールに2−メチル−1,3プロパンジオールを共重合したポリエステル系樹脂からなる歯ブラシ用ハンドルが提案されているが(例えば、特許文献4参照)、共重合成分である2−メチル−1,3プロパンジオールは、一般的ではないため、コストが高い。また、共重合ポリエステルの色調も悪く、清潔感が求められる歯ブラシ用ハンドルとしては好ましいものではなかった。
【0007】
また、透明性、成形性、耐衝撃性を両立したものとして、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)ポリエステル系ポリマーを使用したものが提案されているが(例えば、特許文献5,6参照)、このポリマーもまた、コストが高く、また共重合ポリエステルの色調も悪く、清潔感が求められる歯ブラシ用ハンドルとしては好ましいものではなかった。
【0008】
さらに、非結晶性ポリエステルを使用して、衛生性や透明性が良好な歯ブラシが提案されているが(例えば、特許文献7参照)、実用的に一応十分な程度まで、即ち現在の流通に際し満足をされる程度まで改善されることがまだ必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60−163603号公報
【特許文献2】実開昭63−128826号公報
【特許文献3】特開2001−128736号公報
【特許文献4】特開2004−8641号公報
【特許文献5】特表平11−512484号公報
【特許文献6】特開2003−24139号公報
【特許文献7】特開2009−11621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、環境ホルモン性物質を含有せず、透明性、色調、成形性、耐衝撃性、耐候性に優れた歯ブラシ用ハンドルを安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、遂に本発明を完成するに到った。即ち、本発明は、(1)〜(4)の構成を有するものである。
(1)テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールを主たるグリコール成分とし、全グリコール成分に対するネオペンチルグリコールの含有量が25モル%より多く50モル%以下である共重合ポリエステルを成形してなる歯ブラシ用ハンドルであって、前記共重合ポリエステルがゲルマニウム原子を20〜110ppm、コバルト原子を1〜30ppm、リン原子を1〜45ppm含有することを特徴とする歯ブラシ用ハンドル。
(2)前記共重合ポリエステル5gをフェノール/テトラクロロエタン(質量比60:40)混合溶媒50gに溶解した溶液を波長657nm、光路長10mmにて測定した時の吸光度が0.004以下であることを特徴とする(1)に記載の歯ブラシ用ハンドル。
(3)前記共重合ポリエステル中のテレフタル酸とネオペンチルグリコールからなる遊離の環状2量体の含有量が15000ppm以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の歯ブラシ用ハンドル。
(4)前記共重合ポリエステルのカラーb値が−3.0〜3.0であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の歯ブラシ用ハンドル。
【発明の効果】
【0012】
本発明の歯ブラシ用ハンドルは、流動性が高く射出成形性に優れた共重合ポリエステルからなり、環境ホルモン性物質を含有せず、透明で色調が良く、かつ耐衝撃性、耐候性に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の歯ブラシ用ハンドルを具体的に説明する。
【0014】
本発明の歯ブラシ用ハンドルは、テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールを主たるグリコール成分とし、全グリコール成分に対するネオペンチルグリコールの含有量が25モル%より多く50モル%以下である共重合ポリエステルからなるものである。
【0015】
本発明に用いられる共重合ポリエステルの主たるジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、全ジカルボン酸成分に対するテレフタル酸成分の割合は70モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0016】
テレフタル酸とともに使用できる他のジカルボン酸成分としては、(1)イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4′−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、(2)アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマー酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、(3)ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられ、これらのうち、イソフタル酸やナフタレンジカルボン酸が、熱劣化が小さい傾向にあるので、好ましい。
【0017】
本発明に用いられる共重合ポリエステルの全グリコール成分に対するネオペンチルグリコールの含有量は、好ましくは26〜40モル%、最も好ましくは27〜35モル%である。ネオペンチルグリコールの含有量が上記範囲より少ないと、結晶化して発現する球晶構造により、成形体が白化して透明性が損なわれやすく、そのために成形条件幅が狭く量産性に劣り、また、歯ブラシ用ハンドルにひけが起こりやすく、耐衝撃性も不十分であり、特に歯磨き粉や歯用漂白剤に対する耐ストレスクラック性が悪くなる。また、上記範囲を超えると、重合度が上がりにくくなり、所定の固有粘度に到達するまでに時間を要するため、その間の熱履歴により色調が悪化しやすくなる。また、成形品の硬度が低下して、使用時に成形品に傷がつきやすく透明性が損なわれて好ましくない。
【0018】
本発明に用いられる共重合ポリエステルは、全グリコール成分がEGとNPGとで構成されるのが好ましいが、本発明の目的とする種々の特性を阻害しない範囲で、共重合ポリエステルに他の機能を付与ないし特性を改良するために、EGとNPG以外の他のグリコール成分を全グリコール成分に対して30モル%まで使用してもよい。
【0019】
他のグリコール成分としては、(1)1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族グリコール類、(2)1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF等の脂環式グリコール類、(3)p−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール等の芳香族グリコール類等が挙げられる。これらの中でも、ブタンジオールが成形品の透明性の面で、1,4−シクロヘキサンジメタノールが耐衝撃性の面で好適である。また、これらのグリコール成分は、いずれかを単独で使用しても2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0020】
本発明に用いられる共重合ポリエステルには、カルボキシル基、ヒドロキシル基またはそれらのエステル形成性基を3個以上有する多官能化合物(例えば、無水トリメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、トリメシン酸、ヘミメリット酸、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ジペンタエリトリトール等)を本発明に用いられる共重合ポリエステルの特性を損なわない範囲でポリエステルの酸成分および/またはグリコール成分の一部として用いることができる。
【0021】
また、本発明に用いられる共重合ポリエステルにおいて、分子鎖末端にラクトン類を開環付加重合させることもできる。具体的には、ラクトン類としては、β−プロピオラクトン、β−2,2−ジメチルプロピオラクトン、δ−バレロラクトン、δ−3−メチルバレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられ、特に好ましいのはε−カプロラクトンである。また、上記の原料等により共重合された共重合ポリエステルは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0022】
本発明に用いられる共重合ポリエステルは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはその誘導体、およびネオペンチルグリコールからなる原料を、後述する金属元素含有化合物を触媒として用いてエステル化反応工程(またはエステル交換反応工程)と重縮合反応工程により製造されることができる。前記の反応は、回分式反応装置で行っても良いし、連続式反応装置で行っても良いが、連続式反応装置によるのが好ましい。
【0023】
連続式反応装置(連続式重縮合法)において、エステル化反応(またはエステル交換反応)及び溶融重縮合反応はそれぞれ1段階で行ってもよいが、複数の段階に分けて行うのが好ましい。エステル化反応またはエステル交換反応を複数の段階に分けて行う場合、反応缶数は2缶〜3缶が好ましい。また、溶融重縮合反応を複数の段階に分けて行う場合、反応缶数は3缶〜7缶が好ましい。
【0024】
共重合ポリエステルを連続式重縮合法で製造する場合、全ジカルボン酸またはそのエステル誘導体1モルに対して1.02〜1.5モル、好ましくは1.03〜1.4モルの全てのグリコ−ルを含有するスラリ−を調製し、これをオリゴマーを含有するエステル化反応工程に連続的に供給する。エステル化反応温度は通常240〜270℃であり、好ましくは250〜265℃である。また、反応缶内の圧力は通常0.2MPa以下、好ましくは0.01〜0.05MPaである。また、重縮合反応の温度は通常265〜285℃であり、好ましくは270〜280℃であり、反応缶内の圧力は通常1.5hPa以下、好ましくは0.5hPa以下である。エステル化反応の反応時間は5時間以下が好ましく、特に好ましくは2〜3.5時間である。また、重縮合反応の反応時間は3時間以下が好ましく、特に好ましくは1〜2時間である。
【0025】
共重合ポリエステルを回分式重縮合法で製造する場合、エステル化反応温度は通常220〜250℃であり、好ましくは230〜245℃である。また、反応缶内の圧力は通常0.2〜0.4MPa、好ましくは0.25〜0.30MPaである。また、重縮合反応は1段階で行っても、複数段階に分けて行ってもよい。1段階で行う場合は、漸次減圧および昇温を行い、最終的な温度を260〜280℃、好ましくは265〜275℃の範囲とし、最終的な圧力を、通常3hPa以下、好ましくは0.5hPa以下とする。エステル化反応の反応時間は4時間以下が好ましく、特に好ましくは2〜3時間である。また、重縮合反応の反応時間は5時間以下が好ましく、特に好ましくは1〜3時間である。
【0026】
次に、連続式エステル交換反応によって低重縮合体を製造する場合は、テレフタル酸ジメチル1モルに対して1.1〜1.6モル、好ましくは1.2〜1.5モルのグリコールを含有する溶液を調製し、これをエステル交換反応工程に連続的に供給する。エステル交換反応温度は通常200〜270℃であり、好ましくは230〜265℃である。エステル交換法の場合、重縮合触媒以外にエステル交換触媒を使用することが必要である。得られた低重縮合体を前記の連続式重縮合と同様に反応させる。
【0027】
また、回分式エステル交換反応によって低重縮合体を製造する場合は、回分式反応器にテレフタル酸ジメチル1モルに対して2.3〜2.0モル、好ましくは2.2〜2.0モルのグリコールとテレフタル酸ジメチルを投入してエステル交換触媒存在下に反応を行う。得られた低重縮合体を前記のエステル化反応による場合と同様にして重縮合させる。
【0028】
本発明の共重合ポリエステルの製造時には、重縮合触媒としてゲルマニウム化合物が添加される。重縮合触媒として好適なゲルマニウム化合物としては、結晶性二酸化ゲルマニウム、非晶性二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラn−ブトキシド等が挙げられる。これらの中でも、結晶性二酸化ゲルマニウム、非晶性二酸化ゲルマニウムが好適であり、非晶性二酸化ゲルマニウムが特に好適である。
【0029】
ゲルマニウム化合物の添加量は、共重合ポリエステル中のゲルマニウム原子の含有量が20〜110ppmになるように適宜決定される。ゲルマニウム原子の含有量は、30〜80ppmが好ましく、40〜60ppmがさらに好ましい。ゲルマニウム原子の含有量が上記範囲未満では、重縮合活性が不足し、重縮合の生産性が低下するので好ましくない。一方、上記範囲を超えると、得られる共重合ポリエステルの清澄度や色調が悪化する上に経済的にも不利になるので好ましくない。ゲルマニウム化合物は、共重合ポリエステル重合時の減圧環境下で、重合装置や重合条件により、添加量の約40%が系外に除去されることを考慮した上で、添加量を決める必要がある。そのため、数回の試行実験を行い、添加量を決める必要がある。実際のゲルマニウム化合物の添加量は、ゲルマニウム原子基準で30〜180ppm、好ましくは50〜140ppmである。
【0030】
また、本発明の共重合ポリエステルの製造時には、重縮合触媒として、また色調改善のために、コバルト化合物が添加される。コバルト化合物は、特にカラーb値を小さくする効果を持つ。コバルト化合物としては、酢酸コバルト、塩化コバルト、安息香酸コバルト、クロム酸コバルト等が挙げられる。これらの中でも、酢酸コバルトが好適である。
【0031】
コバルト化合物の添加量は、共重合ポリエステル中のコバルト原子の含有量が1〜30ppmになるように選択される。コバルト原子の含有量は、1〜25ppmが好ましく、2〜20ppmがさらに好ましく、3〜15ppmが特に好ましい。コバルト原子の含有量が上記範囲未満では、色調改善効果が低下し、好ましくない。一方、上記範囲を越えると、コバルト金属の還元により共重合ポリエステルが黒ずんだり、青味が強くなったりし、透明性や明度が低下し、商品価値が低下する。コバルト化合物は、共重合ポリエステル重合時の減圧環境下でも、添加量のほぼ100%が系外に除去されることなく、共重合ポリエステル中に残存する。そのため、実際のコバルト化合物の添加量は、コバルト原子基準で1〜30ppm、好ましくは1〜20ppmである。
【0032】
また、本発明の共重合ポリエステルの製造時には、安定剤として、また清澄度改善のために、リン化合物が添加される。リン化合物としては、例えば、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。好適な具体例としては、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリブチル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、エチルホスホン酸ジメチル、フェニールホスホン酸ジメチル、フェニールホスホン酸ジエチル、フェニールホスホン酸ジフェニールが挙げられる。これらの中でも、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルおよびリン酸が特に好適である。
【0033】
リン化合物の添加量は、共重合ポリエステル中のリン原子の含有量が1〜45ppmになるように適宜選択される。リン原子の含有量は、2〜40ppmが好ましく、5〜40ppmがより好ましい。リン原子の含有量が上記範囲を超えると、重縮合活性の低下や共重合ポリエステル中の不溶性の化合物が生成する場合があるので好ましくない。一方、上記範囲未満では、色調改善効果が低下するので好ましくない。リン化合物は、共重合ポリエステル重合時の減圧環境下で、重合装置や重合条件により、添加量の約30%が系外に除去されることを考慮した上で、添加量を決める必要がある。そのため、数回の試行実験を行い、添加量を決める必要がある。実際のリン化合物の添加量は、リン原子基準で2〜70ppm、好ましくは3〜60ppmである。
【0034】
リン化合物は、本発明に用いられる共重合ポリエステルの色調改善の点から、次のように作用していると推察される。
【0035】
リンを中心元素とする酸素酸は、リン原子のまわりにOH及びHが合計4個配位した四面体形の構造を有する。オルトリン酸が縮合すると、ポリリン酸、メタリン酸などの縮合リン酸を生じる。これらの縮合リン酸は金属イオンに配位しやすい性質を有している。したがって、ポリエステルの重合反応系内で、リン化合物とフリーの金属イオン(本願発明では、ゲルマニウム、コバルトなどのイオン)が存在すると、リン化合物は金属イオンと優先的に反応する。
【0036】
ゲルマニウム化合物をリン化合物と特定のモル比で反応させることにより、ゲルマニウム化合物は安定化し、触媒活性を維持しながらカラーb値を小さくすることが可能となる。この際、リン化合物が過剰に存在すると、それがゲルマニウム化合物と反応し、共重合ポリエステルに不溶性の化合物を形成し共重合ポリエステルの清澄度を低下させることがある。
【0037】
また、リン化合物とコバルト化合物との反応により、前記したコバルト化合物による共重合ポリエステルに対する青味付け効果を増大することができ、カラーb値を小さくすることが可能となる。この際、リン化合物が過剰に存在すると、ポリエステル自身の耐熱性が悪化するためカラーb値が上昇する。一方、リン化合物が少量であると、コバルト化合物と反応しないため、ポリエステル対する青味付け効果が減少する。また、フリーのゲルマニウム化合物が増加するため、カラーb値が上昇する。
【0038】
本発明に用いられる共重合ポリエステルは、共重合ポリエステル5gをフェノール/テトラクロロエタン(質量比60:40)混合溶媒50gに溶解した溶液を波長657nm、光路長10mmにて測定した時の吸光度が0.004以下であることが好ましい。吸光度は0.0035以下がより好ましく、0.003以下がさらに好ましい。下限は0が最も好ましいが、コストパフォーマンスの点で0.001が好ましい。このように吸光度を低くすることにより透明性の高い歯ブラシ用ハンドルを安定して得ることができる。上記のような吸光度の小さい共重合ポリエステルを得るためには、上記した触媒等の各元素を上記規定の範囲にすることが重要であるが、それ以外にも、吸光度を大きくする原因となる共重合ポリエステル中の不溶性の化合物(異物)の発生を抑制することが必要である。
【0039】
本発明に用いられる共重合ポリエステルは、前記のジカルボン酸成分とグリコール成分とを前記のゲルマニウム化合物及びコバルト化合物を触媒として用いてエステル化反応工程(またはエステル交換反応工程)と重縮合反応工程により製造されるが、この際、ゲルマニウム化合物をエステル化反応開始前(またはエステル交換反応開始前)に、コバルト化合物をエステル化反応終了後(またはエステル交換反応終了後)から重縮合反応終了までに添加して製造することが好ましい。このような添加方法により、共重合ポリエステル中の不溶性のゲルマニウム化合物およびコバルト化合物の量を低減させることができる。
【0040】
本発明に用いられる共重合ポリエステル中のテレフタル酸とネオペンチルグリコールからなる遊離の環状2量体(CD)の含有量は、好ましくは15000ppm以下、より好ましくは10000ppm以下、さらに好ましくは8000ppm以下、最も好ましくは7000ppm以下である。遊離の環状2量体の含有量が上記範囲を超えると、連続成形時に射出成形機の金型などの汚れが非常に酷くなり、金型に付着した異物が歯ブラシ用ハンドルの表面に付着して商品価値が低下する。また、前記の環状2量体が歯ブラシ用ハンドルの表層にブリードする量が多くなり、歯磨き時に異味を感じることが生じうる。一方、この含有量の下限値は生産時の経済性より1000ppmである。このテレフタル酸とネオペンチルグリコールからなる遊離の環状2量体は、後述する実施例の測定方法によって定量した値である。
【0041】
共重合ポリエステル中の環状2量体の含有量を上述のように少なくするためには、例えば、エステル化反応工程やエステル交換反応工程で用いるエチレングリゴールの10〜20モル%の量をエステル化反応終了後、あるいはエステル交換反応終了後に低重合度反応生成物に追加添加して10分以上攪拌後に重縮合する方法、さらに、このような方法により得られた共重合ポリエステルを赤外線照射装置で加熱処理する方法などにより得ることができる。エチレングリゴールを追加添加・攪拌することで、重縮合反応中に、既に生成していたCDを開環させて、CD量を減少しているものと考えられる。
【0042】
前記の赤外線放射装置による処理は、これを設置した横型の加熱処理装置を用いて行うことができ、この加熱処理装置に共重合ポリエステルチップを供給して、攪拌下あるいは回転下にチップを移送しつつチップ温度が90〜130℃の範囲で加熱処理を行うことで可能である。この際、加熱した不活性ガスを向流方向に流すことも可能である。この装置は、一方からポリエステルチップが供給され、他方から排出されるような連続式装置であることが好ましい。
【0043】
赤外線放射装置を用いる処理では、共重合ポリエステルチップが赤外線を吸収して分子運動を起すために摩擦熱が発生してチップ内外層がほぼ均一に加熱されるので、チップ内外層に含まれるCDが、加熱処理により減少していると考えられる。従って、このようなメカニズムが達成できるのであれば、他の方法、例えば遠赤外線や近赤外線等々の組み合わせも使用可能である。CD量は、全グリコール成分に対するネオペンチルグリコールの含有量に依存する傾向にあり、用いる反応装置にもよるが、ネオペンチルグリコールの含有量が40モル%以下程度であれば、上記エチレングリゴールを追加添加・攪拌する方法のみでも、CD量を15000ppm以下にすることは可能である。ただし、より厳しい要請に対して透明性を満足させるためには、CD含有量は7000ppm以下であることが必要であり、このためには、エチレングリゴールを追加添加・攪拌する方法と赤外線照射装置で加熱処理する方法を併用することが必要である。
【0044】
本発明に用いられる共重合ポリエステルの固有粘度(JIS K7390準拠、溶媒:フェノール/テトラクロロエタン=6/4質量比、測定温度:30℃)は、0.50〜0.90dl/gであることが好ましい。特に0.60〜0.80dl/gが好ましい。固有粘度が上記範囲未満では、分子量が低いため、強度の低い成形品しか得られない。また、上記範囲を越えると、溶融粘度が高くなり過ぎて、流動性が低下して好ましくない。
【0045】
本発明に用いられる共重合ポリエステルのカラーb値は、3.0以下が好ましい。カラーb値のプラス値は、共重合ポリエステルの黄味の尺度であり、b値が増大すると黄味が増して衛生製品として重要な清潔感が損なわれるため、好ましくない。
【0046】
本発明に用いられる共重合ポリエステルは、270℃で成形された成形板の4mm厚さ当たりのヘーズ値が2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下がより好ましく、1.0%以下が特に好ましい。ヘーズ値が上記範囲を超えた場合は、透明性に劣るため、歯ブラシとして見た時に美観に欠けるものしか得られない。上記範囲であれば、透き通った清潔感のある製品に仕上がる。
【0047】
本発明に用いられる共重合ポリエステルには、常用の添加剤、例えば耐熱安定剤、耐侯剤、耐加水分解剤、顔料などを添加してもよい。熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系、チオエーテル系、ホスファイト系等やこれらの組み合わせを挙げることができる。耐侯剤としては、ベンゾフェノン系、トリアゾール系、ヒンダードアミン系などが挙げることができる。また、耐加水分解剤としては、カルボジイミド、ビスオキサゾリン、エポキシ、イソシアネート化合物が挙げることができる。また、蛍光染料を配合することもできる。
【0048】
本発明に用いられる共重合ポリエステルは、前記の各構成成分をモノマー段階で混合し重合することができる。また、安定剤や離型剤は重合前後に混合することもできるが、単軸押出機、2軸押出機やニーダーなどの装置を用いて、離型剤や安定剤を混練することにより製造することができる。安定剤をより高濃度に含む組成物を予め溶融混練して、成形時にこれをマスターバッチとして混合することもできる。
【0049】
共重合ポリエステルを射出成形する方法としては、非晶性ゆえに結晶化による白化を生じないため、必ずしも金型を冷却する必要はないが、冷却固化を速めるためには金型を70℃以下に冷却するのが好ましい。
【0050】
本発明においては、共重合ポリエステルを前記した組成に最適化しているので、前記金型温度範囲で安定した生産ができるが、共重合ポリエステル組成物に離型剤を0.01〜2質量%含めることが好ましい。離型剤としては、共重合ポリエステルを失透させることなく離型抵抗を低減するものでなければならない。例えば、高級脂肪酸エステル系、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸のモノアミド、高級脂肪酸のビスアミドが挙げられる。特に、炭素数が20以下の高級脂肪酸塩や高級脂肪酸のビスアミドが好ましい。これらの離型剤は共重合ポリエステル100質量部に対して好ましくは0〜2質量部、より好ましくは0.01〜0.8質量部が配合される。配合量が上記範囲を超えると、成形体の透明度や色調が損なわれるので本発明には好ましくない。離型剤の配合により、金型からの成形体の離型性が向上し、生産の安定性がより向上する。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の物性評価は以下の方法により測定した。
【0052】
(1)共重合ポリエステルの固有粘度
JIS−K−7390に準じてフェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒に溶解し、ウベローデ粘度計を用いて30℃で測定した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
【0053】
(2)共重合ポリエステルの共重合組成
共重合ポリエステル1mgを下記条件でプロトンNMR測定した。
(測定条件)
装置:核磁気共鳴装置(BRUKER製AVANCE500)
測定溶媒:重水素化クロロホルム/トリフルオロ酢酸=9/1(v/v)
H共鳴周波数:500MHz
積算回数:512回
測定温度:室温
【0054】
(3)共重合ポリエステル溶液の吸光度
共重合ポリエステル5gをフェノール/テトラクロロエタン(質量比60:40)混合溶媒50gに溶解した溶液を波長657nm、光路長10mmにて測定した。
【0055】
(4)共重合ポリエステルのGe、Co,Pなどの金属含有量の定量
蛍光X線法で測定した。それぞれの金属について含有量既知の標準試料を用いて求めた検量線で定量した。(測定装置:理学電機製上面照射型蛍光X線分析装置ZSX 100e)
【0056】
(5)共重合ポリエステルのテレフタル酸とネオペンチルグリコールからなる遊離の環状2量体の含有量(以下「CD含有量」という)
試料約100mgを精秤し、ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム=2/3(v/v)の混合液3mlに溶解し、クロロホルム20mlを加え、メタノ−ル10mlで再沈した。濾過後、濃縮乾固し、ジメチルホルムアミド10mlで再溶解した。遠心濾過した溶液をHPLCに供した。
装置:L−7000(日立製作所製)
カラム:μ−Bondasphere C18 5μ 100Å 3.9mm×15cm(waters製)
検量線:テレフタル酸とネオペンチルグリコールからなる環状2量体を用いた。
【0057】
(6)カラーb
共重合ポリエステルのペレットを50℃で72時間真空乾燥後、水分率が250ppm以下であることを確認した後、シリンダ温度230−270−270℃に調節された射出成形機のホッパーに供給して、表面温度が20℃に温度調節された金型を使用して、射出時間15秒、冷却時間30秒の条件にて、厚さ1mm・ランド長さ1mmのフィルムゲートにより100×100×4mmの平板を成形し、評価用試料とした。その厚さ4mmの平板を色差計(東京電色工業(株)製TC1500MC−88型)とC光源を使用して、平板の中央部について測定した。
【0058】
(7)透明性(ヘーズ値)
(6)にて作製した厚さ4mmの平板の中央部について、作製した厚さ4mmの平板の中央部について、JIS−K−7361−1に準じ、日本電色工業(株)濁度計(Haze Meter NDH2000型)とハロゲンランプを使用して、ヘーズ値を測定した。
【0059】
(8)シャルピー衝撃試験
(6)と同様の方法で共重合ポリエステルのペレットを乾燥後、シリンダ温度230−270−270℃に調節された射出成形機のホッパーに供給して、表面温度が20℃に温度調節されたISO294の多目的金型により、厚さ4mmのテストピースを射出成形した。ISO179に準じて、ノッチ加工後の23℃におけるシャルピー衝撃試験を実施した。
【0060】
(9)耐候性(耐紫外線変色性)評価
(6)にて作製した厚さ4mmの平板を試料として用いて以下の試験を行った。評価判定は目視で着色の有無により行った。
試験装置:ダイプラメタルウェザー KW−R5TP型
光源 :メタルハライドランプ
フィルター:KF−1(透過波長域 295〜780nm)
UV照射:70mW/cm2(測定波長域 300〜400nm)
スプレー:なし
槽内温度:53℃
槽内湿度:50%RH
試験時間:74時間
評価判定:○;着色なし
○〜△;わずかに着色あり
△;着色あり
×;着色大
【0061】
(10)耐ストレスクラック性
(6)と同様の方法で共重合ポリエステルのペレットを乾燥後、シリンダ温度230−270−270℃に調節された射出成形機のホッパーに供給して、表面温度が20℃に温度調節された金型を使用して、射出時間10秒、冷却時間20秒の条件にて、厚さ1mm・ランド長さ1mmのフィルムゲートにより100×100×2mmの平板を成形し、評価用試料とした。その厚さ2mmの平板を歪み0.5%で固定し、下記の歯磨き粉3種類を表面に塗り、水中に浸漬し、15時間後の状態を観察した。その状態を下記の基準で評価した。
歯磨き粉:花王株式会社製の「クリアクリーン」
ライオン株式会社製の「PCクリニカライオン」
サンスター株式会社製の「SUNSTAR G・U・M」
○:変化無し。
×:クレイズ、クラック発生。
【0062】
(実施例1)
ジカルボン酸成分として高純度テレフタル酸(TPA)を100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール(EG)を166モル%及びネオペンチルグリコール(NPG)34モル%を精留塔および攪拌装置を備えた反応容器に入れ、重縮合触媒として結晶性二酸化ゲルマニウムを生成共重合ポリエステルに対してゲルマニウム元素として50ppmとなるように添加した。その後、攪拌を行いながら260℃まで徐々に昇温し、圧力0.25MPaで留出する水を系外に排出しながらエステル化を行い、反応を終了後、反応系内を常圧に戻し、生成したオリゴマーに、EGをエステル化反応前に添加した量の20%に相当する量を添加して約15分間以上反応させ、色調改善剤として酢酸コバルトおよびリン酸トリメチルをそれぞれコバルト元素およびリン元素として生成共重合ポリエステルに対して12ppmおよび24ppmとなるように添加した。
【0063】
得られたオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、攪拌下、265℃、35hPaで1時間、次いで、第2重縮合反応缶で攪拌下、270℃、5hPaで1時間、さらに最終重縮合反応缶で攪拌下、280℃、0.5〜1.5hPaで1時間かけて重縮合反応を行った。重縮合反応後、離型剤としてステアリン酸マグネシウムを0.1質量%になるように添加し、溶融状態のポリエステルをダイのノズルから抜き出し、クーリングバスで水冷後、チップ状にカッティングした。この共重合ポリエステルを、赤外線放射装置に投入して約120℃で加熱結晶化した。
【0064】
得られた共重合ポリエステルの組成と物性、共重合ポリエステルから作成された成形体の評価結果を表1に示す。得られた共重合ポリエステルを前記した条件でテストピースを作製した。得られた結果を表1に示す。
【0065】
(実施例2〜10)
共重合成分の量または触媒金属元素含有量を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして反応させて共重合ポリエステルを得た。評価結果を表1に示す。
【0066】
(実施例11)
酢酸コバルトおよびリン酸トリメチルの添加場所を結晶性二酸化ゲルマニウムと同じ場所にし、酢酸コバルトおよびリン酸トリメチルを結晶性二酸化ゲルマニウムを添加してから5分後に添加した以外は、実施例1と同様にして反応させて共重合ポリエステルを得た。評価結果を表1に示す。
【0067】
(実施例12)
酢酸コバルトおよびリン酸トリメチルの添加場所を結晶性二酸化ゲルマニウムと同じ場所にし、酢酸コバルトおよびリン酸トリメチルを結晶性二酸化ゲルマニウムを添加してから5分後に添加し、かつ、生成したオリゴマーにEGを追加添加しなかった以外は、実施例1と同様にして反応させて共重合ポリエステルを得た。評価結果を表1に示す。
【0068】
(比較例1〜10)
共重合成分の量または触媒金属元素の種類もしくは含有量を表2に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして反応させて共重合ポリエステルを得た。評価結果を表2に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の歯ブラシ用ハンドルは、流動性が高く射出成形性に優れた共重合ポリエステルからなり、環境ホルモン性物質を含有せず、透明で色調が良く、かつ耐衝撃性、耐候性に優れたものである。従って、本発明は、歯ブラシ業界において極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールを主たるグリコール成分とし、全グリコール成分に対するネオペンチルグリコールの含有量が25モル%より多く50モル%以下である共重合ポリエステルを成形してなる歯ブラシ用ハンドルであって、前記共重合ポリエステルがゲルマニウム原子を20〜110ppm、コバルト原子を1〜30ppm、リン原子を1〜45ppm含有することを特徴とする歯ブラシ用ハンドル。
【請求項2】
前記共重合ポリエステル5gをフェノール/テトラクロロエタン(質量比60:40)混合溶媒50gに溶解した溶液を波長657nm、光路長10mmにて測定した時の吸光度が0.004以下であることを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ用ハンドル。
【請求項3】
前記共重合ポリエステル中のテレフタル酸とネオペンチルグリコールからなる遊離の環状2量体の含有量が15000ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の歯ブラシ用ハンドル。
【請求項4】
前記共重合ポリエステルのカラーb値が3.0以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の歯ブラシ用ハンドル。

【公開番号】特開2011−45621(P2011−45621A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197869(P2009−197869)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】