説明

歯ブラシ用毛材及び歯ブラシ

【課題】歯の表面および歯間部位の歯の側面および歯と歯肉の境目などに対して、毛材の密着性を高め、歯垢および異物などに対し、効率よく除去能率を高めた歯ブラシ用毛材及びこれを用いた歯ブラシを提供する。
【解決手段】本発明による歯ブラシ用毛材は、毛先端部を若干曲げて、毛先が30〜110度傾斜又は湾曲した形状であり、この毛材を毛先の方向を一定に揃えず、不規則に束ねその部分を本体に植毛してなることを特徴とする歯ブラシである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯の表面、歯肉の境目などの汚れ、特に歯の側面に付着した歯垢などを効果的に除去、清掃に優れた、歯ブラシ用毛材、及びこれを用いた歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている歯ブラシ用毛材の形態としては、直線からなる細毛、超極細毛、さらに、先球形、先割形など多種多様な毛材が考えられ、これらのうち特に直毛からなる形態が、一般的に他の毛材よりも多く使われている。
【0003】
さらに、その直線なる毛材を、歯間および歯肉の境目などにはいった歯垢などを除去しやすくするために、先端径が0.02mm〜0.04mmとなるテ−パ−状に加工され歯垢を効率よく除去できるように、工夫されている。ただ直毛の形態では、一定の角度でしか歯に接しないため、歯の側面(図4のD)の部分では、直毛の毛先の部分が歯間の奥の部分に入り歯の側面には直毛の、横の部分しか接しないため、歯ブラシ毛としての機能を充分に果たせなくなり、歯垢を取り除くことは苦難である。解かりやすく説明すると、楊枝を歯の間に差込み、左右に振った状態と同じである。
【0004】
さらに、直毛の短所として、歯の正面から直毛をあてた時である。綺麗に隙間なく歯が揃って殆ど凹凸がない健康的な歯並びにおいては、毛先を45度に傾斜し力をかけずに軽く磨いた時には、歯の境目に毛先が均等に接する事になり、歯垢を取り除くことは可能であるが、歯槽膿漏が進行し、歯肉が腫れあがり歯の境目が深くなったり、歯石を除去すると、その部分に隙間ができ溝が発生する。さらに、その除去した部分の歯茎の状態が改善すると、歯茎が以前より締まり更に大きな溝になってしまう。そうなると歯の側面が多大になり、歯自体の曲線の部分もまた多大になる。その状態になると図4で描かれているように直毛の毛先が、歯間の部分に集中し、扇状に分離し、さらに開いた部分の中央に空間ができ(図4のE)毛先が歯と歯茎の境目および歯の表面には全く接しなくなる。また直毛の歯ブラシは側面、表面の曲線の部分を一定の角度で磨くにはかなり難しく、曲線の部分の汚れを直毛で落とすには、歯の側面に対して絶えず直角にしなければならない。しかし口腔内に入れた歯ブラシをあらゆる角度にするのは難しく、たとえ側面の部分に直角になるように傾斜しても、隣の歯が障害になり、側面に対して直角にするのは不可能である。
【0005】
また、テ−パ−状に形成加工された毛材を、根元からクリンプ加工にした毛材(特許文献1)なども知られているが、この場合直毛よりは歯間の側面などを波状になった部分で擦るという点では直毛よりは歯垢を除去出来るのではないかと推定できるが、実際は歯と歯の間に入れば毛自体が潰されてしまい直毛とほとんど変わらず、逆に直毛よりも歯に接する面積が少なくなり、充分な効果を得ることは難しい。
【0006】
歯に対する面積を多くし、歯間の異物および歯垢などを除去するために、毛先を縦にカットして先割りにした毛材が特許文献2で考案されているが、この場合先端が二股になり、歯の正面では毛先が歯に絡み汚れなどを取りやすくなるように思えるが、歯間の中では毛先が揃ってしまい、直毛と同じ状態になり、歯の側面に対し毛先が正面から接しないため、歯垢を充分に取り除くことは難しい。それに毛先を二分割に形成することは、一本の直毛を二本にするのと同等である。故に少ない直毛で多く毛を形成するには適しているが、歯垢などを除去する効果は従来の歯ブラシと同等と推定される。
【0007】
現在最も多く使用されている毛材は、8割〜9割が、直毛であり多種多様な、直毛によるカット面(断面形状)が、発明および、考案されている。しかし直毛なる毛材は、毛先が歯の側面に正面から接することは、不可能であり歯の側面を効率よく磨くのは難しい。
【0008】
現在最も多く使用されている毛の長さは約10mm〜12mmである。しかしその毛の長さでは口腔内において、歯と口腔粘膜の間で、大きく膨らみ、かなり窮屈になり奥歯においては、毛先が完全に届かないため、余程丹念に磨かない限り歯垢などが残る原因の一つにもなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−225123号公報
【特許文献2】実用新案登録第3110225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
歯の表面および歯間部位の歯の側面および歯と歯肉の境目などに対して、毛材の密着性を高め、歯垢および異物などに対し、効率よく除去能率を高めた歯ブラシ用毛材及びこれを用いた歯ブラシを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の歯ブラシ用毛材は、毛先端部を若干曲げて、斜め又は湾曲に形状した毛材を毛先の方向を一定に揃えず、不規則に束ねその部分を本体に植毛してなることを特徴とする歯ブラシである。
【0012】
さらに上記の湾曲による毛束において、湾曲毛の届きにくい歯間の奥の部分(図2のF)には図1の湾曲毛の先端cの部分より1mm〜2mm長い直毛で汚れを掻き出し、歯の正面の歯肉の境目の部分には前記湾曲毛の先端cの部分より1mm〜4mm短い直毛、または湾曲毛と同等の長さの直毛が当たるようにし、湾曲毛を混合毛束全体の約4割〜8割、短めまたは同等の長さの直毛を約1割〜3割、長めの直毛を約1割〜3割の割合で混在させ、その毛束を一体形成してなることを特徴とする歯ブラシである。
【発明の効果】
【0013】
湾曲毛の使用の効果について、まず歯間の広い部分には、湾曲毛が歯間の間に入り込み、直毛の歯ブラシでは磨きにくかった、歯の側面を四方八方に向いた湾曲毛の毛先が歯の側面に密着し、歯垢などの汚れを効率的に除去できる。また歯間の狭いほとんど隙間のない場合でも、歯と歯の間には必ずV字の傾斜になっており直毛の歯ブラシでは、若干左右に歯ブラシを歯の傾斜に対し、直角になるように傾けないと磨けない箇所でも湾曲毛の毛先は、正面からブラシを当てれば、容易に歯の側面を磨くことができる。
【0014】
本発明による歯ブラシは湾曲毛と直毛の混合の歯ブラシであり、それぞれの毛を束ねて、植毛した歯ブラシを使うことにより今までの歯ブラシでは落としきれない歯垢、汚れなどを一回のブラッシングでより効果的に落とすことが可能である。その混合に形成した歯ブラシは、歯の表面に歯ブラシを当てたとき、歯間の側面(図2のD)歯の表面には湾曲の毛が汚れを落とし、歯間の奥と、歯と歯肉の境目には長さが違う2種類の直毛の毛先が汚れを取り、それぞれの箇所で効果的に磨くことが可能な歯ブラシである。その2種類の直毛とは、長い方の直毛は、歯間の奥の箇所(図2のF)を効率的に磨き、さらに短い方の直毛は、歯と歯肉の境目(歯周ポケット)を効率的に磨き、汚れを取る毛である。
【0015】
また湾曲毛の場合でも多少は歯間部に入り扇状になるが、その空間の部分には短めの直毛(図5の3)がその空間を補い、歯と歯茎の境目の汚れを効果的に落とすことが可能である。また歯ブラシをそのまま横に移動しても短めの直毛はあまり曲げられずに歯と歯茎の境目の汚れを落とすことができる。

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による湾曲毛を示す拡大図である。
【図2】湾曲毛を用いた歯ブラシを使用中の説明図である。
【図3】湾曲毛と直毛を歯ブラシに植毛した部分断面図である。
【図4】直毛の従来歯ブラシを歯の正面に当てた状態を示した説明図である。
【図5】湾曲毛と短めの直毛とを混合した毛束が、歯の側面と正面を磨いている状態の説明図である。
【図6】湾曲毛と長短2種類の直毛を混合し植毛した歯ブラシの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の形態について図面を参照して説明する。図1に示したブラシ用毛材が、1本の毛の外観図である。
【0018】
図1に記した湾曲毛の先端部において、角度aは直線状の根本部を延長した線に対して毛先方向が向いている角度である。その角度は30度〜110度が適切である。30度以下の浅い角度では、直毛とあまり変わらなくなり、充分な効果は得られず、また110度以上に曲げると、歯に当接した際に1回転して毛先が丸くなり、十分な効果が得られない。
好ましくは毛先の角度が45度〜90度位までが適切であり湾曲毛の形態としては最適である。
尚、毛材は図1(A)のように先端に向かってテーパー状に細くなっている形状が好ましいが、図1(B)のように先端が鋭角になるように切断した形状でも許容できる。
【0019】
図1のbの部分は、湾曲部の幅である。この幅においては、曲げる角度aによっても幅の違いが生じるが、約1mm〜3mmが適正である。曲げる角度aと幅bの組み合わせによって何種類かの歯ブラシを製造し提供することにより、個人の口腔内において最適な歯ブラシを選択でき、より歯垢、異物などを効率的に除去できる。
【0020】
図2は本発明による湾曲毛を毛先方向が不規則になるよう植毛した歯ブラシで歯を磨いている状態の説明図である。図2は湾曲毛先が歯の側面に当接している状態の断面図であり、図2の5は歯の断面図であり、1は湾曲毛である。湾曲毛先を不規則に揃えた毛束は歯間のV字の部分に入ると、湾曲毛先が360°あらゆる方向の歯の側面に接し、その部分に限らず側面の歯と歯肉の境目(歯周ポケット)の箇所にも接し、効率的に歯垢、異物などを取り除くことが可能である。更に湾曲毛を扇状にならないように、軽く磨く様にすれば湾曲毛先が開いて広がっている分、歯に対し面となり表面に絡みつくように密着し、直毛のように汚れを点で落とさないため、汚れ、歯垢などを効率よく取り除くことができる。
【0021】
図2のDは歯間の側面を示している。この側面の部分において本発明による歯ブラシが一番効果を発揮できる部分である。特に歯間が広い場合、湾曲毛の先の部分が歯の側面に正面から接し、歯に対する毛先の面積も多くなり、歯垢を効率的に取り除くことができる。
【0022】
図3においては、湾曲毛と直毛をそれぞれ歯ブラシに混合した拡大断面図である。毛の混合を図で示すとなると、毛が密集しよく解らなくなるため、それぞれの毛1本ずつ、計3本だけここに記した。実際の混合の毛束は、まず植毛部4全体に湾曲毛の密度が均一になるように植毛し、更に湾曲毛より1〜2mm長い直毛を混合毛束10割に対し1割〜3割を目安に均一に植毛する。また湾曲毛より1〜4mm短いかまたは湾曲毛と同じ長さの直毛も混合毛束に対して1割〜3割を目安に、均一に植毛する。
尚、既述したように湾曲毛の毛先の方向は不規則になるよう植毛する。
【0023】
図6は湾曲毛と長めの直毛と短めの直毛を混合し、それを植毛部4に植毛した図である。それぞれの毛の長さは使用者の口腔の大きさや好みによるので確定できるものではないが、湾曲毛の長さは5mm〜10mm位の長さが適切である。特に短くなるほど口腔内に圧迫感がなくなり、奥歯に関しては舌への接触が少なくなり、歯磨き中の嘔吐感も少なくなり違和感なく歯磨きが行える。
【0024】
更に直毛の長さについては、湾曲毛の長さによって決まる。例えば湾曲毛の長さを5mmとした場合、長めの直毛は約1mm〜2mm長くするため、約6mm〜7mmとなる。逆に短めの直毛は多種による、歯間の幅と深さがあるため、湾曲毛に近い長さでは、歯の正面の、歯茎に対し対応ができなくなり、磨きのこしが起きてしまいかねない。よって短めの直毛は約1mm〜4mm短くし、または同等にするため約1mm〜5mmとなる。つまり湾曲毛の長さは約5mm〜10mmとし、長めの直毛は約6mm〜12mmとし、短めの直毛は湾曲毛より短めまたは同等になるため約1mm〜10mmとなる。
【0025】
毛の材質はポリエステル系樹脂、または飽和ポリエステル系樹脂で可能である。重要なのはその毛材の硬度である。毛の長さが従来の10mm〜12mmであるならば、現在の硬度でも柔軟性を保つことができ、バス法などの時でも充分撓り(しなり)があり、歯磨が行えるが毛を5mm〜10mmにした場合、撓りを充分確保するには、毛の硬度を柔らかくする必要がある。毛の質が硬いと、歯ブラシ毛が撓らなくなり、ブラシ毛が歯に対して、充分絡まなくなる。やはり、ブラシ毛は歯に絡まって、初めてその機能を発揮するのであり、いくら毛先が極細であっても、歯の約1部分しか、磨けないのでは、歯全体の汚れを取り除くことは困難である。
【0026】
図4は従来の直毛の歯ブラシで歯を磨いている状態を示した説明図である。この様に先の背景技術の項目で記した通り直毛が歯に対して扇状に開いて、歯の正面、歯茎の箇所に毛先が歯を磨く際にほとんど接することは、困難であるため、綺麗に磨くことは難しい。側面もまた、このような状態では汚れを落とすことは難しく、歯ブラシ自体を横に移動して磨いたとしても直毛の横の部分で歯を撫でるような状態となり、的確な歯磨きを行うのは、困難となる。
【0027】
図5において湾曲毛と短めの直毛の使用状況を記した断面図である。歯は曲線で丸みとなってる所が多くブラシ毛の性質上、自然と扇状気味の状態となり、歯の正面の歯茎の箇所には、ブラシ毛が接しにくくなる。逆に扇状にならないように、軽く磨けば歯の表面、歯茎の箇所の汚れを落とすことは可能であるが、側面の汚れを落とすには直毛の性質上困難である。そこで図5であるが、どうしても歯間部を磨くには湾曲毛を差し入れなければならない。するとブラシ毛自体の欠点である扇状になりがちである。この時点で直毛の場合、側面を磨くのは困難になるが湾曲毛はこの状態でも図2のように毛先が、側面に接し汚れなどを効果的に落とすことが可能である。更に湾曲毛が側面の汚れを落とすと同時に扇状部分の空白箇所、図4のEを、図5の3のように、短めの直毛が歯の表面、歯茎などに接し、湾曲毛が落としきれない汚れ、歯垢などを効率的に取り除くことが可能である。

【符号の説明】
【0028】
1 本発明による先が湾曲した毛
2 長めの直毛
3 短めの直毛
4 歯ブラシの植毛部
5 歯
10 従来歯ブラシの直毛
a 湾曲部の角度
b 湾曲部の幅
c 湾曲部の先端
D 歯の側面
E 扇状の空間部分
F 歯間の奥部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯ブラシ用毛材において、毛の先端部が直毛に比して30度〜110度傾斜又は湾曲していることを特徴とする歯ブラシ用毛材。
【請求項2】
歯ブラシヘッド部の植毛部において、請求項1に記載した傾斜又は湾曲した毛材の毛先方向が不規則になるよう植毛されており、かつ所定の割合で直毛が混交あるいは混在していることを特徴とする歯ブラシ。
【請求項3】
比較的短い直毛と比較的長い直毛と請求項1に記載した傾斜又は湾曲した毛材が混在して植毛されていることを特徴とする請求項2に記載した歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−194071(P2010−194071A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41687(P2009−41687)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(308036088)
【Fターム(参考)】