説明

歯ブラシ

ブリッスルをもつ洗浄ゾーンと、洗浄力によって歯の表面の形状に該洗浄ゾーンを適合させることができる変形可能な要素とを有する歯ブラシであって、該変形可能要素が、洗浄ゾーンに向かってくさび形で先細になっている柔軟性ウィングと、該ウィング間のガイド部材とを含んでなり、該ウィングおよび/またはガイド部材の少なくとも1つが圧縮可能な弾性材料で作られている、上記歯ブラシ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯ブラシに関するのである。歯ブラシは広く知られた用具であり、一般には、歯ブラシを把持するためのグリップハンドルと、洗浄中に洗浄力で歯に押し付けられる歯洗浄部材(本明細書では包括的に「ブリッスル」という)を上面に植設した洗浄ゾーン(通常「ヘッド部」として知られる)とを含んでなる。ヘッドおよびハンドルは歯ブラシのハンドル-ヘッド長軸方向を規定し、ヘッドとハンドルの間には長軸方向にネック部が存在する。ブリッスルは通常長軸方向に対して直角の方向に洗浄ゾーンから突き出ており、ブリッスルは最も一般的なタイプの洗浄部材であるので、この方向を本明細書では「ブリッスル方向」という。
【0002】
より詳細には、本発明は、歯洗浄部材が上面に植設された洗浄ゾーンと、洗浄力によって歯の表面の形状に該洗浄ゾーンを適合させることができる変形可能な要素とを有する歯ブラシであって、前記変形可能要素が少なくとも、洗浄ゾーンの方に面する第1の柔軟性ウィングと、洗浄ゾーンから離れて面する第2の柔軟性ウィングと、さらに少なくとも1つのガイド部材を有しており、第1および第2のウィングがガイド部材によって可動的に一緒に保持されている、上記歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0003】
そのような歯ブラシは、例えばWO-A-2006/089784から公知であり、その開示内容は本発明の一態様に関する本請求項の前提部分の基礎を構成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、この歯ブラシおよび他の公知の歯ブラシを改善する、すなわち、典型的には歯の表面にうまく適合させることにより、公知の歯ブラシよりも効果的に、同時に穏やかに歯を洗浄する、という課題に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、使用中に洗浄力によって歯に押し付けられる、ブリッスルが上面に植設された少なくとも1つの洗浄ゾーンと、洗浄力によって歯の表面の形状に該洗浄ゾーンを適合させることができる少なくとも1つの変形可能な要素とを有する歯ブラシであって、前記変形可能要素が少なくとも、洗浄ゾーンの相対的に近くに配置された第1の柔軟性ウィングと、洗浄ゾーンから相対的に遠くに配置された第2のその種のウィングと、さらに少なくとも1つのガイド部材を有しており、第1および第2のウィングがガイド部材によって可動的に一緒に保持されており、これらのウィングは一端で互いにより接近し他端で互いから遠くに離れるくさびを形成しており、そして前記ウィングの少なくとも1つおよび/または少なくとも1つのガイド部材が圧縮可能な弾性材料で作られていることを特徴とする、上記歯ブラシを提供する。
【0006】
好ましくは、前記ウィングは、それらがハンドルから相対的に遠い箇所で一緒に合体し、かつハンドルに相対的に近い箇所で互いから遠くに離れる、くさびを形成している。そのような構成では、くさび形はハンドルから長軸方向に先細になっていて、洗浄ゾーンの方に向かって狭くなっている。
【0007】
この驚くべき単純な解決策では、本発明による歯ブラシの洗浄ゾーンがブラッシング中に歯の表面の形状に驚くほど適合し、その結果ブリッスルもまた歯間スペースに深く入り込み、そこにあるプラーク(歯垢)をより効果的に取り除くことができる。この新規な変形モードを可能にすることで、本発明の歯ブラシの柔軟性という特徴がその他の方法でも歯への接近を改善する可能性がある。
【0008】
ブラッシング中の洗浄力(対向力として歯によりウィングに加えられる)の結果として、ウィングを(それゆえに洗浄ゾーンも)個々の歯、複数の歯または歯列弓のまわりに凹形にカーブさせることができる。したがって、本発明による解決策では、個々に植設された洗浄部材を保持する、最適に適合された洗浄ゾーンがユーザーの歯の各区間のために生み出される。本発明による解決策の結果として、洗浄ゾーンは向かい合う面(歯を磨いているときは、洗浄しようとする歯)の形状に合わせて変化する。
【0009】
ユーザーによって加えられる洗浄力は洗浄ゾーンを歯の表面に合わせて変化させるので、ブラッシング中に圧力が歯の表面の特定の箇所に必ずしも加えられず、洗浄ゾーン全体に加えられる。このことは、歯が非常に温和に洗浄されうることを意味する。
【0010】
ハンドル部にバネ要素を有し、そのためブラッシング中にハンドルの角度を変えることができる公知の歯ブラシと比較して、本発明による解決策は、本発明によるまっすぐな(曲がっていない)歯ブラシをブラッシング中にコントロールしやすい、という利点を有する。
【0011】
例えば、前記ウィングの1つがプラスチック材料製で、前記ウィングのもう1つが圧縮可能な弾性材料製であり、かつ/または前記ガイド部材の少なくとも1つが圧縮可能な弾性材料製であるという構成的特徴は、WO-A-2006/089784に記載の歯ブラシと比べて、歯ブラシの柔軟性を改善することができる。
【0012】
本発明の歯ブラシは、以下で説明するように、さまざまな実施形態でさらに発展させることができる。
【0013】
前記ウィングは、少なくともブリッスル方向に平行する平面において柔軟性の、長軸方向に細長い部材から構成される。歯ブラシは、それが洗浄ゾーンに加えられた洗浄力によって静止位置から洗浄位置に動くことができ、それにより洗浄位置では洗浄ゾーンが静止位置と比べて洗浄力の加わっている方向に曲がるようになっている。このことは、洗浄ゾーンが歯の形状に合わせて変化し、かつ洗浄部材が洗浄ゾーンとともに各歯に合わせて個別に適合するという利点を有する。例えば、洗浄ゾーンのある箇所に洗浄力によって圧力が加わると、洗浄ゾーンはその箇所のまわりで凹形に曲がる傾向がある。ウィングは直線形であってもカーブしていてもよく、また、それらの厚さは変形可能な領域の長さに沿って同じであっても、さまざまに変化してもよい。
【0014】
好ましくは、圧縮可能な弾性材料で作られてないウィングまたはガイド部材の部分はプラスチック材料で作られる。
【0015】
一実施形態において、洗浄ゾーンに相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィングはプラスチック材料製であり、洗浄ゾーンから相対的に遠く配置された第2のそのようなウィングは圧縮可能な弾性材料製である。
【0016】
別の実施形態では、洗浄ゾーンに相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィングが圧縮可能な弾性材料製であり、洗浄ゾーンから相対的に遠く配置された第2のそのようなウィングがプラスチック材料製である。
【0017】
別の実施形態では、洗浄ゾーンに相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィングと洗浄ゾーンから相対的に遠く配置された第2のウィングの両方がプラスチック材料製であり、ガイド部材の少なくとも1つが圧縮可能な弾性材料製である。
【0018】
別の実施形態では、洗浄ゾーンに相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィングがプラスチック材料製で、洗浄ゾーンから相対的に遠く配置された第2のそのようなウィングが圧縮可能な弾性材料製であり、そしてガイド部材の少なくとも1つが圧縮可能な弾性材料製である。
【0019】
別の実施形態では、洗浄ゾーンに相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィングが圧縮可能な弾性材料製で、洗浄ゾーンから相対的に遠く配置された第2のそのようなウィングがプラスチック材料製であり、そしてガイド部材の少なくとも1つが圧縮可能な弾性材料製である。
【0020】
別の実施形態では、洗浄ゾーンに相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィングと洗浄ゾーンから相対的に遠く配置された第2のそのようなウィングの両方が圧縮可能な弾性材料製であり、かつガイド部材の少なくとも1つが圧縮可能な弾性材料製である。
【0021】
別の実施形態では、洗浄ゾーンに相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィングと洗浄ゾーンから相対的に遠く配置された第2のそのようなウィングの両方が圧縮可能な弾性材料製であり、そしてガイド部材の少なくとも1つがプラスチック材料製である。
【0022】
これらの実施形態において、好ましくは、1つのウィングと1つ以上のガイド部材は同一の圧縮可能な弾性材料で一体的に作られる。
【0023】
1つのガイド部材が圧縮可能な弾性材料製である場合には、全部のガイド部材が圧縮可能な弾性材料製であることが好ましい。しかし、歯ブラシは1つ以上のプラスチック材料製のガイド部材と1つ以上の圧縮可能な弾性材料製のガイド部材を含んでいてもよい。
【0024】
ガイド部材は、ガイド部材の各端部でウィングに連結された、ウィングとウィングの間を架橋する部材からなる。複数のガイド部材が変形可能な要素の長さに沿って長軸方向に間隔をおいて配置される。そのような部材は、長軸方向に対して垂直に、または長軸方向に対して非垂直の角度で、例えば45〜90°でウィング間を架橋することができる。ガイド部材の数および長軸方向の間隔は特に決まっていないが、単位長さあたりのガイド部材の数をより多くすると、変形可能な要素をより滑らかなカーブに曲げることができるようである。
【0025】
好ましくは、ガイド部材はヒンジによって一方または両方のウィングに連結される。そのようなヒンジは、例えば、ガイド部材の隣接領域に比して薄くなっているガイド部材の領域、例えばいわゆるリブヒンジ(live hinge)でありうる。架橋部材は関係する材料に適切な各種方法でウィングに連結させることができる。例えば、先に述べたように、ウィングとガイド部材の一体的構成によってガイド部材をウィングに連結させる。例えば、ガイド部材とウィングを一緒に溶接する。ガイド部材とウィング(一方はプラスチック材料製で、他方は圧縮可能な弾性材料製である)は、そのような材料のペア、例えば熱可塑性エラストマーである圧縮可能な弾性材料と、ポリプロピレンのような歯ブラシに用いる公知のプラスチック材料とを結合させる公知の手段を用いて、一緒に連結させることができる。そのような結合による連結を行おうとする場合には、2つの材料間の接触面を増加させる界面特徴(例えば、プラスチック材料の表面上の溝、穴、隆起部またはうね)を設けることが好ましい。
【0026】
適当なプラスチック材料は、歯ブラシ製造用として知られているもの、例えば公知のポリプロピレンである。そうしたプラスチック材料は、実際問題として、歯磨き中に加わる種類の圧力のもとでは非圧縮性であると考えられている。
【0027】
好ましい圧縮可能な弾性材料としては熱可塑性エラストマー(TPE)が挙げられるが、その多くはすでに知られている。弾性材料に好適な強度および剛性を与えるために、Shore D 硬度100以上、好ましくはShore D 硬度140以上の弾性材料が好適であり、例えばShore D 硬度150までのものである。しかし、この硬度でさえも該材料の弾性は本発明の歯ブラシの有利な圧縮および引張特性をもたらす。
【0028】
ウィングとウィングの間、例えばガイド部材の間の隙間には、スペース(空間)が存在する。このスペースには、追加的な柔軟性の材料、例えばウィングまたはガイド部材を形作っている上記の圧縮可能な弾性材料よりも硬質でない第2の圧縮可能な弾性材料、が存在してもよい。
【0029】
そのようなスペースはいろいろな方法で画定することができる。ガイド部材が分割壁を含み、スペースを少なくとも2つの個別の区画に分割してもよい。1つ以上または全部の区画にそのような追加的材料を少なくとも部分的に充填することができる。そのような追加的材料は更なる圧縮可能な弾性材料であることが好ましい。そうした更なる弾性材料は、例えばShore A 硬度5〜20、好ましくはShore A 硬度10+/-2により実際に達成されるのと同じくらい軟質であることが好ましい。熱可塑性エラストマー材料が適している。
【0030】
ある材料がより硬質(例えば、より剛性および/またはより乏しい柔軟性)で、他の材料がより乏しい硬質(例えば、より軟質および/またはより柔軟性)の、複数の圧縮可能な弾性材料を組み込んだ変形可能要素を歯ブラシに設けることは新規であると考えられる。そのような2種類の弾性材料を使用することにより、本発明の歯ブラシに特徴的な所望の柔軟性を達成することが容易となる。
【0031】
したがって、本発明の第2の態様では、使用中に洗浄力によって歯に押し付けられる、ブリッスルが上面に植設された少なくとも1つの洗浄ゾーンと、洗浄力によって歯の表面の形状に該洗浄ゾーンを適合させることができる少なくとも1つの変形可能要素とを有する歯ブラシであって、前記変形可能要素が、相対的により硬質の第1の弾性材料から作られた第1の柔軟性部分と、相対的により硬質でない第2の弾性材料から作られた第2の柔軟性部分とを含むことを特徴とする、上記歯ブラシを提供する。
【0032】
本発明のこの第2の態様の第1の実施形態では、相対的により硬質の第1の弾性材料から作られた、長軸方向に延びる2つの柔軟性部分が存在し、これら2つの第1の柔軟性部分の間に、相対的により硬質でない第2の弾性材料から作られた第2の柔軟性部分が横方向に位置する。第1の柔軟性部分は1つ以上のガイド部材によって、例えば可動的に、一緒に連結され、かかるガイド部材は第1の柔軟性部分と一体的に作ることができる。これらの第1の柔軟性部分は長軸方向に平行であってもよいし、グリップハンドルから洗浄ゾーンに向かう方向で狭くなって、長軸方向に先細になっていてもよい。
【0033】
そのような長軸方向に延びる柔軟性部分は、本発明の第1の態様における柔軟性ウィングの形態とすることができる。
【0034】
相対的により硬質でない第2の弾性材料は、本発明の第1の態様における上記の更なる圧縮可能な弾性材料とすることができる。
【0035】
加えて、またはそれとは別に、そのようなスペースまたは区画は、ゲルもしくは流体を構成する追加的材料を含むことができる。
【0036】
こうして、洗浄力によって引き起こされる本発明による歯ブラシの変形は、単にそのような更なる材料をスペースに様々に充填することによって影響されるので、いろいろなタイプの歯ブラシを製造することができる。そうした材料の存在は、変形可能要素の諸性質(例えば、柔軟性)をさらに改変することとなり、また、例えばスペースにごみや汚染物が入るのを防ぐのに役立つ。充填されたスペースは、例えばゲルまたは流体の透明な弾性材料によって、外側に少なくとも部分的に透明であり、その結果、変形可能要素は外側から目で見ることができ、変形可能要素の肉眼によるコントロールが可能となる。肉眼によるコントロールは変形可能要素(すなわち、ガイド部材および引張または圧縮ウィング)の状態をチェックすることを可能にし、また、ユーザーはどのような損傷をも見つけ出すことができる。
【0037】
変形可能要素の長さは、希望する歯ブラシの構成に応じてさまざまに変化しうる。
【0038】
好ましくは、変形可能要素は、ヘッドに最も近いグリップハンドルの端部とグリップハンドルに最も近いヘッドの端部の間、すなわち、一般には歯ブラシの「ネック」として知られている領域、の歯ブラシの長さにわたって延びている。歯ブラシの典型的な寸法に基づくと、そのような長さのネックには3〜5つのガイド部材を長軸方向に間隔をおいて配置することが好適である。
【0039】
そのようなネックに連結された、または連結可能な歯ブラシのヘッドは、一般に用いられているものであってよい。そうしたヘッドそれ自体を柔軟性にすることも可能であり、例えば、WO-A-92/17093、WO-A-97/07707、WO-A-2005/084486、WO-A-2005/107522またはWO-A-2006/131397に開示されるような公知の構成をとることができる。
【0040】
ある実施形態においては、変形可能要素が少なくとも部分的にヘッドの中に延びており、その結果ヘッドは、ブリッスルに相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィングと、ブリッスルから相対的に遠く配置された第2の柔軟性ウィングと、さらに少なくとも1つのガイド部材を含んでなり、その場合、第1および第2ウィングはガイド部材によって可動的に一緒に保持されており、これらのウィングがくさび(一端でともに接近し、他端で互いから離れる)を形成している点に特徴がある。この実施形態の一形態では、前記ウィングの一方がプラスチック材料で作られ、前記ウィングの他方が圧縮可能な弾性材料で作られ、そして/または前記ガイド部材の少なくとも1つが圧縮可能な弾性材料で作られる。かかるヘッドのウィング間にはスペースがあり、そうしたスペースには少なくとも部分的に追加的材料を充填することができる。ウィング、ガイド部材および追加的材料の構成と材料は先に記載したものと同様である。
【0041】
この最後に記載した実施形態では、ブリッスルに相対的に近く配置されたヘッドの第1の柔軟性ウィングが、ブリッスルを固定するためのプラスチック材料製のプレートを含んでいてもよい。かかるプレートは柔軟な構成となるように作ることができる。プレートを柔軟な構成で作製するための1つの方法は、1以上の相対的に薄くなった領域(例えば、1以上の横方向に並んだ薄くなった領域)を含むプレートを用いて、その薄くなった領域をヒンジとして機能させることによるものである。この実施形態のヘッドがウィングとウィングの間に追加的材料を含む場合には、そのようなプレートに設けた穴にブリッスルを貫通させて、洗浄中に歯と接触するブリッスル末端から離れているブリッスル末端を、その追加的材料で支える(例えば、追加的材料の中に埋め込む)ことができるので好都合である。このことは、追加的材料が上記のような圧縮可能な弾性材料である場合に特に適している。そうした更なる圧縮可能な弾性材料によって支えられる場合には、ブリッスルがそのような材料の上で跳ね返ることができるので有利である。
【0042】
この実施形態によるヘッドの構成は、洗浄力がブラッシング中に変形可能要素に直接向けられ、したがって、変形可能要素の変形が洗浄ゾーンに直接伝達される、という利点を有する。
【0043】
これに加えてまたはこれとは別に、変形可能要素は洗浄ゾーンからある距離で歯ブラシのハンドル部の中に収容することもできる。したがって、変形可能要素(その作用が洗浄ゾーンと関連している)はハンドル部の有利な変形をも生じさせることができる。
【0044】
更なる実施形態において、縦方向に作用する1以上の弾性バネ要素をウィングの少なくとも一方に設けて、互いに対するウィングの相対的変形能を制限することが可能である。バネ要素は引張または圧縮ウィングに働く力を吸収して、変形可能要素の変形を変える。そのようなバネ要素は例えば弾性材料で作ることができるが、弾性材料は2段階成形法で歯ブラシの射出成形中に添加される。さらに、少なくとも1つの弾性バネ要素をガイド部材に設けてもよく、これはあらかじめ決められた洗浄力を上回る変形可能要素の変形(バネ要素のデザインにより変更可能)を変えることができる。
【0045】
洗浄ゾーンがより一層大きな変形可能性を有する本発明の歯ブラシを提供するために、歯ブラシに複数の変形可能要素を設けることができる。これらはネックから、互いに平行に広がって、星形に、または、例えば電動歯ブラシ用の回転可能なブラシヘッドでは、ピボット点から螺旋形に、延びて共同の洗浄ゾーンを形成することができる。また、変形可能要素が別の更なる変形可能要素を収容することもできる。
【0046】
別の実施形態においては、変形可能要素が洗浄ゾーンにより近い2つのウィング(ほぼ並列に延びている)と、洗浄ゾーンからより遠い1つのウィングを有しており、それによりガイド部材が洗浄ゾーンからより遠いウィングを洗浄ゾーンにより近い2つのウィングに連結している。この実施形態では、洗浄ゾーンが洗浄ゾーンにより近い2つの両ウィングの上に配置され、ガイド部材が例えばV字形でありうる。この実施形態は、洗浄力が洗浄ゾーンにより近い2つのウィングの一方にのみ加わった場合に、歯ブラシがねじれる、という利点がある。さらに、そのような実施形態はまた、少なくとも2つのガイド部材をもつことができ、それぞれのガイド部材が圧縮ウィングを2つの引張ウィングの一方に連結している。洗浄ゾーンにより近い2つのウィングのそれぞれに対して別々のガイド部材があるということは、一方のウィングに向けられた洗浄力が他方の引張ウィングにはそれほど強く伝わらないことを意味する。
【0047】
本発明による歯ブラシは2つの変形可能要素をもっていてもよく、それらのウィングはそれぞれが1つの平面にわたっており、それによりこれら2つの平面が互いに対してほぼ直角に延びている。この実施形態は、本発明の歯ブラシが異なる方向に働く異なる洗浄力によって変形するという利点を有する。
【0048】
洗浄ゾーンに洗浄部材をさまざまな様式で配置するために、ウィングは互いに凸形、凹形、または波形に設けることができる。ウィングは異なる長さのものであってよく、変形可能要素にあらかじめカーブした形状を与えることもできる。
【0049】
ブリッスルは洗浄ゾーンに互いに平行にまたは交差させて植設することができる。洗浄ゾーンのブリッスルは長軸方向に対して垂直に延びていても、長軸方向に対して垂直でない角度で延びていてもよい。洗浄部材が洗浄位置で交差し、したがって本発明による歯ブラシの洗浄特性をさらに改善するように、洗浄部材を植設することも可能である。ブリッスルが互いに対してゼロ以外の角度にあるとき、ブリッスル方向はブリッスルの平均した方向でありうる。
【0050】
本発明の歯ブラシは従来の技術を用いて様々な方法で作ることができる。例えば、第1の射出成形作業において、歯ブラシのプラスチック材料部分を第1の金型でプラスチック材料製の「骨組み」として製造する。次に、この骨組みを、圧縮可能な弾性材料部分の形状を画定したキャビティをもつ第2の射出成形金型に入れる。第2の射出成形作業において、このキャビティに圧縮可能な弾性材料を公知の温度・圧力条件(プラスチック材料と圧縮可能な弾性材料との溶接をもたらす条件)下で注入することにより、圧縮可能な弾性材料部分を製造する。
【0051】
歯ブラシにおいて追加的材料を使用する予定であれば、この第2の作業の製品(プラスチック材料部分と圧縮可能な弾性材料部分からなる)を追加的材料部分の形状を画定したキャビティをもつ別の射出成形金型に入れる。更なる射出成形作業において、このキャビティに追加的材料を公知の温度・圧力条件(更なる材料とプラスチック材料および/または圧縮可能な弾性材料との溶接をもたらす条件)下で注入することにより、追加的材料部分を製造する。
【0052】
本発明の歯ブラシは他の方法で製造することもできる。例えば、プラスチック材料の「骨組み」を上記のように製造する。圧縮可能な弾性材料部分を別の射出成形作業において製造する。その後、プラスチック材料部分と圧縮可能な弾性材料部分を、例えば溶接、接着、機械的接合などにより、一緒に連結させる。
【0053】
ここで、添付の図面を参照しながら例を用いて本発明について説明することにする。個々の有利な実施形態に関してすでに上述したように、様々な構成を互いに独立して、組み合わせたり、省略したりすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による歯ブラシの透視図である。
【図1A】図1の線A-Aに沿った断面図である。
【図2】図1の歯ブラシの変形可能要素の側面図である。
【図2A】図1の歯ブラシの変形可能要素の拡大側面図である。
【図3】図2の変形可能要素の洗浄位置での側面図である。
【図4】本発明の歯ブラシの更なる例を示した図である。
【図5】本発明の歯ブラシの更なる例の変形可能要素の概略図である。
【図6】本発明の歯ブラシの更なる例の変形可能要素の概略図である。
【図7】本発明の歯ブラシの更なる例を示した図である。
【図8】本発明の歯ブラシの更なる例を示した図である。
【図9】本発明の歯ブラシの更なる例を示した図である。
【図10】本発明の歯ブラシの更なる例を示した図である。
【図11】本発明の歯ブラシの更なる例の一部を示した図である。
【図12】本発明の歯ブラシの更なる例の一部を示した図である。
【図13】本発明の歯ブラシの更なる例の一部を示した図である。
【図14】本発明の歯ブラシの更なる例の一部を示した図である。
【図15】本発明の歯ブラシの更なる例の一部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
最初に、本発明による歯ブラシの一般的構造を、図1〜3を参照しながら説明する。
【0056】
図1は、本発明の歯ブラシ1の第1の実施形態を三次元的概略図で示したものである。
【0057】
歯ブラシ1にはハンドル部2、ネック部3、および洗浄ゾーン4がある。ネック部3はハンドル部2と洗浄ゾーン4の間に位置する。洗浄ゾーン4の上面には洗浄部材5が存在するが、この洗浄部材は図1では概略的に示してあるにすぎない。洗浄部材5としては、ブリッスル、ブレード、フリース、弾性洗浄部材、その他の好適なあらゆる材料を用いることができる。本発明の歯ブラシ1はまた、図1に示した実施形態の例では、一般的にヘッド4に最も近いハンドル2の端部からネック部3に沿ってヘッド4へと延びる、変形可能要素6を有する。
【0058】
ハンドル部2は歯を磨くときにユーザーが歯ブラシ1を把持するために設けられる。ハンドル部2は、歯ブラシ1がユーザーの手の中に心地よく収まりかつ審美的要件を満たすかぎり、どのような形状をしていてもよい。ハンドル部はまた、ユーザーによる洗浄運動を電動運動に置き換える電動歯ブラシの部分でありうる。ユーザーは図1に示した歯ブラシ1のハンドル部2を経由して洗浄運動と洗浄力を伝達する。図1に示した実施形態のハンドル部には、歯を磨くとき親指を静止させることができる親指部7が存在し、例えばこの親指部は特に滑らない材料で作られる。
【0059】
歯ブラシ1のヘッド4は、例えば奥の小臼歯の洗浄を容易にするために、ネック部3によってハンドル部2から隔てられており、この場合にはハンドル部2とユーザーの手が口の外側に残る。
【0060】
歯ブラシ1のヘッド4には洗浄部材5が保持されており、洗浄部材5はブラッシング中にユーザーが加える洗浄力によって歯に押し付けられ、洗浄運動によって歯を洗浄する。洗浄部材5は歯ブラシ1の洗浄ゾーン4にどのような公知の方法で固定してもよい。例えば、洗浄ゾーン4に穴(図示してない)を設けて、そこに固定手段(いわゆるアンカー)を備えた洗浄部材5をはめ込むことができる。公知の歯ブラシと同様に、洗浄部材5は洗浄ゾーン4に対してどのような角度で、また、互いに異なる角度で植設されてもよく、これについては以下で説明することにする。これとは別に、歯ブラシ1の洗浄ゾーン4は受座(図示してない)を有していてもよく、この受座には洗浄部材5を保持するキャリアー要素が収容される。したがって、洗浄部材5を保持するキャリアー要素を取り替えることが可能であり、歯ブラシ1の残りの部分は継続して使用することができる。キャリアー要素は、例えばスナップイン装置により、受座に保持される。
【0061】
本発明による歯ブラシの変形可能要素6について、図2を参照しながら以下でさらに詳しく説明する。
【0062】
図2は、図1に示した本発明による歯ブラシ1の一部を、単純化した概略側面図で示したものである。
【0063】
図2に示した変形可能要素は、洗浄ゾーン4に相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィング8と、洗浄ゾーン4から相対的に遠く配置された第2の柔軟性ウィング9を有し、さらに数個のガイド部材10(4個が示されているが、これより多くても少なくてもよい)を有する。第1および第2のウィング8、9はガイド部材10によって可動的に一緒に保持されている。
【0064】
ウィング8は、歯ブラシに通常使用されるグレードのポリプロピレンのようなプラスチック材料でハンドル2と一体的に作られている。ウィング9とガイド部材10は、Shore D 硬度120以上の圧縮可能な弾性材料を用いて一体的に作られている。
【0065】
ウィング8、9はそれぞれ接触端11とハンドル端12を有する。接触端11では、引張および圧縮ウィング8、9が、例えばポリプロピレンと熱可塑性弾性材料との間で達成される種類の公知の結合手段によって、しっかりと連結される。ハンドル部2に面しているハンドル端12では、ウィング8、9が互いにある距離をおいて離れており、その結果として変形可能要素6は本質的にくさび形をしている。ハンドル端12は本発明の歯ブラシ1のハンドル2にしっかりと連結され、ウィング8はプラスチック材料でハンドル2と一体的に作られ、ウィング9はポリプロピレンと熱可塑性弾性材料との間で達成される種類の公知の結合手段によって連結される。ウィング8および9はそれぞれ、長軸方向Lに対して横方向に、すなわち図2の描写平面に、柔軟に設置される。
【0066】
ウィング8、9はくさびを形成しているが、このくさびは長軸方向の切断では端部11、12により規定される。端部11、12の間で、くさびはどのような設計であってもよく、例えば、凹形、凸形または波形でありうる。例えば、図1に見られるように、ウィング8、9は洗浄部材5に最も近い側で凹形にカーブしている。
【0067】
ウィング8、9間には、リブ形のガイド部材10が長軸方向「L」に対して直角にほぼ直線的に延びており、これらのガイド部材は引張ウィング8を圧縮ウィング9に連結している。
【0068】
図1〜3に示したガイド部材10はウィング9と同じ弾性材料から作られる。
【0069】
図2に示した実施形態では、ガイド部材10が互いからほぼ等しい長軸方向距離で配置されている。これとは別に、個々のガイド部材10間の長軸方向距離は変形可能要素6内でさまざまに変更可能であり、異なっていてもよい。
【0070】
図2Aは、ウィング8、9に接する各ガイド部材10の両端の構成をより詳しく示したものである。ガイド部材10はウィング9と一体的に作られて、連結箇所14で連結されている。連結箇所14では、ガイド部材10が部材10の隣接部と比べて箇所15で薄くなって、ヒンジを形成している。他端では、部材10はポリプロピレンと熱可塑性弾性材料との間で達成される種類の公知の結合手段により連結箇所16でウィング8に連結されており、この連結箇所16では、ガイド部材10が部材10の隣接部と比べて箇所17で薄くなって、ヒンジを形成している。ウィング8上の箇所18には隆起部またはうねが設けられて、部材10とウィング8との接触面を多くしている。
【0071】
図1に示した実施形態のガイド部材10は、引張ウィング8と圧縮ウィング9の間にプレート状のリブとして設けられている。これらのガイド部材10はくさび形スペース19をいくつかの区画19A〜19Eに分割する。
【0072】
図1〜3に示した実施形態では、ほぼまっすぐなガイド部材10が長軸L-L(引張ウィング8と圧縮ウィング9の間に等距離で走行する)に対して直角に配置されている。
【0073】
変形可能要素6は、歯ブラシの内側で長軸方向Lに延びている、くさび形スペース19内に収容される。変形可能要素6のウィング8、9はくさび形スペース19の頂面と底面を形作っている。
【0074】
スペース19の内部、特に区画19A〜19Eの内部には、図1Aに見られるような更なる追加の弾性材料110が存在するが、これは変形可能要素6の弾力性に影響を与え、ひいては歯ブラシ1の変形能にも影響する。弾性材料110はShore A 硬度5〜20のものである。好ましくは、スペース19の内部構造が見えるように弾性材料110を透明なものにする。
【0075】
図1に示した実施形態では、くさび形スペース19はハンドル部2の親指部7まで延びている。変形可能要素6の材料110は、スペース19に汚れや細菌が付かないようにするので衛生状態を向上させる。さもなければ、汚れや細菌がスペース19の内部に入り込んでしまう。
【0076】
図1および2において、本発明の歯ブラシ1は、外部からの力が歯ブラシ1にかかっていない静止位置または基本位置で表示されている。
【0077】
歯を磨いている間の本発明の歯ブラシ1の好ましい変形について、図3を参照しながら以下で説明する。図3は、図2に示した歯ブラシ1を、歯磨き中(洗浄力Fが本発明の歯ブラシ1の洗浄ゾーン4に加わっているとき)の洗浄位置で示したものである。洗浄位置では、歯ブラシ1がハンドル2でユーザーにより把持され、1本以上の歯20の表面に押し付けられる。歯からの洗浄力Fは洗浄ゾーン4に対抗力として作用する。洗浄位置と静止位置とを比較するために、図2に示した変形可能要素6の輪郭が図3では点線で示されている。
【0078】
図3に示した洗浄位置では、静止位置と比較して、洗浄ゾーン4が洗浄力Fに対して弓なりに曲がっている。このプロセスでは、洗浄力Fの接触箇所15が静止位置でのその位置15’に対して変形ルート16だけずれている。洗浄力が加わらない場合にはまっすぐな状態の引張ウィング8および圧縮ウィング9は、力Fの方向に対して洗浄力Fのもとで曲がっている。洗浄力Fが大きければ大きいほど、ウィング8、9は洗浄力が作用するこの方向に対して大きく曲がる。図3に示すように、静止位置と洗浄位置との比較では、接触箇所15がウィング8、9の端部11、12に対して力Fの方向に移動する。接触端11は、静止位置と比較して、オフセット16’だけ長軸方向Lに移動する。洗浄位置では、変形可能要素6がフィンの形状で洗浄力に抗して弓なりに曲がっている。ガイド部材10は静止位置と比較して反時計回りにねじれており、引張ウィング8と圧縮ウィング9の連結箇所14は長軸方向に互いに対して移動してずれている。
【0079】
図3に示した変形可能要素6の変形の結果として、引張ウィング8の上に位置する本発明の歯ブラシ1の洗浄ゾーン4もほぼ同様に変形する。このことは、洗浄ゾーン4に収容された洗浄部材5も変形することを意味する。上述したように、変形可能要素6は洗浄力Fの接触箇所15のまわりで曲がり、洗浄ゾーン4と洗浄部材5がこの領域のまわりで凹形に変形するようになる。このようにして、洗浄部材5(図3では長軸方向Lで両サイドに植設されている)は歯20(ここから洗浄力Fが生じる)のまわりで曲がり、したがってブラッシング中に歯間スペースに押し込まれる。
【0080】
ガイド部材10は静止位置に対して洗浄位置でねじれるので、図3に示した実施形態ではウィング8および9間の距離が短くなり、したがって歯ブラシ1の厚さが薄くなる。このことは特に有利である。なんとなれば、この方法では、到達するのが困難な小臼歯に到達しやすくなるからである。あるいはまた、静止位置において軸L-Lに対して90°より小さい角度でガイド部材10を配置することもできる。この静止位置のデザインは、洗浄位置でのガイド部材10のねじれがウィング9とウィング8間の距離の増加をもたらすことを意味する。洗浄位置では、ウィング8、9が離れてガイド部材10は離れず、変形可能要素が1つのユニットとして変形する。
【0081】
図4は本発明による歯ブラシ1の別の実施形態を示し、この図では図1〜3に示した上記の実施形態との相違点のみを説明することにする。図4に示した歯ブラシ1は、より小さなくさび形スペース19(上記のように材料110を充填してもよい)および図1〜3に示した実施形態よりも小さい変形可能要素6を有する。ウィング8はプラスチック材料製であり、ウィング9は上記のような弾性材料製である。先に示した実施形態の部品と構造および機能が類似しているか同一である部品には、図1〜3と同じ参照番号が用いられている。変形可能要素6は本質的に歯ブラシ1の洗浄部4にだけ延びており、したがってネック3はハンドル2と一体構造となっている。その他の点では、図4に示した実施形態は図1〜3に示した実施形態にほぼ一致する。もちろん、変形可能要素6とくさび形スペース19が図4よりもさらに小さかったり、例えばハンドル部2にまっすぐ延びて、図1よりも大きかったりする他の実施形態も可能である。
【0082】
以下で説明する図5〜8には、変形可能要素6とくさび形スペース19がさまざまに異なる本発明による歯ブラシ1の別の実施形態が示されている。単純化するために、図5〜8は概略図であり、それぞれが図1〜3と相違する本発明の歯ブラシ1の部分を示している。
【0083】
図5〜8に示した実施形態については、図1〜3に示した実施形態との相違点のみを取り扱うことにする。先に示した実施形態の部品と構造および機能が類似しているか同一である部品には図1〜3と同じ参照番号が使用される。
【0084】
図5は、本発明による歯ブラシ1の更なる実施形態を示したものであり、ここでは、変形可能要素6の断面がくさび形断面6Aと長方形断面6B(ウィング8、9が先細になっていない)で構成されている。ウィング8はプラスチック材料製であり、ウィング9とガイド部材10は上記のような弾性材料製である。スペース19は上記のように更なる追加の弾性材料110を含んでいてもよい。長方形断面6Bではガイド部材10の長さが実質的に同じであるが、くさび形断面6Aではガイド部材10の長さが接触端11の方に向かって短くなる。
【0085】
長方形断面部分6Bとくさび形断面部分6Aを組み合わせることによって、洗浄位置での変形可能要素6のカーブは、同じ洗浄力Fを用いた場合、図2に示した実施形態と比較してゆるくなる。
【0086】
図6に示した実施形態では、洗浄位置が実線で、静止位置が点線で表されているが、変形可能要素6の断面は両面が波形くさびとして形成されている。この波形は波形ウィング8、9によって達成される。ウィング8はプラスチック材料製であり、ウィング9とガイド部材10は上記のような弾性材料製である。スペース19は上記のような更なる弾性材料110を含んでいてもよい。変形可能要素6の波形断面は、洗浄ゾーン4と洗浄部材5もまた波形であることを意味する。このことは結果として、特に反応のよい形状、すなわち洗浄位置での歯ブラシ1のカーブの増加または減少をもたらす。くさび形の変形可能要素6は凸形、凹形、または任意の適当な形状でありうる。その形状にかかわりなく、変形可能要素6は洗浄位置で洗浄力に対して曲がる。洗浄位置での洗浄ゾーン4は、洗浄運動の回転軸を保ちながら、実質的に平行に移動する。
【0087】
図7は、本発明による歯ブラシ1の更なる有利な実施形態を斜視図で示したものである。この実施形態では、本発明による歯ブラシ1のウィング8は、互いに横に並んで存在する2つの変形可能要素6a、6bを有する。各変形可能要素6a、6bはそれぞれ上記の実施形態の1つに従って設けられる。変形可能要素6a、6bのそれぞれの上には洗浄ゾーン4a、4bが存在し、それらの上には洗浄部材5が収容される。ウィング8はプラスチック材料製であり、ウィング9とガイド部材10は上記のような弾性材料製である。スペース19は上記のような更なる弾性材料110を含んでいてもよいが、簡略化するために図7では省略してある。
【0088】
図8は、本発明による歯ブラシ1の更なる実施形態を示しており、ここでは、変形可能要素6のウィング8が2つの要素8A、8Bを有し、要素8A、8Bが長軸方向L-Lの両側に互いに横に並んで存在する。ウィング8はプラスチック材料製であり、ウィング9とガイド部材10は上記のような弾性材料製である。スペース19は上記のような更なる弾性材料110を含んでいてもよい。2つの要素8A、8Bおよびウィング9は、上記の実施形態と同様に、それらの接触端11で互いにしっかりと連結される。
【0089】
ウィング9は、線形の連結部材10Aで要素8Aに、やはり線形の別の連結部材10Bで要素8Bに連結される。あるいはまた、2つの要素8A、8Bは、長軸方向に沿って見たときV字形の連結部材を用いて、ウィング9に連結することもできる。要素8A、8Bはプラスチック材料製であり、ウィング9とガイド部材10は上記のような弾性材料製である。スペース19は上記のような更なる弾性材料110を含んでいてもよいが、簡略化するために図8では省略してある。
【0090】
図8に示した実施形態では、2つの要素8A、8Bの上に洗浄ゾーン4Aおよび4Bが存在する。簡略化するために図8には洗浄部材が示されていない。
【0091】
図9は、上記のように配置されたウィング8、9を有する、本発明の歯ブラシ1の更なる実施形態の側面(一部断面)図を示したものである。ウィング8は2つのウィング8A、8Bからなり、これらのウィング8A、8Bは、歯ブラシの横方向(長軸方向L-Lに対して直角)にわたって並んで、この図の平面に垂直な、ブリッスル5により近く設けられており、かつプラスチック材料製である。ウィング9とガイド部材10は上記のような弾性材料製である。ウィング8A、8Bの配置は、図9のA-Aでの断面図である図9Aにより明確に示してある。図9Aは、ガイド部材10が、長軸方向L-Lで見たとき、どのようにほぼV字形をしているか、また、弾性材料110中にどのように埋め込まれているかを示している。ウィング8、9間のスペース19は上記のような更なる弾性材料110を含んでいる。ウィング9は、その2つの端部9A、9Bで、ハンドル2のプラスチック材料に、また、ウィング8の端部に、ポリプロピレンと熱可塑性弾性材料の間で達成される種類の公知の結合手段により連結される。図9の歯ブラシは、おおむね公知のタイプの柔軟性改変領域91、例えばEP-A-0336641に開示されるような折りたたみ領域を有し、また、ハンドル2のプラスチック材料は、おおむね公知のタイプのキャビティ92を含み、このキャビティ92には弾性材料110を充填することができる。図9の歯ブラシのヘッド94では、ウィング8が薄いプラスチック材料のプレート96に形成されており、そこには図9Bに詳しく示されるようにブリッスル95が固定される。プレート96は複数の相対的に薄くした領域97(横方向に整列した溝)を含み、その各々がヒンジとして機能することができる。プレート96を貫通する穴98が存在し、ブリッスル95の末端99(肥厚した「マッシュルーム」に溶融されたもの)がこれらの穴98を通って延びて更なる材料110に埋め込まれている。これは、ブリッスルがブラッシングの力を受けるとき、材料110上でそれらが都合よく跳ね返ることを可能にする。
【0092】
図9Cには、ブリッスル束95を固定するための、より一般的な別の方法が示されており、ここでは、受穴910がプレート96にあらかじめ形成されており、その中にブリッスル束95が従来の金属「アンカー」911を用いて保持される。
【0093】
図10は、上記のように配置されたウィング8、9を有する本発明の歯ブラシ1の更なる実施形態の側面図を示したものである。2つのウィング8A、8Bが、歯ブラシの横方向(長軸方向L-Lに対して直角)にわたって並んで、この図の平面に垂直な、ブリッスル5により近く設けられている。ウィング8A、8Bは上で用いたような圧縮可能な弾性材料で作られる。ウィング9とガイド部材10はプラスチック材料(例えば、ポリプロピレン)で一体的に作られ、ポリプロピレンと熱可塑性弾性材料の間で達成される種類の公知の結合手段によりウィング8に連結される。図10に示したガイド部材10は、それらの端部(かかる端部でガイド部材10が図1に示したものと同様の形状でウィング8、9に連結される)に隣接して薄くなった領域を有する。ウィング8A、8Bの配置は、図10のA-Aでの断面図である図10Aにより明確に示してある。図10Aは、ガイド部材10が、長軸方向L-Lで見たとき、どのようにほぼV字形をしているか、また、弾性材料110中にどのように埋め込まれているかを示している。ウィング8、9間のスペース19は上記のような更なる弾性材料110を含んでいる。ウィング8A、8Bは、それらの2つの長軸方向端部で、ハンドル2のプラスチック材料およびウィング9の端部に、ポリプロピレンと熱可塑性弾性材料の間で達成される種類の公知の結合手段により連結される。歯ブラシのヘッド104は公知のタイプのものであり、WO-A-2005/084486に開示されるタイプの「弓形」構造101により支持された熱可塑性エラストマーパッド100の中にブリッスル5が固定されている。
【0094】
図11は、ウィング8、9(両方ともプラスチック材料製で、例えばポリプロピレン製である)が上記のように配置されている歯ブラシの部分の側断面図を示したものである。それらの間のガイド部材10は、図1〜10に関して上述したような圧縮可能な弾性材料で作られる。ガイド部材10は、その端部(かかる端部でガイド部材10が上記の構造体と同様にウィング8、9に連結される)に隣接して薄くなった領域111を有する。図11のガイド部材10はガイド部材10の射出成形によりウィング8、9間にその場で形成され、ウィング8、9の開口部112に固定される。
【0095】
図12〜15は、本発明の歯ブラシの変形可能要素の部分の4種類の構成を示したものである。
【0096】
図12では、ウィング8、9が上記のように配置されており、両方ともプラスチック材料(例えば、ポリプロピレン)製である。それらの間のガイド部材120は、図1〜11に関して上述したような、比較的より硬質の圧縮可能な弾性材料で作られる。ガイド部材120は、その端部(かかる端部でガイド部材が上記の構造体と同様にウィング8、9に連結される)に隣接して薄くなった領域121を有する。図12のガイド部材120はガイド部材120の射出成形によりウィング8、9間にその場で形成され、ウィング8、9に溶接される。ウィング8、9とガイド部材120の間のスペースには、部材120の材料よりも硬質でない別の圧縮可能な弾性材料110からなる追加的材料が充填される。
【0097】
図13では、ウィング8、9が上記のように配置されており、両方ともプラスチック材料(例えば、ポリプロピレン)製である。それらの間のガイド部材130は、図1〜11に関して上述したような圧縮可能な弾性材料で作られる。ガイド部材130の長軸方向に隣接する対がブリッジ131によって一体的に連結されて、ボックス様構造を形成している。各ガイド部材130は、上記の構造体と同様に、ブリッジ131に隣接して薄くなった領域132を有する。図13のガイド部材130とブリッジ131の一体的ユニットは、射出成形によってウィング8、9間にその場で形成され、各ブリッジ131がこの射出成形法の結果としてウィング8、9に溶接される。ウィング8、9とガイド部材130の間のスペースには、部材130の材料よりも硬質でない別の圧縮可能な弾性材料110が充填される。
【0098】
図14では、ウィング8、9が上記のように配置されており、プラスチック材料(例えば、ポリプロピレン)製である。それらの間のガイド部材140は、図1〜11に関して上述したような圧縮可能な弾性材料で作られる。長軸方向に隣接するガイド部材140は連続ブリッジ141によってはしご様構造に連結されており、各ガイド部材140は上記の構造体と同様にブリッジ141に隣接して薄くなった領域142を有する。ガイド部材140とブリッジ141の一体的ユニットは、射出成形によってウィング8、9間にその場で形成される。各ブリッジ141はこの射出成形法の結果としてウィング8、9に溶接される。ブリッジ141とガイド部材140間のスペースには、部材140の材料よりも硬質でない別の圧縮可能な弾性材料110が充填される。
【0099】
図15では、ウィング8、9が上記のように配置されており、それらの間のガイド部材150と一緒に、図1〜11に関して上述したような圧縮可能な弾性材料で作られる。ウィング8、9とガイド部材150との間のスペースには、部材150の材料よりも硬質でない別の圧縮可能な弾性材料110が充填される。
【0100】
当然のことながら、図面に示した歯ブラシ以外にも、本発明による歯ブラシ1の更なる実施形態が考えられる。例えば、本発明による歯ブラシ1は、ユーザーによる洗浄運動に代えて、または洗浄運動をサポートするために、少なくとも1つのウィング8、9において運動を開始させる作動装置(例えば、電気モーター)を備えていてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用中に洗浄力によって歯に押し付けられる、ブリッスルが上面に植設された少なくとも1つの洗浄ゾーンと、洗浄力によって歯の表面の形状に該洗浄ゾーンを適合させることができる少なくとも1つの変形可能な要素とを有する歯ブラシであって、前記変形可能要素が少なくとも、洗浄ゾーンに相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィングと、洗浄ゾーンから相対的に遠く配置された第2の柔軟性ウィングと、さらに少なくとも1つのガイド部材を有しており、第1および第2のウィングがガイド部材によって可動的に一緒に保持されており、これらのウィングはくさびを形成し、一端で互いにより接近し、他端で互いから遠く離れており、そして少なくとも1つのウィングおよび/または少なくとも1つのガイド部材が圧縮可能な弾性材料で作られていることを特徴とする、上記歯ブラシ。
【請求項2】
前記ウィングの少なくとも1つおよび/または前記ガイド部材の少なくとも1つが圧縮可能な弾性材料で作られており、かつ前記ウィングの少なくとも1つおよび/または前記ガイド部材の少なくとも1つがプラスチック材料で作られている、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記ウィングが、ハンドルから相対的に遠い箇所で一緒に合体し、ハンドルに相対的に近い箇所で互いから遠く離れている、くさびを形成しており、該くさび形はハンドルから長軸方向に先細になっていて、洗浄ゾーンの方に向かって狭くなっている、請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
洗浄ゾーンに相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィングがプラスチック材料製であり、洗浄ゾーンから相対的に遠く配置された第2の柔軟性ウィングが圧縮可能な弾性材料製である、請求項1、2または3に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
洗浄ゾーンに相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィングが圧縮可能な弾性材料製であり、洗浄ゾーンから相対的に遠く配置された第2の柔軟性ウィングがプラスチック材料製である、請求項1、2または3に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
洗浄ゾーンに相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィングと洗浄ゾーンから相対的に遠く配置された第2のウィングが両方ともプラスチック材料製であり、前記ガイド部材の少なくとも1つが圧縮可能な弾性材料製である、請求項1、2または3に記載の歯ブラシ。
【請求項7】
洗浄ゾーンに相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィングがプラスチック材料製であり、洗浄ゾーンから相対的に遠く配置された第2の柔軟性ウィングが圧縮可能な弾性材料製であり、前記ガイド部材の少なくとも1つが圧縮可能な弾性材料製である、請求項1、2または3に記載の歯ブラシ。
【請求項8】
洗浄ゾーンに相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィングが圧縮可能な弾性材料製であり、洗浄ゾーンから相対的に遠く配置された第2の柔軟性ウィングがプラスチック材料製であり、前記ガイド部材の少なくとも1つが圧縮可能な弾性材料製である、請求項1、2または3に記載の歯ブラシ。
【請求項9】
洗浄ゾーンに相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィングと洗浄ゾーンから相対的に遠く配置された第2の柔軟性ウィングが両方とも圧縮可能な弾性材料製であり、前記ガイド部材の少なくとも1つが圧縮可能な弾性材料製である、請求項1、2または3に記載の歯ブラシ。
【請求項10】
洗浄ゾーンに相対的に近く配置された第1の柔軟性ウィングと洗浄ゾーンから相対的に遠く配置された第2の柔軟性ウィングが両方とも圧縮可能な弾性材料製であり、前記ガイド部材の少なくとも1つが圧縮可能な弾性材料製である、請求項1、2または3に記載の歯ブラシ。
【請求項11】
1つのウィングと1つ以上のガイド部材が同じ圧縮可能な弾性材料で一体的に作られている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項12】
前記圧縮可能な弾性材料がShore D 硬度100以上である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項13】
ウィングとウィングの間にスペースがあり、該スペースには、ウィングまたはガイド部材を構成する圧縮可能な弾性材料よりも硬質でない更なる圧縮可能な弾性材料が存在する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項14】
前記更なる弾性材料がShore A 硬度5〜20である、請求項13に記載の歯ブラシ。
【請求項15】
使用中に洗浄力によって歯に押し付けられる、ブリッスルが上面に植設された少なくとも1つの洗浄ゾーンと、洗浄力によって歯の表面の形状に該洗浄ゾーンを適合させることができる少なくとも1つの変形可能な要素とを有する歯ブラシであって、前記変形可能要素が、相対的により硬質な第1の弾性材料で作られた第1の柔軟性部分と、相対的により硬質でない第2の弾性材料で作られた第2の柔軟性部分とを含むことを特徴とする、上記歯ブラシ。
【請求項16】
相対的により硬質な第1の弾性材料がShore D 硬度100以上であり、相対的により硬質でない第2の弾性材料がShore A 硬度5〜20である、請求項15に記載の歯ブラシ。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の歯ブラシの製造方法であって、第1の射出成形作業において、歯ブラシのプラスチック材料の部分を第1の金型で製造し、次にこのプラスチック部分を、圧縮可能な弾性材料の部分の形状を画定したキャビティをもつ第2の射出成形金型に入れ、第2の射出成形作業において、このキャビティに圧縮可能な弾性材料を、プラスチック材料と圧縮可能な弾性材料との溶接をもたらす温度・圧力条件下で注入することにより、圧縮可能な弾性材料の部分を製造することを特徴とする、上記方法。
【請求項18】
プラスチック材料の部分と圧縮可能な弾性材料の部分からなる第2の成形作業の製品を、更なる弾性材料の部分の形状を画定したキャビティをもつ別の射出成形金型に入れ、更なる射出成形作業において、このキャビティに更なる弾性材料を、更なる該材料とプラスチック材料および/または圧縮可能な弾性材料との溶接をもたらす温度・圧力条件下で注入することにより、更なる弾性材料の部分を製造する、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−500063(P2010−500063A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523295(P2009−523295)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058262
【国際公開番号】WO2008/017703
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(501390806)グラクソスミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (20)
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline Consumer Healthcare GmbH & Co. KG
【Fターム(参考)】