説明

歯ブラシ

【課題】滑り止め効果が高く、指あたりも良好で歯磨き操作も容易な歯ブラシを提供すること。
【解決手段】植毛台2の正面側に毛束が植毛されたブラシ部2、柄部3、及びブラシ部2と柄部3とを連結する首部を有する歯ブラシ1であって、柄部3は、該柄部3の軸方向における親指が当たる部位31の少なくとも正面側に、該柄部3の軸方向に直交する断面の形状が外方に向けて凸の凸曲面部Pを有しており、該凸曲面部Pに開口する貫通孔又は凹部からなる陥没部32が、該柄部3の軸方向(X方向)に間隔をおいて複数形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシと指との間の滑りを防止する技術として、歯ブラシに滑り止めの凹凸を設けることが知られている。
例えば、特許文献1には、植毛部のある頭部と首部とハンドル部とを有する歯ブラシ本体のハンドル部の表側及び裏側に、ゴム材料からなる指当て部を、該ハンドル部の表面から盛り上がった状態に設けた歯ブラシが記載されている。
また、特許文献2には、歯ブラシのハンドルの湾曲面に、エラストマー等により形成された滑り止めのリブを設けた歯ブラシが記載されている。
一方、特許文献3には、歯ブラシの手に持つところと植毛部との中間に穴を設けた歯ブラシが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−275027号公報
【特許文献2】特開2001−275751号公報
【特許文献3】実開昭47−14368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の歯ブラシは、指当て部が、ハンドル部の表面から凸曲面状に盛り上がったドーム形状に形成されているため、指は凸曲面の上に配置されにくく、凸曲面の斜面に指が配置されやすい。そのため、凸曲面状に盛り上がった部分は、軸方向の変位に対するストッパーとして用いられることが多い。
また、特許文献2に記載の歯ブラシは、エラストマー等により形成された細幅のリブが設けられ、リブの高さが調整されたものが記載されているが、リブを高くすると指あたりが悪くなり、逆に特許文献2に具体的に示されたリブのように、高さを低くすると充分な滑り止め効果が得られないため調整が困難である。
【0005】
特許文献3に記載の歯ブラシに形成された穴は、歯磨き時に発生した泡を収容し、手に持つところに泡がこないようにするものであるため、軸方向に長い1つの大きな穴が形成されている。仮に穴のあるところを手で持った場合には、指あたりが悪く、また歯磨きの操作がしづらい。
【0006】
従って、本発明の課題は、滑り止め効果が高く、指あたりも良好で歯磨き操作も容易な歯ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、植毛台の正面側に毛束が植毛されたブラシ部、柄部、及びブラシ部と柄部とを連結する首部を有する歯ブラシであって、柄部は、柄部の軸方向における親指が当たる部位の少なくとも正面側に、柄部の軸方向に直交する断面の形状が外方に向けて凸の凸曲面部を有しており、凸曲面に開口する貫通孔又は凹部からなる陥没部が、柄部の軸方向に間隔をおいて複数形成されている、歯ブラシを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の歯ブラシは、滑り止め効果が高く、指あたりも良好で歯磨き操作も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態である歯ブラシの正面側の面を示す図(正面図)である。
【図2】図1に示す歯ブラシのA−A線拡大断面図である。
【図3】図1に示す歯ブラシのB−B線拡大断面図である。
【図4】図1に示す歯ブラシをパームグリップ法で握った状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す図(図2相当図)である。
【図6】本発明の更に他の実施形態を示す図(図2相当図)である。
【図7】本発明の更に他の実施形態を示す図(図2相当図)である。
【図8】本発明の更に他の実施形態を示す図(図2相当図)である。
【図9】本発明の更に他の実施形態を示す図(図2相当図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態である歯ブラシ1を示す図である。
歯ブラシ1は、植毛台21の正面側に毛束22が植毛されたブラシ部2、柄部3、及びブラシ部2と柄部3とを連結する首部4を有している。本実施形態の歯ブラシ1においては、植毛台21の片面に複数のタフト穴(図示せず)が設けられており、各タフト穴に、ポリエチレン、ナイロン等の合成樹脂からなるブリッスルの束であるタフト(毛束)が植毛され固定されている。
本発明においては、歯ブラシ1における、毛束22を有する面側(図1に示される面側)を正面側、その反対側(図2参照)を背面側とする。
【0011】
柄部3は、歯ブラシ1の使用時に、使用者が持つ部分であり、ブラシ部2に連続する首部4に比して、正面視における幅が広く、断面積(図2参照)も大きくなっている。この断面積は、歯ブラシないし柄部の軸方向(X方向)に直交する平面による断面の面積であり、断面の内部に陥没部や中空部を有する場合、この陥没部や中空部の断面積も含めて断面積とする。
首部4は、ブラシ部2及び柄部3それぞれよりも、正面視における幅が狭く、軸方向に直交する断面も小さくなっている。
【0012】
歯ブラシ1の柄部3は、図1に示すように、柄部3の軸方向(X方向)における首部4寄りの部位に、親指が当たる部位31(以下、サムグリップ部31ともいう)を有している。
サムグリップ部31は、歯ブラシ1を、図4に示すようにパームグリップ法で握ったときに親指5が当たる部位である。パームグリップ法は、図4に示すように、柄部3を手の平で包み込むようにして該柄部3を握る持ち方である。本発明における、親指が当たる部位31には、親指が直接接触する柄部3の正面側の面31aのみならず、対応する裏面側の面31bも含まれる。サムグリップ部31の幅W31は、正面視における首部4の最小幅W4に対して、1.5〜5倍であることが好ましい。
【0013】
また、サムグリップ部31は、例えば、柄部3の後端37からの距離L31が、歯ブラシ1の全長(最大長さ)L1に対して30〜70%となる位置から首部までの範囲であることが好ましく、距離L31が、歯ブラシ1の全長(最大長さ)L1に対して40〜60%となる範囲であることがより好ましい。サムグリップ部31は、首部4から柄部3に連続する部分において、首部4の最小幅W4の1.5倍以上となった部分を首部4と柄部3との境とした場合に、この境から柄部3の後端37に向けて親指5の第1関節の長さ(2〜4cm)の領域であるものが好ましい。
【0014】
本実施形態の歯ブラシ1は、図1〜図3に示すように、サムグリップ部31の正面側に、柄部3の軸方向(X方向)に直交する断面(図2参照)の形状が外方(図2の上方)に向けて凸の円弧状をなす凸曲面部Pを有している。本実施形態における凸曲面部Pは、柄部3の軸方向(X方向)に沿う断面(図3参照)の形状も、外方(図3の上方)に向けて凸の円弧状を有している。
凸曲面部Pは、柄部3の軸方向(X方向)に直交する断面における曲率半径rが、2〜20mm、特に5〜15mmであることが、グリップ力ないし滑り止め効果の一層の向上の点から好ましい。
【0015】
また、サムグリップ部31には、図1〜図3に示すように、凸曲面部Pに開口する貫通孔からなる陥没部32が、柄部3の軸方向(X方向)に間隔をおいて複数形成されている。
図4に示すように、歯ブラシ1を、サムグリップ部31の凸曲面部Pに親指5の腹を当てて握ると、親指5の腹の一部が複数箇所において陥没部32内に入り込むと共に、陥没部32間に存在する仕切り壁(仕切り部)33の円弧状の上面33a(図2参照)が親指5の腹に食い込む。これにより、サムグリップ部31と親指5との間に高い摩擦力が生じ、サムグリップ部31と親指5との間に優れた滑り止め効果が得られる。
【0016】
また、凸曲面部Pに仕切り部33で分離した状態に複数の陥没部32を設けているため、一つの陥没部32に親指5の先端や親指5の腹の広い範囲が入り込んでしまうことがなく、指あたりも良く、また凸曲面部Pに親指5の腹をあてた状態のまま、歯ブラシ1を回転ないし揺動させ、歯磨きの操作も行うことも容易である。
【0017】
陥没部32は、柄部3の軸方向(X方向)における隣り合う陥没部32の間隔a(本実施形態においては仕切り壁33の厚みに同じ,図3参照)が1〜3mmであることが好ましく、より好ましくは1.5〜2.5mmである。間隔aを1mm以上とすることで、仕切り壁(仕切り部)33の円弧状の上面33aが親指5の腹に食い込み過ぎず、指あたりが一層良くなる。他方、間隔aを3mm以下とすることで、仕切り壁(仕切り部)33の円弧状の上面33aが親指5の腹に適度に食い込むものとなり、サムグリップ部31と親指5との間に高い摩擦力を生じ、サムグリップ部31と親指5との間に一層優れた滑り止め効果が得られる。間隔aを1〜3mmとすることで、優れた滑り止め効果と良好な指あたりを高いレベルで両立することができる。
【0018】
また、陥没部32は、柄部3の軸方向の寸法b(図3参照)が2〜6mmであることが好ましく、より好ましくは3〜5mmである。前記寸法bを2mm以上とすることで、陥没部32に親指5の先端や親指5の腹が適度に入り込んで、サムグリップ部31と親指5との間に高い摩擦力が生じ、サムグリップ部31と親指5との間に一層優れた滑り止め効果が確実に得られる。他方、前記寸法bを6mm以下とすることで、陥没部32を挟んだ両側の仕切り壁(仕切り部)33に親指5の腹が当たるものとなり、一つの陥没部32に親指5の先端や親指5の腹の広い範囲が入り込むことを防止し、指あたりと歯磨きの操作性を一層向上させることができる。
なお、間隔aと寸法bとの比(a/b)は、0.2〜1.0、特に0.3〜0.7であることが好ましい。
【0019】
また、本実施形態の歯ブラシ1における、貫通孔からなる陥没部32は、1つの陥没部32について、柄部3の軸方向(X方向)において最も長い部分の寸法bに較べて、柄部3の軸方向に直交する方向において最も長い部分の寸法c(図2参照)が大きく、具体的には、開口部の形状が正面視して長孔状となっている。陥没部32または仕切り壁(仕切り部)33の円弧状の上面33aに親指5の腹を広い範囲で接触させ、サムグリップ部31と親指5との間の摩擦力を高くし、サムグリップ部31と親指5との間に一層優れた滑り止め効果を得る点から、陥没部32の形状を、柄部3の横方向(正面視でX方向に直交する方向)に長い形状とすることが好ましい。
優れた滑り止め効果を得るという観点から、陥没部32の軸方向(X方向)の寸法bと直交方向の寸法cとの比(b/c)は、0.1〜1.3が好ましい。さらに軸方向(X方向)にできるだけ多くの陥没部32を確保する観点から、前記比(b/c)が0.2〜1.0、特に0.2〜0.9である扁平な陥没部32であることが好ましい。
【0020】
また、貫通孔からなる陥没部32は、優れた滑り止め効果を得る観点から、柄部3(サムグリップ部31)の幅方向における中央部において、正面側の凸曲面部Pの表面から背面側31bへの深さd(図2参照)が、2mm以上であることが好ましく、3〜15mmであることがより好ましい。この場合の深さdは、凸曲面部Pの隣り合う陥没部32からなめらかに延びて連続する仮想面から、サムグリップ部の背面側までの深さとする。
【0021】
本実施形態の歯ブラシ1について更に説明すると、歯ブラシ1は、歯ブラシ1を、図4に示すようにパームグリップ法で握ったときに、中指6、薬指7又は小指8が当たる部位34も、凸曲面部Pと同様の構成を有する第2凸曲面部P2が形成されている。即ち、第2凸曲面部P2も、軸方向(X方向)に直交する断面の形状が外方に向けて凸の円弧状を有しており、且つ柄部3の軸方向(X方向)に沿う断面の形状が外方に向けて凸の円弧状を有している。
第2凸曲面部P2にも、陥没部32と同様の陥没部35が、柄部3の軸方向(X方向)に間隔をおいて複数形成されている。これにより、歯ブラシ1と手との間に滑りが生じることが一層防止される。
【0022】
歯ブラシ1をパームグリップ法で握ったときに、中指6、薬指7又は小指8が当たる部位34は、柄部3の軸方向においてサムグリップ部31よりも後端37側に位置している。該部位34は、サムグリップ部31と後端37との間の中間領域になるように設計するのが好ましい。また、柄部3は、図1に示すように、サムグリップ部31と、中指6、薬指7又は小指8が当たる部位34との間に、正面視における幅が小さく、柄部3の軸方向に直交する断面積が小さい括れ部36を有することが好ましい。
【0023】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず、適宜変更可能である。
例えば、上述した歯ブラシ1においては、サムグリップ部31に、貫通孔からなる陥没部32を設けたが、それに代えて、例えば図5に示すような、正面側から背面側に貫通する孔でない、底部のある凹部からなる陥没部32’を設けることもできる。凹部からなる陥没部32’は、優れた滑り止め効果を得る観点から、柄部3の幅方向中央部の深さd1(図5参照)が、柄部の幅方向両端寄りの部位の深さd2,d2より深いことが好ましい。
【0024】
凹部からなる図5に示す陥没部32’は、柄部3の軸方向に直交する断面形状が、正面側が開放された略コ字状であり、柄部3の幅方向(図2,図5〜図9の各図の左右方向)と水平な底面部を有していたが、凹部からなる陥没部32’の形状は適宜変更することができる。
例えば、図6に示すように、柄部3の幅方向の両端部それぞれから幅方向中央部に向かって下降する形状の底面部を有するものであっても良い。図6(a)に示すものは、柄部3の軸方向に直交する断面形状が略V字状の底面部を有し、図6(b)のものは、同断面形状が円弧状の底面部を有している。なお、図6(b)に示す実施形態は、正面側の陥没部32’と同じ幅で背面側にも陥没部が形成されている。
【0025】
凹部からなる陥没部32’は、優れた滑り止め効果を得る観点から、柄部3の幅方向中央部の深さd1は、2mm以上であることが好ましく、3〜10mmであることがより好ましく、サムグリップ部31に親指5をあてたときに、親指5が凹部からなる陥没部32'にくいこんだ部分が、陥没部32’の中央部の底部に接触することのない深さが好ましい。また、凸曲面部Pに開口するように設ける陥没部32,32’の数は、2以上であれば良く、3〜10個程度設けることが好ましく、より好ましくは3〜7個である。
また、貫通孔からなる陥没部32と凹部からなる陥没部32’を組み合わせて設けることもできる。この場合、両者の合計が複数であれば良い。
【0026】
また、サムグリップ部31における凸曲面部Pは、図7に示すように、サムグリップ部31の背面側に設けることもできる。さらに、図8に示すように、サムグリップ部31の正面側及び背面側の両方にあっても良い。
また、貫通孔からなる陥没部32は、図9(a)に示すように、正面側と背面側で開口部の面積が異なるように設けたり、図9(b)に示すように、陥没部32内で貫通孔の軸方向に直交する断面積が小さくなる括れた部分を設けることもできる。
【0027】
なお、本発明の歯ブラシにおいては、エラストマー材料による滑り止めを設けない場合であっても、サムグリップ部31に設けた陥没部32(32’)により優れた滑り止め効果が得られるため、ブラシ部の植毛台21、首部4及び柄部3を、合成樹脂で一体成形し、少ない工程で滑り止め効果を有する歯ブラシを製造することもできる。また、さらに滑り止め効果を向上し、感触を良好とし、あるいはデザイン上の点から、所望の部位に、エラストマー材料からなる滑り止め部を設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、滑り止め効果が高く、歯磨き操作も容易な歯ブラシを提供することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 歯ブラシ
2 ブラシ部
3 柄部
31 サムグリップ部(親指が当たる部分)
32 貫通孔からなる陥没部
32’ 凹部からなる陥没部
33 仕切り壁
34 中指、薬指又は小指が当たる部位
4 首部
5 親指
6 中指
7 薬指
8 小指
P 凸曲面部
P2 第2凸曲面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植毛台の正面側に毛束が植毛されたブラシ部、柄部、及びブラシ部と柄部とを連結する首部を有する歯ブラシであって、
前記柄部は、該柄部の軸方向における親指が当たる部位の少なくとも正面側に、該柄部の軸方向に直交する断面の形状が外方に向けて凸の凸曲面部を有しており、該凸曲面部に開口する貫通孔又は凹部からなる陥没部が、該柄部の軸方向に間隔をおいて複数形成されている、歯ブラシ。
【請求項2】
前記陥没部は、前記柄部の幅方向中央部の深さが、該柄部の幅方向両端寄りの部位の深さより深い、請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記陥没部は、前記柄部の軸方向における隣り合う陥没部の間隔が1〜3mmである、請求項1又は2に記載の歯ブラシ、
【請求項4】
前記陥没部は、前記柄部の軸方向の寸法が2〜6mmである、請求項1〜3の何れかに記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記陥没部は、前記柄部の軸方向の寸法に較べて、該軸方向に直交する方向の寸法が大きい、請求項1〜4の何れかに記載の歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−15751(P2011−15751A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161135(P2009−161135)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】