説明

歯ブラシ

【課題】 握力が弱い人や指の折り曲げが不自由な人等の体の一部が不自由な人についても、自身で口腔内の清掃が行えるような使い勝手のよい歯ブラシであって、上の歯と下の歯を同じ感覚でブラッシングすることができる歯ブラシとする。
【解決手段】 先端側に配されて毛束群21が植毛されたブラシ面2aを備えた頭部2と、該頭部2と柄部4とを連結する頚部3と、該頚部3の後に配されて複数の指を挿通させる挿通孔43と該挿通孔43の外周に形成された把持部からなり、前記把持部が前記ブラシ面2aと同じ向きに形成された第一の把持部41と、前記挿通孔43を挟んで第一の把持部41と対向する位置に形成された第二の把持部42から構成されている。また、前記頚部3と第一の把持部41と第二の把持部42とが略平行に配され、前記頚部3が、前記第一の把持部41と前記第二の把持部42との中心に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内の清掃に用いる歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な歯ブラシは、先端側に配されて毛束群が植毛されたブラシ面を備えた頭部と、該頭部と柄部とを連結する頚部と、該頚部の後に配された棒形状(ストレート形状)の柄部からなる。歯ブラシの使用者は上記ストレート形状の柄の一部を把持部とし、このストレート形状の把持部を片手で握って歯磨き等の口腔内の清掃を行っているが、このストレート形状の把持部では不都合が生じる場合がある。すなわち、使用者は必ずしも健常者(健常児)ではない場合があり、握力が弱いときや、一部の指の折り曲げが不自由なとき等には、上記ストレート形状の把持部を片手で握って歯磨きを行うことが困難である。このため、握力が弱い人や、指の折り曲げが不自由な人等の体の一部が不自由な人についても、自身で口腔内の清掃が行えるような把持部を有する歯ブラシの検討がなされている。また、片手で握り易くすること以外にも装飾的な意味合い等によっても、上記ストレート形状の柄とは異なる形状の柄の検討がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−14659号公報
【特許文献2】実用新案登録第3133345号公報
【特許文献3】実開昭47−9672号公報全文
【特許文献4】実開昭63−166041号公報
【0004】
上記特許文献1には、柄の把持部の両側にそれぞれ弓状の把持用補助部材が設けられた歯ブラシが開示されている。特許文献1記載の歯ブラシの使用方法については明記されていないが、使用者が上記把持部を握ったときに、上記弓状の把持用補助部材の片方または両方が手に引っ掛かることを想定しているものと考えられる。つまり、ストレート形状の把持部を握ることについては従来と同様であるが、上記弓状の把持用補助部材を手に引っ掛けるようにすることで、手から脱落することを防止したものである。特許文献1記載の歯ブラシは、先端側に配されて毛束群が植毛されたブラシ面と上記弓状の把持用補助部材とが直交するように配されている。
【0005】
上記特許文献2には、柄の途中にリング部を有する歯ブラシが開示されている。この歯ブラシは3つの指で把持部を把持するものであり、リング部には1本の指が挿通され、このリング部に対してヘッド部11が約30度の角度に設けられている。
【0006】
上記特許文献3には、柄の後に球形状の把持部を有する歯ブラシが開示されている。この球形状の把持部は、先端側に配されて毛束群が植毛されたブラシ面の長さの2倍程度の直径の球形状であり、上記球形状の把持部の外周面を掌で握るように使用する。その理由は、球形状はどの角部から掌で握っても握り方が同じになるため、磨く箇所に合わせてブラシの傾きや角度を修正し易いと説明されている。
【0007】
上記特許文献4には、柄のハンドル本体の端部から植毛部側へ向かう補助ハンドルを形成した歯ブラシが開示されている。この補助ハンドルの先端は柄から離れた位置に配されており(柄と連結されておらず)、U字形状の把持部となっている。使用に際しては、補助ハンドルとハンドル本体との間の隙間に指を挿入してハンドル本体または補助ハンドルを把持するか、若しくはハンドル本体と補助ハンドルをともに掌中に収めて把持する。特許文献4記載の歯ブラシは、先端側に配されて毛束群が植毛されたブラシ面と上記U字形状の把持部とが直交するように配されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、握力が弱い人や指の折り曲げが不自由な人等にとって、歯磨きにおける問題となるのは、上の歯と下の歯を、歯ブラシの柄部を持ち変えるようにしたときに、誤って落とす問題と、上の歯と下の歯を同じ感覚(距離感や同じ力の入れぐあい)でブラッシングできる歯ブラシがないことである。手が不自由である人等にとって、最初に上の歯と下の歯のいずれかの歯をブラッシングしても、これら上下位置が変わると、同じ感覚で、しっかりと把持してブラッシングできないことが多かった。なお、本明細書では、握力が弱い人や指の折り曲げが不自由な人等には、手が不自由で、足でしか歯を磨くことが出来ない人も含まれるものとして説明する。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1〜4は、いずれもこのことを考慮していない。しかも特許文献1記載の歯ブラシは、ストレート形状の把持部を握ることについては従来と同様であり、歯磨きの際には歯ブラシの方向や角度を変えながら歯を磨くため、歯ブラシの方向や角度によっては上記弓状の把持用補助部材が邪魔になる恐れが生じる。また、持ち替える際等に落下させる恐れもある。特許文献2記載の歯ブラシは、3つの指で把持部を把持するため、手先がある程度器用でないと使いこなすことが困難であり、使用時の安定性に欠ける。特許文献3記載の歯ブラシは、上記球形状の把持部の外周面を掌で握るように使用するものであるから、通常の歯ブラシよりも使い勝手が悪いものである。また、上記特許文献4記載の歯ブラシは、上記補助ハンドルの先端が柄と連結されておらず、位置が不安定となり、強度も弱いものである。また、特許文献3記載の歯ブラシは、上記球形状の把持部の外周面を掌で握るように使用するものであるから、通常の歯ブラシよりも使い勝手が悪いものである。つまり、従来の歯ブラシは使い勝手が悪く、握力が弱い人や指の折り曲げが不自由な人等の体の一部が不自由な人等が、自身で口腔内の清掃が行えるようにはなっていないのが実情である。
また、特許文献1、4に記載の歯ブラシは、先端側に配されて毛束群が植毛されたブラシ面と上記リング部とが直交するように配され、特許文献2に記載の歯ブラシは、ブラシ部が30度という角度となっているので、手首を大きく捻らないと歯磨きできないか、特定の角度でしか歯磨きできず、上の歯と下の歯の両方をしっかりと把持してブラッシングできないことが予想される。
【0010】
そこで本発明は、握力が弱い人や指の折り曲げが不自由な人等の体の一部が不自由な人についても、自身で口腔内の清掃が行えるような使い勝手のよい歯ブラシであって、上の歯と下の歯を同じ感覚でブラッシングすることができる歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の歯ブラシは、先端側に配されて毛束群が植毛されたブラシ面を備えた頭部と、該頭部と柄部とを連結する頚部と、該頚部の後に配されて複数の指を挿通させる挿通孔と当該挿通孔の外周に形成された把持部からなる環状の柄部とを有し、前記把持部が前記ブラシ面と同じ向きに形成された第一の把持部と、前記挿通孔を挟んで第一の把持部と対向する位置に形成された第二の把持部から構成されることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、使用者は、前記環状の柄部に形成された挿通孔に複数の指を挿通させ、第一の把持部または第二の把持部を把持して口腔内の清掃を行うこととなる。第一の把持部は前記ブラシ面と同じ向きに形成されており、第二の把持部は前記挿通孔を挟んで第一の把持部と対向する位置に形成されていることから、口腔内の清掃を行う際には、歯の位置に応じて第一の把持部を把持するか第二の把持部を把持するかを選択すればよく、手首をほとんど捻らなくとも歯磨き等をすることができる。そして前記挿通孔に複数の指を挿通させ、複数の指で手の内側になるように第一の把持部又は第二の把持部を把持すると、手の外側(甲側)が反対の第二の把持部又は第一の把持部に接触して、握力が弱い人や指の折り曲げが不自由な人であっても歯ブラシを持つことが容易であり、前記ブラシ面と歯の向きも合わせやすい。仮に、指先が前記把持部から離れたとしても、前記挿通孔に複数の指が挿通されているので手から脱落することが防止される。
【0013】
本発明としては、前記頚部と第一の把持部と第二の把持部とが略平行に配され、前記頚部が前記第一の把持部と前記第二の把持部との中心に位置することが好ましい。
本発明によれば、歯の位置に応じて第一の把持部を把持するか第二の把持部を把持するかを選択するが、例えば、上の歯のブラッシングと下の歯のブラッシングとで第一と第二の把持部を持ち替えて使用することができ、この場合も、前記頚部が中心軸となるので、上下回転させても歯までの位置感覚・距離感覚に違和感なく使用できる。
【0014】
本発明としては、前記把持部を把持するときに親指を当てるための凹曲面が、前記第一の把持部と前記頚部との付け根及び前記第二の把持部と前記頚部との付け根の両方に形成されていることが好ましい。
本発明によれば、使用者は、前記環状の柄部に形成された挿通孔に親指を除いた複数の指を挿通させ、第一の把持部または第二の把持部を把持して、前記第一の把持部と前記頚部との付け根に形成された凹曲面か、又は前記第二の把持部と前記頚部との付け根に形成された凹曲面のいずれかに親指を当てた状態で、口腔内の清掃を行うこととなる。前記把持部(第一の把持部または第二の把持部)と前記頚部との付け根に形成された凹曲面に親指を当てることで、歯ブラシの頭部をぐらつかせることなくしっかりと把持することが容易である。
【0015】
本発明は、前記把持部のうち、第二の把持部の幅が第一の把持部の幅よりも若干小さく設定されることが好ましい。主の握り方をまず特定して、第一の把持部を把持するとき(下歯を磨くとき)は、前記挿通孔に複数の指を挿通させてから第一の把持部を把持するため、第一の把持部の幅は指の根元に接触する程度の大きさが好ましい。そしてこの状態から、第二の把持部を把持するとき(上歯を磨くとき)は、第二の把持部を掌で覆うようにしながら前記挿通孔に複数の指を挿通させるため、第二の把持部の幅は複数の指を十分な長さで挿通させる程度の大きさが好ましい。よって、前記把持部のうち、第二の把持部の幅が第一の把持部の幅よりも若干小さく設定される。
【0016】
本発明は、前記第一の把持部の内側面が前記ブラシ面と略平行に配されており、かつ、前記第二の把持部の内側面が前記ブラシ面と略平行に配されていることが好ましい。本発明によれば、第一の把持部を把持するときには、親指を除く複数の指の根元部分を前記第一の把持部の内側面に沿わせて持ち易く、前記ブラシ面と歯の向きも合わせやすい。また、第二の把持部を把持するときには、親指を除く複数の指の関節部分を前記第二の把持部の内側面に沿わせて持ち易く、前記ブラシ面と歯の向きも合わせやすい。
【0017】
本発明は、前記把持部の後端側に少なくとも小指を引っ掛けることが可能な大きさの凹部が設けられていることが好ましい。
【0018】
例えば、手が大きい人の場合は、前記挿通孔に親指を除く全ての指(4つの指)を挿通させ難い場合が生じるが、本発明によれば、前記把持部の後端側に設けられた所定の大きさの凹部に小指を引っ掛けることで、安定して把持することが容易である。また、使用者は、状況や好みに応じて前記把持部の後端側に設けられた凹部に小指等を沿わせることで(更に薬指を沿わせても良い)、歯ブラシを先端方向に押すように動かすときの補助としたり、小指の置き台としたりでき、使い心地を向上させることができる。すなわち、握力が弱い人や指の折り曲げが不自由な人等のために、多様な引っ掛け方(握り方)が可能になっている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の歯ブラシによれば、使用者は、前記環状の柄部に形成された挿通孔に複数の指を挿通させて前記把持部のうち第一の把持部を把持して上の歯を磨いたり、前記把持部のうち第二の把持部を把持して下の歯を磨いたり、使用者の好みや都合に応じて前記把持部の持ち替えを行うことで前記ブラシ面と歯の向きを合わせやすい。また、前記環状の柄部に形成された挿通孔に複数の指を挿通させて前記把持部を把持するので、握力が弱い人や指の折り曲げが不自由な人であっても歯ブラシを持つことが容易である。そして仮に、指先が前記把持部から離れたとしても、前記挿通孔に複数の指が挿通されているので手から脱落することが防止される。また、前記先端側にブラシ面が設けられる頚部が前記第一の把持部と前記第二の把持部との中心に位置することにより、柄部を持ち変えても、歯と毛束群との距離感を一定に保ち同じ力の入れぐあいでブラッシングすることができる。さらに、使用者は、状況や好みに応じて前記把持部の後端側に設けられた所定の大きさの凹部に小指等を沿わせることで、歯ブラシを先端方向に押すように動かすときの補助としたり、小指の置き台としたりでき、使い心地を向上させることができる。これら本発明によって、握力の弱い老人や体の一部が不自由な人についても、自身で口腔内の清掃が行えるような使い勝手のよい歯ブラシが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態の歯ブラシの平面図である。
【図2】上記実施形態の歯ブラシの正面図である。
【図3】上記実施形態の歯ブラシの背面図である。
【図4】上記実施形態の歯ブラシの側面図であり、図4(a)は左側面図であり、図4(b)は右側面図である。
【図5】上記実施形態の歯ブラシを平面側から見た断面図である。
【図6】上記実施形態の歯ブラシの第一の把持部を把持した状態を例示する図である。
【図7】上記実施形態の歯ブラシの第一の把持部を把持した状態を例示する図である。
【図8】上記実施形態の歯ブラシの第二の把持部を把持した状態を例示する図である。
【図9】上記実施形態の歯ブラシの第二の把持部を把持した状態を例示する図である。
【図10】本発明を適用した第2の実施形態の歯ブラシの平面図である。
【図11】上記実施形態の歯ブラシの側面図であり、図11(a)は左側面図であり、図11(b)は右側面図である。
【図12】本発明を適用した第3の実施形態の歯ブラシの平面図である。
【図13】上記実施形態の歯ブラシの柄部から頚部及び頭部を取り外した状態を示す平面図である。
【図14】上記実施形態の歯ブラシの柄部に頚部及び頭部を収納した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施の形態)
本発明を適用した第1の実施の形態の歯ブラシを図1から図5に示す。ここで、図1は本実施形態の歯ブラシ1の平面図であり、図2はその正面図であり、図3はその背面図であり、図4(a)はその左側面図であり、図4(b)はその右側面図であり、図5は歯ブラシ1を平面側から見た断面図である。
本実施形態の歯ブラシ1は、先端側に配され、毛束群21が植毛されたブラシ面2aを備えた頭部2と、頭部2の後に一体形成された頚部3と、頚部3の後に一体形成された柄部4とを備える(図1)。頭部2と頚部3と柄部4とは、ポリプロピレンやABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン−スチレン)等のプラスチック製であり、金型等によって一体成型される。頭部2と頚部3と柄部4の材質としては、上記プラスチック製の他、木製や軽金属製としてもよい。頭部2は正面から見て略角丸四角形状を呈しており、ナイロンや豚毛等の毛束群21がブラシ面2aに植毛されている。頚部3は、頭部2と柄部4とを連結しており、頭部2よりも幅が細く形成された頚部3が棒状に伸びて柄部4へと繋がっているが、頚部3は、第一の把持部41と第二の把持部42との中心に位置する(図1)。
【0022】
本実施形態の歯ブラシ1の柄部4は、平面視で略楕円形状を呈しており、柄部4の中央に複数の指を挿通させる略角丸四角形状の挿通孔43を有する(図1)。また、この柄部4は、正面から見ると中央付近が膨らんだ棒形状となっており(図2)、背面から見ても中央付近が膨らんだ棒形状となっている(図3)。環状の柄部4は、挿通孔43と該挿通孔43の外周に形成された第一の把持部41及び第二の把持部42からなる。第一の把持部41は毛束群21が植毛されているブラシ面2aと同じ向きに形成されており、第二の把持部41は頭部2の背面2bと同じ向きに形成されている(図1)。つまり、第二の把持部42は、挿通孔43を挟んで第一の把持部41と対向する位置に形成されている。第一の把持部41は毛束群21が植毛されているブラシ面2aと同じ向きに形成されている理由は、主の握り方を特定しておくことが体(手)の不自由な人にとって好ましいからである。環状の柄部4のサイズは、掌に収まる程度の大きさに設定される。これは、掌でも歯ブラシ1の環状の柄部4を持ち易い大きさとするためである。頭部2と頚部3を足した長さは、環状の柄部4の長さよりも小さくて、かつ、環状の柄部4の半分の長さよりも大きい長さに設定される。これは、口腔内の清掃に必要な長さとし、かつ、操作しやすい長さとするためである。
【0023】
本実施形態の歯ブラシ1の柄部4は、前記第一の把持部41の内側面41bと前記頭部2の背面2bとが略平行に配されており、前記第二の把持部42の内側面42aと前記ブラシ面2aとが略平行に配されており、前記ブラシ面2aと前記頭部2の背面2bとが略平行に配されている(図1)。つまり、第一の把持部41の内側面41bが前記ブラシ面2aと略平行に配されており、かつ、前記第二の把持部42の内側面42aが前記ブラシ面2aと略平行に配されていることとなる。そして、第一の把持部41と第二の把持部42との間隔は、複数の指で手の内側になるように第一の把持部41又は第二の把持部42を把持すると、手の外側(甲側)が反対の第二の把持部42又は第一の把持部41に当たることで、環状の柄部に手に接触(引っかかる)する間隔になっている。
本実施形態によれば、第一の把持部41を把持するときには、親指を除く複数の指の根元部分を前記第一の把持部41の内側面41bに沿わせて持ち易く、前記ブラシ面2aと歯の向きも合わせやすい。また、第二の把持部42を把持するときには、親指を除く複数の指の関節部分を前記第二の把持部42の内側面42aに沿わせて持ち易く、前記ブラシ面2aと歯の向きも合わせやすい。
また、前記頚部3は、第一の把持部41と第二の把持部42とが略平行に配されている。そして、前記頚部3が、第一の把持部41第二の把持部42との中心に位置する。これは、手が不自由である人等にとって、最初に上の歯と下の歯のいずれかの歯をブラッシングしても、これら上下位置が変わると、上下の歯を同じ感覚でブラッシングできないがあることを考慮したものである。ここで、本実施の形態では、第一の把持部41は毛束群21が植毛されているブラシ面2aと同じ向きに形成されているが、ブラシ面2aに植毛される頚部3の毛束群21は、第一の把持部41側に向かって、第二の把持部42側から遠くなるが、毛束群21は柔軟なために、中心となることで重要なことは、前記先端側にブラシ面が設けられる頚部3である。なお、毛束群21は、第一の把持部41側に向かってのみならず、第二の把持部42側にも向かって、上下に設けることも可能である。
【0024】
本実施形態の歯ブラシ1の柄部4は、前記第一の把持部41の後側と前記第二の把持部42の後側とが接続部44にて接続されており、これらによって柄部4を環形状としている。本実施形態では、接続部44の外側面44cは歯ブラシ1の後端側に向かってアーチ状に形成されている(図1)。例えば使用者が歯ブラシ1を把持する際に、その握力を十分にコントロールできないことが想定されるが、握力が必要以上に大きいときでも、接続部44が第一の把持部41の後端と第二の把持部42の後端とを連結しているので、第一の把持部41と第二の把持部42とが接近し過ぎたり離れ過ぎたりすることがなく、歯ブラシ1全体としての機械的な強度を高めている。
前記第一の把持部41の後側は、接続部44の外側面44cよりも延設されて延設部411が形成されており、前記第二の把持部42の後側は、接続部44の外側面44cよりも延設されて延設部421が形成されている(図1)。よって、接続部44の外側面44cと延設部411と延設部421とで、凹部が形成され、前記把持部41,42の後端側に空間5が形成される(図1)。この凹部は、少なくとも小指を引っ掛けることが可能な大きさとなっている。
【0025】
本実施形態では、前記第一の把持部41の側面、前記第二の把持部42の側面、及び前記凹部の側面44c等が面取りされている(図1)。面取り形状は、R面取りである。本実施形態によれば、尖った角がないため、把持し易いものとなる。
【0026】
本実施形態では、前記第一の把持部41と前記頚部3とが連結された付け根の外側側面に凹曲面31が形成されており、前記第二の把持部42と前記頚部3とが連結された付け根の外側側面に凹曲面32が形成されている(図1)。凹曲面31は、前記第一の把持部41を把持するときに親指を当てるための凹曲面であり、凹曲面32は、前記第二の把持部42を把持するときに親指を当てるための凹曲面である。
【0027】
本実施形態の歯ブラシ1の第一の把持部41を把持した状態を図6と図7に例示する。また、本実施形態の歯ブラシ1の第二の把持部42を把持した状態を図8と図9に例示する。
本実施形態によれば、例えば、使用者は、前記環状の柄部4に形成された挿通孔43に人差し指と中指と薬指と小指とを挿通させ、第一の把持部41を把持して、前記第一の把持部41と前記頚部3との付け根に形成された凹曲面31に親指を当てた状態で、口腔内の清掃を行う(図6)。例えば、使用者は、前記環状の柄部4に形成された挿通孔43に人差し指と中指と薬指と小指とを挿通させ、第二の把持部42を把持して、前記第二の把持部42と前記頚部3との付け根に形成された凹曲面32に親指を当てた状態で、口腔内の清掃を行う(図8)。このように、第一の把持部41(または第二の把持部42)と前記頚部3との付け根に形成された凹曲面31(または凹曲面32)に親指を当てることで、歯ブラシ1の頭部をぐらつかせることなくしっかりと把持することが容易である。
また例えば、手が大きい人の場合は、前記挿通孔43に親指を除く全ての指(4つの指)を挿通させ難い場合が生じる。この場合は、例えば、使用者は、前記環状の柄部4に形成された挿通孔43に人差し指と中指と薬指とを挿通させ、第一の把持部41を把持して、前記把持部41,42の後端側に設けられた所定の大きさの凹部(接続部44の外側面44cと延設部411と延設部421とで形成された凹部)に小指を引っ掛けて、前記第一の把持部41と前記頚部3との付け根に形成された凹曲面31に親指を当てた状態で、口腔内の清掃を行う(図7)。例えば、使用者は、前記環状の柄部4に形成された挿通孔43に人差し指と中指と薬指とを挿通させ、第二の把持部42を把持して、前記把持部41,42の後端側に設けられた所定の大きさの凹部に小指を引っ掛けて、前記第二の把持部42と前記頚部3との付け根に形成された凹曲面32に親指を当てた状態で、口腔内の清掃を行う(図9)。このように、前記把持部41,42の後端側に設けられた所定の大きさの凹部に小指を引っ掛けることで、安定して把持することが容易である。また、使用者は、状況や好みに応じて前記把持部41,42の後端側に設けられた凹部に小指等(小指、または小指と薬指)を沿わせることで、歯ブラシ1を先端方向に押すように動かすときの補助としたり、小指の置き台としたりでき、使い心地を向上させることができる。
【0028】
本実施形態では、前記把持部41,42のうち、第二の把持部42の幅42wが第一の把持部41の幅41wよりも若干小さく設定される(図5)。より具体的には、第一の把持部41の幅41wが5mmから30mmの範囲で設定され、第二の把持部42の幅42wが4mmから29mmの範囲で設定され、第二の把持部42の幅42wが第一の把持部41の幅41wよりも1mmないし20mm小さく設定される。これは、次の理由による。まず、第一の把持部41を把持するときは、前記挿通孔43に複数の指を挿通させてから第一の把持部41を把持するため、第一の把持部41の幅41wは指の根元に接触する程度の大きさが好ましい。そして、第二の把持部42を把持するときは、第二の把持部42を掌で覆うようにしながら前記挿通孔43に複数の指を挿通させるため、第二の把持部42の幅42wは複数の指を十分な長さで挿通させる程度の大きさが好ましい。また、上の歯をブラッシングする場合よりも、下の歯のブラッシングするときの方が手首をより回転させる必要があることから、手がこの回転の邪魔にならないようにするためでもある。よって、前記把持部41,42のうち、第二の把持部42の幅42wが第一の把持部41の幅41wよりも若干小さく設定される。
【0029】
上述した第1の実施形態の歯ブラシ1によれば、使用者は、前記環状の柄部4に形成された挿通孔43に複数の指を挿通させて前記把持部41または42のうち第一の把持部41を把持して上の歯を磨いたり、前記把持部41または42のうち第二の把持部42を把持して下の歯を磨いたり、使用者の好みや都合に応じて前記把持部41,42の持ち替えを行うことで前記ブラシ面2aと上の歯と下の歯に向きを合わせやすい。本実施の形態では、太さの太い第一の把持部で下の歯を磨くが、この握り方ときは、上の歯は歯磨きにくくなる(ひねりが大きくなるからである)。一方、太さの細い第二の把持部で上の歯を磨くが、この握り方ときは、手のひねりをそれほど大きくしなくとも、下の歯を磨くことができる。なお、第一の把持部41の大きさや形状を第二の把持部42と同じとして、対称な形状にすることも可能である。
また、前記環状の柄部4に形成された挿通孔43に複数の指を挿通させて前記把持部41または42を把持するので、握力が弱い人や指の折り曲げが不自由な人であっても歯ブラシ1を持つことが容易である。そして仮に、指先が前記把持部から離れたとしても、前記挿通孔43に複数の指が挿通されているので手から脱落することが防止される。また、使用者は、状況や好みに応じて前記把持部41,42の後端側に設けられた所定の大きさの凹部に小指等を沿わせることで、歯ブラシ1を先端方向に押すように動かすときの補助としたり、小指の置き台としたりでき、使い心地を向上させることができる。
【0030】
(第2の実施の形態)
本発明を適用した第2の実施の形態の歯ブラシを図10と図11に示す。本実施の形態の歯ブラシ1aは、洗面台等に、頭部2を上側として立設させることが容易な歯ブラシである。ここで、図10は本実施形態の歯ブラシ1aの平面図であり、図11(a)はその左側面図であり、図11(b)はその右側面図である。なお、上述した実施の形態と重複する箇所の説明については、同一の符号を用いることでその説明を省略する。
【0031】
本実施形態の歯ブラシ1aは、接続部44の外側面44dが平坦な形状に形成されており(図10)、洗面台等に、頭部2を上側として立設させることが容易である。
【0032】
(第3の実施の形態)
本発明を適用した第3の実施の形態の歯ブラシを図12から図14に示す。本実施の形態の歯ブラシ1bは、外出の際などに、コンパクトにして携帯することが容易な組み立て方式の歯ブラシである。ここで、図12は本実施形態の歯ブラシ1bの平面図であり、図13は本実施形態の歯ブラシ1bの柄部4から頚部3及び頭部2を取り外した状態を示す平面図であり、図14は本実施形態の歯ブラシ1bの柄部4に頚部2及び頭部3を収納した状態を示す平面図である。なお、上述した実施の形態と重複する箇所の説明については、同一の符号を用いることでその説明を省略する。
【0033】
本実施形態の歯ブラシ1bは、図示しないが柄部4の先端側に所定形状の貫通孔が形成されており、この貫通孔に対応して嵌合する突起部35が頚部2の後端側に形成される(図13)。上記所定形状の貫通孔としては、例えば四角形の孔や台形の孔が挙げられる。例えば四角形の孔であれば、ブラシ面2aの向きを第一の把持部41と同じ向きとしたり、ブラシ面2aの向きを第二の把持部42と同じ向きとすることができ、使用者の好みに応じて、ブラシ面2aの向きを使い分けることができる。また例えば台形の孔であれば、ブラシ面2aの向きを第一の把持部41と同じ向きと決めたならば、誤ってブラシ面2aの向きを第二の把持部42と同じ向きとすることがないため、ブラシ面2aの向きの付け間違いを防止できる。
【0034】
本実施形態によれば、歯ブラシ1bを使用する際には、頚部2の後端側に形成された所定長さの突起部35を柄部4の先端側に形成された所定形状の貫通孔に外側から挿入して嵌め込み、頚部2を柄部4に取り付けて使用する(図12)。そして外出の際などに携帯するときには、柄部4から頚部2を引き抜いて取り外し(図13)、取り外した頚部3及び頭部2を柄部4に形成された挿通孔43に収納し、頚部2の突起部35を柄部4の先端側に形成された所定形状の貫通孔に内側から挿入して嵌め込み、取り付ける(図14)。このように、本実施形態の歯ブラシ1bは、旅行や外出の際などに、コンパクトにして携帯することが容易である。なお、本実施形態では、接続部44の外側面44eは外側に向かってアーチ形状となっており(図12)、携帯する際には、全体的に流線形で丸みを帯びた形状とすることで、携帯し易くなっている。
【0035】
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。毛束群21の植毛配列や植毛形状は、用途に応じて任意に設定でき、例えばワンタフト歯ブラシとしたり、奥歯や前歯等の所定の歯専用の毛先とすることができる。歯ブラシ本体の材質は、ポリプロピレンやABS樹脂等のプラスチックに限られるものではなく、易変形性の高いゴム性質のプラスチックや、プラスチックの表面にラバー層を設けたり、形状記憶合金製としてもよい。また、専用の毛先を有する頭部2及び頚部2を複数種類用意しておき、用途に応じて柄部4に着脱して使用してもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
1,1a,1b 歯ブラシ、
2 頭部、
2a ブラシ面、
21 毛束群、
3 頚部、
4 環状の柄部(柄部)、
41 第一の把持部(把持部)、
42 第二の把持部(把持部)、
43 挿通孔、
44 接続部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に配されて毛束群が植毛されたブラシ面を備えた頭部と、該頭部と柄部とを連結する頚部と、該頚部の後に配されて複数の指を挿通させる挿通孔と当該挿通孔の外周に形成された把持部からなる環状の柄部とを有し、
前記把持部が前記ブラシ面と同じ向きに形成された第一の把持部と、前記挿通孔を挟んで第一の把持部と対向する位置に形成された第二の把持部から構成されることを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記頚部と第一の把持部と第二の把持部とが略平行に配され、前記頚部が前記第一の把持部と前記第二の把持部との中心に位置することを特徴とする請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記把持部を把持するときに親指を当てるための凹曲面が、前記第一の把持部と前記頚部との付け根及び前記第二の把持部と前記頚部との付け根の両方に形成されていることを特徴とする請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記把持部の後端側に少なくとも小指を引っ掛けることが可能な大きさの凹部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−78556(P2011−78556A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233104(P2009−233104)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(502165551)株式会社歯愛メディカル (5)
【Fターム(参考)】