説明

歯ブラシ

【課題】良好な清掃性が得られると共に、使用者に痛みを与え難く、使用感が向上する歯ブラシを提供すること。
【解決手段】本発明の歯ブラシ1は、ブリッスル2が複数植毛されたブラシ部11を備える。歯ブラシ1のブリッスル2は、棒状の芯部21と、芯部21の少なくとも側面全体を鞘状に覆う発泡体22とを有している。芯部21は、平均厚みが0.2〜0.6mmの合成樹脂からなる。発泡体22は、気泡の平均セル面積が150〜10000μm2であり、スキン層の平均厚みが100μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリッスルが複数植毛されたブラシ部を備える歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、歯ブラシは、複数のブリッスルからなる毛束を、平線植毛や融着植毛等によって植毛台に形成された植毛穴に複数植毛し固定することにより形成される。そして、歯ブラシは、歯の汚れを落とす高い刷掃力と良好な感触が求められ、種々のブリッスルが開発されている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、ブリッスルの腰を強くしながら歯茎当たりのソフトな感触を得ることを目的として、芯部と芯部を被覆する鞘部の2層複合構造からなる芯鞘型複合モノフィラメントからなるブリッスルであって、少なくとも一端側の端部から所定の範囲の芯部が露出しているブリッスルを植設した歯ブラシが記載されている。
【0003】
また、特許文献3には、歯ブラシ用毛の曲げ回復性、耐破損性、耐久性を高めることを目的として、芯部と芯部を被覆する少なくとも2層以上の樹脂層を備え、芯部と最外層との間に中間層を備えた歯ブラシ用毛が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−253712号公報
【特許文献2】特開2006−149419号公報
【特許文献3】特開2007−000519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2には、ブリッスルの先端は芯部のみで構成され、先端部が細いことが記載されている。しかし、先端部が細いために歯面の清掃力は弱い一方、ブリッスル先端に露出している芯部を太くした場合は、特許文献1、2に記載のように、使用者の歯茎を傷つけてしまう可能性が高くなる。また、特許文献3に記載の多層樹脂からなるブラシ毛も、太くすれば腰が強くなりすぎて歯茎を傷つける虞がある。
従って、本発明の課題は、ブリッスルを太くして歯面の刷掃力を高くしながらソフトな感触を併せもち良好な清掃性が得られる歯ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ブリッスルが複数植毛されたブラシ部を備える歯ブラシであって、ブリッスルは、棒状の芯部と、芯部の少なくとも側面全体を鞘状に覆う発泡体とを有し、芯部は、平均厚みが0.2〜0.6mmの合成樹脂からなり、発泡体は、気泡の平均セル面積が150〜10000μm2であり、スキン層の平均厚みが100μm以下である歯ブラシを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の歯ブラシによれば、ブリッスルの芯部が太くて歯面の刷掃力が高く、しかもソフトな感触を併せ持ち、良好な清掃性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である歯ブラシの斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す歯ブラシの備えるブラシ部を拡大した要部拡大斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す歯ブラシの備えるブリッスルを拡大した要部拡大斜視図である。
【図4】図4は、図3に示すX1−X1線断面図である。
【図5】図5(a)は、ブリッスルの断面の走査型電子顕微鏡像であり、図5(b)は、図5(a)におけるブリッスルの発泡体部分の走査型電子顕微鏡像の拡大写真である。
【図6】図6は、本発明の歯ブラシの備えるブリッスルを製造する好適な装置を示す概略図である。
【図7】図7は、図6に示す圧力室の内部にセットする金属製容器の概略図である。
【図8】図8は、芯鞘構造の発泡前のフィラメント(ブリッスル)の製造を説明する図である。
【図9】図9(a)〜(e)は、歯ブラシのブラシ部を形成する製造工程を例示する要部略示断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の歯ブラシを、その好ましい実施形態に基づき、図面を参照しながら説明する。
【0010】
本実施形態の歯ブラシ1は、図1,図2に示すように、ブリッスル2が複数植毛されたブラシ部11を備えている。ここで、各図中のY方向は、歯ブラシ1の長手方向を示し、各図中のX方向は、Y方向に直交する方向であり、歯ブラシ1の幅方向を示し、各図中のZ方向は、Y方向及びX方向に直交する方向であり、歯ブラシ1の上下方向を示している。以下、具体的に、歯ブラシ1について説明する。
【0011】
歯ブラシ1は、図1に示すように、ブラシ部11を備えるとともに、把持部12、これらを連結する首部13を備える。把持部12は、歯ブラシ1の使用時に手で把持する部分である。ブラシ部11は、図2に示すように、複数のブリッスル2を植毛台14に設けられた複数の植毛穴15の各々に植毛して形成されている。図2において、植毛されたブリッスル2の長軸方向はZ方向に一致している。尚、1個の植毛穴15に複数本のブリッスル2を植毛してブラシ部11を形成しても良いが、図2に示すように、植毛台14の少なくとも1部において、一本のブリッスル2を、植毛台14に設けられた1個の植毛穴に植毛するものが好ましく、さらに、全ての植毛孔15の各々に1本ずつブリッスル2を植毛したブラシ部11を形成するものが好ましい。
【0012】
把持部12、首部13、及び植毛台14は、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、PET(ポリエチ レンテレフタレート)やPCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート・イソフタレート)等のポリエステル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)等の合成樹脂により形成される。歯ブラシ1は、植毛台14に、図2に一方の面を示すように、各ブリッスル2を配設する位置に対応させて、複数の植毛穴15がX方向及びY方向に分散して開口形成されている。植毛穴15の直径は好ましくは0.5〜3mmであり、植毛穴15の断面形状は円形が好ましい。また、最外周に配置される植毛穴15の外側縁部を連ねた環状線によって囲まれる植毛領域の面積に対して、植毛穴15の面積の総和の占める割合(植毛密度)は、10〜50%であるものが好ましい。各植毛穴15には、ブリッスル2の毛丈(ブリッスル2の植毛台11と隣接する一方の面からのZ方向の長さ)が、好ましくは4〜15mmとなるように各々植設される。
【0013】
ブリッスル2は、図3に示すように、棒状の芯部21と、芯部21の少なくとも側面全体を鞘状に覆う発泡体22とを有している。各ブリッスル2は、図4に示すように、Z方向に垂直な断面の形状が円又は矩形であることが好ましく、ブリッスル2の全体形状はZ方向に一直線状に延びる円柱又は四角柱に形成されることが好ましい。尚、ブリッスル2の断面の形状は、前記形状に特に限定されず、Z方向に延びていれば、断面の形状が、楕円、十字、長方形等の矩形、6角形等の多角形等でもよい。
【0014】
また、ブリッスル2を形成する芯部21は、図4に示すように、断面の形状が円形であることが好ましく、全体形状はZ方向に一直線状に延びる円柱形に形成されていることが好ましい。尚、芯部21の形状も、前記形状に特に限定されず、Z方向に延びていれば、断面の形状が、楕円形、十字形、長方形等の多角形等でもよい。芯部21のZ方向の長さ(ブリッスル2が植毛台11と隣接する一方の面からのZ方向の長さ)は、4〜15mmであることが好ましく、上述したブリッスル2のZ方向の長さに対する芯部21のZ方向の長さの割合は、0.75〜1であることが好ましく、0.8以上1未満であることが好ましい。
【0015】
ブリッスル2を形成する発泡体22は、図3,図4に示す歯ブラシ1のように、芯部21の少なくとも側面全体を覆っており、好ましくは芯部21の先端も含めた外周面全体を覆っている。このように、各ブリッスル2は、芯鞘の構造に形成されている。尚、歯ブラシ1の発泡体22は、芯部21をブリッスル2の軸方向において略均一に覆うことが好ましい。
【0016】
ブリッスル2の芯部21の平均厚みdは、強度と柔軟性(弾力性)を両立させる観点から0.2〜0.6mmであり、さらに0.3〜0.5mmであることが好ましい。ブリッスル2の芯部21の平均厚みは、芯部21のZ方向に直交する断面の形状が円形の場合は断面の平均直径が(図4参照)相当する。
【0017】
ブリッスル2の発泡体22の厚みt(図4参照)は、太いブリッスルであっても使用時に痛みを感じることなく、使用感を良好にする観点から、平均厚みが0.1〜1mmであることが好ましく、0.2〜0.8mmであることが更に好ましい。ブリッスル2のZ方向に垂直な断面が矩形である等により発泡体22の厚みが断面の各位置によって異なる場合には、発泡体22の厚みが薄い位置での平均厚みが、0.1〜0.8mmであることが好ましく、断面形状の角部等の発泡体22の厚みが厚い位置での平均厚みが、0.2〜1mmであることが好ましく、さらに0.3〜1mmであることが好ましい。なお、ブリッスル2の断面形状が矩形である場合の、角部の発泡体22の厚みは、芯部21の中心と角とを結んだ線上における発泡体の厚みとしている。
【0018】
ブリッスル2の平均厚み、又はZ方向に直交する断面の形状が円形である場合の平均直径(図4参照)(d+t×2)は、使用時の使い心地の観点から、0.5〜1.7mmであることが好ましく、0.7〜1.5mmであることが更に好ましい。なお、ブリッスル2の平均厚みは、ブリッスル2の軸方向において異なる複数個所の厚みの平均値である。ブリッスル2の断面形状が矩形等の多角形である場合、芯部21の中心からブリッスル2の断面形状における角までの平均厚みは、同じ観点から0.3〜0.8mmであることが好ましく0.4〜0.7mmであることが更に好ましく、角と角を結ぶ対角線の厚みは0.6〜1.6mmであることが好ましく、0.8〜1.4であることが好ましい。
【0019】
芯部21は合成樹脂からなる。芯部21は、しなりがある点、清掃性の観点からJIS K 7171による曲げ弾性率が、0.5〜5GPaであることが好ましい。合成樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等のナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレングリコールテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン等を使用することができる。また、芯部21と発泡体22との接着性をより強固なものにするために、例えば、芯部21の表面を粗面にすることが好ましい。粗面にする手段としては、サンドブラスト処理や、やすりによる処理、コロナ放電処理やフレーム処理が挙げられる。同様の観点から、芯部21を構成する樹脂に、発泡体22を構成する樹脂を混合させてもよい。発泡体22を構成する樹脂を混合する際の樹脂の含有量としては2〜30%の範囲が好ましい。
【0020】
発泡体22の気泡タイプとしては、独立気泡タイプ及び連続気泡タイプのいずれであっても良い。ここで、独立気泡タイプとは、各々の気泡が独立した気泡壁を有するタイプを意味し、連続気泡タイプとは、各々の気泡が連通しているタイプを意味する。より柔らかな感触にできるとともに薬剤を含浸することができる観点から、連続気泡タイプであることが好ましい。
【0021】
発泡体22を構成する樹脂としては、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、極性基を導入したポリエチレン等のオレフィン樹脂、アクリル酸エチル等のポリアクリル酸又はポリメタクリル酸系樹脂、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ナイロンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリスチレン系エラストマー等のエラストマー等を使用することができ、使用時の引張り破断強度や耐摩耗性と耐久性の観点から、ポリウレタンエラストマー、ナイロンエラストマーを使用することが好ましい。芯部21の構成材料として、ナイロン612、ナイロン610を使用する場合には、芯部と鞘部の接着性の観点から、鞘部である発泡体22を構成する樹脂として、ナイロンエラストマーを使用する組み合わせが好ましいく、芯部21の構成材料としてポリエステルを使用する場合には、鞘部はポリウレタンエラストマーであることが好ましい。また、発泡体22の気泡タイプが連続気泡タイプである場合には、連続気泡タイプ用の樹脂としては、引張り破断強度に優れるエラストマーが好ましく、引張り破断強度が5MPa以上のエラストマーが好ましく使用され、10MPa以上のエラストマーが特に好ましく使用される。なお、引張り破断強度はJIS K 6251に基づき測定する。
【0022】
芯部21を被覆する発泡体22は、柔らかさと耐久性を両立する観点から、芯部21の材質より低い温度で溶融する樹脂で形成されていることが好ましい。従って、発泡体22に使用する樹脂が、ポリエチレンのような結晶性樹脂、又はEVAやナイロンエラストマーのような結晶部を有する樹脂である場合には、樹脂の融点又は結晶部の樹脂融点を、芯部21の材質の融点より低いものとする。又、発泡体22に使用する樹脂が、アクリル酸エチルやポリスチレン系エラストマーのような非晶性樹脂である場合には、樹脂の軟化温度を、芯部21の材質の融点より低いものとする。
【0023】
発泡体22を構成する樹脂は、柔らかくて使い心地の良い発泡体とする観点及び発泡体表面のべたつき防止の観点から、JIS K 6253に準ずるJIS−A硬度の測定値が40〜100であることが好ましく、JIS−A硬度の測定値が50〜90であることが特に好ましい。
【0024】
本発明においては、発泡体22は、気泡の平均セル面積が150〜10000μm2であり、さらに発泡体の強度と柔らくて使いごこちの良い感触との両立、発泡体の成形性の観点から、200〜8000μm2であることが好ましく、300〜2000μm2であることが更に好ましい。発泡体22は、未発泡部分が少ないことが好ましく、発泡体22の平均セル密度は、10000〜1400000個/cm2の範囲が好ましく、さらに100000〜800000個/cm2の範囲が好ましく、さらに100000〜500000個/cm2の範囲が好ましい。尚、平均セル面積、平均セル密度は、以下の方法により測定する。
【0025】
<平均セル面積の測定法>
セル面積の測定は、走査型電子顕微鏡(リアルサーフェイス顕微鏡 商品名VE7800;(株)キーエンス製)を用いて測定する。図3に示す1本のブリッスル2を、X方向にカッターで切断し、走査型電子顕微鏡を用いて、図5(a)に示すブリッスル2の切断面の中で、図5(b)に示すように、発泡体22の部分の拡大写真を撮影する。そして、この拡大写真から、10個の気泡(セル)を選択し、画像処理ソフト(商品名ウィンルーフ バージョン5.6.2 三谷商事製)を用いて、それぞれの気泡の面積(セル面積)を測定する。それらの結果から気泡の平均面積を算出し、平均セル面積とする。
【0026】
<平均セル密度の測定法>
平均セル密度も、上記の走査型電子顕微鏡を用いて測定する。ブリッスル2の発泡体22の切断面2500μm2当たりに、気泡が何個含まれているのかを10箇所、目視にて測定し、平均値を求める。この平均値を1cm2当たりに換算した値を平均セル密度とする。
【0027】
本発明においては、発泡体22は、スキン層の平均厚みが100μm以下である。歯面の汚れ除去性能(刷掃力)が高く、柔らかくて使い心地の良いブリッスル2を得る観点から、スキン層の厚みを薄くすることが好ましい。ここで、スキン層とは、実質的に気泡を含まない部分を意味し、気泡があったとしても、そのセル面積が400μm2よりも小さい気泡を含む領域のことを意味する。言い換えれば、表面から、セル面積が400μm2以上の気泡が現れるまでの厚みを意味する。スキン層の平均厚みは、上記観点から、0〜100μmであることが好ましく、0〜70μmであることが特に好ましい。また、発泡体22における切断面を除く表面のスキン層の平均厚みは、0〜100μmであることが好ましく、さらに5〜30μmであることが好ましく、特に10〜30μmであることが好ましい。尚、スキン層の平均厚みは、以下の方法により測定する。
【0028】
<スキン層の平均厚みの測定法>
スキン層の平均厚みも、上述した走査型電子顕微鏡を用いて測定する。ブリッスル2の切断面における発泡体22の部分の切断面の拡大写真を撮影し、この拡大写真から、スキン層の厚みを10箇所測定し、測定値の平均をスキン層の平均厚みとする。
【0029】
歯ブラシ1は、図1に示すように、ブリッスル2が複数植毛されたブラシ部11を備えており、各ブリッスル2は、図3に示すように、棒状の芯部21と、芯部21の少なくとも側面全体を鞘状に覆う発泡体22とを有している。このように、芯部21を発泡体22で覆っているので、芯部21の平均厚み(平均直径)を大きくしても、使用者に痛みを与え難く、使用感が向上する。また、芯部21の平均厚み(平均直径)を太くすることにより、ブリッスル2が歯面に当たる力を強くでき、良好な清掃性(刷掃性)が得られる。歯ブラシ1のブリッスル2の芯部21は合成樹脂からなり、ブリッスル2の発泡体22は、図5(a),図5(b)に示すように、気泡の平均セル面積が150〜10000μm2であり、スキン層が100μm以下である。その為、歯ブラシ1は、歯面の汚れ除去性能(刷掃力)が更に高く、柔らかくて使い心地が良い。
【0030】
また、ブリッスル2の発泡体22は、歯ブラシ1においては、図3に示すように、芯部21の側面全体のみならず、芯部21の先端も覆い、芯部21の外周面全体を覆っている。その為、芯部21の先端を含めて、使用中に芯部21が直接歯に当たることがなく、更に使用者に痛みを与え難く、使用感が更に向上する。
【0031】
本発明の歯ブラシは、上述の実施形態の歯ブラシ1に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
【0032】
例えば、上述の実施形態の歯ブラシ1においては、図1に示すように、各ブリッスル2の毛丈(植毛台11の一面からのZ方向の長さ)が略同じであるが、同じでなくてもよい。また、上述の実施形態の歯ブラシ1においては、図3に示すように、ブリッスル2の発泡体22が、芯部21の側面のみならず、芯部21の先端を含めた外周面全体を覆っているが、芯部21の先端を覆っていなくてもよい。
【0033】
以下、本発明の歯ブラシを製造する方法について説明する。
先ず、歯ブラシのブリッスル2を製造する方法について説明する。ブリッスル2の発泡体22は、化学発泡法及び物理発泡法により製造することができる。
化学発泡法としては、樹脂中に加熱分解とともにガスを発生させる化合物を用いて発泡体22を得る方法を用いることができる。使用する化合物としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アゾ化合物等を用いることができる。これ以外の化学発泡法としては、樹脂中に水や酸と反応することによりガスを発生させる化合物を用いて発泡体22を得る方法も用いることができる。使用する化合物としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、イソシアネート等を用いることができる。
【0034】
物理発泡法としては、ペンタン、二酸化炭素や窒素の超臨界流体を樹脂中に溶解させた後に加熱ガス化又は減圧ガス化することにより発泡体22を得る方法を用いることができる。化学発泡法及び物理発泡法の中でも超臨界流体を用いた物理発泡法は、歯ブラシのブリッスル2に適した微細な気泡を得ることができるとともに、人体に対して安全である窒素や二酸化炭素を発泡剤として使用できるので好ましい。超臨界流体を用いた物理発泡法には、バッチ法と連続法とがある。バッチ法とは、圧力容器内に樹脂を仕込んだ後、二酸化炭素や窒素を密閉状態の圧力容器に導入し、二酸化炭素や窒素を臨界点以上の超臨界流体とし、所定時間の間この超臨界流体を樹脂に溶解させた後、常圧まで減圧させて超臨界流体がガスになる際の体積膨張を利用して発泡体を得る方法である。連続法とは、射出成形機や押出機のシリンダー部において、溶融混錬されている樹脂中に二酸化炭素や窒素の超臨界流体を導入した後、金型内に射出成形又はダイを通して大気中に押出すことにより発泡体を得る方法である。
本発明の歯ブラシのブリッスル2は、以上に述べた何れの方法を用いても製造することができるが、以下に、臨界流体用原料として二酸化炭素を用いた物理発泡法であるバッチ法によってブリッスル2を製造する方法を、図面を参照しながら説明する。
【0035】
図6は、ブリッスル2の製造に用いられている装置の一例の概略図を示す。装置は、減圧バルブを備えた圧力室10と、圧力室10に超臨界流体用原料である二酸化炭素を供給する、又はこの二酸化炭素の超臨界流体である超臨界二酸化炭素を供給する超臨界流体供給部20とを備えている。以下、図6に示す装置を用いたブリッスル2の製造方法について具体的に説明する。
【0036】
ブリッスル2の製造方法は、芯部21の少なくとも側面、好ましくは外周全体が鞘状に発泡体22で覆われているブリッスル2を形成する。従って、芯部21が未発泡の樹脂により鞘状に覆われた芯鞘構造の発泡前のフィラメント23を、鞘部を発泡させて発泡体22を形成する発泡工程を備える。フィラメント23の発泡工程では、フィラメント23を予め図7に示す底面と側面を有し天面が開口している金属製容器30に収容し、その金属製容器30を、図6に示す圧力室10内にセットし、超臨界流体用原料と接触させて発泡させる。芯部21の構成材料(芯材)、及び発泡体22となる鞘部を構成する樹脂は上述した芯部21、発泡体22の構成樹脂を用いることができる。また、ブリッスル2の製造方法は、発泡工程の前に、未発泡の芯鞘構造のフィラメント23の製造工程を備えることができる。未発泡の芯鞘構造のフィラメント23の製造工程は、芯材を用いた押し出し成形による製造工程、または、芯部21となる芯材の複数本を略等間隔空けて並列に配置し、これらを発泡体22となる鞘部の構成樹脂からなる2枚のシート状の樹脂の間に挟み込んだ状態で加熱プレスし、隣り合う芯材の間毎にカットする製造工程が挙げられ、後者の製造工程が好ましい(図8参照)。
【0037】
芯鞘構造のフィラメント23の発泡工程に用いる金属製容器30は、図7に示すように、底面と側面を有し天面が開口した容器であって側面が円筒状であるものが好ましい。金属製容器30の内部には、両端が開口している円筒状の複数のチューブ31が、図7に示すように、隙間なく配されており、各チューブ31の中にフィラメント23が収容される。チューブ31としては、金属製のチューブ又はテフロン(登録商標)製のチューブを用いることが可能であり、好ましくはテフロン(登録商標)製チューブを用いる。各チューブ31の内径、長さ、形状は、図3に示すブリッスル2の大きさ、形状に応じて形成される。チューブ31は、金属製容器30の内部に、200〜300個配されている。各チューブ31の中にフィラメント23を収容し、フィラメント23の収容されたチューブ31を金属製容器30の内部に隙間なく配し、チューブ31の配された金属製容器30を、圧力室10の内部にセットする。
【0038】
フィラメント23の発泡工程は、フィラメント23を収容した圧力室10に超臨界流体を供給しフィラメント23に接触させる工程と、その後に圧力室10内を減圧させる工程とを備え、圧力室10内を減圧させる工程は、第1減圧工程及び第1減圧工程より後の第2減圧工程とを有し、第2減圧工程の減圧スピードが第1減圧工程の減圧スピードよりも遅い工程となっていることが好ましい。
圧力室10に超臨界流体を供給しフィラメント23に接触させる工程は、発泡前のフィラメント23を収容した金属製容器30をセットした圧力室10を、図6に示すように、圧力室10の外周に設けられたヒーター110によって加熱しながら、圧力室10の内部に、二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を流体供給部20から供給する手順からなる。
【0039】
超臨界流体用原料である二酸化炭素は、図6に示すように、ボンベ210に収容されており、ボンベ210の供給バルブを開いて、冷却器22に供給される。冷却器220により冷却され液化した二酸化炭素を、図6に示すように、プランジャーポンプ230を用いて圧力室10内に供給する。液化された二酸化炭素は、圧力室10内に供給される前に、図6に示す加熱器240により加熱されながら圧力室10内に供給される。
【0040】
超臨界流体用原料として二酸化炭素を用いた場合の冷却器220の冷却温度としては、−10℃〜30℃であることが好ましく、−5℃〜5℃であることが更に好ましい。
【0041】
二酸化炭素を冷却器220によって冷却する場合は、プランジャーポンプ230と圧力室10との間に加熱器240を設けることが好ましい。超臨界流体用原料として二酸化炭素を用いた場合の加熱器240の加熱温度としては、臨界温度Tc以上であることが好ましく、成形用樹脂が結晶性の場合には、融点近傍がさらに好ましく(例えば融点±20℃、好ましくは±10℃)、非晶性の場合には、ガラス転移温度以上であることがさらに好ましい。
【0042】
フィラメント23及び二酸化炭素、又はフィラメント23及び超臨界二酸化炭素が供給された圧力室10の内部を、ヒーター110によって加熱しながら、プランジャーポンプ230によって、二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を圧力室10内に供給し続け、圧力室10内の圧力を上げ、圧力室10の内部を超臨界二酸化炭素の臨界温度Tc以上とし、さらに超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pc以上とする。
【0043】
圧力室10の内部温度としては、超臨界二酸化炭素の臨界温度Tc以上であって、さらに、上記フィラメント23の鞘部を形成する発泡体22の構成樹脂に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ナイロンエラストマー等の結晶性樹脂を使用する場合には、その樹脂の融点近傍の温度が好ましく、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、ポリメタクリル酸、ポリウレタンエラストマー等の非結晶性樹脂を使用する場合には、その樹脂のガラス転移温度以上の温度が好ましい。また、EVAのように結晶性樹脂の部分(ポリエチレンの部分)と非結晶性樹脂の部分(ポリ酢酸ビニルの部分)とを持つ共重合体を使用する場合には、非結晶性樹脂のガラス転移温度から結晶性樹脂の融点付近までの温度範囲が好ましい。このように圧力室10の内部温度を設定することにより、フィラメント23の鞘部を発泡させることにより形成される発泡体22に未発泡の部分が発生し難く、発泡体が硬くなり難い。
【0044】
圧力室10の内部圧力としては、超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pc以上であって、さらに、気泡サイズの適正化の観点から、12MPaより高圧が好ましく、19MPaより高圧がさらに好ましく、20MPa以上が特に好ましい。内部圧力の上限は、設備製造の容易さの観点から、50MPa以下であることが好ましい。
【0045】
圧力室10内の圧力が臨界圧力Pcを超えて十分に上昇したら、流体供給部20の供給バルブを閉めて、プランジャーポンプ230からの二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素の供給を停止し、圧力室10内を一定の圧力と温度に保つことにより、フィラメント23を超臨界二酸化炭素に接触させて、超臨界流体をフィラメント23の鞘部を構成樹脂に拡散浸透(含浸)させる。
【0046】
超臨界二酸化炭素を接触させる時間としては、発泡に必要な量の超臨界二酸化炭素がフィラメント23の鞘部(発泡体22)の構成樹脂に拡散浸透する時間であれば良く、0.5時間(hr)〜3時間(hr)であることが好ましい。超臨界二酸化炭素は、気体のような高い拡散浸透性と低い粘度を有し、特に、液体に近い密度を持つ。このような性質によって、圧力室10内においては、超臨界二酸化炭素がフィラメント23の鞘部(発泡体22)の構成樹脂に拡散浸透し、内部に分散する。
【0047】
超臨界二酸化炭素を十分に鞘部(発泡体22)の構成樹脂に接触させた後の圧力室1を減圧させる工程は、圧力室10に設けられた減圧バルブ120を開いて減圧することにより行う。圧力室1を減圧させる工程は、第1減圧工程と、第1減圧工程の後に減圧する第2減圧工程とを有することが好ましい。
【0048】
先ず、第1減圧工程について詳述する。
第1減圧工程の減圧スピードは、50〜1000MPa/分であることが好ましく、100〜800MPa/分であることがさらに好ましい。減圧スピードが50MPa/分より速ければ、発泡体の気泡サイズが小さく、セル密度が大きくなるので好ましく、減圧スピードが1000MPa/分より遅ければ、他の吸引装置が必要とならず、圧力室10の減圧バルブ120を開放するだけで対応できるので、設備費が低く抑えられるので好ましい。
【0049】
第1減圧工程は、超臨界二酸化炭素の臨界点以上の圧力及び温度の領域にあることが好ましい。即ち、第1減圧工程は、セル密度を大きくするという観点から、第1減圧工程終了時も、圧力室10内の圧力が超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pc以上であって、圧力室10内の温度が超臨界二酸化炭素の臨界温度Tc以上であることが好ましい。
【0050】
第1減圧工程終了時の圧力室10の内部の圧力は、超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pc以上であることが好ましく、さらに、発泡体内部に大きな気泡のかたまりが発生し難く、セル密度が高くなりやすい大きくなり難いとの観点から、19MPa〜11MPaであることが好ましく、18MPa〜12MPaであることがさらに好ましい。また、第1減圧工程は、減圧前後の圧力差が5〜15MPaであることが好ましい。
【0051】
第1減圧工程による圧力室10の減圧後、第2減圧工程により圧力室10の内部の圧力をさらに減圧する。第1減圧工程終了時から、減圧開始までの時間は、0秒(sec)〜2秒(sec)であることが好ましい。中断を2秒以内とすることにより大きな気泡たまりを抑制するので好ましい。
【0052】
次に、第2減圧工程について詳述する。
第2減圧工程の減圧スピードは、0.1〜10MPa/分であることが好ましく、3〜7MPa/分であることがさらに好ましい。減圧スピードが0.1MPa/分より速ければ、生産性が低下することがなく、10MPa/分より遅ければ、圧力室10の内部表面にドライアイスが発生し難いので好ましい。
【0053】
第2減圧工程は、超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pcより低い圧力まで減圧することが好ましい。即ち、気泡成長は臨界圧力より低い圧力において行われる。この時の減圧速度を遅くすることにより気泡サイズが小さくなりすぎることなく柔らかな発泡体となるという観点から、第2減圧工程終了時に、圧力室10内の圧力が、臨界圧力Pcより低いことが好ましい。
【0054】
第2減圧工程終了時の圧力室10の内部の圧力は、超臨界二酸化炭素の臨界圧力Pc(7.13MPa)より低いことが好ましく、超臨界二酸化炭素では7MPa以下であることが好ましく、さらに、製造工程の簡素化の観点から、常圧であることが好ましい。圧力室10内の圧力が3MPa以下であれば第2減圧工程の後に10MPa/分より早い速度で減圧を行っても良い。
【0055】
第2減圧工程終了時の圧力室10の内部の温度は、超臨界二酸化炭素の臨界温度Tc(32℃)以上であることが好ましく、さらに、気泡成長を促進するという観点から、超臨界二酸化炭素を発泡体22の構成樹脂に含浸させる温度より30℃以内の範囲で低いことが好ましい。
【0056】
第2減圧工程による減圧後に、圧力室10内の圧力を常圧とした後、圧力室10から金属製容器30を取り出し、各チューブ31から発泡した発泡体22を備える発泡後のフィラメント23を金属製容器30及びチューブ31から取り出し、本発明のブリッスル2を得ることができる。即ち、発泡後のフィラメント23がブリッスル2として歯ブラシ1の製造に用いられる。
【0057】
次に、上述のようにして製造された複数のブリッスル2を有する歯ブラシ1を製造する方法について説明する。歯ブラシ1は、図1に示すように、ブリッスル2が複数植毛されたブラシ部11、把持部12、これらを連結する首部13とを備える。このような構成を備える歯ブラシ1のブラシ部11は、融着植毛法により製造することが好ましい。融着植毛法は、植毛台14の植毛穴15にブリッスル2を挿入後、植毛台14の背面側においてブリッスル2を溶融して固定し、固定した植毛台14を、ブラシ部11の一部として形成するか、又は植毛台14をブラシ部11に嵌合、接着することによる歯ブラシ1を形成する方法が可能である。例えば、図9(a)〜(d)に示す製造工程に従って、形成することが好ましい。図9(a)〜(d)に示す製造工程は、ブラシ部11を形成する植毛台14を保持治具4上にセットするセット工程(図9(a)参照)と、各ブリッスル2の一端部を植毛台14の背面側から植毛穴15に挿入配置する植毛工程(図9(b)参照)と、植毛台14の背面側から突出するブリッスル2の他端部を溶融して固定する溶融工程(図9(c)参照)と、植毛台14の背面側に背面成形用の樹脂を充填することにより背面を形成する背面成形工程(図9(d)参照)とを含んでいる。以下、具体的に説明する。
【0058】
先ず、セット工程において、図9(a)に示すように、植毛台14の植毛穴15に植設されるブリッスル2の外周形状と同様の内周形状を有するブリッスル整形穴41が形成された保持治具4に、植毛台14を、ブリッスル整形穴41と植毛穴15とを合致させた状態でセットする。
【0059】
次の植毛工程において、図9(b)に示すように、公知の毛束植設装置(不図示)を用いて、各ブリッスル2の一端部を、合致した植毛穴15及びブリッスル整形穴41に植毛穴14の背面側から(図の上方から)各々挿入し、ブリッスル2の他端部を植毛台14の背面側から上方に突出させた状態で配設する。
【0060】
植毛工程の後の溶融工程において、図9(c)に示すように、好ましくはレーザーを用いて、植毛台14の背面側から突出するブリッスル2の他端部を溶融することにより、ブリッスル2を植毛台14の背面側に固定する。このように、歯ブラシ1にブリッスル2を融着植毛により植毛することができる。ブリッスル2を融着植毛により植毛することにより、ブリッスル2を折り曲げることなく歯ブラシ1本体に植毛できるとともに、ブリッスル2と植毛台14とがなす角度の変更や、ブリッスル2の高さの調整が可能になる。
【0061】
溶融工程の後の背面形成工程において、図9(d)に示すように、各ブリッスル2が固定された植毛台14を、保持治具4にセットした状態のまま、公知の背面成形装置の金型42の所定の位置に位置決めする。しかる後に、金型42の注入口から背面成形用の樹脂を吐出して、植毛台14の背面と金型42との間の空間に注入充填する。所定の時間経過後、注入充填した樹脂が固化することにより背面を形成する。このように、背面が形成されることによりブラシ部11を形成する。ブラシ部11が形成されたら、金型42を取り外し、保持治具4にセットされたブラシ部11を取り出す(図9(e)参照)。これによって、ブリッスル2が複数植毛されたブラシ部11を備える本実施形態の歯ブラシ1が製造されることになる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
【0063】
〔芯鞘構造の発泡前のフィラメントの作製〕
芯部21となる棒状の芯材としては、直径0.3mmのデュポン社製の商品名タイネックスフィラメント(ナイロン612)を用い、発泡体22となる鞘部の構成樹脂としては、厚み0.5mmのアルケマ社製の商品名ペバックス2533SA(ナイロンエラストマー樹脂)のシート状樹脂を用いた。図8に示すように、2枚のシート状樹脂の間に、芯材を隣り合う芯材の間が3mmになるように並列配置し、挟み込んだ状態で加熱プレスし、厚み0.6mmのシートとしたものを、隣り合う芯材どうしの間毎にカットし、未発泡の芯鞘構造のフィラメント23を作製した。作製された未発泡の芯鞘構造のフィラメント23は、長さが20mm、幅が0.6mm、厚みが0.6mmであった。
発泡体22となる鞘部の構成樹脂であるアルケマ社製の商品名ペバックス2533SAは、引張り破断強度が30MPa、JIS−A硬度の測定値が70、融点は133℃のエラストマーである。芯部21となる芯材のデュポン社製の商品名タイネックスフィラメントは、融点225℃、曲げ弾性率2.0GPaの結晶性樹脂である。
【0064】
〔実施例1〕
図7に示すように、発泡前の芯鞘構造の各フィラメント23を、長さ25mmのテフロン(登録商標)製チューブ31(内径1mm)内にセットし、フィラメント23のセットされたチューブ31を円筒形の金属製容器30内に隙間がないように配置した。
続いて、フィラメント23のセットされた金属製容器30を、図6に示す発泡処理装置の圧力室10(内容積1L)内にセットした。次に、ボンベ210から超臨界二酸化炭素を冷却器220、プランジャーポンプ230、加熱器240を通して密閉状態の圧力室10に注入した。冷却器220の設定温度は、−5℃とし、ガス状の二酸化炭素を一旦液化させたものをプランジャーポンプ230で送り、設定温度130℃で加熱された加熱器240を通して二酸化炭素を圧力室10に供給し続け、圧力室10内の圧力25MPaになるまでプランジャーポンプ230で二酸化炭素を供給し圧力室10の圧力を上げた。この時圧力室10内の温度が130℃となるようにした。圧力室10内の温度130℃、圧力室10内の圧力25MPaになった後、超臨界流体供給部20の供給バルブを閉めて、その温度及び圧力の状態を1時間保持し、超臨界状態の二酸化炭素を、フィラメント23の鞘部に接触させた。続いて、圧力室10の減圧バルブ120を開いて減圧スピード600MPa/分にて減圧し、圧力室10内の圧力を25MPaから15MPaに減圧した(第1減圧工程)。次に、すばやく(2秒以内)再度、圧力室10の減圧バルブ120を開いて減圧スピード4MPa/分にて減圧し、圧力室10内の圧力を15MPaから常圧まで減圧し(第2減圧工程)、フィラメント23の鞘部の構成樹脂を発泡させて発泡体22を形成した。続いて圧力室10から金属製容器30を取り出し、冷却後に金属製容器30からチューブ31を取り出し、チューブ31から鞘部を発泡させた発泡体22を備えるフィラメント23からなるブリッスル2を取り出した。ブリッスル2は、チューブ31から取り出し後に膨張し、断面が矩形であり、発泡体22の角部の平均厚みは0.53mm、芯部21の表面から発泡体表面の矩形の各辺までの厚み(厚みの薄い部分の厚み)の平均は0.44mmであった。
上述のように形成したブリッスル2を用い、図9(a)〜(e)に示す製造工程に従って、ブリッスル2が複数植毛されたブラシ部11を有する実施例1の歯ブラシを作製した。ブリッスル2の毛丈は、10mmとなるように植設した。植毛穴の径は1mmであり、植毛密度は35%であった。
尚、図9(c)に示す溶融工程においては、30Wの炭酸ガスレーザーを用いて、ブリッスル2を植毛台14の背面側に固定した。
【0065】
〔実施例2〕
ブリッスル2の毛丈を7mmとなるように植設したこと以外は、実施例1と同様の方法にて実施例2の歯ブラシを作製した。植毛穴の径は1mmであり、植毛密度は35%である。
【0066】
〔実施例3〕
芯部21となる芯材として東レ社製ナイロン610(商品名アミランCM2001)を用い、発泡体22となる鞘部の構成樹脂としてアルケマ社製の商品名ペバックス2533SAを構成樹脂として、押出し成形にて芯鞘構造の発泡前のフィラメント23を作製した。芯材の東レ社製の商品名アミランCM2001は、融点225℃、曲げ弾性率2.0GPaの結晶性樹脂である。その後は、実施例1と同様の方法にて、ブリッスル2を作製した。ブリッスル2を断面視した際の平均厚み(平均直径)は1.0mmであった。また、芯部21の平均厚み(平均直径)は0.5mm、発泡体22の平均厚みは0.25mmであった。また、実施例1と同様の方法にて、ブリッスル2が複数植毛されたブラシ部11を有する実施例3の歯ブラシを作製した。ブリッスル2の毛丈は、13mmとなるように植設した。なお、植毛穴の径は1mmであり、植毛密度は35%である。
【0067】
〔比較例1〕
実施例1と同じ未発泡のフィラメント23のセットされたチューブ31を円筒形の金属製容器30に隙間がないように配置した。実施例1と同じく超臨界二酸化炭素を用いて発泡させたが、加熱器240の設定温度は、実施例1が130℃であるのに対して比較例は125℃とし、圧力室10内の温度も125℃となるように調整した。圧力室10内の温度が125℃、圧力が25MPaになった後、超臨界流体供給部20の供給バルブを閉めて、その温度及び圧力の状態を1時間保持し、超臨界状態の二酸化炭素をフィラメント23に接触させた。第1減圧工程における減圧速度は実施例1と同じであるが、比較例1では第2減圧工程を備えず、圧力室10内の圧力を25MPaから常圧まで一気に減圧し、フィラメント23の鞘部を発泡させて発泡体22を形成した。冷却後に実施例と同様にチューブ31から鞘部が発泡したフィラメント23からなるブリッスル2を取り出した。ブリッスル2は断面が4角形状であり、発泡体22の角部の平均厚みは0.51mm、芯部21の表面から発泡体表面の矩形の各辺までの厚み(厚みの薄い部分の厚み)の平均は0.41mmであった。
上述のように形成したブリッスル2を用い、図9(a)〜(e)に示す製造工程に従って、ブリッスル2が複数植毛されたブラシ部11を有する比較例1の歯ブラシを作製した。ブリッスル2の毛丈は、10mmとなるように植設した。植毛穴の径は1mmであり、植毛密度は35%であった。
尚、図9(c)に示す溶融工程においては、30Wの炭酸ガスレーザーを用いて、ブリッスル2を植毛台14の背面側に固定した。
【0068】
〔比較例2〕
直径0.5mmのデュポン社製の商品名タイネックスフィラメント(ナイロン612)をブリッスルとして用い、図9(a)〜(d)に示す製造工程に従って、ブリッスルが複数植毛されたブラシ部を有する比較例2の歯ブラシを作製した。尚、植毛穴径は、0.6mmであり、植毛密度は13%であった。ブリッスルの毛丈は、13mmとなるように植設した。
【0069】
〔比較例3〕
市販の歯ブラシ(商品名「クリアクリーンプラス マルチケア ハブラシ コンパクト」、毛のかたさ:ふつう、花王(株)製)を比較例3の歯ブラシとした。植毛穴密度は32%であった。
【0070】
〔ブリッスルの気泡状態の評価〕
実施例1、2及び3並びに比較例1の歯ブラシの有するブリッスルについて、スキン層の平均厚み、平均セル面積及び平均セル密度を、上述した方法により測定した。その結果を、表1に示す。
【0071】
〔歯ブラシの除去性(刷掃性)の評価〕
実施例1、2及び3並びに比較例1、2及び3の歯ブラシを用いて、人工プラークの除去性(刷掃性)を測定した。具体的には、株式会社ニッシン製の人工プラーク(模型専用人工歯垢)をペンタックス株式会社製のアパタイトペレット(品番「APP−100」)の表面に均一に塗布し、実施例1、2及び3並びに比較例1、2及び3の各歯ブラシのブラシ部の背面上に荷重200gを負荷した状態で、アパタイトペレット上を10往復させ、使用前後での人工プラークの除去性(刷掃性)を測定した。尚、比較例3の歯ブラシの除去性を100として、比較例3の歯ブラシに対する実施例1、2及び3並びに比較例1及び2の歯ブラシの除去性(刷掃性)を測定した。その結果を、表1に示す。
【0072】
〔歯ブラシの使用感の評価〕
6名の成人男性に、実施例1、2及び3並びに比較例1、2及び3の各歯ブラシを順次交換しながら使用してもらい、使用感(使用時の痛み)について聞き取り調査を行い、使用時の痛みを感じた被験者の割合を求めた。その結果を、表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1、2及び3の歯ブラシは、比較例3の歯ブラシに比べて、歯ブラシの除去性(刷掃性)が向上するとともに、使用時の痛みを感じた被験者もなく、使用感が向上し、清掃性が良好であった。表1に示すように、比較例1の歯ブラシのブリッスルを構成する鞘状の発泡体は、平均セル面積が小さく、平均セル密度が非常に高いものであった。表1に示す結果から明らかなように、比較例1及び2の各歯ブラシは、比較例3の歯ブラシに比べて、歯ブラシの除去性(刷掃性)が向上したが、使用時の痛みを感じた被験者が多く、使用感が低いことが確認された。
【符号の説明】
【0075】
1 歯ブラシ
11 ブラシ部
12 把持部
13 首部
14 植毛台
15 植毛穴
2 ブリッスル
21 芯部
22 発泡体
23 芯鞘構造の発泡前のフィラメント
4 保持治具
41 ブリッスル整形穴
42 金型
10 圧力室
110 ヒーター
120 減圧バルブ
20 超臨界流体供給部
210 ボンベ
220 冷却器
230 プランジャーポンプ
240 加熱器
30 金属製容器
31 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッスルが複数植毛されたブラシ部を備える歯ブラシであって、
前記ブリッスルは、棒状の芯部と、該芯部の少なくとも側面全体を鞘状に覆う発泡体とを有し、
前記芯部は、平均厚みが0.2〜0.6mmの合成樹脂からなり、
前記発泡体は、気泡の平均セル面積が150〜10000μm2であり、スキン層の平均厚みが100μm以下である歯ブラシ。
【請求項2】
前記発泡体は、前記芯部の先端を覆っている請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記ブリッスルは、融着植毛法により植毛されている請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記発泡体の平均厚みが0.1〜1mmである請求項1〜3の何れか1項に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記芯部の構成材料がナイロン612又はナイロン610であり、前記発泡体の構成樹脂がナイロンエラストマーである、又は前記芯部の構成材料がポリエステルであり、前記発泡体の構成樹脂がポリウレタンエラストマーである、請求項1〜4の何れか1項に記載の歯ブラシ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−95870(P2012−95870A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246874(P2010−246874)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】