説明

歯周病用治療材及び該歯周病用治療材を用いた歯周病の治療方法

【課題】本発明は、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性を利用して、歯の歯周病、義歯やインプラントの周りの歯肉炎症について従来に無い極めて有益な治療効果を発揮する歯周病用治療材を実現し提供する。
【解決手段】本発明の歯周病用治療材は、炎症が生じた歯周病患部に、又は歯肉の炎症が認められた歯周ポケット内に、或いは根分岐部領域の歯肉の炎症が認められた部分に、若しくは炎症が認められた歯牙の間における歯肉の部分に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により歯周病患部をはじめとする炎症を消失させて歯肉の引き締めを行なうことができるようにしたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性を利用して、歯の歯周病、義歯やインプラントの周りの歯肉炎症について従来に無い極めて有益な治療効果を発揮する歯周病用治療材及び該歯周病用治療材を用いた歯周病の治療方法に関し、詳しくは、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートの小片からなる歯周病用治療材と歯周病の治療方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、口腔内常在菌により引き起こされる慢性炎症性疾患である。そして、症状が進行した場合には、歯を支える歯周組織が崩壊し、歯の抜け落ちという重大な事態を招来する。
【0003】
従来の歯周病患部の炎症治療、インプラント施術に伴う炎症治療は、当該炎症を消失させるために、抗生物質、痛み止め薬、腫れ止め薬等を患者に服用させることにより行われていたが、このような治療方法では、大きな副作用を伴うものであった。
【0004】
ところで、プロタミンは、構成アミノ酸の2/3以上をアルギニンによって占められる特異なタンパク質であることが知れている。通常のプロタミンは、精子核中に核酸DNA(遺伝子)と複合体を形成しており、サケ等の魚介精巣から取り出すことができる。このプロタミンは、魚類、鳥類、哺乳類等の精子核中で核酸DNAと結合している塩基性タンパク質で、成熟精子中においてDNAを圧縮維持することにより、保護機能を担っているものと考えられる。
【0005】
プロタミン自体は、生体内でヘパリンを中和したり、インシュリンの複合体として血糖降下作用を持続する等の効果が既に知られているが、近年、脂肪の腸管吸収を抑制することで、脂病を予防する効果も報じられている。
【0006】
プロタミンは、生体内の酵素により分解されるために、その特徴としては構成アミノ酸、特に多量に含まれるアルギニンによる効果に依存する。
【0007】
このアルギニンは、生体内部で下記のような種々の生理機能を司るものである。
(1)アルギニンは、タンパク質の代謝によって発生するアンンモニアを尿素に解毒して、体外に排出するのに大きな役割を発揮する。
(2)アルギニンは、造精機能強化を期待できる。
(3)アルギニンは、細胞増殖を促進し、創傷治癒にも効果を発揮する。
(4)アルギニンは、リンパ球等の免疫細胞が浄化作用を営むために必要であるとされている。
(5)近年、アルギニンは、血管拡張、血圧調節等に働くNOの前駆物質として注目されている。また、動脈硬化や血小板凝集の抑制作用も発揮する。
【0008】
アルギニンは、必須アミノ酸ではないが、栄養学的に幼児の成長を維持するには体内での合成が不十分であるために、また、侵襲下においても必要であるとされている。
【0009】
更に、現在のように畜肉を多く摂取する食生活では、動物性食品の過剰摂取を起こし易く、リジン>アリギンのインバランスが生じる。これにより、高リジン血症になる場合があり、ひいては生活習慣病(成人病)の引き金になる可能性もある。
プロタミンは、微生物に対して幅広く抗菌活性が認められており、既存添加物リストに収載されている天然由来の食品保存料として1980年代前半以降、広く利用されている。
【0010】
すなわち、プロタミンは、
(1)熱安定性が高く、120℃、30分の加熱でも抗菌活性の低下が認められない。
(2)酸系の合成保存料とは異なり、pHが中性又はアルカリ性食品においても、保存効果がある。
(3)添加した食品の呈味、香り、食感等に影響を及ぼさない。
(4)経口摂取後、消化管内で分解、吸収されるタンパク質である。
【0011】
また、マウスに対する急性毒性試験やラットに対する亜慢性毒性試験等が実施され、プロタミンの安全性が確認されている。
【0012】
特許文献1(株式会社ニチロ)には、所定のアミノ酸配列を有するペプチド又はその塩、更にこれらの断片を有効成分として抗真菌剤を得ること、また、プロタミンを加水分解することで上記ペプチドを調製することを内容とし、抗真菌活性を有し、天然物由来であるため、安全面においても優れているため、口内洗浄剤や健康食品等として広範な用途に利用できるとした抗真菌ペプチド又はそれを含有するペプチド組成物とその製造方法が提案されている。
【0013】
非特許文献1には、プロタミンを各種酵素(サーモライン、ブロメライン、パパイン)で処理したプロタミン分解物は、天然プロタミンよりも生育阻害活性が増強されることが見出され、また、抗カンジダ活性を示すペプチドとして、唾液に含まれるヒスジンリッチな塩基性ペプチド、Histain−5があり、Histain−5は、C.albiansの細胞壁に存在する受容体(ヒートショックプロテイン)に結合することで、細胞内へ輸送され細胞を死に至らしめることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−133253号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「Bokin Bobai」、日本防菌防黴菌学会、2009年、Vol.37,No6,pp413〜420
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本願発明者は、上記特許文献1に係る抗真菌ペプチドに関して鋭意研究の結果、前記抗真菌ペプチドを含有させて形成した食用シートが、歯周病治療に有意義な効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0017】
すなわち、本願発明は、上記特許文献1に係る抗真菌ペプチドの特性、換言すればプロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性を利用して、歯の歯周病、義歯やインプラントの周りの歯肉炎症について従来に無い極めて有益な治療効果を発揮する歯周病用治療材及び該歯周病用治療材を用いた歯周病の治療方法を実現し提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る歯周病用治療材は、炎症が生じた歯周病患部に、又は歯肉の炎症が認められた歯周ポケット内に、或いは根分岐部領域の歯肉の炎症が認められた部分に、若しくは炎症が認められた歯牙の間における歯肉の部分に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により歯周病患部をはじめとする炎症を消失させて歯肉の引き締めを行なうことができるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、歯牙の周りの歯周病、義歯やインプラントの周りの歯肉炎症、更には抜歯窩上への上皮増殖について、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性を利用した食用シートによる従来に無い極めて有益で、かつ、安全な治療効果を発揮する歯周病用治療材を実現し提供することができる。
請求項2記載の発明によれば、歯牙の周りの歯周病、義歯やインプラントの周りの歯肉炎症、更には抜歯窩上への上皮増殖について、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性を利用した食用シート小片による従来に無い極めて有益で、かつ、安全な治療効果を発揮する歯周病用治療材を実現し提供することができる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、炎症が生じた歯周病患部に、又は歯肉の炎症が認められた歯周ポケット内に、或いは根分岐部領域の歯肉の炎症が認められた部分に、若しくは炎症が認められた歯牙の間における歯肉の部分に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により歯周病患部をはじめとする炎症を消失させて歯肉の引き締めを行なうことができるようにしたことを特徴とする歯周病用治療材を実現し提供することができる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、歯周病に起因する抜歯窩に装着したコラプラグ又は人工骨の上に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を入れ、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させてコラプラグ又は人工骨上への粘膜上皮組織の包覆を行なうことができるようにしたことを特徴とする歯周病用治療材を実現し提供することができる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、歯周病に起因する腫脹除去後の患部空洞部に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を入れ、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させて患部空洞部への粘膜組織の包覆を行なうことができるようにしたこと、すなわち、患部空洞部への粘膜組織の早期閉鎖により治癒を早める効果を発揮できるようにしたことを特徴とする歯周病用治療材を実現し提供することができる。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、歯肉の炎症が認められた義歯の周りの歯肉や義歯内面の粘膜、義歯の表面若しくは裏面に、又は義歯の表面、裏面双方に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ義歯の周り及び義歯の内面が衛生的になり歯肉の引き締めと義歯の吸着性向上を行なうことができるようにしたことを特徴とする歯周病用治療材を実現し提供することができる。
【0024】
請求項7記載の発明によれば、歯肉の炎症が認められたインプラントの周りのポケット内に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させインプラントの周りにおける歯肉の引き締めを行なうことができるようにしたことを特徴とする歯周病用治療材を実現し提供することができる。
【0025】
請求項8記載の発明によれば、上記プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片を歯周病患部に入れるだけで歯周病患部の炎症を消失させ歯肉の引き締めを図ることができる従来に無い極めて有益で、かつ、安全な治療効果を発揮する歯周病の治療方法を実現し提供することができる。
【0026】
請求項9記載の発明によれば、上記プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片を歯肉の炎症が認められた歯周ポケット内に入れるだけで、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ歯肉の引き締めを図ることができ、従来に無い極めて有益で、かつ、安全な治療効果を発揮する歯周病の治療方法を実現し提供することができる。
【0027】
請求項10記載の発明によれば、上記プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片を根分岐部領域の歯肉の炎症が認められた部分に入れるだけで、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ歯肉の引き締めを図ることができ、従来に無い極めて有益で、かつ、安全な治療効果を発揮する歯周病の治療方法を実現し提供することができる。
【0028】
請求項11記載の発明によれば、上記プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片を炎症が認められた歯牙の間の歯肉の部分に入れるだけで、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ歯肉の引き締めを図ることができ、従来に無い極めて有益で、かつ、安全な治療効果を発揮する歯周病の治療方法を実現し提供することができる。
【0029】
請求項12記載の発明によれば、上記プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片を歯周病に起因する抜歯窩に装着したコラプラグ又は人工骨の上に入れるだけで、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ、コラプラグ又は人工骨上への粘膜上皮組織の包覆を図ることができ、従来に無い極めて有益で、かつ、安全な治療効果を発揮する歯周病の治療方法を実現し提供することができる。
【0030】
請求項13記載の発明によれば、上記プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片を歯周病に起因する腫脹除去後の患部空洞部に入れるだけで、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ、患部空洞部への粘膜組織の包覆を図ることができ、従来に無い極めて有益で、かつ、安全な治療効果を発揮する歯周病の治療方法を実現し提供することができる。
【0031】
請求項14記載の発明によれば、上記プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片を歯肉の炎症が認められた義歯の周りの歯肉や義歯内面の粘膜、義歯の表面若しくは裏面に、又は義歯の表面、裏面双方に入れるか、又は貼るだけで、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ義歯の周り及び義歯の内面が衛生的になり歯肉の引き締めと、義歯の吸着性向上を図ることができ、従来に無い極めて有益で、かつ、安全な治療効果を発揮する歯周病の治療方法を実現し提供することができる。
【0032】
請求項15記載の発明によれば、上記プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片を歯肉の炎症が認められたインプラントの周りのポケット内に入れるだけで、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させインプラントの周りの歯肉の引き締めを図ることができ、従来に無い極めて有益で、かつ、安全な治療効果を発揮する歯周病の治療方法を実現し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は本発明の実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを挿入する歯周ポケットの領域の概略説明図である。
【図2】図2は本実施例に係る食用シート小片の作製過程を示す説明図である。
【図3】図3は本実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを歯周ポケットに挿入する態様を示す説明図である。
【図4】図4は本実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを使用する臨床例1の施術過程を示す説明図である。
【図5】図5は本実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを使用する臨床例2の説明図である。
【図6】図6は本実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを使用する臨床例3の説明図である。
【図7】図7は本実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを使用する臨床例4の説明図である。
【図8】図8は本実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを使用する臨床例5の説明図である。
【図9】図9は本実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを使用する臨床例5の他の例を示す説明図である。
【図10】図10は本実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを使用する臨床例6の説明図である。
【図11】図11は本実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを使用する臨床例7における総義歯の場合の説明図である。
【図12】図12は本実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを使用する臨床例7におけるパーシャルデンチャータイプの義歯の場合の説明図である。
【図13】図13は本実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを使用する臨床例7における差し歯タイプ(内冠タイプ)の場合の説明図である。
【図14】図14は本実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを使用する臨床例7における口蓋隆起のある総義歯の場合の説明図である。
【図15】図15は本実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを使用する臨床例7におけるコーヌスタイプの義歯の説明図である。
【図16】図16は本実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを使用する臨床例8におけるインプラントのポケットを示す説明図である。
【図17】図17は本実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを使用する臨床例8におけるインプラントのポケットにプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを挿入した状態を示す説明図である。
【図18】図18は上顎、下顎の歯列を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性を利用して、歯の歯周病等について従来に無い極めて有益な治療効果を発揮する歯周病用治療材を実現し実現し提供するという目的を、炎症が生じた歯周病患部に、又は歯肉の炎症が認められた歯周ポケット内に、或いは根分岐部領域の歯肉の炎症が認められた部分に、若しくは炎症が認められた歯牙の間における歯肉の部分に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により歯周病患部をはじめとする炎症を消失させて歯肉の引き締めを行なうことができるようにしたことにより実現した。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例に係る歯周病用治療材及び該歯周病用治療材を用いた歯周病の治療方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
本実施例において使用するプロタミン分解ペプチドを含有する食用シートSは、保存料であるプロタミン分解ペプチド、食塩、増粘安定剤(HPC、アルギン酸Na、HPMC)、乳化剤、甘味料及び香料を用いてシート状に作製したドライマウス食品である(製造者:ロート製薬株式会社、販売者:株式会社松風)。
【0037】
本発明の実施例に係るプロタミン分解ペプチドを含有する食用シート小片1は、上記食用シートSを利用したものであり、図2を参照して食用シート小片1の作成例について説明する。
【0038】
図2に示すように、プロタミン分解ペプチドを含有する例えば略楕円形状の食用シートSを用意し、これを2片又は3片等の細長片に裁断する。
【0039】
次に、細長片を、歯周ポケットやインプラント周囲のポケットに入れ易くするために例えば三角形状又は略三角形状の小片に切断し、本実施例の食用シート小片1を得るものである。
【0040】
以下、図1、図3をも参照して本発明に係る歯周病用治療材である前記食用シート小片1を用いた歯周病治療方法について詳述する。
なお、本発明に係る歯周病用治療材は、前記プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートSを前記2片又は3片等に裁断して食用シート小片1に形成することなく、当該食用シートSをそのまま歯周病用治療材として構成しても良く、また、本発明に係る歯周病治療方法は、前記プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートSを前記2片又は3片等に裁断して食用シート小片1に形成することなく、当該食用シートSをそのまま用いるように構成しても良い。また、後記するように、本発明においては、食用シートSや食用シート小片1の大きさは、各々の症例に合わせて自在に裁断して用いるようにしても良いことは勿論である。
【0041】
(準備及び術式例)
図1に示すように、食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを歯周ポケット(human peridontal pocket)12内に入れる前に、必ず歯周ポケット12内を、探針を使用して、その深さ(骨の吸収の度合い)、歯牙2の外周における歯石11の有無、内緑上皮(不良肉芽)の炎症の有無のチェック確認を実行する。特に、歯石11がある場合には、術前に必ず歯石除去を行う。
【0042】
次に、歯周ポケット内が清浄になったことを確認する。また、食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを歯周ポケット12内に入れる時には、歯周ポケット12内がウェットな状態でないと入らないことがある点に留意する。
【0043】
歯周ポケット12内に出血がある場合には、そのまま入れることができる。出血がなければ、スリーウェーシリンジで歯周ポケット内をウェットにする。
【0044】
そして、食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを、図3に示すように、ピンセット5で挟み、歯周ポケット12内に挿入するものである。
【0045】
次に、前記食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを用いた歯周病治療方法の各種の臨床例について場合を別けて説明する。なお、図18は、上顎、下顎の歯列を概略的に示すものである。
【0046】
(臨床例1);歯周ポケット12があり、歯肉3に炎症がある例
(症状)
図4に示す歯牙2の周りにおける歯周ポケット12の深さが5〜10mmであり、歯肉3に炎症がある58才男性
(施術)
歯周ポケット12内をチェックした後、歯石11を除去した。炎症は中程度であり、内緑上皮に不良肉芽はなかった。また、スケーリング時に出血があった。
【0047】
次に、歯周ポケット12内に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを押し込むようにして挿入した。この場合、挿入開始時には食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートは多少硬いが1分位経過すると柔らかくなり、すべて押し込むことができた。
【0048】
また、必要に応じて歯肉3の部分にレーザー光照射を行うことで、歯肉の引き締めが早く良好となった。
食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートの挿入後5分位経過すると、歯周ポケット12内の食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートは、べたついたゼリー状となった。
(臨床経過)
施術終了後24時間経過すると、歯肉3の炎症は減少し、48時間乃至72時間経過後では歯肉3は締まった状態に変化し、1週間経過後では良好な歯肉3となった。
【0049】
(臨床例2);図5に示す下顎の4,5番の歯牙2に動揺があり、Hys(知覚過敏)もある例
(症状)
58才男性で、全身的には軽い糖尿病があり、投薬中の患者。また、高血圧で1日1回の投薬、ブラッシングの状態は普通(ブラッシング時にはどこかわからないが毎回出血あり)、Hys(知覚過敏)は食事をする時に多少あり、冷刺激がある。歯牙2の隣接面に、食片13の圧入あり。
更に、歯周ポケット12の深さは6乃至8mmあり、その部分にHys(知覚過敏)がある。
【0050】
(施術)
歯周ポケット12内をチェックした後、歯石11を除去した。
次に、臨床例1の場合と同様、歯周ポケット12内に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを押し込むようにして挿入した。
(臨床経過)
施術終了後4乃至5時間経過すると、炎症による痛みは消失し、施術終了後48時間経過後には、歯肉3の炎症は減少した。更に、1週間経過後では歯肉3も引き締まり、Hys(知覚過敏)も消失した。
【0051】
(臨床例3);根分岐部14の病変:図6に示す下顎の6番の歯牙2に炎症(腫脹)があり、出血ありの例
(症状)
50才女性の患者で、全身的には、多少花粉症がある以外は特になし。今まではルートプレーニング後、ペリオィールを入れた状態でチェックしてきたが、2乃至3ヶ月に一度腫脹があった。
下顎の歯牙2の下部における歯肉3に根分岐部14の病変があり、また、歯周ポケット12も深い。
(施術)
歯周ポケット12内をチェックした後、レーザー光照射(無麻酔)で(歯肉切除し)歯周ポケット12の深さを1/3程度にしてから、ルートプレーニングを行った。
特に、根分岐部14の病変領域のルートプレーニング時には不良肉牙があればそのときに除去する。
前記根分岐部14の歯周ポケット12がきれいになってから、食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを入るだけ(根分岐部14の病変領域が埋まるまで)挿入した。
(臨床経過)
施術終了後、1日経過で痛みは消え、1週間経過した状態では、炎症は消失した。食べ物の詰まりは殆ど無くなった。
1週間経過後、再度、食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを歯周ポケット12に入れた。そして、3週間経過後では歯肉3は引き締まり、4週間経過後では歯周ポケット12は浅くなった。
【0052】
(臨床例4);食片圧入例(下顎5,4番の歯牙2間に食片13が詰まり激痛がある例)
(症状)
23才男性の患者で、図7に示すように、上顎5,4番の歯牙2間に食片13が詰まって、3日後歯肉3が圧迫され激痛があるために来院
(施術)
インナーブラシを用いて詰まった食片13をある程度除去した後、探針を用いて深い部分の食片13を掻き揚げた。
次に、スリーウェーシリンジを用いて、エアーを5,4番の前記歯牙2の隣接面部にかけた。この際、Hys(知覚過敏)があるか否かに留意する。
次に、食片13があった部分に、食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートをたっぷりと詰めた。このとき、食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを30秒位生食に浸しておいたものを用いると好適である。
また、食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートがある程度ゼリー状になってから患者に「うがい」をさせるようにしても良い。
(臨床経過)
施術後、2乃至3時間で歯肉3の痛み、違和感は消失した(鎮痛効果も発揮した)。
【0053】
また、施術5日後、歯肉3は元の状態に回復した。
【0054】
なお、通常の食片除去、消炎鎮痛剤投薬による治療では、痛みの消失に24時間、歯肉回復に48時間以上かかることが知られている。
【0055】
(臨床例5);図8に示す歯牙2の抜歯窩23に食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを入れた例
(症状)
61才男性の患者で、歯牙2の下部に病巣あり。
(施術)及び(臨床経過)
歯牙2を抜いた後に、抜歯窩23にコラプラグ21(又はテルプラグ)を入れ、上部に食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを載せ、更に縫合した。
【0056】
この結果、短期間に歯肉上皮がコラプラグ21の上面を覆うことが確認できた。
また、抜歯窩23に図9に示すように人工骨22を装着使用した場合、人工骨22の上部に、予め30秒ほど生食にした浸し食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを載せ、更に縫合した。この場合も、短期間に歯肉上皮が上面を覆うことが確認できた。
術後疼痛は殆どなく、また、抜歯時に出血を伴った例では術後の状態が一層良好であった。
【0057】
(臨床例6);腫脹(のう胞24)がある例
(症状)
60才の女性患者で、図10に示すように、上顎の6番の歯牙2の近くにおける歯肉3、骨4に、腫脹(のう胞24)があり、痛みはない。
(施術)及び(臨床経過)
まず、抗生物質と消炎鎮痛剤を投与し、麻酔下でのう胞24の部分を除去した。
次に、人工骨22、コラプラグ21の代わりに、予め30秒ほど生食に浸した食用シートSを、4枚を詰めて縫合した。
なお、通常の治療では、のう胞24を除去した後、人工骨22、コラプラグ21を入れ空洞を埋めることが行われている。
(臨床経過)
3日後に来院した患者の患部を確認した。術疼痛は殆どなかった。鎮痛薬は使用しなかった。5日後では、患部は粘膜でふさがれていたため、抜糸を行った。粘膜の治りは非常に早かった。
【0058】
(臨床例7);義歯に対する使用例
義歯16を使用している患者は、口臭が気になる、義歯16を使用し始めてから口の中が乾燥する、義歯16の内面が汚れる、粘膜に炎症がおき易く義歯16の吸着が悪い、等の悩みを抱えている。
【0059】
上述したような悩みの要因は、口腔内乾燥が主要な要因であり、その大きな原因は唾液量の減少である。
【0060】
これは、高齢者の場合夜眠れないため睡眠導入剤や精神安定剤を服用すること、若年層ではうつ病やストレス解消のため精神科関係の薬剤を使用することが多いこと等に起因するものと考えられている。
【0061】
口腔内が乾燥すると、口腔内にカンジダ菌等が増え、不衛生になり、この結果、義歯の吸着は悪くなり、粘膜は炎症を起こしてしまう。
【0062】
本実施例に係る食用シートSは、プロタミン分解物がカンジダ菌(真菌)に対して抗カンジダ活性を示すことから、総義歯15、義歯16の内面の清浄化、粘膜の炎症防止を実現するものである。
【0063】
図11に示すように、食用シートSを総義歯15の内面に貼る場合、最初にその内面を清浄にした後、この総義歯15の内面における軟口蓋15aの近くに貼ることが好ましい。
【0064】
この場合、食用シートSを事前に30秒乃至1分程度生食に浸し少し柔軟にしたものを貼ることが好ましい。
【0065】
このようにして、食用シートSを総義歯15の内面に貼った場合、総義歯15の吸着の助けとなるとともに、副次的に食用シートSが溶けて咽喉部の方までその成分がたれ下がり、インフルエンザ感染防止を図ることができるという効果も期待できる。
なお、前記食用シートSを総義歯15の内面に貼るとともに、その外面にも貼るという使用態様とすることも勿論可能である。
【0066】
義歯16に関しては、内面に軟性リベース剤(シリコン)や、ティッシュコンディショナー等のようないろいろな材質のものを貼ることが多いが、本実施例に係る食用シートSを使用しても全て何等の支障もなかった。
【0067】
図12に示すように、パーシャルデンチャー(部分義歯)タイプの義歯16の場合で、周囲の肉部分に触って炎症を起こしているとき等にも本実施例に係る食用シートSや食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートは炎症消失に効果があった。なお、前記したように、本実施例において示すいずれの臨床例の場合においても同様であるが、食用シートSや食用シート小片1の大きさは、その症例に合わせて自在に裁断して行なう。
【0068】
図13に示す義歯17の場合も、本実施例に係る食用シートSや食用シート小片1の大きさを症例に合わせて自在に裁断して、これをその内面に貼ることにより、同様な効果が認められた。
【0069】
図14に示すように、口蓋隆起18がある場合には、総義歯15の内面に前記口蓋隆起18を避けるようにして食用シートSや食用シート小片1の大きさを症例に合わせて自在に裁断して、これを貼り付ける。
【0070】
このようにすれば、総義歯15の内面に生じるぬめりを除去し易くなるという効果を確認できた。
【0071】
図15に示すように、コーヌスタイプの内冠19の場合には、残存歯牙の内冠19周辺のメンテナンス時に、歯周ポケット12や炎症がある場合でも、歯周ポケット12への食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートの挿入により、良好な治療効果が得られた。
【0072】
(臨床例8);インプラント周囲炎に対する使用例
図16に示すように、インプラント20の周囲のポケット12が深く、食片13等が詰まり炎症が強くなったり、横から圧迫すると圧痛があったりする場合においても、既述した場合と同様にして、図17に示すように、前記食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートをインプラント20の周囲のポケット12内全体に挿入する。なお、投薬はなしとした。
【0073】
施術後1週間経過で確認したところ、歯肉は引き締まり圧痛もなくなったことを確認できた。
【0074】
以上説明した本実施例によれば、歯牙2の周りの歯周病、義歯16やインプラント20の周りの歯肉炎症、更には抜歯窩上への上皮増殖について、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性を利用した食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートによる従来に無い極めて有益で、かつ、安全な治療効果を発揮する歯周病用治療材を実現し提供することができる。
【0075】
すなわち、本実施例によれば、炎症が生じた歯周病患部に、又は歯肉の炎症が認められた歯周ポケット内に、或いは根分岐部領域の歯肉の炎症が認められた部分に、若しくは炎症が認められた歯牙の間における歯肉の部分に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により歯周病患部をはじめとする炎症を消失させて歯肉の引き締めを行なうことができるようにしたことを特徴とする歯周病用治療材を実現し提供することができ、また、歯周病に起因する抜歯窩に装着したコラプラグ又は人工骨の上に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を入れ、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させてコラプラグ又は人工骨上への粘膜上皮組織の包覆を行なうことができるようにしたことを特徴とする歯周病用治療材を実現し提供することができる。
【0076】
更に、本実施例によれば、歯周病に起因する腫脹除去後の患部空洞部に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を入れ、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させて患部空洞部への粘膜組織の包覆を行なうことができるようにしたことを特徴とする歯周病用治療材を実現し提供することができ、また、歯肉の炎症が認められた義歯の周りの歯肉や義歯内面の粘膜、義歯の表面若しくは裏面に、又は義歯の表面、裏面双方に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ義歯の周りにおける歯肉の引き締めと義歯の吸着性向上を行なうことができるようにしたことを特徴とする歯周病用治療材を実現し提供することができ、更に、歯肉の炎症が認められたインプラントの周りのポケット内に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させインプラントの周りにおける歯肉の引き締めを行なうことができるようにしたことを特徴とする歯周病用治療材を実現し提供することができる。
【0077】
また、本実施例によれば、上記食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートを歯周病患部や抜歯窩上に入れるだけで、歯周病、歯肉炎症に対する従来に無い極めて有益で、かつ、安全な治療効果を発揮する歯周病の治療方法を実現し提供することができる。
【0078】
すなわち、本実施例によれば、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を、炎症が生じた歯周病患部に挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により歯周病患部の炎症を消失させ歯肉の引き締めを図ることを特徴とする歯周病の治療方法を実現して提供することができ、また、歯肉の炎症が認められた歯周ポケット内に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ歯肉の引き締めを図ることを特徴とする歯周病の治療方法を実現して提供することができ、更に、根分岐部領域の歯肉の炎症が認められた部分に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ前記歯肉の引き締めを図ることを特徴とする歯周病の治療方法を実現して提供することができ、更にまた、炎症が認められた歯牙の間における歯肉の部分に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ歯肉の引き締めを図ることを特徴とする歯周病の治療方法を実現して提供することができる。
【0079】
更に、本実施例によれば、歯周病に起因する抜歯窩に装着したコラプラグ又は人工骨の上に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を入れ、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ、コラプラグ又は人工骨上への粘膜上皮組織の包覆を図ることを特徴とする歯周病の治療方法を実現して提供することができ、また、歯周病に起因する腫脹除去後の患部空洞部に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を入れ、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ、患部空洞部への粘膜組織の包覆を図ることを特徴とする歯周病の治療方法を実現して提供することができ、更に、歯肉の炎症が認められた義歯の周りの歯肉や義歯内面の粘膜、義歯の表面若しくは裏面に、又は義歯の表面、裏面双方に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ義歯の周りにおける歯肉の引き締めと、義歯の吸着性向上を図ることを特徴とする歯周病の治療方法を実現して提供することができ、更にまた、歯肉の炎症が認められたインプラントの周りのポケット内に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートS又は食用シート小片1或いは症例に合わせて自在の大きさに裁断した食用シートからなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させインプラントの周りの歯肉の引き締めを図ることを特徴とする歯周病の治療方法を実現して提供することができる。
【0080】
なお、本発明に係る歯周病用治療材は、前記プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートSを前記2片又は3片等に裁断して食用シート小片1に形成することなく、当該食用シートSをそのまま歯周病用治療材として構成しても良く、また、本発明に係る歯周病治療方法は、前記プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートSを前記2片又は3片等に裁断して食用シート小片1に形成することなく、当該食用シートSをそのまま用いるように構成しても良く、更に、食用シートSや食用シート小片1の大きさは、各々の症例に合わせて自在に裁断して用いるようにしても良いことは前述した通りである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る歯周病用治療材及び該歯周病用治療材を用いた歯周病の治療方法は、歯周病治療、抜歯窩か上への上皮増殖、更には、義歯の吸着性向上に関して、有病者でも、多種薬剤の使用中でも、老若男女を問わず幅広い年齢層の患者に広範に、かつ、安全に適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 食用シート小片
2 歯牙
3 歯肉
4 骨
5 ピンセット
11 歯石
12 ポケット
13 食片
14 根分岐部
15 総義歯
15a 軟口蓋
16 義歯
17 義歯
18 口蓋隆起
19 コーヌスタイプの義歯(内冠)
20 インプラント
21 コラプラグ
22 人工骨
23 抜歯窩
24 のう胞
S 食用シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートからなることを特徴とする歯周病用治療材。
【請求項2】
プロタミン分解ペプチドを含有する食用シートを裁断した食用シート小片からなることを特徴とする歯周病用治療材。
【請求項3】
炎症が生じた歯周病患部に、又は歯肉の炎症が認められた歯周ポケット内に、或いは根分岐部領域の歯肉の炎症が認められた部分に、若しくは炎症が認められた歯牙の間における歯肉の部分に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により歯周病患部をはじめとする炎症を消失させて歯肉の引き締めを行なうことができるようにしたことを特徴とする歯周病用治療材。
【請求項4】
歯周病に起因する抜歯窩に装着したコラプラグ又は人工骨の上に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を入れ、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させてコラプラグ又は人工骨上への粘膜上皮組織の包覆を行なうことができるようにしたことを特徴とする歯周病用治療材。
【請求項5】
歯周病に起因する腫脹除去後の患部空洞部に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を入れ、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させて患部空洞部への粘膜組織の包覆を行なうことができるようにしたことを特徴とする歯周病用治療材。
【請求項6】
歯肉の炎症が認められた義歯の周りの歯肉や義歯内面の粘膜、義歯の表面若しくは裏面に、又は義歯の表面、裏面双方に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ義歯の周りにおける歯肉の引き締めと義歯の吸着性向上を行なうことができるようにしたことを特徴とする歯周病用治療材。
【請求項7】
歯肉の炎症が認められたインプラントの周りのポケット内に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させインプラントの周りにおける歯肉の引き締めを行なうことができるようにしたことを特徴とする歯周病用治療材。
【請求項8】
プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を、炎症が生じた歯周病患部に挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により歯周病患部の炎症を消失させ歯肉の引き締めを図ることを特徴とする歯周病の治療方法。
【請求項9】
歯肉の炎症が認められた歯周ポケット内に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ歯肉の引き締めを図ることを特徴とする歯周病の治療方法。
【請求項10】
根分岐部領域の歯肉の炎症が認められた部分に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ前記歯肉の引き締めを図ることを特徴とする歯周病の治療方法。
【請求項11】
炎症が認められた歯牙の間における歯肉の部分に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ歯肉の引き締めを図ることを特徴とする歯周病の治療方法。
【請求項12】
歯周病に起因する抜歯窩に装着したコラプラグ又は人工骨の上に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を入れ、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ、コラプラグ又は人工骨上への粘膜上皮組織の包覆を図ることを特徴とする歯周病の治療方法。
【請求項13】
歯周病に起因する腫脹除去後の患部空洞部に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を入れ、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ、患部空洞部への粘膜組織の包覆を図ることを特徴とする歯周病の治療方法。
【請求項14】
歯肉の炎症が認められた義歯の周りの歯肉や義歯内面の粘膜、義歯の表面若しくは裏面に、又は義歯の表面、裏面双方に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させ義歯の周りにおける歯肉の引き締めと、義歯の吸着性向上を図ることを特徴とする歯周病の治療方法。
【請求項15】
歯肉の炎症が認められたインプラントの周りのポケット内に、プロタミン分解ペプチドを含有する食用シート又は当該食用シートを裁断した食用シート小片からなる歯周病用治療材を挿入し、プロタミン分解ペプチドの抗カンジダ活性により炎症を消失させインプラントの周りの歯肉の引き締めを図ることを特徴とする歯周病の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−225490(P2011−225490A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98033(P2010−98033)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(508136445)
【Fターム(参考)】