説明

歯形認証を用いた身分証明書

【課題】
身分証明書には多様な偽造防止技術が施されている。ただ、身分証明書が本物であってもそれを所持する者が偽者である虞があり、その真偽を鑑別する方法としては主に顔写真による照合が採用されている。しかし、旅券や外国人登録証などの身分証明書に基づいて本人確認する場合において、これら身分証明書に貼付又は印刷されている顔写真のみに依拠する方法では人種の違い等により鑑別が困難な場合がある。
【解決手段】
そこで、本発明は身分証明書に直接本人の顎模型及び歯痕を付すことにより、本人確認の際に咬噛させる被咬体の歯痕と身分証明書の顎模型とを噛み合わせる等して整合性を見ることによって真偽を鑑別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顎模型及び歯痕を用いた個人認証に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、犯罪捜査において歯痕から犯人を割り出す場合、現場に遺留された食品や物体などの歯痕、被疑者の顎模型、現場に遺留された同種類の材料を被疑者本人に直接噛ませた対象物、の3点が揃っていることが歯痕鑑定の必要条件とされている。
【0003】
また、歯並びから個人を認証する技術としては、予め登録した歯並び画像と被認証者を撮影することで得る歯並び画像とを照合する特許文献1などがある。
【特許文献1】特開2000−293689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
身分証明書には多様な偽造防止技術が施されている。ただ、身分証明書が本物であってもそれを所持する者が偽者である虞があり、その真偽を鑑別する方法としては主に顔写真による照合が採用されている。しかし、旅券や外国人登録証明書などの身分証明書に基づいて本人確認する場合において、これら身分証明書に貼付又は印刷されている顔写真のみに依拠する方法では人種の違い等により鑑別が困難な場合がある。
【0005】
そうした事態に対処すべく、顔写真の他に指紋などの生体情報を付して生体情報に基づいて本人確認する場合もあるが、その際には確認の度に指紋照合装置を要し、例えば特許文献1のような撮影した歯並び画像を照合する場合においても同様に設備が必要であり、照合装置のない環境においては本人確認できないという不便があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は身分証明書に直接本人の顎模型又は歯痕、若しくは顎模型と歯痕の両方を付し、鑑別の際に咬噛させた被咬体と身分証明書の顎模型とを噛み合わせる等して整合性を見ることによって真偽を鑑別する。
【発明の効果】
【0007】
身分証明書に顎模型及び歯痕を付し一体化させることで身分証明書に基づく本人確認の精度が向上する。これは歯形という生体情報でありながら、歯痕を顕在した被咬体と顎模型との噛み合わせを直接見ることで特別な照合装置を要することなく簡易な生体鑑別を実現する。特に人種の違いなどにより顔写真のみでは判別が困難な場合に有効な鑑別方法を供する。
【0008】
尚、顎模型を作製する際に、身分証明書に付すものとは別個に顎模型及び歯痕を作製し保管しておくことで、本人確認に疑義がある場合により精度の高い鑑別を行うことができる。また、身分証明書や顎模型が変造された場合にも保管した顎模型及び歯痕との照合により変造を発見することができ、再発行の際に起こり得る第三者による成り代わり申請を防ぐこともできる。
【0009】
また、事件や事故によって外観からの個人識別が不能な場合に、身分証明書と一体化した顎模型及び歯痕が個人識別の手段となる。そして、歯形は容易に変容しないことから、一度顎模型を作製すればカルテなどの歯科的資料がない場合であっても長期に亘り個人を特定することができ、公的機関が発行し広く普及した身分証明書に顎模型や歯痕があれば、事件や事故の事後処理を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施例を説明する。例えば、外国人登録証明書を発行する際に、まず申請人の顎模型1並びに歯痕2を付けた被咬体3を作製し、これら顎模型1と被咬体3は被申請人側が保管する。
【0011】
次に、顎模型1及び歯痕2に基づいて、これらとは別個に外国人登録証明書自体の所定の部位にエンボス加工によって刻印するように表側は顎模型4を突起させ裏側は歯痕5に凹ませた外国人登録証明書6を設ける。尚、顎模型4及び歯痕5は鑑別する際に咬噛しやすく個人識別上最も有用な上顎左右の中切歯、側切歯、犬歯の6本の歯牙について作製し、歯牙は外国人登録証明書6の所持に支障がないよう1mmないし2mmの高さに突起させるのが望ましい。また、材質は変造を防止する特殊プラスチックにするのが好ましい。
【0012】
そして、咬んだ印象面が明確に残る板ガム状の被咬体7を設け、本人確認する際に被咬体7を咬噛させることにより歯痕8を顕在させる。これに基づいて従前の顔写真による照合に加えて歯形についての照合を行う。すなわち、咬噛者の歯痕8と外国人登録証明書6の顎模型4とを噛み合わせ、両者の整合を鑑別し、更に外国人登録証明書6の歯痕5と歯痕8との形状を比較し、両者の同一性を鑑別する。
【0013】
顎模型4と歯痕8との整合、及び歯痕5と歯痕8との形状比較を行うことで外国人登録証明書が証明する登録者と咬噛者との同一性を鑑別し本人確認が完了する。この鑑別方法によれば、被咬体7を所持してさえいれば、他に何ら照合装置を用いることなく、また時間的空間的な制約を受けずに、簡易に生体情報に基づいた鑑別を行うことができる。また、犯罪捜査において現場に遺留したチューインガム等の咬痕からする個人の特定と同等の精度で外国人登録証明書6の本人確認を実現する。
【0014】
外国人登録証明書6の破損や偽変造などにより鑑別が不明朗で更に精度の高い鑑別を要する場合には、顎模型4及び歯痕5にかわって、被申請人側が保管する顎模型1及び歯痕2を用いて鑑別を行う。すなわち、歯痕2を有する被咬体3とは別に、歯痕のない被咬体に咬噛させ、この被咬体に顕在した歯痕と予め保存した歯痕2、及び顎模型3の3点に基づいて精査に鑑別する。
【0015】
更に、顎模型1と歯痕2、及び顎模型4と歯痕5、とを相互に噛み合わせ、又は形状を比較することで、本人確認に加えて外国人登録証明書6自体の真偽を判別し、偽変造を発見することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に用いる顎模型および歯痕の斜視図である。
【図2】本発明の実施例の表側を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例の裏側を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例に用いる被咬体の斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
1顎模型
2歯痕
3被咬体
4顎模型
5歯痕
6外国人登録証明書
7被咬体
8歯痕


【特許請求の範囲】
【請求項1】
旅券や外国人登録証明書などの身分を証明する文書であって、身分証明書本人の顎模型又は歯痕、若しくは顎模型及び歯痕の双方を具備したことを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−62234(P2007−62234A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252960(P2005−252960)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(305037282)有限会社DNPカードサービス (5)
【Fターム(参考)】