説明

歯科治療用マイクロエンジンインスツルメント

【課題】歯科用マイクロエンジンインスツルメントにおいて、モータの回転軸の回転を磁気カップリングを介して非接触にて伝達するようにするとともに、この非接触のカップリングの磁石間に隔壁板を配設し、該隔壁板にて液体等がモータ内部に侵入するのを防止し、もって、モータの回転不良などの不具合を防止する。
【解決手段】ヘッド部5の回転筒6に歯牙を治療するためのバー7を装着し、モータ1の回転軸2の回転を該バー7に伝達し、該バー7を回転して歯牙の治療を行う。モータ1の回転軸2の端部と動力伝達軸41の端部に対向してかつ所定の間隔をおいて磁石11aと11bを設け、かつ、これら磁石11aと11bの間に動力伝達軸41側とモータ回転軸2とを隔絶する隔壁板20を設けた。この隔壁板20により、ヘッド部5からモータ1へ液体等が侵入するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用ハンドピース、より詳細には、歯科治療において、歯牙の切削等に用いるマイクロエンジン(マイクロモータ)インスツルメントにおける電動機(モータ)内部への液体その他異物の侵入を防止し、モータの寿命の向上を図ったものである。
【背景技術】
【0002】
歯科治療においては、歯牙の切削等にマイクロエンジン(マイクロモータ)インスツルメントを用いるが、このマイクロエンジンインスツルメントは、モータの回転軸の回転を動力伝達軸を通してヘッド部の歯科治療具(例えば、歯牙切削バー)に伝達し、該バーの回転によって歯牙の切削等を行うものであるが、バー回転中、ヘッド部先端より液体等の吸い込みが発生し、該液体等がモータ内に侵入し、モータが回転不良を起こす等の不具合があった。
【0003】
図2は、本発明が適用される従来のマイクロエンジン(マイクロモータ)インスツルメントの一例を説明するための要部概略断面構成図で、図中、10はマイクロエンジンインスツルメントで、該インスツルメント10は、動力源としての電動機(モータ)1を有する動力部9と、該動力部9が連結されるハンドピース部8(81,82,83)とから成り、動力部9のモータ1の回転軸2の回転がハンドピース8内の連結機構3、動力伝達軸41,42等を介して、該ハンドピース部先端のヘッド部5に設けられている回転筒6を回転する。この回転筒6にはチャック機構が一体的に取り付けられており、該チャック機構は前記回転筒6と一体的に回転する。このチャック機構には、例えば、歯牙を切削する切削具(バー)7が着脱自在に装着され、該バー7が回転されて歯牙の切削が行われる。
【0004】
上述のように、マイクロエンジンインスツルメントは、モータ1の回転軸2の回転を動力伝達軸41,42等を介してヘッド部5に装着されるバー7に伝達し、該バー7を回転するものであるが、この回転を伝達する動力伝達軸41,42と該動力伝達軸が挿通されるハンドピース8(81,82,83)との間に隙間があるため、この隙間を通して、ヘッド部5より液体や粉塵等が侵入し、これらがモータ1に蓄積され、モータ1が回転不良を起こす等の問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、歯科用マイクロエンジンインスツルメントにおいて、モータの回転軸の回転を磁気カップリングを介して非接触にて動力伝達軸に伝達するようにするとともに、この非接触の磁気カップリング間に隔壁板を配設し、該隔壁板にて液体もしくは何らかの粉塵や異物の通過を遮断し、液体等がモータ内部に侵入するのを防止し、もって、モータの回転不良などの不具合を防止することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の発明は、ハンドピース部と、該ハンドピース部に接続される動力部とを有し、該動力部に配設されたモータの回転軸の回転を前記ハンドピース部内に配設された動力伝達軸を介して該ハンドピース部の先端ヘッド部に伝達し、該ヘッド部に装着された歯牙治療用のバーを回転して歯牙の治療を行うようにした歯科用マイクロエンジンインスツルメントにおいて、前記モータの回転軸の端部に配設された磁石と前記動力伝達軸の端部に前記磁石に対向してかつ所定の間隔をおいて配設された磁石を有し、かつ、これら磁石の間に前記動力伝達軸側とモータ回転軸側との空間を隔絶する隔壁板を有することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、ハンドピースに接続されたモータの回転軸の回転を磁気カップリングを介して非接触にてハンドピース内の動力伝達軸に伝達するようにするとともに、この磁気カップリングを構成する磁石間(非接触の空間)に隔壁板を設け、この隔壁板によって液体等の通過を遮断し、モータ内に液体や粉塵等の異物が侵入しないようにしたので、モータの回転不良等の不具合を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による歯科用マイクロエンジンインスツルメントの実施例を説明するための要部概略断面構成図である。
【図2】従来の歯科用マイクロエンジンインスツルメントの一例を説明するための要部概略断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明による歯科治療用マイクロエンジンインスツルメントの実施例を説明するための要部概略断面構成図で、図1(A)は、本発明による隔壁板20を図2のAにて示す位置に設けた例、図1(B)は、Bにて示す位置に設けた例(図2に示した連結機構3をなくした例)を示す。なお、図1において、図2に示した従来のマイクロエンジンインスツルメントと同様の作用をする部分には、図2の場合と同一の参照番号が付してある。前述のように、従来のマイクロエンジンインスツルメントでは、切削バー7を回転中、ヘッド部5の先端より液体等の吸い込みが発生し、この液体がモータ1の内部まで侵入し、洗浄ができないモータ1は、侵入した液体(もしくは何らかの粉塵や異物の蓄積)により内部で回転不良などの不具合が発生してしまうが、本発明は、この不具合を、非接触で回転を伝達することのできる磁気カップリング11(11a,11b)と、この磁気カップリング11の非接触の空間(11aと11bの間)に配設された隔壁板20によって解消したものである。
【0010】
図1において、11aはモータ側の回転軸2の先端に取り付けられた磁石、11bはヘッド側の動力伝達軸41の端部に前記磁石11aに対向して所定の間隔をもって配設された磁石で、これら磁石11aと11bは非接触の磁気カップリング11を構成し、モータ1の回転軸2の回転は、該磁気カップリング11を介してヘッド部5の回転筒6に伝達され、該回転筒6に装着された切削バー7を回転し、従来のマイクロエンジンインスツルメントと全く同様にして使用される。
【0011】
磁気カップリング11を構成する磁石11aと11bの間には、これら磁石11a側と11b側とを隔絶する隔壁板20が設けられており、この隔壁板20によって、ヘッド部5からの液体や切削粉塵等の異物がモータ1側へ侵入するのを防止し、モータ1が回転不良を起こすようなことはなくなる。
【0012】
なお、図1(B)に示した例は、図1(A)における連結機構3をなくしたものであるが、このようにすると、連結機構3による振動、騒音を低減することができ、同時に、耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0013】
1…電動機(モータ)、2…モータ回転軸、3…連結機構、41,42…動力伝達軸、5…ヘッド部、6…回転筒、7…切削具(バー)、8(81,82,83)…ハンドピース部、9…動力部、11…磁気カップリング、11a,11b…磁石。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドピース部と、該ハンドピース部に接続される動力部とを有し、該動力部に配設されたモータの回転軸の回転を前記ハンドピース部内に配設された動力伝達軸を介して該ハンドピース部の先端ヘッド部に伝達し、該ヘッド部に装着された歯牙治療用のバーを回転して歯牙の治療を行うようにした歯科用マイクロエンジンインスツルメントにおいて、前記モータの回転軸の端部に配設された磁石と前記動力伝達軸の端部に前記磁石に対向してかつ所定の間隔をおいて配設された磁石を有し、かつ、これら磁石の間に前記動力伝達軸側とモータ回転軸側との空間を隔絶する隔壁板を有することを特徴とする歯科治療用マイクロエンジンインスツルメント。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−85955(P2012−85955A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237349(P2010−237349)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000150671)株式会社長田中央研究所 (194)
【Fターム(参考)】