説明

歯科用フロスホルダー

【課題】フロスを張設したフロスホルダーを電動式のハンドピースに着脱自在に装着し、該ハンドピースを用いてフロッシングを行う。
【解決手段】フロスホルダー20は、モータ11を内蔵し該モータの回転が該モータの回転軸12に対して直角の方向に往復動する運動に変換されるハンドピース20に着脱自在に装着される。フロスホルダー20は、2等辺3角形の2辺を構成する2本の脚部21a、21bと、該2本の脚部の交点を一体的に固定しハンドピース10に着脱自在に装着固定される連結固定部22と、前記脚部21a、21bの先端部にフロス30を張設固定するためのフロス固定部23a、23bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用フロスホルダー、より詳細には、歯牙表面に付着した歯垢を除去するのに使用されるフロス(Dental Floss)を張架し、該張架したフロスを電気的に往復動可能とした歯科用フロスホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療においては、フロス(Dental Floss:ナイロンやポリエステル等の繊維を多数本合せて作られた歯間清掃専用の細い糸)を歯間に挿入し、歯ブラシでは届かない歯間の歯側面や歯間下の歯ぐきに付着した歯垢を除去し、歯周病や虫歯を予防することが行われている。このフロスを用いた歯面の清掃を一般にフロッシングというが、このフロッシングは、通常、アシスタントによって行われている。
【0003】
図5は、従来のフロッシング作業の一例を説明するための図で、フロッシングを行うに当り、アシスタントは、周知のように、フロスを所望の長さに切断し、該切断したフロス1を所望の間隔をもって中指に数回巻き付け、その後、所望の間隔Dをもって親指と人差し指でつまみ、図6の左側に従来例として示すように、歯(T1)と歯(T2)の間に挿入し、歯ぐき部に達したら、一方の歯(図示例の場合、T1)の歯面にしっかり当て、しっかり当てた状態で上下に何度か移動させて、歯面に付着している歯垢を除去する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、歯科治療において、フロッシング作業に当り、アシスタントはフロスを所望の長さに切断し、切断したフロスを自分の指に巻き付ける等の準備作業をし、フロッシングに当っては、フロスを両手で強く引っ張りながら歯面に強く押し当てて移動させなくてはならず、準備作業に時間を要し、更には、実際のフロッシングに当って、フロスを両手でしっかり引っ張った状態でフロスを移動させなければならず、多大な労力を要する等の問題があった。
【0005】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、歯科治療におけるフロッシング作業に当り、準備作業に要するアシスタントの時間を短縮し、更には、フロッシングにおけるアシスタントの労力を節減することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、モータを内蔵し該モータの回転が該モータの回転軸に対して直角の方向に往復動する運動に変換されるハンドピースに着脱自在に装着されるフロスホルダーであって、該フロスホルダーは、2等辺3角形の2辺を構成する2本の脚部と、該2本の脚部の交点を一体的に固定し前記ハンドピースに着脱自在に装着固定される連結固定部と、前記各脚部の先端部にフロスを張設固定するためのフロス固定部を有することを特徴としたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記フロス固定部は、フロスを巻回張架する溝部を有し、該溝部は外周部より巻回軸心方向に向って溝幅が狭くなっており、該溝幅は、軸心近傍においてフロスの直径より狭くなっていることを特徴としたものである。
【0008】
請求項3の発明は、モータを内蔵し該モータの回転が該モータの回転軸に対して直角の方向に往復動する運動に変換されるハンドピースに着脱自在に装着されるフロスホルダーであって、該フロスホルダーは、2等辺3角形の2辺を構成する2本の脚部と、該2本の脚部の交点を一体的に固定し前記ハンドピースに着脱自在に装着固定される連結固定部と、前記脚部の先端部に着脱自在に装着固定されるフロス支持固定部材とから成り、該フロス支持固定部材は所定長さのフロスの両端部を支持固定したフロス支持固定部を有し、該フロス支持固定部を前記脚部先端部に着脱自在に装着し得るようにしたことを特徴としたものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記フロスの所定長さは、前記フロス支持固定部を前記脚部先端部に装着した時に、フロスが前記脚部先端部間に張設される長さであることを特徴としたものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項3又は4の発明において、前記脚部は弾性部材により構成されており、前記フロス支持固定部間は前記脚部先端部間の間隔よりやや短く形成されており、前記フロス支持固定部材を前記脚部先端部に装着する際に、前記脚部を弾性変形させて前記脚部先端部間の間隔を短くして前記フロス支持固定部を前記脚部先端部に装着するようにしたことを特徴としたものである。
【0011】
請求項6の発明は、モータを内蔵し該モータの回転が該モータの回転軸に対して直角の方向に往復動する運動に変換されるハンドピースに着脱自在に装着されるフロスホルダーであって、該フロスホルダーは、2等辺3角形の2辺を構成する2本の脚部と、該2本の脚部の交点を一体的に固定し前記ハンドピースに着脱自在に装着固定される連結固定部と、前記脚部の先端部間にフロスが固定支持されて張架されていることを特徴としたものである。
【0012】
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記脚部の長さが異なる複数種のフロスホルダーを準備して有することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、フロスホルダーに張設するフロスの長さは定まっているので、フロスを予め所定の長さに切断して多数本準備しておくことにより、その都度、フロスを所望長さに切断する必要がなく、また、自分の指等に巻き付ける必要もないので、フロッシング作業を行う前の準備が非常に楽になる。また、フロスが予めフロスホルダーに張設されて準備されている場合には、フロスをフロスホルダーに張設する作業も不要となり、更に、準備作業が楽になる。
【0014】
更に、本発明によると、フロスホルダーに張設されたフロスは、モータ等の動力によって、往復運動されるので、より効果的にフロッシングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による歯科用フロスホルダーがハンドピースに装着されている時の例を説明するための図である。
【図2】本発明による歯科用フロスホルダーの第1の実施例を説明するための図である。
【図3】本発明による歯科用フロスホルダーの第2の実施例を説明するための図である。
【図4】本発明による歯科用フロスホルダーの第3の実施例を説明するための図である。
【図5】フロッシング作業を行う場合の、従来のフロスの使い方を説明するための図である。
【図6】従来のフロッシングの仕方(図の左側)と本発明によるフロッシングの仕方(図の右側)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明によるフロスホルダーがハンドピースに装着されている時の例を説明するための構成図で、図中、10はフロスハンドピースで、該フロスハンドピース10には、本発明によるフロスホルダー20が着脱自在に装着される。ハンドピース10は、オシレートハンドピースとして周知のハンドピースと同等の動作をするもので、ハンドピース10内にマイクロモータ11を具備し、該マイクロモータ11によって回転される回転軸12の回転を、該回転軸と直交する方向の往復動振動に変換するもので、例えば、オシレートハンドピース、ソーサージタルハンドピース等として知られている。
【0017】
本発明は、上述のごとき動作をするオシレートハンドピース10の往復動振動軸に、フロスホルダー20を着脱自在に装着可能とし、該フロスホルダー20にフロス30を張設し、或いは、該フロスホルダー20にフロス30を一体的に張設しておき、該フロス30にて歯間の歯側面や歯間下の歯ぐきに付着した歯垢を除去するようにしたものである。図6の右側は、本発明によるフロスホルダーの使い方を示し、図示のように、フロス30を歯間(T2とT3の間)に挿入し、ハンドピース10を押すことによって歯T2の表面を、引くことによってT3の表面を清掃することができる。
【0018】
(実施例1)
フロスホルダー20は、2等辺3角形の2辺を構成する2本の脚部21a、21bと、これら2本の脚部21a、21bの交点において、これら2本の脚部21a、21bを一体的に固定するための連結固定部22を有し、該連結固定部22がハンドピース10内の往復振動軸に着脱自在に固定されるようになっている。
【0019】
脚部21a,21bの先端部には、フロス30を張架するための溝23a’、23b’を有する溝付フロス固定部23a、23bを有し、該溝23a’、23b’内にフロス30を巻回張架するようにしたものである。
【0020】
図2は、図1に示したフロスホルダー20の構成例を示す図で、この実施例は、図2(A)に示すように、フロスホルダー20とフロス30(破線にて示す)が別体に構成されており、使用に当り、アシスタントが、フロスホルダー20にフロス30を張架して使用するものである。図2(B)において、(a)図は、フロス固定部23a(23bも同じ)を正面(ホルダー10の軸に平行にするa方向)から見た図、(b)図は側面(ホルダー本体10の軸に直交するb方向)から見た図で、図示のように、溝23a’(23b’も同じ)は、フロス30の張架方向において溝幅が狭くなっており、中心に近い部分では、フロス30の直径よりも狭くなっている。
【0021】
従って、溝23a’内にフロス30を入れて数回巻き付け、強く引くと、フロス30は溝内に食い込み、フロス30をしっかり押えることができる。その後、他方のフロス固定部23b溝にフロスを入れて数回巻き付け、逆方向に強く引っ張ると、フロス30は、フロス固定部材23a、23b間にしっかり張架され、これにより、フロッシングを行うことができる。上述のように、図1及び図2に示した実施例は、その都度、フロスホルダー20にフロス30を張架して使用するようにした例を示したものであるが、以下の図3、図4に示すように、フロスの張架作業をなくし、アシスタントの張架作業を軽減することも可能である。
【0022】
(実施例2)
図3は、本発明によるフロスホルダーの他の実施例を説明するための要部構成図で、この実施例は、図1、図2に示したフロス固定部23a、23b間に予めフロス30を一体的に張架しておき、このフロス固定部23a、23bを脚部21a、21bの先端部21a’、21b’に着脱自在に装着するようにしたものである。
【0023】
この実施例によると、脚部23a、23bの間隔に合せた長さのフロス30を予め一体的に張設したフロス固定部材(図3中に破線にて示す部材)を多数準備しておき、アシスタントは、このフロス30を一体的に有するフロス固定部材を脚部23a、23bの先端部に21a’、21b’に装着するだけで、簡単に、フロス30をフロスホルダーに装着することができる。この場合、脚部21a、21bを弾性部材にて構成しておくと、フロス固定部材を23a、23bを脚部先端部21a’、21b’に装脱する場合に、脚部先端21a’、21b’の間の間隔を押し縮めて短くして装着するようにすると、フロス30をより強固に張設することができる。
【0024】
(実施例3)
図4は、本発明によるフロスホルダーの更に他の実施例を説明するための構成図で、この実施例は、フロスホルダー20にフロス30を予め一体的に張架したもの(図中、点線で囲んだ部分)を準備しておき、その都度、アシスタントがフロスホルダー全体をハンドピース10に交換、装着するようにしたものである。この実施例の場合、脚部(21a、21b)の長さの異なるものを複数準備しておくことが可能であり、アシスタントの使い勝手に応じて、或いは、治療部分に応じて、所望のものを選択して使用することができる。
【符号の説明】
【0025】
10…ハンドピース、20…フロスホルダー、21,21b…脚部、21a’,21b’…脚部先端、22…連結固定部、23a,23b…フロス固定部、23a’,23b’…溝、30…フロス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを内蔵し該モータの回転が該モータの回転軸に対して直角の方向に往復動する運動に変換されるハンドピースに着脱自在に装着されるフロスホルダーであって、該フロスホルダーは、2等辺3角形の2辺を構成する2本の脚部と、該2本の脚部の交点を一体的に固定し前記ハンドピースに着脱自在に装着固定される連結固定部と、前記各脚部の先端部にフロスを張設固定するためのフロス固定部を有することを特徴とする歯科用フロスホルダー。
【請求項2】
前記フロス固定部は、フロスを巻回張架する溝部を有し、該溝部は外周部より巻回軸心方向に向って溝幅が狭くなっており、該溝幅は、軸心近傍においてフロスの直径より狭くなっていることを特徴とする請求項1に記載の歯科用フロスホルダー。
【請求項3】
モータを内蔵し該モータの回転が該モータの回転軸に対して直角の方向に往復動する運動に変換されるハンドピースに着脱自在に装着されるフロスホルダーであって、該フロスホルダーは、2等辺3角形の2辺を構成する2本の脚部と、該2本の脚部の交点を一体的に固定し前記ハンドピースに着脱自在に装着固定される連結固定部と、前記脚部の先端部に着脱自在に装着固定されるフロス支持固定部材とから成り、該フロス支持固定部材は所定長さのフロスの両端部を支持固定したフロス支持固定部を有し、該フロス支持固定部を前記脚部先端部に着脱自在に装着し得るようにしたことを特徴とする歯科用フロスホルダー。
【請求項4】
前記フロスの所定長さは、前記フロス支持固定部を前記脚部先端部に装着した時に、フロスが前記脚部先端部間に張設される長さであることを特徴とする請求項3に記載の歯科用フロスホルダー。
【請求項5】
前記脚部は弾性部材により構成されており、前記フロス支持固定部間は前記脚部先端部間の間隔よりやや短く形成されており、前記フロス支持固定部材を前記脚部先端部に装着する際に、前記脚部を弾性変形させて前記脚部先端部間の間隔を短くして前記フロス支持固定部を前記脚部先端部に装着するようにしたことを特徴とする請求項3又は4に記載の歯科用フロスホルダー。
【請求項6】
モータを内蔵し該モータの回転が該モータの回転軸に対して直角の方向に往復動する運動に変換されるハンドピースに着脱自在に装着されるフロスホルダーであって、該フロスホルダーは、2等辺3角形の2辺を構成する2本の脚部と、該2本の脚部の交点を一体的に固定し前記ハンドピースに着脱自在に装着固定される連結固定部と、前記脚部の先端部間にフロスが固定支持されて張架されていることを特徴とする歯科用フロスホルダー。
【請求項7】
前記脚部の長さが異なる複数種のフロスホルダーを準備して有することを特徴とする請求項6に記載の歯科用フロスホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−99445(P2013−99445A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245130(P2011−245130)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000150671)株式会社長田中央研究所 (194)