説明

歯科用手動押出具

【課題】 気温が低いときにカートリッジ内の歯科用粘性材料が硬くなっても歯科用粘性材料を楽に押し出すことが可能な歯科用手動押出具を提供する。
【解決手段】 後端近傍にフランジ2aを有し先端にノズル2bを有するカートリッジ2から内容物である歯科用粘性材料を押し出すための歯科用手動押出具において、ハンドル部1aで押し出されるプランジャー1bが貫通したバレル1cの先端部分に、該カートリッジ2を該フランジ2aで係合させ収納するカートリッジ収納部1dを有する構成とされていて、カートリッジ収納部1dの周囲にヒーター1eを設けたことを特徴とする歯科用手動押出具1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジに収納された歯科用粘性材料を押し出すために用いる歯科用手動押出具に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療に於いて、歯科用充填材料や人工歯用材料,歯冠作製用材料等の歯科用粘性材料は筒状の使い捨て容器(以下、カートリッジと言う)に充填されて提供されている。歯科用粘性材料用のカートリッジは、先端にノズルと後端近傍にフランジを有する円筒状のカートリッジ本体と、その内部を摺動可能な内栓を備えて成るものが広く使用されている(例えば、特許文献1参照。)。このようなカートリッジは、専用の手動押出具(アプリケーター,アプライヤー)を用いて使用される(例えば、特許文献2〜6参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−353169号公報
【特許文献2】特開昭58−81033号公報
【特許文献3】特開平3−324675号公報
【特許文献4】特開平4−64699号公報
【特許文献5】特表平9−506271号公報
【特許文献6】特開2003−506271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯科用粘性材料は一般的に熱可塑性材料なので、使用時の気温が低くなると硬くなってしまいカートリッジから押し出し難くなる傾向がある。硬くなった歯科用粘性材料は押し出し難く特に腕力の無い使用者では扱い難くいのである。また、手動押出具は微妙な押し出し量を手指の力で加減して歯科用粘性材料の押出量を調整するものであるから、硬くなってしまった歯科用粘性材料は適量を押し出し難くいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、歯科用の手動押出具において歯科用粘性材料を温める機構を付与すれば前記課題を解決可能であることを見出して本発明を完成した。
【0006】
即ち本発明は、後端近傍にフランジを有し先端にノズルを有するカートリッジから内容物である歯科用粘性材料を押し出すための歯科用手動押出具において、ハンドル部で押し出されるプランジャーが貫通したバレルの先端部分に、該カートリッジを該フランジで係合させ収納するカートリッジ収納部を有する構成とされていて、カートリッジ収納部の周囲にヒーターを設けたことを特徴とする歯科用手動押出具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る歯科用手動押出具は、カートリッジ収納部の周囲にヒーターを設けたことにより、使用時の外気温が低くてもカートリッジに収納されている歯科用粘性材料を楽に押し出すことが可能な優れた歯科用手動押出具である。また、本発明に係る歯科用手動押出具を用いれば、歯科用粘性材料の粘度を術者の好む粘度に低下させて調整することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る歯科用手動押出具の一実施例を示す平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面中1は本発明に係る歯科用手動押出具であり、ハンドル部1aで押し出されるプランジャー1bが貫通したバレル1cの先端部分に、後述するカートリッジ2のフランジ2aを係合させるフランジ係合部1fを有するカートリッジ収納部1dが設けられている。このカートリッジ収納部1dの周囲にはヒーター1eが設けられており、カートリッジ2を温めることによって気温が低い場合であってもカートリッジ内の歯科用粘性材料が硬くなってしまうことがない。本実施例におけるカートリッジ収納部1dは、上部が開口しており該開口部からカートリッジを着脱可能となっている。
【0010】
ヒーター1eは抵抗線や酸化金属素子を用いた小型のヒーターが適しており、ヒーター1eとしてサーミスタを用いれば温度制御が容易となる。制御温度は歯科用粘性材料の温度特性から概ね20〜40℃で制御することが望ましく、長時間40℃を超えた状態が続くと歯科用粘性材料の変質や硬化の虞がある。ヒーター1eは図示したようにカートリッジ収納部1dの外側に設けられていても良いし、内側やカートリッジ収納部内に組み込まれていても良い。電源となる電池1mは歯科用手動押出具1の設計によって自由に配置可能である。実施例では前ハンドル1aa内に設けられており、電線1iでヒーター1eと接続されている。また、前ハンドル1aa下部には充電器(図示無し)と接続するための接続部1gを有している。更にヒーター1eのON−OFFのためのスイッチやその動作を知らせるパイロットランプ1hを適宜設けると操作性が向上する。
【0011】
ハンドル部1aは従来の手動押出具に利用されていたハンドル構造を使用することができる。実施例では前ハンドル1aaと後ハンドル1bbの二部品からなり、両ハンドルは図面中上側のヒンジ1acで接続されている。前ハンドル1aaにはバレル1cが固定または一体にして配備されていて、バレル1c内のプランジャー1b後端がスプリング1kを介して後ハンドル1abと接しているのが最も一般的な構造である。
【0012】
2は既述のカートリッジであり歯科用粘性材料を収める円筒状を成している。このカートリッジ2は、後端近傍に歯科用手動押出具1のカートリッジ収納部1dに設けられているフランジ係合部1fに装着するためのフランジ2aを有し先端にはノズル2bを有する。またカートリッジ2は、図示しないが、カートリッジ2内を摺動可能な内栓を有している。
【0013】
カートリッジ2の材質は従来から用いられている樹脂材料が使用可能であり、例えば、ポリエチレン,ポリアセタール,ポリプロピレン,ポリアミド,塩化ビニル樹脂,ナイロン,フェノール樹脂,ポリウレタン,飽和ポリエステル樹脂,メラミン樹脂 ,ポリ塩化ビニリデン,不飽和ポリエステル樹脂,ポリブタジエン,ポリスチレン,EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合)樹脂,スチロール樹脂,ポリメチルペンテン,メタクリルスチレン,ABS(アクロル二トリル,ブタジエン,スチレン)樹脂,ポリカーボネート等が例示される。
【符号の説明】
【0014】
1 歯科用手動押出具
1a ハンドル部
1aa 前ハンドル
1ab 後ハンドル
1ac ヒンジ
1b プランジャー
1c バレル
1d カートリッジ収納部
1e ヒーター
1f フランジ係合部
1g 接続部
1h パイロットランプ
1i 電線
1k スプリング
1m 電池
2 カートリッジ
2a フランジ
2b ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端近傍にフランジを有し先端にノズルを有するカートリッジから内容物である歯科用粘性材料を押し出すための歯科用手動押出具において、ハンドル部で押し出されるプランジャーが貫通したバレルの先端部分に、該カートリッジを該フランジで係合させ収納するカートリッジ収納部を有する構成とされていて、該カートリッジ収納部の周囲にヒーターを設けたことを特徴とする歯科用手動押出具。

【図1】
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【公開番号】特開2010−193941(P2010−193941A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39000(P2009−39000)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】