説明

歯科用石膏組成物

【課題】歯科技工士が義歯製作時に複模型をフラスコに埋没する時に使用する石膏は、ロウ義歯をフラスコ内に固定し空洞を作るだけの目的であるが、レジンを充填し、重合が終了した時点で完成した義歯を石膏塊から掘り出すのが、石膏の強度が高いため人工歯や義歯床を破損したり、技工士が手を傷めたり、筋肉痛や腱鞘炎を起したりする欠点があった。石膏から掘り出す時に強度が高く破壊の負担が大きいなどの欠点があった。
【解決手段】歯科用石膏100重量部に対し、珪藻土15〜45重量部を混合した歯科用石膏組成物を使用すると歯科技工士が義歯を石膏から掘り出す時に、石膏の強度が適度に低下すれば破壊し易くなり、完成した義歯の破損などが極端に減少し、作業効率も相当向上するものである。また、歯科技工士の筋肉痛や腱鞘炎がほとんど起こらなくなる。しかし歯科用石膏としての適正な強度は十分保持され、まったく問題がない。むしろ膨張率が低下し、より高精度の義歯が得られる利点もある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯科技工士が義歯製作時などに使用する歯科用石膏の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科技工士が義歯を製作する場合、まず患者の口腔内の歯牙や粘膜の状態を印象材で採得し、それより石膏模型を作り、その模型上でロウ義歯を製作する。そのロウ義歯を歯科用焼石膏でフラスコに埋没し、石膏が硬化したのちに加温してロウ義歯のロウの部分を溶融除去し、出来上がった空隙に餅状のレジンを加圧充填後、一定の温度と時間をかけ重合し、レジンが硬化して出来上がった義歯をフラスコ内から硬化した石膏を破壊して取り出し、研磨などを行い完成としていた。
【特許文献1】特開平10−226558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
歯科技工士が義歯製作時に複模型をフラスコに埋没する時に使用する石膏は、ロウ義歯をフラスコ内に固定し空洞を作る目的であるが、レジンを充填し、重合が終了した時点で完成した義歯を石膏塊から掘り出すのが、石膏の強度が高いため人工歯や義歯床を破損したり、技工士が手を傷めたり、筋肉痛や腱鞘炎を起したりする欠点があった。石膏から掘り出す時に強度が高く破壊の負担が大きいなどの欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記欠点を解消するもので、歯科用石膏100重量部に対し珪藻土15〜50重量部、好ましくは25〜35重量部を含む歯科用石膏組成物である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば歯科技工士が義歯を石膏から掘り出す時に、石膏の強度が適度に低下し破壊し易くなり、完成した義歯の破損などが極端に減少し、作業効率も相当向上するものである。また、歯科技工士の筋肉痛や腱鞘炎がほとんど起こらなくなる。しかし歯科用石膏としての適正な強度は十分保持され、まったく問題がない。むしろ膨張率が低下し、より高精度の義歯が得られる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明では歯科用石膏100重量部に対し、珪藻土15〜40重量部を混合した歯科用石膏組成物であるが、珪藻土が15重量部以下では硬化した石膏の強度低下が不十分で、義歯を掘り出すときに破損したり、歯科技工士が筋肉痛や腱鞘炎を起こす割合が多くなる。また、珪藻土が40重量部以上では石膏の強度が低下しすぎて、レジンの硬化時にひび割れなどの不具合が増加してくる。
【0007】
歯科用石膏としては従来歯科に用いられる石膏であればよく、JIST6604歯科用焼石膏などが好ましく使用できる。珪藻土は薄茶色の粉末であるが、市販の珪藻土が利用でき、自然乾燥品、焼成品、融剤添加焼成品などがある。好ましいのは焼成品であり、とくにラジオライト#200(商品名)(昭和化学工業社製 平均粒径200メッシュ)が好ましく使用できる。
【実施例】
【0008】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。但し、本発明の技術範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0009】
日本工業規格JIST6604の試験方法通りに、歯科用焼石こう100重量部とこの石膏にラジオライト#200(商品名)(昭和化学工業社製 平均粒径200メッシュ)を無添加、20、25、30、35、50重量部添加した物とでテストピースを作成し、圧縮強さを測定し比較した。試験に用いる石膏及び珪藻土は製造業者から示された使用期限を過ぎていないものを使用した。
【00010】
試験条件
石膏の練和及び試験は、すべて23±2S℃、相対湿度(50±10%)の環境下でおこなった。練和及び試験に用いる器具並びに器械は、すべて汚れがなく乾燥していて、石膏の粒子が付着していないことを確認した。又、試験材料及び試験器具は試験実施前15時間前に保温庫で試験温度に保温しておいた。
【00011】
圧縮強さ試験
使用する石膏は製造業者が指定する、必要量の粉末(質量)及び必要量の水(体積)を計量し、専用の石膏ミキサーを用いて攪拌を行った。
1 離型剤を塗った型を5組準備しガラス板の中央におく。
2 粉末200±0.1gを練和しガラス板上に保持された圧縮強さ用型を傾けて、縁よ り少し盛り上がるまで練和物をいれる。
3 練和物の表面から光沢が消える前に、離型剤を塗ったガラス板を型の上面に圧接する 。
4 練和を開始して45±1分後に、型から試料を取り出し、温度23±2℃及び相対湿 度(50±10%)の環境に保存する。
5 練和開始から60±5分後に、圧縮強さ試験機を用いて、5個の試料を破壊試験し、 加えられた最大の力(F)を記録する。
S=F/314 S:圧縮強さ(MPa)F:最大の力(N)
【00012】
結果
歯科用焼石膏(普通石膏)に珪藻土(昭和化学工業社 ラジオライト#200)を各比率で添加したときの圧縮強さの値


【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用石膏100重量部に対し、珪藻土15〜50重量部含むことを特徴とする歯科用石膏組成物。
【請求項2】
珪藻土を25〜35重量部含む請求項1記載の歯科用石膏組成物。

【公開番号】特開2009−268868(P2009−268868A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146254(P2008−146254)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【特許番号】特許第4251371号(P4251371)
【特許公報発行日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(591038325)株式会社デントロケミカル (4)
【出願人】(508166143)株式会社クリスタルデント (1)