説明

歯科補綴部材を製造する方法ならびにCAD/CAM装置

【課題】患者の口内環境への歯科補綴部材の適合に関してより改善された歯科補綴部材の製造方法ならびにCAD/CAM装置を得る。
【解決手段】補綴される歯(10)および/または少なくとも1本の隣接歯および/または対咬歯のデータを使用することによって補綴される歯(10)の仮想的な補綴部材を提供し、前記データは色データとして蓄積するとともに前記仮想的な補綴部材のコンピュータ支援された作成のために使用する。前記色データを仮想的な補綴部材に沿って延在する複数の個別の3次元のセクション(18)に分割し、続いて各セクション(18)の相違を個々の色パラメータに関して判定するとともに使用する歯色(A1,B2等)に割り当てる。その後前記歯色のデータをCAM装置に伝送する。前記データを層毎に伝送し、異なった歯色を有する歯科材料を使用し、続いてそれを硬化させることにより色調節された歯科補綴部材が層状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1前段に記載の歯科補綴部材の製造方法にならびに請求項12前段に記載のCAD/CAM装置に関する。
【背景技術】
【0002】
補綴される歯に隣接する歯の彩度および明度を判定して局部的な分布にも配慮しながらいわゆる歯科補綴部材のための見本として使用することによって歯科補綴部材の製造方法を改善し得ることが以前から知られている。一般的に歯は多様な歯色をもって製造され、その際実用上明度および基本色の両方に関して大まかに設定された例えばA2,B3と言ったカラーサンプル表記あるいは“歯色”が使用される。
【0003】
本願出願人による独国特許出願公開第102007035610号(A1)明細書によって知られているように、いわゆるカラーキーあるいはシェードガイドを使用した光学的比較が伝統的に導入されているが、近年前記カラーキーあるいはシェードガイドを歯によって現実化するとともに隣接歯のデジタル画像を使用して色の選択を洗練あるいは改善することが知られている。この点に関して、欧州特許出願公開第2259034号(A1)明細書によって歯科カラーキーあるいはシェードガイドを具現化するとともに電子支援によって補綴部材の歯色を改善することが提案されている。
【0004】
また、検出された隣接歯の映像をラスター走査あるいはスキャニングするとともにセクションに分割して個々のセクションの色および明度を判定することによってさらに解析し、それによって歯上の色および明度数値の分布を改善することも提案されている。
【0005】
特に前歯領域に対して前記の方法が提案されているが、最適な結果につながるものではなく、その結果は代替歯すなわちいわゆる歯科補綴部材の調和的な色調を定義することに従事する歯科技工士のスキルに大きく依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007035610号(A1)明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2259034号(A1)明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明は、達成される結果に関して、すなわち患者の口内環境への歯科補綴部材の適合に関してより改善される、請求項1前段に記載の歯科補綴部材の製造方法ならびに請求項12前段に記載のCAD/CAM装置を開発することを対象に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題は本発明に従って請求項1によって解決される。従属請求項によって好適な追加構成が提示される。
【0009】
本発明によれば、本発明に係る方法を前歯に適用することが特に好適であるが、臼歯および小臼歯に適用することも原則的に可能である。
【0010】
本発明によればさらに、歯の表面に関して第3の次元でかつ隣接歯のデータも第3の次元で記録しながら、特に義歯等の製造される仮想的な補綴部材が定義される。ここで第3の次元は歯の表面に対して直角な方向とされる。
【0011】
他方、X,YおよびZ座標を有する3次元座標システムを定義することも可能である。例えばY座標を歯軸に対して平行に延在させることができる。
【0012】
X軸は前記Y軸に対して直角に延在し、すなわち歯面に対して略平行に水平方向に延在する。この場合X座標が各歯に対して幾らか異なった角度で設定されることが理解される。Z座標はXおよびY座標に対して直角に延在して前述した深度に相当し、すなわち上顎の場合唇側−口蓋方向、下顎の場合は唇側−舌側方向となる。
【0013】
本発明によれば、補綴される歯の隣接歯あるいは対咬歯のフォトメトリックステレオ法のデータを作成および使用する。フォトメトリックステレオ法で得られるデータの生成は、例えば相互に所定の角度を有して配置されるとともにいずれも同じ歯の方向を指向する2台のデジタルカメラの支援によって達成することができるが、2つの異なった角度から連続的に撮影する1台のデジタルカメラの支援によって達成することもできる。同一の対象物を2つの異なった角度から表示する2枚のデジタル画像からのフォトメトリックステレオ法のデータの生成は既に周知であり、本発明においてデータを使用できるようにそれが利用される。
【0014】
このようにして生成されたデータは写像あるいは記録された歯、隣接歯あるいは対咬歯の3次元のコピーを示す。隣接歯あるいは対咬歯の撮像的に記録されたデータ以外に例えば既に一度製造されていて前記のデータのセットと関連して使用される歯科補綴部材に基づいた“仮想の歯”も使用することができるが、その際例えば歯色および/または色分布に関して既存のデータを改変し得ることは勿論である。
【0015】
本発明の好適な実施形態によれば、既に製造された歯科補綴部材のZ軸の既存データを使用し、そのデータを補綴される歯の隣接歯あるいは対咬歯の2次元で作成されたデータと組み合わせることも可能である。
【0016】
好適な実施形態によれば、補綴される歯の2本の隣接歯を使用してそれらを撮像的に記録する。
【0017】
フォトメトリックステレオ法によるデータの記録のために、画像を撮影する2か所の位置がX座標だけにおいて相互に離間していることが好適である。そのことによってY座標に関する追加的な変換が不要となるためフォトメトリックステレオ法によって得られたデータの計算が単純化される。
【0018】
このことを実用上で実施するために、画像が撮影される正確な基準面を最初に定義することが好適である。その基準面は患者の頭部を基準する必要があり、すなわち下顎の補綴に際して下顎、上顎の補綴に際しては上顎をそれぞれ基準にする必要がある。そのことをさらに容易化するために、好適な実施形態において患者の口内に補助ポイントまたは必要に応じてX方向に指向する水平線をマーキングし、前記の線は5%未満、例えば約1%の水平精度で画像を撮影することを可能にするものとされる。
【0019】
本発明によれば、フォトメトリックステレオ法によって得られた3次元のデータに基づいて3次元セクションを個別に作成することが極めて好適である。セクションのサイズは必要性に従って広範囲に適応させることができる。3つの次元の辺長は互いに異なったものとすることができるが、各セクションが立方体の形状を有することもでき、すなわち全ての次元において等しい辺長あるいは縁長を有することもできる。例えば、X方向における辺長を歯科補綴部材の底幅の1/3ないし1/50とし、Y方向は補綴される歯の高さの1/4ないし1/50に、Z方向は補綴される歯の1/3ないし1/20とする。
【0020】
従って各セクションが通常ブロック形状であるとともに同じ歯色を有する(A1,B2等)。ここで“歯色”とは補綴に使用される歯科材料の彩度数値と明度数値ならびに透明度数値の全てに対応する。
【0021】
詳細な説明は不要だが、本発明に係る歯科補綴部材の製造はセラミック歯科材料および樹脂歯科材料のいずれによっても、あるいはハイブリッド歯科材料によっても可能であるが、本発明においてラピッドプロトタイピング処理タイプの歯科材料を使用しそれによって補綴歯を形成することが好適である。
【0022】
好適な実施形態によれば、例えばラピッドプロトタイピングプロセスの支援によって歯科補綴部材を層状に形成することが可能であるが、3Dプロッティングあるいは3Dプリンティング手段による積層構造に代えて下記の方法のうちの1つを使用することも可能である:
− 熱溶着積層法(FDM)
− 薄膜積層法(LOM)
− インクジェットプリンティング(IJP)
− 選択的レーザ溶解法(SLM)
− 選択的レーザ焼結(SLS)、あるいは
− 光造形法(STLまたはSLA)
【0023】
ラピッドプロトタイピング処理の実行のために3次元形式で存在する色データを処理することとデータを機械読み取り可能なデータに変換することが必要となる。この変換は、座標配分がCAD手段内、すなわち色データの提供部とCAM装置、すなわちラピッドプロトタイピング処理に従って歯科補綴部材を製造する装置の間に保持されれば極めて単純になり、それによって隣接歯の記録中と同じ座標で義歯が製造されるようになる。
【0024】
本発明によれば、データ解像度を作成されるセクションばかりでなくCAM装置にも適合させることが好適である。この観点におけるセクションに対してはボクセルという用語が適しており、従ってこの点に関して等方性ボクセルが存在する。例えば3Dプリンティング処理が使用される場合、CAD装置のドロップレットサイズがセクションのサイズを決定することが可能になる。
【0025】
本発明によれば、各セクションに対して同じ歯色が使用される。しかしながら、極めて大きなセクション、例えばZ方向における歯の厚みの半分の辺長の場合、1つのパラメータ、例えば透明度を1つの座標、例えばZ座標方向において変化させることも可能であり、すなわち表面に近い部分の透明度を高くし歯の内部で低くすることができる。このことは、ラピッドプロトタイピング処理中においてドロップレットサイズがセクションのサイズより小さくなりそれによって所要の変化付けを実施し得る場合にのみ可能となることが理解される。
【0026】
しかしながら、セクション内の色データパラメータは一定に保持することが好適である。
【0027】
CADステップの間ユーザ側による任意の操作が実現可能である。従って例えば、製造される歯の3Dモデルを既知の方式でディスプレイ上に表示し、また空間中で変化、すなわち傾斜、回転、およびズームさせることができる。
【0028】
さらに、セクションの色データは任意の方式で変更することができる。このことはレンダリングステップの前に実施することができ、従って例えば露出あるいは光環境に合わせてフォトメトリックステレオ法による記録中に明度あるいは彩度を調節する。しかしながらこれは、作成されたボクセルのサブセットに対して例えばZ軸方向に向かって透明度数値に負の勾配を与えすなわち透明度を低下させることによってレンダリングの後に実施することもできる。
【0029】
本発明によれば、仮想的あるいは現実的に生成された義歯および自然歯のデータから構成されたデータベースを設けることが極めて好適である。人間の歯は色データのパラメータに関して、すなわち彩度数値と明度、ならびに透明度数値の全てに関して一定の分布の変動幅を有する。ここで、決定された色データの自然歯への適応のための基礎を可能にするために、データベース中において最も頻繁に分布する色データに重点をおいて記録する。
【0030】
データベースを自然歯のパラメータ数値の大まかな分布に基づいて作成、すなわち例えば1mmのボクセル辺長を基本にしてそのラスターをいわば基本として使用し、それによってCAD設計によって生成するセクションを例えば0.1mmの辺長をもって容易に実現可能にすることも可能である。
【0031】
この点に関して“微細ボクセル”の作成のために隣接する“大まかなボクセル”のデータを迅速に決定することができ、またより精密な分布を可能にするために(1つの座標方向に見て)10個の“微細ボクセル”にわたって勾配を設定することができる。
【0032】
本発明の極めて好適な方式によれば、歯科補綴部材の仮想データの作成に際して一種のフィードバックも可能である:
CAD設計の間、製造される歯をシミュレートしてスクリーン上に表示することができる。スクリーンが色レンダリングに関して較正されている場合、現実的な印象を達成するために仮想的な歯の外観を隣接歯の画像と比較することができる。結果が依然として不充分である場合、例えば層厚あるいは透明度を調節することができ、また新たなレンダリング操作を開始することもできる。
【0033】
さらに、CAM処理における収縮値を予め数学的に補償することも可能である。セラミック未加工部材の焼成あるいは焼結中、ならびに硬化性の樹脂材料の重合中のいずれにおいても収縮係数は既知であり、予めそれを判定して補正することができる。
【0034】
最適化のために、使用される処理の支援によって予めサンプル歯を準備し、その後それを焼結あるいは硬化(また必要であればそれを人工的に老化)させ、さらにオリジナルあるいはソースデータと比較して収縮量を判定することができる。3つの空間座標においてそれぞれ収縮が異なっていることが判明した場合、本発明に従って実際に作成されたパラメータと3つの座標方向の3つの収縮係数を設定する目標との間の単純な変換の手段によってそれを補償することもできる。
【0035】
好適な実施形態によれば、歯色の判定に基づいて3次元セクションの集合の中から少なくとも1個のセクションあるいは複数のセクションがスクリーン上で表示および選択され、前記選択された1つあるいは複数のセクションの表面色が層データベース内に蓄積された歯色と比較され、前記スクリーン上に特に検出された歯色、個々の層材料の色、個々の層の厚み、切縁材料の厚みおよび/またはパーセンテージによる透明度が個々のセクションについて立体的に関連付けられた方式で表示される。
【0036】
好適な実施形態によれば、1つあるいは複数のセクションの選択に際して歯色の判定が実施され、前記1つあるいは複数のセクションの歯色がスクリーン上で確認しながらワークテーブル内にそれぞれ蓄積され、前記のワークテーブルが歯科補綴部材のCAM製造の基礎を形成する。
【0037】
好適な実施形態によれば、3次元のカラー画像を形成することによって色データを作成し、その際少なくとも2か所の異なったカメラ位置および/または2台のカメラが異なった角度位置から歯科補綴部材に対する隣接歯および/または対咬歯の画像を撮影し、そのカラー画像をフォトメトリックステレオ法によって重ね合わせて3D画像を形成する。
【0038】
好適な実施形態によればさらに、形成された3次元カラー画像をレンダリングし、仮想的な歯科補綴部材をディスプレイ上にシミュレートして隣接歯のカラー画像と比較する。
【0039】
好適な実施形態によれば、3次元のセクションが層に統合され、隣接歯との視覚的な比較の後に層の厚み、透明度、ならびに材料選定が調整され、また必要に応じて再度レンダリングされる。
【0040】
好適な実施形態によればさらに、歯科材料の硬化とそこで生じる収縮に際しての経験値を考慮した1つの補正係数によって3次元セクションのサイズおよび/または層の厚みを拡大する。
【0041】
好適な実施形態によれば、硬化のために使用される歯科材料が少なくとも部分的に重合性可能であるとともに重合され、特にインクジェットプリンティングをラピッドプロトタイピング処理に使用する場合硬化が冷却によって実施される。
【0042】
好適な実施形態によれば、歯科材料をセラミック未加工部材の形式で供給し、それを硬化のために焼結する。
【0043】
好適な実施形態によれば、多様な歯の形状および/または歯の輪郭が3次元で記録された形態で示されそれに基づいて層が形成されるデータベースを使用して仮想的な歯科補綴部材の作成が実施される。
【0044】
好適な実施形態によれば、歯科補綴部材の製造のためのCAD/CAM装置が製造される歯科補綴部材の幾何学的な形状を決定する幾何学データに基づいていて、また製造される歯科補綴部材を特徴付けるものであって歯のデータベースまたは製造される歯科補綴部材の隣接歯および/または対咬歯のいずれかから形成された色データに基づいており、装置が色データをフォトメトリックステレオ法によって3次元に検出するとともに歯科補綴部材を通って延在する複数の3次元のセクションのそれぞれに生成された色データを分割し;それに基づいて装置が歯科補綴部材を製造する歯科材料の層を決定し;少なくとも1個のセクションおよび/または統合された複数のセクションに対して歯色(A1,B2等)を手動あるいは自動的に決定してワークテーブル内に蓄積し、歯色データをCAM装置に伝送してそれに基づいて歯科補綴部材を層状に形成するとともにその後硬化させる。
【0045】
好適な実施形態によれば、装置がカーソルを含んだディスプレイを備え、3次元のセクションをディスプレイ上で表示可能かつ選択可能であり、前記の選択に基づいて表面色と蓄積された層データベースの歯色の比較を実行し、それによって多様なパラメータをディスプレイ上に表示可能にするとともにCAMデータを提供するために確認可能にする。
【0046】
別の好適な実施形態によれば、水平方向において相互に離間するとともに垂直方向においては同じ垂直高度に配置されるか、あるいは垂直方向において相互に離間するとともに水平方向において同じ位置に配置された2か所の位置で色データを検出するデジタルカメラを装置が備える。
【0047】
別の好適な実施形態によれば、フォトメトリックステレオ法によって検出された色は撮影した画像を利用して2次元で提供可能であるか、または第3の次元、特にZ座標の方向において既に存在しているデータ、特に既に存在している歯科補綴部材を使用して提供可能である。
【0048】
本発明のその他の詳細、特徴ならびに利点は、添付図面を参照しながら以下に記述する本発明の2例の実施形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例に係る仮想的な義歯あるいは歯科補綴部材を3次元で示した概略図である。
【図2】図1に対して別の仮想的な歯科補綴部材の実施例を示した概略図である。
【図3】補助的なスクリーンおよびその表示を含めて本発明に係るCAD/CAM処理の中間的なステップを示した説明図である。
【図4】フォトメトリックステレオ法によって隣接歯の色データを検出するための構成を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1には、歯科補綴部材として製造されていて従ってスクリーン上に表示可能である仮想的な歯が示されている。図示された実施例において義歯10は切歯として実施されているが、小臼歯あるいは臼歯としての実施も同様に可能である。
【0051】
周知の方式によって義歯10は表面12に近接してその表面12に沿って数mmの単位の厚みで延在するエナメル材料を備える。
【0052】
周知の方式によってエナメル質内部に象牙質16が延在し、その延在長に沿ってエナメル質14の層厚がX方向およびY方向の両方において幾らか変化するが大きくは変化しない。
【0053】
このようにして実現された義歯の構造はセクション18を決定することによって形成され、これは図1において簡略化の観点から大きく拡大して示されているが、実用上では相当に小さいものとなる。エナメル質14の領域内にセクション18aが設けられ、これは実質的に幅Bの1.5倍に略相当する高さHを有する正方形断面体形状で延在する。高さHはY座標方向の辺長に相当し、幅Bはセクション18aのX座標方向における辺長に相当する。
【0054】
セクション18aにはさらにZ座標方向における辺長に相当する深度Tが含まれ、これも実質的に幅Bよりも小さくなり、例えば幅Bの1/3に相当する。
【0055】
セクション18aはその歯色に相関して定義され、すなわちフォトメトリックステレオ法によって記録された隣接歯のデータに基づいたものとなる。
【0056】
セクション18aの歯色に相関したデータを提供するために、図4に概略的に示されたフォトメトリックステレオ法処理が使用される。図3に簡単に示されているようにデータ収集に続いてCAD装置手段によってデータが適用される。
【0057】
セクション18のそれぞれが歯色のパラメータ、すなわちその明度数値、彩度数値、および透明度数値に相関して決定される。図3に示されているように、義歯の製造に先行してその義歯がCAD装置のディスプレイ上に適宜な方式で表示される。
【0058】
セクション18aの他に、さらにセクション18bおよび18cが図1に示されており、その際セクション18bは象牙質の領域内に延在し、他方セクション18cはエナメル質領域内の歯10に関してセクション18aの反対側に延在する。
【0059】
これら3個のセクションの歯色は通常異なっており、また義歯10の広範囲な領域内に通常3個を超えるセクションが設けられることが理解される。
【0060】
セクションは義歯10にわたってボクセルの形式で3次元に延在する。実用上において義歯10毎に1000個あるいは10000個のボクセルを設けることが充分に可能である。従って各セクション18の延在はそれらが相互に隣接するようなものとなる。隣接する各セクションは、図4に示されるようにフォトメトリックステレオ法による隣接歯のデジタル記録の結果のレンダリングに従って歯色に関してそれぞれ独立して選択される。
【0061】
本発明に係るフォトメトリックステレオ法による記録を通じた第3の次元、すなわちZ軸の使用によって義歯の深み効果が(特にエナメル質の領域で)大幅に改善され、実質的に従来の方法に比べてより自然歯に近くなる。
【0062】
フォトメトリックステレオ法によって記録されたデータに基づいて、フォトメトリックステレオ法のデータ、すなわちX,YおよびZ方向のデータへの変換が本発明に従って実施される。各ボクセルに対して、すなわち各セクション18に対して3次元レンダリングを実施することによって適宜なパラメータが決定される。この点に関して、計算上最も単純な解決方式は等しいサイズの個々のボクセルで処理することであるものの、必要であればレンダリング処理中にセクションサイズおよびサイズ分布を調整することができる。
【0063】
図1の実施例において各セクションは実質的にブロック形状であるが、このことは図2の実施例においては該当しない。ここで深度方向、すなわちZ座標方向の辺長が短縮され、また切歯の象牙質層16が歯の軸20にわたって変化するために義歯10の上側領域30内には義歯10の下側領域32内に比べてより多くのセクションが設けられる。
【0064】
このことは、底部分で先細になっているセクション18dによって概略的に示されている。実際は、(前述したように)セクションの数が図示されているよりも相当に大きくなり、Z座標方向における適宜な寸法変化を再現するために領域30と領域32の間で見た場合に例えばセクション数が20個から16個に削減される。
【0065】
実際の解像度を近似するセクション分布が図3の左側に図示されたディスプレイ上に示されている。そこには3次元設計を達成するために義歯が概略的に示されており、その際カーソルによってセクション群のフィールド28を選択することができ、それらを合同で処理することが可能になる。
【0066】
それに代えて、図3の左側のディスプレイ中のさらに幾らか左側に示されているように、単一のセクション18をカーソルによって選択することもできる。
【0067】
周知の方式によって、最初に決定した歯色の領域(例えばA1)が該当するセクション上にカーソルが位置する際に表示される。
【0068】
図3のスクリーンの中央領域の上部操作パネル36内でいくつかのセクションの歯色を同時に設定し得るようにするために層化を選択することが可能である。簡略化のために3つの層のみを選択することができるが、実用上は実質的により多数の層で実施することができる。
【0069】
操作パネル38内で層化の補正を実施することができる。第1の層1を列40で処理し、第2の層2は列42で処理し、また第3の層3は列44で処理することができる。上側の行内で最初に歯色A1,B2等を表示および変更することができ、第2番目の行内においては例えば層1に対して2.1mm、層2に対して0.5mm、層3に対しては非固定の数値である層の厚みを表示および変更することができる。従って本発明によれば層3の厚みが非固定であるという事実が、Z方向における残りの歯の厚みがそこで満たされることを意味する。
【0070】
第3の行においては別のフィールドの各列内で透明度が決定および必要に応じて変更される。
【0071】
中央領域の下側に別の操作フィールド46が設けられ、それが全ての層に対する共通の操作を可能にするとともに例えば透明度(Tr.%)に関してそれらを適宜に変更することを可能にする。
【0072】
別の操作フィールド48を使用して、選択した領域の詳細なレンダリングが実施される。
【0073】
変更結果は図3のスクリーンの右側領域50内に示される。所要のCAD機能および3D設計を提供するためにスクリーンをタッチパネルとして構成するかあるいはカーソルによって操作することができる。
【0074】
領域50内に完成した歯がレンダリングされた形態で示され、続いてCAM製造の前に予定される結果を評価することができる。この点に関して、別の歯色の選択パラメータ、または別のセクションサイズおよび/または透明度数値をもってレンダリング処理を繰り返すことも可能である。
【0075】
図4には所要のデータを検出するためにどのように隣接歯を使用するかが概略的に示されている。各検出点に対して周知のフォトメトリックステレオ法によって多様な角度からそれぞれ1枚のデジタル画像が撮影される。各点に対してそれぞれ2か所の位置AおよびBが存在し、それらが検出される歯の領域60あるいは62に対してそれぞれ異なった角度を形成する。
【0076】
ここでは歯60の表面の検出のみが示されているが、実際には特に隣接歯60のエナメル質の透明度のためフォトメトリックステレオ法による撮影によって深み効果を検出し本発明に従って歯科補綴部材の製造に際して第3の次元を形成するために利用し得ることが理解される。
【0077】
本発明によれば、さらに幾らか口蓋方向に延在する隣接歯60の領域64が歯の隙間を利用して検出可能であることも好適であり、従って該当する切歯の裏側領域も検出して新たな義歯の製造に使用することができる。
【符号の説明】
【0078】
10 義歯
12 表面
14 エナメル質
16 象牙質
18,18a,18b,18c,18d セクション
20 歯の軸
30 上側領域
32 下側領域
36 上部操作パネル
38 操作パネル
40,42,44 列
46,48 操作フィールド
50 右側領域
60,62 歯
64 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想的な補綴部材を作成するために幾何学的データ、特に補綴部材の空間的な寸法、位置、および/または容積に関するデータを判定および記録し;
前記の処理ステップにおいて補綴される歯(10)および/または少なくとも1本の隣接歯(60)および/または対咬歯のデータを使用することによって補綴される歯(10)の仮想的な補綴部材を提供し、前記データは色データとして蓄積するとともに前記仮想的な補綴部材のコンピュータ支援された作成のために使用するものとし、
前記仮想的な補綴部材を作成するためのデータは前記色データを使用することによって前記幾何学データから作成する、歯科補綴部材の製造方法であり、
前記色データは補綴される歯(10)および/または前記補綴される歯(10)の少なくとも1本の隣接歯(60)および/または対咬歯に基づいてフォトメトリックステレオ法によって得られる3次元のデータとして生成するとともに;
仮想的な補綴部材に沿って延在する複数の個別の3次元のセクション(18)に分割し;
続いて各セクション(18)の相違を個々の色パラメータに関して判定するとともに使用する歯色(A1,B2等)に割り当て;
前記歯色のデータを処理および蓄積するとともに歯科補綴部材の製造のために機械読み取り可能なデータに変換し;
前記機械読み取り可能なデータを特にラピッドプロトタイピング処理に従ってCAM装置に伝送し、異なった歯色を有する歯科材料を使用し続いてそれを硬化させることにより色調節された歯科補綴部材を特に層状に形成することを特徴とする方法。
【請求項2】
歯色の判定に基づいて3次元セクションの集合の中から少なくとも1個のセクション(18)あるいは複数のセクションをスクリーン上で表示および選択し;
前記選択された1つのセクション(18)あるいは複数のセクションの表面色を層データベース内に蓄積された歯色と比較し;
前記スクリーン上に特に検出された歯色、個々の層材料の色、個々の層の厚み、切縁材料の厚みおよび/またはパーセンテージによる透明度を個々のセクションについて立体的に関連付けられた方式で表示することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
1つあるいは複数のセクションの選択に際して歯色の判定を実施し、前記1つあるいは複数のセクションの歯色をスクリーン上で確認しながらワークテーブル内にそれぞれ蓄積し、前記のワークテーブルが歯科補綴部材のCAM製造の基礎を形成することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
3次元のカラー画像を形成することによって色データを作成し、その際少なくとも2か所の異なったカメラ位置および/または2台のカメラが異なった角度位置から歯科補綴部材に対する隣接歯(60)および/または対咬歯の画像を撮影し、そのカラー画像をフォトメトリックステレオ法によって重ね合わせて3D画像を形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
形成された3次元カラー画像をレンダリングし、仮想的な歯科補綴部材をディスプレイ上にシミュレートして隣接歯(60)のカラー画像と比較することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
3次元のセクション(18)を層に統合し、隣接歯(60)との視覚的な比較の後に層の厚み、透明度、ならびに材料選定を調整し、また必要に応じて再度レンダリングすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
歯科材料の硬化とそこで生じる収縮に際しての経験値を考慮した1つの補正係数によって3次元セクション(18)のサイズおよび/または層の厚みを拡大することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
硬化のために使用される歯科材料が少なくとも部分的に重合性可能であるとともに重合され、特にインクジェットプリンティングをラピッドプロトタイピング処理に使用する場合硬化が冷却によって実施されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
歯科材料をセラミック未加工部材の形式で供給し、それを硬化のために焼結することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
多様な歯の形状および/または歯の輪郭を3次元で記録した形態で示しそれに基づいて層が形成されるデータベースを使用して仮想的な歯科補綴部材の作成を実施することを特徴とする請求項2ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
歯科補綴部材を形成するために樹脂材料および/またはセラミック材料を使用することを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
幾何学データに基づいて歯科補綴部材を製造するためのものであって、
前記幾何学データが製造する歯科補綴部材の幾何学的な形状を決定するとともに、
前記幾何学データは製造される歯科補綴部材を特徴付ける色データに基づくものとし;
前記色データは歯のデータベースまたは製造される歯科補綴部材の隣接歯(60)および/または対咬歯のいずれかから生成する、CAD/CAM装置であり、
装置が色データをフォトメトリックステレオ法によって3次元に検出するとともに歯科補綴部材を通って延在する複数の3次元のセクションのそれぞれに生成された色データを分割し;
それに基づいて装置が歯科補綴部材を製造する歯科材料の層を決定し;
少なくとも1個のセクションおよび/または統合された複数のセクションに対して歯色(A1,B2等)を手動あるいは自動的に決定し;
それをワークテーブル内に蓄積し、
歯色データをCAM装置に伝送し、
それに基づいて歯科補綴部材を層状に形成するとともにその後硬化させる、
ことを特徴とするCAD/CAM装置。
【請求項13】
装置がカーソルを含んだディスプレイを備え、3次元のセクション(18)をディスプレイ上で表示可能かつ選択可能であり、前記の選択に基づいて表面色と蓄積された層データベースの歯色の比較を実行し、それによって多様なパラメータをディスプレイ上に表示可能にするとともにCAMデータを提供するために確認可能にすることを特徴とする請求項12記載のCAD/CAM装置。
【請求項14】
水平方向において相互に離間するとともに垂直方向においては同じ垂直高度に配置されるか、あるいは垂直方向において相互に離間するとともに水平方向において同じ位置に配置された2か所の位置で色データを検出するデジタルカメラを装置が備えることを特徴とする請求項12または13記載のCAD/CAM装置。
【請求項15】
フォトメトリックステレオ法によって検出された色は撮影した画像を利用して2次元で提供可能であるか、または第3の次元、特にZ座標の方向において既に存在しているデータ、特に既に存在している歯科補綴部材を使用して提供可能であることを特徴とする請求項12ないし14のいずれかに記載のCAD/CAM装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−166030(P2012−166030A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−30019(P2012−30019)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【出願人】(596032878)イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト (63)