説明

歯車研削盤及び歯車研削工程

【課題】 シェービング工程を省き、かつ、高価な歯車研削盤を使用せず、安価な荒仕上げ専用の機械を使用して、高能率、低コストで焼入れ歯車の荒仕上げ加工を可能とする歯車研削盤及び歯車研削工程を提供すること。
【解決手段】 シェービング工程を省略し、歯切り後、焼入れし、焼入れ後のホーニング加工の前工程として、ホブ盤をベースマシンとし、CBN砥粒を電着されたウオーム状の砥石車11を使用して、歯車素材であるワーク13を創成で荒仕上げ研削する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、歯車研削盤及び歯車研削工程に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、量産歯車の製造工程においては、歯切り、シェービング、焼入れ、ホーニング加工の順を経て歯車が製造されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来では、シェービング加工後に行われる焼入れ歪み等の変形代を考慮して、シェービング加工を行っているため、変形を見込んだ複雑な歯面形状を作り出す必要がある。また、焼入れ歪みも個々の歯車で異なる等の問題があり、工程の管理が非常に難しく、コストがかかる点で問題があった。
【0004】また、従来では、焼入れ後、ホーニング加工を行っているため、ホーニング加工においては、焼入れ歪み等を完全に除去させることが必要となり、そのため、ホーニング加工量が増大し、ホーニング砥石の寿命と加工時間が長くなる問題があった。
【0005】さらに、従来では、ホーニング工程において、工程上で発生した打痕により、ホーニング工具の歯面精度がくずれ、ドレスインターバルが短くなるという問題があった。
【0006】本発明は、従来の歯車製造工程の上記諸問題点に鑑みて、開発されたもので、その目的とするところは、シェービング工程を省き、かつ、高価な歯車研削盤を使用せず、安価な荒仕上げ専用の機械を使用して、高能率、低コストで焼入れ歯車の荒仕上げ加工を可能とする歯車研削盤及び歯車研削工程を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明は、創成で歯車を研削する歯車研削盤で、砥石周速を20m/sec以上100m/sec以下の範囲とし、ホブ盤をベースマシンとすることを特徴とした歯車研削盤を提供する。
【0008】また、本発明は、上記歯車研削盤の砥石回転数を4000rpm以上20000rpm以下の範囲とする歯車研削盤を提供する。
【0009】更に、本発明は、創成で歯車を研削する歯車研削盤で、歯車焼入れ後のホーニング加工の前工程として必要な最低限の精度と面粗度を得ることを特徴とした歯車研削盤を提供する。
【0010】また、本発明は、量産歯車製造工程において、歯車焼入れ後のホーニング加工の前工程として必要な最低限の精度と面粗度を得ることを特徴とした歯車研削工程を提供する。
【0011】本発明は、上記歯車研削工程において、歯車精度の歯形、歯筋のばらつきを修正し、適度の面粗度を得ることを特徴とした歯車研削工程を提供する。
【0012】また、本発明は、前記歯車研削工程において、この工程を設けることにより、打痕の除去も可能とすることを特徴とした歯車研削工程を提供する。
【0013】更に、本発明は、前記歯車研削工程において、この工程を設けることにより、ホーニング加工での除去量を少なくすることを特徴とした歯車研削工程を提供する。
【0014】また、本発明は、研削回数一回で歯車焼入れ後のホーニング加工の前工程として必要な最低限の精度と面粗度を得ることを特徴とした歯車研削盤及びその工程を提供する。
【0015】更に、本発明は、砥石径を30φmm〜300φmmの範囲としたことを特徴とした歯車研削盤を提供する。
【0016】また、本発明は、シェービング工程を省略し、歯切り後、焼入れし、焼入れ後のホーニング加工の前工程として、ホブ盤をベースマシンとし、CBN砥粒を電着されたウオーム状の砥石車を使用して、歯車を創成で荒仕上げ研削することを特徴とする歯車研削盤及びその工程を提供する。
【0017】上記構成により、本発明は、歯切り、焼入れ、荒仕上げ用として、例えば、粗粒径のCBN砥粒を粗密度で電着したウオーム状の砥石車を用いて創成研削で荒仕上げ研削、ホーニング加工を経て歯車の量産を行うもので、次のような点を特徴としている。
【0018】即ち、高価な歯車研削盤を使用せず、安価な荒仕上げ専用の機械を使用する。そして、使用する機械は、能率を上げるため、またCBN砥粒本来の能力を生かすため、砥石周速を20m/sec〜100m/secとしている。
【0019】また、仕上げ用に作られたため高価でかつ研削焼けのため、CBN砥粒本来の能力を生かされていない従来の如き仕上げ用に作られた工具を使用せず、研削焼けが発生せず、CBN砥粒本来の能力を生かせる安価な荒仕上げ加工用に作られたCBN砥粒電着のウオーム状の砥石車を使用する。
【0020】このように、加工機械、工具ともに安価でかつ高能率なものを使い、荒仕上げ加工をする。
【0021】量産歯車工程においては、上記の機械、工具を使用し、歯車焼入れ後のホーニング加工の前工程として必要な最低限の精度と面粗度を得ることを目的とし、かつサイクル時間をシェービング工程並にした歯車研削工程を設けることにより、管理が非常に難しく、コストのかかるシェービング工程を省くことが出来る。
【0022】焼入れ歪み等の影響もこの歯車研削で取り去ることができるので、管理のし易い製造ラインとなる。
【0023】また、次工程のホーニング加工でも、ホーニング加工での除去量が、従来の工程(シェービング、焼入れ後ホーニング加工)に比べて飛躍的に少なく出来るため、ホーニング加工時間も短縮され、工具寿命も延び、製造ライン全体のコストも改善される。
【0024】さらに、焼入れ後の歯車素材に対し、上記荒仕上げ研削工程をホーニング工程の前工程として設置することにより、打痕の除去も可能となる。
【0025】また、本発明の歯車研削盤は、ワークをワークアーバーに装着して割出し回転するワークテーブルと、ウオーム状の砥石車をホブアーバーに装着してホブ駆動機構により回転駆動するホブヘッドと、ホブヘッドを角度変更機構を介して角度変更可能に装着するホブサドルと、ホブサドルを上下動させる上下送り機構と、ホブヘッドをホブサドルに対して前後動させる前後動機構とを具備し、前記ホブ駆動機構を、4000rpm以上20000rpm以下の範囲でホブアーバーを回転駆動可能としたことを特徴とする。
【0026】即ち、従来のホブ盤は、歯車研削ではなく、歯切り盤として製作されていたため、ホブアーバーを回転駆動するホブ駆動機構は、最高でも、2000rpm〜3000rpmでホブアーバーを回転駆動できるように製作されていたが、本発明では、従来のホブ盤を歯切り盤ではなく、歯車研削盤として利用するために、ホブ駆動機構を、4000rpm以上20000rpm以下の範囲でホブアーバーを回転駆動可能とした。これにより、本発明においては、高価な歯車研削盤を使用せず、ホブ盤をベースマシンとする安価な荒仕上げ専用の機械を使用して歯車の荒仕上げ研削をすることができる。
【0027】そして、本発明は、上記ホブアーバーに装着する工具として、荒仕上げ用としてCBN砥粒を電着されたウオーム状の砥石車を使用することを特徴とする。これにより、研削焼けが発生せず、CBN砥粒本来の能力を生かせる安価な荒仕上げ加工用の工具によって歯車を安価でかつ高能率に製造することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施に使用する歯車研削盤の実施例の概略正面図を示すもので、従来のホブ盤をベースマシンとしており、その構成は、図1に示すように、ベッド1の一側に立設されたコラム2に上下送り機構3を介して上下方向にスライド可能に装着されたホブサドル4と、ベッド1の他側上に割出し機構5を介して回転可能に装着されたワークテーブル6と、ホブサドル4の前面側に角度変更機構7を介して角度変更可能に装着されたホブヘッド8と、ホブヘッド8に両端支持され、ホブ駆動機構9によって回転駆動されるホブアーバー10と、このホブアーバー10に装着される砥石車11と、ワークテーブル6のワークアーバー12に装着されるワーク13と、ワークアーバー12の上端を支持するスライドヘッド14と、ホブヘッド8をホブサドル4に対して前後動させる前後動機構(図示省略)とを具備している。なお、図1において、15は操作ボックスを示している。
【0029】ホブ駆動機構9は、ホブアーバー10を4000rpm以上20000rpm以下の範囲で回転駆動可能とされている。
【0030】砥石車11は、荒仕上げ用としてCBN砥粒を電着されたウオーム状の砥石車を使用する。例えば、粒度が#20〜#60のCBN砥粒を比較的、粗密度に電着させるもので、図2及び図3に示すように、台金11aの外周面に形成されたウオーム状部分11bにCBN砥粒の電着層11cを形成する。
【0031】砥石車11は、ワーク13の歯形、歯筋、ピッチ等に応じてウオーム状部分11b及び工具径等が設定されるもので、例えば、工具径は、30φmm〜300φmmとされる。砥石車11の周速は、20m/sec以上100m/sec以下の範囲とされる。
【0032】本発明は、歯切り加工後、焼入れした歯車素材をワーク13とし、これを図1及び図2に示すように、ワークアーバー12に装着し、これに対応して、砥石車11をホブアーバー10に装着する。ホブアーバー10とワークアーバー12は、ほぼ直交関係にあるが、ワーク13の歯筋等に応じて角度変更機構7によりホブアーバー10の角度を設定し、歯車創成法で荒仕上げ研削を行わせる。
【0033】
【発明の効果】本発明は、歯車の製造において、シェービング工程を省き、かつ、高価な歯車研削盤を使用せず、安価な荒仕上げ専用の機械を使用して、高能率、低コストで焼入れ歯車の荒仕上げ加工をすることができる。しかも、研削焼けが発生せず、CBN砥粒本来の能力を生かして高能率に荒仕上げ加工することができる。更に、加工時間を短縮し、高能率で焼入れ歯車の荒仕上げ加工をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に使用する歯車研削盤の実施例の概略正面図。
【図2】加工部の要部拡大斜視図。
【図3】砥石車の概略縦断面図。
【符号の説明】
1 ベッド
2 コラム
3 上下送り機構
4 ホブサドル
5 割出し機構
6 ワークテーブル
7 角度変更機構
8 ホブヘッド
9 ホブ駆動機構
10 ホブアーバー
11 砥石車
12 ワークアーバー
13 ワーク
14 スライドヘッド
15 操作ボックス
11a 台金
11b ウオーム状部分
11c CBN砥粒の電着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 創成で歯車を研削する歯車研削盤で、砥石周速を20m/sec以上100m/sec以下の範囲とし、ホブ盤をベースマシンとすることを特徴とした歯車研削盤。
【請求項2】 前項において、砥石回転数を4000rpm以上20000rpm以下の範囲とする歯車研削盤。
【請求項3】 創成で歯車を研削する歯車研削盤で、歯車焼入れ後のホーニング加工の前工程として必要な最低限の精度と面粗度を得ることを特徴とした歯車研削盤。
【請求項4】 量産歯車製造工程において、歯車焼入れ後のホーニング加工の前工程として必要な最低限の精度と面粗度を得ることを特徴とした歯車研削工程。
【請求項5】 前項において、歯車精度の歯形、歯筋のばらつきを修正し、適度の面粗度を得ることを特徴とした歯車研削工程。
【請求項6】 請求項4において、この工程を設けることにより、打痕の除去も可能とすることを特徴とした歯車研削工程。
【請求項7】 請求項4において、この工程を設けることにより、ホーニング加工での除去量を少なくすることを特徴とした歯車研削工程。
【請求項8】 研削回数一回で歯車焼入れ後のホーニング加工の前工程として必要な最低限の精度と面粗度を得ることを特徴とした歯車研削盤及びその工程。
【請求項9】 請求項1において、砥石径を30φmm〜300φmmの範囲とする歯車研削盤。
【請求項10】 シェービング工程を省略し、歯切り後、焼入れし、焼入れ後のホーニング加工の前工程として、ホブ盤をベースマシンとし、CBN砥粒を電着されたウオーム状の砥石車を使用して、歯車を創成で荒仕上げ研削することを特徴とする歯車研削盤及びその工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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