説明

残留酵素アッセイ

本発明は、酵素の活性を測定することを含んで成る、酵素と接触せしめられ、そして続いて、酵素活性を測定する前、すすがれている繊維類上の残留酵素の量の測定方法、及び前記方法を用いることを含んで成る注目の酵素についてのポリペプチドのライブラリーをスクリーニングするための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、繊維類上の残留酵素の量の測定方法、及び前記方法を用いることを含んで成る注目の酵素についてのポリペプチドのライブラリーをスクリーニングするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景:
種々の酵素、例えばプロテアーゼ、リパーゼ及びカルボヒドロラーゼはしばしば、洗剤産業内に使用され、ここでそれらは典型的には、洗剤の成分として洗浄工程の間、布と接触され、そして次に、布がすすがれる場合、除去される。酵素と布及び/又は布に存在するしみとの間の相互作用は、酵素がすすがれた後、布にまだ存在するほど強い特定の酵素に依存する。
【0003】
一般的に新規及び/又は改良された酵素は、一定の条件下で酵素の機能を試験できるアッセイにおいて、ポリペプチドのライブラリーをスクリーニングすることにより同定され得る。しばしば、そのようなライブラリーにおける新規の及び/又は改良された酵素を同定する能力は、アッセイの性質、例えばアッセイの強さ、及び/又は同定される酵素が機能することができるべきそれらの条件をいかに良く模倣するかに依存する。
本発明は、繊維類上の残留酵素の量を測定するための方法を提供する。
【発明の開示】
【0004】
発明の要約:
本発明は、酵素の活性を測定することを含んで成る、酵素と接触せしめられ、そして続いて、酵素活性を測定する前、すすがれている繊維類上の残留酵素の量の測定方法を提供する。さらに、本発明はまた、注目の酵素についてのポリペプチドのライブラリーのスクリーニング方法を提供し、ここで
a)前記酵素の活性を測定することにより繊維類上の残留酵素の量を測定し、ここで酵素をポリペプチドのライブラリーと接触せしめ、そして続いて、前記活性を測定し、
b)注目の酵素を選択する、
ことを含んで成る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
発明の特定の記載:
酵素/注目の酵素:
酵素/注目の酵素は、既知種類の酵素に属し、又はそれは未知の酵素種類のもの、例えば所望する機能的活性を有するが、しかし既知酵素種類に必ずしも属しない酵素であり得る。本明細書において使用される場合、用語“酵素種類”(E. C.)とは、国際的に認識される酵素分類システム、Recommendations (1992) of the Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology, Academic Press, Inc., 1992を言及する。例えば、酵素/注目の酵素は、次の種類の1つに属することができる:オキシドレダクターゼ(EC 1.-.-.-)、トランスフェラーゼ(EC 2.-.-.-)、ヒドロラーゼ(EC 3.-.-.-)、リアーゼ(EC 4.-.- .-)、イソメラーゼ(EC 5.-.-.-)及びリガーゼ(EC 6.-.-.-)。
【0006】
オキシドレダクターゼ
オキシドレダクターゼの例は、ペルオキシダーゼ(EC 1.11.1)、ラッカーゼ(EC 1.10.3.2)及びグルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4)を包含する。
【0007】
トランスフェラーゼ
トランスフェラーゼの例は、次の副種類のいずれかに属するトランスフェラーゼであり得る。
a)1つの炭素基を転移するトランスフェラーゼ(EC 2.1);
b)アルデヒド又はケトン残基を転移するトランスフェラーゼ(EC 2.2);アシルトランスフェラーゼ(EC 2.3);
c)グリコシルトランスフェラーゼ(EC 2.4);
d)メチル基意外のアルキル又はアリール基を転移するトランスフェラーゼ(EC 2.5);及び
e)窒素基を転移するトランスフェラーゼ(EC 2.6)。
特に、トランスフェラーゼは、トランスグルタミナーゼ(タンパク質−グルタミンγ−グルタミルトランスフェラーゼ;EC2.3.2.13)であり得る。
【0008】
ヒドロラーゼ
ヒドロラーゼの例は、カルボン酸エステルヒドロラーゼ(EC 3.1.1.-)を包含する。特に、それは、脂肪分解酵素、すなわちエステル結合を加水分解できる酵素であり得る。そのような酵素は、例えばリパーゼ、例えばトリアシル−グリセロールリパーゼ(EC 3.1.1.3)、リポタンパク質リパーゼ(EC 3.1.1.34)、モノグリセリドリパーゼ(EC 3.1.1.23)、リソホスホリパーゼ、フェルラ酸エステラーゼ及びエステラーゼ(EC 3.1.1.1 , EC 3.1.1.2)を包含する。括弧内の数は、酵素の酵素反応性の型に従って、Enzyme Commission of the International Union of Biochemistryにより割り当てられた分類上の数である。
【0009】
脂肪分解酵素は、原核生物、特に細菌、例えばシュードモナス(Pseudomonas)からの酵素であり得る。例は、P. セパシア(P. cepacia)(アメリカ特許第5,290,694号, pdb file 1OIL)、P. グルマエ(P. glumae)(N Frenken など. (1992), Appl. En-vir. Microbiol. 58 3787-3791, pdb files 1TAH and 1QGE))、P. シュードアルカリゲネス(P. pseudoalcaligenes)(EP334462号)、及びシュートモナスsp. 株SD 705 (FERM BP-4772) (WO 95/06720号, EP 721 981号, WO 96/27002号, EP 812 910号)からのシュードモナスリパーゼである。P. グルマエリパーゼ配列は、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)のアミノ酸配列と同一である(DE3908131A1)。他の例は、例えばシュードモナス、例えばP. メンドシナ(P. mendocina)(アメリカ特許第5,389,536号)又はP. プチダ(P. putida)(WO88/09367号)からの細菌クチナーゼである。
【0010】
他方では、脂肪分解酵素は、真核生物、例えば菌類脂肪分解酵素、例えばヒューミコラ(Humicola)科及びズイゴミセテス(Zygomycetes)科からの脂肪分解酵素、及び菌類クチナーゼであり得る。
菌類クチナーゼの例は、フサリウム・ソラニ・ピシ(Fusarium salani pisi)(S. Longhi など., Journal of Molecular Biology, 268 (4), 779-799 (1997))、及びヒューミコラ・インソレンス(アメリカ特許第5,827,719号)からのクチナーゼである。
【0011】
ヒューミコラファミリーの脂肪分解酵素は、H. ラヌギノサ株DSM4109からのリパーゼ、及び前記リパーゼと50%以上の相同性を有するリパーゼから成る。H. ラヌギノサ(別名サーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus))からのリパーゼは、EP258068号及びEP305216号に記載されており、そしてアメリカ特許第5,869,438号の配列番号2の位置1−296に示されるアミノ酸配列を有する。
【0012】
ヒューミコラファミリーはまた、次の脂肪分解酵素を包含する:ペニシリウム・カメムベルチ(Penicillium camembertii)からのリパーゼ(P25234)、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)からのリパーゼ/ホスホリパーゼ(EP130064号、WO98/26057号)、F. ヘテロスポラム(F. heterosporum)からのリパーゼ(R87979)、アスペルギラス・フォエチダスからのリソ−ホスホリパーゼ(W33009)、A. オリザエからのホスホリパーゼ(JP-A10-155493号)、A. オリザエからのリパーゼ(D85895)、A. 二ガーゼからのリパーゼ/フェルラ酸エステラーゼ(Y09330)、A. ツビンゲンシス(A. tubingensis)からのリパーゼ/フェルラ酸エステラーゼ(Y09331)、A. ツビンゲンシスからのリパーゼ(WO98/45453号)、A. ニガーからのリソホスホリパーゼ(WO98/31790号)、6.9の等電点及び30kDaの見掛け分子量を有する、F. ソラニ(F. solanii)からのリパーゼ(WO96/18729号)。
【0013】
ヅイゴミセテス(Zygomycetes)ファミリーは、リゾムコル・ミエヘイのリパーゼ(P19515)と少なくとも50%の相同性を有するリパーゼを包含する。このファミリーはまた、アブシジア・レフレキサ(Absidia reflexa), A. スホロフォラ(A. sporophora)、A. コリムビフェラ(A. corymbifera)、A. ブラケスレアナ(A. blakesleeana)、A. グリセオラ(A. griseola)(すべては、WO96/13578号及びWO97/27276号に記載される)、及びリゾパス・オリザエ(Rhizopus oryzae)(P21811)からのリパーゼを包含する。括弧内の番号は、出版物又はEMBL, GenBank, GeneSeqp or Swiss-Prot データベースへのアクセスを示す。
【0014】
他の適切なヒドロラーゼは、フィターゼ(EC 3. 1. 3. −)、例えば3−フィターゼ(EC 3. 1. 3. 8)及び6−フィターゼ(EC 3. 1. 3. 26);グリコシダーゼ(EC 3. 2, “カルボヒドラーゼ”として本明細書において示される群内にある)、例えばα−アミラーゼ(EC 3. 2. 1. 1);ペプチダーゼ(EC 3. 4, プロテアーゼとしても知られている);及び他のカルボニルヒドロラーゼを包含するが、但しそれらだけには限定されない。他のヒドロラーゼは、キシログルカナーゼ、アラビナーゼ、ラムノ−ガラクトロナーゼ、ペクチナーゼ、リグニナーゼ(例えば、ポリフェノールヒドロラーゼ)を包含する。
【0015】
適切なプロテアーゼ(E.C.3.4)の例は、動物、植物又は微生物起源のそれら、又は化学的に修飾された又はタンパク質構築された変異体を包含するが、但しそれらだけには限定されない。プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ又は金属プロテアーゼ、特にアルカリ微生物プロテアーゼ又はトリプシン様プロテアーゼであり得る。アルカリプロテアーゼの例は、スブチリシン、特にバチルス(Bacillus)由来のそれら、例えばスブチリシンNovo, スブチリシンCarlsberg, スブチリシン309、スブチリシン147及びスブチリシン168である(WO89/06279号に記載される)。トリプシン様プロテアーゼの例は、トリプシン(例えば、ブタ又はウシ起源の)、及びWO89/06270号及びWO94/25583号に記載されるフサリウムプロテアーゼである。
【0016】
市販のプロテアーゼ酵素の例は、AlcalaseTM、 SavinaseTM、 PrimaseTM、 DuralaseTM、 EsperaseTM、及び KannaseTM (Novozymes A/S)、 MaxataseTM、 MaxacalTM、 MaxapemTM、 ProperaseTM、 PurafectTM、Purafect OxPTM、 FN2TM、 及び FN3TM (Genencor International Inc.)を包含する。
本発明の文脈において、用語「カルボヒドラーゼ」は、特に5−員及び6−員環構造の炭水化物鎖(例えば、澱粉)を分解することが出来る酵素(例えば、グルコシダーゼ、EC 3.2)のみならず、炭水化物、例えばD−グルコースの如き6−員環構造を、D−フラクトースの如き5−員環構造に異性化することが出来る酵素を示すために用いられる。
【0017】
適切なカルボヒドラーゼは次ぎのものを包含する(括弧でEC番号):α−アミラーゼ(3. 2. 1. 1)、β−アミラーゼ(3.2. 1. 2)、グルカン1,4−α−グルコシダーゼ(3. 2. 1. 3)、セルラーゼ(3.2. 1. 4)、エンド−1,3(4)−β−グルカナーゼ(3.2.1.6)、エンド−1,4−β−キシラナーゼ(3.2.1.8)、デキストラナーゼ(3.2.1.11)、キチナーゼ(3.2.1.14)、ポリガラクツロナーゼ(3.2.1.15)、リゾチーム(3.2.1.17)、β−グルコシダーゼ(3.2.1.21)、α−ガラクトシダーゼ(3.2.1.22)、β−ガラクトシダーゼ(3.2.1.23)、マンナナーゼ(3.2.1.25)、アミロ−1,6−グルコシダーゼ(3.2.1.33)、キシラン1,4−β−キシロシダーゼ(3.2.1.37)、グルカンエンド−1,3−β−D−グルコシダーゼ(3.2.1.39)、α−デキストリンエンド−1,6−グルコシダーゼ(3.2.1.41)、スクロースα−グルコシダーゼ(3.2.1.48)、グルカンエンド−1,3−α−グルコシダーゼ(3.2.1.59)、グルカン1,4−β−グルコシダーゼ(3.2.1.74)、グルカンエンド−1,6−β−グルコシダーゼ(3.2.1.75)、エンド−1,4−β−マンナナーゼ(3.2.1.78)、アラビナンエンド−1,5−α−アラビノシダーゼ(3.2.1.99)、エンド−1,6−β−マンナナーゼ(3.2.1.101)、ラクターゼ(3.2.1.108)、キトナナーゼ(3.2.1.132)及びキシロースイソメラーゼ(5.3.1.5)。
【0018】
しかしながら、まだ分類されていない酵素もまた、本発明のために適切であり得る。酵素/注目の酵素はまた、既知の酵素の変異体でもあり得、ここで用語“変異体”とは、他の酵素、典型的には親酵素と呼ばれる既知酵素とは、少なくとも1つのアミノ酸位置で異なる酵素として理解されるべきである。
【0019】
ポリペプチドのライブラリー:
本発明はまた、注目の酵素についてのポリペプチドのライブラリーのスクリーニング方法にも関する。本発明においては、用語“ポリペプチドのライブラリー”とは、少なくとも2種の異なったポリペプチドの収集として理解されるべきであり;すなわち、1又は複数のアミノ酸位置で異なる少なくとも2種のポリペプチド、例えばポリペプチドにおけるアミノ酸の数が異なるか、又は特定位置でのアミノ酸が異なることができる。
【0020】
典型的には、ポリペプチドのライブラリーは、ポリペプチドを発現できる宿主細胞中に、ポリペプチドのライブラリーをコードする核酸配列のライブラリーを導入することにより調製され得る。遺伝子縮重のために、前記ライブラリーにおける異なった核酸配列の数は、異なったポリペプチドの数よりも多い。
【0021】
特に、前記核酸配列のライブラリーは、親酵素の変異体をコードし;すなわちポリペプチドが、親酵素に比較して、少なくとも1つのアミノ酸位置で異なる。従って、スクリーニング方法は、親酵素の変異体をスクリーニングするために使用され得る。そのような変異体は、例えば親酵素のランダム突然変異誘発又は特定部位の突然変異誘発、又は当業者に知られている他の方法により生成され得る。従って、特定の態様においては、ポリペプチドのライブラリーは、親酵素の変異体のライブラリーであり得る。適切な親酵素の例は、上記酵素セクションに言及されるそれらを包含するが、但しそれらだけには限定されない。特に、親酵素は、脂肪分解酵素、例えばヒューミコラ、例えばH. ラヌギノサ、又はシュードモナス又はトチルスからのリパーゼであり得る。
【0022】
もう1つの態様においては、前記核酸配列のライブラリーは、1つの又は多数の異なった生物に由来するポリペプチドをコードすることができる。従って、前記方法は、脂肪分解酵素活性の発現のために1つの又は多数の異なった生物をスクリーンするために使用され得る。
もう1つの態様においては、ポリペプチドのライブラリーは、ポリペプチドを合成することにより調製され得る。
【0023】
核酸配列のライブラリーを宿主細胞中に導入し、前記ポリペプチドのライブラリーによりコードされるポリペプチドを宿主細胞において発現する、核酸配列のライブラリーの調製方法、ポリペプチドの合成方法は、当業者に良く知られており、そして次の文献に見出され得る:"Molecular cloning: A laboratory manual", Sambrook など. (1989), Cold Spring Harbor lab., Cold Spring Harbor, NY; Ausubel, F. M. など. (eds.); "Current protocols in Molecular Biology", John Wiley and Sons, (1995); Harwood, C. R., and Cutting, S. M. (eds.); "Molecular Biological Methods for Bacillus", John Wiley and Sons, (1990); "DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II", D.N. Glover ed. (1985); "Oligonucleotide Synthesis", M.J. Gait ed. (1984); "Nucleic Acid Hybridization", B.D. Hames & S.J. Higgins eds (1985); "Transcription And Translation", B.D. Hames & S.J. Higgins, eds. (1984); "Animal Cell Culture", R.I. Freshney, ed. (1986); "Immobilized Cells And Enzymes", IRL Press, (1986); "A Practical Guide To Molecular Cloning", B. Perbal, (1984)。
【0024】
繊維類:
本発明においては、用語“繊維類”とは、布、被服及び糸を包含する。
布は、製織、編成又は不織操作により繊維から構成され得る。製織及び編成は、入力物として糸を必要とするが、ところが不織布は、繊維のランダム結合の結果である(紙は不織からのものであると思われる)。本発明においては、用語“布”とはまた、繊維及び他の型の加工された布を包含する。
【0025】
織布は、織機上で縦方向に延長された巻き付け糸間に横糸を製織することにより構成される。巻き付け糸は典型的には、製織の間、横糸の高速挿入で摩擦からそれらを保護するために、製織の前、サイズ剤を施されるべきである。横糸は、巻き付け糸を通して、“縦糸と横糸が1本毎に交錯する(over one-under the next)”形式(平織)により、又は“縦糸又は横糸の浮きが斜めに綾目うね(over one-under two)”形式(斜文織)により、又はいずれか他の無数の変更を伴って織られ得る。強度、きめ及びパターンは、糸の型/質のみならず、また織の型にも関連する。一般的に、ドレス、シャツ、パンツ、シーツ、タオル、ドラペリー、等は、織布から製造される。
【0026】
編成は、糸のインターロッキングループを一緒に連結することにより、布を形成する。2種の型の糸から構成され、そして多くの“末端”を有する製織に反して、メリヤス生地は、糸の単一の連続したストランドから製造される。製織に関しては、糸を一緒にルービングするための多くの異なった手段が存在し、そして最終の布の性質は、糸及びメリヤスの両者に依存する。下着、セーター、靴下、スポーツシャツ、スウェットシャツ、等は一般的にメリヤス布に由来する。
【0027】
不織布は、繊維及びフィラメントを、機械、熱、化学、又は溶媒介在性加工により結合し、そして/又はインターロッキングすることにより製造される布のシートである。得られる布は、ウェブ様構造、ラミネート又はフィルムの形で存在することができる。典型的な例は、使い捨ての子供用おもつ、タオル、ワイパー、手術用ガウン、“環境的にやさしい”型のための布、フィルター媒体、ベット、屋根材料、二次元布のための裏地及び多くの他のものである。
【0028】
本発明に使用される繊維類は、いずれかの既知の繊維類(織られた、編成された又は不織)であり得る。特に、繊維類は、セルロース含有又はセルロース繊維類、例えば綿、ビスコース、レーヨン、ラミー、リネン、リオセル(例えば、Courtaulds Fibersにより生成されるテンセル)、又はそれらの混合物であり得るか、又はそれは、合成繊維類、例えばポリエステル、ポリアミン又はナイロンの1つ、又はそれらの混合物、又はセルロース含有又はセルロース繊維及び合成繊維の混合物であり得る。適切な繊維類のもう1つの例は、他の天然の繊維、例えば羊毛及び絹又はそれらの混合物、又は上記に言及された繊維のそれらの混合物及びそれらの1つ又は複数の繊維を含んで成る繊維類である。
【0029】
繊維の混合物の例は、ビスコース/綿ブレンド、リオセル/綿ブレンド、ビスコース/羊毛ブレンド、リオセル/羊毛ブレンド、綿/羊毛ブレンド;亜麻(リネン)、ラミー及びセルロース繊維に基づく他の繊維、例えばセルロース繊維と他の繊維、例えば羊毛、ポリアミド、アクリル及びポリエステル繊維とのすべてのブレンド、例えば綿/ポリエステルブレンド、ビスコース/綿/ポリエステルブレンド、羊毛/綿/ポリエステルブレンド、亜麻/綿ブレンド、等を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0030】
用語“羊毛”とは、いずれかの商業的に有用な動物の毛製品、例えば羊、ラクダ、ウサギ、ヤギ、ラマからの羊毛、及び既知のメリノ羊毛、シェットランド羊毛、カシミール羊毛、アルパカ羊毛、モヘア、等を意味し、そして羊毛繊維及び動物の毛を包含する。繊維類は、漂白され、染色されるか、又は末染色であり得る。用語“ポリエステル”とは、縮合により合成され、溶融物から繊維に延伸され、安定物に切断され、他の繊維型と混合され、そして糸に紡糸されるポリ(エチレンテレフタレート)を意味する。糸は染色され、そして布に編成され、又はカーペットに製造されるか、又は糸は布に織られ、そして染色される。
【0031】
繊維類に結合するか又は付着する酵素の能力は、特定の酵素、及び繊維類の型に依存する。例えば、脂肪分解酵素は、すすぎの間、綿−繊維類からよりもポリエステル−繊維類から除去するのに困難であると思われ、一般的に、疎水性材料への脂肪分解酵素の付着又は結合は、親水性材料に対するよりも強い。
【0032】
さらなる物質
本発明の特定の態様においては、繊維類はさらに、他の物質、例えばタンパク質、脂質、サッカリド又はそれらの混合物を含むことができる。特に、そのような、さらなる物質は、人々の毎日の生活において彼らの衣服上に得られるしみに類似する。人々が一般的に、彼らの衣服上でのしみとして経験するそのような物質の例は、草、泥、粘土、コーヒー、茶、血液、卵、ラード、カビ(湿潤染色された)、又はカリエされた物質、例えばバター、加工された肉、染色されたラード、油、メーキャップ、スパイスブレンド、加工されたトマト(ケチャップ又はピューレ)、チョコレート、アイスクリーム、カカオ、ベビーフード及び同様のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0033】
繊維類はまた、精製されたタンパク質組成物、精製されたポリサッカリド組成物、精製された脂肪酸組成物、精製されたトリグリセリド組成物、又は他の精製された生物学的又は非生物学的化合物から選択された、化合物を含んで成る人工組成物を含んで成る。適切なさらなる物質のもう1つの例は、特定の組成物、例えば炭素粒子、例えばカーボンブラック又は酸化鉄を包含する。繊維類は、そのまま、又は水溶液として、染色材料を、ソーキング、ブラッシング及び/又は噴霧により繊維類表面上に適用することにより染色され得る。広範囲の異なったしみ/物質を含んで成る繊維類は、EMPA St. Gallen, Lerchfeldstrasse 5, CH-9014 St. Gallen, Switzerlandにより市販されている商品名EMPA(商標) スワッチとして市販されている。
【0034】
本発明者は、それらのさらなる物質のいくつかが、酵素が、すすぎの間、それを除去するのに困難にする、洗浄の間、“閉じ込められ”得る繊維類と一緒にマトリックスを形成すると考えている。
繊維類で存在することができるタンパク質の例は、ミルク、肉、卵、血液に存在スルタンパク質、又は繊維類が染色され得る上記に言及されるそれらの物質及び/又は組成物の1つに存在することができる他のタンパク質を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0035】
用語“脂質”とは、水に不溶性であるが、しかし有機溶媒、例えばエーテル、アセトン、及びクロロホルムに溶解性である化合物群として、本明細書においては理解されている。前記群は、脂肪、油、トリグリセロール、脂肪酸、糖脂質、リン脂質及びステロイドを包含する。脂肪酸は、CH3(C2Hy)COOHの一般式を有する(しばし長い)炭化水素鎖の末端でカルボキシレート基を含んで成る単純な脂質であり、そしてそれらは、より複雑な脂質の成分である。トリアシルグリセロールは、脂肪酸及びグリセロールのトリエステルであり、ここでトリアシルグリセロール中の脂肪酸は同一であるが、しかし多くのトリアシルグリセロールにおいては、それらは異なる。脂肪は、一般的に、トリアシルグリセロール及び脂肪酸の混合物を含んで成り、そして20℃で固形である物質である。
【0036】
油は、脂肪に類似するが、但しそれらは20℃で液体である。なぜならば、それらは脂肪よりも高い含有率の不飽和脂肪酸を含んで成るからである。脂肪及び油の組成は一般的に、トリグリセロールに存在するそれらの脂肪酸及び遊離脂肪酸であるそれらの脂肪酸のそれらの組成により説明される。脂肪質は、サッカリド基を含んで成る脂質である。リン脂質は、化合物の親水性部部にホスフェート基を含んで成る脂質である。ステロイドは、コレステロール及び高等動物の性ホルモンを包含する化合物群からであり、そしてコレステロールは天然においてそれらの多くの物質の合成のための前駆体である。
【0037】
本発明の特定の態様においては、脂質は、“しみを引起す脂質”、すなわち毎日の生活において衣服とのしみの原因である、脂質又は脂肪質の混合物であり得、そのような脂質の例は、オリーブ油、バター、ラード、ミルク脂肪、口紅、植物脂肪又は牛肉脂肪を包含するが、但しそれらだけには限定されない。そのような脂質の組成は、脂肪酸中のそれらの含有率により、しばしば記載される。
【0038】
酵素と繊維類との接触:
酵素及びポリペプチドのライブラリーは、いずれかの手段により繊維類と接触され得る。特に、これは、酵素又はポリペプチドのライブラリーの溶液を繊維類に添加することにより実施され得る。
例えば、酵素又はポリペプチドのライブラリーが発現され、そして宿主細胞により分泌される場合、宿主細胞からの上清液が繊維類に添加され得るか、又は酵素又はポリペプチドのライブラリーが宿主内で、例えば封入体において発現される場合、宿主細胞は溶解され、そして溶解物又はその画分が繊維類に添加され得る。
【0039】
酵素又はポリペプチドのライブラリーはまた、それらと繊維類とを接触する前、精製され得る。本明細書においては、用語“精製される”とは、酵素/ポリペプチドのライブラリーがそれらの生来の環境から除かれたことを意味する。酵素/ポリペプチドのライブラリーが宿主細胞により発現される場合、その生来の環境は、宿主細胞により分泌される酵素/ポリペプチドのライブラリーとは異なる宿主細胞及び化合物を言及する。合成的に調製された酵素又はポリペプチドに関しては、これは、合成工程の間に存在する他の化合物の除去を言及する。
【0040】
酵素又はポリペプチドのライブラリーは、当業界において知られている種々の方法、例えばクロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング、及びサイズ排除)、電気泳動方法(例えば、分離用等電点電気泳動)、示差溶解性(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、SDS−PAGE、又は抽出(例えば、Protein Purification, J. -C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照のこと)により精製され得る。
【0041】
特定の態様においては、酵素又はポリペプチドのライブラリーは、酵素又はポリペプチドのライブラリーを含んで成る洗剤溶液を繊維類に添加することにより、繊維類と接触され得る。用語“洗剤溶液”とは、非イオン性、例えば半極性及びアニオン性及び/又は両性イオン性であり得る、1又は複数の界面活性剤を含んで成る溶液として、本明細書においては理解されるべきである。界面活性剤は典型的には、0.1〜60重量%のレベルで存在する。
【0042】
洗剤溶液は、約1〜約40%のアニオン性界面活性剤、例えば線状アルキルベンゼンスルホネート、α−オレフィンスルホネート、アルキルスルフェート(脂肪アルコールスルフェート)、アルコールエトキシスルフェート、第二アルカンスルホネート、α−スルホ脂肪酸メチルエステル、アルキル−又はアルケニル琥珀酸又はソープを含むことができる。
【0043】
洗剤溶液は通常、約0.2〜約40%の非イオン性界面活性剤、例えばアルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシル化された脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、ポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド、又はグルコサミンのN−アシルN−アルキル誘導体(“グルカミド”)を含むことができる。
【0044】
洗剤溶液はさらに、0〜65%の洗剤ビルダー又は錯生成剤、例えばゼオライト、ジホスフェート、トリホスフェート、ホスホネート、カーボネート、シトレート、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、アルキル−又はアルキレン琥珀酸、可溶性シリケート又は積層されたシリケート(例えば、HoechstからのSKS-6)を含むことができる。
【0045】
洗剤溶液はさらに、1又は複数のポリマーを含んで成ることができる。例として、カルボキシメチルセルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルピリジン−N−オキシド)、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリカルボキシレート、例えばポリアクリレート、マレイン酸/アクリル酸コポリマー、及びメタクリレート/アクリル酸コポリマーを列挙することが、但しそれらだけには限定されない。
【0046】
洗剤溶液はさらに、H2O2源を含んで成る漂白システム、例えば過酸−形成漂白活性化剤、例えばテトラアセチルエチレンジアミン又はノナノイルオキシベンゼンスルホネートと共に組合され得るペルボレート又はペルカーボネートを含むことができる。他方では、漂白システムは、例えばアミド、イミド又はスルホン型のペルオキシ酸を含んで成ることができる。
【0047】
洗剤溶液はさらに、従来の酵素−安定化剤、例えばポリオール、例えばプロピレングリコール又はグリセロール、糖又は糖アルコール、乳酸、硼酸、又は硼酸誘導体、例えば芳香族ボレートエステル、又はフェニルホウ素酸誘導体、例えば4−ホルミルフェニルホウ素酸を含んで成ることができ、そして前記組成物は、例えばWO92/19709号及びWO92/19708号に記載のようにして配合され得る。
【0048】
洗剤溶液はまた、従来の洗剤成分、例えば布コンディショナー、例えばクレー、起泡増進剤、石鹸水の泡抑制剤、抗腐蝕剤、土壌−沈殿防止剤、抗−土壌再沈殿剤、顔料、殺菌剤、蛍光増白剤、ヒドロトロープ、曇りインヒビター又は香料を含むことができる。
【0049】
さらに、洗剤溶液は、本発明の酵素又は注目の酵素意外の1又は複数の酵素、例えばプロテアーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キシラナーゼ、オキシダーゼ、例えばラッカーゼ、及び/又はペルオキシダーゼを含むことができる。洗剤に一般的に使用される酵素の例は、当業者に良く知られている。
【0050】
本発明の特定の態様においては、機械的応力が、繊維類、又は酵素又はポリペプチドのライブラリーが繊維類と接触される場合に使用され得る。特定の接触においては、酵素又はポリペプチドのライブラリーと繊維類との接触は、化合物又はその組成物の清浄効果を試験するための方法を開示するWO02/42740号に記載のようにして実施され得る。
【0051】
繊維類のすすぎ:
本発明においては、用語“すすぐ”とは、水基材の溶液と布との接触及び続く前記溶液の除去として理解されるべきであり、ここで用語“水基材の溶液”とは、水以外の他の成分最大20w/v%、例えば水以外の他の成分10w/v%又は5w/v%又は3w/v%又は2w/v%又は1w/v%又は0.5w/v%を含んで成る水溶液として理解されるべきである。そのような他の成分の例は、下記に与えられる。
【0052】
本発明の方法は、布を洗浄する工程を模倣するために使用され得るので、すすぎは、布の洗浄の間、すすぎの条件を特に模倣することができる。一般的に、布は水によりすすがれるが、しかしながら水の組成は、水源に依存して変化することができ、例えばそれは川の水、湧き水又は地下水であり得る。さらに、水源の地理学的位置は、その組成に影響を及ぼす。
【0053】
所定の水源の硬度(合計硬度)は、アルカリ土類金属、すなわちカルシウム、マグネシウム、ストロンチウム及びバリウムの塩のその含有率に依存する。ストロンチウム及びバリウムは一般的に水に微量、存在するので、水の硬度は、カルシウムイオン(Ca2+)及びマグネシウムイオン(Mg2+)の含有率として定義される。従来の方法は、カルシウムに対してのみの水の硬度を言及することであり、換言すれば、カルシウム含有率としてマグネシウムイオンの含有率を表すことである。時折使用される硬度についての実際的な測定単位は、いわゆる次の通りに定義されるGerman度である:
1°dH=10mgのCaO/L。
【0054】
“硬”水は、高濃度の炭酸カルシウム及び他の鉱物を含む水である。
“軟”水は、低濃度の炭酸カルシウム及び他の鉱物を含む水である。
すすぎのために使用される水基材の溶液に存在することができる他の成分の例は、緩衝液、特に4〜10のpHを有する緩衝液、塩、ソフトナー及び少量の洗剤を包含するが、但しそれらだけには限定されない。繊維類と酵素/ポリペプチドのライブラリーとの接触が、例えば繊維類の“洗浄”により、洗剤の存在下で行われる場合、特に少量の洗剤が存在できる。適切な緩衝液の例は、下記表1に記載されるそれらを包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0055】
【表1】

【0056】
上記のCa2+及びMg2+以外に、水基材の溶液に存在できる塩又はイオンの例は、NaCl、KCl、ストロンチウム及びバリウムを包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0057】
ソフトナーは一般的に布の感触及び新鮮性を改良し、そして静電気構築を低めるために、洗浄の間に使用される(例えば、Levinson Ml, 1999, Journal of Surfactants and Detergents, 2, 223-235を参照のこと)。ソフトナーにおける主要成分の1つは、カチオン性テンシド又は界面活性剤、例えばジアミドアミン又は第四時エステル、又はトリエタノールアミン基材の第四エステルであるが、しかしながら、それはまた、他の成分、例えば香料、保存剤、緩衝液、顔料、蛍光増白剤、酵素、顔料安定剤、紫外線吸収剤、塩素スキャベンジャー及び/又は電解質を含むことができる(例えば、Levinson Ml, 1999, Journal of Surfactants and Detergents, 2, 223-235を参照のこと)。
【0058】
酵素活性の測定方法:
繊維類に存在する残留酵素/注目の酵素の活性は、いずれかの適切な方法により測定され得る。選択方法は、例えば特定の酵素/注目の酵素に依存する。本発明においては、用語“残留酵素/注目の酵素”とは、本発明の方法に従って、繊維類が酵素又はポリペプチドのライブラリーと接触され、そして従って、すすがれた後、その繊維類に存在する酵素/注目の酵素として理解されるべきである。酵素又はポリペプチドのライブラリーと繊維類との接触及びすすぎは、上記のようにして行われ得る。
【0059】
特定の態様においては、酵素/注目の酵素の活性は、蛍光化合物によりラベルされた酵素/注目の酵素についての基質を添加することにより測定され得、ここで蛍光ラベルが、それが酵素/注目の酵素と接触する場合、基質から開放される。次に、酵素/注目の酵素による基質の生成物への転換は、蛍光又は蛍光の変化を測定することにより測定され得る。この方法の原理は、一般的であり、そして特定の酵素に無関係である。蛍光を測定するための方法は、当業者に良く知られている。特定の酵素/注目の酵素に、より特異的に関連する方法を包含する他の方法が使用され得る。基質がラベルされ得る適切な蛍光分子の例は、レゾルフィン(Resorufin)又はメチルウンベリフェロン(Methylumbelliferon)を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0060】
例えば、酵素/注目の酵素が脂肪分解酵素である場合、基質は脂肪酸、例えば酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノレン酸又はアラキドン酸であり得る。従って、本発明の特定の態様においては、酵素/注目の酵素は、脂肪分解酵素であり得、そして基質は、レゾルフィン−ブチレート、メチルウンベリフェロン−ブチレート又はメチルウンベリフェロン−パルミテートであり得る。
【0061】
脂肪分解酵素の活性を測定するために蛍光を用いる他の例は、アルキル基の1つが蛍光基、例えばピレニルにより置換されているトリアシルグリセロールの使用を包含する。例えば、蛍光原的に及び異性体的に純粋な1−(3)−o−アルキル−2,3−(3,2)−ジアシルグリセロールが、リパーゼの活性を測定するための有用な基質として記載されている(Gupta R など., Biotechnol. Appl. Biochem (2003), 37, 63-71を参照のこと)。
【0062】
他の適切な基質は、Gupta R など., Biotechnol. Appl. Biochem (2003), 37, 63-71により記載されるそれら、例えばトリオレイン、トリブチリン、トリアセチン(トリアセチルグリセロール)又はトリプロピオニン(トりプロピオニルグリセロール)を包含する。もう1つの例は、脂肪酸、例えば上記に言及される脂肪酸の1つのp−ニトロフェニルエステルの使用であり、例えばp−ニトロフェニルパルミテートが、リパーゼの活性を測定するために使用されて来た。
【0063】
酵素/注目の酵素がプロテアーゼ(E. C. 3. 4.)である場合、カゼイン又はカゼイン誘導体が基質として使用され得る。特に、基質は、蛍光化合物によりラベルされたカゼイン又はカゼイン誘導体であり、その結果、プロテアーゼとカゼインとの間の相互作用は蛍光を測定することにより測定され得る。そのような蛍光化合物の例は、フルオレセインチオカルバモイル(FTC)、BODIPY(商標) FL 及び BODIPY(商標) TR-Xを包含し、ここで後者の2つは、EnzCheck(商標) Protease Assay キットの一部として、Molecular Probesから入手できる化合物である。プロテアーゼがアミノ酸配列Asp−Glu−Val−Asp(DEVD)に対する基質特異性を有するカスパーゼである場合、7−アミノ−4−メチルクマリン由来の基質Z−DEVD−AMC(ここで、Zはベンジルオキシカルボニル基を表わす)が、Molecular ProbesからのEnzChek(商標) Caspase-3 Assay キットに記載のようにして、基質として使用され得る。
【0064】
酵素/注目の酵素がα−アミラーゼ(E.C.3.2.1.1)である場合、基質はスターチ又はスターチ誘導体であり得る。特定の態様においては、基質はMolecular ProbesからのEnzChek(商標) Amylase Assay キットの一部であるBODIPY(商標) FL色素によりラベルされたトウモロコシから得られたスターチであり得る。
【0065】
酵素/注目の酵素がセルラーゼ(E.C.3.2.1.4)である場合、基質は天然のセルロースであり得、特にそれは、Helbert W など., (2003), Biomacromolecules, 4, 481-487に記載のように、5−(4,6−ジクロロトラジニル)アミノフルオレセイン(DTAF)によりラベルされた天然のセルロースであり得る。適切な基質のもう1つの例は、Boyer V など, (2002), Chemistry-a European Journal, 8 (6), 1389-1394に記載のように、還元末端でナフタレン成分及び非還元末端で4−(4’−ジメチルアミノベンゼンアゾ)−ベンゼンを含んで成るセルヘキサオース誘導体を包含する。
【0066】
酵素/注目の酵素がペルオキシダーゼ(E.C.1.11.1)である場合、酵素活性は、発色体としてのABTS(商標)(2、2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホネート))に基づくアッセイを用いることにより、時間の関数としての過酸化水素の転換率を測定することにより測定され得る。参加されたABTSの緑青色が、418nmでの分光計により測定され得る。
【0067】
本発明の方法:
本発明者は、繊維類との残留酵素の量が、前記酵素の活性を測定することにより測定され得ることを見出した。従って、本発明は、1つの態様において、酵素の活性を測定することを含んで成る、酵素と接触せしめられ、そして続いて、酵素活性を測定する前、すすがれている繊維類上の残留酵素の量の測定方法に関する。
【0068】
もう1つの態様においては、本発明は、上記方法を用いて、繊維類上に存在する残留酵素の量を測定し、そして次に、酵素を選択することを含んで成る、注目の酵素についてののポリペプチドのライブラリーをスクリーニングするための方法に関する。
本発明においては、用語“残留”とは、本発明の方法に従って、繊維類が酵素と接触され、そして続いてすすがれた後、繊維類上に残存する酵素を意味する。
【0069】
両方法に関して、繊維類は最初に、酵素と接触され、次に繊維類がすすがれ、そして繊維類に存在する酵素の活性が測定される。従って、図示される前記方法は、
a)前記繊維類と酵素又はポリペプチドのライブラリーとを接触し、
b)前記繊維類をすすぎ、
c)前記繊維類上に存在する酵素の活性を測定する、段階を含んで成り、ここでスクリーニング方法はさらに、注目の酵素を選択する段階を含んで成る。
ほとんどの酵素は、5〜95℃の温度で最適な機能性を有するので、本発明の方法は特に、5〜95℃、例えば10〜80℃、20〜70℃、20〜60℃、20〜50℃で実施され得る。
【0070】
本発明の方法は、いずれかの適切な容器、例えば24ウェル/プレート、96ウェル/プレート、384ウェル/プレート、1536ウェル/プレート又はそれ以上のウェル/プレート、又はnlウェル−より少ない区画を有するマイクロタイタープレートにおいて実施され得る。マイクロタイタープレートを用いる利点は、ポリペプチドのライブラリーがスクリーンされる場合、特に有用である検出方法を自動化することが一般的に容易であることである。
本発明の方法がマイクロタイタープレートにおいて行われる場合、繊維類は、プレートにおけるウェルの底で置換のために適切なサイズの小パッチの形を有することができる。
【0071】
繊維類上に存在する酵素/注目の酵素の活性を、対照と比較することができる。例えば、ポリペプチドのライブラリーが注目の酵素についてスクリーンされる場合、繊維類に存在する酵素活性が、既知酵素の酵素活性と比較され、例えば変異体のライブラリーがスクリーンされる場合、それが親酵素と比較され得る。これは、親酵素として布上のしみを分解する類似する能力を有するが、しかしすすぎの間、布から容易に除去される変異体を見出したい場合、適切であり得る。従って、この場合、繊維類上の残留酵素の量が親酵素についてのその量よりも少ない変異体を選択するであろう。例えば、例に記載されるように、リパーゼについてスクリーンする場合、既知のリパーゼ、例えばLipolase(商標) 及びLipex(商標)が対照として使用され得る。
【0072】
対照を用いるもう1つの例は、アッセイ−アッセイ変動についての補正を可能にする、いわゆる内部標準の使用である。典型的には、アッセイにおいて低い活性を示す良く知られた酵素、及びアッセイにおいて高い活性を示す良く知られた酵素が内部標準として使用され、そして次に、それらはあらゆるアッセイに包含され;これは、酵素活性の変動がアッセイ変動のインジケーターとして使用され得ることを示す。
【0073】
布が酵素を含んで成る洗剤により洗浄された後、その布上に存在する酵素が存在しないことが、一般的に好ましい。従って、いかに多くの酵素が布上に残存するかを検出することができることが好都合である。例えば、脂肪分解酵素が洗浄のために使用される場合、いくつかの脂肪分解酵素が、良好な香りがない脂肪酸を開放するために布上に存在する物質と反応できるので、残留酵素の量を測定することが好都合であり得る。
【0074】
材料及び方法:
酵素:
Lipolase(商標)は、EP258068号及びEP305216号に記載されるヒューミコラ・ラヌギノサ由来のリパーゼである。
Lipex(商標)は、WO0060063号に記載される、Lipolase(商標)の変異体である。
【0075】
繊維類−スワッチ:
wfk20LSは、wfk Testgewebe GmbH, Christenfeld 10, D-41379 Brueggen, Germanyから得られたポリエステル/綿65/35上に口紅を有する繊維類−スワッチである。
【0076】
方法:
マイクロ−洗濯
ラードはバターにより染色された繊維類スワッチを、96ウェルマイクロタイタープレートのウェル中に挿し入れた。150μlの洗剤(100mMのL−アルギンニン)を、個々のウェル中に分散した。試験されるべき酵素を発現する酵素細胞(SC培地を含むマイクロタイタープレートにおいて3〜4日間、増殖された)の上清液10μlを、個々のウェルン添加し、そしてマイクロタイタープレートを、500rpm下で、30℃で20分間インキュベートする。洗浄水をプレート洗浄機により除去し、そして続いて、スワッチを下記のようにしてすすいだ。
【0077】
すすぎ
異なった酵素濃度を伴って、マイクロ−洗濯アッセイ(上記)を行った後、マイクロウェルに存在する繊維類スワッチを、15°dHの硬度を有する人工水を用いてすすいだ(材料及び方法を参照のこと)。
すすぎ工程を、15°dHの硬度を有する水180μlを添加し、すすぎ水の除去の前、300rpmで設定された軌道シェーカー上に5分間、プレートを配置することにより行った。この工程を、合計3度、反復した。すすぎ水の最終除去の後、リパーゼ基質をウェルに添加し、個々の繊維類−スワッチ上に存在するリパーゼの活性を測定した。
【実施例】
【0078】
例1:口紅により染色された綿/ポリエステル繊維類上での残留リパーゼの測定
口紅により染色された、35%綿及び65%ポリエステルから製造された繊維類(wfk20LS)を、上記マイクロ−洗濯方法に従って、種々の濃度のVar1 , Var2, Var3, Var4, Var5 又は Var6(すべて、Lipolase(商標)の変異体である)、Lipolase(商標)又はLipex(商標)を含んで成る洗剤により洗浄した。Lipolase(商標)及びLipex(商標)を、変異体との比較のために使用した。メチルウンベリフェロン−ブチレート(Fluka #19362)を、200μMのメチルウンベリフェロン−ブチレートで終結する、0.4%Triton X-100(Sigma T9284)を含む、15°dHの硬度を有する水に溶解した。100μlのこの基質を、繊維類スワッチを含む個々のウェルに添加し、そして次に、室温で1時間インキュベートした。1時間後、蛍光を、360nmに設定された励起波長及び465nmに設定された発光波長を有する蛍光機SpectraFIuorPlus (Tecan, Austria)により測定した。個々の濃度及びリパーゼ/リパーゼ変異体についての465nmでの蛍光が、下記表2に示される。
【0079】
【表2】

【0080】
結果は、Var1及びVar6(これは、いくつかの濃度でのみ)がLipex(商標)よりも低い蛍光を発光することを示し、このことは、洗浄の後、Lipex(商標)が存在するよりも、繊維類上に存在するそれらの変異体が低いことを示唆する。類似する量の残留リパーゼが、他のアッセイにより見出された。
【0081】
例2:バター及びスーダンレッドを含む綿/ポリエステル繊維類上の残留リパーゼの測定
口紅を含む、35%綿及び65%ポリエステルから製造された繊維類(wfk20LS)を、上記マイクロ−洗濯方法に従って、種々の濃度のVar1 , Var3, Var5、Lipolase(商標)又はLipex(商標)を含んで成る洗剤により洗浄した。レソルフィン−ブチレート(Fluka #83637)を、2μMのレソルフィン−ブチレートで終結する、0.4%Triton X-100(Sigma T9284)を含む、15°dHの硬度を有する水に溶解した。100μlのこの基質を、繊維類スワッチを含む個々のウェルに添加し、そして次に、室温で1時間インキュベートした。1時間後、蛍光を、530nmに設定された励起波長及び590nmに設定された発光波長を有する蛍光機Polarstar (BMG Labtechnologies GmbH, Germany)により測定した。個々の濃度及びリパーゼ/リパーゼ変異体についての590nmでの蛍光が、下記表3に示される。
【0082】
【表3】

【0083】
結果は、Var5がLipex(商標)よりも低い蛍光を発光することを示し、このことは、洗浄の後、Lipex(商標)が存在するよりも、繊維類上に存在するそれらの変異体が低いことを示唆する。類似する量の残留リパーゼが、他のアッセイにより見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素の活性を測定することを含んで成る繊維類上の残留酵素の量の測定方法において、繊維類を酵素と接触せしめ、そして続いて、酵素活性を測定する前にすすぐ、ことを含んで成る方法。
【請求項2】
a)前記繊維類と酵素とを接触し、
b)前記繊維類をすすぎ、
c)前記繊維類上の酵素の活性を測定する、
段階を含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項3】
注目の酵素についてのポリペプチドのライブラリーのスクリーニング方法であって、
a)前記酵素の活性を測定することにより、繊維類上の残留酵素の量を測定し、ここで酵素をポリペプチドのライブラリーと接触せしめ、そして続いて、前記活性を測定し、
b)注目の酵素を選択する、
ことを含んで成る方法。
【請求項4】
前記段階a)が、
i)前記ポリペプチドのライブラリーと繊維類とを接触し、
ii)前記繊維類をすすぎ、
iii)前記繊維類上の注目の酵素の活性を測定する段階を含んで成る請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記酵素又は注目の酵素が、オキシドレダクターゼ(EC 1.-.-.-)、トランスフェラーゼ(EC 2.-.-.-)、ヒドロラーゼ(EC 3.-.-.-)、リアーゼ(EC 4.-.- .-)、イソメラーゼ(EC 5.-.-.-)及びリガーゼ(EC 6.-.-.-)から成る群から選択される請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記酵素又は注目の酵素が、脂肪分解酵素、例えばリパーゼ(E.C.3.1.1.3)である請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記残留酵素又は注目の酵素の量が、対照についての量よりも少ない請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記繊維類が、綿、ポリエステル、羊毛又はそれらのいずれかの混合物から製造される請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記繊維類がさらに、1つの物質、例えば脂質、タンパク質、サッカリド又は複数のそれらの組合せを含んで成る請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記酵素又は注目の酵素の活性が、前記酵素又はポリペプチドのライブラリーを含んで成る繊維類に蛍光基質を添加し、そして蛍光の量を測定することにより測定される請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2008−501324(P2008−501324A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513687(P2007−513687)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000374
【国際公開番号】WO2005/121353
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】