説明

段ボール棺の天板構造

【課題】天板、側板、妻板を含む展開紙をパーツ毎に分割することで、その加工時の取り扱いを容易にし、展開紙の組立作業を簡単にして天板各辺の連結角部における精度および強度を良好に保つ。
【解決手段】蓋13の展開紙P1は、天板13Aの横方向両側に縦V溝y1を隔てて側板13B,13Bが設けられ、縦方向両側に横V溝x1を隔てて妻板13C,13Cが設けられる。天板13Aは、その各辺からその板面内向きに一定の板幅で連なる縦枠片13Ay,13Ayと、横枠片13Ax,13Axと、これらの枠体に連結される中蓋片13Azとに分割して形成される。縦枠片13Ayと横枠片13Axの両端には天板13Aの板面角部を分断する鋭角端面fが形成され、展開紙P1の組立時には、縦枠片13Ayと横枠片13Axとを同一平面上に保って互いの鋭角端面f同士を連結することにより枠体を組む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール棺に関するもので、詳しくは、段ボール棺の展開紙における天板構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、木製棺に代わる素材として段ボール棺が注目されている。この種の段ボール棺は、木製棺に比べ軽く燃焼性に優れ、段ボール材からなる展開紙を折り曲げ加工することによって簡単に組み立てることができるという利点を有している。
【0003】
従来の段ボール棺の一例を図16および図17に示した。
段ボール棺1は、箱状の棺本体2と蓋3とが厚手の強化段ボール材により形成される。棺本体2の上端に、覗き窓Sを有する蓋3が開放可能に載置される。蓋3は、天板3A、と、側板3B,3Bと、妻板3C,3Cとを有し、側板3B,3Bと妻板3C,3Cの板面には面取り部3nが形成されている。
図17に示すように、蓋3の展開紙P0は、矩形の天板3Aの横方向両側に側板3B,3Bが設けられ、天板3Aの縦方向両側に妻板3C,3Cが設けられる。天板3Aと側板3Bとの境界、および側板3Bの面取り部3nを区切る境界には、ほぼ45゜角でV字状にカットされた縦V溝y1、y2が形成される。また、天板3Aと妻板3Cとの境界、および妻板3Cの面取り部3nを区切る境界には、同様にほぼ45゜角でV字状にカットされた横V溝x1、x2が形成される。展開紙P0の組み立て時には、天板3Aに対して縦V溝y1、y2および横V溝x1、x2に沿って側板3Bと妻板3Cを箱状に折り曲げて図16に示す蓋3を組み立てる。
【0004】
側板3Bおよび妻板3Cの開口端部には、図17に示すように、蓋3の強度を高めるための折返し部3mが設けられる。この折返し部3mは、展開紙P0の側板3B,3Bおよび妻板3C,3Cの端部に一定幅の紙片をW溝(ほぼ90゜角でV字状にカットされたV溝を2列に並設して形成した溝)に沿って折り返して形成する。
なお、上記に関連する従来の段ボール棺に関する先行技術としては、特許文献1および2が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−276346号公報
【特許文献2】実用新案登録第3036027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の段ボール棺は、単一の展開紙P0に天板3A、側板3Bおよび妻板3Cを一体的に設けるため、展開紙P0のサイズが大きくなる。このため、展開紙P0を作製するための段ボール板を取り扱いにくく、通常の切削機ではその加工作業が煩雑になる。特に、図17に示す従来の展開紙P0では、一枚の段ボール板に縦横方向に連なる複数のV溝およびW溝を正確な位置に切削加工することが必要で、展開紙P0の作製のために専用の大型機械の導入を強いられることもある。
【0007】
これに対し、展開紙P0の天板3A、側板3B、妻板3Cをそれぞれ分離してそれぞれ別個のパーツに分けて作製し、これらの端面を貼り合わせて蓋3を完成させることも考えられる。ところが、このような製法では、天板3Aの各辺端面に側板3Bおよび妻板3の各端面を互いに正確に位置合わせして連結しなければならず、その組み立て作業が面倒になる。また、天板各辺の連結角部において寸法精度を出しにくく、また、連結角部の強度が低下しやすくなる。
【0008】
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、天板、側板、妻板を含む展開紙をパーツ毎に分割することでその加工時の取り扱いを容易にし、しかも、展開紙の組立作業が簡単で、天板各辺の連結角部における精度および強度を良好に保てるようにした段ボール棺の天板構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[第1発明]
前記課題を解決するための本発明の段ボール棺の天板構造は、
天板、側板および妻板を含む展開紙を、各板の境界に形成されるV溝に沿って折り曲げることにより箱状に組み立てるようにした段ボール棺において、
前記展開紙は、天板と、この天板の横方向両側に縦V溝を隔てて設けられる側板と、前記天板の縦方向両側に横V溝を隔てて設けられる妻板とを備え、
前記天板は、
前記天板の横方向両側の各辺からその板面内向きに一定の板幅で連なる縦枠片と、
前記天板の縦方向両側の各辺からその板面内向きに一定の板幅で連なる横枠片と、
前記縦枠片および前記横枠片からなる枠体に連結される中蓋片とからなり、
前記縦枠片と前記横枠片の両端には、前記天板の板面角部を分断する鋭角端面が形成されて、前記展開紙の組立時には、前記縦枠片と前記横枠片とを同一平面上に保って互いの鋭角端面同士を連結することにより前記枠体を組むように構成した。
【0010】
このような構成によれば、段ボール棺を構成する展開紙が、天板の縦枠片および側板を含むパーツと、天板の横枠片および妻板を含むパーツと、中蓋片を含むパーツとに分割される。このため、展開紙を作製する場合には、これらの各パーツ毎に段ボール板を切削加工することができ、その加工時の取り扱いを容易にすることができる。
【0011】
また、展開紙の組立時には、縦枠片と横枠片を含む各パーツを同一平面上に置いて、これらの鋭角端面同士を連結して枠体を組み、この枠体の内側に中蓋片を連結すれば、各パーツを簡単に合体させることができる。このため、従来の展開紙と同様に、展開紙の各板を折り曲げて簡単に箱状の段ボール棺を組み立てることができる。
【0012】
さらに、本発明の構成では、展開紙の天板の四辺に側板および妻板を縦V溝および横V溝で折り曲げて連結するため、各板の端面を簡単かつ正確に位置合わせすることができる。この結果、天板各辺の連結角部の寸法精度および強度を良好に保つことができる。
【0013】
すなわち、本発明は、折り曲げ加工に適した段ボール材の特性を生かしつつ、展開紙の天板を連結容易な小パーツに分割することで展開紙の加工時の取り扱いを極めて簡単に行えるようにしたものである。この結果、段ボール棺を作製する場合に、専用の大型機械を導入しなくとも、小型の切削加工機で手軽にかつ正確にその展開紙を作製することが可能になる。
【0014】
[第2発明]
第2発明による段ボール棺の天板構造は、第1発明の構成を備えるものであって、前記横枠片および前記縦枠片からなる枠体の板幅が一定幅になるように設定される構成とした。
【0015】
このような構成によれば、展開紙のパーツのうち、縦枠片および側板を含むパーツと、横枠片および妻板を含む枠片パーツとについてその板幅とV溝の位置が一致する。このため、同一幅の段ボール板を用いて、この段ボール板の長さ方向に一定幅でV溝加工を施すことで、上記パーツを高い寸法精度で簡単に作製することができる。
【0016】
[第3発明]
第3発明による段ボール棺の天板構造は、第2発明の構成を備えるものであって、前記展開紙の組立時における前記側板と前記妻板との連結面が、前記天板の平面方向から観て前記縦枠片と前記横枠片との鋭角端面同士の連結面と同一平面上に一致するように構成した。
【0017】
図17に示すように、側板3Bおよび妻板3Cに面取り部3nを有する従来の展開紙P0では、四隅部分K0の形状が複雑になり、その加工作業が面倒になる。具体的には、天板3Aを囲む縦V溝y1,y1と横V溝x1,x1とを、各V溝の交差部分で外側にはみ出させることなく正確な位置で止めた上で、隣り合う面取り部3n,3n間に鋭角的な切り込みを形成し、さらに、面取り部3n,3nの繋ぎ目にそれぞれ異なる方向の傾斜面を形成することが必要になる。このため、実際の現場では、切削機による加工で段ボール板の四隅部分K0を仕上げるのが困難で、手作業に頼っているのが現状である。
【0018】
第3発明の構成によれば、展開紙のパーツの作製時に、一定の板幅の段ボール板をV溝に沿って折り曲げた状態で、この折曲片の天板部分を上に向け、天板の板面角部を分断する角度を保って垂直に切断すれば、この切断面が展開紙における四隅部分の端面になる。このため、面取り部3nを有する展開紙P0の四隅部分における各板の端面を極めて簡単に仕上げることができる。
【0019】
[第4発明]
第4発明による段ボール棺の天板構造は、第1〜3発明のいずれか一の構成を備えるものであって、前記縦枠片および前記横枠片からなる前記枠体の上面に、前記中蓋片の下面が連結される構成とした。
【0020】
第1発明の構成において、縦枠片および横枠片からなる枠体の内側端面に中蓋片を連結する場合、その連結方向が天板の板面に平行になるため、天板の上下方向の負荷に対して中蓋片の連結強度を十分に確保しにくい。
第4発明の構成によれば、枠体(縦枠片と横枠片)の上面に中蓋片の下面が連結されるため、枠体の内側端面に中蓋片を連結する場合に比べ、その連結強度が大幅に増す。このため、中蓋片を好みの形状に変更して、天板に立体的な複雑形状を採用することも可能になる。
【0021】
[第1〜4発明]
第1〜4発明は、天板、側板および妻板を含む展開紙を箱状に折り曲げて箱体を形成する段ボール棺に適用することができる。棺本体と蓋とを組み合わせる段ボール棺では、通常は、V溝の数が多くなる蓋側に本発明を適用されることが想定されるが、必要に応じて、段ボール棺の棺本体に本発明を適用してもよい。また、段ボール棺の用途(人用、ペット用等)や種類(寝棺、座棺等)は、特に限定されることはない。
【0022】
なお、第1〜4発明は、単独で適用してもよいし、これらの発明を必要に応じて組み合わせて適用することもできる。また、第1〜4発明に本明細書に記載される他の発明を組み合わせてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、段ボール棺の蓋に本発明を適用したものである。
【0024】
[第1実施形態]
第1実施形態の段ボール棺を図1〜図7に示した。
図1および図2に示すように、段ボール棺10は、箱状の棺本体12と蓋13とからなる。棺本体12および蓋13は、厚手の強化段ボール材からなるもので、蓋13の上端に、矩形の覗き窓Sを有する蓋13が開放可能に載置される。覗き窓Sには、図2の二点鎖線に示す窓蓋15が嵌められ、この窓蓋15を開放することで棺の内部が覗けるようになっている。
【0025】
段ボール棺10の寸法としては、例えば長さが170〜200cm程度、幅が50〜70cm程度、棺本体12と蓋13を含めた高さが40〜50cm程度に形成される。
図1の状態では、段ボール棺10の紙面がむき出しになっているが、仕上げの段階で棺本体12および蓋13の表面に布張りなどの装飾材が施され、これらの紙面が装飾材で覆われる。
【0026】
段ボール棺10を作製するための段ボール板には、三層強化段ボール材(例えばトライウォール社製)が使用される。この種の段ボール板は、図2のR部分拡大図に示すように、2枚の厚板(ライナー)Rf,Rbとの間に、3層の波板r1〜r3が仕切り板r4およびr5を介して積層されてなり、優れた耐圧性・耐水性をもつ。段ボール板に折り曲げ用のV溝またはW溝を形成する際には、これらの層のうち厚板Rf,Rbのいずれか一枚を残して他の層を切削する。段ボール板を折り曲げる際には、残した片方の厚板のみを折り曲げて、傾斜する各板の切削面(端面)を一致させて接着する。
【0027】
蓋13は、天板13Aと、側板13B,13Bと、妻板13C,13Cを有する。側板13B,13Bおよび妻板13C,13Cの板面上部には面取り部13nが形成され、板面下部(開口端部)には折返し部13m(図3および図7参照)が形成されている。
【0028】
蓋13の展開紙P1を図3に示した。
展開紙P1は、矩形の天板13Aの横方向両側に縦V溝y1を隔てて側板13B,13Bが設けられ、天板13Aの縦方向両側に横V溝x1を隔てて妻板13C,13Cが設けられる。
側板13B,13Bおよび妻板13C,13Cの板上であって面取り部13nを区切る境界には、縦V溝y2と横V溝x2とがそれぞれ一定の板幅で形成されている。
【0029】
縦V溝y1,x1および横V溝y2,x2は、展開紙P1の板面にほぼ45゜角の断面V字状に切削されて各板の境界線上に形成される。これにより、展開紙P1の各板は45゜角で折れ曲がって蓋13を形成することになる。
【0030】
側板13B,13Bと妻板13C,13Cとの開口端部には、一定の板幅で折返し部13mが設けられている。この折返し部13mは、展開紙P1の縦方向または横方向の端部の紙片を、W溝(90゜角の断面V字状のV溝を並設してなる溝:図5の符号x3参照)により一定幅で折り返して形成されるもので、蓋13の箱形状を安定させてその強度を高める役割を果たす。
【0031】
図4に示すように、天板13Aは、縦枠片13Ay,13Ayと、横枠片13Ax,13Axと、中蓋片13Azとに分割して形成される。
縦枠片13Ay,13Ayは、天板13Aの横方向両側の各辺からその板面の内向きに一定の板幅で連なり、横枠片13Ax,13Axは、天板13Aの縦方向両側の各辺からその板面の内向きに縦枠片13Ayと同じ板幅で連なっている。
【0032】
縦枠片13Ay,13Ayと横枠片13Ax,13Axの両端には、天板13Aの板面角部、すなわち天板13Aを平面方向から観て直角となる部分を45゜に分断する鋭角端面fが形成されている。縦枠片13Ay,13Ayと横枠片13Ax,13Axの鋭角端面fを互いに一致させて連結することで、天板13Aの四辺を含む矩形の枠体13Ay,13Ay,13Ax,13Axが形成される。
【0033】
中蓋片13Azは、図3に示すように、枠体13Ay,13Ay,13Ax,13Axの内側に収まる寸法で矩形に形成される。中蓋片13Azの横寸法は、枠内側の横寸法と同一に設定され、中蓋片13Azの縦寸法は、枠内側の縦寸法から蓋13の覗き窓Sの縦幅を除いた長さに設定される。
【0034】
このように天板13Aが各板片に分割されることにより、展開紙P1が側板13Bおよび縦枠片13Ayを含む2個のパーツ、妻板13Cおよび横枠片13Axを含む2個のパーツ、および中蓋片13Azを形成するパーツの合計5個のパーツに分離されることになる。
【0035】
展開紙P1を作製する場合、展開紙P1の各パーツを別個に作製し、これらを合体させる。以下、その作製方法を説明する。
【0036】
側板13Bおよび縦枠片13Ayを含む2個のパーツ、および妻板13Cおよび横枠片13Axを含む2個のパーツについては、一定幅の共通の段ボール板を用いて作製することができる。
【0037】
妻板13Cおよび横枠片13Axを含むパーツを作製する場合は、図5に示すように、まず、妻板13Cと横枠片13の縦寸法を含む一定の板幅の段ボール板Q1を準備し、この段ボール板Q1の長さ方向に所定の板幅を保って横V溝x1,x2とW溝x3を形成する。
なお、横V溝x1,x2およびW溝x3は、切削機に専用の回転刃をセットし、段ボール板Q1の板面上に回転刃を直線上に移動させて切削することにより形成することができる。この場合、溝間隔に合わせて必要な数の回転刃をセットして、平行な溝を複数同時に切削すると、1回の切削工程で各溝x1,x2,x3を短時間で精度よく仕上げることができる。
【0038】
次いで、段ボール板Q1を横V溝x1,x2とW溝x3に沿って折り曲げて、図6に示す折曲片を形成する。この折曲片の断面は、図6の端面図に示すように、妻板13Cおよび横枠片13Axとを各溝に沿って折り曲げた断面と同一の形状をもつ。
この折曲片の横枠片13Axに相当する部分を上に向けて、その長さ方向に対し45゜の角度を保って垂直平面f1,f1で折曲片を切断する。このとき、垂直平面f1,f1の間隔を、横枠片13Axの横寸法に一致させることで、妻板13Cおよび横枠片13Axを含むパーツが切り出される。そして、このパーツの折り曲げ部分を元に戻して拡げると、図4に示す展開形状になる。
【0039】
側板13Bおよび縦枠片13Ayを含むパーツを作製する場合についても、前述した段ボール板Q1を用いる方法と同様な手順によることができる。この場合、段ボール板Q1から作製した折曲片を垂直平面f1,f1で切断する際に、切断面の間隔を縦枠片13Ayの縦寸法に一致させることで、側板13Bおよび縦枠片13Ayを含むパーツを切り出すことができる。そして、このパーツの折り曲げ部分を元に戻して拡げると、図4に示す展開形状になる。
【0040】
このように展開紙のパーツのうち、縦枠片13Ayおよび側板13Bを含むパーツ、並びに横枠片13Axおよび妻板13Cを含むパーツについては、その板幅とV溝の位置が一致するため、同一幅の段ボール板Q1を用いて、この段ボール板Q1の長さ方向に一定幅でV溝加工を施すことで、上記パーツを高い寸法精度で簡単に作製することができる。
【0041】
また、展開紙のパーツの作製時に、一定幅の段ボール板Q1を各V溝またはW溝に沿って折り曲げた状態で、この折曲片の天板部分を上に向け、天板13Aの板面角部を均等に分断する45゜角の垂直平面f1で切断すれば、この切断面がそのまま展開紙P1における四隅部分K1の端面になる。このため、面取り部13nを有する展開紙P1の四隅部分K1における各板の端面を極めて簡単に仕上げることができる。
【0042】
展開紙P1を構成するパーツのうち、中蓋片13Azについては、適当な段ボール板を準備して、中蓋片13Azの縦寸法および横寸法に合わせてカッター等で矩形に切断する。中蓋片13Azの四辺をその板面に対して垂直に切断することで、これらの端面が後述の天板13Aの枠体の内側端面に隙間なく連結されることになる。
【0043】
展開紙P1の各パーツを合体させる方法としては、例えば水平な台の上に、各パーツを拡げた状態で、V溝側の面を上にして置き、縦枠片13Ay,13Ayと横枠片13Ax,13Axの鋭角端面f,fを合わせて接着し、矩形の枠体13Ay,13Ay,13Ax,13Axを組む。
次いで、この枠体13Ay,13Ay,13Ax,13Axの内側に中蓋片13Azを嵌め、覗き窓Sを確保する位置で枠体の端面に中蓋片13Azの端面を接着して固定する。これにより、図3に示すように、従来の展開紙P0と同様な形状の展開紙P1が完成する。
【0044】
展開紙P1の組み立て時には、従来の展開紙P0と同様に、縦V溝y1、y2および横V溝x1、x2に沿って側板13Bと妻板13Cを折り曲げて各板の端面同士を接着すると、図1に示す箱状の蓋3が完成する。
【0045】
なお、蓋13の作製工程については、上記の手順に限定されることない。例えば図7に示すように、展開紙P1の中蓋片13Azを除く各パーツを予め縦V溝y1,y2および横V溝x1,x2に沿って折り曲げておき、これらのパーツを中蓋片13Azの四辺端面に連結するようにしてもよい。この場合、各パーツを天地逆さにして水平な台上において作業を行うと、天板13Aの板面に合わせて各パーツを正確に連結することができる。
【0046】
このように本実施形態によれば、蓋13の展開紙P1が、縦枠片13Ayおよび側板13Bを含むパーツと、横枠片13Axおよび妻板13Cを含むパーツと、中蓋片13Azを含むパーツとに分割されるため、展開紙P1を作製するの各パーツ毎の取り扱いが容易で、加工作業を簡単に行える。これにより、専用の大型機を使用しなくとも、小型の切削加工機を用いて手軽に蓋13を作製することができる。
【0047】
また、展開紙P1の組み立て時には、同一平面上で縦枠片13Ayと横枠片13Axの鋭角端面f,fを合わせて13Ay,13Ay,13Ax,13Axを組むことで、各パーツを簡単に合体させることができる。このため、展開紙P1の組立作業が面倒になることもない。
【0048】
さらに、展開紙P1によれば、天板13Aの各辺で縦V溝y1,y2と横V溝x1,x2に沿って側板13Bと妻板13Cが正確な寸法で折れ曲がるため、各板の端面を正確な位置で精度よく連結することができる。このため、天板13Aの各辺の連結角部における寸法精度を出しやすく、また、連結角部の強度を十分に確保して蓋13の品質を高めることができる。
【0049】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態を図8〜図12に示した。
第2実施形態は、平面形状が八角形である段ボール棺に本発明を適用したものである。前述した第1実施形態では、平面形状が四角形である段ボール棺に本発明を適用したが、以下に説明するように、平面形状が八角形である段ボール棺にも本発明を適用することができる。このタイプの棺は、段ボール棺の平面方向から見た四隅部がカットされた形状を有しており、棺形状を構成する面が増えて高級感のある仕上がりとなる。
なお、第2実施形態およびその他の実施形態の図面においては、前記第1実施形態の構成部分と実質的な同一の構成部分には同一の符号を付す。
【0050】
第2実施形態の段ボール棺20は、平面方向から見た形状が八角形の棺本体12と蓋13とを有している(図8参照)。棺本体12および蓋13は、厚手の強化段ボール材からなるもので、蓋13の上端に、矩形の覗き窓Sを有する蓋13が開放可能に載置される。覗き窓Sには、第1実施形態と同様に窓蓋が嵌められる。
【0051】
蓋13は、天板13Aと、側板13B,13Bと、妻板13C,13Cを有する。側板13B,13Bおよび妻板13C,13Cの板面上部には面取り部13nが形成され、板面下部(開口端部)には折返し部13m(図9参照)が形成されている。天板13Aの四隅部分には、側板13Bと妻板13Cとを平面で繋ぐ角部材13Dが取り付けられている。
【0052】
蓋13のうち角部材13Dを除く部分の展開紙P2を図9に示した。
展開紙P1は、矩形の天板13Aの横方向両側に縦V溝y1を隔てて側板13B,13Bが設けられ、天板13Aの縦方向両側に横V溝x1を隔てて妻板13C,13Cが設けられる。展開紙P1の四隅部分K2は、縦V溝y1と横V溝x1の中心線を延長する方向に、平面方向から観て90゜の角度をなす垂直の端面を有している。
【0053】
側板13B,13Bおよび妻板13C,13Cの板上であって面取り部13nを区切る境界には、縦V溝y2と横V溝x2とがそれぞれ一定の板幅で形成されている。
縦V溝y1,x1および横V溝y2,x2は、展開紙P1の板面にほぼ45゜角の断面V字状に切削されて各板の境界線上に形成されている。
【0054】
図10に示すように、天板13Aは、縦枠片13Ay,13Ayと、横枠片13Ax,13Axと、中蓋片13Azとに分割して形成される。
縦枠片13Ay,13Ayは、天板13Aの横方向両側の各辺からその板面の内向きに一定の板幅で連なり、横枠片13Ax,13Axは、天板13Aの縦方向両側の各辺からその板面の内向きに縦枠片13Ayと同じ板幅で連なる。
【0055】
縦枠片13Ay,13Ayと横枠片13Ax,13Axの両端には、天板13Aの板面角部、すなわち天板13Aを平面方向から観て直角となる部分を45゜に分断する鋭角端面fが形成されている。縦枠片13Ay,13Ayと横枠片13Ax,13Axの鋭角端面fを互いに一致させて連結することで、天板13Aの四辺を含む矩形の枠体13Ay,13Ay,13Ax,13Axとなる。
【0056】
中蓋片13Azは、図3に示すように、枠体13Ay,13Ay,13Ax,13Axの内側に収まる寸法で矩形に形成される。中蓋片13Azの横寸法は、枠内側の横寸法と同一に設定され、中蓋片13Azの縦寸法は、枠内側の縦寸法から蓋13の覗き窓Sの縦幅を除いた長さに設定される。
【0057】
このように天板13Aが各板片に分割されることにより、展開紙P2が側板13Bおよび縦枠片13Ayを含む2個のパーツ、妻板13Cおよび横枠片13Axを含む2個のパーツ、および中蓋片13Azを含むパーツの合計5個のパーツに分離されることになる。
【0058】
展開紙P2を作製する場合、第1実施形態と同様に、展開紙P2の各パーツを別個に作製し、これらを合体させる。
側板13Bおよび縦枠片13Ayを含む2個のパーツ、および妻板13Cおよび横枠片13Axを含む2個のパーツについては、一定幅の共通の段ボール板を用いて作製することができる。
【0059】
妻板13Cおよび横枠片13Axを含むパーツを作製する場合、図11に示すように、まず、妻板13Cと横枠片13の縦寸法を含む一定の板幅の段ボール板Q2を準備し、この段ボール板Q2の長さ方向に所定の板幅を保って横V溝x1,x2とW溝x3を形成する。
【0060】
次いで、段ボール板Q2を横枠片13Axの長さ寸法(横寸法)に合わせて垂直平面f2で切断し、この段ボール板の横枠片13Axに相当する部分の角部を、その長さ方向に対し45゜の角度を保って垂直平面f1,f1で切断する。すると、図10に示す展開形状の妻板13Cおよび横枠片13Axを含むパーツが形成されることになる。
【0061】
側板13Bおよび縦枠片13Ayを含むパーツを作製する場合も、前述した段ボール板Q2を用いる方法と同様な手順によることができる。この場合、段ボール板Q2を垂直平面f2で切断する長さを、縦枠片13Ayの長さ寸法(縦寸法)に一致させることで、側板13Bおよび縦枠片13Ayを含むパーツが形成される。
【0062】
このように展開紙P2のパーツのうち、縦枠片13Ayおよび側板13Bを含むパーツと、横枠片13Axおよび妻板13Cを含むパーツについては、その板幅とV溝の位置が一致するため、同一幅の段ボール板Q2を用いて、この段ボール板Q2の長さ方向に一定幅でV溝加工を施すことで、上記パーツを高い寸法精度で簡単に作製することができる。
【0063】
展開紙P2を構成するパーツのうち、中蓋片13Azについては、第1実施形態と同様に作製することができる。すなわち、適当な段ボール板を準備して、中蓋片13Azの縦寸法および横寸法に合わせてカッター等で矩形に切断する。
【0064】
展開紙P2の各パーツの合体は、第1実施形態と同様に、水平な台の上に、各パーツを溝加工面を上にして置き、天板13Aの縦枠片13Ay,13Ayと横枠片13Ax,13Axの鋭角端面f同士を接着して矩形の枠体を形成する。
次いで、この枠体の内側に中蓋片13Azを嵌め、覗き窓Sを確保する位置で枠体の端面に中蓋片13Azの端面を接着して固定すると、図9に示す展開紙P2となる。なお、図9においては、折返し部13mが折り返されているが、折返し部13mを折り返す順序は、展開紙P2の各パーツを合体させる前後のいずれでも構わない。
【0065】
蓋13の角部材13Dについては、図11に示す段ボール板Q2のうち縦枠片13Ayに相当する部分を、横V溝x1の中心線で切り離した段ボール板を用いて作製する。図12に示すように、残りの段ボール板Q3を、横V溝x2およびW溝x3に沿って折り曲げ、この折曲片を平面方向から観て、その長さ方向に対し45゜の角度を保って垂直平面f4,f4で切断する。これにより、展開紙P2の四隅部分K2の寸法に一致する角部材13Dが得られる。
【0066】
そして、展開紙P2の組み立て時に、側板13Bと妻板13Cを縦V溝y1、y2および横V溝x1、x2に沿って折り曲げ、展開紙P2の四隅部分K2の隙間の端面に、角部材13Dの端面を接着すると、図8に示す箱状の蓋13が完成する。
【0067】
このように第2実施形態においても、蓋13の展開紙P2が、天板13Aの縦枠片13Ayおよび側板13Bを含むパーツと、天板13Aの横枠片13Axおよび妻板13Cを含むパーツと、中蓋片13Azを含むパーツとに分割されるため、展開紙P2を作製するの各パーツ毎の取り扱いが容易で、加工作業を簡単に行える。これにより、専用の大型機を使用しなくとも、小型の切削加工機を用いて手軽に段ボール棺20を作製することができる。
【0068】
また、展開紙P2の組み立て時には、同一平面上で縦枠片13Ayと横枠片13Axの鋭角端面f,fを合わせて枠体13Ay,13Ay,13Ax,13Axを組むことで、各パーツを簡単に合体させることができる。このため、展開紙P2の組立作業が面倒になることもない。
【0069】
さらに、展開紙P2によれば、天板13Aの各辺で縦V溝y1,y2と横V溝x1,x2に沿って側板13Bと妻板13Cが正確な寸法で折れ曲がるため、各板の端面を正確な位置で精度よく連結することができる。このため、天板13Aの各辺の連結角部における寸法精度を出しやすく、また、連結角部の強度を十分に確保して蓋13の品質を高めることができる。
【0070】
[その他の実施形態]
以上、第1および第2実施形態を説明したが、本発明の実施形態はこれらに限られず、種々の変形・変更を伴ってもよい。
例えば図13(A)の蓋30に示すように、面取り部13nの板幅を拡大することにより、中蓋片13Azのサイズを縮小してもよい。中蓋片13Azの板幅を短くすることで、展開紙の全てのパーツを比較的幅の狭い段ボール板から作製することができる。
図13(B)の蓋40に示すように、面取り部13nを省略してもよい。面取り部13nを省略した構成によれば、折曲用のV溝の数を最小限に抑えることができ、展開紙の作製がさらに簡単になる。
図13(C)の蓋50に示すように、面取り部13nを、角度の異なる複数の斜面で形成してもよい。このように面取り部13nの斜面を増やすことで、蓋50の立体感が向上し、段ボール棺の高級感をさらに高めることができる。
【0071】
また、前記第1および第2実施形態では、枠体13Ay,13Ay,13Ax,13Axの内側端面に中蓋片13Azを連結する構成であるが、図14(A)の蓋60、図14(B)の蓋70、および図14(C)の蓋80に示すように、この枠体の上面に中蓋片13Azの下面を接着して連結してもよい。
このような構成では、中蓋片13Azが枠体の頂面で支持されるため、天板部分の構成がより頑丈になる。また、枠体の内側寸法どおりに中蓋片13Azを作製する必要がなく、中蓋片13Azの作製を容易にすることができる。また、中蓋片13Azを好みの形状に変更して、立体的な複雑形状を天板13Aに採用することも可能になる。
【0072】
さらに、図15に示すように、段ボール棺の棺本体90に本発明を適用することもできる。図15の例では、棺本体90の底板部分に、枠体13Ay,13Ay(13Ax,13Ax:図示省略)と中蓋片13Azからなる構造(天板構造)が採用されている。この場合、枠体の上面に中蓋片13Azの下面を連結することで、棺本体90の耐荷重性能を十分に確保することができる。
【0073】
その他、第1および第2実施形態では、側板および妻板に折返し部を設けているが、このような折返し部は必ずしも設ける必要はなく、必要に応じて省略してもよい。
また、展開紙を作製するための段ボール材は、三層強化段ボールに限られず、その他の多層段ボール材、ハニカム構造の段ボール材等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態の段ボール棺を示す斜視図である。
【図2】同段ボール棺を示すもので図1のII−II線断面図およびR部分の拡大断面図である。
【図3】同段ボール棺の蓋の展開紙を示す平面図およびその破線方向の断面図である。
【図4】同展開紙をパーツ毎に分割した状態を示す平面図である。
【図5】同展開紙を作製するための段ボール板を示す平面図およびその破線方向の端面図である。
【図6】図5の段ボール板を折り曲げた状態を示す平面図およびその破線方向の端面図である。
【図7】同段ボール棺の蓋を示す分解斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態の段ボール棺を示す斜視図である。
【図9】同段ボール棺の蓋の展開紙を示す平面図およびその破線方向の断面図である。
【図10】同展開紙をパーツ毎に分割した状態を示す平面図である。
【図11】同展開紙を作製するための段ボール板を示す平面図およびその破線方向の端面図である。
【図12】同展開紙の四隅部分における角部材の作製方法を説明するもので、段ボール板を折り曲げた状態を示す平面図およびその破線方向の端面図である。
【図13】本発明の他の実施形態を説明するもので、面取り部分の各種変形例を示す断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態を説明するもので、天板部分の各種変形例を示す断面図である。
【図15】本発明の他の実施形態を説明するもので、本発明による天板構造を適用した棺本体を示す断面図である。
【図16】従来の段ボール棺を示す斜視図である。
【図17】同段ボール棺の蓋の展開紙を示す平面図および破線方向の断面図である。
【符号の説明】
【0075】
10 段ボール棺(第1実施形態)
12 棺本体
13 蓋
13A 天板
13Ay 縦枠片
13Ax 横枠片
13Az 中蓋片
13n 面取り部
13m 折返し部
13B 側板
13C 妻板
13D 角部材
20 段ボール棺(第2実施形態)
S 覗き窓
f 鋭角端面
f1〜f4 垂直平面
P1,P2 展開紙
Q1〜Q3 段ボール板
x1,x2 横V溝
x3 W溝
y1,y2 縦V溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板、側板および妻板を含む展開紙を、各板の境界に形成されるV溝に沿って折り曲げることにより箱状に組み立てるようにした段ボール棺において、
前記展開紙は、天板と、この天板の横方向両側に縦V溝を隔てて設けられる側板と、前記天板の縦方向両側に横V溝を隔てて設けられる妻板とを備え、
前記天板は、
前記天板の横方向両側の各辺からその板面内向きに一定の板幅で連なる縦枠片と、
前記天板の縦方向両側の各辺からその板面内向きに一定の板幅で連なる横枠片と、
前記縦枠片および前記横枠片からなる枠体に連結される中蓋片とからなり、
前記縦枠片と前記横枠片の両端には、前記天板の板面角部を分断する鋭角端面が形成されて、前記展開紙の組立時には、前記縦枠片と前記横枠片とを同一平面上に保って互いの鋭角端面同士を連結することにより前記枠体を組むようにしたことを特徴とする段ボール棺。
【請求項2】
請求項1記載の段ボール棺の天板構造であって、前記横枠片および前記縦枠片からなる枠体の板幅が一定幅になるように設定される、段ボール棺の天板構造。
【請求項3】
請求項2記載の段ボール棺の天板構造であって、前記展開紙の組立時における前記側板と前記妻板との連結面が、前記天板の平面方向から観て前記縦枠片と前記横枠片との鋭角端面同士の連結面と同一平面上に一致する、段ボール棺の天板構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載の段ボール棺の天板構造であって、前記縦枠片および前記横枠片からなる前記枠体の上面に、前記中蓋片の下面が連結される、段ボール棺の天板構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の天板構造を備えた段ボール棺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−161605(P2008−161605A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356945(P2006−356945)
【出願日】平成18年12月30日(2006.12.30)
【出願人】(594101994)有限会社平和カスケット (12)