説明

段ボール構造体

【課題】組立が容易で、形状を簡単に固定することができ、構造的に強度を向上させることができる段ボール構造体を提供する。
【解決手段】一枚の段ボールから外形を切り出し、折曲げ部が施された展開原紙を折上げて組立てる段ボール構造体であって、
製品収納部の底を構成する底面部と、
前記底面部の周囲に、前記折曲げ部を介して延設された上下側壁及び左右側壁と、
前記上下側壁及び左右側壁に、前記折曲げ部を介して延設された該上下側壁と左右側壁に二縁が接続する連絡壁と、
前記左右側壁の外周縁から延設された延長天板と、
前記延長天板の上下縁から延設された係止凸部を有する差込み部と、
を備え、
前記上下側壁と前記連絡壁の境界には嵌合孔が設けられ、前記折曲げ部を折上げて組立てる際に、前記上下側壁と前記連絡壁の間に前記差込み部が挿入され、前記嵌合孔に前記係止凸部が嵌合係止される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール構造体に関し、具体的には一枚の段ボールから外形を切り出し、スジ押し、半切り、リード罫などの折曲げ補助加工を施した展開原紙に、折上操作を加えて組み立てる折上げ組立式段ボール構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラや家庭用電化製品の梱包には発泡スチロールの成形品やポリプロピレンなどのシートを素材とする真空成形品が多く用いられてきた。
これらは、緩衝性能が高くまた成形品なので形状は一定で組立性も良かった。
しかし、最近はこれらの石油を原料とする材料は資源保護や廃棄処理上の問題、また地球温暖化対策の観点からも、できるだけ再生可能な材料への転換が図られている。
段ボールは再生材であり、従来から箱や内部の仕切りとして用いられてきたが、上述の観点から従来の成形品の代わりとしても使用されるようになって来た。
【0003】
従来において、段ボールで作られた箱として、例えば、特許文献1では四壁折込型段ボール箱が提案されている。
これは、底壁に対し、四壁を上端に水平肩面を形成して内側に折込んで組み立てるように構成されている。
さらに、対角の山折線を設け、X方向の壁と、Y方向の壁が連動して立ち上がるよう工夫されている。
また、最後に舌片を水平肩面の差込穴に差込むことにより組み立てられる。
また、図9に示すような段ボール構造体も知られている。
これは一枚の段ボールから外形を切り出した展開原紙に、折上操作を加えて組み立てた段ボール構造体で、別の箱の中にセットされて、中央の凹部が製品収納部となり、上下に付属品などを入れるスペースを区切るものである。
【特許文献1】特開平11−189234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のものは、つぎのような課題を有している。
すなわち、上記特許文献1のものにおいては、段ボール箱では組立後に開いてしまうのを防ぐための構造が複雑で、また組立にも時間がかかる。
また、上記したように最後に舌片を水平肩面の差込穴に差込むことにより組み立てられるようにされているが、このような差し込み穴への差し込みだけでの係止では、固定が不十分である。
また、上記の図9に示す従来例の段ボール構造体では、折り上げ操作を行い組立てた後にフリーにすると、折り曲げ部分の弾性によって再度、展開状態に戻る方向に開いてしまうこととなる。
そのため、組立てた後に箱に入れる際の操作性が悪いだけでなく、構造的にも強度が劣ることとなる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、組立が容易で、形状を簡単に固定することができ、構造的に強度を向上させることができる段ボール構造体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のように構成した段ボール構造体を提供する。
本発明の段ボール構造体は、一枚の段ボールから外形を切り出し、折曲げ部が施された展開原紙を折上げて組立てる段ボール構造体であって、
製品収納部の底を構成する底面部と、
前記底面部の周囲に、前記折曲げ部を介して延設された上下側壁及び左右側壁と、
前記上下側壁及び左右側壁に、前記折曲げ部を介して延設された該上下側壁と左右側壁に二縁が接続する連絡壁と、
前記左右側壁の外周縁から延設された延長天板と、
前記延長天板の上下縁から延設された係止凸部を有する差込み部と、
を備え、
前記上下側壁と前記連絡壁の境界には嵌合孔が設けられ、前記折曲げ部を折上げて組立てる際に、前記上下側壁と前記連絡壁の間に前記差込み部が挿入され、前記嵌合孔に前記係止凸部が嵌合係止されることを特徴とする。
また、本発明の段ボール構造体は、前記左右側壁と連絡壁の境界の端部には、切込みが設けられていることを特徴とする。
また、本発明の段ボール構造体は、前記切込みが設けられている一方の側の境界の端部における該切込みの端部と、前記切込みが設けられている他方の側の境界の端部における該切込みの端部との間には、
これらの切込みの端部を結ぶ折曲げ部が施されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、組立が容易で、形状を簡単に固定することができ、構造的に強度を向上させることができる段ボール構造体を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態における一枚の段ボールから外形を切り出し、折曲げ部が施された展開原紙を折上げて組立てる段ボール構造体について説明する。

図1に、本実施の形態における段ボール構造体100の展開原紙の図を示す。
図2は、段ボール構造体の展開原紙を折り上げて、段ボール構造体を組立て完了した状態と、これを製品の個装箱200にセットした状態を示した図である。
図2に示す段ボール構造体100には、中央に製品を収納する主収納空間101と付属品などを収納する副収納空間102が形成され、個装箱200にセットされた後、それぞれの空間に製品と付属品などが収納されて蓋201が閉じられる。
図1において、一点鎖線は谷折り線、二点鎖線は山折り線を示している。
1は製品収納時に製品収納部の底になる底面部であり、四隅には孔1aがそれぞれあけてあり、折り曲げの際に紙が集中して曲げ難くならないように工夫してある。
2は底面部の上下に谷折り線による谷1を介して延設された上下側壁である。
3は底面部の左右に谷折り線による谷2を介して延設された左右側壁である。
4はこれらの上下側壁2と左右側壁3に二縁が接続する連絡壁であり、上下側壁2とは谷折り線による谷3を介して接続され、左右側壁3とは山折り線による山2を介して接続されている。
そして、これらの上下側壁2と連絡壁4が接続されている境界に嵌合孔2aが設けられている。
5は左右側壁3における上記した底面部1、連絡壁4のいずれとも接続されていない外周縁から山折り線による山3を介して延設された延長天板である。
6はこの延長天板5の上下縁から延設された差込み部であり、差込み部6には係止凸部が形成されている。
7は上記した上下側壁の上下に山折り線による山1を介して延設された副仕切り壁である。
8は、副仕切り壁の左右に谷折り線による谷4を介して延設された支持壁である。
【0009】
つぎに、図1の展開原紙から折り上げ操作を加え、図2の段ボール構造体を完成させるまでの手順と形態を、図3から図8を用いて説明する。
先ず、図1の上下側壁2と副仕切り壁7の境界の山折り線による山1を180度折り曲げることにより、副仕切り壁7を折り曲げて図3の状態とする。
次に、山折り線による山2を90度折り曲げながら谷折り線による谷1、谷2を90度、谷3を180度折り曲げて、上下側壁2と左右側壁3を立ち上げて図4に示す状態とする。
この状態で、図2に示すように、中央に主収納空間101が形成される。
また、連絡壁4は180度畳まれて、上下側壁2と重なった状態となる。
上下側壁2の外側には最初に折り曲げた副仕切り壁7が出ることになる。
図4から谷折り線による谷4と、山折り線による山3を90度折ると図5の状態となり、図2に示すように、副収納空間102が形成される。
【0010】
次に、山折り線による山4を90度折り曲げるが、この際差し込み部6を上下側壁2と連絡壁4の間に差し込み、図6の状態とする。
このような状態とした後、係止凸部6aを嵌合孔2a,4aに嵌合させることにより、図2の形とすることによって延長天板5と差込部6が段ボールの開きを押さえた状態で完成する。
【0011】
係止凸部6aは嵌合孔2a,4aに入った状態では係止された状態となり、通常の状態では抜けることはない。
この組み立ての際、このような係止された状態にするために、周囲の段ボールを若干変形させながら係止凸部6aを嵌合孔に入れる。
左右側壁3と連絡壁4の境界の端部には切込み4bが入れてあり、これにより差込部6が延長天板5と共に内側に変形し易くされている。
また、前記切込みが設けられている一方の側の境界の端部における該切込みの端部と、前記切込みが設けられている他方の側の境界の端部における該切込みの端部との間には、これらの切込みの端部を結ぶ折曲げ部が施されている。
具体的には、両側の切込み4bの端を結んで谷折り線による谷5が加工されており、これによりさらに変形が容易とされている。
【0012】
図7に、係止凸部6aを嵌合孔2aに入れる直前の状態を説明する図を示す。
谷折り線による谷5に沿って、左右側壁3の上部3aが内側(図右側矢印方向)に変形し係止凸部6aが嵌合孔2aに挿入可能な位置に来ている。
この位置から図8に示すように係止凸部6aを嵌合孔2aに入れると、谷折り線での曲げは弾性的に戻り、係止凸部6aは係止方向に付勢されて保持され、通常の状態では抜けることが無い。
また、差込み部6が固定されることで上下側壁2同志の間の間隔が延長天板5の幅寸法で固定されるので、段ボール構造体が展開状態に戻る方向に開くことを防止できる。
【0013】
さらに、図9に示す従来例に比べて延長天板が付加されるので構造的にも強度を向上させることができる。
上述の組立手順はこの順番に完全に沿わなくても、最終的に同一形状に組み上げる手順は他にも考えられる。
本件は、環境への配慮の中で、コスト的に現状有力な再生材として、段ボールとして規定しているが、環境への負荷が低い近年開発が進んでいるバイオマスプラスチックなどからなる、シートを使用する場合にも有効である。
【0014】
以上に説明したように、本実施形態の上記構成によれば、折り上げ操作が簡単で容易に組み立てることができ、組立工数の削減が可能になる。
また、組立作業者の習熟にも時間がかからない。
さらに、フリーの状態で組立完了時の形状が保持されるので、箱に入れる際にも組立作業性が良いと共に、構造的にも強度を向上させることができる。
また、上記したように左右側壁と連絡壁の境界の端部に切込みが設けられた構成とすることによって、側壁の変形が容易になり、係止凸部の嵌合孔への差し込みが容易におこなうことができる。
さらに、これらの両側に設けられた切込み端を結んで谷折り線による折り曲げ加工が施された構成とする。
これによって、この谷折り線に沿って側壁を容易に折り曲げることができるので、切込みと相俟って、係止凸部の嵌合孔への差し込みを、さらに容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態における段ボール構造体の展開原紙の図。
【図2】本発明の実施の形態における段ボール構造体の組立完了状態と個装箱セット図。
【図3】本発明の実施の形態における段ボール構造体の組立手順を説明する図。
【図4】本発明の実施の形態における段ボール構造体の組立手順を説明する図。
【図5】本発明の実施の形態における段ボール構造体の組立手順を説明する図。
【図6】本発明の実施の形態における段ボール構造体の組立手順を説明する図。
【図7】本発明の実施の形態の段ボール構造体における差込み部の係止凸部を嵌合孔に入れる直前の状態を説明する図。
【図8】本発明の実施の形態の段ボール構造体における差込み部の係止凸部を嵌合孔に入れた状態を説明する図。
【図9】従来の段ボール構造体の例を説明する図。
【符号の説明】
【0016】
1:底面部
2:上下側壁
2a:嵌合孔
3:左右側壁
4:連絡壁
4a:嵌合孔
4b:切込み
5:延長天板
6:差込み部
6a:係止凸部
7:副仕切り壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚の段ボールから外形を切り出し、折曲げ部が施された展開原紙を折上げて組立てる段ボール構造体であって、
製品収納部の底を構成する底面部と、
前記底面部の周囲に、前記折曲げ部を介して延設された上下側壁及び左右側壁と、
前記上下側壁及び左右側壁に、前記折曲げ部を介して延設された該上下側壁と左右側壁に二縁が接続する連絡壁と、
前記左右側壁の外周縁から延設された延長天板と、
前記延長天板の上下縁から延設された係止凸部を有する差込み部と、
を備え、
前記上下側壁と前記連絡壁の境界には嵌合孔が設けられ、前記折曲げ部を折上げて組立てる際に、前記上下側壁と前記連絡壁の間に前記差込み部が挿入され、前記嵌合孔に前記係止凸部が嵌合係止されることを特徴とする段ボール構造体。
【請求項2】
前記左右側壁と連絡壁の境界の端部には、切込みが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の段ボール構造体。
【請求項3】
前記切込みが設けられている一方の側の境界の端部における該切込みの端部と、前記切込みが設けられている他方の側の境界の端部における該切込みの端部との間には、
これらの切込みの端部を結ぶ折曲げ部が施されていることを特徴とする請求項2に記載の段ボール構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−100315(P2010−100315A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273837(P2008−273837)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】