説明

段差解消機

【課題】 段差解消機を使用する際、テーブル上に乗り込んだ車椅子の両サイドと後方とをコ字状の手摺りにてガードし、その手摺りを、使用しない場合は邪魔にならないように格納する。
【解決手段】 ピット枠1の内底面にベースフレーム2を固定し、そのベースフレーム2に、真上方向に昇降可能なベーステーブル3を真上方向へ昇降可能に組み付ける。ベーステーブル3には、そのベーステーブル3上を前方へ摺動自在なスライドテーブル6が組み付けられており、スライドテーブル6に、手摺り10を、スライドテーブル6の両側と後側の3辺にわたってコ字状に連続して設ける。前記スライドテーブル6及び手摺り10は、いずれも上縁がピット枠1の開口面と同レベルとなる高さにて下降を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポーチやベランダ、縁側や玄関などの叩き、土間に設置され、車椅子にて家への出入りを始めとした段差部を移動する際に好適利用できる段差解消機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、段差解消機としては、特許文献1や特許文献2に記載のような設置式と、特許文献3に記載のような移動式が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の設置式段差昇降機は四隅を支持するネジ送り機構によって水平昇降移動可能なテーブルで構成され、テーブルに乗り込んだ車椅子を段差の高さまで持ち上げ、上の段に乗り移りを可能としたもので、テーブルの両サイドには手摺りが取り付けられている。
特許文献2に記載の設置式段差解消機も、水平昇降移動可能なテーブルを備え、そのテーブルに乗り込んだ車椅子を持ち上げ可能に構成され、テーブルの両サイドには手摺りが取り付けられている。
そして後者の段差昇降機では、任意の角度に回転可能で、上面に車椅子走行用のレールが敷設されたターンテーブルが採用されている。
【0004】
特許文献3に記載の移動式段差解消機は、手押し台車に昇降可能な保持板を組み付け、保持板にて支持した車椅子をリフトアップさせたまま移動、及び所望高さまで持ち上げ可能としたものである。
前記保持板は車椅子のフレームを保持するフレーム保持板と、車椅子の車輪を保持する車輪保持板とで構成されており、車輪保持板はフレーム保持板に畳まれた状態で収納され、作動時には、前方へ張り出し可能となっている。
尚、特許文献4には、昇降テーブルの左右に設けられたガイトを昇降可能としたテーブルリフターが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−108268号公報
【特許文献2】特許第2927749号公報
【特許文献3】特開2003−116921号公報
【特許文献4】特開平8−337395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、テーブルを下死点まで降ろした状態において、特許文献1に記載のものは、テーブルの両サイドに昇降機構や手摺りが突設したまま残り、特許文献2に記載のものは、テーブルの両サイドに手摺りが突設したままであると共に、テーブルの下に昇降装置を格納する構造のため、テーブルはフロア面から持ち上がった位置より下には下げることができないので、フロアとテーブルとの間に段差が形成される。
設置型では不使用時でも移動できないので邪魔になり、玄関に設置してしまうと、屋内への出入りに支障を来たすばかりか、来訪者との応対もままならない。
又、手摺りは両サイドのみにしか設けられておらず、乗り込み側(後方)は解放されたままであるため使用者に不安を与えるし、手摺りの取り付けは望ましいことではあるものの、不使用時、邪魔にならないよう省略される傾向が強い。
そこで手摺も一緒に格納したいところではあるが、例えば特許文献4に記載のテーブルリフターでは、上方押し上げ機構のストロークがテーブルの昇降高さには到底及ばないので、上方押し上げ機構をテーブルに取り付けて、手摺りをテーブルの上方まで突設させるようにすると、テーブルの下に縦長い上方押し上げ機構が突出してしまう。
尚、特許文献3に記載の移動式階段昇降機は、不使用時には邪魔にならないよう片付けておくことが可能な反面、階段昇降機をセットしたり、昇降操作、或いは片付け等をする介添え人が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、手摺り付きでありながら不使用時には邪魔にならない設置型の段差解消機であって、その構成は、ピットの内底面に固定されるベースフレームと、そのベースフレームに対して真上方向に昇降可能なテーブルと、そのテーブルに対して真上方向へ昇降可能に組み付けられた手摺りとを備え、前記スライドテーブル及び手摺りの下死点を、いずれも上縁がピットの開口面と同レベルとなる高さに設定したことにある。
そして前記手摺りの上昇動作は、べースプレートの上昇動作に先立って実行し、又、テーブルの下降動作は、手摺りの下降動作に先立って実行することが望ましく、更にテーブルは、ベーステーブルに、そのベーステーブル対して前後方向へ摺動可能なスライドテーブルを組み付けたものとすることができる。
更に手摺りは、両側と後側の3辺にわたってコ字状に連続して設けることができる。
【発明の効果】
【0008】
テーブルと手摺りとを下死点まで降ろせば、段差解消機全体がピット内に収容され、フロア上に突起物などは一切表出しない。
そして手摺りの上昇動作をテーブルの上昇動作より先に、又、テーブルがピット内に収容されてから手摺りの下降動作をさせれば、手摺りの機能が100パーセント発揮される。
又、テーブルを、ベーステーブルに、そのベーステーブル対して前後方向へ摺動可能なスライドテーブルを組み付けたものとすれば、スライドテーブルを前方へ摺動させることにより、叩きなどフロアから乗り込ませた車椅子を、階段を乗り越えて床上まで一気にステップアップさせることができ、更に手摺りをコ字状に設けることで、後方もガードされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る段差昇降機の実施例を図面に基づいて説明する。
図1及び図2において、1はピット枠であり、このピット枠1は、玄関の叩きなど、フロアに堀設したピット内に、開口上面をフロアのレベルに合致するよう設置される。
このピット枠1の内底面には、ベースフレーム2が固定され、ベースフレーム2には、ベーステーブル3が、開閉動作するX型リンク4を介し、前記ベースプレーム2に対して真上方向へ昇降移動可能に組み付けられている。
前記X型リンク4は、モータ駆動されるスクリュー式シリンダ5によって開閉動作されるようになっている。
【0010】
前記ベーステーブル3には、そのベーステーブル3に対して前方へ摺動可能なスライドテーブル6が組み付けられており、スライドテーブル6の裏面にはラック7が取り付けられている。
このラック7には、ベーステーブル3に装備したモータ8の軸に取り付けられているピニオン歯9が歯合されていて、前記スライドテーブル6を、前記モータ8の回転力で前方へ摺動させることができ、これらベーステーブル3とスライドテーブル6とによりテーブルが構成されている。
又、前記スライドテーブル6の外縁には、両側と後側の3辺にわたってコ字状に連続した手摺り10が、真上方向へ昇降可能に組み付けられている。
この手摺り10と前記スライドテーブル6との相互間には、X型リンク11の開閉動作によりスライドテーブル6に対して手摺り10を持ち上げ、或いは押し下げる昇降機構12が設けられている。
【0011】
ここで前記昇降機構12について説明すると、手摺り10の上縁とスライドテーブル6の側面とを、図3及び図4に示すように、角パイプ状をしたインナーリンク11aの両側面にプレート状をした一対のアウターリンク11b,11bを沿わせ、X状に交叉した交点を枢着して構成された前記X型リンク11によって左端と右端とをそれぞれ連結し、前記各枢着部においてインナーリンク11aの上下面に切り欠き窓13を設け、アウターリンク11b、11b間にあたる枢着軸14の部分に継ぎ手部材15を回動自在に連結し、且つその継ぎ手部材15に延設された支持軸16を、下側の切り欠き窓13より下方へ突出させてある。
即ち、支持軸16は、継ぎ手部材15を介してインナーリンク11aの領域内において枢着軸14に連結され、前記切り欠き窓13を、継ぎ手部材15がインナーリンク11aの上下プレートに対する逃げとして機能するようになっている。
尚、アウターリンク11b,11bは、連結板11c、11cで上縁同士、或いは下縁同士を連結し、断面をコ字状に形成することにより補強が図られている。
【0012】
ベーステーブル3上にはモータ17が横置き配置されると共に、そのモータ17と平行に駆動回転軸18が設けられており、前記モータ17と駆動回転軸18とは、歯車伝達機構19により、回転力を伝達可能に連結されている。
前記駆動回転軸18の両端には、前記X型リンク11におけるインナーリンク11aの真下に当たる部位に駆動歯車20、20がそれぞれ取り付けられていると共に、その駆動歯車20に前記支持軸16の側面に設けられたラック21を常時歯合させるべく、駆動軸を抱き込むように保持するブラケット22が取り付けられている。
ブラケット22は、支持軸16の軸を中心に回動自在に取り付けられ、L状の折り曲げ部分で、支持軸16におけるラック21が設けられている側と反対側を、その支持軸16と前記折り曲げ部分とが互いに摺動可能となるように保持する構造となっている。
【0013】
昇降機構12がこのように形成されることで、X型リンク11と支持軸16、及び駆動歯車20などは同一垂直面上に配置されるので、昇降機構12を手摺り10の幅内に納まるよう組み付けることができ、左右の昇降機構12は、駆動回転軸18により同期が図られ、支持軸16は、駆動歯車20の回転によって軸方向へ移動し、X型リンク11の開閉動作に追従して駆動回転軸18を支点に角度を変える。
又、X型リンク11が折り畳まれると、手摺り10と昇降機構12とは、スライドテーブル6の厚さ内に納まるサイズとなる。
更に前記手摺り10は、昇降機構12がむき出しにならないよう外側面がカバー23にて覆われており、又、ベーステーブル3の下方においても、X型リンク4を隠すために全周が蛇腹24にて覆われている。
【0014】
前記スライドテーブル6及び手摺り10の下死点は、いずれも上縁がピット開口面と同レベルの高さと一致するように設定されているが、ベーステーブル3と手摺り10の上死点及びそれらのリフトアップ高さ、スライドテーブル6の摺動量等は設置環境により任意に設定することができる。
【0015】
このように形成された段差解消機は、ベーステーブル2と手摺り10とを下死点まで降ろすと、図5に示すように、スライドテーブル6と手摺り10の上面とが図示しないフロア面と同一レベルとなるように畳まれ、段差解消機全体がピット内に収容され、ピット内に段差解消機全体が収容されると、スライドテーブルと手摺りとによりピットの開口面は閉塞される。
車椅子(図示せず)をスライドテーブル6の上に乗り込ませたら、上昇スイッチ(図示せず)を押し、ベーステーブル3上のモータ17を作動させて手摺り10を上昇させる(図6)。
次に左右及び後側を手摺り10にてガードした状態でベーステーブル2が上昇し(図7)、所定の高さまでリフトアップしたら、スライドテーブル6が前進し、車椅子が床上に直接乗り移り可能となる。
【0016】
車椅子が床上に乗り移ったら、下降スイッチ(図示せず)を押し、次にモータ6が逆転してスライドテーブル6を後退させ、ベーステーブル2が下がる。
続いて最下位置にて手擦り10が下がり、前記とは逆の動作で段差解消機全体をピット内に収容する。
通常はこの状態で待機させておき、車椅子を使用したい場合は前記の動作を繰り返えせばよいし、使用しない場合、待機状態のまま放置しておいても邪魔にはならない。
前記段差解消機の動作は、予め記憶させておいたプログラムに従って実行される。
【0017】
尚、実施例では、ベーステーブルにスライドテーブルが前方へ摺動可能に組み付けられているが、スライドテーブルを省略することもできる。
又、ベーステーブルや手摺りの昇降動作、スライドテーブルを摺動させる機構は実施例に限定されるものでなく、周知の機構を採用することができ、テーブルや手摺りの駆動源も電気以外に空気圧や油圧などが利用できる。
【0018】
本発明によれば、ピット内へテーブルと一緒に手摺りも収容されるので、不使用時にはフロア上に一切の突起物がなくなり、使用時にはコ字状に手摺りがせり出すので乗降時の安心感が高められる。
特に、手摺りがコ字状に設けられているので、後方に対してもガードされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る段差昇降機の正面説明図である。
【図2】本発明に係る段差昇降機の平面説明図である。
【図3】昇降機構の平面説明図である。
【図4】(a)は昇降機構の正面説明図であり、(b)は駆動歯車とラックとの噛合部をX型リンクの枢着部側より見た説明図である。
【図5】段差昇降機の動作説明のうち、装置全体をピット内に収容し、いつでも車椅子の乗り込みを可能とする不使用時の状態を示す説明図である。
【図6】段差昇降機の動作説明のうち、手摺りを上昇させた状態を示す説明図である。
【図7】(a)は段差昇降機の動作説明のうち、テーブル(ベーステーブル)を上昇させた状態を示す説明図であり、(b)はX型リンクの枢着部分の説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1・・ピット枠、2・・ベースフレーム、3・・ベーステーブル、4・・X型リンク、5・・スクリュー式シリンダ、6・・スライドテーブル、7・・ラック、8・モータ、9・・ピニオン歯、10・・手摺り、11・・X型リンク、11a・・インナーリンク、11b・・アウターリンク、11c・・連結板、12・・昇降機構、13・・切り欠き窓、14・・枢着軸、15・・継ぎ手部材、16・・・支持軸、17・モータ、18・・駆動回転軸、19・・歯車伝達機構、20・・駆動歯車、21・・ラック、22・ブラケット、23・・カバー、24・・蛇腹。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピットの内底面に固定されるベースフレームと、そのベースフレームに対して真上方向に昇降可能なテーブルと、そのテーブルに対して真上方向へ昇降可能に組み付けられた手摺りとを備え、前記テーブル及び手摺りの下死点を、いずれも上縁がピットの開口面と同レベルとなる高さに設定したことを特徴とする段差解消機。
【請求項2】
手摺りの上昇動作が、べースプレートの上昇動作に先立って実行され、又テーブルの下降動作が、手摺りの下降動作に先立って実行されることを特徴とする請求項1に記載の段差解消機。
【請求項3】
テーブルを、ベーステーブルにそのベーステーブル対して前後方向へ摺動可能なスライドテーブルを組み付けたものとした請求項1又は2に記載の段差解消機。
【請求項4】
手摺りが、両側と後側の3辺にわたってコ字状に連続して設けられている請求項1〜3の何れかに記載の段差解消機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−119121(P2007−119121A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310386(P2005−310386)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(390018326)株式会社スギヤス (35)