説明

段積み用保持具

【課題】棒積みの場合よりも段積み時の全高を抑制しながら、円盤状又は円柱状の物品を安定して縦置き段積みすることを可能とする段積み用保持具を提供する。
【解決手段】段積み用保持具は、発泡樹脂製の保持具本体10を備える。保持具本体10の上部側には、円盤状又は円柱状の物品の外周部と係合して当該物品を縦置き姿勢で保持するための横断面半円形状の保持凹部11が設けられている。保持具本体10の底部には、保持凹部11の直下において、円盤状又は円柱状の物品の外周部に係合可能な左右一対の切り欠き部15,16が設けられている。縦置き姿勢で隣り合わせに横並びした二つの円盤状又は円柱状の物品の外周部に一対の切り欠き部15,16を係合させて当該二物品上にまたがるように段積み用保持具を載せると共に、前記保持凹部11に円盤状又は円柱状の物品を保持する。これにより縦置き姿勢の物品が俵積み状態で多段積みされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤状又は円柱状の物品を縦置き状態で保持すると共に、縦置きされた円盤状又は円柱状の物品を多段積みするための段積み用保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用タイヤホイールのような円盤状又は円柱状の物品(製品)を多段積みする場合に、各ホイールを伏せて、つまりホイールの中心軸が地面に対し垂直になるように横寝かせした状態(横置き姿勢)で下から上に積み上げるやり方(以下「横置き段積み」と呼ぶ)と、例えば枠体やパレットのような段積み用具を用いて各ホイールをその中心軸が地面と平行(即ち水平)になるように立たせた状態(縦置き姿勢)で保持し、段積み用具とホイールとを垂直方向に交互に積み上げるやり方(以下「縦置き段積み」と呼ぶ)とがある。製品の傷付き防止対策のし易さや段積み状態から個々の製品を取り出すときの作業性の良さなどから、円盤状又は円柱状の製品を保管又は運搬する際の段積み手法として縦置き段積みが有利である。
【0003】
特許文献1(実開昭58−103756号)は、(タイヤ)ホイールの縦置き段積みを可能とする搬送枠構造を開示する。この搬送枠構造は、2本で一対のホイール受材と、このホイール受材間に所定間隔毎に取り付けた仕切材と、ホイール受材の両端に固着した横材とで搬送枠を構成している。使用時、各ホイールは各仕切材の上にこれをまたぐようにして縦置き姿勢で載せられる。その際、各段において複数ある仕切材を一つおきに利用し、上段の一列を構成するホイール群と下段の一列を構成するホイール群との配列関係が千鳥状となるようにホイールを並べることで、ホイールの相互干渉を回避している(特許文献1の第3図参照)。しかし、上段及び下段のホイール群が千鳥の配列関係になるように使用するという前提があるため、搬送枠内の仕切材を一つおきにしか利用することができず、直列に並べたいホイール数を増やすには、搬送枠の平面サイズを広げざるを得ない。また、この搬送枠を使用可能な物品も、仕切材をまたぐことで保持可能なタイヤホイールに限定される。更に、ホイールの傷付き防止のためには、特許文献1にあるように搬送枠の各部に緩衝材を被覆しなければならず、枠構造の複雑さとも相まって製造手順が煩雑化し、ひいては製品価格の上昇を招く。
【0004】
特許文献2(実公平6−40108号)は、(タイヤ)ホイール等の縦置き段積みを可能とする運搬・保管用パレットを開示する。このパレットは、一対の支持枠(1)を所定数のスペーサ(2)にて互いに保持し、これら一対の支持枠群の両端を固定枠(3)にて連結せしめたものであり、支持枠(1)の短底部(4)の少なくとも上面側にクッション材としての弾性体(5)を有するパレットである。特許文献2の第5図のように使用時には、下段のパレットを構成する一対の支持枠によって縦置き姿勢の複数のホイールが支持枠に沿って直列に並べられると共に、当該下段パレット上には複数のホイール列(同図では4列)が並列配置される。その複数のホイール列の上には上段のパレットがホイール上部に密接して載せられた後、当該上段パレット上には前記と同様に複数のホイール列が並列配置される。この繰り返しにより、ホイールの縦置き段積みを実現している。
【0005】
しかしながら、特許文献2の第5図の積み方は「棒積み」と呼ばれる極めて単純な積み方に過ぎない。「棒積み」とは、円盤状又は円柱状の物品を縦置き段積みする際に、下段の物品とそのすぐ上の段の物品とが、両者の中心軸が横から見て鉛直線上に位置するような位置関係にある段積み形態をいう(図7参照)。棒積みの場合、下段物品と上段物品との間に介在させる段積み用具の高さ又は厚さを無視するとしても、下段物品の最下部から上段物品の最上部までの高低差を当該物品の直径Rの4倍の値(4R)未満にすることはできない。高さ抑制という点で、棒積みは縦置き段積みの最善形態とは言い難い。
【0006】
ちなみに、例えばホイール等の機械部品を海外に輸出する場合、小型の鉄ボックス単位で製品を梱包し、この鉄ボックスを大型コンテナに積載するのが通例である。荷主は、使用する大型コンテナ(寸法の統一規格あり)のサイズに合わせて鉄ボックスの寸法規格を独自に定めることがあり、その場合、鉄ボックスの内容積や高さに厳しい制限が課せられる。それ故、鉄ボックス内で、段積み時の全高を極力抑制しつつ縦置き段積みを実現したいという強い要望がある。本発明はかかる事情に鑑みてなされたものである。
【0007】
【特許文献1】実開昭58−103756号公報(全文明細書、第3図)
【特許文献2】実公平6−40108号公報(第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、棒積みの場合よりも段積み時の全高を抑制しながら、円盤状又は円柱状の物品を安定して縦置き段積みすることを可能とする段積み用保持具を提供することにある。また、従来型の段積み用具が抱えていた各種の欠点を解消した段積み用保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、円盤状又は円柱状の物品を縦置き姿勢で多段積みするための段積み用保持具であって、保持具本体の上部側には、円盤状又は円柱状の物品の外周部と係合して当該物品を縦置き姿勢で保持するための保持部が設けられ、保持具本体の底部には、前記保持部の直下において、この段積み用保持具の下側にて縦置きされた円盤状又は円柱状の物品の外周部に係合可能な一対の切り欠き部が設けられており、縦置き姿勢で隣り合わせに並べられた二つの円盤状又は円柱状の物品の外周部に前記一対の切り欠き部を係合させて当該二物品上にまたがるようにこの段積み用保持具を載せると共に、段積み用保持具の保持部に円盤状又は円柱状の物品を保持することにより、縦置き姿勢の円盤状又は円柱状の物品を俵積み状態で多段積み可能としたことを特徴とする段積み用保持具である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の段積み用保持具において、物品の多段積み時に、前記一対の切り欠き部の各々に係合する縦置き姿勢の物品の最上部が、前記保持部によって縦置き姿勢で保持された物品の最下部よりも上に位置し得るように、各切り欠き部が保持具本体の底部に対し切り欠き形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の段積み用保持具において、前記一対の切り欠き部は、前記保持部を左右に二分する仮想中心面(P)を間に挟んで左右対称となるように設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の段積み用保持具において、前記保持部は、上方に開口し且つ円弧状に湾曲した底面を有する保持凹部として構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の段積み用保持具において、前記保持具本体は発泡樹脂製であることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、円盤状の物品を縦置き姿勢で多段積みするための段積み用保持具であって、長尺な直方体形状をなす発泡樹脂製の保持具本体を備え、保持具本体の上部側には、保持具本体の長手方向に所定間隔を隔てて配置されると共にそれぞれが円盤状物品の外周部と係合して当該円盤状物品を縦置き姿勢で保持すべく保持具本体の幅方向に溝状に延びる複数の保持凹部が設けられ、保持具本体の底部には、前記複数の保持凹部の直下に位置して保持具本体の長手方向に延びる中央接地部が設けられ、保持具本体の底部には更に、前記複数の保持凹部の各々の直下で且つ前記中央接地部を間に挟んだ左及び右側位置において、この段積み用保持具の下側にて縦置きされた円盤状物品の外周部に係合可能な左右一対の切り欠き部が設けられ、前記左右一対の切り欠き部は、これらに対応する保持凹部を左右に二分する仮想中心面(P)を間に挟んで左右対称となるように設けられていることを特徴とする段積み用保持具である。
【0015】
請求項7の発明は、請求項6に記載の段積み用保持具において、前記複数の保持凹部の各々は、上方に開口すると共に円弧状に湾曲した底面を有する保持凹部として構成されており、円盤状物品の多段積み時に、前記左右一対の切り欠き部の各々に係合する縦置き姿勢の円盤状物品の最上部(Ft)が前記各保持凹部の円弧状に湾曲した底面における最低位置(Fb)よりも上に位置し得るような切り欠き量でもって、各切り欠き部が保持具本体の底部に切り欠き形成されていることを特徴とする。
【0016】
[用語の定義]
この明細書及び特許請求の範囲において、「円盤状の物品」とは、外周部が円弧に沿ったアウトラインを有する物品のうち中心軸方向の長さが当該物品の最大半径よりも短いものをいい、本来の字義通りの円盤形状の物品の他に、円板形状や円環形状の物品をも含む意味である。また、「円柱状の物品」とは、外周部が円弧に沿ったアウトラインを有する物品のうち中心軸方向の長さが当該物品の最大半径に等しいか又はそれよりも長いものをいい、本来の字義通りの円柱形状の物品の他に、中空な円筒形状の物品、及び、途中にくびれ部又は小径部が存在するような変則円柱形状又は変則円筒形状の物品をも含む意味である。更に、「縦置き姿勢」とは、円盤状物品又は円柱状物品の中心軸が地面や床面などの設置基準面とほぼ平行になるような姿勢をいい、縦置き姿勢の物品の上部及び下部は外周部になる(図8参照)。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の段積み用保持具によれば、縦置き姿勢で隣り合わせに並べられた二つの円盤状又は円柱状の物品(下段物品)の外周部に、保持具本体の底部に設けられた一対の切り欠き部を係合させて当該二つの下段物品上にまたがるようにこの段積み用保持具を載せると共に、この段積み用保持具の本体上部側に設けられた保持部に円盤状又は円柱状の物品(上段物品)を保持することにより、縦置き姿勢の円盤状又は円柱状の物品を俵積み状態で多段積みすることができる。それ故、棒積みの場合よりも段積み時の全高を抑制しながら円盤状又は円柱状の物品を安定して縦置き段積みすることが可能になる。
【0018】
請求項2の段積み用保持具によれば、円盤状又は円柱状物品の多段積み時に、一対の切り欠き部の各々に係合する縦置き姿勢の物品の最上部が、保持部によって縦置き姿勢で保持された物品の最下部よりも上に位置することになるため、この段積み用保持具を用いた物品の多段積み時の全高を棒積み時の全高よりも明らかに低くすることができる。
【0019】
請求項3の段積み用保持具によれば、一対の切り欠き部は保持部を左右に二分する仮想中心面(P)を間に挟んで左右対称となるように設けられているので、縦置き姿勢で隣り合わせに並べられた二つの物品(下段物品)の中間位置の真上に、縦置き姿勢の物品(上段物品)を配置することができる。従って、上段物品による荷重を、隣り合う二つの下段物品によって均等に支持することができ、俵積み状多段積みの安定性を向上させることができる。
【0020】
請求項4の段積み用保持具によれば、円盤状又は円柱状の物品を縦置き姿勢で保持するための保持部は、上方に開口し且つ円弧状に湾曲した底面を有する保持凹部として構成されているので、保持凹部の円弧状湾曲底面に物品の外周部を線的又は面的に接触させることができる。従って、物品の一部の点接触を避けて物品の傷付きを防止することができると共に、円盤状又は円柱状の物品の縦置き姿勢保持の安定性を高めることができる。
【0021】
請求項5の段積み用保持具によれば、保持具本体が発泡樹脂製であるため、発泡樹脂の塑性的緩衝作用によって物品の傷付きを更に効果的に防止することができる。また、金属製の枠材を基調とした従来型の段積み用具よりも軽量化を図ることができる。
【0022】
請求項6の段積み用保持具によれば、縦置き姿勢で隣り合わせに横並びした二つの円盤状物品(下段物品)の外周部に、保持具本体の底部に設けられた左右一対の切り欠き部を係合させて当該二つの下段物品上にまたがるようにこの段積み用保持具を載せると共に、この段積み用保持具の本体上部側に設けられた保持凹部に円盤状物品(上段物品)を保持することにより、縦置き姿勢の円盤状物品を俵積み状態で多段積みすることができる。それ故、棒積みの場合よりも段積み時の全高を抑制しながら円盤状物品を安定して縦置き段積みすることが可能になる。また、左右一対の切り欠き部は、これらに対応する保持凹部を左右に二分する仮想中心面(P)を間に挟んで左右対称となるように設けられているので、縦置き姿勢で隣り合わせに横並びした二つの下段物品の中間位置の真上に、縦置き姿勢の上段物品を配置することができる。従って、上段物品による荷重を、隣り合う二つの下段物品によって均等に支持することができ、俵積み状多段積みの安定性を向上させることができる。更に、保持具本体が発泡樹脂製であるため、発泡樹脂の塑性的緩衝作用によって物品の傷付きを更に効果的に防止することができ、又、金属製の枠材を基調とした従来型の段積み用具よりも軽量化を図ることができる。更に加えて、物品の多段積み時、下段物品上に載せられた段積み用保持具のうち、下段物品に接触するのは各切り欠き部であって、中央接地部は下段物品に対して非接触状態に保たれる。それ故、多段積み前に当該段積み用保持具を地面等に接触させていたために中央接地部に砂粒やゴミ等が付着していたとしても、中央接地部から下段物品に砂粒やゴミ等が転移付着する事態を回避することができる。
【0023】
請求項7の段積み用保持具によれば、円盤状物品を縦置き姿勢で保持するための各保持凹部は、上方に開口すると共に円弧状に湾曲した底面を有する保持凹部として構成されているので、保持凹部の円弧状湾曲底面に円盤状物品の外周部を線的又は面的に接触させることができる。従って、円盤状物品の一部の点接触を避けて物品の傷付きを防止することができると共に、円盤状物品の縦置き姿勢保持の安定性を更に高めることができる。また、円盤状物品の多段積み時に、左右一対の切り欠き部の各々に係合する縦置き姿勢の円盤状物品の最上部(Ft)が各保持凹部の円弧状に湾曲した底面における最低位置(Fb)よりも上に位置し得るような切り欠き量でもって、各切り欠き部が保持具本体の底部に切り欠き形成されているので、この段積み用保持具を用いた円盤状物品の多段積み時の全高を棒積み時の全高よりも明らかに低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に従う段積み用保持具としての段積みトレーを図1〜図6を参照して説明する。本実施形態の段積みトレーは、エンジン部品の一種であるフライホイールを縦置き姿勢で多段積みする際に使用される。なお、図3及び図4中に破線で示すように、フライホイールFは金属製の円盤状物品であり、その外周部にはリングギア(スタータモータ側のギアと噛み合うギア)及び環状溝が形成されている。
【0025】
図1〜図4に示すように、段積みトレーは、長尺な直方体形状をなす発泡樹脂製の保持具本体10を備えている。保持具本体10は、長手方向長さが幅方向長さよりも長いという意味で長尺である。保持具本体10の上部側には、保持部としての複数の保持凹部11が設けられ、保持具本体10の底部には、中央接地部14や複数の切り欠き部(15,16)が設けられている。なお、この発泡樹脂製の段積みトレーは、発泡樹脂(例えば、発泡ポリエチレンや発泡ポリプロピレン)のビーズを成形型内に充填して蒸気融着させるビーズ法型内成形によって一体成形されたものである。
【0026】
図1、図4及び図5に示すように、保持具本体10の上部側には、複数の保持凹部11(本例では11個)が保持具本体10の長手方向に所定間隔を隔てて直列配置されている。保持凹部11は、保持対象物であるフライホイールFの外周部と係合して当該フライホイールFを縦置き姿勢で保持するための係合凹部である。各保持凹部11は、保持具本体10の幅方向に溝状に延び、且つ、上方に開口すると共に円弧状に湾曲した底面11aを有する保持凹部として構成されている。このため、図5(B)に示すように、各保持凹部11の横断面形状(幅方向断面形状)は、ほぼ半円形状をなしている。
【0027】
前後に隣り合う二つの保持凹部11の間にはフランジ状の隔壁12がそれぞれ設けられている。つまり、都合10個のフランジ状の隔壁12によって11個の保持凹部11が分離区画されている。各保持凹部11の前後に位置する二つのフランジ状の隔壁12は、当該保持凹部内に縦置き姿勢で保持されたフライホイールFの下半部外周部に接触してフライホイールFの倒れを防止する。また、各保持凹部11の円弧状湾曲した底面11a上には、その中心位置において、保持具本体10の幅方向に沿ってあたかもリング状に延びる係合突条13が形成されている。このリング状の係合突条13は、フライホイールFの外周部の環状溝に係合してフライホイールFの縦置き姿勢の安定を図る突起物である。
【0028】
図2、図4及び図5に示すように、保持具本体10の底部には、中央接地部14、複数の切り欠き部(15,16)及び複数の補助脚部17が設けられている。
【0029】
中央接地部14は、保持具本体10の幅方向中央に位置すると共に保持具本体10の長手方向全体に延設されている。このため、中央接地部14は、複数の保持凹部11からなる保持凹部群の中央直下に位置する。中央接地部14の下面14aは水平な面として形成されており、接地時には、この水平な下面14aが設置面(例えば地面やコンテナ床面等、図6参照)に対して直接接触する。
【0030】
中央接地部14を間に挟んだ左側位置及び右側位置には、左右で一対をなす切り欠き部15,16が複数対(本例では11対)設けられている。左右一対の切り欠き部15,16は、その直上に位置する一つの保持凹部11と対応している。つまり、各保持凹部11の左端部及び右端部のそれぞれの直下に左側の切り欠き部15及び右側の切り欠き部16が設けられている。また、保持具本体10の底部の左側又は右側において、前後に隣り合う二つの切り欠き部15(又は16)の間には、三角突片状の補助脚部17がそれぞれ設けられている。つまり、保持具本体底部の片側には、都合10個の補助脚部17が直列配置され、これら10個の補助脚部17によって片側11箇所の切り欠き部15(又は16)が分離区画されている。これら合計20個の補助脚部17(左右一対として10対)の各下端部は、前記中央接地部の水平な下面14aと同一水平面内にあり、これらの補助脚部17は、接地時に中央接地部14と協働して設置面に対する段積みトレーの安定的設置に貢献する。
【0031】
保持具本体10の底部に設けられた各切り欠き部15,16は、この段積みトレーの下側にて縦置きされたフライホイールFの外周部に係合させるための係合凹部として機能する(図6参照)。図5(B)に示すように、各切り欠き部15,16は、中央接地部14の水平な下面14aよりも垂直上方に向けて後退するように保持具本体10の底部に切り欠き形成されている。この切り欠き形成により、各切り欠き部の底面15a,16aは、中央接地部14の左端又は右端から保持具本体10の左側面上端又は右側面上端に向けて緩やかなS字状カーブを描くような湾曲底面として構成されている。また、各切り欠き部15,16における中央接地部の下面14aから垂直上方に向けた切り欠きの深さ(切り欠き量)は、場所によって異なっているものの、フライホイールFの多段積み時(図6参照)に、各切り欠き部の湾曲底面15a,16aに係合又は当接する縦置き姿勢のフライホイールFの最上部Ftが、前記各保持凹部11の円弧状湾曲した底面11aにおける最低位置Fbよりも上に位置し得るような切り欠き量に設定されている。更に図5(B)に示すように、左右一対の切り欠き部15,16は、これらに対応する保持凹部11を左右に二分する仮想中心面Pを間に挟んで左右対称となるように形成されている。
【0032】
なお、本実施形態の段積みトレーの本体10は、前後対称で且つ左右対称な直方体形状をなしている。それ故、上記保持凹部11を左右に二分する仮想中心面Pは、保持具本体10を左右に均等二分割する仮想中心面P’(図1及び図2参照)と完全一致する。
【0033】
次に、本実施形態の段積みトレーの使用方法、作用及び効果について説明する。
【0034】
図6は、上記段積みトレーを5本用いて合計55個のフライホイールFを下段3列上段2列で多段積みした様子を示す。具体的には、水平な設置面上に3本の段積みトレーをそれぞれの左右側部が接するように横並び配置する。下段(第1段)を構成する各トレーには縦置き姿勢のフライホイールFを予め保持しておいてもよいし、3本のトレーを横並び配置した後に各保持凹部11に縦置き姿勢のフライホイールFを保持してもよい。次に、下段にて隣り合う2列を構成する各フライホイールFの上側外周部に、上段(第2段)を構成する段積みトレーの底部に設けられた左右一対の切り欠き部15,16を係合させ、下段隣接2列のフライホイールF上にまたがるように上段のトレー(計2本)を載せる。上段を構成する各トレーには縦置き姿勢のフライホイールFを予め保持しておいてもよいし、下段のフライホイールF上に載せた後に各保持凹部11に縦置き姿勢のフライホイールFを保持してもよい。すると図6に示すように、縦置き姿勢のフライホイールF(合計55個)を俵積み状態で2段積みすることができる。
【0035】
ここでいう「俵積み」とは、図6のように横から見たときに、下段の隣り合う二つのフライホイールFの中心軸を結ぶ水平な線分を二分割する鉛直線(つまり下段の隣り合う二つのフライホイールFの中間位置を通る鉛直線)上に、そのすぐ上の段のフライホイールFの中心軸が位置するような段積み形態をいう。図6において、フライホイールFの半径をR、下段(第1段)のフライホイールFの最上部Ftと上段(第2段)のフライホイールFの最下部Fb(上記保持凹部11の円弧状湾曲底面11aにおける最低位置Fbに一致)との高低差をh、下段(第1段)のフライホイールFの最下部Fbから上段(第2段)のフライホイールFの最上部Ftまでの高低差をHとすると、H=4R−hとなる。つまり、上下段間に本実施形態の段積みトレーを介在させて円盤状物品(F)を俵積み状態で2段積みした場合の高低差H=4R−hは、上下段間に従来型の段積み用具を介在させて円盤状物品を棒積み状態で2段積みした場合であって従来型の段積み用具の高さ又は厚さを無視したときの高低差4R(図7参照)よりも明らかに小さい。このように本実施形態によれば、棒積みの場合よりも段積み時の全高を抑制しながら円盤状物品(F)を安定して縦置き段積みすることができる。
【0036】
本実施形態では、左右一対の切り欠き部15,16は保持凹部11を左右に二分する仮想中心面Pを間に挟んで左右対称となっているので、縦置き姿勢で隣り合わせに横並びした二つの下段フライホイールFの中間位置の真上に、縦置き姿勢の上段フライホイールFを配置することができる。従って、上段フライホイールFの荷重を下段の二つのフライホイールFによって均等に支持することができ、俵積み状多段積みの安定性を向上させることができる。また、フライホイールFを縦置き姿勢で保持するための保持凹部11は、上方に開口すると共に円弧状に湾曲した底面11aを有する保持凹部として構成されているので、当該湾曲底面11aにフライホイールFの外周部を線的又は面的に接触させることができる。従って、フライホイールFの外周部の点接触を避けて物品の傷付きを防止できると共に、フライホイールFの縦置き姿勢保持の安定性を高めることができる。
【0037】
フライホイールFの段積み時、下段フライホイールF上に載せられた段積みトレーのうち、下段フライホイールFの外周部に接触するのは各切り欠き部15,16であって、中央接地部の下面14a及び各補助脚部17の下端部は下段フライホイールFの外周部に対し接触しない。それ故、多段積み前に当該段積みトレーを地面等に接触させていたために中央接地部の下面14aや各補助脚部17の下端部に砂粒やゴミ等が付着していたとしても、中央接地部の下面14a等から下段フライホイールFの外周部に砂粒やゴミ等が転移付着する事態を回避することができる。
【0038】
保持具本体10は発泡樹脂製であるため、これによってフライホイールFの外周部のリングギアを傷めることがことがない。また同じ理由により、フライホイールFのリングギアによって発泡樹脂製の本体10が削り取られてゴミを発生することもない。
【0039】
本実施形態の段積みトレーは、縦置き姿勢にある11個のフライホイールFを直列に配置して保持する一列タイプであるため、大型コンテナや鉄ボックス内で使用する際にトレーの数を適宜調節することで横並びの列数を自由に選択することができる。また、一列タイプとしたことにより、下段(第1段)用の3列一体化トレーと、上段(第2段)用の2列一体化トレーとを別々に準備する必要がない。更に、一列タイプとしたことにより、1本の段積みトレーのサイズが比較的小さくなり、横並び配列時や段積み時の作業性及びハンドリング性をよくすることができる。
【0040】
[変更例]:上記実施形態では、前後に隣り合う二つの補助脚部17間に切り欠き部15又は16を挟みつつ、複数の補助脚部17を保持具本体10の長手方向に沿って直列配置したが、これら複数の補助脚部17の全部又は一部を省略してもよい。
【0041】
[変更例]:上記実施形態では、段積み対象物としてフライホイールF(円盤状物品)を想定したが、段積み対象物はこれに限定されるものではない。縦置き姿勢の円柱状の物品(例えば、セラミックス製のディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)や、レシプロエンジン用のピストンヘッド等)を俵積み状態で多段積みするめたの段積み用保持具に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】一実施形態に従う段積み用保持具の平面図。
【図2】一実施形態に従う段積み用保持具の底面図。
【図3】一実施形態に従う段積み用保持具の左側面図。
【図4】図1のA−A線での断面図。
【図5】(A)は一実施形態に従う段積み用保持具の正面図、(B)は図1のB−B線での断面図、(C)は図1のC−C線での断面図。
【図6】本発明の段積み用保持具を用いた俵積み状態の多段積みを示す概略断面図。
【図7】棒積みについての説明図。
【図8】「縦置き姿勢」の定義に関する説明図。
【符号の説明】
【0043】
10…保持具本体、11…保持凹部(保持部)、11a…保持凹部の湾曲底面、14…中央接地部、14a…中央接地部の下面、15…左側の切り欠き部、16…右側の切り欠き部、15a,16a…切り欠き部の底面、F…フライホイール(円盤状の物品)、P…保持凹部の仮想中心面、R…段積み対象物品の半径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状又は円柱状の物品を縦置き姿勢で多段積みするための段積み用保持具であって、
保持具本体の上部側には、円盤状又は円柱状の物品の外周部と係合して当該物品を縦置き姿勢で保持するための保持部が設けられ、
保持具本体の底部には、前記保持部の直下において、この段積み用保持具の下側にて縦置きされた円盤状又は円柱状の物品の外周部に係合可能な一対の切り欠き部が設けられており、
縦置き姿勢で隣り合わせに並べられた二つの円盤状又は円柱状の物品の外周部に前記一対の切り欠き部を係合させて当該二物品上にまたがるようにこの段積み用保持具を載せると共に、段積み用保持具の保持部に円盤状又は円柱状の物品を保持することにより、縦置き姿勢の円盤状又は円柱状の物品を俵積み状態で多段積み可能としたことを特徴とする段積み用保持具。
【請求項2】
物品の多段積み時に、前記一対の切り欠き部の各々に係合する縦置き姿勢の物品の最上部が、前記保持部によって縦置き姿勢で保持された物品の最下部よりも上に位置し得るように、各切り欠き部が保持具本体の底部に対し切り欠き形成されていることを特徴とする請求項1に記載の段積み用保持具。
【請求項3】
前記一対の切り欠き部は、前記保持部を左右に二分する仮想中心面(P)を間に挟んで左右対称となるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の段積み用保持具。
【請求項4】
前記保持部は、上方に開口し且つ円弧状に湾曲した底面を有する保持凹部として構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の段積み用保持具。
【請求項5】
前記保持具本体は発泡樹脂製であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の段積み用保持具。
【請求項6】
円盤状の物品を縦置き姿勢で多段積みするための段積み用保持具であって、
長尺な直方体形状をなす発泡樹脂製の保持具本体を備え、
保持具本体の上部側には、保持具本体の長手方向に所定間隔を隔てて配置されると共にそれぞれが円盤状物品の外周部と係合して当該円盤状物品を縦置き姿勢で保持すべく保持具本体の幅方向に溝状に延びる複数の保持凹部が設けられ、
保持具本体の底部には、前記複数の保持凹部の直下に位置して保持具本体の長手方向に延びる中央接地部が設けられ、
保持具本体の底部には更に、前記複数の保持凹部の各々の直下で且つ前記中央接地部を間に挟んだ左及び右側位置において、この段積み用保持具の下側にて縦置きされた円盤状物品の外周部に係合可能な左右一対の切り欠き部が設けられ、前記左右一対の切り欠き部は、これらに対応する保持凹部を左右に二分する仮想中心面(P)を間に挟んで左右対称となるように設けられていることを特徴とする段積み用保持具。
【請求項7】
前記複数の保持凹部の各々は、上方に開口すると共に円弧状に湾曲した底面を有する保持凹部として構成されており、
円盤状物品の多段積み時に、前記左右一対の切り欠き部の各々に係合する縦置き姿勢の円盤状物品の最上部(Ft)が前記各保持凹部の円弧状に湾曲した底面における最低位置(Fb)よりも上に位置し得るような切り欠き量でもって、各切り欠き部が保持具本体の底部に切り欠き形成されていることを特徴とする請求項6に記載の段積み用保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−131365(P2007−131365A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323609(P2005−323609)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(591006944)三甲株式会社 (380)
【Fターム(参考)】