説明

段部の床構造

【課題】 蹴込み面と床面とが交差する段部に角当て部材を取り付けると共に、角当て部材と連続するようにして床面にカーペットを敷設させる作業が簡単に行えると共に、段部に取り付けられた角当て部材や、床面に敷設されたカーペットが勝手にずれるのを適切に防止する。
【解決手段】 蹴込み面1と床面2とが交差する段部に取り付けられる角当て部材10と、床面に敷設されるカーペット20とを用い、段部の床面に取り付ける角当て部材の床面部12に、上方に突出した複数の係止用突起14を設ける一方、カーペットに上記の係止用突起に対応した貫通穴を設け、角当て部材における係止用突起をカーペットの貫通穴を貫通するように係合させて、カーペットを角当て部材の床面部の上に装着させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蹴込み面と床面とが交差する段部に角当て部材を取り付けると共に、この角当て部材と連続するようにして床面にカーペットを敷設させるようにした段部の床構造に関するものである。特に、蹴込み面と床面とが交差する段部に角当て部材を取り付け、この角当て部材と連続するようにして床面にカーペットを敷設させる作業が簡単に行えると共に、段部に取り付けられた角当て部材や、床面に敷設されたカーペットが勝手にずれたりするのを適切に防止し、さらに角当て部材によって十分な滑り防止効果が得られるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、蹴込み面と床面とが交差する段部における滑り止め等を目的として、蹴込み面と床面とが交差する段部に角当て部材を取り付けることが行われている。
【0003】
また、段部と連続する床面の装飾性を高める等の目的で、角当て部材が取り付けられた床面に対して、角当て部材と連続するようにしてカーペットを敷設させることも行われている。
【0004】
ここで、このように角当て部材が取り付けられた床面に対して、角当て部材と連続するようにしてカーペットを敷設させるにあたり、従来においては、特許文献1〜3に示されるように、蹴込み面と床面とが交差する段部に、蹴込み面から床面に至る合成樹脂等で構成された角当て部材を取り付け、この角当て部材における蹴込み面と反対側の端部に、蹴込み面と反対側に向けて設けられた凹部内に、カーペットの端部を挟み込んで、カーペットを角当て部材と連続するようにして床面に敷設させるようにしたものが提案されている。
【0005】
しかし、上記のように角当て部材に設けられた凹部内にカーペットの端部を挟み込むにあたり、カーペットの端部を挟み込む凹部の間隔を大きくして、カーペットを挟み込みやすくした場合、カーペットの端部が角当て部材の凹部内から簡単に外れて浮き上がったり、また凹部の上面がカーペットから浮いた状態になって、この凹部の上面の強度が低下し、この部分が破損したりするという問題があった。一方、カーペットの端部を角当て部材の凹部内に強く挟持させるために、カーペットの端部を挟み込む凹部の間隔を小さくすると、この凹部内にカーペットの端部を挟み込む作業が困難になるという問題があった。
【0006】
また、蹴込み面と反対側に向けて設けられた角当て部材の凹部内にカーペットの端部を挟み込んで、カーペットを角当て部材と連続するようにして床面に敷設させた場合、このカーペットの上に歩行する際に加わる力が、このカーペットから角当て部材に伝わり、角当て部材が蹴込み面側に押されるようになり、角当て部材を段部に接着させて取り付けているような場合には、この角当て部材がずれて蹴込み面より前方に突出し、角当て部材が段部から外れたりするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−197533号公報
【特許文献2】特開2005−171636号公報
【特許文献3】特開2007−262710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、蹴込み面と床面とが交差する段部に角当て部材を取り付けると共に、角当て部材と連続するようにして床面にカーペットを敷設させる場合における上記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0009】
この発明においては、蹴込み面と床面とが交差する段部に角当て部材を取り付け、この角当て部材と連続するようにして床面にカーペットを敷設させる作業が簡単に行えると共に、段部に取り付けられた角当て部材や、床面に敷設されたカーペットが勝手にずれたりするのを適切に防止し、さらに角当て部材によって十分な滑り防止効果が得られるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る段部の床構造においては、上記のような課題を解決するため、蹴込み面と床面とが交差する段部に取り付けられる角当て部材と、床面に敷設されるカーペットとを備え、上記の角当て部材において段部の床面に取り付けられる床面部に、上方に突出した複数の係止用突起が設けられる一方、上記のカーペットに、上記の係止用突起に対応して貫通穴が設けられ、角当て部材における上記の係止用突起がこのカーペットの貫通穴を貫通するように係合されて、カーペットが角当て部材の床面部の上に装着されるようにした。
【0011】
ここで、上記の角当て部材における滑り防止効果を高めるため、この角当て部材における係止用突起の少なくとも上面部を、摩擦係数の高い材料で構成することが好ましい。また、カーペットの貫通穴を貫通した角当て部材の係止用突起の上面位置とカーペットの上面位置とが対応するように、これらが略同じ高さになるようにし、また角当て部材における蹴込み面側の端部に沿って床面部より上方に突出した滑り止め部を設けることが好ましい。
【0012】
また、上記の角当て部材の材料は特に限定されないが、角当て部材を軟質樹脂で構成すると、角当て部材における滑り防止効果が高められると共に、段部の床面等に適切に接着させることが容易に行えるようになる。
【0013】
また、上記の角当て部材とカーペットとを蹴込み面と床面とが交差する段部に取り付けるにあたり、角当て部材とカーペットとを床面に接着させるようにすると、これらの取付作業が短時間で簡単に行えるようになる。
【発明の効果】
【0014】
この発明における段部の床構造においては、段部の床面に取り付けられる角当て部材の床面部に、上方に突出した複数の係止用突起を設ける一方、この係止用突起に対応してカーペットに貫通穴を設け、角当て部材における係止用突起がこのカーペットの貫通穴を貫通するように係合させて、カーペットを角当て部材の床面部の上に装着させるようにしたため、段部に取り付けた角当て部材と連続するようにして床面にカーペットを敷設させる作業が簡単に行えるようになる。
【0015】
また、上記のように角当て部材における係止用突起がカーペットの貫通穴を貫通するように係合させて、カーペットを角当て部材の床面部の上に装着させているため、角当て部材とカーペットとの動きが相互に規制され、段部に取り付けられた角当て部材や、床面に敷設されたカーペットが勝手にずれたりするのが適切に防止されるようになる。
【0016】
また、カーペットの貫通穴を貫通して突出された角当て部材における係止用突起とカーペットの上面とにおける凹み強度や摩擦抵抗の差によって、この係止用突起の部分を踏んだ際における滑りが抑制され、特に、上記のように角当て部材における係止用突起の少なくとも上面部を、摩擦係数の高い軟質樹脂等の材料で構成したり、また角当て部材自体を軟質樹脂で構成したりすると、滑り防止効果がさらに高められるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態における段部の床構造において、段部の床面に装着させる床面部に係止用突起が設けられた角当て部材を示した部分斜視図である。
【図2】上記の実施形態において、角当て部材の床面部に設けられた係止用突起に対応して貫通穴が設けられたカーペットの一部を示し、(A)は概略平面図、(B)は概略断面図である。
【図3】上記の実施形態において、上記の角当て部材を蹴込み面と床面とが交差する段部に取り付けると共に、角当て部材における係止用突起をカーペットの貫通穴に貫通させて、カーペットを角当て部材と連続するようにして段部の床面の上に装着させた状態を示した断面説明図である。
【図4】上記の実施形態において、段部の床面に装着させる床面部と蹴込み面に装着させる蹴込み面部とにそれぞれ係止用突起が設けられた角当て部材を用い、この角当て部材を蹴込み面と床面とが交差する段部に取り付けると共に、角当て部材における係止用突起をカーペットの貫通穴に貫通させて、カーペットを角当て部材と連続するようにして段部の床面と蹴込み面とに装着させた状態を示した断面説明図である。
【図5】上記の実施形態において使用する角当て部材において、係止用突起の形状を変更させた第1の変更例に係る角当て部材を示した部分斜視図である。
【図6】上記の第1の変更例に係る角当て部材に対応させて、貫通穴の形状を変更させたカーペットの一部を示した概略平面図である。
【図7】上記の実施形態において使用する角当て部材において、金属製基部と樹脂部材とで構成された第2の変更例に係る角当て部材を示した部分斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態に係る段部の床構造を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、この発明に係る段部の床構造は、特に下記の実施形態に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0019】
この実施形態においては、蹴込み面1と床面2とが交差する段部に取り付ける角当て部材10として、図1に示すように、摩擦係数の高い軟質樹脂で構成され、段部の蹴込み面1に装着させる蹴込み面部11と、段部の床面2に装着させる床面部12とが段部の角部に沿うようにして屈曲され、蹴込み面部11と床面部12とが交差する端部に沿って床面部12より上方に突出した滑り止め部13が設けられると共に、上記の床面部12の上に上記の滑り止め部13と略同じ高さの円柱状になった係止用突起14が適当な間隔を介して複数列設けられたものを用いるようにした。なお、角当て部材10に用いる摩擦係数の高い軟質樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ナイロン等のアミド系樹脂、EPDMやシリコン等のゴム系樹脂等の各種の軟質樹脂を用いることができる。
【0020】
一方、床面2に装着させるカーペット20としては、図2(A),(B)に示すように、基材21の表面にパイル22が植設されると共に、上記の角当て部材10の床面部12に装着させる部分に、角当て部材10の係止用突起14に対応するようにして、円形状の貫通穴23が適当な間隔を介して複数列設けられたものを用いるようにした。
【0021】
そして、この実施形態においては、図3に示すように、上記の角当て部材10における蹴込み面部11を段部の蹴込み面1に、床面部12を段部の床面2にそれぞれ接着剤によって接着させると共に、上記のカーペット20に設けられた各貫通穴23にそれぞれ角当て部材10の床面部12に設けられた各係止用突起14を挿通させて、カーペット20に設けられた各貫通穴23に角当て部材10の床面部12に設けられた各係止用突起14を係合させ、この状態でカーペット20を角当て部材10の床面部12から床面2の上に接着剤で接着させるようにした。
【0022】
このように、この実施形態においては、角当て部材10における係止用突起14をカーペット20の貫通穴23に挿通させるようにして、カーペット20を角当て部材10の床面部12と床面2の上に接着させるだけで、段部に取り付けられた角当て部材10と連続するようにして床面2にカーペット20を簡単に敷設できるようになる。
【0023】
また、上記のように角当て部材10における係止用突起14をカーペット20の貫通穴23に挿通させるようにして、角当て部材10とカーペット20とを係合させているため、角当て部材10とカーペット20との動きが相互に規制され、段部に取り付けられた角当て部材10や、床面2に敷設されたカーペット20が勝手にずれるのが適切に防止されるようになる。
【0024】
また、カーペット20の貫通穴23を貫通して突出された角当て部材10における係止用突起14とカーペット20におけるパイル22の上面との凹み強度や摩擦抵抗の差によって、この係止用突起14の部分を踏んだ際における滑りが抑制され、特に、上記のように角当て部材10自体を摩擦係数の高い軟質樹脂で構成して、上記の滑り止め部13及び係止用突起14が摩擦係数の高い軟質樹脂で構成されるようにすると、より一層滑り防止効果が高められるようになる。
【0025】
なお、この実施形態において、上記のカーペット20としては、長尺状のカーペットや所定の大きさになったタイルカーペット等を用いることができる。
【0026】
そして、上記のカーペット20として、所定の大きさになったタイルカーペット20を用いる場合には、長尺状の角当て部材10を段部に沿ってその床面2の上に接着させた後、上記のように角当て部材10における係止用突起14をタイルカーペット20における貫通穴23に挿通させるようにして、タイルカーペット20を順々に角当て部材10の床面部12と床面2の上に接着させるようにする他、上記の角当て部材10をタイルカーペット20に対応した長さに切断し、この角当て部材10における係止用突起14をタイルカーペット20の貫通穴23に挿通させるようにして、タイルカーペット20を角当て部材10の床面部12の上に取り付け、タイルカーペット20と角当て部材10とを一体化させた状態で、これらを段部の床面2の上に接着させるようにすることもできる。
【0027】
また、この実施形態においては、角当て部材10の床面部12に係止用突起14を設けるようにしただけであるが、図4に示すように、角当て部材10の蹴込み面部11にも複数の係止用突起14を設け、この蹴込み面部11に設けられた各係止用突起14をカーペット20に設けられた各貫通穴23に挿通させて、この状態でカーペット20を角当て部材10の蹴込み面部11から蹴込み面1の上に接着剤で接着させるようにすることも可能である。
【0028】
また、この実施形態においては、角当て部材10の床面部12に設ける係止用突起14を円柱状にしたが、係止用突起14の形状は特に限定されず、例えば、図5に示すように、平面長方形状の係止用突起14を適当な間隔を介して複数列設けられたものを用い、またこれに対応させて、図6に示すように、長方形状の貫通穴23が適当な間隔を介して複数列設けられたカーペット20を用いるようにすることができる。
【0029】
また、この実施形態においては、角当て部材10を摩擦係数の高い軟質樹脂で構成するようにしたが、角当て部材10をアルミニウムやステンレス等の金属で構成し、係止用突起14の上面に摩擦係数の高い軟質樹脂を設けるようにすることも可能である。
【0030】
さらに、図7に示すように、角当て部材10として、段部の蹴込み面1に装着させる蹴込み面部11と段部の床面2に装着させる床面部12とが交差する部分から係止部15が上方に鉤形状に延出された金属製基部10aと、上記の滑り止め部13と円柱状になった係止用突起14とが摩擦係数の高い軟質樹脂で構成された樹脂部材10bとで構成され、この樹脂部材10bを金属製基部10aの床面部12の上に接着等によって取り付けると共に、この樹脂部材10bにおける滑り止め部13を金属製基部10aの係止部15に係止させるようにしたものを用いることもできる。
【符号の説明】
【0031】
1 蹴込み面
2 床面
10 角当て部材
10a 金属製基部
10b 樹脂部材
11 蹴込み面部
12 床面部
13 滑り止め部
14 係止用突起
15 係止部
20 カーペット(タイルカーペット)
21 基材
22 パイル
23 貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蹴込み面と床面とが交差する段部に取り付けられる角当て部材と、床面に敷設されるカーペットとを備え、上記の角当て部材において段部の床面に取り付けられる床面部に、上方に突出した複数の係止用突起が設けられる一方、上記のカーペットに、上記の係止用突起に対応して貫通穴が設けられ、角当て部材における上記の係止用突起がこのカーペットの貫通穴を貫通するように係合されて、カーペットが角当て部材の床面部の上に装着されてなることを特徴とする段部の床構造。
【請求項2】
請求項1に記載の段部の床構造において、上記の角当て部材における係止用突起の少なくとも上面部が、摩擦係数の高い材料で構成されていることを特徴とする段部の床構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の段部の床構造において、上記のカーペットの貫通穴を貫通した角当て部材の係止用突起の上面位置と、カーペットの上面位置とが対応していることを特徴とする段部の床構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の段部の床構造において、上記の角当て部材における蹴込み面側の端部に沿って床面部より上方に突出した滑り止め部が設けられていることを特徴とする段部の床構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の段部の床構造において、上記の角当て部材が軟質樹脂で構成されていることを特徴とする段部の床構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の段部の床構造において、上記の角当て部材とカーペットとが床面に接着されてなることを特徴とする段部の床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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