説明

段階的なスラリー添加によるガス化系および方法

堆積問題を引き起こすタールの形成を防止するための段階的なスラリー添加により炭素質フィード原料をガス化する系および方法。乾燥固体炭素質材料を部分燃焼し、次いで炭素質材料を含む第1のスラリー流と一緒に2つの分離した反応器区分で熱分解して、それによって合成ガスを含む混合物生成物を生成させる。熱回収域を出る混合物生成物と一緒に、粒子状炭素質材料を含む第2のスラリー流を熱回収域の下流の乾燥ユニットにフィードする。第2段階の混合物生成物および乾燥した粒子状炭素質材料の得られる最終温度は、重い分子量のタール種の排出を通常招かない温度範囲の450°と550°Fとの間にある。

【発明の詳細な説明】
【関連出願へのクロスリファレンス】
【0001】
本出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれている、2008年12月17日出願の「ガス化系および段階的なスラリー添加による方法」という題名の米国特許仮出願No.61/138,312による優先権の恩恵を主張する、国際出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、ガス化系および炭素質材料などの概ね固体のフィード原料を合成ガスなどの望ましいガス状生成物に変換するための方法に関する。このガス化系および方法は、単純であるが、最大の転化効率をもたらすように設計されなければならない。
【背景技術】
【0003】
炭素質材料をガス化するために、3つの基本的な形式の系および方法が開発されてきた。これらは、(1)固定床ガス化、(2)流動床ガス化、および(3)懸濁または同伴ガス化である。本発明は、第3の形式の系および方法の懸濁または同伴ガス化に関する。特に、本発明は、炭素質材料をガス化するための二段同伴ガス化系および方法に関する。
【0004】
低温の第2段階のガス化器へのスラリーフィード速度を最大とし、第1段階のガス化器から生じる熱を利用して、スラリーから水を蒸発させることにより、二段設計の自由度を活用することができる。次いで、第2段階のガス化器を出るチャーおよび未変換の炭素を分離し、第1段階のガス化器に乾燥した形で再循環して、高温の第1段階で必要とされる酸素の量を最少とし、ガス化器の転化効率を最大とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低温の第2段階にフィードすることによる一つの問題は、石炭または石油コークの熱分解時に生じるタールが適切に分解されないということである。未分解のタールは、合成ガスの冷却時に凝縮し、熱交換器表面を汚染するか、または下流の濾過器を閉塞する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、堆積問題を引き起こすタールの形成を防止する、段階的なスラリー添加により炭素質材料などのフィード原料をガス化するための系および方法を開示する。本発明は、炭素質材料を含む乾燥固体を部分燃焼し、炭素質材料を含む第1のスラリー流を2つの分離した反応器区分で熱分解することを包含し、合成ガスを含む混合物生成物を生成する。粒子状炭素質材料を含む第2のスラリー流は、熱回収域を出る混合物生成物と一緒に熱回収域の下流の乾燥ユニットにフィードされる。
【0007】
スラリーを乾燥した後の合成ガスの最終温度が重い分子量のタール種が通常排出されない温度範囲にあるように、熱回収域を出る合成ガスの温度を調整する。この工程で形成されるチャー粒子は、合成ガスからサイクロン、および場合によっては粒子濾過装置により分離され、捕集され、次いでスラグ生成条件で運転される第1段階のガス化器に再循環される。サイクロンおよび濾過装置を出る合成ガスは、タールおよび粒子の両方とも含まない。
【0008】
本発明の特定の態様は、a)再循環チャーと、粒子状炭素質材料を含む固体流を含んだ乾燥フィード原料を反応器下部区分の中に導入し、酸素含有ガス、水蒸気、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸素供給体を含むガス流と共にその中で部分燃焼させて、それにより熱を発生させ、合成ガスと溶融スラグを含む生成物を形成する段階;b)
前記反応器下部区分からの合成ガスを反応器上部区分の中に上向きに通し、その中で液体キャリア中の粒子状炭素質材料のスラリーを含む第1のスラリー流と共に熱分解し、それにより合成ガスとチャーを含むガス状生成物流を含む混合物生成物を形成する段階;c)段階(b)の混合物生成物を熱回収域に通す段階;d)液体キャリア中に粒子状炭素質材料を含む第2のスラリーと、前記熱回収域を出る混合物生成物を乾燥ユニットの中に導入し、そこで、第2のスラリー流中の水を蒸発させ、粒子状炭素質材料を含む固体流を形成させる段階;e)前記混合物生成物および段階(d)の固体流を分離装置に通し、それにより、前記チャーおよび固体流を前記ガス状生成物流から分離する段階;場合によってはf)段階(e)の前記ガス状生成物流を粒子濾過装置に通し、それにより、残存固体微粉および粒子状物質を前記ガス状生成物流から分離する段階;およびg)段階(e)からのチャーおよび乾燥した粒子状炭素質材料を含む前記乾燥原料、および段階f)からの残存固体微粉および粒子状物質を前記反応器下部区分に再循環により戻す段階を含む、炭素質材料をガス化するための方法に関する。このような工程の間、前記段階(a)で発生する熱は、段階(b)の粒子状炭素質材料およびキャリア液体を含む第1のスラリー流を段階(b)のガス状生成物流に変換することにより回収される。この方法は、熱回収域に入る前に第2段階反応の混合物生成物をタール除去滞留容器の中に導入する段階を更に含み得る。
【0009】
本発明の特定の他の態様は、a)前記ガス流および前記乾燥フィード原料を導入するための1つ以上の分散装置を含み、粒子状炭素質材料を含む固体流を酸素含有ガス、水蒸気、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸素供給体を含むガス流と共に部分燃焼させて、それにより熱を発生させ、合成ガスと溶融スラグを含む生成物を形成するための反応器下方区分;b)前記反応器下方区分からの前記合成ガスを液体キャリア中に粒子状炭素質材料を含む第1のスラリー流と共に熱分解して、合成ガスおよびチャーを含むガス状生成物流を含む混合物生成物を生成させるための反応器上方区分;c)混合物生成物を冷却するための熱回収域;d)液体キャリア中に粒子状炭素質材料を含む第2のスラリー流が前記熱回収域を出る前記混合物生成物と接触して、それによって前記第2のスラリー流中の水を蒸発させ、粒子状炭素質材料を含む固体流を形成させるための乾燥ユニット;e)チャーおよび固体流を前記混合物生成物中の前記ガス状生成物流から分離するための分離装置;およびf)残存固体微粉および粒子を前記ガス状生成物流から分離するための粒子濾過装置を含む、炭素質材料をガス化するための系に関する。このような系によって、反応器下部区分から生じる熱は、反応器上部区分においてキャリア液体中に粒子状炭素質材料を含む第1のスラリー流を反応器上部区分におけるガス状生成物流に変換することにより回収される。このような系は、熱回収域の上流でタール除去滞留容器を更に含み得る。
【0010】
反応器下部区分は、酸素含有ガスおよび水蒸気などの酸素供給ガスと、再循環チャーを含む流を反応器下部区分の中に導入するための1つ以上の分散装置を更に含む。反応器上部区分は、液体キャリア中の粒子状炭素質材料のスラリーを反応器上部区分の中にフィードするための1つ以上のフィード装置を更に含む。反応器上部区分は、限定ではないが、反応器下部区分上に配置され得る。熱回収域は、輻射熱型ボイラー、水管ボイラー、火管ボイラーおよびこれらの組み合わせから選択される熱回収装置を含み得る。乾燥ユニットは1つ以上の分散装置を含む。
【0011】
反応器下部区分の温度は、1500゜F〜3500゜Fで維持される。反応器下部区分および反応器上部区分における圧力は、約14.7psig〜約2000psigである。反応器下部区分の分散装置を通るガスおよびチャーの速度は、毎秒20〜120フィートである。反応器下部区分におけるチャーの滞留時間は、2〜10秒である。反応器上部区分のフィード装置を通るスラリー流の速度は、毎秒10〜80フィートである。反応器上部区分における粒子状炭素質材料のスラリーの滞留時間は、5〜40秒である。第2段
階の混合物生成物および乾燥した粒子状炭素質材料の温度は、第2のスラリー流の添加後、および分離装置の前で300゜Fと900゜Fとの間、好ましくは400゜Fと700゜Fとの間、最も好ましくは450゜Fと550゜Fとの間にある。
【0012】
反応器上部区分の中に導入される第1のスラリー流のパーセント量は、0%と50%との間、好ましくは10%と40%との間、および最も好ましくは25%と35%との間にあり、熱回収工程の下流の乾燥ユニットの中に導入される第2のスラリー流のパーセント量は、50%と100%との間、好ましくは60%と90%との間、最も好ましくは65%と80%との間にある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の態様をより詳細に説明するために、添付の図面を参照する。
【図1】図1は、本発明に関連する態様において有用な系の概略図および本発明に関連する態様のための工程流図である。
【図2】図2は、本発明に関連する代替の態様において有用な系の概略図および本発明に関連する態様のための工程流図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の種々の態様の次の詳細な説明は、本発明を実施することができる具体的な態様を図示する付随する図面を参照する。態様は、当業者による本発明の実施が可能なように充分に詳細に本発明の局面を記述するように意図されている。他の態様を利用すること、および本発明の範囲から逸脱せずに変更を行うことができる。それゆえ、次の詳細な説明は、限定的な意味で受け取られるべきでない。本発明の範囲は、このようなクレームが権利を与えられる均等物の全範囲と合わせて、添付のクレームによってのみ規定される。
【0015】
図1−2を参照すると、本発明の種々の態様は、参照番号10により概ね表示される、反応器下部区分30および反応器上部区分40を含むガス化反応器を提供する。反応器下部区分30は、第1段階の反応域を規定し、第1段階の反応域とも呼ばれる。反応器上部区分40は、第2段階の反応域を規定し、第2段階の反応域とも呼ばれる。
【0016】
図1−2を更に参照すると、再循環チャー、および酸素含有ガスおよび/または水蒸気などの酸素供給体を高い圧力で含む流れは、例えば、反応器下部区分30に相対して配置されている分散装置60および/または60aからガス化反応器10下部区分30の中に入る。2つ以上の、例えば、90度離れて配列された4つの分散装置を使用することができる。分散装置の組は異なるレベルのものであることもでき、同一面上にある必要はない。反応器下部区分30内、また第1段階の反応域内で、再循環チャーおよび酸素含有ガス流(水蒸気を含み得る)は、反応して、反応試剤の急速な混合および反応が起こり、反応試剤に回転運動が付与され、反応器10の下部区分30から上向きに流れる。反応器下部区分30中での反応は、ガス化工程の第1段階であり、そこで再循環チャーおよび酸素含有ガス流(水蒸気を含み得る)は、水蒸気、合成ガス、中間体ガス、および溶融スラグなどの同伴副生成物を含む混合物生成物に発熱的に変換される。溶融スラグは、最終処理のために反応器10の底部からタップホール20を通してスラグ処理系(図示せず)へと排出される。
【0017】
次いで、水蒸気、中間体、および合成ガスは、非燃焼反応器上部区分40の中に上向きに流入することにより反応器下部区分30から出、そこで、液体キャリア中に粒子状炭素質材料を含む第1のスラリー流をフィード装置80および/または80a、または更なるフィード装置から注入する。反応器下部区分30中で生じる熱は、ガス流と共に上向きに運ばれ、非燃焼反応器上部区分40中で起こる、食品の水の蒸発を含む熱分解工程、炭素−水蒸気反応およびCOとHOとの間の水−ガス反応を進行させる。炭素−水蒸気反応
は、COおよびHを形成し、それによってこれらの使用可能なガスの収率を増加させる。燃焼反応器下部区分30(または反応器10の第1段階の反応域)は、主として燃焼反応器である一方で、反応器上部区分40は、主として急冷反応器であり、これもガスの発熱量を増加させる。このようにして、非燃焼反応器上部区分40中で起こる反応は、部分燃焼の燃焼反応器下部区分30から発生するガスを富化して、高品位の合成ガスを生じ、このようにすることにおいて、熱を反応器下部区分30から回収し、この工程時に同伴されるスラグをアッシュ溶融の初期変形温度以下に冷却するのに充分なようにガスを冷却する。アッシュの初期変形温度以下まで冷却することにより、同伴のスラグ液滴は、伝熱表面に達する前にスラグ液滴または同伴の粒子状炭素質材料と凝集し、それゆえ伝熱表面に付着しない。反応器上部区分40における反応条件は、後からより詳細に開示される。
【0018】
図1−2に示す本発明の態様では、反応器10の非燃焼反応器上部区分40は、反応器10の燃焼反応器下部区分30の頂部に直接に接続され、高温の反応生成物が反応器下部区分30から反応器上部区分40に直接に搬送されて、ガス状反応生成物および同伴固体における熱損失を最少化する。
【0019】
図1−2に図示するように、ガス化反応により生成するチャーは、炭素転化を増加させるように、除去および再循環され得る。例えば、チャーは、分散装置60および/または60a(または他の装置)から反応器下部区分、または上述の第1の反応域の中に再循環され得る。
【0020】
分散装置60および/または60aは、チャーなどの粒子状固体の微細化されたフィードを提供する。分散装置は、固体用の中心管および共通の混合域に内部的または外部的に開いた、微細化ガスを含有する中心管を取り囲む環状空間を有する形式のものであってもよい。更に、非燃焼反応器上部区分40のフィード装置80および/または80aは、本明細書で述べられている分散装置に類似してもよく、または単純にスラリーフィード用の管を含んでもよい。分散装置60および/または60a、またはフィード装置80および/または80aは、当業者に公知のように設計可能である。
【0021】
図1で更に示すように、反応器上部区分40中で起こる第2段階の反応の混合物生成物は、上部区分40の頂部から生じ、熱回収域90の中に導入され、それによって混合物生成物の温度が低下する。
【0022】
特定の態様では、熱回収域90は、輻射熱型ボイラーまたは水管ボイラーまたは火管ボイラーを含む。特定の他の態様では、熱回収域90は、低温の再循環合成ガスを急冷ガスとして含む。
【0023】
図1−2で示す態様では、第2段階の反応の混合物生成物は、熱回収域90を出、そこで液体キャリア中に粒子状炭素質材料を含む第2のスラリー流を、乾燥ユニット120の中にフィード装置130および/または130aから導入し、第2のスラリー流中の水を蒸発させる。このような工程により、粒子状炭素質材料を含む固体流が形成される。
【0024】
図1−2で更に図示するように、第2段階の混合物生成物および粒子状炭素質材料を含む固体流の合体された流れは、両方とも乾燥ユニット120から出、分離装置50の中に更に導入され、固体流およびガス流に分割され、ガス流中に少量の残存固体微粉のみが残る。
【0025】
分離装置50から出るガス流は、水素、一酸化炭素、少量のメタン、硫化水素、アンモニア、窒素、二酸化炭素および少量の残存固体微粉を含む。ガス流は、粒子状濾過装置110の中に更に導入されてもよく、そこで、残存固体微粉および粒子状物質を除去する。
【0026】
分離装置50を出る固体流は、乾燥した粒子状炭素質材料と共に非燃焼反応器の上部区分反応器40中で形成される固化したアッシュおよびチャーを含む。
【0027】
分離装置50から出る固体流および濾過装置110から出る残存固体微粉は、酸素含有ガスおよび/または水蒸気と混合され、第1段階の反応に対するフィード原料として分散装置60および/または60から燃焼反応器下部区分30に再循環により戻される。
【0028】
次いで、固体流は、スラグ化条件下で酸素および水蒸気との反応によりガス化されて、合成ガスを含む混合物生成物および上方反応器区分40内で第2段階の反応に必要とされる熱を生じる。
【0029】
図2に図示する別の態様では、第2段階の反応の混合物生成物は、反応器10の上部区分40の頂部から引き出され、限定ではないが、滞留容器100などのタール除去容器の中に熱回収域90に入る前に導入される。滞留容器の主要な機能は、混合物生成物中に存在するいかなるタール成分も破壊することである。
【0030】
ガス化反応器10の構成の材料は決定的なものではない。必須ではないが、好ましくは、反応器壁は鋼であり、反応器下部区分30中では断熱性キャスタブルセラミック繊維または高クロム含有れんがなどの耐火性れんがによりライニングされている。その一方で、高炉および非スラグ化用途で使用されているように、1)熱損失の低減、2)高温および腐食性溶融スラグからの容器の保護、ならびに3)温度制御の改善のために、すぐに入手できる緻密な媒体が反応器上部区分をライニングするのに使用される。この形式の系を使用することによって、この方法で使用される炭素質固体からの発熱量の高回収がもたらされる。場合によっては、および代替的に、壁は、燃焼反応器下部区分30および場合によっては非燃焼上部区分40に対して「低温壁」系を準備することにより非ライニングであってもよい。本明細書で使用されるとき用語「低温壁」は、石炭ガス化系に対して当業界で慣用的に知られているように、壁が冷却媒体を含む冷却ジャケットにより冷却されているということを意味する。このような系では、スラグは、冷却した内壁上で固化し、冷却ジャケットの金属壁を保護する。
【0031】
チャーのガス化により発生する、アッシュの融点を超える温度においてチャーの急速なガス化を確保して、ほぼ250ポイズ以下のスラグ粘度を有する溶融スラグを溶融アッシュから生成させるように、反応器下部区分30における工程の第1段階における反応の物理的条件は、制御および維持される。第2段階/上部区分40で起こる反応の物理的条件は、急速なガス化および可塑性の範囲以上の石炭の加熱を確保するように制御される。燃焼反応器の下部区分30の温度は、1500゜F〜3500゜F、好ましくは2000゜F〜3200゜F、および最も好ましくは2400゜F〜3000゜Fに維持される。反応器下部区分30中での第1段階におけるこのような温度では、チャーのガス化により形成されるアッシュは、溶融して、溶融スラグを形成し、溶融スラグは、タップホールから排出され、この特許の範囲外のユニットで更に処理される。第1段階からのガス混合物は、回転して上向きに移動し、反応器下部区分から上昇する、ガスおよびチャーの渦として流出する。非燃焼反応器の上部区分反応器40の温度は、1200゜F〜2200゜F、好ましくは1500゜F〜2000゜F、および最も好ましくは1700゜F〜1900゜Fで維持される。燃焼反応器の下部区分30から上向きに流出する高温の中間体生成物は、非燃焼上方反応器区分40で起こる吸熱反応のための熱を提供する。
【0032】
第2段階の混合物生成物の温度は、通常、熱回収域90に入る前は約1700゜F〜約1900゜Fである。熱回収域の運転パラメーターは、炭素質粒子の型および液体キャリア中の粒子状炭素質材料の濃度によって調整される。特に、乾燥ユニット120から出る
、第2段階の混合物生成物および粒子状炭素質材料を含む固体流の合体流の最終温度が300と900゜Fとの間、好ましくは400と700゜Fとの間、および最も好ましくは500゜F近傍となるように、熱回収工程を運転する温度は、調整および制御されなければならない。このような温度においては、重い分子量のタール種は、通常、排出されない。結果として、分離装置50および粒子濾過装置110を出る合成ガスは、タールおよび粒子を含まず、更に酸ガス除去およびイオウ回収などを含む慣用の精製法により容易に処理可能である。
【0033】
本発明の工程は、大気圧またはそれより高い圧力で行われる。一般に、反応器下部区分30および反応器上部区分40中の圧力は、約14.7psig〜約2000psig、好ましくは50psig〜1500psigおよび最も好ましくは、150psig〜1200psigである。熱回収域90中の圧力は、約14.7psig〜約1500psig、好ましくは50psig〜1500psigおよび最も好ましくは150psig〜1200psigである。図2に示す別の態様では、タール除去用の滞留容器100中の圧力は、約14.7psig〜約1500psig、好ましくは50psig〜1500psigおよび最も好ましくは150psig〜1200psigである。
【0034】
本発明の種々の態様では、反応器下部区分の反応器30の分散装置60および/または60aを通るガスおよび固体の速度またはフィード速度は、毎秒20と120フィートとの間、好ましくは毎秒20と90フィートとの間、および最も好ましくは毎秒30と60フィートとの間に保たれる。反応器下部区分30中のチャーの滞留時間は、2秒と10秒との間に、好ましくは4秒と6秒との間に保たれる。反応器上部区分の反応器40のフィード装置80および/または80aを通るスラリー流の速度またはフィード速度は、毎秒約5フィートと毎秒100フィートの間に、好ましくは毎秒約10フィートと毎秒80フィートの間に、および最も好ましくは毎秒約20フィートと毎秒60フィートの間に保たれる。反応器上部区分40中の滞留時間は、約5秒と約40秒との間に保たれる。
【0035】
所定のガス化工程に対する本発明の種々の態様では、フィード装置80および/または80aから非燃焼反応器上部区分40の中に注入される液体キャリア中で粒子状炭素質材料を含む第1のスラリー流の量は、全量の0%と50%との間、好ましくは全量の10%と40%との間、および最も好ましくは全量の20%と35%との間にある。
【0036】
したがって、乾燥ユニット120まで導入される粒子状炭素質固体および液体キャリアのスラリーを含む第2の液体流の量は、全量の50%と100%との間、好ましくは全量の60%と90%との間、および最も好ましくは全量の65%と80%との間にある。
【0037】
この方法はいかなる粒子状炭素質材料にも適用可能である。しかしながら、好ましくは、粒子状炭素質材料は石炭であり、石炭としてはリグナイト、瀝青炭、亜瀝青炭、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、それには限定されない。更なる炭素質材料は、石炭からのコーク、石炭チャー、石炭液化残渣、粒子状炭素、石油コーク、油頁岩由来の炭素質固体、タールサンド、ピッチ、バイオマス、濃縮下水汚泥、生ごみの破片、ゴムおよびそれらの混合物である。前出の例示された材料は、最良の材料取り扱いおよび反応特性のためには液体キャリア中のポンプ輸送可能なスラリーとして、粉砕された固体の形のものであることができる。
【0038】
炭素質固体材料用の液体キャリアは、気化し、反応に参加して、所望のガス状生成物、特に一酸化炭素および水素を形成することができるいかなる液体であることもできる。最も考えられやすい液体キャリアは、下方反応器区分30において水蒸気を形成する水である。水蒸気は、炭素と反応して、合成ガスの構成要素であるガス状生成物を形成することができる。加えて、炭素質材料をスラリー化するのに水以外の液体が使用され得る。好ま
しくは、この液体は水であるが、例えば、燃料油、残存油、石油、および液体COなどの炭化水素であってもよい。液体キャリアが炭化水素である場合には、更なる水または水蒸気を添加して、反応の効率化および反応器温度の調整に充分な水を提供し得る。
【0039】
少なくとも20パーセントの酸素を含有するいかなるガスも燃焼反応器の下部区分30にフィードされる酸素含有ガスとして使用され得る。好ましい酸素含有ガスとして、酸素、空気、および酸素富化空気が挙げられる。
【0040】
スラリーとしてのキャリア液体中の粒子状炭素質材料の濃度は、単にポンプ輸送可能な混合物を得るのに必要なものであればよい。一般に、濃度は、固体材料の80重量%までの範囲である。好ましくは、スラリー中の粒子状炭素質材料の濃度は、この方法の第1および第2段階の両方において30%〜75重量%の範囲である。さらに好ましくは、水性スラリー中の石炭の濃度は、45%と70重量%との間にある。
【0041】
石炭がフィード原料である場合には、液体キャリアとブレンドする前に石炭を粉末化して、スラリーを形成するか、または液体媒体と一緒に磨砕することができる。一般に、いかなる適宜微粉化された炭素質材料も使用され得、粒子状固体の粒子サイズを小さくする既知の方法のいずれも利用され得る。このような方法の例としては、ボール、ロッドおよびハンマーミルの使用が挙げられる。粒子サイズは決定的なものではないが、微粉化された炭素粒子が好ましい。石炭火力発電所において燃料として使用される粉末化石炭が典型的なものである。このような石炭は、石炭の90重量パーセントが200メッシュ篩を通過する、粒子サイズ分布を有する。安定で、非沈降性スラリーを製造することができるという前提ならば、高反応性材料に対しては100メッシュのより粗いサイズの平均粒子サイズも使用することができる。
【0042】
本明細書で使用される時、用語「チャー」は、種々の生成物の生成後ガス化系内に同伴されて残留する未燃焼炭素およびアッシュ粒子を指す。
【0043】
この明細書で使用される時、用語「および/または」は、2つ以上の品目の掲示において使用される場合、掲げられた品目の一つのいずれもそれだけで使用可能であるか、または掲げられた品目の2つ以上のいかなる組み合わせも使用可能であるということを意味する。例えば、組成物が成分A、B、および/またはCを含有すると記述された場合、この組成物は、A単独;B単独;C単独;AおよびBの組み合わせ、AおよびCの組み合わせ;BおよびCの組み合わせ;またはA、B、およびCの組み合わせを含有することができる。
【0044】
保護の範囲は、上記に述べられた説明により限定されるものでなく、以下に続くクレームにより限定されるのみであり、この範囲はクレームの対象のすべての同等物を含む。それぞれのクレームおよびすべてのクレームは、本発明の態様としてこの明細書のなかに組み込まれている。したがって、クレームは更なる説明であり、本発明の好ましい態様への追加である。
【0045】
特定の機能を行うための「手段」または特定の機能を行うための「段階」を明白に記述しないクレーム中のいかなる要素も35U.S.C.§112¶6に特定されている「手段」または「段階」条項として解釈されるべきでない。特に、本明細書中のクレームの「段階」の使用は、35U.S.C.§112¶6の規定を行使するように意図されていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)再循環チャーと、粒子状炭素質材料を含む固体流を含む乾燥フィード原料を反応器下部区分の中に導入し、酸素含有ガス、水蒸気、およびそれらの混合物からなる群から選択される酸素供給体を含むガス流と共にその中で部分燃焼させて、それにより熱を発生させ、合成ガスと溶融スラグを含む生成物を形成する段階;
b)前記反応器下部区分からの前記合成ガスを上向きに反応器上部区分に通し、その中で液体キャリア中に粒子状炭素質材料のスラリーを含む第1のスラリー流と共に熱分解し、それにより合成ガスとチャーを含むガス状生成物流を含む混合物生成物を形成する段階;c)段階(b)の前記混合物生成物を熱回収域に通す段階;
d)液体キャリア中に粒子状炭素質材料を含む第2のスラリーと、前記熱回収域を出る前記混合物生成物を乾燥ユニットの中に導入し、そこで、前記第2のスラリー流中の水を蒸発させ、粒子状炭素質材料を含む前記固体流を形成させる段階;
e)前記混合物生成物および段階(d)の前記固体流を分離装置に通し、それにより、前記チャーおよび前記固体流を前記ガス状生成物流から分離する段階;
f)段階(e)の前記ガス状生成物流を粒子濾過装置に通し、それにより、残存固体微粉および粒子状物質を前記ガス状生成物流から分離する段階;および
g)前記チャーおよび段階(e)からの前記乾燥した粒子状炭素質材料を含む前記乾燥原料、および段階(f)からの残存固体微粉および粒子状物質を前記反応器下部区分に再循環により戻す段階
を含み、それによって、段階(b)の前記キャリア液体中に粒子状炭素質材料を含む前記第1のスラリー流を段階(b)の前記ガス状生成物流に転換することにより、前記段階(a)で発生する前記熱を回収する、炭素質材料をガス化する方法。
【請求項2】
段階(a)が1500゜Fおよび3500゜Fの範囲の温度と、14.7psig〜2000psigの範囲の圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(a)が2000゜Fおよび3200゜Fの範囲の温度と、50psig〜1500psigの範囲の圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
段階(b)が1200゜Fおよび2200゜Fの範囲の温度と、14.7psig〜2000psigの範囲の圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
段階(b)が1500゜Fおよび2000゜Fの範囲の温度と、50psig〜1500psigの範囲の圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液体キャリア中に粒子状炭素質材料を含むスラリーの前記第1の液体流が1つ以上のフィード装置により前記反応器上部区分に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ガス流および前記固体流が1つ以上の分散装置により前記反応器下部区分に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ガス流および前記固体流が毎秒20〜120フィートの範囲のフィード速度で前記反応器下部区分に導入され、前記反応器下部区分中の前記チャーの滞留時間が2〜10秒の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ガス流および前記固体流が毎秒20〜90フィートの範囲のフィード速度で前記反応器下部区分に導入され、前記反応器下部区分中の前記乾燥フィード原料の滞留時間が4〜6秒の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のスラリー流および前記固体流が毎秒10〜80フィートの範囲のフィード速度で前記反応器上部区分に導入され、前記反応器上部区分中の前記第1のスラリーの滞留時間が5〜40秒の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記キャリア液体が水、液体CO、石油液体およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記粒子状炭素質材料が石炭、リグナイト、石油コークおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のスラリー流または第2のスラリー流が前記第1のスラリー流または第2のスラリー流の全重量基準で30%〜75重量%の固体濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のスラリー流または第2のスラリー流が前記第1のスラリー流または第2のスラリー流の全重量基準で45%〜70重量%の固体濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記酸素含有ガスが空気、酸素富化空気、酸素およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記熱回収域に入る前に前記第2段階反応の前記混合物生成物をタール除去滞留容器の中に導入する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記熱回収域が輻射熱型ボイラー、水管ボイラー、火管ボイラーおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される熱回収装置を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記分離装置前の前記第2段階の混合物生成物および前記固体流の温度が300゜Fと900゜Fの間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記分離装置前の前記第2段階の混合物生成物および前記固体流の温度が400゜Fと700゜Fの間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記分離装置前の前記第2段階の混合物生成物および前記固体流の温度が450゜Fと550゜Fの間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記反応器上部区分の中に導入されるべき第1のスラリー流の量が所定のガス化工程全体の0%および50%の間にあり、前記乾燥ユニットの中に導入されるべき第2のスラリー流の量が所定のガス化工程全体の50%および100%の間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記反応器上部区分の中に導入されるべき第1のスラリー流の量が所定のガス化工程全体の10%および40%の間にあり、前記乾燥ユニットの中に導入されるべき第2のスラリー流の量が所定のガス化工程全体の60%および90%の間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記反応器上部区分の中に導入されるべき第1のスラリー流の量が所定のガス化工程全体の20%および35%の間にあり、前記全体乾燥ユニットの中に導入されるべき第2のスラリー流の量が所定のガス化工程全体の65%および80%の間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
a)前記ガス流および前記乾燥フィード原料を導入するための1つ以上の分散装置を含み、粒子状炭素質材料を含む固体流を酸素含有ガス、水蒸気、およびこれらの混合物からなる群から選択される酸素供給体を含むガス流と共に部分燃焼させて、それにより熱を発生させ、合成ガスと溶融スラグを含む生成物を形成するための反応器下方区分;
b)液体キャリア中に粒子状炭素質材料を含む第1のスラリー流と共に前記反応器下方区分からの前記合成ガスを熱分解して、合成ガスおよびチャーを含むガス状生成物流を含む混合物生成物を生成させるための反応器上方区分;
c)前記混合物生成物を冷却するための熱回収域;
d)液体キャリア中に粒子状炭素質材料を含む第2のスラリー流が前記熱回収域を出る前記混合物生成物と接触して、それによって前記第2のスラリー流中の水を蒸発させ、粒子状炭素質材料を含む固体流を形成させるための乾燥ユニット;
e)前記チャーおよび前記固体流を前記混合物生成物中の前記ガス状生成物流から分離するための分離装置;
f)残存固体微粉および粒子を前記ガス状生成物流から分離するための粒子濾過装置
を含み、それによって前記反応器上方区分で前記キャリア液体中に粒子状炭素質材料を含む前記第1のスラリー流を前記反応器上方区分中で前記ガス状生成物流に転換することにより、前記反応器下方区分で生じる前記熱を回収する炭素質材料をガス化するための系。
【請求項25】
前記熱回収域の上流でタール除去滞留容器を更に含む、炭素質材料をガス化するための請求項24に記載の系。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−512318(P2012−512318A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542447(P2011−542447)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/068546
【国際公開番号】WO2010/080525
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(502259425)コノコフイリツプス・カンパニー (11)
【氏名又は名称原語表記】ConocoPhillips Company