説明

殺微生物剤

本発明は1,2−ベンズイソチアゾリノン(BIT)およびテトラメチロールアセチレンジウレア(BHF)を含有する抗菌性の相乗作用する混合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、1,2−ベンズイソチアゾリノン(BIT)およびテトラメチロールアセチレンジウレア(TMAD)を含有する新規混合物、前記混合物の製造方法、および前記混合物の、工業的材料および製品を微生物による攻撃および破壊から保護するための使用およびこれらの新規混合物をベースとする殺微生物剤である。
【0002】
1,2−ベンズイソチアゾリノン(BIT)およびそのナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩は殺微生物性に作用する組成物を製造するために実際に長い間使用された活性化合物である。1,2−ベンズイソチアゾリノン(BIT)は良好な化学的安定性および熱安定性により特徴付けられ、原則的に幅広い抗菌作用(バクテリア、真菌、イースト)を有する。しかし一部の種類のバクテリアに対する有効性が常に十分でなく、観察される作用の速度が一部の場合に微生物により誘発される物質に対する損傷を避けるために不十分である。
【0003】
テトラメチロールアセチレンジウレア(TMAD)はホルムアルデヒドを排出する化合物をベースとする公知の殺微生物活性化合物であり、すでに工業的保存に多くの用途に使用されている(接着剤、塗料、コンクリート添加剤等)。テトラメチロールアセチレンジウレア(TMAD)はホルムアルデヒドを排出する化合物に典型的な好ましい特性、例えば良好な殺微生物活性、作用の急速な開始および気相での活性を有する。しかし(主にバクテリアに対する)ホルムアルデヒドを排出する化合物の限られた活性範囲により、実際に満足する結果を得るために、一部の場合に安全で経済的な使用に関して改良に値すると思われる供給量が必要である。
【0004】
意想外にも、1,2−ベンズイソチアゾリノン(BIT)およびそのナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩およびテトラメチロールアセチレンジウレア(TMAD)をベースとする新規混合物が見出され、この混合物はそれぞれの個々の成分の欠点を有利なやり方で克服し、従って技術水準の改良に貢献する。
【0005】
従って本発明は活性成分として1,2−ベンズイソチアゾリノン(BIT)および/またはそのナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩およびテトラメチロールアセチレンジウレア(TMAD)を含有することを特徴とする混合物に関する。
【0006】
本発明による混合物は微生物に対して高い活性を有し、微生物による攻撃および破壊に対して工業的材料を保護するために使用できる。
【0007】
更に意想外にも、本発明による混合物は、特定の混合比で予想できない、高い相乗作用による活性の強化を有することを特徴とする。結果として工業的材料を保護するために本発明による混合物が必要な濃度を、それぞれの個々の化合物が必要な濃度に比べて減少することができる。これは経済的、生態的および工業的見地からきわめて有利であり、保存特性の増加に貢献する。
【0008】
本発明による活性化合物混合物は有利に微生物による攻撃に影響されやすい機能性流体および水性工業製品を保存するために使用される。
【0009】
以下の工業的材料および生成物は例として、しかし限定するものでなく、本発明による活性化合物混合物の可能な用途として記載することができる:
塗料、顔料、プラスターおよび他のコーティング材料、
澱粉溶液またはスラリー、または他の澱粉ベース生成物、例えば印刷用濃化剤、または澱粉糊、
有色顔料、例えば酸化鉄顔料、カーボンブラック顔料、二酸化チタン顔料のような他の原料のスラリーまたはカオリン、炭酸カルシウムまたはタルクのような充填剤および被覆顔料のスラリー、
建設工業用化学生成物、例えば糖蜜、リグノスルホネートまたはポリアクリレートをベースとするコンクリート添加剤、ビチューメンエマルションまたはシーラント、
動物性、植物性または合成起源の公知の原料をベースとする糊および接着剤、
例えば特にポリアクリレート、ポリスチレンアクリレート、スチレンブタジエン、ポリ酢酸ビニルをベースとするポリマー分散剤、
工業的および家庭的用途の洗剤および洗浄剤、
鉱油および鉱油製品、例えばディーゼル燃料、
鉱油を含有する半合成または合成濃縮物をベースとする金属加工用冷却潤滑剤、
皮革、織物または光化学工業のための助剤、
例えば染料の製造および保存での化学工業の前駆物質および中間生成物、
溶剤ベースまたは水ベースのインキ、
ワックスおよびクレーエマルション。
【0010】
本発明による混合物は付加的に1個以上の他の殺微生物活性化合物を含有することができる。化合物:
ベンジルヘミホルマール、
ブロノポール、
クロロメチルイソチアゾリノン、
p−クロロ−m−クレゾール、
ジメチロールウレア、
4,5−ジクロロ−2−n−オクチルイソチアゾリン−3−オン、
1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、
2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、
エチレングリコールヘミホルマール、
エチレングリコールビスヘミホルマール、
グルタルアルデヒド、
ヨードプロパルジルブチルカルバメート、
メチルイソチアゾリノン、
N−メチロールウレア、
2−n−オクチルイソチアゾリン−3−オン、
2−フェノキシエタノール、
フェノキシプロパノール、
o−フェニルフェノール、
第四級アンモニウム塩、例えばN−アルキル−N,N−ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、
トリメチレン−2−メチルイソチアゾリン−3−オン、
および場合により他の化合物が併用成分として記載できる。
【0011】
本発明による混合物中の1,2−ベンズイソチアゾリノン(BIT)および/またはそのナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩およびテトラメチロールアセチレンジウレア(TMAD)の量は広い範囲内で変動できる。機能性流体および水性工業製品に用いる広い抗菌作用を有する混合物中で1,2−ベンズイソチアゾリノン(BIT)と、テトラメチロールアセチレンジウレア(TMAD)の比は、一般に9:1〜1:9、有利に5:1〜1:5、特に有利に1:1〜1:5の質量比である。
【0012】
材料の保護において、本発明の混合物は工業的材料を保護するために、特に水性機能的流体を保護するために使用することができる。前記混合物はバクテリア、かび、イーストおよび粘液状生物に対して有効である。例として以下の微生物を挙げることができるが、限定するものでない。
【0013】
アルテルナリア・テニウス(Alternaria tenius)のようなアルテルナリア(Alternaria)属、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)のようなアスペルギルス(Aspergillus)属、カエトミウム・グロボスム(Chaetomium globosum)のようなカエトミウム(Chaetomium)属、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)のようなフザリウム(Fusarium)属、レンチヌス・チグリヌス(Lentinus tigrinus)のようなレンチヌス(Lentinus)属、ペニシリウム・グラウクム(Penicillium glaucum)のようなペニシリウム(Penicillium)属、
アルカリゲネス・ファエカリス(Alcaligenes faecalis)のようなアルカリゲネス(Alcaligenes)属、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)のようなバチルス(Bacillus)属、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)のようなエシェリシア(Escherichia)属、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)またはシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)のようなシュードモナス(Pseudomonas)属、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のようなスタフィロコッカス(Staphylococcus)属、
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)のようなカンジダ(Candida)属、ゲオトリクム・カンジダム(Geotrichum candidum)のようなゲオトリクム(Geotrichum)属、ロドトルラ・ルブラ(Rhodotorula rubra)のようなロドトルラ(Rhodotorula)属。
【0014】
本発明の混合物は個々の成分を、場合により1種以上の溶剤および場合により他の抗菌性活性化合物を添加して混合することにより製造することができる。
【0015】
それぞれの物理的および/または化学的特性に応じて、本発明による混合物は、個々の活性化合物の配量された添加の形で別々に適用することができ、この場合に濃度比を存在する保存の課題に応じて個々に調節することができるか、または完成した混合物を配量することができる。この場合に本発明による混合物を、例えば溶液、エマルション、懸濁液、粉末、フォーム、ペースト、グラニュール、エーロゾルおよびポリマー物質への埋め込みのような通常の製剤に予め変換することも可能である。
【0016】
これらの製剤は自体公知方法により、例えば本発明による混合物または前記混合物に含まれる個々の活性化合物を、エキステンダー、すなわち液体溶剤、圧縮液化ガスおよび/または固体の担体と、場合により界面活性剤、すなわち乳化剤および/または分散剤および/またはフォーム形成剤を使用して混合することにより製造する。使用されるエキステンダーが水である場合は、補助溶剤として、例えば有機溶剤を使用することも可能である。基本的に適当な液体溶剤は以下のものを含む;ブタノールまたはグリコールのようなアルコール、そのエーテルおよびエステル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはシクロヘキサノンのようなケトン、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドのような強い極性溶剤および水。液化した気体のエキステンダーまたは担体は、周囲温度および大気圧下で気体である液体、例えばエーロゾル噴射剤、例えばハロゲン化炭化水素、ブタン、プロパン、窒素および二酸化炭素を意味するものと理解される。適当な固体の担体は以下のものである:例えば粉砕した天然の材料、例えばカオリン、クレー、タルク、白亜、石英、アタプルガイト、モンモリロナイト、または珪藻土、および粉砕した合成の材料、例えば微粒子状シリカ、酸化アルミニウム、および珪酸塩。グラニュールのための適当な固体の担体は以下のものである:例えば破砕したおよび分留した天然の岩石、例えば方解石、大理石、軽石、海泡石、ドロマイト、無機および有機粉体の合成グラニュール、および有機材料のグラニュール、例えばのこくず、ココヤシの殻、トウモロコシの穂軸、およびたばこ茎。適当な乳化剤および/またはフォーム形成剤は以下のものである:例えば非イオン性およびアニオン性乳化剤、例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、例えばアルキルアリールポリグリコールエーテル、アルキルスルホネート、アルキルスルフェート、アリールスルホネート、および蛋白質加水分解物。適当な分散剤は、例えばリグノスルファイト廃液である。
【0017】
粘着性付与剤および濃化剤、例えばカルボキシメチルセルロースおよび粉末、グラニュールまたはラテックスの形の天然および合成ポリマー、例えばアラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、および天然のリン脂質、例えばケファリンおよびレシチン、および合成のリン脂質を製剤に使用することができる。他の可能な添加剤は鉱油および植物油である。
【0018】
本発明は更に本発明による活性化合物混合物をベースとする殺微生物剤組成物を提供し、前記組成物は少なくとも1種の溶剤または希釈剤および場合により加工助剤、および場合により他の抗菌性活性化合物を含有する。
【0019】
工業材料を保護するために使用される殺微生物剤組成物または製剤化された濃縮物は活性化合物、1,2−ベンズイソチアゾリノン(BIT)および/またはそのナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩およびテトラメチロールアセチレンジウレア(TMAD)を両方の活性化合物の合計として計算して5〜80質量%、有利に10〜60質量%の濃度で含有する。
【0020】
本発明により使用される活性化合物組み合わせの使用濃度は調節される微生物の性質および存在に、最初の殺微生物剤の負荷量および保護される材料の組成に依存する。実際に使用する前に個々の適用に使用される最適な量を実験室内で連続試験により決定できる。一般に使用濃度は、保護される材料に対して、本発明の混合物0.01〜5質量%、有利に0.05〜1.0質量%である。
【0021】
例えばシュードモナス・フルオレセンスまたはシュードモナス・アエルギノーザのような実際に特に重要である所定の微生物(例1および2参照)に対して、本発明による混合物は相乗作用が注目すべきであり、すなわち混合物の活性が個々の成分の活性より大きい。
【0022】
本発明による混合物の観察される相乗作用は以下の数学的式により決定できる(F.C.Kull、P.C.Elisman、H.D.Sylwestrowicz and P.K.Mayer、Appl.Microbiol.9.538(1961)参照)。
【0023】
【数1】

式中、
は所望の作用を達成する、すなわち微生物の成長がなくなるために必要な活性化合物混合物中の成分Aの量であり、
は単独に使用して微生物の成長を抑制する成分Aの量であり、
は微生物の成長を抑制する活性化合物混合物中の成分Bの量であり、および
は単独に使用して微生物の成長を抑制する成分Bの量である。
【0024】
1より小さい相乗作用係数SIは活性化合物混合物に関して相乗作用を示す。
【0025】
以下の計算を使用して相乗作用活性の増加を例として示すが、これに限定されない。
【0026】
実施例
例1
BIT/TMAD相乗作用
試験生物:シュードモナス・フルオレセンス
括弧内の数値は混合物中の活性化合物の質量比を示す。
【0027】
【表1】

【0028】
本発明による組み合わせは顕著な相乗作用を有する。
【0029】
例2
BIT/TMAD相乗作用
試験生物:シュードモナス・アエルギノーザ
括弧内の数値は混合物中の活性化合物の質量比を示す。
【0030】
【表2】

【0031】
本発明による組み合わせは顕著な相乗作用を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラメチロールアセチレンジウレア(TMAD)および1,2−ベンズイソチアゾリノン(BIT)および/またはそのナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩を含有することを特徴とする殺生物性活性化合物の混合物。
【請求項2】
1,2−ベンズイソチアゾリノン(BIT)および/またはそのナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩と、テトラメチロールアセチレンジウレア(TMAD)の比が9:1〜1:9である請求項1記載の混合物。
【請求項3】
請求項1または2記載の活性化合物混合物および溶剤または溶剤混合物、エキステンダー、界面活性剤および場合により他の抗菌性活性化合物の群からの少なくとも1種の助剤を含有する殺微生物剤。
【請求項4】
微生物による攻撃および/または破壊に対して工業的材料を保護するための請求項1または2記載の混合物の使用。
【請求項5】
工業的材料が水性工業製品および水性機能的流体である請求項4記載の使用。
【請求項6】
工業的材料を請求項1または2記載の混合物で処理するかまたは前記混合物と混合することを特徴とする微生物による攻撃および/または破壊に対して工業的材料を保護する方法。
【請求項7】
請求項1または2記載の混合物を製造する方法において、個々の成分を、場合により溶剤または溶剤混合物、エキステンダー、界面活性剤および他の抗菌性活性化合物を添加して混合することを特徴とする混合物の製造方法。
【請求項8】
請求項1または2記載の活性化合物混合物を含有する工業的材料。

【公表番号】特表2006−505596(P2006−505596A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548788(P2004−548788)
【出願日】平成15年10月25日(2003.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011884
【国際公開番号】WO2004/040980
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(504419760)ランクセス ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (58)
【Fターム(参考)】