説明

殺微生物剤

【課題】o−フェニルフェノールを含む相乗性殺細菌剤組成物を提供する。
【解決手段】o−フェニルフェノール並びにブロノポル(bronopol)(2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール)MIT(2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン)およびテクタマー(Tektamer)38(1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン)よりなる群からの少なくとも1種の他の化合物を含んでなる殺微生物組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良された殺細菌活性を有する殺微生物組成物を提供する。本発明はo−フェニルフェノール(OPP)と他の殺微生物活性化合物、例えば、ブロモポル(bronopol)(2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール)、MIT(2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン)、テクタマー(Tektamer)38(1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン)、との相乗性混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
o−フェニルフェノール(OPP)は既知の活性化合物である。それは工業用の防腐および消毒用に使用される。OPPの活性範囲はグラム−陽性およびグラム−陰性細菌、並びに菌・カビ類および酵母を包含する。この総合的に良好な殺微生物活性範囲にもかかわらず、ある種のタイプの微生物(例えばシュードモナス科(Pseudomonadaceae)からの細菌)を抑制するために実際に必要な使用濃度は経済的および形態学的観点からすると必ずしも完全に満足のいくものではない。従って、抑制しようとする微生物に対してより大きい活性を有し且つ保護しようとする多数の基質中に問題なく追加添加することができる広範囲に活性な殺微生物組成物に関する要望がある。
【発明の概要】
【0003】
驚くべきことに、OPPおよび少なくとも1種の他の殺細菌剤の、特に特定の混合比の、活性化合物混合物が予期せぬほど高い相乗的に高められた活性を有することが今回見いだされた。その結果、工業製品を保護するために使用される活性化合物の量を減ずることができ、より経済的な使用または向上する防腐品質への寄与をもたらす。一般的には、本発明に従う混合物は先行技術、すなわち個別活性化合物の使用、と比べて改良があると述べることができる。新規な活性化合物混合物は好ましくは微生物による攻撃に敏感な機能性液体および水を含有する工業製品を防腐するために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明に従う活性化合物混合物は、例えば、下記の工業製品を保護するために使用することができる:
−澱粉溶液、分散液もしくはスラリー、または他の澱粉をベースにした製品、例えば、印刷で使用される濃稠化剤
−他の原料、例えば着色顔料(例えば、酸化鉄顔料、カーボンブラック顔料、二酸化チタン顔料)のスラリー、または充填剤、例えばカオリンもしくは炭酸カルシウムのスラリー−コンクリート添加剤、例えばモラッセまたはリグノスルホネート類
−膠、および動物性、植物性または合成源の既知の原料をベースにした接着剤
−ビチューメン乳化液
−工業用および家庭用の洗剤およびクリーナー
−鉱油または鉱油製品(例えば、ディーゼル燃料)
−皮革、織物または光化学工業用の助剤
−例えば染料の製造および貯蔵における、化学工業の前駆体および中間体
−溶媒を含むまたは水を含むインキ
−ワックスおよびクレー乳化液
【0005】
OPPに対する殺細菌性混合相手として挙げられるものは、
ブロモポル(2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール)
MIT(2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン)
テクタマー38(1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン)
である。
【0006】
o−フェニルフェノール(OPP)対他の殺細菌活性成分の混合比は広い範囲内で変動でき、最適条件は例えば使用する殺細菌性混合相手に依存するが、当該用途にも依存する。
【0007】
機能性液体および水を含有する工業製品を保護するために使用される広い抗微生物活性を有する防腐剤では、o−フェニルフェノール(OPP)対混合相手の重量比は99.9:0.1〜50:50、好ましくは99:1〜70:30、特に好ましくは80:20〜60:40であるべきである。
【0008】
本発明に従う活性化合物組み合わせは微生物に対して非常に活性である。本発明に従う活性化合物組み合わせは材料の保護において工業材料を保護するために、特に水性の機能性液体を保護するために使用され、それらは細菌および黴に対して並びに酵母および粘液有機体に対して作用する。下記の微生物が例として挙げられるが、何ら限定しようとするものではない:
アルテルナリア(Alternaria)、例えばアルテルナリア・テヌイス(Alternaria tenuis)、アスペルギルス(Aspergillus)、例えばアルペルギルス・ニガー(Aspergillusniger)、チャエトミウム(Chaetomium)、例えばチャエトミウム・グロボスム(Chaetomium globosum)、フサリウム(Fusarium)、例えばフサリウム・ソラニ(Fusarium solani)、レンチヌス(Lentinus)、例えばレンチヌス・チグリヌス(Lentinus tigrinus)、ペニシリウム(Penicillium)、例えばペニシリウム・グラウクム(Penicilliumglaucum);
アルカリゲネス(Alcaligenes)、例えばアルカリゲネス・ファエカリス(Alcaligenes faecalis)、バシルス(Bacillus)、例えばバシルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、エシェリキア(Escherichia)、例えば大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス(Pseudomonas)、例えば緑膿菌(Pseudomonas Aeruginosa)またはシュードモナス・フルエレッセンス(Pseudomonas fluerescens)、スタフィコッカス(Staphylococcus)、例えば黄色葡萄球菌(Staphylococcus aureus);
カンジダ(Candida)、例えばカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、ゲオトリチュム(Geotrichum)、例えばゲオトリチュム・カンジデュム(Geotrichumcandidum)。
【0009】
それらのそれぞれの物理的および/または化学的性質により、本発明に従う活性化合物組み合わせは別個に、個別活性化合物の形態で加えることができ、そこではこの防腐問題によっては濃度比を個別に調節することが可能であり、或いはそれらを一般的な調合物、例えば溶液、乳化液、懸濁液、粉末、フォーム、ペースト、粒剤、エーロゾルまたは重合体物質中のマイクロカプセルにすることができる。
【0010】
これらの調合物はそれ自体既知である方法で、例えば活性化合物をエキステンダー、すなわち液体溶媒、圧力下で液化した気体および/または固体の担体と、適宜界面活性剤、すなわち乳化剤および/または分散剤および/または発泡剤を使用して、混合することにより製造される。使用されるエキステンダーが水である場合には、例えば補助溶媒として有機溶媒を使用することも可能である。本質的に、適する液体溶媒は芳香族化合物、例えばキシレン、トルエン、アルキルナフタレン類、塩素化された芳香族化合物または塩素化された脂肪族炭化水素類、例えばクロロベンゼン類、クロロエチレン類もしくは塩化メチレン、脂肪族炭化水素類、例えばシクロヘキサン、またはパラフイン類、例えば鉱油画分、アルコール類、例えばブタノールもしくはグリコールまたはそれらのエーテル類およびエステル類、ケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンもしくはシクロヘキサノン、強い有極性溶媒、例えばジメチルホルムアミドもしくはジメチルスルホキシド、並びに水を包含し、液化した気体のエキステンダーまたは担体とは周囲温度および大気圧において気体状である液体、例えばエーロゾル噴射剤、例えばハロゲ
ン化された炭化水素類、並びにブタン、プロパン、窒素および二酸化炭素を意味すると理解すべきであり、適する固体担体は例えば粉砕した天然鉱物、例えばカオリン、クレー、タルク、チヨーク、石英、アタパルジヤイト、モントモリロナイトまたはケイソウ土、並びに粉砕した合成鉱物、例えば微細分割シリカ、酸化アルミニウムおよびシリケートであり、粒剤用に適する固体担体は例えば粉砕し且つ分別した天然岩石、例えば方解石、大理石、軽石、海泡石および白雲石、並びに無機および有機のひきわりの合成顆粒および有機物質の顆粒、例えばおがくず、やしがら、トウモロコシ穂軸およびタバコ茎であり、適する乳化剤および/または発泡剤は例えば非イオン性およびアニオン性乳化剤、例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル類、例えばアルキルアリールポリグリコールエーテル類、アルキルスルホネート類、アルキルスルフエート類、アリールスルホネート類、並びにアルブミン加水分解生成物であり、適する分散剤は例えばリグニンスルフアイト廃液およびメチルセルロースである。
【0011】
粘着付与剤、例えばカルボキシメチルセルロース、並びに粉状、粒状またはラテツクス状の天然および合成重合体、例えばアラビアゴム、ポリビニルアルコールおよびポリ酢酸ビニル、並びに天然燐脂質、例えばセフアリン類およびレシチン類、および合成燐脂質を調合物中で用いることができる。他の使用可能な添加剤は鉱油および植物油である。
【0012】
工業材料を保護するために使用される殺微生物組成物または濃縮物は活性化合物組み合わせを0.1〜95重量%の、そして特に5〜50重量%の、濃度で含んでなる。
【0013】
本発明に従い使用される活性化合物組み合わせの使用濃度は抑制しようとする微生物の性質および発生状況並びに保護しようとする材料の組成による。最適な使用量は一連の試験により決めることができる。一般的には、使用濃度は、保護しようとする材料を基準として、0.01〜5重量%の、好ましくは0.05〜2.0重量%の、範囲内である。
【0014】
本発明に従う活性化合物組み合わせは相乗効果を示し、すなわち混合物の活性は個別成分の活性より大きい。
【0015】
本出願で特許が請求される、o−フェニルフェノール(OPP)および他の殺細菌剤よりなる活性化合物混合物の観察された相乗性は下記の数学式により測定することができる(F.C. Kull, P.C. Elisman, H.D. Sylwestrowicz and P.K. Mayer, Appl. Microbiol. 9, 538 (1961) 参照):
【0016】
【数1】

【0017】
[式中、
a=所望する効果、すなわち微生物成長なし、を達成する活性化合物混合物中の成分Aの量
A=それ自体で使用される場合に、微生物の成長を抑制する成分Aの量
b=微生物の成長を抑制する活性化合物混合物中の成分Bの量
b=それ自体で使用される場合に、微生物の成長を抑制する成分Bの量]。
【0018】
<1の相乗指数は活性化合物混合物の相乗効果を示す。
【0019】
相乗的に増加した活性は例えば以下の実施例により証明されるが、何ら限定するものではない。
【実施例1】
【0020】
混合物OPP/BNPD(ブロモポル)
シュードモナス・フルエレッセンス(Pseudomonas fluerescens)に対する本発明に従う組成物の最少抑制濃度(MIC)の測定
【0021】
【表1】

【0022】
本発明に従う混合物は顕著な相乗活性を有する。
【実施例2】
【0023】
混合物OPP/テクタマー38(1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン)
シュードモナス・フルエレッセンス(Pseudomonas fluerescens)に対する本発明に従う組成物の最少抑制濃度(MIC)の測定
【0024】
【表2】

【0025】
本発明に従う組み合わせは顕著な相乗活性を有する。
【実施例3】
【0026】
混合物OPP/MIT(2−メチル−2H−イソチアゾリン−3−オン)
シュードモナス・フルエレッセンス(Pseudomonas fluerescens)に対する本発明に従う組成物の最少抑制濃度(MIC)の測定
【0027】
【表3】

【0028】
本発明に従う組み合わせは顕著な相乗活性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
o−フェニルフェノール並びに
ブロノポル(bronopol)(2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール)
MIT(2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン)および
テクタマー(Tektamer)38(1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン)
よりなる群からの少なくとも1種の他の化合物を含んでなる殺微生物組成物。
【請求項2】
工業材料を菌・カビ類および藻類による攻撃に対して保護するための請求項1で請求された組成物の使用。
【請求項3】
工業材料を請求項1で請求された組成物と混合するかまたはそれで処理することを特徴とする、工業材料を菌・カビ類および藻類による攻撃に対して保護する方法。
【請求項4】
o−フェニルフェノール並びにブロノポル(2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール)、MIT(2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン)およびテクタマー38(1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン)よりなる群からの少なくとも1種の他の化合物並びに、適宜、エキステンダーおよび、適宜、界面活性剤を混合することを特徴とする、請求項1で請求された組成物を製造する方法。

【公開番号】特開2011−251993(P2011−251993A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168598(P2011−168598)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【分割の表示】特願2001−561158(P2001−561158)の分割
【原出願日】平成13年2月12日(2001.2.12)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】